説明

荷電粒子測定装置

【課題】 バックグラウンド計数値を低く抑制し、極低レベルの荷電粒子を効率よく測定でき、高感度を長期間維持できる荷電粒子測定装置を提供する。
【解決手段】 測定試料トレイ5と、半導体検出器2と、密閉ドア7を有する測定チェンバー1と、トレイ5および半導体検出器2の外側に設置される上部電極4a,下部電極4bと、上部電極4a,下部電極4b間に集塵電圧を印加する集塵電源11と、放射性物質を含まない清浄ガスで測定チェンバー1内の空気を置換する清浄ガス供給置換系統9と、測定チェンバー1内の空気および清浄ガスを排気して減圧する真空排気系統8と、図示しない放射線計測回路とからなり、測定に先立ち清浄ガスで測定チェンバー1内の空気を置換し、測定チェンバー1内を排気して減圧し、上部電極4a,下部電極4bに集塵電圧を印加して測定チェンバー1内に持ち込まれた荷電粒子放出核種および浮遊塵埃を電気集塵する荷電粒子測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は.低レベルα線などの荷電粒子を測定する荷電粒子測定装置に係り、特に、種々の材料中の低レベルα線などの荷電粒子の定量分析に好適な荷電粒子測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子のうち特にα線測定を対象とした従来の荷電粒子測定装置には、減圧した測定チェンバー内に半導体検出器および測定試料を配置し、測定試料から放出されるα線などの荷電粒子放出量を半導体検出器で測定する低レベルα線測定装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この低レベルα線測定装置は、密閉ドアを備えた測定チェンバー内に半導体検出器と対向させて測定試料を設置するトレイ(試料皿)を配置し、測定チェンバー内に通ずる排気管を介して接続された真空排気装置およびガス置換装置により真空排気と清浄ガスの供給置換とを設定回数だけ繰り返した後、半導体検出器と接続された前置増幅器,線形増幅器,波高分析器からなる放射線計測回路と、放射線計測回路の出力信号に基づき荷電粒子を定量分析する荷電粒子放出量演算装置とにより荷電粒子放出量を計数する。
【0004】
【特許文献1】特開2003−50279号公報(第4,5頁 図1〜図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
環境試料の放射能分析装置,放出放射能分析装置,半導体産業分野の材料品質管理装置には、極低レベルの荷電粒子測定装置が望まれている。特に、半導体産業分野では、半導体メモリがますます微細になり、α粒子により半導体メモリの蓄積電荷が反転するソフトエラーに対処するため、種々の材料に含まれる極微量の天然α放射性元素が放出する妨害α線の核種同定と低レベルの定量分析が重要になっている。
【0006】
上記従来の半導体検出器方式の低レベルα線測定装置では、測定チェンバー内を清浄なガスで置換し、空気中に含まれる荷電粒子放出核種および荷電粒子放出核種を含む浮遊塵埃を除去している。
【0007】
しかし、密閉ドアの開閉の際に空気が測定チェンバー内に侵入し、荷電粒子放出核種および荷電粒子放出核種を含む浮遊塵埃が測定チェンバーに付着した場合、その除去は煩雑であり、バックグラウンド計数値の低減が困難になる。
【0008】
本発明の課題は、バックグラウンド計数値を低く抑制し、極低レベルの荷電粒子を効率よく測定でき、高感度を長期間維持できる荷電粒子測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、測定試料を載せるトレイ(試料皿)と、測定試料に対向する半導体検出器と、密閉ドアを有しトレイおよび半導体検出器を収納する測定チェンバーと、測定チェンバー内でトレイおよび半導体検出器の外側に設置される上部電極,下部電極と、上部電極,下部電極間に集塵電圧を印加する集塵電源と、放射性物質を含まない清浄ガスで測定チェンバー内の空気を置換する清浄ガス供給置換系統と、測定チェンバー内の空気および清浄ガスを排気して減圧する真空排気系統と、半導体検出器に接続された放射線計測回路とからなり、測定に先立ち放射性物質を含まない清浄ガスで測定チェンバー内の空気を置換し、測定チェンバー内の空気および清浄ガスを排気して減圧し、上部電極,下部電極に集塵電圧を印加して測定チェンバー内に持ち込まれた空気中に含まれる荷電粒子放出核種および荷電粒子放出核種を含む浮遊塵埃を電気集塵する荷電粒子測定装置を提案する。
【0010】
前記荷電粒子測定装置は、試料測定時にトレイ(試料皿)と下部電極との間に設置され下部電極に集塵された荷電粒子放出核種および荷電粒子放出核種を含む浮遊塵埃を遮蔽し、バックグラウンド測定時に半導体検出器とトレイ(試料皿),下部電極との間に設置され測定試料と下部電極に集塵された荷電粒子放出核種および荷電粒子放出核種を含む浮遊塵埃とを遮蔽する遮蔽トレイ(遮蔽板)を備えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バックグラウンド計数値を低く抑制し、極低レベルの荷電粒子を効率よく測定でき、高感度を長期間維持できる荷電粒子測定装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、図1〜図3を参照して、本発明による荷電粒子測定装置の実施例を説明する。本実施例の荷電粒子はα線である。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明による荷電粒子測定装置の実施例1の系統構成を示す図である。
【0014】
本実施例1の荷電粒子測定装置は、測定チェンバー1と、半導体検出器2と、測定試料3を載せるトレイ(試料皿)5と、上部電極4a,下部電極4bと、トレイ(試料皿)5を挿入するスリット6と、密閉ドア7と、排気配管口8a,真空ポンプ8b,真空バルブ8cからなる真空排気系統8と、測定チェンバーガス供給配管口9a,空室ガス供給配管口9b,ガスボンベ9c,測定チェンバー入口バルブ9d,空室入口バルブ9e,圧力調整器9fからなる清浄ガス供給置換系統9と、信号線10と、集塵電源11と、空室(グローブボックス)12と、空室扉13と、グローブ14と、置換ガス放出口15と、遮蔽トレイ(遮蔽板)16とで構成されている。
【0015】
信号線10は、ここでは図示していないが、前置増幅器,線形増幅器,波高分析器からなる放射線計測回路の前置増幅器に半導体検出器2の検出信号を出力する。
【0016】
密閉ドア7を開閉しても外気が測定チェンバー1内に流入しないように、測定チェンバー1には、隣接して空室12を設けてある。
【0017】
空室12は、グローブボックスになっており、測定試料3を入れる空室扉13と、清浄ガスを充填する空室ガス供給配管口9bと、置換ガス放出口15と、密閉ドア7を開閉するとともに測定チェンバー1に測定試料3を設置するためのグローブ14とを備えている。
【0018】
空室12には、密閉ドア7および測定試料3の取扱い状況を視認できるように、アクリルなどの透明または半透明の材料を用いる。
【0019】
清浄ガス供給置換系統9(9a,9b,9c,9d,9e,9f)は、測定チェンバー1および空室12内を清浄ガスすなわち放射性ガスを含まないガスに置換する系統であり、ガスボンベ9cから、圧力調整器9fを介して2つに分岐され、測定チェンバー入口バルブ9dを介して測定チェンバーガス供給配管口9aに接続し,空室入口バルブ9eを介して空室ガス供給配管口9bに接続してある。置換ガスとしては、ここでは窒素ガスを採用している。放射性ガスを含まない清浄ガスであれば、他のガスでもよい。
【0020】
真空排気系統8(8a,8b,8c)は、測定チェンバー1内の半導体検出器2と測定試料3との間にある気体がα線を減衰させないように、測定チェンバー1内の気体を排気してα線を減圧下で測定するための系統である。真空ポンプ8bは、真空バルブ8cを介して測定チェンバー1の排気配管口8aに接続されている。
【0021】
空気中には、ウランの崩壊生成物であるラドンやトリウムの崩壊生成物であるトロンが含まれており、ラドンやトロンから放出されるα線が、大きな妨害放射線となる。
【0022】
置換ガス放出口15を開けて、清浄ガス供給置換系統9(9c,9f,9e,9b)から置換ガスを空室12に流入させると、空室12内にある空気を排除できる。
【0023】
清浄ガス供給置換系統9(9c,9f,9d,9a)から測定チェンバー1内に置換ガスを流入させ、真空排気系統8(8a,8c,8b)で排気すると、測定チェンバー1内を清浄なガスに置換できる。真空排気系統8(8a,8c,8b)で、更に真空排気すると、測定チェンバー1内にわずかに残るラドンやトロンを排出できる。
【0024】
空室12および測定チェンバー1に清浄ガスを満たした状態で密閉ドア7を開閉し、測定試料3を測定チェンバー1内に設置すると、ラドンやトロンなどの荷電粒子放出核種の測定チェンバー1への侵入を抑止できる。測定チェンバー1内にわずかに残った空気を清浄ガスに置換し排気しているので、測定チェンバー1内への荷電粒子放出核種の付着が少なくなり、バックグラウンド計数値を低下させて測定可能な下限値を下げ、測定可能な下限レベルを維持できることになる。
【0025】
図2は、測定チェンバー1内の半導体検出器2と測定試料3を載せたトレイ(試料皿)5と上部電極4a,下部電極4bとの位置関係を示す斜視図である。
【0026】
測定試料3に対向して配置された半導体検出器2からの信号線10は、測定チェンバー1の上部から引き出される。
【0027】
測定試料3を載せたトレイ(試料皿)5をスリット6に挿入する高さを変えると、測定試料3と半導体検出器2との距離を調整できる。
【0028】
試料測定時には、スリット6の最下段に遮蔽トレイ(遮蔽板)16を挿入し、下部電極4bに集塵した塵埃から放出されるα線を遮蔽する。
【0029】
バックグラウンド測定時には、スリット6最上段で半導体検出器2に一番近い位置に遮蔽トレイ(遮蔽板)16を挿入し、測定試料3から放出される荷電粒子を遮蔽する。
【0030】
測定チェンバー1内の半導体検出器2の上部に上部電極4aを設置し、測定チェンバー1の下部に下部電極4bを設置し、図1の集塵電源11から上部電極4aと下部電極4bとの間に印加するようになっている。
【0031】
空気中に含まれるラドンやトロンの崩壊生成物は、崩壊の過程で正電荷を帯びており、崩壊生成物が付着した浮遊塵埃も正電荷を帯びていることが知られている。
【0032】
測定チェンバー1に設けた上部電極4aおよび下部電極4bは、集塵電源11の印加電圧の方向を選択すると、その一方にラドンやトロンの崩壊生成物および浮遊塵埃を捕集できる。
【0033】
スリット6に設置するトレイ(試料皿)5は、測定試料3を測定チェンバー1内で所定位置に保持する他に、測定チェンバー1の下部で負に帯電させた下部電極4bに捕集された荷電粒子放出核種から放出されるα線を遮蔽する役割もある。
【0034】
このように測定チェンバー1の内部に上部電極4a,下部電極4bを配置し電圧を印加すると、わずかに混入した空気中のラドンやトロンの崩壊生成物および崩壊生成物が付着した浮遊塵埃を捕集できる。捕集した荷電粒子放出核種から放出されるα線をトレイ(試料皿)5で遮蔽すれば、バックグラウンド計数値を低減でき、測定可能な下限レベルを下げることができる。
【0035】
図3は、実施例1の荷電粒子測定装置による低レベルα線の測定手順を示すフローチャートである。
≪試料測定≫
ステップ100:測定試料3を空室12内に置いたトレイ(試料皿)5の上に載せ、空室扉13を閉める。
【0036】
ステップ101:空室12内の空気を排除するために、置換ガス放出口15を開け、清浄ガス供給置換系統9(9c,9f,9e,9b)から空室12内に清浄ガスを流し、空室12内の空気を清浄ガスに置換する。
【0037】
ステップ102:密閉ドア7を開けた際に空室12内にわずかにある妨害核種を捕集するために、測定チェンバー1内の上部電極4aと下部電極4bとの間に電圧を印加する。
【0038】
ステップ103:清浄ガス供給置換系統9(9c,9f,9d,9a)から測定チェンバー1に清浄ガスを充填する。
【0039】
ステップ104:密閉ドア7を開け、測定試料3を載せたトレイ(試料皿)5を測定チェンバー1内のスリット6に挿入し、スリット6の最下段に遮蔽トレイ(遮蔽板)16を挿入し、密閉ドア7を閉める。
【0040】
ステップ105:空室12内に流通させている清浄ガスの供給を停止する。
【0041】
ステップ106:密閉ドア7を開けた際にわずかに侵入した空気を排除するために、測定チェンバー1内を清浄ガスに置換する。
【0042】
ステップ107:気体による測定試料3からのα線の減衰を抑制するために、測定チェンバー1内を真空排気系統8(8a,8c,8b)により減圧する。
【0043】
ステップ108:測定チェンバー1内の上部電極4aと下部電極4bとの間に印加している電圧を遮断する。
【0044】
ステップ109:半導体検出器2から出力される信号を信号線10により放射線計測回路の前置増幅器に取り込み、測定試料3のα線を計測する。
≪バックグラウンド測定≫
ステップ120:上記ステップ109の操作の後、遮蔽トレイ(遮蔽板)16を空室12内に置き、空室扉13を閉める。
【0045】
ステップ121:空室12内の空気を排除するために、置換ガス放出口15を開け、清浄ガス供給置換系統9(9c,9f,9e,9b)から空室12内に清浄ガスを流し、空室12内の空気を清浄ガスに置換する。
【0046】
ステップ122:密閉ドア7を開けた際に空室12内にわずかにある妨害核種を捕集するために、測定チェンバー1内の上部電極4aと下部電極4bとの間に電圧を印加する。
【0047】
ステップ123:清浄ガス供給置換系統9(9c,9f,9d,9a)から測定チェンバー1に清浄ガスを充填する。
【0048】
ステップ124:密閉ドア7を開け、遮蔽トレイ(遮蔽板)16を測定チェンバー1内のスリット6の最上段に挿入し、密閉ドア7を閉める。
【0049】
ステップ125:空室12内に流通させている清浄ガスの供給を停止する。
【0050】
ステップ126:密閉ドア7を開けた際にわずかに測定チェンバー1に侵入した空気を排除するために、測定チェンバー1内を清浄ガスに置換する。
【0051】
ステップ127:気体によるα線の減衰を抑制するために、測定チェンバー1内を真空排気系統8(8a,8c,8b)により減圧する。
【0052】
ステップ128:測定チェンバー1内の上部電極4aと下部電極4bとの間に印加している電圧を遮断する。
【0053】
ステップ129:半導体検出器2から出力される信号を信号線10により放射線計測回路の前置増幅器に取り込み、バックグラウンドとなるα線を計測する。
【0054】
実施例1は、α線を測定対象として本発明を説明した。バックグラウンド測定時に用いる遮蔽トレイ(遮蔽板)16の材質を変更すれば、ベータ線などの荷電粒子についても、同様に測定できる。
【0055】
実施例1によれば、空気中に含まれる妨害核種の影響を低減してバックグラウンド計数値を低く抑制し、極低レベルの荷電粒子を効率よく測定でき、高感度を長期間維持できる荷電粒子測定装置が得られる。
【実施例2】
【0056】
実施例1では、作業の便宜や測定試料の測定前汚染の防止などを考慮して、グローブボックス形式の空室12を設けてある。
【0057】
本発明の本質は、測定チェンバー1内に浮遊塵埃を捕集するための上部電極4a,下部電極4bを設置し、さらに、電極4に捕集された塵埃から放出される荷電粒子をバックグラウンド測定時に遮蔽する遮蔽トレイ(遮蔽板)16を設置したことにある。
【0058】
したがって、実施例1の空室12やその清浄ガス供給置換系統9(9e,9b)は、基本的発明の構成には必要ではない。
【0059】
本実施例2は、実施例1から、空室12と、空室扉13と、グローブ14と、置換ガス放出口15と、空室12への清浄ガス供給置換系統9(9e,9b)とを除外した構造である。
【0060】
次に、実施例2の荷電粒子測定装置による低レベルα線の測定手順を説明する。各手順のステップ番号は、実施例1の図3のステップ番号と対応させてある。
≪試料測定≫
ステップ100a:測定試料3を測定チェンバー1内に置いたトレイ(試料皿)5の上に載せ、スリット6の最下段に遮蔽トレイ(遮蔽板)16を挿入し、密閉ドア7を閉める。
【0061】
ステップ101a:測定チェンバー1内の空気を排除するために、測定チェンバー1内を真空排気系統8(8a,8c,8b)により減圧しながら、清浄ガス供給置換系統9(9c,9f,9d,9a)から測定チェンバー1内に清浄ガスを流し、測定チェンバー1内の空気を清浄ガスに置換する。
【0062】
ステップ102a:測定チェンバー1内にわずかにある妨害核種を捕集するために、測定チェンバー1内の上部電極4aと下部電極4bとの間に電圧を印加する。
【0063】
ステップ105a:測定チェンバー1内に流通させている清浄ガスの供給を停止する。
【0064】
ステップ107:気体による測定試料3からのα線の減衰を抑制するために、測定チェンバー1内を真空排気系統8(8a,8c,8b)により減圧する。
【0065】
ステップ108:測定チェンバー1内の上部電極4aと下部電極4bとの間に印加している電圧を遮断する。
【0066】
ステップ109:半導体検出器2から出力される信号を信号線10により放射線計測回路の前置増幅器に取り込み、測定試料3のα線を計測する。
≪バックグラウンド測定≫
ステップ120a:上記ステップ109の操作の後、密閉ドア7を開け、遮蔽トレイ(遮蔽板)16を測定チェンバー1内のスリット6の最上段に挿入し、密閉ドア7を閉める。
【0067】
ステップ121a:測定チェンバー1内の空気を排除するために、測定チェンバー1内を真空排気系統8(8a,8c,8b)により減圧しながら、清浄ガス供給置換系統9(9c,9f,9d,9a)から測定チェンバー1内に清浄ガスを流し、測定チェンバー1内の空気を清浄ガスに置換する。
【0068】
ステップ122a:密閉ドア7を開けた際に測定チェンバー1内にわずかにある妨害核種を捕集するために、測定チェンバー1内の上部電極4aと下部電極4bとの間に電圧を印加する。
【0069】
ステップ125a:測定チェンバー1内に流通させている清浄ガスの供給を停止する。
【0070】
ステップ127:気体によるα線の減衰を抑制するために、測定チェンバー1内を真空排気系統8(8a,8c,8b)により減圧する。
【0071】
ステップ128:測定チェンバー1内の上部電極4aと下部電極4bとの間に印加している電圧を遮断する。
【0072】
ステップ129:半導体検出器2から出力される信号を信号線10により放射線計測回路の前置増幅器に取り込み、バックグラウンドとなるα線を計測する。
【0073】
実施例2においても、バックグラウンド計数値を低く抑制し、極低レベルの荷電粒子を効率よく測定でき、高感度を長期間維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明による荷電粒子測定装置の実施例1の系統構成を示す図である。
【図2】測定チェンバー1内の半導体検出器2と測定試料3を載せたトレイ(試料皿)5と上部電極4a,下部電極4bとの位置関係を示す斜視図である。
【図3】実施例1の荷電粒子測定装置による低レベルα線の測定手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0075】
1 測定チェンバー
2 半導体検出器
3 測定試料
4a 上部電極
4b 下部電極
5 トレイ(試料皿)
6 スリット
7 密閉ドア
8 真空排気系統
8a 排気配管口
8b 真空ポンプ
8c 真空バルブ
9 清浄ガス供給置換系統
9a 測定チェンバーガス供給配管口
9b 空室ガス供給配管口
9c ガスボンベ
9d 測定チェンバー入口バルブ
9e 空室入口バルブ
9f 圧力調整器
10 信号線
11 集塵電源
12 空室(グローブボックス)
13 空室扉
14 グローブ
15 置換ガス放出口
16 遮蔽トレイ(遮蔽板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定試料を載せるトレイ(試料皿)と、
前記測定試料に対向する半導体検出器と、
密閉ドアを有し前記トレイおよび前記半導体検出器を収納する測定チェンバーと、
前記測定チェンバー内で前記トレイおよび前記半導体検出器の外側に設置される上部電極,下部電極と、
前記上部電極,下部電極間に集塵電圧を印加する集塵電源と、
放射性物質を含まない清浄ガスで前記測定チェンバー内の空気を置換する清浄ガス供給置換系統と、
前記測定チェンバー内の空気および清浄ガスを排気して減圧する真空排気系統と、
前記半導体検出器に接続された放射線計測回路とからなり、
測定に先立ち放射性物質を含まない清浄ガスで前記測定チェンバー内の空気を置換し、前記測定チェンバー内の空気および清浄ガスを排気して減圧し、前記上部電極,下部電極に集塵電圧を印加して前記測定チェンバー内に持ち込まれた空気中に含まれる荷電粒子放出核種および荷電粒子放出核種を含む浮遊塵埃を電気集塵することを特徴とする荷電粒子測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子測定装置において、
試料測定時に前記トレイ(試料皿)と前記下部電極との間に設置され前記下部電極に集塵された荷電粒子放出核種および荷電粒子放出核種を含む浮遊塵埃を遮蔽し、バックグラウンド測定時に前記半導体検出器と前記トレイ(試料皿),前記下部電極との間に設置され前記測定試料と前記下部電極に集塵された荷電粒子放出核種および荷電粒子放出核種を含む浮遊塵埃とを遮蔽する遮蔽トレイ(遮蔽板)を備えたことを特徴とする荷電粒子測定装置。
【請求項3】
測定試料を載せるトレイ(試料皿)と、
前記測定試料に対向する半導体検出器と、
密閉ドアを有し前記トレイおよび前記半導体検出器を収納する測定チェンバーと、
少なくとも前記密閉ドアを覆う内部空間を有する空室(グローブボックス)と、
前記測定チェンバー内で前記トレイおよび前記半導体検出器の外側に設置される上部電極,下部電極と、
前記上部電極,下部電極間に集塵電圧を印加する集塵電源と、
放射性物質を含まない清浄ガスで前記空室および前記測定チェンバー内の空気を置換する清浄ガス供給置換系統と、
前記測定チェンバー内の空気および清浄ガスを排気して減圧する真空排気系統と、
前記半導体検出器に接続された放射線計測回路とからなり、
測定に先立ち放射性物質を含まない清浄ガスで前記測定チェンバー内の空気を置換し、前記測定チェンバー内の空気および清浄ガスを排気して減圧し、前記上部電極,下部電極に集塵電圧を印加して前記測定チェンバー内に持ち込まれた空気中に含まれる荷電粒子放出核種および荷電粒子放出核種を含む浮遊塵埃を電気集塵することを特徴とする荷電粒子測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の荷電粒子測定装置において、
試料測定時に前記トレイ(試料皿)と前記下部電極との間に設置され前記下部電極に集塵された荷電粒子放出核種および荷電粒子放出核種を含む浮遊塵埃を遮蔽し、バックグラウンド測定時に前記半導体検出器と前記トレイ(試料皿),前記下部電極との間に設置され前記測定試料と前記下部電極に集塵された荷電粒子放出核種および荷電粒子放出核種を含む浮遊塵埃とを遮蔽する遮蔽トレイ(遮蔽板)を備えたことを特徴とする荷電粒子測定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の荷電粒子測定装置の運転方法であって、
測定試料をトレイ(試料皿)の上に載せ下部電極の上に遮蔽トレイ(遮蔽板)を挿入し、
測定チェンバー内を真空排気系統により減圧しながら清浄ガス供給置換系統から測定チェンバー内に清浄ガスを流して測定チェンバー内の空気を清浄ガスに置換し、
測定チェンバー内の上部電極と下部電極との間に電圧を印加し、
清浄ガスの供給を停止して測定チェンバー内を真空排気系統により減圧し、
測定チェンバー内の上部電極と下部電極との間に印加している電圧を遮断し、
半導体検出器からの信号を放射線計測回路に取り込み測定試料の放射線を計測し、
遮蔽トレイ(遮蔽板)を半導体検出器のすぐ下に挿入し、
測定チェンバー内を真空排気系統により減圧しながら清浄ガス供給置換系統から測定チェンバー内に清浄ガスを流して測定チェンバー内の空気を清浄ガスに置換し、
測定チェンバー内の上部電極と下部電極との間に電圧を印加し、
清浄ガスの供給を停止して測定チェンバー内を真空排気系統により減圧し、
測定チェンバー内の上部電極と下部電極との間に印加している電圧を遮断し、
半導体検出器からの信号を放射線計測回路に取り込みバックグラウンドとなる放射線を計測することを特徴とする荷電粒子測定装置の運転方法。
【請求項6】
請求項3に記載の荷電粒子測定装置の運転方法であって、
測定試料を空室内に置いたトレイ(試料皿)の上に載せ、
清浄ガス供給置換系統から空室内に清浄ガスを流して空室内の空気を清浄ガスに置換し、
測定チェンバー内の上部電極と下部電極との間に電圧を印加し、
清浄ガス供給置換系統から測定チェンバーに清浄ガスを充填し、
測定試料を載せたトレイ(試料皿)を測定チェンバー内に挿入し下部電極の上に遮蔽トレイ(遮蔽板)を挿入し、
清浄ガスの供給を停止して測定チェンバー内を真空排気系統により減圧し、
測定チェンバー内の上部電極と下部電極との間に印加している電圧を遮断し、
半導体検出器からの信号を放射線計測回路に取り込み測定試料の放射線を計測し、
遮蔽トレイ(遮蔽板)を空室内に一旦引き出し、
清浄ガス供給置換系統から空室内に清浄ガスを流して空室内の空気を清浄ガスに置換し、
測定チェンバー内の上部電極と下部電極との間に電圧を印加し、
清浄ガス供給置換系統から測定チェンバーに清浄ガスを充填し、
遮蔽トレイ(遮蔽板)を半導体検出器のすぐ下に挿入し、
空室内に流通させている清浄ガスの供給を停止し、
測定チェンバー内を清浄ガスに置換して測定チェンバー内を真空排気系統により減圧し、
測定チェンバー内の上部電極と下部電極との間に印加している電圧を遮断し、
半導体検出器からの信号を放射線計測回路に取り込みバックグラウンドとなる放射線を計測することを特徴とする荷電粒子測定装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−57426(P2007−57426A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244284(P2005−244284)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】