説明

荷電粒子に露出される表面の保護

【課題】極紫外(EUV)放射線を反射する光学システムに使用される多層ミラーの保護およびフォトリソグラフィチャンバ内に伝達されるEUVが通る表面の保護を行う方法および装置を提供することにある。
【解決手段】EUV放射線は、EUV放射線および荷電粒子の両方を放出するプラズマから発生される。チャンバには有機分子が供給され、該有機分子はEUV放射線と相互作用して、ミラー表面上に炭質デポジットのコーティングを形成する。プラズマから放出された荷電粒子はデポジットと衝突して、ミラー表面からデポジットをスパッタリングする。ミラー表面上へのデポジットのデポジション速度およびミラー表面からのデポジットの除去速度の少なくとも一方を制御することにより、コーティングの厚さが能動的に制御され、ミラー表面上への荷電粒子の直接衝突が防止されかつコーティングの形成によるミラー表面の反射率の低下を最小限にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高荷電粒子に露出される表面の保護技術に関する。本発明は、極紫外(extreme ultra violet:EUV)放射線を反射する光学システムに使用される多層ミラーの保護、およびEUVを通過させてフォトリソグラフィチャンバ内に伝達する表面の保護に特定用途を見出すものである。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィは、半導体デバイス製造における重要な加工工程である。概略的に、フォトリソグラフィでは、回路デザインは、ウェーハ表面上にデポジットされたフォトレジスト層上にイメージングされたパターンを通してウェーハに転写される。次にウェーハは、新しいデザインがウェーハ表面に転写される前に、種々のエッチング加工およびデポジション加工を受ける。この周期的加工が続けられて、半導体デバイスの多層が形成される。
【0003】
半導体デバイスの製造に使用されるリソグラフィック加工では、光学的分解能を向上させてデバイスの非常に小さい特徴を正確に再現できるようにするため、非常に短い波長の放射線を使用するのが有利である。従来技術では種々の波長の単色可視光が使用されており、より最近では、248nm、193nmおよび157nmを含むディープ紫外(deep ultra violet:DUV)範囲の放射線が使用されている。光学的分解能をより改善するため、13.5nmの放射線を含む極紫外(EUV)範囲の放射線を使用することが提案されている。
【0004】
リソグラフィにEUV放射線を使用することは、例えば、リソグラフィツールの光学素子およびツールにEUV放射線を供給する装置の両方に、多くの新たな困難性をもたらしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1つの問題は、EUV放射線は、大気圧での殆どのガスを通る透過性が低く、従って、リソグラフィ加工に包含される多くの機械的機器、電気的機器および光学的機器を高純度真空環境内で作動させなくてはならない。他の問題は、DUVリソグラフィの放射線の投影およびフォーカシング(合焦)に使用されるレンズ材料、例えばフッ化カルシウムは、EUV放射線には適していないため、通常、透過性光学デバイス(レンズ)の代わりに反射性光学デバイス(ミラー)を使用する必要がある。これらのミラーは、一般に、モリブデンおよびシリコンの交互層(各層の厚さは、一般に5−10nm)から形成され、かつ一般にシリコンの層またはルテニウムまたは他の金属種の層に終端している。
【0006】
EUV放射線源は、一般に、リソグラフィツールに隣接して配置されるチャンバ内に収容される。放射線源を超清浄リソグラフィツールから隔絶するため、窓(該窓を通ってEUV放射線がリソグラフィツール内に透過される)として、しばしばスペクトル純度フィルタ(spectral purity filter:SPF)が使用される。一般に、SPFは、通常、ジルコニウム、ニッケルまたはシリコンから形成された非常に薄い箔からなる。
【0007】
EUV放射線源は、錫、リチウムまたはキセノンの励起に基いて定められる。例えば、EUV源にキセノンが使用される場合には、静電放電によりキセノンを誘発するか、強レーザ照射によりキセノンプラズマが発生される。プラズマ内の高荷電キセノン種Xe+10のXe+11への電子遷移により、EUV放射線が発生される。従って、EUV放射線源はまた、高荷電粒子源としても機能する。これらの粒子は、チャンバ内に配置された多層ミラーおよびSPFの表面上に衝突して、これらの表面から原子をスパッタリングさせる。これによりミラーの反射率が低下され、従ってリソグラフィツールに透過されるEUV放射線の強度が低下される。チャンバからのEUV放射線出力の強度が低下すると、EUV放射線を用いたリソグラフィを受けるウェーハ上に形成されるパターンのクオリティに変動が生じる。これらのコンポーネンツは高価であるため、これらを交換することは大抵好ましいことではなく、多くの場合全く実用的でない。また、SPFに「孔」が発生すると、リソグラフィツールの汚染が引起こされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、荷電粒子の衝突による損傷から表面を保護する方法であって、表面が荷電粒子に露出されている間に、表面上に炭質デポジットのコーティングを形成するカーボン源を表面に供給する段階と、表面上へのデポジットのデポジション速度およびデポジット上への荷電粒子の衝突速度の少なくとも一方を制御して、コーティングの厚さを能動的に制御する段階とを有する方法が提供される。
【0009】
表面上へのデポジットのデポジション速度およびその後の表面からのデポジットの除去速度(除去は、デポジット上への荷電粒子の衝突により行われる)の少なくとも一方を制御することにより、コーティングの厚さは所定厚さまたはほぼ所定厚さに能動的に制御され、これにより、表面上への荷電粒子の直接的衝突が防止されかつ表面の反射率または透過性の低下(低下はコーティングの形成により引起こされる)を最小限にできる。また、カーボン源の計画的な供給により、ミラー環境内に必然的に存在するバックグラウンドカーボン含有不純物の効果を消滅させることができる。このアプローチの他の利益は、このアプローチが炭質種の高ターンオーバー速度を有し、従って炭質種を、より高い反応性を有しかつ容易に除去できる化学的状態に維持できる。このことが行われない場合には、炭質デポジットのエージングにより炭質デポジットが黒鉛化し、光学的に有害で除去不可能な非常に安定した表面となってしまう。
【0010】
表面でのカーボン源の分圧を制御することにより、デポジション速度を制御する1つの機構を提供できる。カーボン源の分圧を調節することにより、炭質デポジットの定常状態の有効範囲を許容レベルで調整できる。分圧は、表面へのカーボン源の供給速度を制御することにより、便利に制御できる。例えば水晶発振器または表面音波デバイスのような薄膜の形成に感応する適当なセンサを用いてコーティングの厚さをモニタリングすることにより、表面に供給されるカーボン源の流量を調節する質量流量コントローラに信号を供給できる。
【0011】
衝突速度は、コーティングへの荷電粒子の供給速度を制御することにより制御できる。例えば、デポジットと衝突させる前に、荷電粒子をガスカーテンに通すことにより、幾分かの荷電粒子を選択的に中和できる。この場合、一定分圧のカーボン源と可変圧力のガスカーテンとを組合せて、コーティングの厚さを制御することができる。ガスカーテンの圧力は、カーボン源の分圧と同様な態様で制御できる。任意であるが、バッファガスを供給して、表面の近傍の圧力を一定に維持できる。バッファガスとカーボン源との混合物の最大許容全圧力は、ガス状種のEUV放射線の吸収断面に基いて定まり、一般に0.1ミリバールより低い。
【0012】
荷電粒子は、表面を収容するチャンバ内に配置される荷電粒子源から放出されるのが好ましい。好ましい実施形態では、荷電粒子源は、電磁放射線好ましくはEUV放射線を放出するためのチャンバ内で発生されるプラズマであり、この構成は、カーボン源と相互作用して炭質デポジットを形成する表面からの2次電子の放出を刺激することにより、表面上への炭質デポジットのデポジションを促進する。プラズマ源として、多数の異なる物質(例えば、リチウム、錫およびキセノンのうちの1つ)を使用できる。
【0013】
表面は、チャンバからEUV放射線を放出する窓の表面、一般に例えばジルコニウム、ニッケルまたはシリコンから形成された箔で形成できる。或いは、表面は、多層ミラーの表面のような反射性表面で形成できる。このようなコンポーネンツの表面を実質的に一定厚さに維持することにより、窓の透過性およびミラーの反射率を実質的に一定レベルに維持でき、これにより、チャンバから放出されるEUV放射線の実質的に一定の強度を維持し、従ってリソグラフィツール用の安定したEUV放射線源を形成できる。
【0014】
カーボン源は、有機分子源が好ましい。カーボン源の選択は、表面上への解離化学吸着の確率および速度、2次電子による活性化のための充分な断面、重合に対する安定性、およびEUV放射線に対する気相吸着断面を含む多くの基準により決定される。カーボン源の例として、一酸化炭素、アルカン、アルキン、アルケン、アリール酸素化物、芳香族炭化水素、窒素含有種およびハロゲン含有種がある。
【0015】
第二態様では、本発明は、極紫外(EUV)放射線および荷電粒子が発生されるチャンバ内に配置された表面を保護する方法であって、EUV放射線の存在下で前記表面上に炭質デポジットのコーティングを形成するカーボン源をチャンバに供給する段階と、コーティングに荷電粒子を衝突させて表面からデポジットを除去する段階と、表面上へのデポジットのデポジション速度およびデポジット上への荷電粒子の衝突速度の少なくとも一方を制御して、コーティングの厚さを所定値またはほぼ所定値に維持する段階とを有する方法を提供する。
【0016】
第三態様では、本発明は、荷電粒子の衝突による損傷から表面を保護する装置であって、表面が荷電粒子に露出されている間に、表面上に炭質デポジットのコーティングを形成するカーボン源を表面に供給する手段と、表面上へのデポジットのデポジション速度およびデポジット上への荷電粒子の衝突速度の少なくとも一方を制御して、コーティングの厚さを能動的に制御する手段とを有する装置を提供する。
【0017】
第四態様では、極紫外(EUV)放射線を発生させる装置であって、窓を備えたチャンバを有し、EUV放射線が前記窓を通してチャンバから出力され、チャンバ内に配置されるEUV放射線および荷電粒子の源と、前記源からのEUV放射線を窓に向けてフォーカシングするための、チャンバ内に配置された少なくとも1つの反射面と、EUV放射線の存在下で前記少なくとも1つの反射面上に炭質デポジットのコーティングを形成するカーボン源をチャンバに供給する手段と、反射面上へのデポジットのデポジション速度およびデポジット上への荷電粒子の衝突速度の少なくとも一方を制御して、コーティングの厚さを所定値またはほぼ所定値に維持する手段とを有する装置を提供する。
【0018】
本発明の方法の態様に関連して上述した特徴は、装置の態様にも等しく適用でき、逆に装置の特徴も方法の特徴に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、極紫外(EUV)放射線を発生させる装置の一例を概略的に示す添付図面を参照して、本発明を例示する一実施形態を更に説明する。装置は、EUV放射線源12を収容するチャンバ10を有している。放射線源12は、放電プラズマ源またはレーザ生成プラズマ源で構成できる。放電プラズマ源では、2つの電極間の媒体中に放電が形成され、この放電から生じたプラズマがEUV放射線を放出する。レーザ生成プラズマ源では、ターゲットは、該ターゲット上にフォーカシングされた強レーザビームによりプラズマに変換される。キセノンプラズマが13.5nmの波長でEUV放射線を放射するので、放電プラズマ源およびレーザ生成プラズマ源のターゲットに適した媒体はキセノンである。しかしながら、ターゲット材料としてリチウムまたは錫等の他の物質を使用することもでき、従って本発明は、EUV放射線の発生に使用される特定物質または機構に限定されるものではない。
【0020】
チャンバ10内で発生されたEUV放射線(参照番号14で示す)は、チャンバ10に光学的にリンクすなわち連結された他のチャンバ16に供給され、この供給は、例えばチャンバ10、16の壁に形成された1つ以上の窓18を介して行われる。チャンバ16はリソグラフィツールを収容しており、該リソグラフィツールは、半導体ウェーハのような基板の表面上にフォトレジストを選択的に照射すべく、マスクまたはレチクル上にEUV放射線ビームを放出する。源12により発生されたEUV放射線を窓18の方向に向けるため、チャンバ10は、多層ミラー(multi-layer mirrors:MLM)20により形成される複数の反射面を収容している。MLM20は複数の層を有し、各層は、底から順に、モリブデンの第一層とシリコンの第二層とからなる。MLM20の酸化抵抗を高めると同時に、MLM20上に入射する実質的に全てのEUVを透過させるため、各MLM20の上面上には、一般にルテニウムから形成される金属層が形成される。窓18はスペクトル純度フィルタ(SPF)により形成され、該SPFは、一般にジルコニウム、ニッケルまたはシリコンから形成された非常に薄い箔からなり、EUV放射線をチャンバ16内に透過させると同時に、汚染物質がチャンバ10からリソグラフィツールチャンバ16内に入ることを防止する。
【0021】
殆どのガスを通るEUV放射線の透過性が低いため、チャンバ10、16内に真空を発生させるための真空ポンピングシステム(図示せず)が設けられている。両チャンバ内に多種類のガスおよび汚染物質が存在する虞れがあることを考慮して各チャンバのポンピングシステムには、例えば、荒引きポンプにより支援されたターボ分子ポンプのような低温真空ポンプおよび移送ポンプの両ポンプを設けることができる。
【0022】
EUV放射線源12は、荷電粒子源で構成することもできる。例えばEUV源としてキセノンプラズマが使用される場合には、EUV源からXe+10イオンを放出させることができる。これらのイオンはSPF18の表面上およびチャンバ10内に配置されたMLM20の表面上に衝突して、これらの表面から原子をスパッタリングさせることができる。スパッタリングを続けることが許容されるならば、これによりMLM20の反射率が低下され、従ってチャンバ16に透過されるEUV放射線の強度が低下されかつSPF18に「孔」が発生して、チャンバ16の汚染が引起こされる。
【0023】
EUV放射線の存在下で、SPF18およびMLM20の表面内から2次電子が放出され、該2次電子は前記表面上に存在する種と相互作用する。より詳しくは、吸着された炭化水素汚染物質のクラッキングにより、SPF18およびMLM20に付着するグラファイト形カーボン層が形成される。例えば、CXYの一般式をもつ炭化水素は、EUV放射線の存在下で、次式(1)に従って解離する。

CXHY+e-→CXHY-1+H(a)+e-→CXHY-2+H(a)+e-→→xC+yH(a) (1)

ここで、xは、SPF18およびMLM20の表面上のCのデポジション(吸着)量である。
【0024】
SPF18およびMLM20の表面上のカーボンの層は、通常は好ましくないことは明らかである。すなわち、SPF18の表面上にカーボンコーティングが存在するとSPF18の透過性を低下させ、一方、MLM20の表面上のカーボンコーティングはMLM20の反射率を低下させる。しかしながら、Xe+10のような高荷電イオンが存在する場合には、装置のこれらのコンポーネンツの表面上に形成されたカーボンコーティングが、イオンとコンポーネンツの表面との衝突によるスパッタリングからこれらの表面を保護するように機能する。この観点から、EUV放射線の下でのSPF18およびMLM20の表面上の炭質デポジットの制御されたデポジションを行うカーボン源が、供給源22からチャンバ10内に導入される。カーボン源の計画的な供給により、チャンバ10内に必然的に存在するバックグラウンドカーボン含有不純物の効果を消滅させることができる。
【0025】
カーボン源は、一酸化炭素、アルキン、アルケン、アリール酸素化物、芳香族炭化水素、窒素含有種およびハロゲン含有種からなる群から選択するのが好ましい。適当な酸素化物(oxygenates)の例として、アルコール、エステルおよびエーテルがある。適当な窒素含有化合物の例として、アミン、ピロールおよびその誘導体、ピリジンおよびその誘導体がある。適当なハロゲン含有化合物の例として、飽和アリール水素化物、不飽和アリール水素化物、飽和アルキル水素化物および不飽和アルキル水素化物がある。好ましい一例では、カーボン源はエチン(C22)である。
【0026】
チャンバ内のカーボン源の分圧、従ってSPF18およびMLM20の表面上の炭質のデポジション速度を制御することにより、炭質デポジションと、EUV放射線源12から放射されるイオンとの衝突による炭質デポジットの除去との間に平衡が達成され、この後は、コーティング厚さは実質的に一定に維持される。コーティングの厚さは、例えば水晶発振器または表面音波デバイスのように1つの表面上のコーティングの形成に感応するセンサ24を用いてモニタリングされ、センサ24は、カーボン源およびEUV放射線にもMLM20と同様な露出が得られるように戦略的に配置される。センサ24は、該センサ上に形成されたコーティングの厚さを表示する信号をコントローラ26に出力し、該コントローラ26は、受信した信号に応答して、制御信号を、カーボン供給源22から入口30を介してチャンバ10にカーボン源を供給する流量を制御する質量流量コントローラ28に出力する。チャンバ10へのカーボン源の供給速度を変えることにより、チャンバ10内のカーボン源の分圧が入念に制御され、これにより、MLM20およびSPF18上のコーティングの形成速度を制御して、コーティングの厚さを所定値またはほぼ所定値に維持できる。
【0027】
SPF18およびMLM20の表面上に炭質デポジットが形成される速度を制御する代わりに、またはこの制御に加えて、装置は、EUV放射線源12から放出されるイオンによりこれらの表面からデポジットが除去される速度を制御するように構成できる。例えば、EUV放射線源12とMLM20との間にガスカーテンを形成すべく、ガス源からガスをチャンバ10内に導入できる。例えば、ガス供給源22は、ガスカーテンを形成するためのガス源に置換できる。EUV放射線源12から放射されるイオンの幾分かはガスカーテン中のガスと衝突して中和され、これによりイオンがコーティングに衝突する量が低減される。源から放出されるEUV放射線がガスにより吸収されてしまうため、比較的濃密なガスカーテンは好ましくなく、比較的一定のコーティング厚さを維持するには可変の比較的低密度のガスカーテンが有益である。カーボン源の供給速度の制御と同様に、ガスカーテンを形成するガスの供給速度は、センサ24上に形成されるコーティングの厚さに応答してコントローラ26から出力される信号を用いて、質量流量コントローラ28により制御される。供給源22を、ガスカーテンを形成するガス源に置換するのではなく、ガスカーテン用ガス供給源を、別の入口を介してガスをチャンバ内に供給する供給源22に対向または隣接して設けることができ、この場合、コントローラ26は、ガスカーテンを形成するガスの供給速度を制御する制御信号を別の質量流量コントローラに供給する。
【0028】
要約するならば、極紫外(EUV)放射線に露出されるチャンバ内に配置されるミラーの表面の保護方法を説明した。EUV放射線は、EUV放射線および荷電粒子の両方を放出するプラズマから発生される。チャンバ内には有機分子が供給され、該有機分子はEUV放射線と相互作用して、ミラー表面上に炭質デポジットのコーティングを形成する。プラズマから放出される荷電粒子はデポジットに衝突して、デポジットをミラー表面からスパッタリングする。ミラー表面上のデポジットのデポジション速度およびミラー表面からのデポジットの除去速度の少なくとも一方を制御することにより、コーティングの厚さを能動的に制御して、荷電粒子がミラー表面に直接的に衝突することを防止し、かつコーティングの形成によるミラー表面の反射率の低下を最小限にする。本発明の方法はまた、チャンバからのEUV放射線を透過させるのに使用される窓の表面を保護するのにも適している。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】添付図面は、極紫外(EUV)放射線を発生する装置の一例を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子の衝突による損傷から表面を保護する方法において、表面が荷電粒子に露出されている間に、表面上に炭質デポジットのコーティングを形成するカーボン源を表面に供給する段階と、表面上へのデポジットのデポジション速度およびデポジット上への荷電粒子の衝突速度の少なくとも一方を制御して、コーティングの厚さを能動的に制御する段階とを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記デポジション速度は、表面でのカーボン源の分圧を制御することにより制御されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記カーボン源の分圧は、表面へのカーボン源の供給速度を制御することにより制御されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記コーティングの厚さはモニタリングされ、カーボン源の分圧はコーティングの厚さに基いて変えられることを特徴とする請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
前記カーボン源は有機分子源であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記カーボン源は、一酸化炭素、アルカン、アルキン、アルケン、アリール酸素化物、芳香族炭化水素、窒素含有種およびハロゲン含有種からなる群から選択されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記酸素化物は、アルコール、エステルおよびエーテルを含むことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記窒素含有化合物は、アミン、ピロールおよびその誘導体、ピリジンおよびその誘導体を含むことを特徴とする請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
前記ハロゲン含有化合物は、飽和アリール水素化物、不飽和アリール水素化物、飽和アルキル水素化物および不飽和アルキル水素化物を含むことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記衝突速度は、コーティングへの荷電粒子の供給速度を制御することにより制御されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記荷電粒子の供給速度は、デポジットに衝突する前に荷電粒子の幾分かを選択的に中和することにより制御されることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記荷電粒子は、デポジットに衝突する前に荷電粒子をガスに通すことにより選択的に中和されることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記荷電粒子は、前記表面を収容するハウジング内に配置された荷電粒子源から放出されることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記荷電粒子源は、チャンバ内で発生されるプラズマであることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記荷電粒子源により、前記表面上への炭質デポジットのデポジションを促進する電磁放射線も発生されることを特徴とする請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
前記電磁放射線は極紫外放射線であることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記表面は、チャンバからEUV放射線を放出させる窓の表面であることを特徴とする請求項13乃至16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記表面は、反射面であることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記反射面は多層ミラーの表面であることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記ミラーは複数の層からなり、各層は、モリブデンの第一層と、シリコンの第二層とを有することを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
極紫外(EUV)放射線および荷電粒子が発生されるチャンバ内に配置された表面を保護する方法において、EUV放射線の存在下で前記表面上に炭質デポジットのコーティングを形成するカーボン源をチャンバに供給する段階と、コーティングに荷電粒子を衝突させて表面からデポジットを除去する段階と、表面上へのデポジットのデポジション速度およびデポジット上への荷電粒子の衝突速度の少なくとも一方を制御して、コーティングの厚さを所定値またはほぼ所定値に維持する段階とを有することを特徴とする方法。
【請求項22】
荷電粒子の衝突による損傷から表面を保護する装置において、表面が荷電粒子に露出されている間に、表面上に炭質デポジットのコーティングを形成するカーボン源を表面に供給する手段と、表面上へのデポジットのデポジション速度およびデポジット上への荷電粒子の衝突速度の少なくとも一方を制御して、コーティングの厚さを能動的に制御する手段とを有することを特徴とする装置。
【請求項23】
前記制御手段は、表面でのカーボン源の分圧を制御する手段を有していることを特徴とする請求項22記載の装置。
【請求項24】
前記分圧制御手段は、反射面へのカーボン源の供給速度を制御する手段を有していることを特徴とする請求項23記載の装置。
【請求項25】
前記コーティングの厚さをモニタリングし、モニタリングした厚さを表す信号を分圧制御手段に出力する手段を有し、分圧制御手段は、モニタリングした厚さに基いて、表面でのカーボン源の分圧を調節するように構成されていることを特徴とする請求項23または24記載の装置。
【請求項26】
前記カーボン源は有機分子源であることを特徴とする請求項22乃至25のいずれか1項記載の装置。
【請求項27】
前記カーボン源は、一酸化炭素、アルカン、アルキン、アルケン、アリール酸素化物、芳香族炭化水素、窒素含有種およびハロゲン含有種からなる群から選択されることを特徴とする請求項26記載の装置。
【請求項28】
前記酸素化物は、アルコール、エステルおよびエーテルを含むことを特徴とする請求項27記載の装置。
【請求項29】
前記窒素含有化合物は、アミン、ピロールおよびその誘導体、ピリジンおよびその誘導体を含むことを特徴とする請求項27または28記載の装置。
【請求項30】
前記ハロゲン含有化合物は、飽和アリール水素化物、不飽和アリール水素化物、飽和アルキル水素化物および不飽和アルキル水素化物を含むことを特徴とする請求項27乃至29のいずれか1項記載の装置。
【請求項31】
前記表面は、荷電粒子源を収容するチャンバ内に配置されていることを特徴とする請求項22乃至30のいずれか1項記載の装置。
【請求項32】
前記荷電粒子源はプラズマであることを特徴とする請求項31記載の装置。
【請求項33】
前記荷電粒子源は、前記表面上への炭質デポジットのデポジションを促進する電磁放射線源でもあることを特徴とする請求項31または32記載の装置。
【請求項34】
前記電磁放射線は極紫外放射線であることを特徴とする請求項33記載の装置。
【請求項35】
前記表面は、多層ミラーの表面であることを特徴とする請求項22乃至34のいずれか1項記載の装置。
【請求項36】
前記ミラーは複数の層からなり、各層は、モリブデンの第一層と、シリコンの第二層とを有することを特徴とする請求項35記載の装置。
【請求項37】
極紫外(EUV)放射線を発生させる装置において、窓を備えたチャンバを有し、EUV放射線が前記窓を通してチャンバから出力され、チャンバ内に配置されるEUV放射線および荷電粒子の源と、前記源からのEUV放射線を窓に向けてフォーカシングするための、チャンバ内に配置された少なくとも1つの反射面と、EUV放射線の存在下で前記少なくとも1つの反射面上に炭質デポジットのコーティングを形成するカーボン源をチャンバに供給する手段と、反射面上へのデポジットのデポジション速度およびデポジット上への荷電粒子の衝突速度の少なくとも一方を制御して、コーティングの厚さを所定値またはほぼ所定値に維持する手段とを有することを特徴とする装置。

【図1】
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【公表番号】特表2008−522399(P2008−522399A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542076(P2007−542076)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003918
【国際公開番号】WO2006/056730
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(507261364)エドワーズ リミテッド (85)
【Fターム(参考)】