説明

荷電粒子線装置

【課題】試料の周囲を低真空に保持し、且つ、試料の周囲の構造が簡単な荷電粒子線装置を提供する。
【解決手段】荷電粒子線装置は、試料を支持する試料ステージと、荷電粒子線源からの荷電粒子線を試料に集束させる荷電粒子線光学系と、該荷電粒子線光学系を収納する荷電粒子線カラムと、前記荷電粒子線カラムに設けられた第1の差動排気用絞りと、該第1の差動排気用絞りを介して前記荷電粒子線カラムに接続するように配置された前試料室と、前記前試料室に設けられた第2の差動排気用絞りと、前記荷電粒子線カラムを真空排気する第1の真空ポンプと、前記前試料室を真空排気する第2の真空ポンプと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線を用いて試料の加工または観察を行う荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体試料のような含水材料や湿潤物質を、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)によって観察したいというニーズがある。TEM又はSTEM観察では、厚さが数十nm〜数百nm程度の薄膜試料を作製する必要がある。TEM又はSTEM観察用の薄膜試料を作製する方法として、荷電粒子線(FIB)を用いた加工法が知られている。例えば、荷電粒子線(FIB)を用いて、半導体ウエハからTEM又はSTEM観察用の薄膜試料を作製する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-260878号公報
【特許文献2】特開2006-32011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、荷電粒子線(FIB)を用いて、生体試料のような含水材料や湿潤物質からTEM又はSTEM観察用の薄膜試料を作製する技術について鋭意検討した結果、次の知見を得るに至った。
【0005】
荷電粒子線(FIB)装置では、加工及び観察対象の試料を真空排気した試料室に保持する。水分又はガスを含む試料を、真空排気された試料室に保持すると、乾燥により試料が変性したり、ガスの放出により試料が破裂するという問題がある。
【0006】
試料の乾燥を抑制するために、試料を凍結させる方法もある。しかしながら、この場合には、冷却機構を搭載しなければならない。また、凍結により水分が膨張し、観察対象が変形又は破壊する可能性もある。
【0007】
そこで、試料を、低真空下にて支持する方法が考えられる。特許文献1、2には、差動排気機構を用いて低真空領域下に支持された試料を観察する走査型電子顕微鏡(SEM)の例が開示されている。
【0008】
荷電粒子線(FIB)装置では、試料の近傍に、ガスデポジションユニット、マイクロサンプリングユニット等の機器を搭載する必要がある。従って、荷電粒子線(FIB)装置では、走査型電子顕微鏡(SEM)と比較して、試料の周囲の構造を簡素化する必要がある。
【0009】
本発明の目的は、試料の周囲を低真空に保持し、且つ、試料の周囲の構造が簡単な荷電粒子線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による荷電粒子線装置は、試料を支持する試料ステージと、荷電粒子線源からの荷電粒子線を試料に集束させる荷電粒子線光学系と、該荷電粒子線光学系を収納する荷電粒子線カラムと、前記荷電粒子線カラムに設けられた第1の差動排気用絞りと、該第1の差動排気用絞りを介して前記荷電粒子線カラムに接続するように配置された前試料室と、前記前試料室に設けられた第2の差動排気用絞りと、前記荷電粒子線カラムを真空排気する第1の真空ポンプと、前記前試料室を真空排気する第2の真空ポンプと、を有する。
【0011】
前記荷電粒子線源からの荷電粒子線は、前記荷電粒子線光学系と前記第1の差動排気用絞りと前記第2の差動排気用絞りとを経由して、前記試料に照射されるように構成され、前記荷電粒子線カラムの気圧をP1、前記前試料室の気圧をP2、前記試料の周囲の空間の気圧をP3とするとき、P1<P2<P3となるように前記第1の真空ポンプと前記第2の真空ポンプが制御され、前記第1及び第2の差動排気用絞りの内径は2mm以下である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、試料の周囲を低真空に保持し、且つ、試料の周囲の構造が簡単な荷電粒子線装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による荷電粒子線装置の第1の例の構成を示す図である。
【図2】本発明による荷電粒子線装置の第2の例の構成を示す図である。
【図3】本発明による荷電粒子線装置の第3の例の構成を示す図である。
【図4】本発明による荷電粒子線装置の第4の例の構成を示す図である。
【図5】本発明による荷電粒子線装置の第5の例の構成を示す図である。
【図6】本発明による荷電粒子線装置の第6の例の構成を示す図である。
【図7】本発明による荷電粒子線装置の第7の例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、図面を参酌して説明する。ただし、本実施形態は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、各図において共通の構成については同一の参照番号が付されている。
【0015】
図1を参照して、本発明による荷電粒子線装置の第1の例を説明する。本例の荷電粒子線装置は、荷電粒子線カラム101と、その下に配置された前試料室103と、その下に配置された試料室104とを有し、これらは密閉容器によって構成されている。荷電粒子線カラム101の下端には第1の差動排気用絞り108が設けられている。前試料室103の下端には第2の差動排気用絞り109が設けられている。荷電粒子線カラム101と前試料室103は、第1の差動排気用絞り108を介して接続されている。前試料室103と試料室104は、第2の差動排気用絞り109を介して接続されている。差動排気用絞り108、109は、内径が2mm以下のリング状部材によって構成されてよい。荷電粒子線カラム101、前試料室103、及び、試料室104は、互いに差動排気用絞り108、109によって接続されているが、それ以外は密閉容器構造を有する。
【0016】
荷電粒子線カラム101には、荷電粒子線光学系が収納されている。本例の荷電粒子線光学系は、荷電粒子線130を発生する荷電粒子源131と、荷電粒子線130を屈曲させるための偏向器群132と、荷電粒子線130の光軸を横切るように配置された遮蔽板135とを含む。偏向器群132は、偏向器群制御器159によって制御される。遮蔽板135の機能は後に説明する。
【0017】
前試料室103には、荷電粒子線を試料110に照射することによって発生する信号を検出する検出器148が設けられている。検出器148は検出器制御器158によって制御される。
【0018】
試料室104には、試料110を支持し、試料110を平面移動、回転移動及び傾斜させる試料ステージ146と、その下に配置された光学顕微鏡145が設けられている。試料ステージ146は、試料ステージ制御器156によって制御される。光学顕微鏡145は光学顕微鏡制御器155によって制御される。光学顕微鏡145の機能は後に説明する。
【0019】
本例では、第1及び第2の差動排気用絞り108、109、試料ステージ146及び光学顕微鏡145は、荷電粒子源131の光軸に沿って配置されている。
【0020】
荷電粒子線カラム101には、第1の真空ポンプ141が設けられている。前試料室103には、第2の真空ポンプ142が設けられている。試料室104には、第3の真空ポンプ143、ヘリウムガス導入ユニット144、及び、バルブ147が設けられている。試料室104には、更に、ガスデポジションユニット149及びマイクロサンプリングユニット150が設けられている。
【0021】
第1、第2及び第3の真空ポンプ141、142、143は、それぞれ、第1、第2及び第3の真空ポンプ制御器151、152、153によって制御される。ヘリウムガス導入ユニット144、及び、バルブ147は、それぞれ、ヘリウムガス導入ユニット制御器154及びバルブ制御器157によって制御される。ガスデポジションユニット149及びマイクロサンプリングユニット150は、それぞれ、ガスデポジションユニット制御器161及びマイクロサンプリングユニット制御器162によって制御される。ヘリウムガス導入ユニット144の機能は後に説明する。
【0022】
これらの制御器151、152、153、154、155、156、157、158、159、161、162は統合コンピュータ170に接続されている。統合コンピュータ170は、装置全体の動作を制御する。統合コンピュータ170は、1つまたは複数のコンピュータによって統合的にコントロールされてよい。統合コンピュータ170には、オペレータが照射条件、電極の電圧条件、位置条件等の各種指示等を入力するコントローラ(キーボード、マウスなど)172と、オペレータが荷電粒子線装置を操作するためGUI画面を表示するディスプレイ171が接続されている。
【0023】
本例の荷電粒子線装置では、検出器148は前試料室103に配置されている。しかしながら、検出器148は、試料室104又は荷電粒子線カラム101に配置してもよいし、検出器148を備えない構成も可能である。検出器148として、一般に二次電子検出器が使用されるが、荷電粒子線を試料に照射することによって発生する信号を検出することができれば、どのような検出器であってもよい。例えば、試料から放出された電子によってイオン化されたイオンを検出する検出器、X線検出器、STEM検出器等を用いてもよい。検出器148が検出した信号は、検出器制御器158を介して統合コンピュータ170に送られる。光学顕微鏡145からの画像信号は、光学顕微鏡制御器155を介して統合コンピュータ170に送られる。統合コンピュータ170に送られた信号は、ディスプレイ171に表示されるが、別のディスプレイに表示してもよい。
【0024】
尚、荷電粒子線カラム101に収納された荷電粒子線光学系は、図示しないが、荷電粒子線130を集束するための集束レンズ、対物レンズ、荷電粒子線130を走査及びシフトするための偏向系が設けられる。更に、それらを制御するカラム制御器が設けられる。尚、以下の図の例でも、集束レンズ、対物レンズ、偏向系の図示は省略されている。
【0025】
ガスデポジションユニット149は、保護膜作製やマーキングに使用され、荷電粒子線ビーム(FIB)の照射により堆積膜を形成する。ガスデポジションユニット149は、デポガスを貯蔵し、必要に応じて、それをノズル先端から供給することができる。
【0026】
マイクロサンプリングユニット150は、FIBによる試料の加工や切断との併用により、試料の特定箇所をピックアップする。マイクロサンプリングユニット150は、試料室内を移動可能なプローブとそれを駆動するプローブ駆動部を含む。プローブは、試料に形成された微小な試料片を摘出したり、試料表面に接触させて試料へ電位を供給したりすることに利用される。
【0027】
本例では、1つの荷電粒子線カラム101が設けられているが、同一又は互いに異なる2つ以上の荷電粒子線カラムを備えてもよい。例えば、ガリウムイオンビームカラム、ヘリウムイオンビームカラム、電子ビームカラム等を1つ又は複数個備えてもよい。
【0028】
<差動排気機構の機能>
次に、本例の荷電粒子線装置における差動排気機構について説明する。荷電粒子線カラム101、前試料室103、及び、試料室104には、それぞれ、第1、第2及び第3の真空ポンプ141、142、143が設けられている。第1の真空ポンプ141は、例えば、イオンポンプ、高真空用油拡散ポンプ又はターボ分子ポンプによって構成され、荷電粒子線カラム101内は、10−9〜10−4Pa程度の高真空に保持される。第2の真空ポンプ142及び第3の真空ポンプ143は、例えば、ターボ分子ポンプ、低真空用油拡散ポンプ又はロータリポンプによって構成され、前試料室103内は100〜10−4Pa程度の中真空に保持され、試料室104は、1〜300Pa程度の低真空に保持される。尚、試料室104内の真空度は、バルブ147の開閉によっても調整される。
【0029】
第1、第2及び第3の真空ポンプ141、142、143は、それぞれ、第1、第2及び第3の真空ポンプ制御器151、152、153によって独立に制御される。試料室104には、バルブ147が設けられている。バルブ147は、バルブ制御器157によって独立に制御される。荷電粒子線カラム101、前試料室103及び試料室104に、それぞれ真空度を計測する機器を設け、それによって計測した真空度を、統合コンピュータ170に送信するように構成してよい。統合コンピュータ170は、荷電粒子線カラム101、前試料室103及び試料室104の現在の真空度と予め設定した真空度との差異に基づいて、各制御器151、152、153、157に命令信号を送信する。従って、荷電粒子線カラム101、前試料室103及び試料室104の内部は、常に、所望の真空度に保持される。
【0030】
本例では、荷電粒子線カラム101の気圧をP1、前試料室103の気圧をP2、試料室104の気圧をP3とするとき、P<P<Pとなるように構成されている。この関係は、以下の図の例でも、成り立つ。
【0031】
荷電粒子線カラム101と前試料室103は、第1の差動排気用絞り108を介して接続されている。しかしながら、第1の差動排気用絞り108の内径は十分に小さいから、荷電粒子線カラム101の真空度を前試料室103の真空度より高い真空度に保持することができる。前試料室103と試料室104は、第2の差動排気用絞り109を介して接続されている。しかしながら、第2の差動排気用絞り109の内径は十分に小さいから、前試料室103の真空度を試料室104の真空度より高い真空度に保持することができる。差動排気用絞り108、109の内径は2mm以下である。
【0032】
本例では、荷電粒子線カラム101内を高真空に保持し、試料室104を低真空又は大気圧下に保持することができる。従って、試料ステージ146に支持された試料110の周囲の雰囲気を、低真空または大気圧にすることができる。
【0033】
そのため、水分を含む試料、例えば、生体細胞等のような生物試料や、はんだ等のような湿潤物質のFIB加工が可能となる。また、試料110の周囲には空気等に由来する多数のガス分子が存在する。そのため、荷電粒子線の照射によって試料110内からガスが放出されても、その影響は少ない。そのため、ガスを含む試料、例えばガス吸着材に用いられる多孔質材料や気泡を含む発泡性材料などのFIB加工も容易となる。
【0034】
また、低真空または大気圧下にて、試料を支持する場合、試料の帯電を抑制することができる利点がある。そのため、帯電によりFIB加工が難しかったセラミック材料やゴム材料などの絶縁材料の加工も容易となる。さらに、試料の周囲に存在するガス分子が多くなると、試料から熱伝導による熱放出量も多くなる。そのため、樹脂材料や高分子材料などのように熱変性をおこす試料のFIB加工も容易となる。
【0035】
本例の荷電粒子線装置では、従来、FIB加工を行うことが困難であった多種の材料について、容易にFIB加工を行うことができる。FIB加工によるTEM又はSTEM観察用の薄膜試料の作製を、より多種の材料に適用することができる。従って、本発明は、TEM又はSTEM観察による構造解析の幅を広げるとともに解析効率を大幅に向上させる効果も持つ。
【0036】
本発明によると、FIB加工ばかりでなく、イオンビームや電子ビーム照射による堆積膜形成、走査イオン像(SIM)観察、SEM像観察についても、多種の材料の試料に適応できる効果が得られる。
【0037】
尚、低真空下又は大気圧下では、高真空下と比較して、荷電粒子線が散乱され易く、またエネルギー損失が起こり易いという問題がある。そのため、荷電粒子線が低真空下又は大気圧下を通過する距離は、できるだけ短い方が望ましい。従って、第2の差動排気用絞り109と試料110の間の距離は、2mm以内であることが望ましい。これにより、荷電粒子線の散乱およびエネルギー損失を抑えることができる。更に、低真空下または大気圧下においてもFIBによる微細加工や高速加工、またFIBおよび電子ビームによる堆積膜形成、また高分解能観察が可能となる。
【0038】
<ヘリウムガス導入ユニットの機能>
次に、本例の荷電粒子線装置におけるヘリウムガス導入ユニット144について説明する。本例では、低真空下又は大気圧下における荷電粒子線130の経路に、局所的に荷電粒子線の散乱能の低いガス、例えばヘリウムガスを導入する。図示のように、ヘリウムガス導入ユニット144を用いて、第2の差動排気用絞り109と試料110の間の荷電粒子線130の経路にヘリウムガスを導入する。それによって、荷電粒子線130の経路に存在するガスが、ヘリウムガスによって置換される。荷電粒子線130の経路は、散乱能の低いヘリウムガスによって占有されるから、荷電粒子線の散乱およびエネルギー損失が抑制される。
【0039】
本例では、FIBによる微細加工や高速加工、またFIBおよび電子ビームによる堆積膜形成、また荷電粒子線観察の性能をさらに向上させることができる。尚、ヘリウムガスの導入は、第2の差動排気用絞り109と試料110との距離に関係なく実施可能である。
【0040】
<遮蔽板の機能>
次に、本例の荷電粒子線装置における偏向器群132および遮蔽板135について説明する。荷電粒子源から試料上の照射位置までの荷電粒子線の経路が一直線の場合、試料近傍から散乱した気体分子が荷電粒子源に到達する可能性がある。気体分子が荷電粒子源に到達すると、荷電粒子源を汚染する。それによって、荷電粒子源の寿命が短くなる。
【0041】
そこで、本例では、荷電粒子源131の光軸上に遮蔽板135を設ける。遮蔽板135は荷電粒子源131の光軸を交差するように配置される。更に、荷電粒子源131からの荷電粒子線130の経路は、偏向器群132によって、遮蔽板135を迂回するように屈曲させられる。従って、荷電粒子源131から試料110上の照射位置までの荷電粒子線130の経路は屈曲し、一直線ではない。そのため、試料近傍から散乱した気体分子は、荷電粒子源131に到達することができない。荷電粒子源が、試料近傍からの気体分子によって汚染されることはない。よって荷電粒子源は長寿命化される。
【0042】
尚、遮蔽板135に、図示しない、遮蔽板を駆動させる機構及び遮蔽板の駆動を制御する制御器を設けてもよい。図示のように、遮蔽板135を、荷電粒子源131の光軸を横切るように配置した場合には、試料近傍から散乱した気体分子による荷電粒子源131の汚染を防止することができる。その必要がない場合には、遮蔽板135を外方に引き出せばよい。この場合には、荷電粒子源131から試料110上の照射位置までの荷電粒子線130の経路は一直線となる。
【0043】
図示の例では、偏向器群132は4組の偏向器を含むように構成されている。しかしながら、荷電粒子源131からの荷電粒子線130が遮蔽板135を迂回するように屈曲させられるなら、偏向器の数および配置は問わない。例えば、3組の偏向器を用いて同様の系を実現してもよい。
【0044】
<光学顕微鏡の機能>
次に、本例の荷電粒子線装置における光学顕微鏡145について説明する。荷電粒子線130によって試料110を加工する場合、作業者は、試料110の加工位置と荷電粒子線130の照射位置を観察しながら、FIB加工作業を行う。従って、FIB加工中に、試料110の加工位置の画像を取得する必要がある。通常、検出器148によって得られた2次電子像を用いる。
【0045】
しかしながら、検出器148によって得られた2次電子像では、ブロードな荷電粒子線を照射する場合、加工や堆積膜形成を行う位置の特定が困難である。特に、FIB加工では、エネルギーの高い後方散乱電子の放出がないため、低真空下あるいは大気中にて、荷電粒子像を取得することは困難である。
【0046】
そこで、本例では、光学顕微鏡145によって、加工位置と荷電粒子線の照射位置を特定することができる。例えば、荷電粒子線照射によって形成された加工痕を光学顕微鏡145で確認することにより荷電粒子線の照射位置を確認することができる。また、予め荷電粒子線の照射位置と光学顕微鏡145の観察位置が合うように機械的あるいは電気的な調整を行ってもよい。それによって、荷電粒子線の加工位置を光学顕微鏡145の画像から判断することができる。また、予め荷電粒子線の照射位置と光学顕微鏡145の観察位置との関係を記録しておいてもよい。それによって、荷電粒子線の加工位置を光学顕微鏡145の画像から判断することができる。
【0047】
本例では、光学顕微鏡145は、荷電粒子源131の光軸に沿って、配置されている。しかしながら、試料上の荷電粒子源131の照射位置を観察することができれば、光学顕微鏡145の位置及び光軸の位置は、任意である。例えば、光学顕微鏡145の光軸は荷電粒子源131の光軸に対して傾斜して配置してもよい。
【0048】
<荷電粒子線カラムに対する試料の位置>
図1に示す本例の荷電粒子線装置では、荷電粒子線カラム101の下端に第1の差動排気用絞り108を装着し、荷電粒子線カラム101の下側に前試料室103を配置し、前試料室103の下端に第2の差動排気用絞り109を装着し、その下側に試料110を配置している。しかしながら、この順を逆にしてもよい。即ち、荷電粒子線カラム101の上端に第1の差動排気用絞り108を装着し、荷電粒子線カラム101の上側に前試料室103を配置し、前試料室103の上端に第2の差動排気用絞り109を装着し、その上側に試料110を配置してもよい。
【0049】
この場合、試料110を第2の差動排気用絞り109の上に配置してもよい。それによって、試料ステージ146を省略することができる。また、ヘリウムガス導入ユニット144、ガスデポジションユニット149及びマイクロサンプリングユニット150は、前試料室103に配置してもよい。
【0050】
図2を参照して、本発明による荷電粒子線装置の第2の例を説明する。本例の荷電粒子線装置では、図1の第1の例と比較して、試料室104が設けられていない。従って、試料室104に設けられた、第3の真空ポンプ143及び第3の真空ポンプ制御器153、バルブ147及びバルブ制御器157が不要である。本例では、試料室104が設けられていないから、試料ステージ146によって支持されている試料110は大気中にある。
【0051】
本例では、荷電粒子線カラム101の気圧をP1、前試料室103の気圧をP2、試料110が配置された空間の気圧をP3とするとき、P1<P2<P3となるように構成されている。
【0052】
本例では、試料110を試料ステージ146に装着したら、直ちに、加工または観察を行うことができる。即ち、試料室104を真空排気する時間が省略される。そのため、加工または観察のスループットおよび簡便性がより向上する。
【0053】
上述のように、大気圧下では、高真空下と比較して、荷電粒子線が散乱され易く、またエネルギー損失が起こり易いという問題がある。そのため、荷電粒子線が大気圧下を通過する距離は、できるだけ短い方が望ましい。従って、第2の差動排気用絞り109と試料110の間の距離は、2mm以内であることが望ましい。これにより、荷電粒子線の散乱およびエネルギー損失を抑えることができる。更に、大気圧下においてもFIBによる微細加工や高速加工、またFIBおよび電子ビームによる堆積膜形成、また高分解能観察が可能となる。
【0054】
本例でも、荷電粒子線カラム101、前試料室103、及び、試料110の配置順を図1の例とは逆にしてもよい。即ち、荷電粒子線カラム101の上端に第1の差動排気用絞り108を装着し、荷電粒子線カラム101の上側に前試料室103を配置し、前試料室103の上端に第2の差動排気用絞り109を装着し、その上側に試料110を配置してもよい。この場合、試料110を第2の差動排気用絞り109の上に配置してもよい。それによって、試料ステージ146を省略することができる。本例では、試料室が設けられていないため、より手軽に試料交換ができる。
【0055】
本例及び以下の例でも、試料ステージ146の近傍にはガスデポジションユニット、マイクロサンプリングユニット等が設けられているが、図示は省略されている。
【0056】
図3を参照して、本発明による荷電粒子線装置の第3の例を説明する。本例の荷電粒子線装置では、図2の第2の例と比較して、屈曲した荷電粒子線カラム102が設けられている。荷電粒子線カラム102は下側の直胴部102bと上側の屈曲部102aを含む。荷電粒子源131は屈曲部102aに配置されている。本例の荷電粒子線光学系には、偏向器群132の代わりに、荷電粒子線130を屈折させる偏向器133が設けられている。偏向器133は、偏向器制御器160によって制御される。本例の荷電粒子線光学系には、遮蔽板135は設けられていない。
【0057】
荷電粒子源131からの荷電粒子線130は、偏向器133によって、屈折される。従って、荷電粒子源131から試料110上の照射位置までの荷電粒子線130の経路は屈折し、一直線ではない。そのため、試料近傍から散乱した気体分子は、荷電粒子源131に到達することができない。従って、荷電粒子源が、試料近傍からの気体分子によって汚染されることはない。よって荷電粒子源は長寿命化される。
【0058】
図示の例では、検出器148及び検出器制御器158が省略されている。しかしながら、本例でも、検出器148及び検出器制御器158を設けてもよい。検出器148は、前試料室103に設けてもよいが、荷電粒子線カラム101に設けてもよい。
【0059】
図4を参照して本発明による荷電粒子線装置の第4の例を説明する。本例の荷電粒子線装置では、図2の第2の例と比較して、前試料室103の下端に、第2の差動排気用絞り109を設ける代わりに差動排気用管418が設けられている。尚、図示の例では、荷電粒子線カラム101の下端の孔416に、第1の差動排気用絞り108が設けられていない。
【0060】
荷電粒子線カラム101と前試料室103は、孔416を介して接続されている。前試料室103と試料110が配置された空間の間は、差動排気用管418を介して接続されている。
【0061】
本例では、荷電粒子線カラム101の気圧をP1、前試料室103の気圧をP2、試料110が配置された空間の気圧をP3とするとき、P1<P2<P3となるように構成されている。
【0062】
差動排気用管418は、円筒状、テーパのあるロート状、又は、円錐形状であってもよい。更に、径の異なる管を組み合わせた形状でも構わない。また、内部の一部に管を備えていれば外部の形状は問わない。差動排気用管418の内径は3mm以下であってよい。
【0063】
差動排気用管418を流れる空気の単位時間当たりの流量は、第2の差動排気用絞り109を流れる空気の単位時間当たりの流量より小さくなるように、差動排気用管418の長さ及び内径が設定される。従って、荷電粒子線カラム101の内部、前試料室103の内部、及び、試料110が配置された空間の間の圧力差を容易に高くすることができる。従って、荷電粒子線の散乱やエネルギー損失をより低減することができる。
【0064】
本例では、差動排気用管418を用いるため、試料110の近くに、ヘリウムガス導入ユニット、ガスデポジションユニット、マイクロサンプリングユニット等の機器、又は、構造物を配置することができる。更に、本例では、差動排気用管418は細長い管状部材によって構成されるため、試料110の周囲の空間を様々な機器又は構造物が占有している場合でも、差動排気用管418の出口を試料110の表面に近づけることができる。従って、荷電粒子線が大気圧下を通過する距離を十分短くすることができる。それにより荷電粒子線の散乱、及び、エネルギー損失を回避することができる。
【0065】
本例では、図2の第2の例と同様に、試料室104が省略されている。しかしながら、図1の第1の例のように、試料室104を設けてもよい。本例でも、検出器148が省略されている。しかしながら、検出器148を設けてもよい。検出器148は、前試料室103に設けてもよいが、試料室104又は荷電粒子線カラム101に設けてもよい。
【0066】
図5を参照して本発明による荷電粒子線装置の第5の例を説明する。本例の荷電粒子線装置では、図4の第4の例と比較して、前試料室103が省略され、荷電粒子線カラム101に差動排気用管518が設けられている点が異なる。本例では、荷電粒子線カラム101と試料110が配置された空間の間は、差動排気用管518を介して接続されている。本例では、前試料室103に設けられた第2の真空ポンプ142及び第2の真空ポンプ制御器152が不要である。装置構成をより簡素化することができる。
【0067】
図6を参照して本発明による荷電粒子線装置の第6の例を説明する。本例の荷電粒子線装置では、図2の第2の例と比較して、第1及び第2の差動排気用絞り108、109の代わりに、開口電極616、617、618が設けられている点が異なる。
【0068】
開口電極616、617、618は対物レンズの機能と差動排気用絞り機能を提供する。従って、本例では、荷電粒子線カラム101に配置された荷電粒子線光学系には、対物レンズが設けられていない。
【0069】
荷電粒子線カラム101の下端には第1の開口電極616が設けられている。前試料室103の下端には第3の開口電極618が設けられている。2つの開口電極616、618の間に第2の開口電極617が設けられている。荷電粒子線カラム101と前試料室103は、第1の開口電極616を介して接続されている。前試料室103と試料110が配置された空間の間は、第3の開口電極618を介して接続されている。開口電極616、617、618は、内径が2mm以下のリング状部材によって構成されてよい。
【0070】
第1の開口電極616と第3の開口電極618は、レンズ機能と差動排気用絞り機能を有する。第2の開口電極617は、レンズ機能を有する。開口電極616、617、618の電圧は、開口電極制御器660によって制御される。開口電極616、617、618の電圧を制御することにより、レンズ作用が調節される。開口電極616、617、618に挿まれた空間106はレンズ室となる。本例では、前試料室103によってレンズ室が構成されるから、両者を別個に設ける場合と比較して、装置構成を単純化できる。
【0071】
本例では、試料110に最も近い第3の開口電極618にレンズ機能と差動排気用絞りの機能を付与する。そのため、レンズと試料110の間の距離を近づけることができる。これにより、レンズ性能を向上することができる。即ち、荷電粒子線像における分解能の向上および加工精度の向上を図ることができる。更に本例では、差動排気用絞りと試料110の間の距離を小さくすることができる。そのため、荷電粒子線が大気圧下を通過する距離を、短くすることがきる。即ち、荷電粒子線の散乱とエネルギー損失を回避することができる。
【0072】
本例では、3枚の開口電極によってレンズ機能を生成したが、レンズ機能を生成するなら、開口電極の数は問わない。例えば、開口電極は1枚でもよいし、2枚又は4枚でもよい。
【0073】
本例では両側の開口電極616、618に差動排気用絞りの機能を付与したが、3つの開口電極616、617、618のうちのいずれか1つのみに差動排気用絞りの機能を付与してもよい。しかしながら、好ましくは、試料110に最も近い開口電極618に差動排気用絞りの機能を付与する。それによって、荷電粒子線が大気圧下を通過する距離を十分短くすることができる。即ち、荷電粒子線の散乱とエネルギー損失を回避することができる。
【0074】
図7を参照して本発明による荷電粒子線装置の第7の例を説明する。本例の荷電粒子線装置では、図6の第6の例と比較して、前試料室と開口電極の代わりに磁界レンズ720を用いる点が異なる。磁界レンズ720は荷電粒子線光学系を構成する対物レンズである。磁界レンズ720は、磁界レンズ制御器760によって制御される。
【0075】
本例の磁界レンズ720は前試料室と差動排気用絞りの機能を提供する。先ず、前試料室としての機能について説明する。磁界レンズ720は磁路を有する。磁路によって内部にレンズ室107が形成される。このレンズ室107は、前試料室103と同様に、密閉容器構造を有し、第2の真空ポンプ142によって真空排気される。
【0076】
次に、差動排気用絞りの機能を説明する。磁界レンズ720の磁路は、中心に小さな孔716,718を有する。この孔716,718は差動排気用絞り又は差動排気用管として機能する。
【0077】
本例では、荷電粒子線カラム101の下端に磁界レンズ720を設けるから、磁界レンズ720と試料110の間の距離を近づけることができる。これにより、レンズ性能を向上することができる。即ち、荷電粒子線像における分解能の向上および加工精度の向上を図ることができる。更に本例では、磁路の孔716,718と試料110の間の距離を小さくすることができる。そのため、荷電粒子線が大気圧下を通過する距離を、短くすることがきる。即ち、荷電粒子線の散乱とエネルギー損失を回避することができる。
【0078】
本発明によると、大気圧下または低真空下に支持された試料の加工を可能にする荷電粒子線装置を提供することができる。例えば、FIBを用いた生体試料や湿潤物質の微細加工を可能にする装置を提供することができる。これにより、TEM又はSTEM観察用の薄膜試料の作製の効率を飛躍的に向上させるとともに、TEM又はSTEMにおける解析精度を飛躍的に向上させることができる。
【0079】
また、大気圧下または低真空下に支持された試料にプローブ径の小さい荷電粒子線を照射することができる。これにより、荷電粒子線装置の加工性能および観察性能を向上させることができる。
【0080】
以上本発明の例を説明したが本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは、当業者によって容易に理解されよう。
【符号の説明】
【0081】
101, 102:荷電粒子線カラム
102a:屈曲部
102b:直胴部
103:前試料室
104:試料室
106, 107:レンズ室
108:第1の差動排気用絞り
109:第2の差動排気用絞り
110:試料
130:荷電粒子線
131:荷電粒子源
132:偏向器群
133:偏向器
135:遮蔽板
141:第1の真空ポンプ
142:第2の真空ポンプ
143:第3の真空ポンプ
144:ヘリウムガス導入ユニット
145:光学顕微鏡
146:試料ステージ
147:バルブ
148:検出器
149:ガスデポジションユニット
150:マイクロサンプリングユニット
151:第1の真空ポンプ制御器
152:第2の真空ポンプ制御器
153:第3の真空ポンプ制御器
154:ヘリウムガス導入ユニット制御器
155:光学顕微鏡制御器
156:試料ステージ制御器
157:バルブ制御器
158:検出器制御器
159:偏向器群制御器
160:偏向器制御器
161:ガスデポジションユニット制御器
162:マイクロサンプリングユニット制御器
170:統合コンピュータ
171:ディスプレイ
172:コントローラ(キーボード、マウスなど)
416:孔
418,518:差動排気用管
616:第1の差動排気用絞り兼 開口電極
617:開口電極
618:第2の差動排気用絞り兼 開口電極
660:開口電極制御器
716:孔(第1の差動排気用絞り兼 磁路)
718:孔(第2の差動排気用絞り兼 磁路)
720:磁界レンズ
760:磁界レンズ制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を支持する試料ステージと、荷電粒子線源からの荷電粒子線を試料に集束させる荷電粒子線光学系と、該荷電粒子線光学系を収納する荷電粒子線カラムと、前記荷電粒子線カラムに設けられた第1の差動排気用絞りと、該第1の差動排気用絞りを介して前記荷電粒子線カラムに接続するように配置された前試料室と、前記前試料室に設けられた第2の差動排気用絞りと、前記荷電粒子線カラムを真空排気する第1の真空ポンプと、前記前試料室を真空排気する第2の真空ポンプと、を有し、
前記荷電粒子線源からの荷電粒子線は、前記荷電粒子線光学系と前記第1の差動排気用絞りと前記第2の差動排気用絞りとを経由して、前記試料に照射されるように構成され、
前記荷電粒子線カラムの気圧をP1、前記前試料室の気圧をP2、前記試料の周囲の空間の気圧をP3とするとき、P1<P2<P3となるように前記第1の真空ポンプと前記第2の真空ポンプが制御され、前記第1及び第2の差動排気用絞りの内径は2mm以下であることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記荷電粒子線光学系は、前記荷電粒子源の光軸を交差するように配置される遮蔽板と、前記荷電粒子源からの荷電粒子線の経路が前記遮蔽板を迂回するように屈曲させるための偏向器群と、が設けられていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記第2の差動排気用絞りと前記試料の間の荷電粒子線の経路にヘリウムガスを導入するヘリウムガス導入ユニットが設けられていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記試料上の荷電粒子源の照射位置を観察するための光学顕微鏡が設けられていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記試料ステージを収納する試料室と、該試料室を真空排気する第3の真空ポンプと、前記試料室を大気と接続するために開閉可能なバルブと、が設けられていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記荷電粒子線カラムは直胴部と該直胴部に対して屈曲した屈曲部を含み、前記荷電粒子線源は前記屈曲部に設けられ、前記荷電粒子線光学系は、前記荷電粒子源からの荷電粒子線を屈曲させる偏向器を有することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記試料の周囲にガスデポジションユニット、及び、マイクロサンプリングユニットが配置されていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項8】
試料を支持する試料ステージと、荷電粒子線源からの荷電粒子線を試料に集束させる荷電粒子線光学系と、該荷電粒子線光学系を収納する荷電粒子線カラムと、該荷電粒子線カラムに接続された前試料室と、該前試料室と前記試料の周囲の空間とを接続する差動排気用管と、前記荷電粒子線カラムを真空排気する第1の真空ポンプと、前記前試料室を真空排気する第2の真空ポンプと、を有し、
前記荷電粒子線源からの荷電粒子線は、前記荷電粒子線光学系と前記差動排気用管とを経由して、前記試料に照射されるように構成され、
前記荷電粒子線カラムの気圧をP1、前記前試料室の気圧をP2、前記試料の周囲の空間の気圧をP3とするとき、P1<P2<P3となるように前記第1及び第2の真空ポンプが制御され、前記差動排気用管の内径は3mm以下であることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項9】
請求項8記載の荷電粒子線装置において、
前記荷電粒子線カラムには孔が形成され、該孔を介して前記荷電粒子線カラムと前記前試料室が接続されていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項10】
試料を支持する試料ステージと、荷電粒子線源からの荷電粒子線を試料に集束させる荷電粒子線光学系と、該荷電粒子線光学系を収納する荷電粒子線カラムと、該荷電粒子線カラムと前記試料の周囲の空間とを接続する差動排気用管と、前記荷電粒子線カラムを真空排気する真空ポンプと、と有し、
前記荷電粒子線源からの荷電粒子線は、前記荷電粒子線光学系と前記差動排気用管とを経由して、前記試料に照射されるように構成され、
前記荷電粒子線カラムの気圧をP1、前記試料の周囲の空間の気圧をP3とするとき、P1<P3となるように前記真空ポンプが制御され、前記差動排気用管と前記試料の間の距離は2mm以下であり、前記差動排気用管の内径は3mm以下であることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項11】
請求項8、9又は10記載の荷電粒子線装置において、
前記荷電粒子線光学系は、前記荷電粒子源の光軸を交差するように配置される遮蔽板と、前記荷電粒子源からの荷電粒子線の経路が前記遮蔽板を迂回するように屈曲させるための偏向器群と、が設けられていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項12】
請求項8、9又は10記載の荷電粒子線装置において、
前記差動排気用管と前記試料の間の荷電粒子線の経路にヘリウムガスを導入するヘリウムガス導入ユニットが設けられていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項13】
請求項8、9又は10記載の荷電粒子線装置において、
前記試料上の荷電粒子源の照射位置を観察するための光学顕微鏡が設けられていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項14】
請求項8、9又は10記載の荷電粒子線装置において、
前記試料の周囲にガスデポジションユニット、及び、マイクロサンプリングユニットが配置されていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項15】
試料を支持する試料ステージと、荷電粒子線源からの荷電粒子線を試料に集束させる荷電粒子線光学系と、該荷電粒子線光学系を収納する荷電粒子線カラムと、前記荷電粒子線カラムに設けられた第1の開口電極と、該第1の開口電極を介して前記荷電粒子線カラムに接続するように配置された前試料室と、前記前試料室に設けられた第2の開口電極と、前記第1及び第2の開口電極に供給する電圧を制御する開口電極制御器と、前記荷電粒子線カラムを真空排気する第1の真空ポンプと、前記前試料室を真空排気する第2の真空ポンプと、を有し、
前記荷電粒子線源からの荷電粒子線は、前記荷電粒子線光学系と前記第1の開口電極と前記第2の開口電極とを経由して、前記試料に照射されるように構成され、
前記荷電粒子線カラムの気圧をP1、前記前試料室の気圧をP2、前記試料の周囲の空間の気圧をP3とするとき、P1<P2<P3となるように前記第1の真空ポンプと前記第2の真空ポンプが制御され、前記第1及び第2の開口電極の内径は2mm以下であることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項16】
試料を支持する試料ステージと、荷電粒子線源からの荷電粒子線を試料に集束させる荷電粒子線光学系と、該荷電粒子線光学系を収納する荷電粒子線カラムと、前記荷電粒子線カラムと前記試料の間に設けられ磁路を備えた磁界レンズと、を有し、
前記磁路によって前記荷電粒子線カラムに接続された前試料室が構成され、前記磁路の中心孔によって、前記荷電粒子線カラムと前記試料の周囲の空間を接続する差動排気用絞りが構成され、
更に、
前記荷電粒子線カラムを真空排気する第1の真空ポンプと、前記磁界レンズの磁路によって形成された前試料室を真空排気する第2の真空ポンプと、とが設けられ、
前記荷電粒子線源からの荷電粒子線は、前記荷電粒子線光学系と前記磁路の中心孔によって構成された前記差動排気用絞りを経由して、前記試料に照射されるように構成され、
前記荷電粒子線カラムの気圧をP1、前記前試料室の気圧をP2、前記試料の周囲の空間の気圧をP3とするとき、P1<P2<P3となるように前記第1の真空ポンプと前記第2の真空ポンプが制御されることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項17】
請求項15又は16記載の荷電粒子線装置において、
前記荷電粒子線光学系は、前記荷電粒子源の光軸を交差するように配置される遮蔽板と、前記荷電粒子源からの荷電粒子線の経路が前記遮蔽板を迂回するように屈曲させるための偏向器群と、が設けられていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項18】
請求項15又は16記載の荷電粒子線装置において、
前記磁界レンズと前記試料の間の荷電粒子線の経路にヘリウムガスを導入するヘリウムガス導入ユニットが設けられていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項19】
請求項15又は16記載の荷電粒子線装置において、
前記試料上の荷電粒子源の照射位置を観察するための光学顕微鏡が設けられていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項20】
請求項15又は16記載の荷電粒子線装置において、
前記試料の周囲にガスデポジションユニット、及び、マイクロサンプリングユニットが配置されていることを特徴とする荷電粒子線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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