説明

荷重測定用ベッド装置

【課題】構造的に不安定な状態とならないようにして利用者の体重を精密に測定することができるようにしたベッド装置を提供することにある。
【解決手段】載置フレームと、載置フレームに設けられる荷重測定手段16と、載置フレームに荷重測定手段によって荷重の測定可能に設けられる床板体を具備し、 荷重測定手段は、載置フレームに取付けられるロードセル18と、床板体に取付けられるフランンジ37及びフランジの取付け孔38に設けられたラジアル軸受39を有するフランジ軸受体35と、ロードセルの床板体の荷重を受ける自由端に軸線を垂直にして連結される大径軸部23及び大径軸部に段差部24を介して連設されたテーパ軸部25を有し、テーパ軸部がラジアル軸受に挿入支持されて段差部で載置フレームの荷重をラジアル軸受を介して受けてロードセルに伝達する荷重受け軸22によって構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は利用者がマットレス上に仰臥した状態で体重を測定することができる荷重測定用ベッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、長期間にわたって療養中の患者や人工透析を行っている患者など利用者はマットレス上で仰臥したままで体重を継続的に測定できるようにすることが要求されることがある。その場合、ベースフレームの上面に複数のロードセルを設け、このロードセルによってベッド床部の荷重を受けるようにしたり、ベッドに設けられた4本の脚をロードセルを備えた荷重スケールに載せるということが行われている。このような先行技術は特許文献1に示されている。
【特許文献1】特開2005−300368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ベースフレームの上面にロードセルを設け、このロードセルによってベッド床部を支持する前者の場合、上記ロードセルは一端がベースフレームに固定され、荷重を受ける自由端が球体を介して上記ベッド床部を支持するようになっている。
【0004】
球体を用いてベッド床部を支持する構造によれば、ベッド床部に加わる荷重が球体とベッド床部との接触点に集中して水平方向に荷重が分散し難いため、ベッド床部に加わる荷重に偏りが生じても、ロードセルに加わる垂直方向の荷重が大きく変動しないため、荷重の測定を高精度で行えるという利点を有する。
【0005】
しかしながら、上記ベッド床部を球体によって支持する場合、上記ロードセルの自由端と、上記ベッド床部にそれぞれ球面軸受を設けなければならない。球面軸受は非常に高価であるから、大幅なコスト上昇を招くということがある。しかも、球体によってベースフレームに支持されたベッド床部は水平方向に大きく動き易いため、不安定な状態になるから、使用し難いということがある。
【0006】
ベッドに設けられた4本の脚を荷重スケールに載せる後者の構成によると、上記荷重スケールはベースの上面にロードセンサを設け、このセンサに測定皿を球体によって支持する構造となっている。
【0007】
そのため、この場合も、前者の構造と同様、球体を支持するための球面軸受が必要となるから、大幅なコスト上昇を招くということがある。しかも、球体によって支持されただけの測定皿は不安定な状態にあるから、この測定皿に脚を載せて設けられるベッドも不安定な状態となって使用し難いということがある。
【0008】
この発明は、球面軸受を用いることなく、利用者の体重を比較的高精度に測定することができるとともに、利用者が仰臥する床板体を水平方向に大きくずれ動くことがないよう、安定した状態で支持できるようにした荷重測定用ベッド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、利用者の体重を量ることができる荷重測定用ベッド装置であって、
載置フレームと、
この載置フレームに設けられる荷重測定手段と、
上記載置フレームに上記荷重測定手段によって荷重の測定可能に設けられる床板体を具備し、
上記荷重測定手段は、
上記載置フレームに取付けられるロードセルと、
上記床板体に取付けられるフランンジ及びこのフランジの取付け孔に設けられたラジアル軸受を有するフランジ軸受体と、
上記ロードセルの上記床板体の荷重を受ける自由端に軸線を垂直にして連結される大径軸部及びこの大径軸部に段差部を介して連設されたテーパ軸部を有し、このテーパ軸部が上記ラジアル軸受に挿入支持されて上記段差部で上記載置フレームの荷重を上記ラジアル軸受を介して受けて上記ロードセルに伝達する荷重受け軸と
によって構成されていることを特徴とする荷重測定用ベッド装置にある。
【0010】
上記テーパ軸部の先端部には、このテーパ軸部が上記載置フレームから外れるのを阻止するストッパが設けられることが好ましい。
【0011】
上記載置フレームには、上記床板体を三箇所で支持する3つの荷重測定手段が設けられていることが好ましい。
【0012】
ベースフレームを有し、上記載置フレームは上記ベースフレームに上下駆動機構によって上下動可能に設けられていることが好ましい。
【0013】
上記床板体は、床フレーム及びこの床フレームに載置される床板を有し、上記荷重測定手段は上記床フレームを支持していることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、載置フレームに設けられた荷重測定手段の荷重受け軸が床板体に設けられたフランジ軸受体のラジアル軸受によって支持されているから、床板体は水平方向にずれ動き難い構造となる。しかも、荷重受け軸のテーパ軸部がラジアル軸受によって支持されているから、床板体に加わる荷重に偏りが生じても、その荷重は荷重受け軸のテーパ軸部と大径軸部との段差部に集中し、水平方向に分散し難くいため、床板体に加わる荷重をロードセルによって精密に測定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1はベッド装置の平面図であり、図2は図1に示すベッド装置の側面図である。図2に示すように、上記ベッド装置はベースフレーム1を有する。このベースフレーム1は矩形枠状に形成されていて、その四隅部にはストッパ付のキャスタ2が設けられている。それによって、ベースフレーム1は走行可能となっている。
【0017】
上記ベースフレーム1には上下駆動機構3によって載置フレーム5が上下動可能、つまり高さ調整可能に設けられている。上記上下駆動機構3は、駆動源6を有する。図3(c)に示すように、上記ベースフレーム1の四隅部には連動アーム7の一端が枢着されている。各アーム7の他端は上記載置フレーム5の長手方向両端部に両側内面にそれぞれ枢着されている。載置フレーム5の長手方向の両端部に設けられた左右一対の連動アーム7は連結杆8によって連結されている。
【0018】
一対の連結杆8は連動杆9の両端に連結アーム10によって連結されていて、上記連動杆9は上記駆動源6によって軸方向に進退駆動されるようになっている。上記連動杆9が進退駆動されれば、連結杆8によって連結された各一対の連動アーム7がベースフレーム1に枢着された一端を支点してとして上下駆動されるから、連動アーム7の動きに上記載置フレーム5が連動して上下駆動されるようになっている。
【0019】
上記載置フレーム5は、図2と図3(c)に示すように平行に離間対向した一対の側部材11の長手方向の一端にヘッドボード12、他端にフットボード13が連結されてなる。載置フレーム5には、ヘッドボード12の内面の幅方向両端部の二箇所と、フットボード13の内面の幅方向中央部の1箇所の合計三箇所に下部取付け板15が水平に設けられている。
【0020】
各下部取付け板15上には荷重測定手段16が設けられている。この荷重測定手段16は図5に示すように上記下部取付け板15に一端部が一対のねじ17によって取付け固定されたロードセル18を有する。ロードセル18の他端部は一端部に比べて薄肉に形成されていて、荷重を受けることで弾性的に変形可能な自由端部となっている。
【0021】
この自由端部には図示しない歪ゲージが内蔵されていて、この自由端部が荷重に応じて変形することで、その変形量に応じて上記歪ゲージの抵抗値が変化する。それによって、抵抗値の変化に応じた電気信号を出力するようになっている。
【0022】
各ロードセル18から出力された電気信号は上記載置フレーム5のヘッドボード12側の端部に設けられた制御ボックス19に出力され、この制御ボックス19で荷重に変換されて上記ヘッドボード12に設けられた表示部21に表示される。つまり、3つのロードセル18にそれぞれ加わる荷重の総和が上記表示部21に表示される。
【0023】
図5に示すように、上記ロードセル18の自由端部には荷重受け軸22が軸線を垂直にして取付け固定される。すなわち、荷重受け軸22は大径軸部23と、この大径軸部23の上端に段差部24を介して連設されたテーパ軸25及び下端に設けられたおねじ部26を有し、このおねじ部26が上記ロードセル18の自由端部にねじ止め固定されている。
【0024】
上記載置フレーム5には床板体31が上記荷重測定手段16の荷重受け軸22によって支持される。すなわち、床板体31は床フレーム32と、この床フレーム32に載置される床板33からなる。
【0025】
床フレーム32は、図2と図3(b)に示すように、上記載置フレーム5のほぼ同じ長さ寸法の矩形枠状に形成されていて、上記載置フレーム5に設けられた荷重測定手段16と対応する位置、つまり上記下部取付け板15と対応する位置である、長手方向の一端の二箇所と、他端の一箇所にはそれぞれ上部取付け板34が設けられている。
【0026】
各上部取付け板34にはフランジ軸受体35が設けられている。このフランジ軸受体35は図5に示すように、上記上部取付け板34にねじ36によって取付け固定されたフランジ37を有する。このフランジ37には取付け孔38が形成されている。この取付け孔38にはラジアル軸受39が収納保持されている
上記ラジアル軸受39は上記取付け孔38に嵌着される外輪41と、この外輪41の球体42を介して保持される内輪43を有する。この内輪43にはストレートブッシュ44が嵌着されている。
【0027】
そして、上記床フレーム32は、各荷重測定手段16の上記荷重受け軸22のテーパ軸部25に各フランジ軸受体35に設けられたストレートブッシュ44を装着させることで、上記荷重受け軸22を介して3つのロードセル18によって支持されている。このとき、上記ストレートブッシュ44の下端は上記荷重受け軸22の段差部24に当接する。
【0028】
上記テーパ軸部25の上記ストレートブッシュ44から突出した部分にはカラー46が装着されている。このテーパ軸部25のカラー46が装着された部分は上記上部取付け板34に形成された通孔34aからその上面側に突出していて、その上端部にはストッパ47が固定される。それによって、上記テーパ軸部25は上記上部取付け板34の通孔34aから抜出不能となっている。
【0029】
上記床板33は図3(a)に示すように互いに回動可能に連結された複数枚の床板部に分割されている。この実施の形態では5枚の床板部33a〜33eに分割されている。中央に位置する床部33cは上記床フレーム32に固定され、他の床部33a,33b,33d,33eは回動可能となっている。
【0030】
上記載置フレーム5には図示しない起伏駆動機構が設けられていて、この起伏駆動機構によって上記床フレーム32に固定されていない床板部33a〜33eを起伏させることができるようになっている。つまり、床板33上に載置される図示しないマットレス上に仰臥した利用者の上半身を起こしたり、下半身の脚の部分を上昇させるなどのことができるようになっている。
【0031】
このような構成のベッド装置によれば、床板33上に利用者が仰臥すると、この利用者の体重は床フレーム32を支持した3つの荷重測定手段16の荷重受け軸22を介してロードセル18に伝達される。それによって、各ロードセル18の自由端部が荷重に応じて歪み、その歪に応じて生じる歪ゲージの抵抗値の変化によって利用者の体重が表示部21に表示される。
【0032】
床板33を介して床フレーム32に加わる利用者の荷重は、上記荷重測定手段16のフランジ軸受体35に支持された荷重受け軸22を介してロードセル18の自由端に伝達される。
【0033】
上記荷重受け軸22は大径軸部23及びこの大径軸部23に段差部24を介して連設されたテーパ軸部25を有し、このテーパ軸部25が上記フランジ軸受体35のラジアル軸受39にストレートブッシュ44を介して支持されている。つまり、ストレートブッシュ44の下端が上記段差部24に当接して床板体31に加わる荷重がロードセルに伝達されるようになっている。
【0034】
上記床板体31に加わる荷重は、ストレートブッシュ44の下端が当接する段差部24によって集中して受けられる。上記ストレートブッシュ44は荷重受け軸22のテーパ軸部25に挿入されている。
【0035】
そのため、たとえば床板体31に加わる荷重に偏りが生じ、この床板体31が左右方向や前後方向に傾き、床板体31とともにフランジ軸受体35が傾いても、ストレートブッシュ44は段差部24以外の部分が荷重受け軸22に接触することがほとんどない。
【0036】
すなわち、下端が段差部24に当接するストレートブッシュ44は荷重受け軸22のテーパ軸部25に装着されている。そのため、ストレートブッシュ44は、テーパ軸部25の下端である、上記段差部24以外の箇所は荷重受け軸22に接触しないから、その接触部分に床板体31の荷重が集中する。
【0037】
つまり、床板体31に加わる荷重は、床板体31に加わる荷重が偏ることで傾きが生じるなどしても、フランジ軸受体35に支持されたストレートブッシュ44の下端と段差部24との接触部分によって集中的に受けられる。それによって、床板体31に加わる荷重は水平方向に分散し難くなって、ロードセル18に垂直に加わり易くなるから、このロードセル18によって荷重を精密に測定することが可能となる。
【0038】
床板体31はフランジ軸受体35を介して荷重測定手段16の荷重受け軸22によって連結されている。そのため、床板体31が水平方向に自由に動くのが制限されるから、床板体31を球面軸受けによって支持した場合のように、支持状態が不安定になって使い難いということがない。
【0039】
すなわち、床板体31を球面軸受に代わり、この床板体31の水平方向の動きを制限することができるラジアル軸受39を備えたフランジ軸受体35によって支持する構造としても、上記床板体31に加わる荷重を球面軸受と同じように、段差部24とストレートブッシュ44の接触部に集中させて受けることができるから、体重の測定精度が低下するのを防止できる。
【0040】
上記床板体31の床フレーム32は、載置フレーム5の三箇所に設けられた荷重測定手段16の荷重受け軸22によって支持されている。つまり、床フレーム32は3点支持構造となっている。
【0041】
そのため、床フレーム32の製作時に、溶接の熱影響や組み立て精度の低下などで床フレーム32に歪が生じていても、3点支持であるためにその歪に影響されることなく、水平に支持することが可能となる。つまり、床フレーム32の三箇所の荷重測定手段16による支持高さを同じにして支持することができる。
【0042】
そのため、水平に支持された床フレーム32に荷重が垂直に加われば、各荷重測定手段16のロードセル18に水平方向の分力が生じることがないから、そのことによっても荷重の測定精度を向上させることができる。
【0043】
すなわち、床フレーム32を4点支持にすると、床フレーム32にわずかな歪があっても、この床フレーム32の4箇所の支持高さを同じにできなくなるが、3箇所であれば、そのようなことがないから、荷重の測定精度を向上させることができる。
【0044】
上記一実施の形態では、ラジアル軸受体とテーパ軸部との間にストレートブッシュを介在させたが、ラジアル軸受体の内輪に上記テーパ軸部を直接支持させるようにしても差し支えない。その場合、上記内輪の下端が荷重受け軸22の段差部24に当接し、その当接部分で床板体の荷重を受けることになる。
【0045】
また、ベッド装置として載置フレームが上下駆動される構成を挙げたが、載置フレームを上下駆動させない構造のベッド装置であっても、この発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の一実施の形態を示すベッド装置の平面図。
【図2】図1に示すベッド装置の正面図。
【図3】(a)は床板体の床板の平面図、(b)は床板体の床フレームの平面図、図3(c)はベースフレームに設けられた載置フレームの平面図。
【図4】ベッド装置の一端部を拡大して示す正面図。
【図5】床フレームと荷重測定手段との連結部分の拡大図。
【符号の説明】
【0047】
5…載置フレーム、16…荷重測定手段、18…ロードセル、22…荷重受け軸、23…大径軸部、24…段差部、25…テーパ軸部、31…床板体、32…床フレーム、33…床板、35…フランジ軸受体、38…取付け孔、39…ラジアル軸受。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の体重を量ることができる荷重測定用ベッド装置であって、
載置フレームと、
この載置フレームに設けられる荷重測定手段と、
上記載置フレームに上記荷重測定手段によって荷重の測定可能に設けられる床板体を具備し、
上記荷重測定手段は、
上記載置フレームに取付けられるロードセルと、
上記床板体に取付けられるフランンジ及びこのフランジの取付け孔に設けられたラジアル軸受を有するフランジ軸受体と、
上記ロードセルの上記床板体の荷重を受ける自由端に軸線を垂直にして連結される大径軸部及びこの大径軸部に段差部を介して連設されたテーパ軸部を有し、このテーパ軸部が上記ラジアル軸受に挿入支持されて上記段差部で上記載置フレームの荷重を上記ラジアル軸受を介して受けて上記ロードセルに伝達する荷重受け軸と
によって構成されていることを特徴とする荷重測定用ベッド装置。
【請求項2】
上記テーパ軸部の先端部には、このテーパ軸部が上記載置フレームから外れるのを阻止するストッパが設けられることを特徴とする請求項1記載の荷重測定用ベッド装置。
【請求項3】
上記載置フレームには、上記床板体を三箇所で支持する3つの荷重測定手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載の荷重測定用ベッド装置。
【請求項4】
ベースフレームを有し、上記載置フレームは上記ベースフレームに上下駆動機構によって上下動可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の荷重測定用ベッド装置。
【請求項5】
上記床板体は、床フレーム及びこの床フレームに載置される床板を有し、上記荷重測定手段は上記床フレームを支持していることを特徴とする請求項1記載のベッド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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