説明

荷電粒子線装置

【課題】従来の高真空型荷電粒子顕微鏡の構成を大きく変更することなく、被観察試料を大気雰囲気あるいはガス雰囲気で観察することが可能な荷電粒子線装置ないし荷電粒子顕微鏡を提供する。
【解決手段】真空雰囲気と大気雰囲気(ないしガス雰囲気)を仕切る薄膜を採用する構成の荷電粒子線装置において、上記薄膜を保持でき、かつ内部を大気雰囲気あるいはガス雰囲気に維持可能なアタッチメントを高真空型荷電粒子顕微鏡の真空試料室に挿入して使用する。当該アタッチメントは、上記真空試料室の真空隔壁に真空シールされて固定される。アタッチメント内部をヘリウムや窒素あるいは水蒸気といった大気ガスよりも質量の軽い軽元素ガスで置換することにより、更に画質が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被観察試料を大気圧あるいは所定のガス雰囲気中で観察可能な顕微鏡技術、特に卓上型の荷電粒子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の微小な領域を観察するために、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などが用いられる。一般的に、これらの装置では試料を配置するための第2の筐体を真空排気し、試料雰囲気を真空状態にして試料を撮像する。一方、生物化学試料や液体試料など真空によってダメージを受ける、あるいは状態が変わる試料を電子顕微鏡で観察したいというニーズは大きく、近年、観察対象試料を大気圧下で観察可能なSEM装置や試料保持装置などが開発されている。
【0003】
これらの装置は、原理的には電子光学系と試料の間に電子線が透過可能な薄膜あるいは微小な貫通孔を設けて真空状態と大気状態を仕切るもので、いずれも試料と電子光学系との間に薄膜を設ける点で共通する。
【0004】
例えば、特許文献1には、電子光学鏡筒の電子源側を下向きに、また対物レンズ側を上向きに配置し、電子光学鏡筒末端の電子線の出射孔上にOリングを介して電子線が透過できる薄膜を設けた大気圧SEMが開示されている。当該文献に記載された発明では、観察対象試料を薄膜上に直接載置し、試料の下面から一次電子線を照射して、反射電子あるいは二次電子を検出してSEM観察を行う。試料は、薄膜の周囲に設置された環状部材と薄膜により構成される空間内に保持され、さらにこの空間内には水などの液体が満たされている。特許文献1に開示された発明により、特に生体試料の観察に好適な大気圧SEMが実現される。
【0005】
また、特許文献2には、電子線を通過させるアパーチャを上面側に設けたシャーレ状の円筒容器内に観察試料を格納し、この円筒容器をSEMの真空試料室内に設け、更に当該円筒容器に真空試料室の外部からホースを接続することにより容器内部を擬似的に大気雰囲気に維持できる環境セルの発明が開示されている。ここで「擬似的」とは、真空試料室を真空排気するとアパーチャから気体が流出するため、厳密には大気圧の環境下で観察を行っているわけではないという意味である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−158222号公報(米国特許公開公報2009/0166536号)
【特許文献2】特開2009−245944号公報(米国特許公開公報2009/0242763号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガス雰囲気での観察機能を備えた従来の荷電粒子顕微鏡あるいは荷電粒子線装置は、いずれもガス雰囲気下での観察専用に製造された装置であり、通常の高真空荷電粒子顕微鏡を使用して大気圧/ガス雰囲気下の観察を簡便に行える装置は存在しなかった。
【0008】
例えば、特許文献1に記載の大気圧SEMは構造的に非常に特殊な装置であり、通常の高真空雰囲気でのSEM観察は実行不可能である。また、観察対象物は液体を満たした薄膜内部に保持されており、一度大気圧観察を行うと試料が濡れてしまうため、同じ状態の試料を大気雰囲気/高真空雰囲気の両方で観察することは非常に困難である。また、液体が薄膜に常に接触しているために、薄膜が破損する可能性が非常に高いという問題もある。
【0009】
特許文献2に記載された環境セルは、大気圧/ガス雰囲気での観察を行うことは可能であるが、セルに挿入可能なサイズの試料しか観察できず、大型試料の大気圧/ガス雰囲気での観察ができないという問題がある。また環境セルの場合、異なる試料を観察するには、SEMの真空試料室から環境セルを取り出し、試料を取り替えて再度真空試料室内に搬入しなければならず、試料交換が煩雑であるという問題もある。
【0010】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたもので、従来の高真空型荷電粒子顕微鏡の構成を大きく変更することなく、被観察試料を大気雰囲気あるいはガス雰囲気で観察することが可能な荷電粒子線装置ないし荷電粒子顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、荷電粒子顕微鏡に備えられた真空室に対して、内部の圧力を前記真空室の圧力よりも高い状態に維持しつつ前記試料を格納できるアタッチメントを、上記真空室の開口部から挿入し真空室に固定して使用することにより、上記課題を解決する。真空室の開口部は、例えば上記真空室の側面あるいは底面に設けられる。また、上記のアタッチメントは、一次荷電粒子線をアタッチメント内部に透過あるいは通過させる薄膜を保持する機能を備えており、これにより真空室とアタッチメント内部の圧力差を確保する。上記真空室を第1の筐体、上記アタッチメントを上記真空室に対する第2の筐体と呼んでもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記薄膜により上記真空室が高真空に維持される一方、上記アタッチメントの内部は大気圧/ガス雰囲気に維持される。また、観察試料はアタッチメント内部と外部の間で搬入・搬出が可能である。すなわち、本発明により、大気圧/ガス雰囲気での観察が、従来よりも簡便に実現できる荷電粒子顕微鏡を実現できる。
【0013】
また、本発明のアタッチメントは、試料室の側面から挿入する方式のため大型化が容易であり、従って環境セルには封入できないような大型の試料であっても観察が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1の荷電粒子顕微鏡の全体構成図。
【図2】実施例2の荷電粒子顕微鏡の全体構成図。
【図3】板部材を引出した状態の実施例2の荷電粒子顕微鏡を示す図。
【図4】高真空SEMとして使用する状態の実施例2の荷電粒子顕微鏡を示す図。
【図5】実施例2の荷電粒子顕微鏡の動作説明図。
【図6】実施例2の荷電粒子顕微鏡の構成例。
【図7】実施例2の荷電粒子顕微鏡の構成例。
【図8】実施例2の荷電粒子顕微鏡の構成例。
【図9】実施例3の荷電粒子顕微鏡の全体構成図。
【図10】実施例4の荷電粒子顕微鏡の全体構成図。
【図11】実施例5の荷電粒子顕微鏡の全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて各実施形態について説明する。
【実施例1】
【0016】
本実施例では、最も基本的な実施形態について説明する。図1には、本実施例の荷電粒子顕微鏡の全体構成図を示す。図1に示される荷電粒子顕微鏡は、主として、荷電粒子光学鏡筒2、荷電粒子光学鏡筒を装置設置面に対して支持する第1筐体(真空室)7、第1筐体7に挿入して使用される第2筐体(アタッチメント)121およびこれらを制御する制御系によって構成される。荷電粒子顕微鏡の使用時には荷電粒子光学鏡筒2と第1筐体の内部は真空ポンプ4により真空排気される。真空ポンプ4の起動・停止動作も制御系により制御される。図中、真空ポンプ4は一つのみ示されているが、二つ以上あってもよい。
【0017】
荷電粒子光学鏡筒2は、荷電粒子線を発生する荷電粒子源0、発生した荷電粒子線を集束して鏡筒下部へ導き、一次荷電粒子線として試料6を走査する光学レンズ1などの要素により構成される。荷電粒子光学鏡筒2は第1の筐体7内部に突き出すように設置されており、真空封止部材123を介して第1の筐体7に固定されている。荷電粒子光学鏡筒2の端部には、上記一次荷電粒子線の照射により得られる二次荷電粒子(二次電子あるいは反射電子)を検出する検出器3が配置される。図1に示す構成例では、検出器3は第1の筐体7の内部に設けられているが、荷電粒子光学鏡筒2内あるいは第2の筐体121の内部に配置してもよい。
【0018】
本実施例の荷電粒子顕微鏡は、制御系として、装置使用者が使用するパソコン35、パソコン35と接続され通信を行う上位制御部36、上位制御部36から送信される命令に従って真空排気系や荷電粒子光学系などの制御を行う下位制御部37を備える。パソコン35は、装置の操作画面(GUI)が表示されるモニタと、キーボードやマウスなどの操作画面への入力手段を備える。上位制御部36,下位制御部37およびパソコン35は、各々通信線43,44により接続される。
【0019】
下位制御部37は真空ポンプ4,ガス制御用バルブ101,荷電粒子源0や光学レンズ1などを制御するための制御信号を送受信する部位であり、さらには検出器3の出力信号をディジタル画像信号に変換して上位制御部36へ送信する。図では検出器3からの出力信号を下位制御部37に接続しているが、プリアンプなどの増幅器を間にいれてもよい。
【0020】
上位制御部36と下位制御部37ではアナログ回路やディジタル回路などが混在していてもよく、また上位制御部36と下位制御部37が一つに統一されていてもよい。なお、図1に示す制御系の構成は一例に過ぎず、制御ユニットやバルブ,真空ポンプあるいは通信用の配線などの変形例は、本実施例で意図する機能を満たす限り、本実施例のSEMないし荷電粒子線装置の範疇に属する。
【0021】
第1筐体7には、一端が真空ポンプ4に接続された真空配管16が接続され、内部を真空状態に維持できる。同時に、筐体内部を大気開放するためのリークバルブ14を備え、メンテナンス時などに、第1筐体7の内部を大気開放することができる。リークバルブ14は、なくてもよいし、二つ以上あってもよい。また、第1筐体7での配置箇所は、図1に示された場所に限られず、第1筐体7上の別の位置に配置されていてもよい。更に、第1筐体7は、側面に開口部を備えており、この開口部を通って上記第2筐体121が挿入される。
【0022】
第2筐体121は、直方体形状の本体部131と合わせ部132とにより構成される。本体部131は、観察対象である試料6を格納する機能を持ち、上記の開口部を通って第1筐体7内部に挿入される。合わせ部132は、第1筐体7の開口部が設けられた側面側の外壁面との合わせ面を構成し、真空封止部材126を介して上記側面側の外壁面に固定される。これによって、第2筐体121全体が第1筐体7に嵌合される。上記の開口部は、荷電粒子顕微鏡の真空試料室にもともと備わっている試料の搬入・搬出用の開口を利用して製造することが最も簡便である。つまり、もともと開いている穴の大きさに合わせて第2筐体121を製造し、穴の周囲に真空封止部材126を取り付ければ、装置の改造が必要最小限ですむ。
【0023】
本体部131の上面側には、第2筐体121全体が第1筐体7に嵌合された場合に上記荷電粒子光学鏡筒2の直下になる位置に薄膜10を備える。この薄膜10は、荷電粒子光学鏡筒2の下端から放出される一次荷電粒子線を透過ないし通過させることが可能であり、一次荷電粒子線は、薄膜10を通って最終的に試料6に到達する。
【0024】
荷電粒子線が電子線の場合には、薄膜10の厚さは電子線が透過できる程度の厚さ、典型的には20μm程度以下である必要がある。薄膜に替えて、一次荷電粒子線の通過孔を備えるアパーチャ部材を用いてもよく、その場合の孔径は、現実的な真空ポンプで差動排気可能という要請から、面積1mm2程度以下であることが望ましい。荷電粒子線がイオンの場合は、薄膜を破損させる事なしに貫通させることが困難であるため、面積1mm2程度以下のアパーチャを用いる。図中の一点鎖線は、一次荷電粒子線の光軸を示しており、荷電粒子光学鏡筒2と第1の筐体7および薄膜10は、一次荷電粒子線光軸と同軸に配置されている。試料6と薄膜10との距離は、適当な高さの試料台17を置いて調整する。
【0025】
図1に示すように第2筐体121の側面は開放面であり、第2筐体121の内部(図の点線より右側;以降、第2の空間とする)に格納される試料6は、観察中、大気圧状態に置かれる。一方、第1筐体7には真空ポンプ4が接続されており、第1筐体7の内壁面と第2筐体の外壁面および薄膜10によって構成される閉空間(以下、第1の空間とする)を真空排気可能である。よって、本実施例では、装置の動作中、荷電粒子光学鏡筒2や検出器3を真空状態に維持でき、かつ試料6を大気圧に維持することができる。また、第2筐体121が開放面を有するので、観察中、試料6を自由に交換できる。
【0026】
以上、本実施例により、比較的大きなサイズの試料であっても大気圧で観察可能な荷電粒子顕微鏡が実現される。
【実施例2】
【0027】
本実施例では、卓上型走査電子顕微鏡への適用例について説明する。なお、走査電子顕微鏡への適用例ではあるが、本実施例が、イオン顕微鏡など一般の荷電粒子顕微鏡に適用できることは言うまでも無い。
【0028】
図2には、本実施例の走査電子顕微鏡の全体構成図を示す。実施例1と同様、本実施例の走査電子顕微鏡も、電子光学鏡筒2、該電子光学鏡筒を装置設置面に対して支持する第1筐体(真空室)7、第1筐体7に挿入して使用される第2筐体(アタッチメント)121制御系などによって構成される。これらの各要素の動作・機能あるいは各要素に付加される付加要素は、実施例1とほぼ同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0029】
さて、本実施例の走査電子顕微鏡の場合、薄膜10は、実施例1とは異なり、第2筐体の本体部131の上面に対して薄膜保持部材47を介して脱着可能に固定されている。薄膜10は、薄膜保持部材47に対して真空シールするように固着されているが、Oリングなどの真空封止部材を使用しても良いし、接着剤等の有機材料あるいはテープなどで固着してもよい。
【0030】
薄膜保持部材47は、第2筐体121の天井板の下面側に真空封止部材を介して脱着可能に固定される。薄膜10は、電子線が透過する要請上、厚さ20μm程度以下と非常に薄いため、経時劣化あるいは観察準備の際に破損する可能性がある。一方、薄膜10は薄いため直接ハンドリングすることが非常に困難である。本実施例のように、薄膜10を直接ではなく薄膜保持部材47を介してハンドリングできることで、薄膜10の取扱い(特に交換)が非常に容易となる。つまり、薄膜10が破損した場合には、薄膜保持部材47ごと交換すればよく、万が一薄膜10を直接交換しなければならない場合でも、薄膜保持部材47を装置外部に取り出し、薄膜10の交換を装置外部で行うことができる。なお、薄膜に替えて、面積1mm2以下程度の穴を有するアパーチャ部材を使用できる点は、実施例1と同様である。
【0031】
更に、本実施例の薄膜保持部材47は、試料6との対向面側に薄膜と試料の接触を防止する制限部材105を備える。制限部材105としては、試料と薄膜間の距離を制限できるものなら何を使用してもよいが、簡便には、接着剤やテープを貼り付けて制限部材105として使用することもできる。ただし、薄膜10を通過した一次電子線の平均自由工程を考えれば、制限部材105は厚みが正確にわかっている薄膜材料で作製することが好ましい。また、図2では制限部材105は薄膜保持部材47に取り付けられているが、薄膜10自体や試料ステージ5に取り付けてもよく、あるいは試料6の上に載せてもよい。更に、制限部材105を着脱可能としてもよい。
【0032】
また本実施例の走査電子顕微鏡の場合、第2筐体121の開放面を蓋部材122で蓋うことができるようになっており、種々の機能が実現できる。以下ではそれについて説明する。
【0033】
本実施例の走査電子顕微鏡においては、第2筐体内に置換ガスを供給する機能を備えている。電子光学鏡筒2の下端から放出された電子線は、高真空に維持された第1の空間を通過して、図2に示す薄膜10(あるいはアパーチャ部材)を通過し、更に、大気圧あるいは(第1の空間よりも)低真空度に維持された第2の空間に侵入する。ところが、真空度の低い空間では電子線は気体分子によって散乱されるため、平均自由行程は短くなる。つまり、薄膜10と試料6の距離が大きいと電子線あるいは電子線照射により発生する二次電子または反射電子が試料まで届かなくなる。一方、電子線の散乱確率は、気体分子の質量数に比例する。従って、大気よりも質量数の軽いガス分子で第2の空間を置換すれば、電子線の散乱確率が低下し、電子線が試料に到達できるようになる。置換ガスの種類としては、窒素や水蒸気など、大気よりも軽いガスであれば画像S/Nの改善効果が見られるが、質量のより軽いヘリウムガスや水素ガスの方が、画像S/Nの改善効果が大きい。
【0034】
以上の理由から、本実施例の走査電子顕微鏡では、蓋部材122にガス供給管100の取り付け部(ガス導入部)を設けている。ガス供給管100は連結部102によりガスボンベ103と連結されており、これにより第2の空間12内に置換ガスが導入される。ガス供給管100の途中には、ガス制御用バルブ101が配置されており、管内を流れる置換ガスの流量を制御できる。このため、ガス制御用バルブ101から下位制御部37に信号線が伸びており、装置ユーザは、パソコン35のモニタ上に表示される操作画面で、置換ガスの流量を制御できる。
【0035】
置換ガスは軽元素ガスであるため、第2の空間12の上部に溜まりやすく、下側は置換しにくい。そこで、蓋部材122でガス供給管100の取り付け位置よりも下側(図2では圧力調整弁104の取り付け位置)に開口を設ける。これにより、ガス導入部から導入された軽元素ガスに押されて大気ガスが下側の開口から排出されるため、第2筐体121内を効率的に置換できる。なお、この開口を後述する粗排気ポートと兼用しても良い。
【0036】
第2筐体121あるいは蓋部材122に真空排気ポートを設け、第2筐体121内を一度真空排気してから置換ガスを導入してもよい。この場合の真空排気は、第2筐体121内部に残留する大気ガス成分を一定量以下に減らせればよいので高真空排気を行う必要はなく、粗排気で十分である。ただし、生体試料など水分を含む試料などを観察する場合、一度真空状態に置かれた試料は、水分が蒸発して状態が変化する。従って、上述のように、大気雰囲気から直接置換ガスを導入する方が好ましい。上記の開口は、置換ガスの導入後、蓋部材で閉じることにより、置換ガスを効果的に第2の空間12内に閉じ込めることができる。
【0037】
上記開口の位置に三方弁を取り付ければ、この開口を粗排気ポートおよび大気リーク用排気口と兼用することができる。すなわち、三方弁の一方を蓋部材122に取り付け、一方を粗排気用真空ポンプに接続し、残り一つにリークバルブを取り付ければ、上記の兼用排気口が実現できる。
【0038】
上述の開口の変わりに圧力調整弁104を設けても良い。当該圧力調整弁104は、第2筐体121の内部圧力が1気圧以上になると自動的にバルブが開く機能を有する。このような機能を有する圧力調整弁を備えることで、軽元素ガスの導入時、内部圧力が1気圧以上になると自動的に開いて窒素や酸素などの大気ガス成分を装置外部に排出し、軽元素ガスを装置内部に充満させることが可能となる。なお、図示したガスボンベ103は、走査電子顕微鏡に備え付けられる場合もあれば、装置ユーザが事後的に取り付ける場合もある。
【0039】
次に、試料6の位置調整方法について説明する。本実施例の走査電子顕微鏡は、観察視野の移動手段として試料ステージ5を備えている。試料ステージ5には、面内方向へのXY駆動機構および高さ方向へのZ軸駆動機構を備えている。蓋部材122には試料ステージ5を支持する底板となる支持板107が取り付けられており、試料ステージ5は支持板107に固定されている。支持板107は、蓋部材122の第2筐体121への対向面に対し第2筐体121の内部に向かって延伸するよう取り付けられている。Z軸駆動機構およびXY駆動機構からはそれぞれ支軸が伸びており、各々操作つまみ108および操作つまみ109と繋がっている。装置ユーザは、これらの操作つまみ108および109を操作することにより、試料6の第2筐体121内での位置を調整する。
【0040】
試料位置を調整する際には、通常、面内方向の位置を決めてから高さ方向の位置を調整するが、薄膜10の破損を防止するため、試料6の高さ方向の位置は薄膜10に近づき過ぎないように調整する必要がある。そこで、本実施例の走査電子顕微鏡は、カメラ106などの観察手段を備える。これにより、薄膜10と試料6の距離や試料6を高さ方向に動かしている様子などを遠隔状態で観察することが可能となる。カメラ106の代わりに撮像分解能の高い光学顕微鏡を用いてもよい。また図示しないが、赤外線など電磁波の反射を使って試料と薄膜の距離を測定してもよい。観察手段の取り付け位置は、特に図2の配置に限定されるものではなく、試料と薄膜との距離が明瞭に計測できる位置であればどこでも構わない。
【0041】
次に、試料6の交換機構について説明する。本実施例の走査電子顕微鏡は、第1筐体7の底面および蓋部材122の下端部に、板部材用支持部材19,底板20をそれぞれ備える。蓋部材122は第2筐体121に真空封止部材125を介して取り外し可能に固定される。一方、板部材用支持部材19も底板20に対して取り外し可能に固定されており、図3に示すように、蓋部材122および板部材用支持部材19を丸ごと第2筐体121から取り外すことが可能である。
【0042】
底板20には、取り外しの際にガイドとして使用される支柱18を備える。通常の状態では、支柱18は底板20に設けられた格納部に格納されており、取り外しの際に蓋部材122の引出し方向に延伸するように構成される。同時に、支柱18は板部材用支持部材19に固定されており、蓋部材122を第2筐体121から取り外した際に、蓋部材122と走査電子顕微鏡本体とが完全には分離しないようになっている。これにより、試料ステージ5あるいは試料6の落下を防止することができる。
【0043】
第2筐体121内に試料を搬入する場合には、まず試料ステージ5のZ軸操作つまみを回して試料6を薄膜10から遠ざける。次に、圧力調整弁104を開放し、第2筐体内部を大気開放する。その後、第2筐体内部が減圧状態あるいは極端な与圧状態になっていないことを確認後、蓋部材122を装置本体とは反対側に引出す。これにより試料6を交換可能な状態となる。試料交換後は、蓋部材122を第2筐体121内に押し込み、図示しない締結部材にて蓋部材122を合わせ部132に固定後、置換ガスを導入する。以上の操作は、電子光学鏡筒2の動作を継続したまま実行することができ、従って本実施例の走査電子顕微鏡は、試料交換後、迅速に観察を開始することができる。
【0044】
本実施例の走査電子顕微鏡は、通常の高真空SEMとして使用することも可能である。図4には、高真空SEMとして使用した状態での、本実施例の走査電子顕微鏡の全体構成図を示す。図4において、制御系は図2と同様であるので図示は省略している。図4は、蓋部材122を第2筐体121に固定した状態で、ガス供給管100と圧力調整弁104を蓋部材122から取り外した後、ガス供給管100と圧力調整弁104の取り付け位置を蓋部材130で塞いだ状態の走査電子顕微鏡を示している。この前後の操作で、薄膜保持部材47を第2筐体121から取り外しておけば、第1の空間11と第2の空間12をつなげることができ、第2筐体内部を真空ポンプ4で真空排気することが可能となる。これにより、第2筐体121を取り付けた状態で、高真空SEM観察が可能となる。
【0045】
なお、図4の構成の変形例として、薄膜保持部材47が取り付けてある状態の第2筐体121を丸ごと取り外し、蓋部材122を第1筐体7の合わせ面に直接固定してもよい。本構成によっても第1の空間11と第2の空間12をつなげることができ、第2筐体内部を真空ポンプ4で真空排気することが可能となる。なお、この構成は一般的なSEM装置の構成と同じである。
【0046】
以上説明したように、本実施例では、試料ステージ5およびその操作つまみ108,109,ガス供給管100,圧力調整弁104が全て蓋部材122に集約して取り付けられている。従って装置ユーザは、上記操作つまみ108,109の操作,試料の交換作業、あるいはガス供給管100,圧力調整弁104の脱着作業を第1筐体の同じ面に対して行うことができる。よって、上記構成物が試料室の他の面にバラバラに取り付けられている構成の走査電子顕微鏡に比べて操作性が非常に向上している。
【0047】
図5には、本実施例の走査電子顕微鏡の操作の流れを示すフローチャートを示した。
【0048】
第一のステップ70では、第1の空間の真空排気を行う。予め真空排気されていてもよい。第二のステップ71では、試料6を試料ステージ5上の試料台にのせ、試料ステージ5に搭載する。第三のステップ72では、蓋部材122を第2筐体内部に導入し、装置本体(第2筐体)に締結する。第四のステップ73では、ガス制御用バルブ101を一定時間開けた後、閉じることによって、第2の空間にヘリウムガスなどの置換ガスを導入する。第五のステップ74では、電子光学鏡筒の動作条件を調整し電子ビームを放出させる。第六のステップ75では、画像取得を開始する。第七のステップ76では、蓋部材122を取り外す。第2の空間に閉じ込められた置換ガスが装置外部に放出されるが、圧力調整弁を開放して置換ガスを排出したあとで蓋部材122を取り外してもよい。第八のステップ77では、試料を取り出す。別試料を観察したい場合には、第二のステップ71に戻る。
【0049】
なお、第2の空間は、置換ガスを大気圧状態まで導入するだけでなく、少しだけ導入する低真空状態、あるいは真空状態などにすることができるが、この場合には、第四のステップ73で置換ガスの流量調整あるいは真空排気を行えばよい。なおまた、図5に示すフローは操作の一例であり、順序は適宜変えてもよい。
【0050】
図6には、パソコン35のモニタ上に表示される操作画面の一例を示す。図6に示した操作画面では、例えば、操作用ウィンドウ50と、画像表示部51と、電子線の放出を開始し画像表示を開始させる画像観察開始ボタン52と、電子線の放出を停止し画像表示を停止させる画像観察停止ボタン53と、偏向レンズや対物レンズなどの光学レンズを調整してオートフォーカスを実行させる焦点調整ボタン54と、画像の明るさを調整する明るさ調整ボタン55やコントラストを調整するコントラスト調整ボタン56と、荷電粒子光学鏡筒2や第1の筐体7の内部の真空排気を開始させる真空排気ボタン57および第1の筐体7の内部を大気リークさせるための大気リークボタン58がある。真空排気ボタン57を画面上でクリックすると真空排気が開始され、再度クリックすると真空排気が停止される。大気リークボタン58の操作も同様である。上記のボタン操作により実行される処理は、装置本体についた機械的なボタンやつまみを操作して、マニュアル操作で実行することもできる。
【0051】
操作用ウィンドウ50には、ガス制御用バルブ101を開けてガスノズルからガスを放出させるガス放出開始ボタン112と、ガス制御用バルブ101を閉じてガス放出を停止させるガス放出停止ボタン113、走査電子顕微鏡で撮像した画像を画像表示部51に表示させるSEM画像表示ボタン114、カメラ106の取得画像を表示させるカメラボタン115が表示される。同時表示ボタン116をクリックすれば、SEM画像とカメラ画像の両方を画像表示部51に表示させることも可能であり、試料6の高さ調整の際には特に有効である。
【0052】
本実施例の場合、ガス放出開始ボタン112を押してガス制御用バルブ101が開放され、その後ガス放出停止ボタン113を押し忘れると、ガスボンベ103のガスがなくなってしまう可能性がある。そのため、図7に示すように、ガス放出を開始してから停止するまでのガス放出の継続時間を設定するガス放出時間設定画面117を、子ウィンドウ118に表示してもよい。また、ガス放出してからガスを停止するまでの時間は装置使用者が設定するのではなく、装置にプリセットされた時間を使用してもよい。
【0053】
また、SEM画像を観察する時だけに必ずガス放出を行いたい場合がある。その場合は、図7に示す別ウィンドウ118内を表示させ、予めチェックボックス119にチェックマークを入れておく。チェックマークが入った状態で画像観察開始ボタン52がクリックされると、ガス制御用バルブ101が自動的に開き、置換ガスの導入が開始される。その後、ガス放出時間設定画面117で設定された時間が経過すると、ガス制御用バルブ101が自動的に閉じられる。置換ガスの導入途中で画像観察停止ボタン53がクリックされた場合も、やはりガス制御用バルブ101が自動的に閉じられる。なお、置換ガスの導入途中でSEM画像表示ボタン114,カメラボタン115あるいは同時表示ボタン116をクリックすると、選択された画像の種別に応じて、画像表示部51に表示される画像が切り替えることができる。以上説明したガス制御用バルブ101の開閉制御は、上位制御部が伝達するパソコン35での設定情報にもとづき下位制御部37により実行される。
【0054】
図8には、蓋部材122あるいは第2筐体121に粗排気ポートあるいは三方弁を設けた場合の操作画面の一例を示す。この場合の操作画面には、第1の空間と第2の空間の真空排気の開始/停止ボタンが別々に表示される。第2の空間用の真空排気ボタン59をクリックすれば、粗排気ポートに設けられた真空バルブが開き、第2の空間の真空排気が開始される。再度クリックすれば、粗排気ポートの真空バルブが閉じ真空排気が停止する。同様に、第2の空間用の大気リークボタン60をクリックすれば、三方弁に取り付けられたリークバルブが開き、第2の空間が大気開放される。再度クリックすれば、リークバルブが閉じ、2の空間の大気開放が停止する。
【0055】
以上説明した構成に加え、第2筐体121と蓋部材122との接触状態を検知する接触モニタを設けて、第2の空間が閉じているあるいは開いていることを監視してもよい。
【0056】
また、二次電子検出器や反射電子検出器に加えて、X線検出器や光検出器を設けて、EDS分析や蛍光線の検出ができるようにしてもよい。X線検出器や光検出器の配置としては、第1の空間11あるいは第2の空間12のいずれでもよい。
【0057】
また、電子線が試料6に照射されると、試料に吸収電流が流れる。そのため、電流計を設けて、試料6または試料台に流れる電流を計測できるようにしてもよい。これにより、吸収電流像(または吸収電子を利用した画像)を取得することが可能となる。また、試料台の下側に透過電子検出器を配置し、走査透過(STEM)画像を取得できるようにしてもよい。試料台それ自体を検出器にしてもよい。
【0058】
また、試料ステージ5に高電圧を印加してもよい。試料6に高電圧を印加すると試料6からの放出電子に高エネルギーを持たせることができ、信号量を増加させることが可能となり、画像S/Nが改善される。
【0059】
また、本実施例の構成を小型の電子線描画装置に適用することも可能である。この場合には、検出器3は必ずしも必要ではない。
【0060】
以上、本実施例により、実施例1の効果に加え、高真空SEMとしても使用可能な大気圧SEMが実現される。また、置換ガスを導入して観察が実行できるため、本実施例の走査電子顕微鏡は、実施例1の荷電粒子顕微鏡よりもS/Nの良い画像取得が可能である。
【0061】
なお、本実施例では卓上型電子顕微鏡を意図した構成例について説明したが、本実施例を大型の走査電子顕微鏡に適用することも可能である。卓上型電子顕微鏡の場合は、装置全体あるいは荷電粒子光学鏡筒が筐体によって装置設置面に支持されるが、大型の走査電子顕微鏡の場合は、装置全体を架台に載置すればよく、従って、第1筐体7を架台に載置すれば、本実施例で説明した構成をそのまま大型の走査電子顕微鏡に転用できる。
【実施例3】
【0062】
本実施例では、図2の装置構成から蓋部材122を外した構成例について説明する。図9には、本実施例の荷電粒子顕微鏡の全体構成を示す。制御系については、実施例2と同様であるので図示を省略し、装置の要部のみ示している。
【0063】
図9に示す構成では、試料ステージ5が第2筐体121の底面に直接固定される。ガス供給管100は第2筐体121に固定されていてもよいし、されていなくてもよい。本構成によれば、試料が装置外部にはみ出すことが許容されるため、蓋部材122を備える実施例2の構成よりもサイズの大きな試料を観察することが可能である。
【実施例4】
【0064】
本実施例では、図2の装置構成において、第2筐体121と蓋部材122の位置関係を変えた変形例について説明する。図10には、本実施例の荷電粒子顕微鏡の全体構成を示す。実施例3と同様、図10では装置の要部のみ示す。本構成においては、第1の空間11と第2の空間12を真空シールするための真空封止部材128が必要である。この構成の場合、第二筐体の合わせ部132が装置の内側にあるために、装置全体の大きさを実施例1〜3の構成よりも小さくすることができる。
【実施例5】
【0065】
本実施例では、図2の装置構成において、第2筐体121が第1筐体の上側で真空シールされている変形例について説明する。図11に本実施例の荷電粒子顕微鏡の全体構成を示す。実施例4と同様、図11では装置の要部のみ示す。本構成では、鍋型のアタッチメント(第2筐体121)を用いて、第1筐体7に上からアタッチメントをはめ込み、更にその上から電子光学鏡筒2をはめ込んだ構成を備える。第2筐体121は電子光学鏡筒2に対して真空封止部材123で真空シールされ、更に、第2筐体121は第1筐体7に対して真空封止部材129で真空シールされる。この構成の場合、図2と比較すると第2の空間11の容積を大きくすることができ、実施例2の構成よりも大きな試料の配置をすることが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
0 電子源(荷電粒子源)
1 光学レンズ
2 電子光学(荷電粒子光学)鏡筒
3 検出器
4 真空ポンプ
5 試料ステージ
6 試料
7 第1の筐体
10 薄膜
11 第1の空間
12 第2の空間
14 リークバルブ
16 真空配管
18 支柱
19 板部材用支持部材
20 底板
35 パソコン
36 上位制御部
37 下位制御部
43,44 通信線
47 薄膜保持部材
50 操作用ウィンドウ
51 画像表示部
52 画像観察開始ボタン
53 画像観察停止ボタン
54 焦点調整ボタン
55 明るさ調整ボタン
56 コントラスト調整ボタン
57,59 真空排気ボタン
58,60 大気リークボタン
100 ガス供給管
101 ガス制御用バルブ
102 連結部
103 ガスボンベ
104 圧力調整弁
105 制限部材
106 カメラ
107 支持板
108,109 操作つまみ
112 ガス放出開始ボタン
113 ガス放出停止ボタン
114 SEM画像表示ボタン
115 カメラボタン
116 同時表示ボタン
117 ガス放出時間設定画面
118 子ウィンドウ
119 ガス放出実行チェックボックス
120 OKボタン
121 第2筐体
122,130 蓋部材
123,124,125,126,128,129 真空封止部材
131 本体部
132 合わせ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次荷電粒子線を試料上に走査する荷電粒子光学鏡筒と、前記走査により得られる反射電子あるいは二次電子を検出する検出器と、真空ポンプとを備える荷電粒子線装置において、
前記荷電粒子線装置全体を装置設置面に対して支持され、内部が前記真空ポンプにより真空排気される第1の筐体と、
当該第1の筐体の側面または内壁面あるいは前記荷電粒子光学鏡筒に位置が固定される、前記試料を内部に格納する第2の筐体と、
当該第2の筐体の上面側に設けられる、前記一次荷電粒子線を透過あるいは通過させる薄膜とを備え、
前記第2の筐体内部の圧力を、前記第1の筐体内部の圧力よりも高い状態に維持できることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記第2の筐体内部の雰囲気を置換するための置換ガスを導入するガス導入部を備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項2に記載の荷電粒子線装置において、
前記第2の筐体内部の圧力を調整するための圧力調整弁を備え、
前記第2の筐体内部の圧力が所定値よりも高くなった場合に前記圧力調整弁が開くことにより、前記第2の筐体内部が減圧されることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項3に記載の荷電粒子線装置において、
前記第2の筐体の形状が1つの側面が開放された直方体形状であり、
前記ガス導入部または前記圧力調整弁が固定される、当該直方体の開放面を蓋う蓋部材を備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項2に記載の荷電粒子線装置において、
前記置換ガスがヘリウムガスを含む軽元素ガスであることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項4に記載の荷電粒子線装置において、
前記ガス導入部の前記板部材での取り付け位置が、前記圧力調整弁の前記板部材での取り付け位置よりも下に配置されたことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項6に記載の荷電粒子線装置において、
前記圧力調整弁に替えて開口部が設けられたことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項8】
請求項4に記載の荷電粒子線装置において、
前記第2の筐体または前記板部材は、前記第2の筐体の内部圧力を調整するための真空ポンプが接続される粗排気ポートを備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項9】
請求項4に記載の荷電粒子線装置において、
前記板部材は、前記第2の筐体の側面に対して脱着可能に固定されることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項10】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記薄膜が、当該薄膜を保持する薄膜保持部材を介して前記第2の筐体に脱着可能に固定され、
前記薄膜保持部材を前記第2の筐体から取り外すことにより、前記第1の筐体および第2の筐体内部を真空排気可能なことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項11】
請求項10に記載の荷電粒子線装置において、
前記薄膜を保持する薄膜保持部材が、前記第2の筐体内部の天井面に固定されることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項12】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記第2の筐体の底面に固定された、前記試料を面内方向あるいは高さ方向に移動する試料ステージを備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項13】
請求項4に記載の荷電粒子線装置において、
前記板部材に固定された、前記試料を面内方向あるいは高さ方向に移動可能な試料ステージを備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項14】
請求項10に記載の荷電粒子線装置において、
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記薄膜保持部が、前記試料が前記薄膜に接近しすぎないように試料と薄膜間の距離を制限する制限部材を備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項15】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記薄膜と前記試料の間隔を観察可能な観察装置を備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項16】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記試料への前記荷電粒子線の走査によって放出されるイオン,電子,光子,X線のいずれか一つ以上を検出するための検出器、あるいは前記荷電粒子線の照射によって得られる透過電子を検出する検出器が、前記1の筐体内または第2の筐体内に配置されることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項17】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記第2の筐体内に備えられた、前記試料への前記荷電粒子線の走査によって前記試料に流れ込む電子または電流を検出できる試料台を有することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項18】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記第1の筐体または第2の筐体内部の圧力、雰囲気の少なくとも一方の制御条件を設定する操作画面が表示されるモニタを備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項19】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記薄膜の厚みが20μm以下であることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項20】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記薄膜が、前記一次荷電粒子線が通過するための、面積1mm2以下の貫通孔を備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項21】
一次荷電粒子線を試料上に走査する荷電粒子光学鏡筒と、前記走査により得られる反射電子あるいは二次電子を検出する検出器と、真空ポンプとを備える荷電粒子線装置において、
前記荷電粒子光学鏡筒を装置設置面に対して支持し、内部が前記真空ポンプにより真空排気される筐体部と、
内部の圧力を前記筐体部の圧力よりも高い状態に維持しつつ前記試料を格納できるアタッチメントとを備え、
前記アタッチメントは、前記一次荷電粒子線をアタッチメント内部に透過あるいは通過させる薄膜を保持し、
更に前記アタッチメントは、前記筐体部の側壁面または内壁面あるいは前記荷電粒子光学鏡筒に真空シールされて固定されることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項22】
内部が真空排気された荷電粒子光学鏡筒から放出される荷電粒子線を、薄膜を介して大気圧状態に維持された試料に照射し、得られる二次荷電粒子を検出して前記試料上の荷電粒子線の照射位置の画像を取得する観察方法において、
前記荷電粒子光学鏡筒を装置設置面に対して支持する筐体によって形成される第1の空間内を前記荷電粒子線を通過させ、
前記第1の空間に対し当該第1の空間の側面から挿入され、内部圧力が前記荷電粒子光学鏡筒内の圧力よりも高い状態に維持されたアタッチメント内に前記試料を格納し、
前記薄膜を介して前記アタッチメント内の試料に前記荷電粒子線を照射する観察方法。
【請求項23】
請求項21に記載の観察方法において、
前記アタッチメント内部をヘリウムガスで置換することを特徴とする観察方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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