荷電粒子線装置、荷電粒子線装置の操作方法、荷電粒子線装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体又は記録した機器
【課題】すべての倍率の実画像を取得することなく、任意の倍率に変更可能な荷電粒子線装置等を提供する。
【解決手段】荷電粒子線装置は、荷電粒子線撮像部で観察像を撮像する際に、観察条件設定部で設定された撮像時の倍率を基準とし、異なる複数の倍率にて離散倍率画像を撮像し保存するための離散倍率画像取得部と、観察像を表示するための表示部と、表示部で表示される観察像の表示倍率を調整するための倍率設定部と、倍率設定部で設定される表示倍率の観察像が保存されていない場合、同一の観察像について離散倍率画像取得部にて予め撮像された離散倍率画像に基づいて、倍率設定部で設定された倍率にて表示される補完観察像を演算により生成し、該補完観察像を表示するための補完処理部とを備える。
【解決手段】荷電粒子線装置は、荷電粒子線撮像部で観察像を撮像する際に、観察条件設定部で設定された撮像時の倍率を基準とし、異なる複数の倍率にて離散倍率画像を撮像し保存するための離散倍率画像取得部と、観察像を表示するための表示部と、表示部で表示される観察像の表示倍率を調整するための倍率設定部と、倍率設定部で設定される表示倍率の観察像が保存されていない場合、同一の観察像について離散倍率画像取得部にて予め撮像された離散倍率画像に基づいて、倍率設定部で設定された倍率にて表示される補完観察像を演算により生成し、該補完観察像を表示するための補完処理部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線を観察対象の試料に照射し、試料から得られる信号を検出して観察像を得る荷電粒子線装置、荷電粒子線装置の操作方法、荷電粒子線装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体又は記録した機器に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子線で観察対象の試料を照射して得られる信号を検出して観察像を得る荷電粒子線装置として、例えば電子線を用いた透過電子顕微鏡や走査電子顕微鏡がある。このような荷電粒子線装置の内、例えば電子顕微鏡は、電子の進行方向を自由に屈折させ、光学顕微鏡のような結像システムを電子光学的に設計したものである。電子顕微鏡には、試料や標本を透過した電子を電子レンズを用いて結像する透過型の他、試料表面で反射した電子を結像する反射型、収束電子線を試料表面上に走査して各走査点からの二次電子を用いて結像する走査型電子顕微鏡、加熱あるいはイオン照射によって試料から放出される電子を結像する表面放出型(電界イオン顕微鏡)等がある(例えば特許文献1)。
【0003】
走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)は、観察対象となる試料に細い電子線(電子プローブ)を照射した際に発生する二次電子や反射電子を、二次電子検出器、反射電子検出器等それぞれの検出器を用いて取り出し、ブラウン管やLCD等の表示画面上に表示して、主として試料の表面形態を観察する装置である。一方、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)は、薄膜試料に電子線を透過させ、その際に試料中で原子により散乱、回折された電子を電子回折パターンまたは透過電顕像として得ることによって主に物質の内部構造を観察できる。
【0004】
電子線が固体試料に照射されたとき、電子のエネルギーによって固体中を透過するが、その際に試料を構成する原子核や電子との相互作用によって弾性的な衝突、弾性散乱やエネルギー損失を伴う非弾性散乱を生じる。非弾性散乱によって試料元素の殻内電子を励起したり、X線等を励起したり、また二次電子を放出し、それに相当するエネルギーを損失する。二次電子は衝突する角度によって放出される量が異なる。一方、弾性散乱によって後方に散乱し、試料から再び放出される反射電子は、原子番号に固有の量が放出される。SEMはこの二次電子や反射電子を利用する。SEMは電子を試料に照射し、放出される二次電子や反射電子を検出して観察像を結像している。
【0005】
このような電子顕微鏡等の荷電粒子線装置で撮像した荷電粒子線画像を拡大/縮小させる等、表示倍率を変更して表示させたいことがある。例えば3次元画像を構築するための視差画像を撮像するための位置合わせ作業や、過去に撮影した同じ試料の同一視野での再観察、金など導電体物質のコート後の再観察など、試料の詳細を観察するために画像を拡大したり、あるいは視野探しのために縮小することがある。従来、高倍率で過去に一度観察したことのある視野を別の機会に改めて探す場合、又は似たような試料の同じ位置に相当する視野を探す場合の手順としては、過去の観察の際に予め最終の目的倍率から低倍率まで連続的に画像を取得してこれを保存しておき、別の機会に視野探しする際には過去の観察で取得した画像を低倍率から高倍率に逆順に参照しながら視野を探すことが行われていた。
【0006】
しかしながら、切れ目のない連続的な画像を得るためには、事前に最終必要倍率の視野から低倍率まで、観察位置を画面中心に保ったままで連続的に倍率を変化させて多くの画像を取得しておく必要があった。このためには倍率を変更して撮像し、さらに倍率を変更して撮像するという作業を繰り返す必要があり、多大な時間と手間がかかるという欠点がある。また、このように同一の視点で倍率を変更して多数の観察像を撮像する結果負荷が大きくなり、電子線照射の繰り返しによって試料サンプルに損傷を与えたり、フィラメントの寿命が短くなるといった悪影響が生じるという問題もあった。
【特許文献1】特開平3−93140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものである。本発明の主な目的は、各倍率で観察像を取得しておかずとも所望の倍率の観察像に変更可能な荷電粒子線装置、荷電粒子線装置の操作方法、荷電粒子線装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体又は記録した機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の荷電粒子線装置は、荷電粒子線を観察対象に照射し、観察対象から得られる信号を検出して観察像を得るための荷電粒子線撮像部と、荷電粒子線撮像部で観察像を撮像する際の倍率の設定を少なくとも含む像観察条件を設定するための観察条件設定部と、荷電粒子線撮像部で観察像を撮像する際に、観察条件設定部で設定された撮像時の倍率を基準とし、異なる複数の倍率にて離散倍率画像を撮像し保存するための離散倍率画像取得部と、観察像を表示するための表示部と、表示部で表示される観察像の表示倍率を調整するための倍率設定部と、倍率設定部で設定される表示倍率の観察像が保存されていない場合、同一の観察像について離散倍率画像取得部にて予め撮像された離散倍率画像に基づいて、倍率設定部で設定された倍率にて表示される補完観察像を演算により生成し、該補完観察像を表示するための補完処理部とを備える。この構成によって、観察像の撮像時に所定の倍率にて複数の離散倍率画像を取得しておき、これに基づいて離散倍率画像の存在しない中間的な倍率であっても補完観察像として生成できるので、すべての倍率の観察像を実画像として取得することなく任意の表示倍率の観察像を生成して表示できる。
【0009】
また、本発明の他の荷電粒子線装置は、離散倍率画像取得部が、離散倍率画像として観察条件設定部で設定された撮像時の倍率よりも低い複数の離散的な倍率で離散倍率画像を撮像する。この構成によって、広い視野を持った広域な離散倍率画像を自動的に取得し、縮小表示させた際でも周辺部の画像の情報が失われることを回避し、離散倍率画像を視野探しなどに好適に利用できる。
【0010】
さらに、本発明の他の荷電粒子線装置は、離散倍率画像取得部による離散倍率画像の撮像が、荷電粒子線撮像部による観察像の撮像と観察位置の中心を同じとする。この構成によって、一の観察対象を同じ姿勢で低倍率の観察像を含む複数の画像で保存しておくことができる。
【0011】
さらにまた、本発明の他の荷電粒子線装置は、離散倍率画像取得部による離散倍率画像の保存が、荷電粒子線撮像部による観察像のデータと関連付けて行われる。この構成によって、一の観察対象に関する観察像とその離散倍率画像を纏めて管理することができ、画像の呼び出しや表示をスムーズに行うことができる。
【0012】
さらにまた、本発明の他の荷電粒子線装置は、表示部に表示される観察像の表示倍率を倍率設定部で連続的に変更すると、表示倍率が予め撮像された離散倍率画像の倍率と一致するときは該離散倍率画像を表示し、表示倍率が異なるときは近傍の表示倍率で撮像された離散倍率画像に基づいて補完処理部で生成された補完画像を表示するよう、離散倍率画像と補完画像を切り替えて表示するように構成している。この構成によって、連続的に表示倍率を変化させても、各表示倍率に応じた画像を順次作成し、また実画像が存在する倍率については該当する参照画像に切り換えて表示し、あたかも連続的に倍率を変化させるようにして表示部の画像の倍率を変化できる。
【0013】
さらにまた、本発明の他の荷電粒子線装置は、観察対象を裁置するためのステージと、ステージ上の観察対象に対して電子線を照射するための電子銃と、観察対象から放出される二次電子または反射電子を検出するための1以上の検出器と、検出器で検出された情報に基づいて電子線観察像を結像するための電子線撮像部と、電子線撮像部で撮像された観察像を表示するための表示部とを備え、所定の像観察条件に基づいて、電子銃に加速電圧を印加して電子線を観察対象に照射し、観察対象から放出される二次電子または反射電子を検出器で検出しながら観察対象表面の所望の領域を走査することで、観察像を結像し表示部に表示可能である。この荷電粒子線装置はさらに、電子線撮像部で観察像を撮像する際の倍率の設定を少なくとも含む像観察条件を設定するための観察条件設定部と、電子線撮像部で観察像を撮像する際に、観察条件設定部で設定された撮像時の倍率よりも低い複数の離散的な倍率で離散倍率画像を撮像し保存するための離散倍率画像取得部と、表示部で表示される観察像の表示倍率を調整するための倍率設定部と、倍率設定部で設定される表示倍率の観察像が保存されていない場合、同一の観察像について離散倍率画像取得部にて予め撮像された離散倍率画像に基づいて、倍率設定部で設定された倍率にて表示される補完観察像を演算により生成し、該補完観察像を表示するための補完処理部とを備える。この構成によって、観察像の撮像時に所定の倍率にて複数の離散倍率画像を取得しておき、これに基づいて離散倍率画像の存在しない中間的な倍率であっても補完観察像として生成できるので、すべての倍率の観察像を実画像として取得することなく任意の表示倍率の観察像を生成して表示できる。
【0014】
また、本発明の荷電粒子線装置の操作方法は、所定の像観察条件で荷電粒子線撮像部にて観察像を撮像する際に、撮像時の倍率よりも低い複数の離散的な倍率で離散倍率画像を各々撮像するステップと、表示部にて表示される観察像の表示倍率を倍率設定部で変更する際に、表示倍率に応じて離散倍率画像を切り換えて表示すると共に、該当する離散倍率画像のない表示倍率については、該表示倍率の前後で撮像された離散倍率画像に基づいて補完処理部が該当する表示倍率の画像を生成して表示するステップとを有する。これによって、観察像の撮像時に所定の倍率にて複数の離散倍率画像を取得しておき、これに基づいて離散倍率画像の存在しない中間的な倍率であっても補完観察像として生成できるので、すべての倍率の観察像を実画像として取得することなく任意の表示倍率の観察像を生成して表示できる。
【0015】
さらにまた、本発明の荷電粒子線装置操作プログラムは、所定の像観察条件で荷電粒子線撮像部にて観察像を撮像する際に、撮像時の倍率よりも低い複数の離散的な倍率で離散倍率画像を各々撮像する離散倍率画像取得機能と、表示部にて表示される観察像の表示倍率を倍率設定部で変更する際に、表示倍率に応じて離散倍率画像を切り換えて表示すると共に、該当する離散倍率画像のない表示倍率については、該表示倍率の前後で撮像された離散倍率画像に基づいて補完処理部が該当する表示倍率の画像を生成して表示する表示倍率変更機能とをコンピュータに実現させる。これによって、観察像の撮像時に所定の倍率にて複数の離散倍率画像を取得しておき、これに基づいて離散倍率画像の存在しない中間的な倍率であっても補完観察像として生成できるので、すべての倍率の観察像を実画像として取得することなく任意の表示倍率の観察像を生成して表示できる。
【0016】
また本発明のコンピュータで読み取り可能な記録媒体又は記録した機器は、上記プログラムを格納するものである。記録媒体には、CD−ROM、CD−R、CD−RWやフレキシブルディスク、磁気テープ、MO、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、Blu−ray、HD DVD(AOD)等の磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリその他のプログラムを格納可能な媒体が含まれる。またプログラムには、上記記録媒体に格納されて配布されるものの他、インターネット等のネットワーク回線を通じてダウンロードによって配布される形態のものも含まれる。さらに記録した機器には、上記プログラムがソフトウェアやファームウェア等の形態で実行可能な状態に実装された汎用もしくは専用機器を含む。さらにまたプログラムに含まれる各処理や機能は、コンピュータで実行可能なプログラムソフトウエアにより実行してもよいし、各部の処理を所定のゲートアレイ(FPGA、ASIC)等のハードウエア、又はプログラムソフトウエアとハードウェアの一部の要素を実現する部分的ハードウエアモジュールとが混在する形式で実現してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の荷電粒子線装置、荷電粒子線装置の操作方法、荷電粒子線装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体又は記録した機器によれば、所定の離散的な倍率で撮像された離散倍率画像に基づいて補完観察像を生成して表示できるので、多数の実画像を表示倍率毎に撮像せずとも所望の表示倍率にて観察像を表示することができ、荷電粒子線装置による観察を撮像時間や手間を省力化して使い易くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための荷電粒子線装置、荷電粒子線装置の操作方法、荷電粒子線装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体又は記録した機器を例示するものであって、本発明は荷電粒子線装置、荷電粒子線装置の操作方法、荷電粒子線装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体又は記録した機器を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0019】
本明細書において荷電粒子線装置とこれに接続される操作、制御、入出力、表示、その他の処理等のためのコンピュータ、プリンタ、外部記憶装置その他の周辺機器との接続は、例えばIEEE1394、RS−232x、RS−422、RS−423、RS−485、USB等のシリアル接続、パラレル接続、あるいは10BASE−T、100BASE−TX、1000BASE−T等のネットワークを介して電気的に接続して通信を行う。接続は有線を使った物理的な接続に限られず、IEEE802.1x、OFDM方式等の無線LANやBluetooth等の電波、赤外線、光通信等を利用した無線接続等でもよい。さらに観察像のデータ保存や設定の保存等を行うための記録媒体には、メモリカードや磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が利用できる。
【0020】
以下の実施例ではSEMについて説明する。但し、本発明はTEMやその他の荷電粒子線装置においても利用できる。また光学顕微鏡、レーザ顕微鏡、原子間力顕微鏡、静電気力顕微鏡、近視野顕微鏡等の内、2つ以上の顕微鏡の機能を備えた複合型顕微鏡に利用してもよい。本発明を具現化した一実施例に係るSEMについて、図1に基づいて説明する。SEMは一般に加速電子の電子線を発生させ試料に到達させるまでの光学系と、試料を配置する試料室(チャンバ)と、試料室内を真空にするための排気系と、像観察のための操作系で構成される。図1の電子顕微鏡100は、このような部材により荷電粒子線による電子線観察像の観察を行うための荷電粒子線撮像部42の構成を示している。また、図1のコンピュータ1にインストールされた電子顕微鏡の操作プログラムで、電子顕微鏡の像観察条件の設定や各種操作を行い、観察像の表示を行う表示部28に表示する。
【0021】
光学系は、加速電子の電子線を発生させる電子銃7、加速電子の束を絞り込んで細束化するレンズ系、試料から発生する二次電子や反射電子を検出する検出器を備える。図1に示す走査型電子顕微鏡100は、光学系として電子線を照射する電子銃7と、電子銃7から照射される電子線がレンズ系の中心を通過するように補正するガンアライメントコイル9と、電子線のスポットの大きさを細く絞る収束レンズ12であるコンデンサレンズと、収束レンズ12で収束された電子線を試料20上で走査させる電子線偏向走査コイル18と、走査に伴い試料20から放出される二次電子を検出する二次電子検出器21と、反射電子を検出する反射電子検出器22を備える。
【0022】
試料室31には、試料台33、試料導入装置、X線検出用分光器等が備えられる。試料台33(ステージ)はX、Y、Z移動、回転、傾斜機能を備える。排気系は、加速電子の電子線が気体成分通過中に極力エネルギーを失うことなく試料に到達するために必要で、ロータリーポンプ、油拡散ポンプが主として用いられる。
【0023】
操作系は二次電子像、反射電子像、X線像等を表示、観察しながら照射電流の調整、焦点合わせ等を行う。二次電子像等の出力は、アナログ信号であれば写真機によるフィルム撮影が一般的であったが、近年は画像をデジタル信号に変換した出力が可能となり、データの保存や画像処理、印刷等の多種多様な処理が可能である。図1のSEMは、二次電子像や反射電子像等の観察像を表示する表示部28と印刷のためのプリンタ29を備える。また操作系は、像観察条件として少なくとも加速電圧またはスポットサイズ(入射電子線束の直径)を設定するために必要な設定項目の設定手順を誘導(ガイダンス)する誘導手段を備える。
【0024】
図1に示すSEMは、コンピュータ1と接続され、コンピュータ1を電子顕微鏡100の操作を行うコンソールとして使用し、また必要に応じて像観察条件や画像データを保存したり、画像処理や演算を行う。図1に示すCPUやLSI等で構成される中央演算処理部2は、走査型電子顕微鏡100を構成する各ブロックを制御する。電子銃高圧電源3を制御することにより、フィラメント4、ウェーネルト5、アノード6からなる電子銃7より電子線を発生させる。電子銃7から発生された電子線8は、必ずしもレンズ系の中心を通過するとは限らず、ガンアライメントコイル9をガンアライメントコイル制御部10によって制御することで、レンズ系の中心を通過するように補正を行う。次に、電子線8は収束レンズ制御部11によって制御される収束レンズ12であるコンデンサコイルによって細く絞られる。収束された電子線8は、電子線8を偏向する非点収差補正コイル17、電子線偏向走査コイル18、対物レンズ19、および電子線8のビーム開き角を決定する対物レンズ絞り13を通過し、試料20に至る。非点収差補正コイル17は非点収差補正コイル制御部14によって制御され、走査速度等を制御する。同様に電子線偏向走査コイル18は電子線偏向走査コイル制御部15によって、対物レンズ19は対物レンズ制御部16によって、それぞれ制御され、これらの作用によって試料上を走査する。試料20上を電子線8が走査することにより、試料20から二次電子、反射電子等の情報信号が発生され、この情報信号は二次電子検出器21、反射電子検出器22によりそれぞれ検出される。検出された二次電子の情報信号は二次電子検出増幅部23を経て、また反射電子の情報信号は反射電子検出器22で検出されて反射電子検出増幅部24を経て、それぞれA/D変換器25、26によりA/D変換され、画像データ生成部27に送られ、画像データとして構成される。この画像データはコンピュータ1に送られ、コンピュータ1に接続されたモニタ等の表示部28にて表示され、必要に応じてプリンタ29にて印刷される。排気系ポンプ30は、試料室31内部を真空状態にする。排気系ポンプ30に接続された排気制御部32が真空度を調整し、試料20や観察目的に応じて高真空から低真空まで制御する。
【0025】
電子銃7はあるエネルギーをもった加速電子を発生させるソースとなる部分で、W(タングステン)フィラメントやLaB6フィラメントを加熱して電子を放出させる熱電子銃の他、尖状に構成したWの先端に強電界を印加して電子を放出させる電界放射電子銃がある。レンズ系には、収束レンズ、対物レンズ、対物レンズ絞り、電子線偏向走査コイル、非点収差補正コイル等が装着されている。収束レンズは電子銃で発生した電子線をさらに収斂して細くする。対物レンズは最終的に電子プローブを試料に焦点合わせするためのレンズである。対物レンズ絞りは収差を小さくするために用いられる。検出器には、二次電子を検出する二次電子検出器と反射電子を検出する反射電子検出器がある。二次電子はエネルギーが低いのでコレクタにより捕獲され、シンチレータにより光電子に変換されて、光電子倍増管で信号増幅される。一方、反射電子の検出にはシンチレータあるいは半導体型が用いられる。なお、本発明では二次電子や反射電子の信号検出に限定されず、オージェ電子、透過電子、内部起電力、カソードルミネッセンス、X線、吸収電子等の信号検出器を適用することもできる。
(試料台33)
【0026】
観察位置の位置決めは、試料20を載置した試料台33を物理的に移動させて行う。この場合は観察位置決め手段が試料台33で構成される。試料台33は試料20の観察位置を調整可能なように様々な方向への移動、調整が可能である。移動、調整の方向は、試料台33の観察位置を移動、調整させるため、試料台33の平面方向であるX軸およびY軸方向、R軸(回転)方向への移動および微調整が可能である他、試料の傾斜角度を調整するために試料台33のT軸方向の調整、ならびに対物レンズと試料との距離(ワーキングディスタンス)を調整するために試料台33のZ軸方向の調整が可能である。
【0027】
観察像の位置決めや観察視野の移動には、試料台を物理的に移動させる方法に限られず、例えば電子銃から照射される電子線の走査位置をシフトさせる方法(イメージシフト)も利用できる。あるいは両者を併用する方法も利用できる。あるいはまた、広い範囲で一旦画像データを取り込み、データをソフトウェア的に処理する方法も利用できる。この方法では、一旦データが取り込まれてデータ内で処理されるため、ソフトウェア的に観察位置を移動させることが可能で、試料台の移動や電子線の走査といったハードウェア的な移動を伴わないメリットがある。予め大きな画像データを取り込む方法としては、例えば様々な位置の画像データを複数取得し、これらの画像データをつなぎ合わせることで広い面積の画像データを取得する方法がある。あるいは、低倍率で画像データを取得することによって、取得面積を広く取ることができる。
(eプレビュー)
【0028】
この電子顕微鏡は、簡易観察像取得機能(プレビュー機能)としてeプレビューを備える。eプレビューとは、最適な観測条件を得るために電子顕微鏡もしくはコンピュータ側で推奨の観測条件を簡易的に複数作成し、各々の観測条件で観察像を取得し、複数の簡易観察像として一覧表示するものである。まずSEMの像観察条件の設定項目の内、1つまたは複数を変化させた設定を、簡易的な像観察条件として複数組準備しておく。例えば加速電圧や検出器の種類を変更した複数の簡易像観察条件を自動的に生成する。そして準備した複数組の簡易像観察条件を順にSEMに設定し、それぞれの条件で試料を連続的に観察する。観察した複数の簡易観察像は一時的に保存し、表示部28のウィンドウ等に一覧表示する。一覧表示の際には、簡易観察像を縮小して同時に表示させることができる。例えばユーザは、表示された複数の簡易観察像を比較し、チャージアップの発生を確認する。簡易観察像の画面でチャージアップによる像障害が発生しているものがあれば、その手前の観察像で用いた加速電圧が、チャージアップが発生しない最大の加速電圧になる。必要に応じて、eプレビューは複数回実行する。例えばチャージアップが確認されない場合は、加速電圧を上げて再度eプレビューを行う。あるいは、チャージアップが生じない最大加速電圧を詳細に調べるために、eプレビューで使用する加速電圧の変化量を小さくして絞り込みを行うこともできる。このようにして測定したチャージアップしない最大加速電圧を、除電終了電圧として設定する。設定は、第2表示領域48から該当する簡易観察像をユーザが選択することで、自動的にその加速電圧をチャージアップしない最大加速電圧として電子顕微鏡またはコンピュータが保持し、設定する。またチャージアップしない最大加速電圧をユーザが手動で記録もしくは入力してもよい。
【0029】
また、この電子顕微鏡において、以前に結像された観察像を像観察条件と共に記憶される画像ファイル、および前回に結像された観察像に対応する像観察条件は、例えばコンピュータ1のメモリやハードディスク等の記憶装置に記憶される。さらにこの電子顕微鏡では、排気系によって試料室内の真空度を変更して像観察を行うことが可能である。一般に試料室が高真空であれば分解能の高い鮮明な画像を得ることができるが、反面チャージアップが生じ易くなり、また水分を含む試料の観察に不適といった欠点がある。一方で低真空であればチャージアップが生じ難くなり、絶縁体や水分を含む試料の観察に適している反面、鮮明な観察像を得ることが困難になるという欠点がある。したがって、観察対象の試料や観察目的に応じて試料室内の圧力(真空度)を調整することで更に適切な観察像を得ることが可能となる。しかしながら、真空度を調整することによって、像観察条件のパラメータが更に増えることとなり、SEMの操作に慣れていない初心者にとっては条件設定がより困難となる。特に低真空観察では像観察条件の調整が困難となり、結像すら容易でない。そこでこの電子顕微鏡では、低真空観察用の観察モードに特化したガイダンス機能を設けることにより、このガイダンスに従って初心者でも容易に低真空観察が可能なユーザ環境を提供している。さらに、通常の高真空観察に適した高真空観察用のガイダンス機能も設け、ユーザにいずれの圧力(真空度)で観察を行いたいかを選択させることによって、それぞれに適したガイダンス機能が実行される。また、高真空観察、低真空観察の二段階のみならず、中真空観察、超高真空観察等も加えて三段階、四段階以上といった複数のガイダンス機能を設けることもできる。なお本明細書においては高真空、低真空の値を特に限定するものでないが、一般に高真空とは圧力が0.1Pa〜10−5Pa(10−3〜10−7Torr)あるいは更に真空度の高い10−5Pa〜10−8Pa(10−7〜10−10Torr)、また低真空とは100kPa〜100Pa(760〜1Torr)あるいは100Pa〜0.1Pa(1〜10−3Torr)を指す。低真空観察は、例えばESEM(環境制御型SEM)を用いて試料室の圧力を調整することにより実行される。
(表示倍率変更機能)
【0030】
次に、以上のようなSEMなどの荷電粒子線装置にて撮像された荷電粒子線観察像を、表示部に表示倍率を変更させて表示させる手順について図2〜図3に基づいて説明する。図2は荷電粒子線装置の表示倍率変更機能を示すブロック図であり、図3は撮像された実画像と補完画像との関係を示す説明図をそれぞれ示している。図2に示す荷電粒子線装置200は、離散倍率画像取得部76および補完処理部78を含む演算部70と、演算部70とそれぞれ接続され、観察像データを演算部70に送出可能な荷電粒子線撮像部42、画像データ記憶部68と、像観察条件を設定するための観察条件設定部650と、撮像された画像を表示するための表示部28と、表示部28における表示倍率を調整するための倍率設定部611とを備える。この図に示す荷電粒子線装置200は、観察条件設定部650で設定された像観察条件に基づいて荷電粒子線撮像部42で撮像された電子線観察像等の荷電粒子線画像、あるいは撮像済みの画像データが保存された画像データ記憶部68に記録された観察像は、演算部70に取り込まれる。演算部70は、電子顕微鏡100に接続されたコンピュータ1や電子顕微鏡100の画像データ生成部27等で実現される。演算部70は、取得した観察像を表示部28に表示させる。表示部28はCRTや液晶モニタ等で構成される。表示部28に表示される観察像は、倍率設定部611で拡大/縮小することができ、表示倍率を調整できる。例えば、2以上の視差画像に基づいて3次元画像を演算する3次元画像生成機能を実行するには、2枚の視差画像、特に基準となる一の観察像に対して、視差を生じさせるように傾斜させた画像を取得することが重要となる。この際に表示倍率を縮小した参照画像にて視野を探し、さらに表示倍率を拡大した参照画像を使用して詳細な位置合わせを行うことがある。
【0031】
このような表示中の画像データを拡大/縮小する手法としては、画像データをデータ上で拡大、縮小するデジタルズームによって実現することが考えられるが、デジタルズームによって実現できる実用可能な範囲は精々3倍程度であり、SEMのような数千〜数万レベルといったダイナミックレンジの極めて広い観察においては到底利用できない。そこで従来は、撮像の際に後々の利用のために倍率を変更した画像を複数枚併せて撮像しておき、保存しておくことが行われていた。しかしながら、この方法では撮像の度に複数枚の画像を併せて取得する手間がかかり、またこれらの撮像した参照画像を管理する手間もかかっていた。特に、拡大/縮小の際には撮像した画像ファイルから所望の倍率の画像を選択して切り換えて表示しているため、処理が煩雑になる上撮像した元画像との関連及び倍率を記憶しておかねばならず、非常に扱い難かった。加えて、この方法では撮像した倍率の画像データのみしか表示できず、離散的な倍率の表示のみ可能で中間の倍率での表示や連続的に倍率を変化させて表示させることはできなかった。そこで、このような離散倍率画像の取得を自動化する離散倍率画像取得機能と、離散倍率画像に基づいて中間的な倍率の補完観察像を生成する表示倍率変更機能とを備えることで、より使い易い荷電粒子線装置としたものである。
【0032】
具体的には、図2に示す演算部70の離散倍率画像取得部76にて、荷電粒子線撮像部42で新たに観察像の撮像を行う際、同じ観察像に関して倍率を変化させた離散倍率画像を複数枚自動的に取得する。この離散倍率画像は、目的となる観察像から同じ視点(例えば視野の中心を同一にする)にて倍率を低下させた低倍率観察像とする。これによって、表示倍率を低下させた際に、情報の欠落によって画像の周辺が切れて表示される事態を回避できる。例えば1万倍での撮像であれば、1万倍から3千倍、千倍、300倍、100倍といった所定の変化率にて離散的な倍率に変化させる。離散倍率画像を撮像する倍率や枚数は、撮像目的に応じて適宜設定できる。例えば、元画像の撮像の倍率から50倍毎、100倍毎といった所定の倍率で撮像する。あるいは、元画像の撮像の倍率を基準として、100倍までの間で5枚の離散倍率画像が撮像されるよう、倍率を自動的に変更して撮像する。また、倍率の変更は整数倍に限られず、小数点や分数での変更率により倍率を変更して撮像することもできることはいうまでもない。さらに、離散倍率画像を取得する手順も、元画像から徐々に倍率を低下させる他、一旦倍率を離散倍率画像を取得する倍率の最小値に落とし、徐々に拡大するように撮像することもできる。これによって、例えばSEMにおいてチャージアップの発生を抑制することができる。また観察対象物によっては、観察倍率よりも幾分低い倍率の画像のみで観察位置の特定と位置合わせが容易な場合がある。このような場合、離散倍率画像の取得手順を低倍率から高倍率に取得するようにし、取得途中でもユーザが取得を停止できるようにしておくと、観察位置の特定できる画像が取得できた時点でユーザが取得を停止することによって取得時間を短縮できる。
【0033】
後述する図4等に示す荷電粒子線装置操作プログラムのインターフェースの例では、「撮影」ボタン654を押下するタイミングで、自動的に離散倍率画像取得機能を実行して離散倍率画像を撮像し、画像データ記憶部68に保存する。画像データ記憶部68は、コンピュータのハードディスクや記録媒体等が利用できる。また離散倍率画像は、元画像と関連付けて保存することもできる。例えば、元画像の保存時に、同時に撮像した離散倍率画像のファイル名などの情報を併せて保存する。ファイル名の保存は、画像ファイルフォーマット中のユーザデータが記録できる領域等に記録できる。あるいは離散倍率画像の保存時に元画像のファイル名などを併せて保存する、あるいはまた、元画像と離散倍率画像のファイル名の対応関係を記録したインデックスファイルなどを別途作成するといった種々の方法が採用できる。さらに元画像と離散倍率画像とは関連付けられた別ファイルに保存するだけでなく、マルチページtiffやPDF等、同一のファイルに複数画像の保存が可能なファイル形式を利用して、一ファイルとして保存すること、あるいは離散倍率画像と元画像を同一のフォルダに保存することも可能である。これによって、離散倍率画像と元画像のと関連性が明確になり、どのファイルがどの元画像の離散倍率画像であるかといった混乱を避けることができ、検索も容易となる。
さらにまた離散倍率画像は、元画像の撮影と同時に取得する他、元画像の撮影とは別操作、別のタイミングで取得を開始することも可能である。この方法によれば、元画像の撮影後、その画像の出来映えをユーザが判断した上で離散倍率画像を取得することができ、不要な元画像に対して離散倍率画像を無条件に取得してしまうことを避けることができる。
(表示倍率変更機能)
【0034】
さらに、表示部28にて表示される画像の表示倍率を変更するのに応じて、対応する倍率に相当する画像を、上記の離散倍率画像に基づいて補完画像として生成し、表示することもできる。この表示倍率変更機能機能は、演算部70の補完処理部78によって実現される。この様子を図3に基づいて説明する。図3では、撮像時の倍率を変更して取得した離散倍率画像の視野の大きさを模式的に示している。すなわち、同じ画像を撮像する場合、拡大率が大きい程画像の視野の大きさは相対に小さくなる。逆に拡大率を小さくした画像では、視野の広い画像となる。図において元の画像を撮像した際の視野を領域Aにて示している。この画像の離散倍率画像を、観察条件や観察位置を変更せず、撮像倍率を徐々に縮小して撮像し、領域B、領域C、領域Dとして各々取得する。これら実線で示す領域の倍率については、実際に観察像を撮像した実画像のデータが存在する。一方、これらの中間領域、例えば図3において破線で示すA1に相当する倍率の画像については実画像のデータが存在しない。そこで、領域Aおよび/又は領域Bの離散倍率画像に基づいて、補完処理部78が領域A1の補完画像を生成する。補完画像を生成する手法については、既知の方法あるいは将来開発される方法が採用でき、例えば領域Bの離散倍率画像を用いたデジタルズームやデジタルリニアズーム、あるいは領域Aと領域Bの画像に基づき、倍率に応じて領域Aと領域Bの各画素を重み付けして構成した平均画像などにより生成できる。このようにして、図3に示すように領域Aと領域Bの間の領域に相当する表示倍率に関して、領域A1や領域A2で視野を表現できる表示倍率に相当する補完画像を生成する。また領域Bと領域Cの間の領域でも、同様にして領域B2に相当する補完画像を生成する。これによれば、領域Aと領域Dの間で、任意の表示倍率の画像を生成できる。よって、例えば表示部28に表示される元画像を倍率設定部611にて縮小表示させても、周辺部分の画像が切れることなく任意の倍率で表示でき、視野探しを容易に行える。また画像の拡大については、デジタルズームなどによって対応することもできるし、同様の方法で予めより大きな表示倍率の離散倍率画像を取得しておくことにより、画像の拡大時にも実画像に基づいた詳細な画像を表示させることもできる。
【0035】
上記の方法では、表示倍率が離散倍率画像の撮像時の倍率と等しいときは、該当する離散倍率画像を表示し、離散倍率画像のない倍率については計算によって補間した補完画像を生成して、離散倍率画像と補完画像を切り換えて表示している。これにより、連続的に画像を拡大、縮小させて表示させることが可能となり、スムーズなズーミング動作が実現できる。例えば、複数の画像を比較観察する場合に、倍率を同じ倍率に連動して変化させる倍率連動部を使用して比較画像を連続的に倍率を変化をさせることが簡単に実現できる。しかもこの方法であれば、実際の撮像は離散的な離散倍率画像のみで済み、予め大量の実画像を取得する必要がないので撮像時間を短縮でき、荷電粒子線装置や試料への負担も少なく、高速で低負荷に連続的なズームを可能としている。
【0036】
また、表示倍率に関する情報を備える実画像を常に表示させると共に、縮小表示の際に実画像の周囲の情報が失われた分のみを補完画像で補足するように表示させるよう構成することもでき、これにより少なくとも中心部分は実画像を精細に表示できる。
【0037】
次に、離散倍率画像取得機能および表示倍率変更機能が好適に利用できる一例として、荷電粒子線装置を用いて視差画像を取得して3次元画像を生成する手順を、荷電粒子線装置の操作プログラムのユーザインターフェース画面に基づいて説明する。図4〜図7は、荷電粒子線装置の操作プログラムにおいて、3次元画像生成機能を実現する3次元画像生成プログラムのユーザインターフェース画面700をそれぞれ示している。3次元画像生成プログラムは、図1においてはコンピュータ1にインストールされ実行可能な状態としている。3次元画像生成プログラムをインストールされたコンピュータ1が電子顕微鏡100等の機器とデータの送受信や通信を行い、必要な情報を取得し、設定を行う。通信は、例えばRS−232CケーブルやUSBケーブルを介してシリアル通信で行われる。ただ、この形態に限られず電子顕微鏡自体に3次元画像生成プログラムを組み込む態様等も適宜採用できる。また、この3次元画像生成プログラムは、電子顕微鏡の操作プログラムを兼ねており、一のプログラムで電子顕微鏡で像観察を行うための操作と、得られた電子線観察像に基づいて3次元画像を再構築する操作を行え、これによって統合された環境でユーザが操作し易いプログラムとできる。ただ、各機能を別個のプログラムで実現することも可能であり、この場合は各プログラムの呼び出しを専用のメニュー画面等から行ったり、各機能を示すボタンにプログラムの呼び出しをリンクさせる等により、プログラムのスムーズな切換を行い、ユーザが操作し易い環境とできる。さらに、3次元画像生成プログラムは、3次元画像を生成するのみならず、生成された3次元画像に対して表示、操作、計測等の処理を行う機能を付加することもできる。
【0038】
なお図4〜図7等に示す3次元画像生成プログラムのユーザインターフェース画面700の例において、各入力欄や各ボタン等の配置、形状、表示の仕方、サイズ、配色、模様等は適宜変更できることはいうまでもない。デザインの変更によってより見やすく、評価や判断が容易な表示としたり操作しやすいレイアウトとすることもできる。例えば詳細設定画面を別ウィンドウで表示させる、複数画面を同一表示画面内で表示する等、適宜変更できる。またこれらのプログラムのユーザインターフェース画面において、仮想的に設けられたボタン類や入力欄に対するON/OFF操作、数値や命令入力等の指定は、3次元画像生成プログラムを組み込んだコンピュータに接続された入力部で行う。本明細書において「押下する」とは、ボタン類に物理的に触れて操作する他、入力部によりクリックあるいは選択して擬似的に押下することを含む。入出力デバイスはコンピュータと有線もしくは無線で接続され、あるいはコンピュータ等に固定されている。一般的な入力部としては、例えばマウスやキーボード、スライドパッド、トラックポイント、タブレット、ジョイスティック、コンソール、ジョグダイヤル、デジタイザ、ライトペン、テンキー、タッチパッド、アキュポイント等の各種ポインティングデバイスが挙げられる。またこれらの入出力デバイスは、プログラムの操作のみに限られず、3次元画像生成装置等のハードウェアの操作にも利用できる。さらに、インターフェース画面を表示する表示部28のディスプレイ自体にタッチスクリーンやタッチパネルを利用して、画面上をユーザが手で直接触れることにより入力や操作を可能としたり、または音声入力その他の既存の入力手段を利用、あるいはこれらを併用することもできる。
(マニュアル観察モード)
【0039】
マニュアル観察モードは、ユーザが像観察条件を設定可能なモードである。図8に、マニュアル観察モードにおける操作画面の一例を示す。この図に示す操作画面は、結像された観察像を表示する第1表示領域47と、位置表示、広域図、eプレビュー、および比較画像を表示する第2表示領域48と、観察像の画像補正を設定する画像補正設定手段601と、検出器、加速電圧、真空度、およびスポットサイズ等の像観察条件を個別に設定する個別条件設定手段603と、以前に記憶された画像ファイルに対応する像観察条件から一の観察条件を設定するファイル対応条件設定手段604と、プレビュー機能を設定するプレビュー設定手段605と、視野設定部として、観察像等の倍率を設定する倍率設定部611と、観察視野の移動を設定する観察視野移動設定部612と、コントラストおよび明るさを設定するコントラスト・明るさ設定手段613と、非点収差の調整を設定する非点収差調整設定手段614と、光軸の調整を設定する光軸調整設定手段615とを備える。マニュアル観察モードでは、画像補正設定手段601において、シャープネスを設定するシャープネス設定手段601aと、ハイライトを設定するハイライト設定手段601bと、ガンマ補正を設定するガンマ補正設定手段601cと、観察像の輝度分布を示す輝度分布図(ヒストグラム)601dと、オーバーレンジ抽出設定手段601eとが表示される。オーバーレンジ抽出設定手段は、オーバーレンジした領域を抽出して表示するよう設定するものである。具体的には、観察像が表示された状態で、オーバーレンジ抽出設定手段601eの一態様である「オーバーレンジチェック」欄をチェックすると、観察像のアンダー領域あるいはオーバー領域なったオーバーレンジ領域を他の中間色領域と異なる態様で表示される。また、上記と同様個別条件設定手段603によって像観察条件を個別に設定することもできる。個別条件設定手段603で設定可能な項目としては、「検出器」ボックス603a、「加速電圧」ボックス603b、「真空度」ボックス603c、「スポットサイズ」ボックス603d等が用意されているが、非点収差調整設定手段、光軸調整設定手段等を含めてもよい。また、「ファイルから読み出す」ボタン(ファイル対応条件設定手段)404によって、以前に記憶された画像ファイルに対応する像観察条件から一の観察条件を設定することができる。さらに、プレビュー設定手段の一態様である「eプレビュー設定」ボタン605によって、上述したプレビュー機能が実行される。
【0040】
ここで、荷電粒子線装置を用いて視差画像を取得して3次元画像を生成する手順を、図9のフローチャートに基づいて説明する。まずステップS1で、基準となる第1の観察像を取得する。図4は、SEMを操作して第1の観察像を撮像する様子を示す。図4〜図7の画面は図2の表示部28に表示されており、ここでは画面下段のタブの内「3D」タブ621が選択され、3次元画像の生成機能が選択されている。この3次元画像生成プログラムでは、下段のタブが各機能を切り換えるモード切替部74を構成しており、このタブを切り換えることで、機能を選択することができる。図4の画面では、表示部28に表示されるインターフェースの内、画面の右側が現在処置中の画像を示す第1表示領域47である。また画面左側の上部には、第2表示領域48が設けられ、第2表示領域48の下部に設けられたタブを切り換えることによって広域図や位置表示、eプレビュー、比較画像等を切り替えて表示する。
(第2表示領域48)
【0041】
またこの例では、第2表示領域48に広域図を表示させて、第1表示領域47で表示中の領域がどの部位に相当するかを枠状681で表示している。枠状681は、図の例では赤色の矩形状としている。また広域図とは、予め観察対象物を低倍率で撮像した広域画像であり、位置合わせのための参照画像等に利用できる。特に第1の観察像の撮像時に、予め同じ観察対象を低倍率で撮像しておき、これを参照画像として記録しておくことにより、広い視野の情報を有すことができ、縮小表示させた際に画面情報不足により画面が切れることを回避できる。
(説明表示欄630)
【0042】
さらに第2表示領域48の下方には、誘導手段の誘導動作により設定すべき項目の選択もしくは入力を説明する説明表示欄630が設けられる。説明表示欄630は、設定すべき項目について説明文を表示する欄である。文章の説明においては、説明を要する用語にマウスカーソルを重ねるとさらに用語の説明文をバルーンやチップ等で表示したり、HTMLヘルプのようにハイパーリンクを設定し、リンクをクリックすると説明文のファイルや画像が表示されるように構成することもできる。さらに必要に応じて、音声案内やアニメーションによる動画等を適宜組み合わせて説明することもできる。説明表示欄630は更に、手順の流れを示すフロー図640を左側に表示し、かつ現在表示中の手順がフロー図640のどの項目に該当するかをハイライト表示により示している。図4の例においては、「1枚目の撮影」欄641が明るく表示される。また、これに対応させて、この段階で行うべきこと、および確認すべき点や設定項目等を説明表示欄630に文字情報として表示している。ユーザはこの情報にしたがって、確認すべき項目、設定すべき項目を画面上から理解し、必要な設定を各種の操作を行うための観察条件設定部650から行う。観察条件設定部650は、図4の例では第1表示領域47の下方に設けられており、図8とほぼ同様の倍率の変更や中心移動、コントラスト、明るさ、フォーカス、非点、撮影、除電、印刷といった各種操作ボタンやメニューが配置される。
(「1枚目の撮影」ステップ)
【0043】
まず「1枚目の撮影」ステップでは、第1の観察像の撮影条件の決定および画像の調整を行う。ここでは、説明表示欄630で3次元画像の作成には2枚の画像が必要なことを説明した後、「撮影準備」として、対象となる画像が第1表示領域47に表示されているかどうかをユーザに確認させる。所望の観察像が第1表示領域47に表示されていない場合は、下方のタブを「3D」タブ621から「オート観察1」、「オート観察2」、「マニュアル観察」等のタブに切り換えて、3次元画像として表示したい観察対象の観察条件や観察位置等を指定し、第1表示領域47に表示させる。また必要に応じて画像の微調整を行う。例えばフォーカスの調整を行う際には「倍率誤差補正」ボタン652を押下する。このようにして所望の観察像を第1表示領域47に表示させた後、説明表示欄630の説明通り、「撮影」ボタン654を押下して第1の観察像を撮影する。撮影された第1の観察像は、必要に応じて画像データ記憶部68であるコンピュータのハードディスク、記録媒体等に保存される。
【0044】
さらに第1の観察像の撮像と同時に、離散倍率画像取得機能が働き、図2の離散倍率画像取得部76が撮像時の倍率を自動的に低倍率に切り換えて複数の離散倍率画像を撮像する。倍率は、1/10毎など、予め設定された値とする他、ユーザが指定することもできる。撮像された観察画像は、順次画像データ記憶部68に記録される。
【0045】
このようにして第1の観察像及びその離散倍率画像を取得すると、説明表示欄630の下方に設けられた「次へ」ボタン656が押下可能となり、これを押下することで、図5の画面に切り替わり、図9のフローチャートのステップS2に進む。
(「2枚目の撮影」ステップ)
【0046】
次に、第1の観察像に基づいて第2の観察像を取得するために、図9のフローチャートのステップS2で観察対象となる試料の傾斜、位置合わせを行う。試料の傾斜は、第1の観察像に対して視差を生じさせる程度とする。その傾斜角度は、倍率によって最適値は異なるが、例えば3〜7°、好ましくは5°程度とする。図4および図5の例では、図4の「次へ」ボタン656を押下すると、第1表示領域47に表示中の試料が自動的に適切な回転軸及び傾斜角度にて傾斜され、図5の第1表示領域47に示すように傾斜前の第1の観察像と、傾斜後の第2の観察像とが並べて表示される。このように、プログラム側で自動的に傾斜を実行させることにより、ユーザは回転の角度や回転軸等を意識することなく3次元画像の生成を行える。試料を傾斜して表示させるために、この例では試料を裁置する試料台を傾斜させている。ただ、荷電粒子線撮像部側を傾けたり、電子顕微鏡の入射電子の入射角を傾ける等、光路を傾斜させる方法によっても同様の効果を実現することができる。これらの場合は試料台を固定させたままで傾斜画像を取得できる。
【0047】
また図5に示すように、回転前と回転後の観察像を並べて表示することにより、特に手動設定の場合はユーザが傾斜の状態を回転の前後で対比しながら確認できるので、調整が容易となる。図5の例では、第1表示領域47を左右に分割して、左の第1分割表示領域47Aに第1の観察像を、右の第2分割表示領域47Bに、第2の観察像を撮像するために操作中の対象画像が表示される。なお、これらの表示を入れ替えることも可能であることはいうまでもない。またこの例では第1表示領域47を2分割しているが、3以上の画面に分割することも可能であり、さらに左右に限られず上下に分割する等、そのレイアウトや画面サイズも適宜変更できる。さらに、第2表示領域48を利用して画像の対比に利用したり、第2表示領域48を複数の画面に分割することも可能である。
【0048】
このような自動設定の後、図9のステップS2ではさらに、傾斜された表示中の試料が、第1の観察像と同じ視点で表示されるように位置合わせと画像の微調整を行う。図5の説明表示欄630では、「位置を合わせる」、「2枚目を撮像する」との手順が説明される。ユーザはこれに従い、「倍率」ボタン611aで傾斜された観察像を拡大しながら、「中心移動」ボタン612a等を使用して、第1の観察像とほぼ同じ位置となるように移動させる。である「倍率」ボタン611aは倍率設定部の一形態であり、これによって表示中の画像の倍率を可変できる。この例では、撮像対象の試料の表示倍率をハードウェア的に変更する他、既に取得した第1の観察像に関する画像データについても、表示倍率変更機能によりソフトウェア的に拡大縮小することが可能となる。すなわち、上述した離散倍率画像取得機能で取得した離散倍率画像に基づき、離散倍率画像を取得した範囲で任意の倍率にて補完画像を生成して表示できる。また、マウスのスクロールボタンなどでズームするように連続的に表示倍率を変化させても、各表示倍率に応じた画像を順次作成して表示部28に切り換えて表示し、あたかも参照画像の大きさを連続的に変化させるように表示することもできる。また「中心移動」ボタン612aを押下すると、マウス等で表示領域状をクリックしたポイントが画面の中心となるように移動される。また移動には、マウスやキーボード等のポインティングデバイスを利用することもできる。
(倍率連動機能)
【0049】
さらに、第1分割表示領域47Aと第2分割表示領域47Bの表示倍率を同一に保つ倍率連動機能を備えている。すなわち、第1分割表示領域47Aまたは第2分割表示領域47Bのいずれか一方を拡大/縮小すると、他方もこれに追随して同様に拡大/縮小される。これによって、一方の拡大/縮小操作に合わせて他方の拡大/縮小操作を行う手間を省くことができ、常に第1分割表示領域47Aと第2分割表示領域47Bの表示倍率を等しくして、両画像の対比を容易に行える。特に、基準となる第1の観察像に関する参照画像を第1分割表示領域47Aに表示し、これに合わせるように第2分割表示領域47Bに表示される観察対象の位置や姿勢を倍率設定部611や観察視野移動設定部612等の視野設定部で調整する際、詳細な位置合わせのために拡大表示させる場合に、一々対応する画像の倍率を調整しなくて済むため、操作手数を少なくして使い易い環境が実現される。特にSEM等の荷電粒子線装置の観察倍率は、ダイナミックレンジが非常に広く、数万倍、数十万倍の高倍率まで観察可能であるため、同じ視野を探す対象が非常に広範になる可能性がある。このような場合に、倍率連動した参照画像を利用することで、作業能率を大きく向上させることができる。また倍率のみならず、視野の移動にも自動的に追随させるよう構成してもよく、これによってさらに操作を省力化して比較を容易に行える。なお、このような連動機能は、ON/OFFすることができ、第1分割表示領域47A、第2分割表示領域47Bの各画像を個別に拡大/縮小することもできる。また、いずれか一方の画像を操作したときのみ倍率の連動機能をONさせ、他方の画像を操作したときは連動させずに単独で拡大/縮小させるように構成してもよい。
【0050】
このような倍率連動機能の一例を図10〜図12の例に基づいて説明する。この例では、上述の通り第1の観察像の撮像時に同じ視点にて低倍率で撮像した複数の離散倍率画像を広域画像として利用し、第1分割表示領域47Aに離散倍率画像又は離散倍率画像に基づく補完画像を参照画像として切り換えて表示し、第2分割表示領域47Bには現在観察中の観察対象が表示されている。低倍率とは、例えば第1の観察像の1/10〜1/1000の縮小率とする。なお広域画像の撮影は、参照画像取得機能によらずユーザが手動で行うことも可能である。離散倍率画像取得機能はON/OFFさせることもでき、ユーザが必要な倍率の参照画像を手動で撮像するよう構成してもよい。図10の状態から、倍率設定部611を操作すると自動的に倍率連動機能が働き、拡大することで図11、さらに拡大すると図12のように変化する。この際、上述のように第2表示領域48に表示される広域図では、第2分割表示領域47Bで表示中の領域が矩形状の枠状681に表示されるので、現在どの部位に視点が移動されているのかを容易に把握でき、ポイントを見失うことを回避できる。なおこの例では倍率設定部611が倍率連動部を兼用しているが、倍率連動部を別途設けて、倍率連動機能のON/OFFを切り換えるように構成することも可能である。また上記の例では、各分割表示領域を縦長にしているが、その際左右方向を圧縮して広く表示させてもよい。
(ガイド線682)
【0051】
さらに、各分割表示領域にはガイド線682を表示させることもできる。図10〜図12の例では、第1分割表示領域および第2分割表示領域47Bにそれぞれ十字状のガイド線682を重ねて表示させており、それぞれの対応する位置の確認をサポートしている。ガイド線682は十字状の例に限られず、碁盤目状のグリッドやターゲット状の同心円、斜め方眼状等が適宜利用できる。
【0052】
以上のようにして第2の観察像の像観察条件が設定されると、図9のステップS3に進み「撮影」ボタン654を押下して第2の観察像を撮像する。撮像された第2の観察像は、画像データファイルとして画像データ記憶部68であるコンピュータのハードディスク、記録媒体等に保存される。
【0053】
そして図9のステップS4で、図6の画面に切り換えられ、これら第2の観察像および第1の観察像に基づいて、演算部70で3次元画像を合成する。図6の例では、生成される3次元画像の精細さ、処理速度に応じて生成条件を調整した3次元画像生成モード選択部670として、「ファーストモード」と「ファインモード」の2つのモードを用意している。「ファーストモード」では3次元画像の構築時間が短いものの得られる3次元画像が若干荒くなり、「ファインモード」では構築に時間がかかるものの滑らかな3次元画像を得ることができる。ユーザは観察目的等に応じてこのような速度重視または画質重視のモードを選択し、「次へ」ボタン672を押下すると、選択されたモードにて3次元画像が生成される。2枚の視差画像から3次元画像を生成する手法は、既知の、あるいは将来開発される手法が適宜利用できる。
【0054】
以上のようにして、離散倍率画像取得機能および表示倍率変更機能によって位置合わせの作業を容易に行うことができ、詳細な位置合わせが可能となり3次元画像の生成が正確に行われる。特に、像観察時に既に取得した画像を現在の観察倍率に同調させて変化させながら表示する際に、倍率同調させるための画像を離散的な倍率で取得した実画像の離散倍率画像と、演算により生成した補間画像とを切り替えて表示することで、スムーズな拡大/縮小が実現される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の荷電粒子線装置、荷電粒子線装置の操作方法、荷電粒子線装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体又は記録した機器は、例えば荷電粒子である電子線あるいはイオンビーム等を利用し、半導体素子の特性評価、測定工程において利用される電子線外観検査装置、電子線測長装置、粒子ビーム検査装置等において、撮像された観察像の拡大/縮小表示を行う機能に好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施の形態に係る荷電粒子線装置の構成を示すブロック図である。
【図2】荷電粒子線装置の表示倍率変更機能を示すブロック図である。
【図3】撮像された参照画像と補完画像との関係を示す説明図である。
【図4】「1枚目の撮像」ステップを実行中の3次元画像生成プログラムのユーザインターフェース画面を示すイメージ図である。
【図5】「2枚目の撮像」ステップを実行中の3次元画像生成プログラムのユーザインターフェース画面を示すイメージ図である。
【図6】「3D画像作成」ステップを実行中の3次元画像生成プログラムのユーザインターフェース画面を示すイメージ図である。
【図7】3次元画像を表示する画面の一例を示す3次元画像生成プログラムのユーザインターフェース画面を示すイメージ図である。
【図8】電子顕微鏡操作プログラムのマニュアル観察モードにおける操作画面を示すイメージ図である。
【図9】3次元画像を生成する手順を示すフローチャートである。
【図10】電子顕微鏡操作プログラムの倍率連動機能の一例を示すイメージ図である。
【図11】電子顕微鏡操作プログラムの倍率連動機能の一例を示すイメージ図である。
【図12】電子顕微鏡操作プログラムの倍率連動機能の一例を示すイメージ図である。
【符号の説明】
【0057】
100…電子顕微鏡
200…荷電粒子線装置
1…コンピュータ;2…中央演算処理部
3…電子銃高圧電源;4…フィラメント
5…ウェーネルト;6…アノード
7…電子銃;8…電子線
9…ガンアライメントコイル;10…ガンアライメントコイル制御部
11…収束レンズ制御部;12…収束レンズ
13…対物レンズ絞り;14…非点収差補正コイル制御部
15…電子線偏向走査コイル制御部;16…対物レンズ制御部
17…非点収差補正コイル;18…電子線偏向走査コイル
19…対物レンズ;20…試料
21…二次電子検出器;22…反射電子検出器
23…二次電子検出増幅部;24…反射電子検出増幅部
25…A/D変換器;26…A/D変換器
27…画像データ生成部;28…表示部
29…プリンタ;30…排気系ポンプ
31…試料室;32…排気制御部;33…試料台
42…荷電粒子線撮像部
47…第1表示領域;47A…第1分割表示領域;47B…第2分割表示領域
48…第2表示領域
68…画像データ記憶部
70…演算部;74…モード切替部
76…離散倍率画像取得部
78…補完処理部
601…画像補正設定手段;601a…シャープネス設定手段
601b…ハイライト設定手段;601c…ガンマ補正設定手段
601d…輝度分布図;601e…オーバーレンジ抽出設定手段
603…個別条件設定手段;603a…「検出器」ボックス
603b…「加速電圧」ボックス;603c…「真空度」ボックス
603d…「スポットサイズ」ボックス
604…ファイル対応条件設定手段;605…「eプレビュー設定」ボタン
611…倍率設定部;611a…「倍率」ボタン
612…観察視野移動設定部;612a…「中心移動」ボタン
613…コントラスト・明るさ設定手段;614…非点収差調整設定手段
615…光軸調整設定手段
621…「3D」タブ
630…説明表示欄;640…フロー図
641…「1枚目の撮影」欄
650…観察条件設定部
652…「倍率誤差補正」ボタン
654…「撮影」ボタン;656…「次へ」ボタン
670…3次元画像生成モード選択部;672…「次へ」ボタン
681…枠状
682…ガイド線
700…3次元画像生成プログラムのユーザインターフェース画面
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線を観察対象の試料に照射し、試料から得られる信号を検出して観察像を得る荷電粒子線装置、荷電粒子線装置の操作方法、荷電粒子線装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体又は記録した機器に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子線で観察対象の試料を照射して得られる信号を検出して観察像を得る荷電粒子線装置として、例えば電子線を用いた透過電子顕微鏡や走査電子顕微鏡がある。このような荷電粒子線装置の内、例えば電子顕微鏡は、電子の進行方向を自由に屈折させ、光学顕微鏡のような結像システムを電子光学的に設計したものである。電子顕微鏡には、試料や標本を透過した電子を電子レンズを用いて結像する透過型の他、試料表面で反射した電子を結像する反射型、収束電子線を試料表面上に走査して各走査点からの二次電子を用いて結像する走査型電子顕微鏡、加熱あるいはイオン照射によって試料から放出される電子を結像する表面放出型(電界イオン顕微鏡)等がある(例えば特許文献1)。
【0003】
走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)は、観察対象となる試料に細い電子線(電子プローブ)を照射した際に発生する二次電子や反射電子を、二次電子検出器、反射電子検出器等それぞれの検出器を用いて取り出し、ブラウン管やLCD等の表示画面上に表示して、主として試料の表面形態を観察する装置である。一方、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)は、薄膜試料に電子線を透過させ、その際に試料中で原子により散乱、回折された電子を電子回折パターンまたは透過電顕像として得ることによって主に物質の内部構造を観察できる。
【0004】
電子線が固体試料に照射されたとき、電子のエネルギーによって固体中を透過するが、その際に試料を構成する原子核や電子との相互作用によって弾性的な衝突、弾性散乱やエネルギー損失を伴う非弾性散乱を生じる。非弾性散乱によって試料元素の殻内電子を励起したり、X線等を励起したり、また二次電子を放出し、それに相当するエネルギーを損失する。二次電子は衝突する角度によって放出される量が異なる。一方、弾性散乱によって後方に散乱し、試料から再び放出される反射電子は、原子番号に固有の量が放出される。SEMはこの二次電子や反射電子を利用する。SEMは電子を試料に照射し、放出される二次電子や反射電子を検出して観察像を結像している。
【0005】
このような電子顕微鏡等の荷電粒子線装置で撮像した荷電粒子線画像を拡大/縮小させる等、表示倍率を変更して表示させたいことがある。例えば3次元画像を構築するための視差画像を撮像するための位置合わせ作業や、過去に撮影した同じ試料の同一視野での再観察、金など導電体物質のコート後の再観察など、試料の詳細を観察するために画像を拡大したり、あるいは視野探しのために縮小することがある。従来、高倍率で過去に一度観察したことのある視野を別の機会に改めて探す場合、又は似たような試料の同じ位置に相当する視野を探す場合の手順としては、過去の観察の際に予め最終の目的倍率から低倍率まで連続的に画像を取得してこれを保存しておき、別の機会に視野探しする際には過去の観察で取得した画像を低倍率から高倍率に逆順に参照しながら視野を探すことが行われていた。
【0006】
しかしながら、切れ目のない連続的な画像を得るためには、事前に最終必要倍率の視野から低倍率まで、観察位置を画面中心に保ったままで連続的に倍率を変化させて多くの画像を取得しておく必要があった。このためには倍率を変更して撮像し、さらに倍率を変更して撮像するという作業を繰り返す必要があり、多大な時間と手間がかかるという欠点がある。また、このように同一の視点で倍率を変更して多数の観察像を撮像する結果負荷が大きくなり、電子線照射の繰り返しによって試料サンプルに損傷を与えたり、フィラメントの寿命が短くなるといった悪影響が生じるという問題もあった。
【特許文献1】特開平3−93140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものである。本発明の主な目的は、各倍率で観察像を取得しておかずとも所望の倍率の観察像に変更可能な荷電粒子線装置、荷電粒子線装置の操作方法、荷電粒子線装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体又は記録した機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の荷電粒子線装置は、荷電粒子線を観察対象に照射し、観察対象から得られる信号を検出して観察像を得るための荷電粒子線撮像部と、荷電粒子線撮像部で観察像を撮像する際の倍率の設定を少なくとも含む像観察条件を設定するための観察条件設定部と、荷電粒子線撮像部で観察像を撮像する際に、観察条件設定部で設定された撮像時の倍率を基準とし、異なる複数の倍率にて離散倍率画像を撮像し保存するための離散倍率画像取得部と、観察像を表示するための表示部と、表示部で表示される観察像の表示倍率を調整するための倍率設定部と、倍率設定部で設定される表示倍率の観察像が保存されていない場合、同一の観察像について離散倍率画像取得部にて予め撮像された離散倍率画像に基づいて、倍率設定部で設定された倍率にて表示される補完観察像を演算により生成し、該補完観察像を表示するための補完処理部とを備える。この構成によって、観察像の撮像時に所定の倍率にて複数の離散倍率画像を取得しておき、これに基づいて離散倍率画像の存在しない中間的な倍率であっても補完観察像として生成できるので、すべての倍率の観察像を実画像として取得することなく任意の表示倍率の観察像を生成して表示できる。
【0009】
また、本発明の他の荷電粒子線装置は、離散倍率画像取得部が、離散倍率画像として観察条件設定部で設定された撮像時の倍率よりも低い複数の離散的な倍率で離散倍率画像を撮像する。この構成によって、広い視野を持った広域な離散倍率画像を自動的に取得し、縮小表示させた際でも周辺部の画像の情報が失われることを回避し、離散倍率画像を視野探しなどに好適に利用できる。
【0010】
さらに、本発明の他の荷電粒子線装置は、離散倍率画像取得部による離散倍率画像の撮像が、荷電粒子線撮像部による観察像の撮像と観察位置の中心を同じとする。この構成によって、一の観察対象を同じ姿勢で低倍率の観察像を含む複数の画像で保存しておくことができる。
【0011】
さらにまた、本発明の他の荷電粒子線装置は、離散倍率画像取得部による離散倍率画像の保存が、荷電粒子線撮像部による観察像のデータと関連付けて行われる。この構成によって、一の観察対象に関する観察像とその離散倍率画像を纏めて管理することができ、画像の呼び出しや表示をスムーズに行うことができる。
【0012】
さらにまた、本発明の他の荷電粒子線装置は、表示部に表示される観察像の表示倍率を倍率設定部で連続的に変更すると、表示倍率が予め撮像された離散倍率画像の倍率と一致するときは該離散倍率画像を表示し、表示倍率が異なるときは近傍の表示倍率で撮像された離散倍率画像に基づいて補完処理部で生成された補完画像を表示するよう、離散倍率画像と補完画像を切り替えて表示するように構成している。この構成によって、連続的に表示倍率を変化させても、各表示倍率に応じた画像を順次作成し、また実画像が存在する倍率については該当する参照画像に切り換えて表示し、あたかも連続的に倍率を変化させるようにして表示部の画像の倍率を変化できる。
【0013】
さらにまた、本発明の他の荷電粒子線装置は、観察対象を裁置するためのステージと、ステージ上の観察対象に対して電子線を照射するための電子銃と、観察対象から放出される二次電子または反射電子を検出するための1以上の検出器と、検出器で検出された情報に基づいて電子線観察像を結像するための電子線撮像部と、電子線撮像部で撮像された観察像を表示するための表示部とを備え、所定の像観察条件に基づいて、電子銃に加速電圧を印加して電子線を観察対象に照射し、観察対象から放出される二次電子または反射電子を検出器で検出しながら観察対象表面の所望の領域を走査することで、観察像を結像し表示部に表示可能である。この荷電粒子線装置はさらに、電子線撮像部で観察像を撮像する際の倍率の設定を少なくとも含む像観察条件を設定するための観察条件設定部と、電子線撮像部で観察像を撮像する際に、観察条件設定部で設定された撮像時の倍率よりも低い複数の離散的な倍率で離散倍率画像を撮像し保存するための離散倍率画像取得部と、表示部で表示される観察像の表示倍率を調整するための倍率設定部と、倍率設定部で設定される表示倍率の観察像が保存されていない場合、同一の観察像について離散倍率画像取得部にて予め撮像された離散倍率画像に基づいて、倍率設定部で設定された倍率にて表示される補完観察像を演算により生成し、該補完観察像を表示するための補完処理部とを備える。この構成によって、観察像の撮像時に所定の倍率にて複数の離散倍率画像を取得しておき、これに基づいて離散倍率画像の存在しない中間的な倍率であっても補完観察像として生成できるので、すべての倍率の観察像を実画像として取得することなく任意の表示倍率の観察像を生成して表示できる。
【0014】
また、本発明の荷電粒子線装置の操作方法は、所定の像観察条件で荷電粒子線撮像部にて観察像を撮像する際に、撮像時の倍率よりも低い複数の離散的な倍率で離散倍率画像を各々撮像するステップと、表示部にて表示される観察像の表示倍率を倍率設定部で変更する際に、表示倍率に応じて離散倍率画像を切り換えて表示すると共に、該当する離散倍率画像のない表示倍率については、該表示倍率の前後で撮像された離散倍率画像に基づいて補完処理部が該当する表示倍率の画像を生成して表示するステップとを有する。これによって、観察像の撮像時に所定の倍率にて複数の離散倍率画像を取得しておき、これに基づいて離散倍率画像の存在しない中間的な倍率であっても補完観察像として生成できるので、すべての倍率の観察像を実画像として取得することなく任意の表示倍率の観察像を生成して表示できる。
【0015】
さらにまた、本発明の荷電粒子線装置操作プログラムは、所定の像観察条件で荷電粒子線撮像部にて観察像を撮像する際に、撮像時の倍率よりも低い複数の離散的な倍率で離散倍率画像を各々撮像する離散倍率画像取得機能と、表示部にて表示される観察像の表示倍率を倍率設定部で変更する際に、表示倍率に応じて離散倍率画像を切り換えて表示すると共に、該当する離散倍率画像のない表示倍率については、該表示倍率の前後で撮像された離散倍率画像に基づいて補完処理部が該当する表示倍率の画像を生成して表示する表示倍率変更機能とをコンピュータに実現させる。これによって、観察像の撮像時に所定の倍率にて複数の離散倍率画像を取得しておき、これに基づいて離散倍率画像の存在しない中間的な倍率であっても補完観察像として生成できるので、すべての倍率の観察像を実画像として取得することなく任意の表示倍率の観察像を生成して表示できる。
【0016】
また本発明のコンピュータで読み取り可能な記録媒体又は記録した機器は、上記プログラムを格納するものである。記録媒体には、CD−ROM、CD−R、CD−RWやフレキシブルディスク、磁気テープ、MO、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、Blu−ray、HD DVD(AOD)等の磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリその他のプログラムを格納可能な媒体が含まれる。またプログラムには、上記記録媒体に格納されて配布されるものの他、インターネット等のネットワーク回線を通じてダウンロードによって配布される形態のものも含まれる。さらに記録した機器には、上記プログラムがソフトウェアやファームウェア等の形態で実行可能な状態に実装された汎用もしくは専用機器を含む。さらにまたプログラムに含まれる各処理や機能は、コンピュータで実行可能なプログラムソフトウエアにより実行してもよいし、各部の処理を所定のゲートアレイ(FPGA、ASIC)等のハードウエア、又はプログラムソフトウエアとハードウェアの一部の要素を実現する部分的ハードウエアモジュールとが混在する形式で実現してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の荷電粒子線装置、荷電粒子線装置の操作方法、荷電粒子線装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体又は記録した機器によれば、所定の離散的な倍率で撮像された離散倍率画像に基づいて補完観察像を生成して表示できるので、多数の実画像を表示倍率毎に撮像せずとも所望の表示倍率にて観察像を表示することができ、荷電粒子線装置による観察を撮像時間や手間を省力化して使い易くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための荷電粒子線装置、荷電粒子線装置の操作方法、荷電粒子線装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体又は記録した機器を例示するものであって、本発明は荷電粒子線装置、荷電粒子線装置の操作方法、荷電粒子線装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体又は記録した機器を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0019】
本明細書において荷電粒子線装置とこれに接続される操作、制御、入出力、表示、その他の処理等のためのコンピュータ、プリンタ、外部記憶装置その他の周辺機器との接続は、例えばIEEE1394、RS−232x、RS−422、RS−423、RS−485、USB等のシリアル接続、パラレル接続、あるいは10BASE−T、100BASE−TX、1000BASE−T等のネットワークを介して電気的に接続して通信を行う。接続は有線を使った物理的な接続に限られず、IEEE802.1x、OFDM方式等の無線LANやBluetooth等の電波、赤外線、光通信等を利用した無線接続等でもよい。さらに観察像のデータ保存や設定の保存等を行うための記録媒体には、メモリカードや磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が利用できる。
【0020】
以下の実施例ではSEMについて説明する。但し、本発明はTEMやその他の荷電粒子線装置においても利用できる。また光学顕微鏡、レーザ顕微鏡、原子間力顕微鏡、静電気力顕微鏡、近視野顕微鏡等の内、2つ以上の顕微鏡の機能を備えた複合型顕微鏡に利用してもよい。本発明を具現化した一実施例に係るSEMについて、図1に基づいて説明する。SEMは一般に加速電子の電子線を発生させ試料に到達させるまでの光学系と、試料を配置する試料室(チャンバ)と、試料室内を真空にするための排気系と、像観察のための操作系で構成される。図1の電子顕微鏡100は、このような部材により荷電粒子線による電子線観察像の観察を行うための荷電粒子線撮像部42の構成を示している。また、図1のコンピュータ1にインストールされた電子顕微鏡の操作プログラムで、電子顕微鏡の像観察条件の設定や各種操作を行い、観察像の表示を行う表示部28に表示する。
【0021】
光学系は、加速電子の電子線を発生させる電子銃7、加速電子の束を絞り込んで細束化するレンズ系、試料から発生する二次電子や反射電子を検出する検出器を備える。図1に示す走査型電子顕微鏡100は、光学系として電子線を照射する電子銃7と、電子銃7から照射される電子線がレンズ系の中心を通過するように補正するガンアライメントコイル9と、電子線のスポットの大きさを細く絞る収束レンズ12であるコンデンサレンズと、収束レンズ12で収束された電子線を試料20上で走査させる電子線偏向走査コイル18と、走査に伴い試料20から放出される二次電子を検出する二次電子検出器21と、反射電子を検出する反射電子検出器22を備える。
【0022】
試料室31には、試料台33、試料導入装置、X線検出用分光器等が備えられる。試料台33(ステージ)はX、Y、Z移動、回転、傾斜機能を備える。排気系は、加速電子の電子線が気体成分通過中に極力エネルギーを失うことなく試料に到達するために必要で、ロータリーポンプ、油拡散ポンプが主として用いられる。
【0023】
操作系は二次電子像、反射電子像、X線像等を表示、観察しながら照射電流の調整、焦点合わせ等を行う。二次電子像等の出力は、アナログ信号であれば写真機によるフィルム撮影が一般的であったが、近年は画像をデジタル信号に変換した出力が可能となり、データの保存や画像処理、印刷等の多種多様な処理が可能である。図1のSEMは、二次電子像や反射電子像等の観察像を表示する表示部28と印刷のためのプリンタ29を備える。また操作系は、像観察条件として少なくとも加速電圧またはスポットサイズ(入射電子線束の直径)を設定するために必要な設定項目の設定手順を誘導(ガイダンス)する誘導手段を備える。
【0024】
図1に示すSEMは、コンピュータ1と接続され、コンピュータ1を電子顕微鏡100の操作を行うコンソールとして使用し、また必要に応じて像観察条件や画像データを保存したり、画像処理や演算を行う。図1に示すCPUやLSI等で構成される中央演算処理部2は、走査型電子顕微鏡100を構成する各ブロックを制御する。電子銃高圧電源3を制御することにより、フィラメント4、ウェーネルト5、アノード6からなる電子銃7より電子線を発生させる。電子銃7から発生された電子線8は、必ずしもレンズ系の中心を通過するとは限らず、ガンアライメントコイル9をガンアライメントコイル制御部10によって制御することで、レンズ系の中心を通過するように補正を行う。次に、電子線8は収束レンズ制御部11によって制御される収束レンズ12であるコンデンサコイルによって細く絞られる。収束された電子線8は、電子線8を偏向する非点収差補正コイル17、電子線偏向走査コイル18、対物レンズ19、および電子線8のビーム開き角を決定する対物レンズ絞り13を通過し、試料20に至る。非点収差補正コイル17は非点収差補正コイル制御部14によって制御され、走査速度等を制御する。同様に電子線偏向走査コイル18は電子線偏向走査コイル制御部15によって、対物レンズ19は対物レンズ制御部16によって、それぞれ制御され、これらの作用によって試料上を走査する。試料20上を電子線8が走査することにより、試料20から二次電子、反射電子等の情報信号が発生され、この情報信号は二次電子検出器21、反射電子検出器22によりそれぞれ検出される。検出された二次電子の情報信号は二次電子検出増幅部23を経て、また反射電子の情報信号は反射電子検出器22で検出されて反射電子検出増幅部24を経て、それぞれA/D変換器25、26によりA/D変換され、画像データ生成部27に送られ、画像データとして構成される。この画像データはコンピュータ1に送られ、コンピュータ1に接続されたモニタ等の表示部28にて表示され、必要に応じてプリンタ29にて印刷される。排気系ポンプ30は、試料室31内部を真空状態にする。排気系ポンプ30に接続された排気制御部32が真空度を調整し、試料20や観察目的に応じて高真空から低真空まで制御する。
【0025】
電子銃7はあるエネルギーをもった加速電子を発生させるソースとなる部分で、W(タングステン)フィラメントやLaB6フィラメントを加熱して電子を放出させる熱電子銃の他、尖状に構成したWの先端に強電界を印加して電子を放出させる電界放射電子銃がある。レンズ系には、収束レンズ、対物レンズ、対物レンズ絞り、電子線偏向走査コイル、非点収差補正コイル等が装着されている。収束レンズは電子銃で発生した電子線をさらに収斂して細くする。対物レンズは最終的に電子プローブを試料に焦点合わせするためのレンズである。対物レンズ絞りは収差を小さくするために用いられる。検出器には、二次電子を検出する二次電子検出器と反射電子を検出する反射電子検出器がある。二次電子はエネルギーが低いのでコレクタにより捕獲され、シンチレータにより光電子に変換されて、光電子倍増管で信号増幅される。一方、反射電子の検出にはシンチレータあるいは半導体型が用いられる。なお、本発明では二次電子や反射電子の信号検出に限定されず、オージェ電子、透過電子、内部起電力、カソードルミネッセンス、X線、吸収電子等の信号検出器を適用することもできる。
(試料台33)
【0026】
観察位置の位置決めは、試料20を載置した試料台33を物理的に移動させて行う。この場合は観察位置決め手段が試料台33で構成される。試料台33は試料20の観察位置を調整可能なように様々な方向への移動、調整が可能である。移動、調整の方向は、試料台33の観察位置を移動、調整させるため、試料台33の平面方向であるX軸およびY軸方向、R軸(回転)方向への移動および微調整が可能である他、試料の傾斜角度を調整するために試料台33のT軸方向の調整、ならびに対物レンズと試料との距離(ワーキングディスタンス)を調整するために試料台33のZ軸方向の調整が可能である。
【0027】
観察像の位置決めや観察視野の移動には、試料台を物理的に移動させる方法に限られず、例えば電子銃から照射される電子線の走査位置をシフトさせる方法(イメージシフト)も利用できる。あるいは両者を併用する方法も利用できる。あるいはまた、広い範囲で一旦画像データを取り込み、データをソフトウェア的に処理する方法も利用できる。この方法では、一旦データが取り込まれてデータ内で処理されるため、ソフトウェア的に観察位置を移動させることが可能で、試料台の移動や電子線の走査といったハードウェア的な移動を伴わないメリットがある。予め大きな画像データを取り込む方法としては、例えば様々な位置の画像データを複数取得し、これらの画像データをつなぎ合わせることで広い面積の画像データを取得する方法がある。あるいは、低倍率で画像データを取得することによって、取得面積を広く取ることができる。
(eプレビュー)
【0028】
この電子顕微鏡は、簡易観察像取得機能(プレビュー機能)としてeプレビューを備える。eプレビューとは、最適な観測条件を得るために電子顕微鏡もしくはコンピュータ側で推奨の観測条件を簡易的に複数作成し、各々の観測条件で観察像を取得し、複数の簡易観察像として一覧表示するものである。まずSEMの像観察条件の設定項目の内、1つまたは複数を変化させた設定を、簡易的な像観察条件として複数組準備しておく。例えば加速電圧や検出器の種類を変更した複数の簡易像観察条件を自動的に生成する。そして準備した複数組の簡易像観察条件を順にSEMに設定し、それぞれの条件で試料を連続的に観察する。観察した複数の簡易観察像は一時的に保存し、表示部28のウィンドウ等に一覧表示する。一覧表示の際には、簡易観察像を縮小して同時に表示させることができる。例えばユーザは、表示された複数の簡易観察像を比較し、チャージアップの発生を確認する。簡易観察像の画面でチャージアップによる像障害が発生しているものがあれば、その手前の観察像で用いた加速電圧が、チャージアップが発生しない最大の加速電圧になる。必要に応じて、eプレビューは複数回実行する。例えばチャージアップが確認されない場合は、加速電圧を上げて再度eプレビューを行う。あるいは、チャージアップが生じない最大加速電圧を詳細に調べるために、eプレビューで使用する加速電圧の変化量を小さくして絞り込みを行うこともできる。このようにして測定したチャージアップしない最大加速電圧を、除電終了電圧として設定する。設定は、第2表示領域48から該当する簡易観察像をユーザが選択することで、自動的にその加速電圧をチャージアップしない最大加速電圧として電子顕微鏡またはコンピュータが保持し、設定する。またチャージアップしない最大加速電圧をユーザが手動で記録もしくは入力してもよい。
【0029】
また、この電子顕微鏡において、以前に結像された観察像を像観察条件と共に記憶される画像ファイル、および前回に結像された観察像に対応する像観察条件は、例えばコンピュータ1のメモリやハードディスク等の記憶装置に記憶される。さらにこの電子顕微鏡では、排気系によって試料室内の真空度を変更して像観察を行うことが可能である。一般に試料室が高真空であれば分解能の高い鮮明な画像を得ることができるが、反面チャージアップが生じ易くなり、また水分を含む試料の観察に不適といった欠点がある。一方で低真空であればチャージアップが生じ難くなり、絶縁体や水分を含む試料の観察に適している反面、鮮明な観察像を得ることが困難になるという欠点がある。したがって、観察対象の試料や観察目的に応じて試料室内の圧力(真空度)を調整することで更に適切な観察像を得ることが可能となる。しかしながら、真空度を調整することによって、像観察条件のパラメータが更に増えることとなり、SEMの操作に慣れていない初心者にとっては条件設定がより困難となる。特に低真空観察では像観察条件の調整が困難となり、結像すら容易でない。そこでこの電子顕微鏡では、低真空観察用の観察モードに特化したガイダンス機能を設けることにより、このガイダンスに従って初心者でも容易に低真空観察が可能なユーザ環境を提供している。さらに、通常の高真空観察に適した高真空観察用のガイダンス機能も設け、ユーザにいずれの圧力(真空度)で観察を行いたいかを選択させることによって、それぞれに適したガイダンス機能が実行される。また、高真空観察、低真空観察の二段階のみならず、中真空観察、超高真空観察等も加えて三段階、四段階以上といった複数のガイダンス機能を設けることもできる。なお本明細書においては高真空、低真空の値を特に限定するものでないが、一般に高真空とは圧力が0.1Pa〜10−5Pa(10−3〜10−7Torr)あるいは更に真空度の高い10−5Pa〜10−8Pa(10−7〜10−10Torr)、また低真空とは100kPa〜100Pa(760〜1Torr)あるいは100Pa〜0.1Pa(1〜10−3Torr)を指す。低真空観察は、例えばESEM(環境制御型SEM)を用いて試料室の圧力を調整することにより実行される。
(表示倍率変更機能)
【0030】
次に、以上のようなSEMなどの荷電粒子線装置にて撮像された荷電粒子線観察像を、表示部に表示倍率を変更させて表示させる手順について図2〜図3に基づいて説明する。図2は荷電粒子線装置の表示倍率変更機能を示すブロック図であり、図3は撮像された実画像と補完画像との関係を示す説明図をそれぞれ示している。図2に示す荷電粒子線装置200は、離散倍率画像取得部76および補完処理部78を含む演算部70と、演算部70とそれぞれ接続され、観察像データを演算部70に送出可能な荷電粒子線撮像部42、画像データ記憶部68と、像観察条件を設定するための観察条件設定部650と、撮像された画像を表示するための表示部28と、表示部28における表示倍率を調整するための倍率設定部611とを備える。この図に示す荷電粒子線装置200は、観察条件設定部650で設定された像観察条件に基づいて荷電粒子線撮像部42で撮像された電子線観察像等の荷電粒子線画像、あるいは撮像済みの画像データが保存された画像データ記憶部68に記録された観察像は、演算部70に取り込まれる。演算部70は、電子顕微鏡100に接続されたコンピュータ1や電子顕微鏡100の画像データ生成部27等で実現される。演算部70は、取得した観察像を表示部28に表示させる。表示部28はCRTや液晶モニタ等で構成される。表示部28に表示される観察像は、倍率設定部611で拡大/縮小することができ、表示倍率を調整できる。例えば、2以上の視差画像に基づいて3次元画像を演算する3次元画像生成機能を実行するには、2枚の視差画像、特に基準となる一の観察像に対して、視差を生じさせるように傾斜させた画像を取得することが重要となる。この際に表示倍率を縮小した参照画像にて視野を探し、さらに表示倍率を拡大した参照画像を使用して詳細な位置合わせを行うことがある。
【0031】
このような表示中の画像データを拡大/縮小する手法としては、画像データをデータ上で拡大、縮小するデジタルズームによって実現することが考えられるが、デジタルズームによって実現できる実用可能な範囲は精々3倍程度であり、SEMのような数千〜数万レベルといったダイナミックレンジの極めて広い観察においては到底利用できない。そこで従来は、撮像の際に後々の利用のために倍率を変更した画像を複数枚併せて撮像しておき、保存しておくことが行われていた。しかしながら、この方法では撮像の度に複数枚の画像を併せて取得する手間がかかり、またこれらの撮像した参照画像を管理する手間もかかっていた。特に、拡大/縮小の際には撮像した画像ファイルから所望の倍率の画像を選択して切り換えて表示しているため、処理が煩雑になる上撮像した元画像との関連及び倍率を記憶しておかねばならず、非常に扱い難かった。加えて、この方法では撮像した倍率の画像データのみしか表示できず、離散的な倍率の表示のみ可能で中間の倍率での表示や連続的に倍率を変化させて表示させることはできなかった。そこで、このような離散倍率画像の取得を自動化する離散倍率画像取得機能と、離散倍率画像に基づいて中間的な倍率の補完観察像を生成する表示倍率変更機能とを備えることで、より使い易い荷電粒子線装置としたものである。
【0032】
具体的には、図2に示す演算部70の離散倍率画像取得部76にて、荷電粒子線撮像部42で新たに観察像の撮像を行う際、同じ観察像に関して倍率を変化させた離散倍率画像を複数枚自動的に取得する。この離散倍率画像は、目的となる観察像から同じ視点(例えば視野の中心を同一にする)にて倍率を低下させた低倍率観察像とする。これによって、表示倍率を低下させた際に、情報の欠落によって画像の周辺が切れて表示される事態を回避できる。例えば1万倍での撮像であれば、1万倍から3千倍、千倍、300倍、100倍といった所定の変化率にて離散的な倍率に変化させる。離散倍率画像を撮像する倍率や枚数は、撮像目的に応じて適宜設定できる。例えば、元画像の撮像の倍率から50倍毎、100倍毎といった所定の倍率で撮像する。あるいは、元画像の撮像の倍率を基準として、100倍までの間で5枚の離散倍率画像が撮像されるよう、倍率を自動的に変更して撮像する。また、倍率の変更は整数倍に限られず、小数点や分数での変更率により倍率を変更して撮像することもできることはいうまでもない。さらに、離散倍率画像を取得する手順も、元画像から徐々に倍率を低下させる他、一旦倍率を離散倍率画像を取得する倍率の最小値に落とし、徐々に拡大するように撮像することもできる。これによって、例えばSEMにおいてチャージアップの発生を抑制することができる。また観察対象物によっては、観察倍率よりも幾分低い倍率の画像のみで観察位置の特定と位置合わせが容易な場合がある。このような場合、離散倍率画像の取得手順を低倍率から高倍率に取得するようにし、取得途中でもユーザが取得を停止できるようにしておくと、観察位置の特定できる画像が取得できた時点でユーザが取得を停止することによって取得時間を短縮できる。
【0033】
後述する図4等に示す荷電粒子線装置操作プログラムのインターフェースの例では、「撮影」ボタン654を押下するタイミングで、自動的に離散倍率画像取得機能を実行して離散倍率画像を撮像し、画像データ記憶部68に保存する。画像データ記憶部68は、コンピュータのハードディスクや記録媒体等が利用できる。また離散倍率画像は、元画像と関連付けて保存することもできる。例えば、元画像の保存時に、同時に撮像した離散倍率画像のファイル名などの情報を併せて保存する。ファイル名の保存は、画像ファイルフォーマット中のユーザデータが記録できる領域等に記録できる。あるいは離散倍率画像の保存時に元画像のファイル名などを併せて保存する、あるいはまた、元画像と離散倍率画像のファイル名の対応関係を記録したインデックスファイルなどを別途作成するといった種々の方法が採用できる。さらに元画像と離散倍率画像とは関連付けられた別ファイルに保存するだけでなく、マルチページtiffやPDF等、同一のファイルに複数画像の保存が可能なファイル形式を利用して、一ファイルとして保存すること、あるいは離散倍率画像と元画像を同一のフォルダに保存することも可能である。これによって、離散倍率画像と元画像のと関連性が明確になり、どのファイルがどの元画像の離散倍率画像であるかといった混乱を避けることができ、検索も容易となる。
さらにまた離散倍率画像は、元画像の撮影と同時に取得する他、元画像の撮影とは別操作、別のタイミングで取得を開始することも可能である。この方法によれば、元画像の撮影後、その画像の出来映えをユーザが判断した上で離散倍率画像を取得することができ、不要な元画像に対して離散倍率画像を無条件に取得してしまうことを避けることができる。
(表示倍率変更機能)
【0034】
さらに、表示部28にて表示される画像の表示倍率を変更するのに応じて、対応する倍率に相当する画像を、上記の離散倍率画像に基づいて補完画像として生成し、表示することもできる。この表示倍率変更機能機能は、演算部70の補完処理部78によって実現される。この様子を図3に基づいて説明する。図3では、撮像時の倍率を変更して取得した離散倍率画像の視野の大きさを模式的に示している。すなわち、同じ画像を撮像する場合、拡大率が大きい程画像の視野の大きさは相対に小さくなる。逆に拡大率を小さくした画像では、視野の広い画像となる。図において元の画像を撮像した際の視野を領域Aにて示している。この画像の離散倍率画像を、観察条件や観察位置を変更せず、撮像倍率を徐々に縮小して撮像し、領域B、領域C、領域Dとして各々取得する。これら実線で示す領域の倍率については、実際に観察像を撮像した実画像のデータが存在する。一方、これらの中間領域、例えば図3において破線で示すA1に相当する倍率の画像については実画像のデータが存在しない。そこで、領域Aおよび/又は領域Bの離散倍率画像に基づいて、補完処理部78が領域A1の補完画像を生成する。補完画像を生成する手法については、既知の方法あるいは将来開発される方法が採用でき、例えば領域Bの離散倍率画像を用いたデジタルズームやデジタルリニアズーム、あるいは領域Aと領域Bの画像に基づき、倍率に応じて領域Aと領域Bの各画素を重み付けして構成した平均画像などにより生成できる。このようにして、図3に示すように領域Aと領域Bの間の領域に相当する表示倍率に関して、領域A1や領域A2で視野を表現できる表示倍率に相当する補完画像を生成する。また領域Bと領域Cの間の領域でも、同様にして領域B2に相当する補完画像を生成する。これによれば、領域Aと領域Dの間で、任意の表示倍率の画像を生成できる。よって、例えば表示部28に表示される元画像を倍率設定部611にて縮小表示させても、周辺部分の画像が切れることなく任意の倍率で表示でき、視野探しを容易に行える。また画像の拡大については、デジタルズームなどによって対応することもできるし、同様の方法で予めより大きな表示倍率の離散倍率画像を取得しておくことにより、画像の拡大時にも実画像に基づいた詳細な画像を表示させることもできる。
【0035】
上記の方法では、表示倍率が離散倍率画像の撮像時の倍率と等しいときは、該当する離散倍率画像を表示し、離散倍率画像のない倍率については計算によって補間した補完画像を生成して、離散倍率画像と補完画像を切り換えて表示している。これにより、連続的に画像を拡大、縮小させて表示させることが可能となり、スムーズなズーミング動作が実現できる。例えば、複数の画像を比較観察する場合に、倍率を同じ倍率に連動して変化させる倍率連動部を使用して比較画像を連続的に倍率を変化をさせることが簡単に実現できる。しかもこの方法であれば、実際の撮像は離散的な離散倍率画像のみで済み、予め大量の実画像を取得する必要がないので撮像時間を短縮でき、荷電粒子線装置や試料への負担も少なく、高速で低負荷に連続的なズームを可能としている。
【0036】
また、表示倍率に関する情報を備える実画像を常に表示させると共に、縮小表示の際に実画像の周囲の情報が失われた分のみを補完画像で補足するように表示させるよう構成することもでき、これにより少なくとも中心部分は実画像を精細に表示できる。
【0037】
次に、離散倍率画像取得機能および表示倍率変更機能が好適に利用できる一例として、荷電粒子線装置を用いて視差画像を取得して3次元画像を生成する手順を、荷電粒子線装置の操作プログラムのユーザインターフェース画面に基づいて説明する。図4〜図7は、荷電粒子線装置の操作プログラムにおいて、3次元画像生成機能を実現する3次元画像生成プログラムのユーザインターフェース画面700をそれぞれ示している。3次元画像生成プログラムは、図1においてはコンピュータ1にインストールされ実行可能な状態としている。3次元画像生成プログラムをインストールされたコンピュータ1が電子顕微鏡100等の機器とデータの送受信や通信を行い、必要な情報を取得し、設定を行う。通信は、例えばRS−232CケーブルやUSBケーブルを介してシリアル通信で行われる。ただ、この形態に限られず電子顕微鏡自体に3次元画像生成プログラムを組み込む態様等も適宜採用できる。また、この3次元画像生成プログラムは、電子顕微鏡の操作プログラムを兼ねており、一のプログラムで電子顕微鏡で像観察を行うための操作と、得られた電子線観察像に基づいて3次元画像を再構築する操作を行え、これによって統合された環境でユーザが操作し易いプログラムとできる。ただ、各機能を別個のプログラムで実現することも可能であり、この場合は各プログラムの呼び出しを専用のメニュー画面等から行ったり、各機能を示すボタンにプログラムの呼び出しをリンクさせる等により、プログラムのスムーズな切換を行い、ユーザが操作し易い環境とできる。さらに、3次元画像生成プログラムは、3次元画像を生成するのみならず、生成された3次元画像に対して表示、操作、計測等の処理を行う機能を付加することもできる。
【0038】
なお図4〜図7等に示す3次元画像生成プログラムのユーザインターフェース画面700の例において、各入力欄や各ボタン等の配置、形状、表示の仕方、サイズ、配色、模様等は適宜変更できることはいうまでもない。デザインの変更によってより見やすく、評価や判断が容易な表示としたり操作しやすいレイアウトとすることもできる。例えば詳細設定画面を別ウィンドウで表示させる、複数画面を同一表示画面内で表示する等、適宜変更できる。またこれらのプログラムのユーザインターフェース画面において、仮想的に設けられたボタン類や入力欄に対するON/OFF操作、数値や命令入力等の指定は、3次元画像生成プログラムを組み込んだコンピュータに接続された入力部で行う。本明細書において「押下する」とは、ボタン類に物理的に触れて操作する他、入力部によりクリックあるいは選択して擬似的に押下することを含む。入出力デバイスはコンピュータと有線もしくは無線で接続され、あるいはコンピュータ等に固定されている。一般的な入力部としては、例えばマウスやキーボード、スライドパッド、トラックポイント、タブレット、ジョイスティック、コンソール、ジョグダイヤル、デジタイザ、ライトペン、テンキー、タッチパッド、アキュポイント等の各種ポインティングデバイスが挙げられる。またこれらの入出力デバイスは、プログラムの操作のみに限られず、3次元画像生成装置等のハードウェアの操作にも利用できる。さらに、インターフェース画面を表示する表示部28のディスプレイ自体にタッチスクリーンやタッチパネルを利用して、画面上をユーザが手で直接触れることにより入力や操作を可能としたり、または音声入力その他の既存の入力手段を利用、あるいはこれらを併用することもできる。
(マニュアル観察モード)
【0039】
マニュアル観察モードは、ユーザが像観察条件を設定可能なモードである。図8に、マニュアル観察モードにおける操作画面の一例を示す。この図に示す操作画面は、結像された観察像を表示する第1表示領域47と、位置表示、広域図、eプレビュー、および比較画像を表示する第2表示領域48と、観察像の画像補正を設定する画像補正設定手段601と、検出器、加速電圧、真空度、およびスポットサイズ等の像観察条件を個別に設定する個別条件設定手段603と、以前に記憶された画像ファイルに対応する像観察条件から一の観察条件を設定するファイル対応条件設定手段604と、プレビュー機能を設定するプレビュー設定手段605と、視野設定部として、観察像等の倍率を設定する倍率設定部611と、観察視野の移動を設定する観察視野移動設定部612と、コントラストおよび明るさを設定するコントラスト・明るさ設定手段613と、非点収差の調整を設定する非点収差調整設定手段614と、光軸の調整を設定する光軸調整設定手段615とを備える。マニュアル観察モードでは、画像補正設定手段601において、シャープネスを設定するシャープネス設定手段601aと、ハイライトを設定するハイライト設定手段601bと、ガンマ補正を設定するガンマ補正設定手段601cと、観察像の輝度分布を示す輝度分布図(ヒストグラム)601dと、オーバーレンジ抽出設定手段601eとが表示される。オーバーレンジ抽出設定手段は、オーバーレンジした領域を抽出して表示するよう設定するものである。具体的には、観察像が表示された状態で、オーバーレンジ抽出設定手段601eの一態様である「オーバーレンジチェック」欄をチェックすると、観察像のアンダー領域あるいはオーバー領域なったオーバーレンジ領域を他の中間色領域と異なる態様で表示される。また、上記と同様個別条件設定手段603によって像観察条件を個別に設定することもできる。個別条件設定手段603で設定可能な項目としては、「検出器」ボックス603a、「加速電圧」ボックス603b、「真空度」ボックス603c、「スポットサイズ」ボックス603d等が用意されているが、非点収差調整設定手段、光軸調整設定手段等を含めてもよい。また、「ファイルから読み出す」ボタン(ファイル対応条件設定手段)404によって、以前に記憶された画像ファイルに対応する像観察条件から一の観察条件を設定することができる。さらに、プレビュー設定手段の一態様である「eプレビュー設定」ボタン605によって、上述したプレビュー機能が実行される。
【0040】
ここで、荷電粒子線装置を用いて視差画像を取得して3次元画像を生成する手順を、図9のフローチャートに基づいて説明する。まずステップS1で、基準となる第1の観察像を取得する。図4は、SEMを操作して第1の観察像を撮像する様子を示す。図4〜図7の画面は図2の表示部28に表示されており、ここでは画面下段のタブの内「3D」タブ621が選択され、3次元画像の生成機能が選択されている。この3次元画像生成プログラムでは、下段のタブが各機能を切り換えるモード切替部74を構成しており、このタブを切り換えることで、機能を選択することができる。図4の画面では、表示部28に表示されるインターフェースの内、画面の右側が現在処置中の画像を示す第1表示領域47である。また画面左側の上部には、第2表示領域48が設けられ、第2表示領域48の下部に設けられたタブを切り換えることによって広域図や位置表示、eプレビュー、比較画像等を切り替えて表示する。
(第2表示領域48)
【0041】
またこの例では、第2表示領域48に広域図を表示させて、第1表示領域47で表示中の領域がどの部位に相当するかを枠状681で表示している。枠状681は、図の例では赤色の矩形状としている。また広域図とは、予め観察対象物を低倍率で撮像した広域画像であり、位置合わせのための参照画像等に利用できる。特に第1の観察像の撮像時に、予め同じ観察対象を低倍率で撮像しておき、これを参照画像として記録しておくことにより、広い視野の情報を有すことができ、縮小表示させた際に画面情報不足により画面が切れることを回避できる。
(説明表示欄630)
【0042】
さらに第2表示領域48の下方には、誘導手段の誘導動作により設定すべき項目の選択もしくは入力を説明する説明表示欄630が設けられる。説明表示欄630は、設定すべき項目について説明文を表示する欄である。文章の説明においては、説明を要する用語にマウスカーソルを重ねるとさらに用語の説明文をバルーンやチップ等で表示したり、HTMLヘルプのようにハイパーリンクを設定し、リンクをクリックすると説明文のファイルや画像が表示されるように構成することもできる。さらに必要に応じて、音声案内やアニメーションによる動画等を適宜組み合わせて説明することもできる。説明表示欄630は更に、手順の流れを示すフロー図640を左側に表示し、かつ現在表示中の手順がフロー図640のどの項目に該当するかをハイライト表示により示している。図4の例においては、「1枚目の撮影」欄641が明るく表示される。また、これに対応させて、この段階で行うべきこと、および確認すべき点や設定項目等を説明表示欄630に文字情報として表示している。ユーザはこの情報にしたがって、確認すべき項目、設定すべき項目を画面上から理解し、必要な設定を各種の操作を行うための観察条件設定部650から行う。観察条件設定部650は、図4の例では第1表示領域47の下方に設けられており、図8とほぼ同様の倍率の変更や中心移動、コントラスト、明るさ、フォーカス、非点、撮影、除電、印刷といった各種操作ボタンやメニューが配置される。
(「1枚目の撮影」ステップ)
【0043】
まず「1枚目の撮影」ステップでは、第1の観察像の撮影条件の決定および画像の調整を行う。ここでは、説明表示欄630で3次元画像の作成には2枚の画像が必要なことを説明した後、「撮影準備」として、対象となる画像が第1表示領域47に表示されているかどうかをユーザに確認させる。所望の観察像が第1表示領域47に表示されていない場合は、下方のタブを「3D」タブ621から「オート観察1」、「オート観察2」、「マニュアル観察」等のタブに切り換えて、3次元画像として表示したい観察対象の観察条件や観察位置等を指定し、第1表示領域47に表示させる。また必要に応じて画像の微調整を行う。例えばフォーカスの調整を行う際には「倍率誤差補正」ボタン652を押下する。このようにして所望の観察像を第1表示領域47に表示させた後、説明表示欄630の説明通り、「撮影」ボタン654を押下して第1の観察像を撮影する。撮影された第1の観察像は、必要に応じて画像データ記憶部68であるコンピュータのハードディスク、記録媒体等に保存される。
【0044】
さらに第1の観察像の撮像と同時に、離散倍率画像取得機能が働き、図2の離散倍率画像取得部76が撮像時の倍率を自動的に低倍率に切り換えて複数の離散倍率画像を撮像する。倍率は、1/10毎など、予め設定された値とする他、ユーザが指定することもできる。撮像された観察画像は、順次画像データ記憶部68に記録される。
【0045】
このようにして第1の観察像及びその離散倍率画像を取得すると、説明表示欄630の下方に設けられた「次へ」ボタン656が押下可能となり、これを押下することで、図5の画面に切り替わり、図9のフローチャートのステップS2に進む。
(「2枚目の撮影」ステップ)
【0046】
次に、第1の観察像に基づいて第2の観察像を取得するために、図9のフローチャートのステップS2で観察対象となる試料の傾斜、位置合わせを行う。試料の傾斜は、第1の観察像に対して視差を生じさせる程度とする。その傾斜角度は、倍率によって最適値は異なるが、例えば3〜7°、好ましくは5°程度とする。図4および図5の例では、図4の「次へ」ボタン656を押下すると、第1表示領域47に表示中の試料が自動的に適切な回転軸及び傾斜角度にて傾斜され、図5の第1表示領域47に示すように傾斜前の第1の観察像と、傾斜後の第2の観察像とが並べて表示される。このように、プログラム側で自動的に傾斜を実行させることにより、ユーザは回転の角度や回転軸等を意識することなく3次元画像の生成を行える。試料を傾斜して表示させるために、この例では試料を裁置する試料台を傾斜させている。ただ、荷電粒子線撮像部側を傾けたり、電子顕微鏡の入射電子の入射角を傾ける等、光路を傾斜させる方法によっても同様の効果を実現することができる。これらの場合は試料台を固定させたままで傾斜画像を取得できる。
【0047】
また図5に示すように、回転前と回転後の観察像を並べて表示することにより、特に手動設定の場合はユーザが傾斜の状態を回転の前後で対比しながら確認できるので、調整が容易となる。図5の例では、第1表示領域47を左右に分割して、左の第1分割表示領域47Aに第1の観察像を、右の第2分割表示領域47Bに、第2の観察像を撮像するために操作中の対象画像が表示される。なお、これらの表示を入れ替えることも可能であることはいうまでもない。またこの例では第1表示領域47を2分割しているが、3以上の画面に分割することも可能であり、さらに左右に限られず上下に分割する等、そのレイアウトや画面サイズも適宜変更できる。さらに、第2表示領域48を利用して画像の対比に利用したり、第2表示領域48を複数の画面に分割することも可能である。
【0048】
このような自動設定の後、図9のステップS2ではさらに、傾斜された表示中の試料が、第1の観察像と同じ視点で表示されるように位置合わせと画像の微調整を行う。図5の説明表示欄630では、「位置を合わせる」、「2枚目を撮像する」との手順が説明される。ユーザはこれに従い、「倍率」ボタン611aで傾斜された観察像を拡大しながら、「中心移動」ボタン612a等を使用して、第1の観察像とほぼ同じ位置となるように移動させる。である「倍率」ボタン611aは倍率設定部の一形態であり、これによって表示中の画像の倍率を可変できる。この例では、撮像対象の試料の表示倍率をハードウェア的に変更する他、既に取得した第1の観察像に関する画像データについても、表示倍率変更機能によりソフトウェア的に拡大縮小することが可能となる。すなわち、上述した離散倍率画像取得機能で取得した離散倍率画像に基づき、離散倍率画像を取得した範囲で任意の倍率にて補完画像を生成して表示できる。また、マウスのスクロールボタンなどでズームするように連続的に表示倍率を変化させても、各表示倍率に応じた画像を順次作成して表示部28に切り換えて表示し、あたかも参照画像の大きさを連続的に変化させるように表示することもできる。また「中心移動」ボタン612aを押下すると、マウス等で表示領域状をクリックしたポイントが画面の中心となるように移動される。また移動には、マウスやキーボード等のポインティングデバイスを利用することもできる。
(倍率連動機能)
【0049】
さらに、第1分割表示領域47Aと第2分割表示領域47Bの表示倍率を同一に保つ倍率連動機能を備えている。すなわち、第1分割表示領域47Aまたは第2分割表示領域47Bのいずれか一方を拡大/縮小すると、他方もこれに追随して同様に拡大/縮小される。これによって、一方の拡大/縮小操作に合わせて他方の拡大/縮小操作を行う手間を省くことができ、常に第1分割表示領域47Aと第2分割表示領域47Bの表示倍率を等しくして、両画像の対比を容易に行える。特に、基準となる第1の観察像に関する参照画像を第1分割表示領域47Aに表示し、これに合わせるように第2分割表示領域47Bに表示される観察対象の位置や姿勢を倍率設定部611や観察視野移動設定部612等の視野設定部で調整する際、詳細な位置合わせのために拡大表示させる場合に、一々対応する画像の倍率を調整しなくて済むため、操作手数を少なくして使い易い環境が実現される。特にSEM等の荷電粒子線装置の観察倍率は、ダイナミックレンジが非常に広く、数万倍、数十万倍の高倍率まで観察可能であるため、同じ視野を探す対象が非常に広範になる可能性がある。このような場合に、倍率連動した参照画像を利用することで、作業能率を大きく向上させることができる。また倍率のみならず、視野の移動にも自動的に追随させるよう構成してもよく、これによってさらに操作を省力化して比較を容易に行える。なお、このような連動機能は、ON/OFFすることができ、第1分割表示領域47A、第2分割表示領域47Bの各画像を個別に拡大/縮小することもできる。また、いずれか一方の画像を操作したときのみ倍率の連動機能をONさせ、他方の画像を操作したときは連動させずに単独で拡大/縮小させるように構成してもよい。
【0050】
このような倍率連動機能の一例を図10〜図12の例に基づいて説明する。この例では、上述の通り第1の観察像の撮像時に同じ視点にて低倍率で撮像した複数の離散倍率画像を広域画像として利用し、第1分割表示領域47Aに離散倍率画像又は離散倍率画像に基づく補完画像を参照画像として切り換えて表示し、第2分割表示領域47Bには現在観察中の観察対象が表示されている。低倍率とは、例えば第1の観察像の1/10〜1/1000の縮小率とする。なお広域画像の撮影は、参照画像取得機能によらずユーザが手動で行うことも可能である。離散倍率画像取得機能はON/OFFさせることもでき、ユーザが必要な倍率の参照画像を手動で撮像するよう構成してもよい。図10の状態から、倍率設定部611を操作すると自動的に倍率連動機能が働き、拡大することで図11、さらに拡大すると図12のように変化する。この際、上述のように第2表示領域48に表示される広域図では、第2分割表示領域47Bで表示中の領域が矩形状の枠状681に表示されるので、現在どの部位に視点が移動されているのかを容易に把握でき、ポイントを見失うことを回避できる。なおこの例では倍率設定部611が倍率連動部を兼用しているが、倍率連動部を別途設けて、倍率連動機能のON/OFFを切り換えるように構成することも可能である。また上記の例では、各分割表示領域を縦長にしているが、その際左右方向を圧縮して広く表示させてもよい。
(ガイド線682)
【0051】
さらに、各分割表示領域にはガイド線682を表示させることもできる。図10〜図12の例では、第1分割表示領域および第2分割表示領域47Bにそれぞれ十字状のガイド線682を重ねて表示させており、それぞれの対応する位置の確認をサポートしている。ガイド線682は十字状の例に限られず、碁盤目状のグリッドやターゲット状の同心円、斜め方眼状等が適宜利用できる。
【0052】
以上のようにして第2の観察像の像観察条件が設定されると、図9のステップS3に進み「撮影」ボタン654を押下して第2の観察像を撮像する。撮像された第2の観察像は、画像データファイルとして画像データ記憶部68であるコンピュータのハードディスク、記録媒体等に保存される。
【0053】
そして図9のステップS4で、図6の画面に切り換えられ、これら第2の観察像および第1の観察像に基づいて、演算部70で3次元画像を合成する。図6の例では、生成される3次元画像の精細さ、処理速度に応じて生成条件を調整した3次元画像生成モード選択部670として、「ファーストモード」と「ファインモード」の2つのモードを用意している。「ファーストモード」では3次元画像の構築時間が短いものの得られる3次元画像が若干荒くなり、「ファインモード」では構築に時間がかかるものの滑らかな3次元画像を得ることができる。ユーザは観察目的等に応じてこのような速度重視または画質重視のモードを選択し、「次へ」ボタン672を押下すると、選択されたモードにて3次元画像が生成される。2枚の視差画像から3次元画像を生成する手法は、既知の、あるいは将来開発される手法が適宜利用できる。
【0054】
以上のようにして、離散倍率画像取得機能および表示倍率変更機能によって位置合わせの作業を容易に行うことができ、詳細な位置合わせが可能となり3次元画像の生成が正確に行われる。特に、像観察時に既に取得した画像を現在の観察倍率に同調させて変化させながら表示する際に、倍率同調させるための画像を離散的な倍率で取得した実画像の離散倍率画像と、演算により生成した補間画像とを切り替えて表示することで、スムーズな拡大/縮小が実現される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の荷電粒子線装置、荷電粒子線装置の操作方法、荷電粒子線装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体又は記録した機器は、例えば荷電粒子である電子線あるいはイオンビーム等を利用し、半導体素子の特性評価、測定工程において利用される電子線外観検査装置、電子線測長装置、粒子ビーム検査装置等において、撮像された観察像の拡大/縮小表示を行う機能に好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施の形態に係る荷電粒子線装置の構成を示すブロック図である。
【図2】荷電粒子線装置の表示倍率変更機能を示すブロック図である。
【図3】撮像された参照画像と補完画像との関係を示す説明図である。
【図4】「1枚目の撮像」ステップを実行中の3次元画像生成プログラムのユーザインターフェース画面を示すイメージ図である。
【図5】「2枚目の撮像」ステップを実行中の3次元画像生成プログラムのユーザインターフェース画面を示すイメージ図である。
【図6】「3D画像作成」ステップを実行中の3次元画像生成プログラムのユーザインターフェース画面を示すイメージ図である。
【図7】3次元画像を表示する画面の一例を示す3次元画像生成プログラムのユーザインターフェース画面を示すイメージ図である。
【図8】電子顕微鏡操作プログラムのマニュアル観察モードにおける操作画面を示すイメージ図である。
【図9】3次元画像を生成する手順を示すフローチャートである。
【図10】電子顕微鏡操作プログラムの倍率連動機能の一例を示すイメージ図である。
【図11】電子顕微鏡操作プログラムの倍率連動機能の一例を示すイメージ図である。
【図12】電子顕微鏡操作プログラムの倍率連動機能の一例を示すイメージ図である。
【符号の説明】
【0057】
100…電子顕微鏡
200…荷電粒子線装置
1…コンピュータ;2…中央演算処理部
3…電子銃高圧電源;4…フィラメント
5…ウェーネルト;6…アノード
7…電子銃;8…電子線
9…ガンアライメントコイル;10…ガンアライメントコイル制御部
11…収束レンズ制御部;12…収束レンズ
13…対物レンズ絞り;14…非点収差補正コイル制御部
15…電子線偏向走査コイル制御部;16…対物レンズ制御部
17…非点収差補正コイル;18…電子線偏向走査コイル
19…対物レンズ;20…試料
21…二次電子検出器;22…反射電子検出器
23…二次電子検出増幅部;24…反射電子検出増幅部
25…A/D変換器;26…A/D変換器
27…画像データ生成部;28…表示部
29…プリンタ;30…排気系ポンプ
31…試料室;32…排気制御部;33…試料台
42…荷電粒子線撮像部
47…第1表示領域;47A…第1分割表示領域;47B…第2分割表示領域
48…第2表示領域
68…画像データ記憶部
70…演算部;74…モード切替部
76…離散倍率画像取得部
78…補完処理部
601…画像補正設定手段;601a…シャープネス設定手段
601b…ハイライト設定手段;601c…ガンマ補正設定手段
601d…輝度分布図;601e…オーバーレンジ抽出設定手段
603…個別条件設定手段;603a…「検出器」ボックス
603b…「加速電圧」ボックス;603c…「真空度」ボックス
603d…「スポットサイズ」ボックス
604…ファイル対応条件設定手段;605…「eプレビュー設定」ボタン
611…倍率設定部;611a…「倍率」ボタン
612…観察視野移動設定部;612a…「中心移動」ボタン
613…コントラスト・明るさ設定手段;614…非点収差調整設定手段
615…光軸調整設定手段
621…「3D」タブ
630…説明表示欄;640…フロー図
641…「1枚目の撮影」欄
650…観察条件設定部
652…「倍率誤差補正」ボタン
654…「撮影」ボタン;656…「次へ」ボタン
670…3次元画像生成モード選択部;672…「次へ」ボタン
681…枠状
682…ガイド線
700…3次元画像生成プログラムのユーザインターフェース画面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線を観察対象に照射し、観察対象から得られる信号を検出して観察像を得るための荷電粒子線撮像部と、
前記荷電粒子線撮像部で観察像を撮像する際の倍率の設定を少なくとも含む像観察条件を設定するための観察条件設定部と、
前記荷電粒子線撮像部で観察像を撮像する際に、前記観察条件設定部で設定された撮像時の倍率を基準とし、前記観察条件設定部で設定可能な倍率に対して離散的な異なる複数の倍率にて離散画像を撮像し保存するための離散倍率画像取得部と、
観察像を表示するための表示部と、
前記表示部で表示される観察像の表示倍率を調整するための倍率設定部と、
前記倍率設定部で設定される表示倍率の観察像が保存されていない場合、同一の観察像について前記離散倍率画像取得部にて予め撮像された離散倍率画像に基づいて、前記倍率設定部で設定された倍率にて表示される補完観察像を演算により生成し、該補完観察像を表示するための補完処理部と、
を備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子線装置であって、
前記離散倍率画像取得部が、離散倍率画像として前記観察条件設定部で設定された撮像時の倍率よりも低い複数の離散的な倍率で離散倍率画像を撮像することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の荷電粒子線装置であって、
前記離散倍率画像取得部による離散倍率画像の撮像が、前記荷電粒子線撮像部による観察像の撮像と観察位置の中心を同じとすることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の荷電粒子線装置であって、
前記離散倍率画像取得部による離散倍率画像の保存が、前記荷電粒子線撮像部による観察像のデータと関連付けて行われることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の荷電粒子線装置であって、
前記表示部に表示される観察像の表示倍率を前記倍率設定部で設定可能な増減分にて連続的に変更すると、表示倍率が予め撮像された離散倍率画像の倍率と一致するときは該離散倍率画像を表示し、表示倍率が異なるときは近傍の表示倍率で撮像された離散倍率画像に基づいて前記補完処理部で生成された補完画像を表示するよう、切り替えて表示するように構成してなることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
観察対象を裁置するためのステージと、前記ステージ上の観察対象に対して電子線を照射するための電子銃と、観察対象から放出される二次電子または反射電子を検出するための1以上の検出器と、前記検出器で検出された情報に基づいて電子線観察像を結像するための電子線撮像部と、前記電子線撮像部で撮像された観察像を表示するための表示部と、
を備え、
所定の像観察条件に基づいて、前記電子銃に加速電圧を印加して電子線を観察対象に照射し、観察対象から放出される二次電子または反射電子を前記検出器で検出しながら観察対象表面の所望の領域を走査することで、観察像を結像し前記表示部に表示可能な荷電粒子線装置であって、さらに、
前記電子線撮像部で観察像を撮像する際の倍率の設定を少なくとも含む像観察条件を設定するための観察条件設定部と、
前記電子線撮像部で観察像を撮像する際に、前記観察条件設定部で設定された撮像時の倍率よりも低い複数の離散的な倍率で離散倍率画像を撮像し保存するための離散倍率画像取得部と、
前記表示部で表示される撮像された観察像の表示倍率を調整するための倍率設定部と、
前記倍率設定部で設定される表示倍率の観察像が保存されていない場合、同一の観察像について前記離散倍率画像取得部にて予め撮像された離散倍率画像に基づいて、前記倍率設定部で設定された倍率にて表示される補完観察像を演算により生成し、該補完観察像を表示するための補完処理部と、
を備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項7】
荷電粒子線装置の操作方法であって、
所定の像観察条件で荷電粒子線撮像部にて観察像を撮像する際に、撮像時の倍率よりも低い複数の離散的な倍率で離散倍率画像を各々撮像するステップと、
表示部にて表示される前記観察像の表示倍率を倍率設定部で変更する際に、表示倍率に応じて前記離散倍率画像を切り換えて表示すると共に、該当する離散倍率画像のない表示倍率については、該表示倍率の前後で撮像された離散倍率画像に基づいて補完処理部が該当する表示倍率の画像を生成して表示するステップと、
を有することを特徴とする荷電粒子線装置の操作方法。
【請求項8】
荷電粒子線装置の操作プログラムであって、
所定の像観察条件で荷電粒子線撮像部にて観察像を撮像する際に、撮像時の倍率よりも低い複数の離散的な倍率で離散倍率画像を各々撮像する離散倍率画像取得機能と、
表示部にて表示される前記観察像の表示倍率を倍率設定部で変更する際に、表示倍率に応じて前記離散倍率画像を切り換えて表示すると共に、該当する離散倍率画像のない表示倍率については、該表示倍率の前後で撮像された離散倍率画像に基づいて補完処理部が該当する表示倍率の画像を生成して表示する表示倍率変更機能と、
をコンピュータに実現させることを特徴とする荷電粒子線装置操作プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載されるプログラムを格納したコンピュータで読み取り可能な記録媒体又は記録した機器。
【請求項1】
荷電粒子線を観察対象に照射し、観察対象から得られる信号を検出して観察像を得るための荷電粒子線撮像部と、
前記荷電粒子線撮像部で観察像を撮像する際の倍率の設定を少なくとも含む像観察条件を設定するための観察条件設定部と、
前記荷電粒子線撮像部で観察像を撮像する際に、前記観察条件設定部で設定された撮像時の倍率を基準とし、前記観察条件設定部で設定可能な倍率に対して離散的な異なる複数の倍率にて離散画像を撮像し保存するための離散倍率画像取得部と、
観察像を表示するための表示部と、
前記表示部で表示される観察像の表示倍率を調整するための倍率設定部と、
前記倍率設定部で設定される表示倍率の観察像が保存されていない場合、同一の観察像について前記離散倍率画像取得部にて予め撮像された離散倍率画像に基づいて、前記倍率設定部で設定された倍率にて表示される補完観察像を演算により生成し、該補完観察像を表示するための補完処理部と、
を備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子線装置であって、
前記離散倍率画像取得部が、離散倍率画像として前記観察条件設定部で設定された撮像時の倍率よりも低い複数の離散的な倍率で離散倍率画像を撮像することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の荷電粒子線装置であって、
前記離散倍率画像取得部による離散倍率画像の撮像が、前記荷電粒子線撮像部による観察像の撮像と観察位置の中心を同じとすることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の荷電粒子線装置であって、
前記離散倍率画像取得部による離散倍率画像の保存が、前記荷電粒子線撮像部による観察像のデータと関連付けて行われることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の荷電粒子線装置であって、
前記表示部に表示される観察像の表示倍率を前記倍率設定部で設定可能な増減分にて連続的に変更すると、表示倍率が予め撮像された離散倍率画像の倍率と一致するときは該離散倍率画像を表示し、表示倍率が異なるときは近傍の表示倍率で撮像された離散倍率画像に基づいて前記補完処理部で生成された補完画像を表示するよう、切り替えて表示するように構成してなることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
観察対象を裁置するためのステージと、前記ステージ上の観察対象に対して電子線を照射するための電子銃と、観察対象から放出される二次電子または反射電子を検出するための1以上の検出器と、前記検出器で検出された情報に基づいて電子線観察像を結像するための電子線撮像部と、前記電子線撮像部で撮像された観察像を表示するための表示部と、
を備え、
所定の像観察条件に基づいて、前記電子銃に加速電圧を印加して電子線を観察対象に照射し、観察対象から放出される二次電子または反射電子を前記検出器で検出しながら観察対象表面の所望の領域を走査することで、観察像を結像し前記表示部に表示可能な荷電粒子線装置であって、さらに、
前記電子線撮像部で観察像を撮像する際の倍率の設定を少なくとも含む像観察条件を設定するための観察条件設定部と、
前記電子線撮像部で観察像を撮像する際に、前記観察条件設定部で設定された撮像時の倍率よりも低い複数の離散的な倍率で離散倍率画像を撮像し保存するための離散倍率画像取得部と、
前記表示部で表示される撮像された観察像の表示倍率を調整するための倍率設定部と、
前記倍率設定部で設定される表示倍率の観察像が保存されていない場合、同一の観察像について前記離散倍率画像取得部にて予め撮像された離散倍率画像に基づいて、前記倍率設定部で設定された倍率にて表示される補完観察像を演算により生成し、該補完観察像を表示するための補完処理部と、
を備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項7】
荷電粒子線装置の操作方法であって、
所定の像観察条件で荷電粒子線撮像部にて観察像を撮像する際に、撮像時の倍率よりも低い複数の離散的な倍率で離散倍率画像を各々撮像するステップと、
表示部にて表示される前記観察像の表示倍率を倍率設定部で変更する際に、表示倍率に応じて前記離散倍率画像を切り換えて表示すると共に、該当する離散倍率画像のない表示倍率については、該表示倍率の前後で撮像された離散倍率画像に基づいて補完処理部が該当する表示倍率の画像を生成して表示するステップと、
を有することを特徴とする荷電粒子線装置の操作方法。
【請求項8】
荷電粒子線装置の操作プログラムであって、
所定の像観察条件で荷電粒子線撮像部にて観察像を撮像する際に、撮像時の倍率よりも低い複数の離散的な倍率で離散倍率画像を各々撮像する離散倍率画像取得機能と、
表示部にて表示される前記観察像の表示倍率を倍率設定部で変更する際に、表示倍率に応じて前記離散倍率画像を切り換えて表示すると共に、該当する離散倍率画像のない表示倍率については、該表示倍率の前後で撮像された離散倍率画像に基づいて補完処理部が該当する表示倍率の画像を生成して表示する表示倍率変更機能と、
をコンピュータに実現させることを特徴とする荷電粒子線装置操作プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載されるプログラムを格納したコンピュータで読み取り可能な記録媒体又は記録した機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図9】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図9】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−73345(P2006−73345A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255162(P2004−255162)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】
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