説明

荷電粒子輸送方法、ガイド装置、及びその製造方法

【課題】簡便に荷電粒子を輸送することができるガイド装置及びその製造方法、並びに荷電粒子の輸送方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様にかかるガイド装置100は、絶縁体で被覆された被覆導線によって荷電粒子を輸送するための電場を発生させるガイド装置であって、荷電粒子が内部を通過する螺旋部10を設けるために螺旋状に巻かれた第1の被覆導線11と、螺旋部10における第1の被覆導線11と互いに絡み合うように螺旋状に巻かれた第2の被覆導線12と、螺旋部10を包むように設けられた導電体13と、を備えるものである。
を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子を輸送するために用いられるが移動装置とその製造方法、並びに荷電粒子輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析装置では、真空中でイオンをある場所から別の場所に導く必要が頻繁に表れる。例えば、イオン生成部から、質量分析部まで搬送する例が挙げられる。このようなイオンを搬送するためには、ラジオ波を用いるイオンガイドや、四重極偏向器、イオンレンズなどが用いられている。
【0003】
多極子イオンガイドは、組を成す多数の円柱や螺旋からなっている。特許文献1には四重極の円柱を用いたイオンガイドが開示されている。この組をなす部品にラジオ波交流の逆位相を印加する。イオンに作用する時間平均的なポテンシャルは、有効ポテンシャルと呼ばれている。有効ポテンシャルでは、多極子イオンガイドの中心軸に沿った線状の極小が生成され、電極に近づくにしたがって増加する傾向を示す。このため、有効ポテンシャルは、多極子イオンガイドの内側にイオンを隔離する。多極子ガイドの両端(出入り口)に隔壁(穴あき円板)を取り付け、ここに適切な電位を印加することによって、イオンを閉じ込めるための装置としても働く。
【0004】
有効ポテンシャルの動径の立ち上がり形状は、円柱対の数によって決定される。円柱対の数をn、動径をrとすると、動径方向の有効ポテンシャルは、r2n−2に比例する。円柱の数が多いほど、動径方向の有効ポテンシャルが井戸型に近づく。このため、より運動エネルギーの大きいイオンを効率よく閉じ込めることができる。
【0005】
また、環状の電極からなる筒状の装置を作成することによっても、同様のイオンガイドを作ることができる。この装置では、隣り合った環状電極同士で逆位相になるようにラジオ波交流(RF電圧)を印加する。
【0006】
螺旋電極の対の場合には、特許文献1に示されているように、螺旋を成す線の傾き、すなわち、巻きの密度を変えることによって、動径方向の有効ポテンシャルを変えることが可能である。これによって、環状電極からなるイオンガイドに近いポテンシャルから多極子イオンガイドに近いポテンシャルまで自由に有効ポテンシャルを変化させることができる。
【0007】
【特許文献1】特表2008−538646号公報
【特許文献2】米国特許公報5572035号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
イオンの衝突による電極の帯電を少なくするためには、導体を露出させておくことが好ましい。すなわち、誘電体の使用を最小限に抑えることが好ましい。しかしながら、誘電体の使用を最小限に抑えようとすると、イオンガイドの製作が困難になってしまう。この結果、コストを低減することが困難になってしまう。また、導体を露出させる構成では、電極同士の短絡を防ぐために、イオンガイドを剛構造にする必要がある。剛構造とした場合、輸送方向が制限されてしまう。すなわち、輸送方向を変えながら、所望の位置まで輸送することが困難になってしまう。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、所望の位置まで、簡便かつ高効率に荷電粒子を輸送することができるガイド装置及びその製造方法、並びに荷電粒子の輸送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様にかかるガイド装置は、絶縁体で被覆された被覆導線によって荷電粒子を輸送するための電場を発生させるガイド装置であって、荷電粒子が内部を通過する螺旋部を設けるために螺旋状に巻かれた第1の被覆導線と、前記螺旋部における前記第1の被覆導線と多重螺旋構造を形成するように螺旋状に巻かれた第2の被覆導線と、前記螺旋部を包むように設けられた導電材料と、を備えるものである。これにより、導線の短絡を防ぐことができる。よって、所望の位置まで、簡便かつ高効率に荷電粒子を輸送することができる
【0011】
本発明の第2の態様にかかるガイド装置は、螺旋状に巻かれた絶縁性テープと前記絶縁性テープに固定され、荷電粒子が内部を通過する螺旋部を設けるために螺旋状になっている第1の導線と、前記第1の導線と所定の間隔を隔てて、螺旋状になるよう、前記テープに固定された第2の導線と、前記螺旋状に巻かれた絶縁性テープを包むように設けられた導電材料と、を備えるものである。これにより、導線の短絡を防ぐことができる。よって、所望の位置まで、簡便かつ高効率に荷電粒子を輸送することができる
【0012】
本発明の第3の態様にかかるガイド装置は、絶縁性のホースと、荷電粒子が内部を通過する螺旋部を設けるため、前記ホースに対して螺旋状に固定されている第1の導線と、前記第1の導線と所定の間隔を隔てて、螺旋状になるよう、前記ホースに固定された第2の導線と、前記ホースを包むように設けられた導電材料と、を備えるものである。これにより、導線の短絡を防ぐことができる。よって、所望の位置まで、簡便かつ高効率に荷電粒子を輸送することができる
【0013】
本発明の第4の態様にかかるガイド装置は、上記のガイド装置であって、前記導電材料がメッシュ形状になっているものである。これにより、真空排気を容易に行うことができる。
【0014】
本発明の第5の態様にかかるガイド装置は、上記のガイド装置であって、前記導電材料に真空保持用の真空配管が用いられていることを特徴とするものである。これにより、部品を共通化することができるため、構成を簡素化することができる。
【0015】
本発明の第6の態様にかかるガイド装置は、上記のガイド装置であって、前記螺旋部が荷電粒子の輸送方向を変えるために、屈曲していることを特徴とするものである。これにより、任意の経路で輸送することができる。
【0016】
本発明の第7の態様にかかるガイド装置は、上記のガイド装置であって、前記螺旋部に、螺旋の径が変化する変化部が設けられているものである。これにより、荷電粒子分布を空間的に収束することができる。
【0017】
本発明の第8の態様にかかる荷電粒子輸送方法は、上記のガイド装置に沿って荷電粒子を輸送する荷電粒子輸送方法であって、第1の被覆導線にRF電圧を印加し、第2の被覆導線に前記第1の被覆導線の前記RF電圧と異なる位相でRF電圧を印加し、前記導電材料にバイアス電圧を印加する、ものである。これにより、簡便に荷電粒子を所定の位置まで輸送することができる。
【0018】
本発明の第9の態様にかかる荷電粒子輸送方法は、上記のガイド装置に沿って荷電粒子を輸送する荷電粒子輸送方法であって、前記第1の導線にRF電圧を印加し、前記第2の導線に前記第1の導線の前記RF電圧と異なる位相でRF電圧を印加し、前記導電材料にバイアス電圧を印加する、ものである。これにより、簡便に荷電粒子を所定の位置まで輸送することができる。
【0019】
本発明の第10の態様にかかる荷電粒子輸送方法は、上記の荷電粒子輸送方法であって、前記第1及び第2の被覆導線、又は前記第1及び第2の導線に、前記RF電圧と重畳してDC電圧が印加されていることを特徴とするものである。これにより、電位を調整することができる。
【0020】
本発明の第11の態様にかかる荷電粒子輸送方法は、前記バイアス電圧を、前記第1及び第2の被覆導線、前記絶縁性テープ、又は前記ホースの帯電量に応じて調整するものである。これにより、効率よく輸送することができる。
【0021】
本発明の第12の態様にかかるガイド装置の製造方法は、絶縁体で被覆された被覆導線によって荷電粒子を輸送するための電場を発生させるガイド装置の製造方法であって、ポールに対して第1及び第2の被覆導線を螺旋状に巻き付けていき、多重螺旋構造を有する螺旋部を形成し、導電材料によって前記螺旋部を包むものである。簡便に高性能なガイド装置を製造することができる。
【0022】
本発明の第13の態様にかかるガイド装置の製造方法は、絶縁体で被覆された被覆導線によって荷電粒子を輸送するための電場を発生させるガイド装置の製造方法であって、螺旋状に巻かれた第1の被覆導線と第2の被覆導線とを用意し、前記第1の被覆導線と前記第2の被覆導線を組み合わせて、多重螺旋構造を有する螺旋部を形成し、導電材料によって前記螺旋部を包むものである。これにより、簡便に高性能なガイド装置を製造することができる。
【0023】
本発明の第14の態様にかかるガイド装置の製造方法は、絶縁性テープに第1の導線を付着させ、前記絶縁性のテープに、前記第1の導線に所定の間隔を隔てた状態の第2の導線を付着させ、前記第1及び第2の導線が付着した前記絶縁性テープを螺旋状に巻き、前記絶縁性テープの螺旋部を包むように導電材料を配置するものである。これにより、簡便に高性能なガイド装置を製造することができる。
【0024】
本発明の第15の態様にかかるガイド装置の製造方法は、樹脂に対して第1の導線を螺旋状に埋め込み、前記第1の導線に対して絶縁を保った状態の第2の導線を、前記樹脂に対して埋め込み、前記第1及び第2の導線が埋め込まれた樹脂に対して硬化処理を行って、螺旋部を有する樹脂製ホースを形成し、前記樹脂製ホースを包むように導電材料を配置するものである。
【0025】
本発明の第16の態様にかかるガイド装置の製造方法は、上記の製造方法であって、前記荷電粒子の輸送経路に応じて、前記螺旋部を屈曲させるものである。これにより、任意の経路で輸送することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、所望の位置まで、簡便かつ高効率に荷電粒子を輸送することができるガイド装置及びその製造方法、並びに荷電粒子の輸送方法を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明にかかるガイド装置は、被覆導線を用いて荷電粒子を輸送するガイド装置である。すなわち、被覆導線に電圧を印加して電場を発生させる。イオンなどの荷電粒子は、この電場によって、所望の方向に進んでいく。
【0028】
実施の形態1.
本発明の実施の形態にかかるガイド装置について、図1を用いて説明する。図1は、ガイド装置100の構成を模式的に示す図である。ここでは、ガイド装置100が、正イオンをガイドしながら輸送するものとして説明する。すなわち、ガイド装置100がイオンガイドであるとして説明する。
【0029】
図1に示すようにガイド装置100は、第1の被覆導線11と第2の被覆導線12と導電体13とRF電源21とRF電源22とDC電源23とを備えている。第1の被覆導線11と第2の被覆導線12は、絶縁材料によって周囲が被覆されている。第1の被覆導線11と第2の被覆導線12は、螺旋状に巻かれている。これにより、ガイド装置100に、螺旋部10が形成される。螺旋部10では、第1の被覆導線11と第2の被覆導線12が二重螺旋を構成している。すなわち、螺旋部10では、第1の被覆導線11と第2の被覆導線12が互いに絡み合うように螺旋状に巻かれている。螺旋部10では、第1の被覆導線11及び第2の被覆導線12によって二重螺旋構造が形成される。螺旋部10では、イオンの進行方向において、第1の被覆導線11と第2の被覆導線12が交互に配置されることになる。
【0030】
第1の被覆導線11及び第2の被覆導線12には、螺旋部10から引き出された引き出し部14が設けられている。引き出し部14は、螺旋部10の両側に設けられている。この引き出し部14によって、第1の被覆導線11がRF電源21まで引き出され、第2の被覆導線12がRF電源22まで引き出される。従って、RF電源21及びRF電源22によって供給されたRF電圧は、引き出し部14を介して、螺旋部10に印加される。
【0031】
螺旋部10の内部をイオンが進んでいく。すなわち、螺旋部10に設けられている螺旋の中心軸が、イオン軌道の中心軸となる。このため、螺旋部10は、例えば、真空チャンバーの中に配置される。そして、フィードスルー(図示せず)などを用いて、引き出し部14が真空チャンバーの外側に引き出される。これにより、第1の被覆導線11の両端が真空チャンバーの外側に引き出されて、RF電源21と接続される。同様に、第2の被覆導線12の両端が真空チャンバーの外側に引き出されて、RF電源22と接続される。このように、引き出し部14を介して、螺旋部10がRF電源21、22と接続されている。よって、螺旋部10における第1の被覆導線11及び第2の被覆導線12に所望のRF電圧を供給することができる。螺旋部10には、イオンを輸送するための電場が形成される。
【0032】
例えば、RF電源21とRF電源22には、ラジオ波交流(RF)が印加される。具体的には、RF電源21とRF電源22には、逆位相のRF電圧が印加される。すなわち、周波数、及び振幅の同じRF電圧が第1の被覆導線11及び第2の被覆導線12に印加される。第1の被覆導線11及び第2の被覆導線12に印加されるRF電圧は、位相のみ異なっている。たとえば、RF電源21から第1の被覆導線11に印加されるRF電圧をA・cos(ωt)とすると、RF電源22から第2の被覆導線12に印加されるRF電圧をA・cos(ωt+180°)となる。なお、Aは振幅、ωは角周波数、tは時間である。、螺旋部10には、時間に応じて変化するRF電場が発生する。
螺旋の中心軸に沿った線状の極小がポテンシャルに生成される。また、ポテンシャルは、被覆導線に近づくにしたがって増加する傾向を示す。輸送するイオンを正イオンとした場合、イオンは、このRF電場の中で、ポテンシャル(電位)の低い方向に進む。このため、有効ポテンシャルは、螺旋部10の内側にイオンを隔離する。従って、イオンが螺旋部10の中心軸に沿って進んでいく。たとえば、RF電圧の周波数を数百kHz〜数MHzとすることができる。もちろん、周波数は以下の範囲に限られるものではない。また、正弦波以外のRF電圧を用いてもよい。また、RFの振幅や中心電位などは、輸送するイオンの質量やエネルギーに応じて決定することができる。
【0033】
螺旋部10の外側には、導電体13が取り付けられている。導電体13は、螺旋部10を包むように固定されている。従って、導電体13は、螺旋部10の外径とほぼ同じかそれより若干大きい円筒形になる。螺旋の側部の外側に筒状の導電体13が配置される。すなわち、導電体13に螺旋部10が内包される。導電体13は、例えば、網状の金属や、アルミニウム箔などの金属箔によって形成されている。たとえば、導電体13として金属の網(メッシュ)とすることが好ましい。メッシュ状の導電体13を用いることで、螺旋部10の内側における気体を排気しやすくなる。すなわち、真空チャンバーを排気する際に、螺旋部10の中の気体が網目を通って排気されていく。これにより、排気時間を短縮することができる。導電体13は、フィードスルー(図示せず)などを介してDC電源23に接続されている。DC電源23は、導電体13にバイアス電圧となるDC電圧を印加する。したがって、導電体13がバイアス電圧が印加される電極となる。RF電源21、RF電源22、及びDC電源23は、独立に制御することができる。
【0034】
図2を用いて、螺旋部10の構成について詳細に説明する。なお、図2は、螺旋部10の構成を模式的に示す側面断面図である。図2において、イオンの進行方向は矢印方向になっているものとして説明する。すなわち、螺旋の内部がイオンビームの輸送経路となる。
【0035】
図2に示すように第1の被覆導線11は導線11aと被覆部11bによって構成されている。導線11aは、例えば、銅などの柔らかい金属線を用いることが好ましい。これにより、可塑性のあるガイドを作製することができる。被覆部11bは、絶縁材料によって構成されている。被覆部11bは導電材料からなる導線11aを被覆している。被覆部11bの絶縁材料として、エナメルやポリイミドを用いることができる。もちろん、絶縁材料として、これら以外のプラスチックや樹脂を用いることが可能である。また、市販の被覆導線をそのまま利用することも可能である。これにより、製造コストを低減することができる。このように、導線11aの外周が絶縁材料で覆われることになる。導線11aの側面が絶縁材料で覆われることなるため、導線11aが被覆部11bによって保護される。
【0036】
第2の被覆導線12も第1の被覆導線11と同様の構成をしている。すなわち、導線12aが被覆部12bによって被覆されている。もちろん、第1の被覆導線11と第2の被覆導線12は、同じ径で同じ材料によって形成することが好ましい。このように、被覆導線を用いることによって、第1の被覆導線11の導線11aと第2の被覆導線12の導線12aが短絡するのを防ぐことができる。また、第1の被覆導線11の導線11aや第2の被覆導線12の導線12aが、導電体13と短絡するのを防ぐことができる。
【0037】
導線11a、12aの径は、輸送するイオンの質量や、ガイド装置100の大きさによって決められている。すなわち、輸送するイオンの質量電化比や、輸送距離によって、導線11a、12aの径を決めることができる。
【0038】
第1の被覆導線11と第2の被覆導線12は同じピッかつ同じ径で螺旋状に巻かれている。螺旋状に巻かれた第1の被覆導線11と螺旋状に巻かれた第2の被覆導線12が二重螺旋を構成するように組み合わされている。従って、第1の被覆導線11による螺旋と第2の被覆導線12による螺旋が絡み合うようになる。これにより、図2のように、イオンビームの進行方向において、第1の被覆導線11と第2の被覆導線12が交互に配置されることなる。第1の被覆導線11の隣接する2つの巻きの間に、第2の被覆導線12の巻きが配置される。同様に、第2の被覆導線12の隣接する2つの巻きの間に、第1の被覆導線11の巻きが配置される。第1の被覆導線11の隣には、第2の被覆導線12が配置される。螺旋の内径、ピッチなどは、輸送するイオンの質量やエネルギーによって決めることができる。
【0039】
そして、第1の被覆導線11及び第2の被覆導線12の螺旋の外側に、導電体13が配設されている。この導電体13は、上記のようにDC電源23に接続されている。このDC電源23から被覆部11b、12bの帯電による電位変化を補償するためのバイアス電圧が印加される。第1の被覆導線11及び第2の被覆導線12の表面には、絶縁性の被覆部11b、12bが設けられている。従って、輸送中のイオンが被覆部11b、被覆部12bに衝突すると、帯電していく。すなわち、絶縁性の被覆部11b、12bに付着したイオンは移動することができないため、表面に留まることになる。被覆部11b、12bの帯電量に応じて、螺旋内部のポテンシャル(電位)が変化することになる。すなわち、被覆部11b、12bの帯電によって、RF電圧によって生成される有効ポテンシャルに影響が及んでしまう。
【0040】
ここで、被覆部11b、12bは、ほぼ一様に帯電することになる。すなわち、電荷密度が高いところでは、ポテンシャルが高くなる。このため、電荷密度の高い箇所を避けてイオンが衝突することになる。すなわち、電荷密度が低いところほど、新たなイオンが衝突しやすくなる。これにより、被覆部11b、12bは、比較的均一に帯電することになる。単純には、イオンガイドの偏倚が別の電位に変化することになる。
【0041】
従って、被覆部11b、12bの一様な帯電によって生じる電位を補償するために、バイアス電圧を導電体13に印加する。すなわち、DC電源23によって、一定のDC電圧を導電体13に印加することで、偏倚を調整することができる。これにより、螺旋部10の中心軸において、帯電によって発生した電位がバイアス電圧によってキャンセルされる。換言すると、帯電によるポテンシャルの変化分を補償するようなバイアス電圧を導電体13に印加する。これにより、帯電の影響を軽減することができ、所望の有効ポテンシャルを得ることができる。DC電源23は、RF電源21、22と独立して制御可能であるため、電圧を容易に調整することができる。
【0042】
具体的の調整方法の一例について説明する。適当な電圧を第1の被覆導線11、第1の被覆導線12、導電体13に印加した状態で、ガイド装置100から出射されるイオンをイオン検出器で検出する。そして、イオン検出器で検出されるイオンの電流をモニターしながら、DC電源23を調整する。帯電が飽和するよう一定時間経過した後、イオン電流が高くなるようにバイアス電圧を調整する。これにより、螺旋の中心軸において、帯電による電位変化を打ち消すようにバイアス電位を調整することができる。よって、簡便な調整で、効率よくイオンを輸送することができる。バイアス電圧の調整している間、螺旋の内側にイオンが衝突して、被覆部11b、12bが帯電していくことになる。螺旋の中心軸において、帯電による電位を打ち消すようにバイアス電位を調整したとしても、螺旋の内側における被覆部11bの表面近傍では、帯電による電位変化分がバイアス電位よりも大きくなっている。すなわち、導電体13から被覆部11b、12b表面までの距離は、帯電箇所から被覆部11b、12b表面までの距離よりも大きくなっている。このため、螺旋の中心軸において帯電による電位変化とバイアス電圧が同程度であったとしても、導電体13の表面では帯電による影響の方が大きい。これにより、一定時間経過後には、帯電が飽和状態となる。このときに、イオン電流が高くなるようにバイアス電圧を調整することで安定してイオンを輸送することができる。なお、導電体13は、RF交流の中心電位と接続することも可能である。すなわち、RF電圧のオフセット電圧(中心電位)に応じて、導電体13の電圧を変化させることも可能である。また、導線11a、導線12aに対してDC電圧を重畳して印加してもよい。すなわち、導線11a、導線12aに対して、同じDC電圧が重畳されたRF電圧を印加することもできる。
【0043】
また、第1の被覆導線11、第2の被覆導線12として可塑性を有する材料を選ぶことによって、イオンガイドを任意の形状にすることができる。すなわち、イオンの輸送経路を図3に示すように屈曲させる。図3では、ガイド装置100の途中に屈曲部15を設けて、イオンの輸送方向を変えている。これにより、所望の位置まで簡便に輸送することができる。すなわち、輸送途中でも任意の方向にイオンの向きを変えることができる。また柔構造とすることで、容易に螺旋部10を変形することができる。弾性のある材料を被覆導線に用いることで、ガイド装置100全体を柔軟なままにしておくこともできる。これにより、螺旋の位置を容易に固定できるようになり、イオンの輸送経路を所望の位置にすることができる。また、可塑性を有する導電体13が螺旋部10を包むように設けられている。したがって、導電体13は、第1の被覆導線11及び第1の被覆導線12と同様に変形する。これにより、螺旋部10を屈曲させて複雑な形状とした場合でも、所望のポテンシャルを正確に発生させることができる。
【0044】
また、被覆導線を用いているため、屈曲部15を形成したとしても、第1の被覆導線11と第2の被覆導線12が短絡することがない。導線11a、導線12aとの絶縁を保つための碍子などが不要となる。容易に螺旋部10の形状を変化させることができる。よって、真空チャンバー等への取り付けを容易に行うことができる。もちろん、屈曲部15において、螺旋を滑らかに湾曲させてもよい。
【0045】
なお、導電体13を真空保持用の真空配管を用いて構成することも可能である。例えば、筒状の真空配管を用いて、螺旋部10を包む。なお、屈曲部15が設けられている場合は、屈曲可能なベローズ配管を用いる。金属配管やベローズ配管などの真空配管を導電体13として利用する。これにより、導電体13を真空保持用の部品とを共通化することができる。よって、構成を簡素化することができる。
【0046】
また、螺旋の内径を変化させることも可能である。たとえば、図3に示すように、螺旋部10に変化部16を設けて、螺旋の内径を変化させる。図3に示すように変化部16では、徐々に内径が小さくなっていく。このように円錐的な形状の螺旋部10を作製することにより、イオン分布を空間的に収束させることができる。このイオンガイドを利用したイオンペンのようなものも製作可能である。たとえば、鋼鉄製のコイルなど、弾性の高い導線でイオンガイドを製作する。そして、この先端にイオン収束レンズとx−yマニピュレータ(遠隔操縦器)に取り付ける。このマニピュレータを操作することによって、イオンビームの収束位置を操作することが可能である。
【0047】
次に、ガイド装置100の製造方法については、説明する。まず第1の被覆導線11及び第2の被覆導線12となる1対の被覆導線を用意する。さらに、適切な外形を有する円筒(ポール)を用意する。この円筒をひな形として、1対の被覆導線を円筒の外周に巻きつけていく。巻き付けられた被覆導線は、そのまま円筒形をしている。すなわち、ひな形として用意した円筒の形状を反映することになる。これにより、必要な内径及び長さの螺旋部10を形成することができる。なお、円筒に被覆導線を巻き付ける際には、2本の被覆導線を同時に巻きつけてもよい。あるいは、2本の被覆導線を交互に巻き付けてもよい。さらには、2本の被覆導線を1巻きずつ交互に巻きつけてもよい。なお、ひな形となるポールは、円柱形状に限らず、柱状であればよい。また、螺旋の径が変化する変化部16を設ける場合は、ポールの外径を途中で変化させればよい。そして、螺旋部を金属網で包みこんで、導電体13を取り付ける。そして、導電体13の取り付けが完了したら、内部の円筒を取り外す。すなわち、螺旋の中から、円筒を引き抜く。これにより、ガイド装置100が完成する。
【0048】
また、別の製造方法について説明する。ここでは、被覆導線からなるばねを二つ用意する。それらを互いに組み合わせて、ねじり合わせる。これにより、二重螺旋構造の螺旋部10が形成される。この場合、弾性の高いイオンガイドを作製することができる。なお、被覆導線を円筒に対して螺旋状に巻き付けることでばねを作製してもよい。そして、螺旋部を金属網で包みこむ。
【0049】
また、これらの製造方法を用いて製造したガイド装置に対して屈曲部15を形成する場合、螺旋部10やその周辺に力を加えてイオンガイドを変形させる。すなわち、螺旋部10を折り曲げて、イオンの輸送方向に応じて螺旋部10を変形させる。これにより、螺旋部10に屈曲部15が形成される。よって、輸送経路を自由に変えることができ、所望の位置までの輸送を容易に行うことができる。
【0050】
なお、上記の説明では、2つの被覆導線を組み合わせたが、3以上の被覆導線を組み合わせてもよい。すなわち、複数の被覆導線が多重螺旋を構成するように配置して、それぞれに異なる位相のRF電圧を印加する。たとえば、3本の被覆導線を用いる場合、120度ずつ異なる位相で、RF電圧を印加する。この場合、3本の被覆導線に互いに絡み合うような三重螺旋構造が形成される。そして、3本の被覆導線が交互に配置されていく。また、4本の被覆導線を用いる場合、90度ずつ異なる位相で、RF電圧を印加する。この場合、4本の被覆導線に互いに絡み合うような四重螺旋構造が形成される。そして、4本の被覆導線が交互に配置されていく。このような多重螺旋構造とした場合でも、同様の効果を得ることができる。また、上記の説明では、正イオンを輸送する例について説明したが、正イオン以外の荷電粒子についても同様に輸送することができる。上記のイオンガイドは、質量分析装置への利用に好適である。
【0051】
実施の形態2.
実施の形態2にかかるガイド装置について、図4乃至図6を用いて説明する。本実施の形態では、被覆導線を用いずに形成されたガイド装置の構造とその製造方法について説明する。なお、実施の形態1と共通な部分については、説明を省略する。例えば、引き出し部や電源の構成、及び印加電圧については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0052】
まず、図4に示すように、絶縁性のテープ33を用意する。そして、第1の導線31、及び第2の導線32(以下、まとめて導線31、32とする)をテープ33の表面に付着させる。この導線31が実施の形態1で示した第1の被覆導線11の導線11aに対応し、導線32が第1の被覆導線12の導線12bに対応する。例えば、粘着テープの粘着面に導線31、32を粘着させていく。あるいは、テープ33の一部を溶かすことによって、導線31、32を固定してもよい。もちろん、導線31、32に接着材を付着させて、導線31、32をテープ33に固定してもよい。
【0053】
第1の導線31、及び第2の導線32は、絶縁体で被覆されていない裸銅線である。ここでは、テープ33の長手方向に沿って2本の導線31、32が平行に配置されている。なお、2本の導線31、32が所定の間隔を隔てていれば、平行になっていなくでもよい。すなわち、第1の導線31が第2の導線32と短絡していなければよい。
【0054】
そして、図5に示すようにテープ33を螺旋状に巻いていく。これにより、テープ33が円筒状になり、導線31、32が螺旋状になる。ここでは、導線31、32が円筒の内側になるように、テープ33を巻いている。そして、実施の形態1と同様に、螺旋部を導電体13で包む。これにより、図6に示すようになる。なお、図6は、ガイド装置の一部の構成を示す側面図である。このように、2本の導線31、32が螺旋状に巻かれた螺旋部10が構成される。螺旋部10では、2本の導線31、32付きのテープ33が絶縁性の筒状部材を構成する。この螺旋部10の外側の側面が導電体13で覆われる。また、螺旋部10の内側、すなわち、螺旋状のテープ33の内側では、導線31、32が露出していることになる。従って、導線31、32の片面だけが絶縁体で被覆されている。テープ33によって形成された円筒の内部をイオンが通過する。そして、イオンは、導線31、32によって発生した電場の影響を受けながら、飛行する。
【0055】
導線31、32に適当な硬さのものを用いることで、筒状部材の形状が保持される。すなわち、通常の使用時には一定の形状で保持され、ユーザによって力が加わった時に変形する程度の硬さになるよう、導線31、32の太さや材料を選択する。また、導線31、導線32が固定されているため、ガイド方向を任意の方向に変えたとしても、導通しない。例えば、螺旋部10に、図3で示した屈曲部15を設けたとしても、短絡しない。これにより、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。もちろん、テープ33の螺旋の径を変えることで、変化部16を設けてもよい。
【0056】
また、導線31、32の両面を絶縁体で被覆してもよい。例えば、2枚の絶縁性テープを用意して、導線31、32を挟み込むようにしてもよい。すなわち、導線31、32が付着されたテープ33の上から、もう一枚のテープを貼り付ける。これにより、対向配置された2枚のテープに導線31、32が挟まれる。これにより、導線31、32の短絡を確実に防ぐことができる。また、本実施の形態では、テープ33の帯電量に応じてバイアス電圧を調整する。
【0057】
本実施の形態にかかるガイド装置を用いることで、所望の位置まで、簡便に荷電粒子を輸送することができる。なお、本実施の形態においても、3重以上の螺旋構造としてもよい。また、導電体13に真空保持用の真空配管を用いてもよい。
【0058】
実施の形態3.
本実施の形態にかかるガイド装置について図7を用いて説明する。図7は、ガイド装置の構成を模式的に示す図である。また、図7では、導電体13について省略している。
【0059】
本実施の形態では、絶縁性の筒状部材が中空のホース34によって形成されている。すなわち、実施の形態2ではテープ33によって絶縁性の筒状部材を形成したが、本実施の形態ではホース34によって、絶縁性の筒状部材を形成している。なお、実施の形態1、2で説明した内容と共通の内容については説明を省略する。例えば、絶縁性の筒状部材以外の構成は、実施の形態2と同様であるため説明を省略する。
【0060】
ホース34は、絶縁性の樹脂から形成されている。そして、円筒状のホース34に螺旋状の導線31、32が埋め込まれている。導線31、32は、ホース34によって、ホース34の肉厚部分に固定されている。なお、導線31、32は、裸銅線でよい。
【0061】
本実施の形態にかかるガイド装置の製造方法について説明する。まず、絶縁性の筒状部材となる樹脂を用意して、この樹脂に導線31、32を埋め込んでいく。例えば、ジェル状の樹脂を用意する。すなわち、粘性の高い樹脂を用意する。この樹脂は、所定の処理を行うことで硬化反応を示す硬化性樹脂である。例えば、熱硬化性や光硬化性の樹脂を用いてもよい。そして、ジェル状の樹脂に2本の導線31、32を埋め込んでいく。もちろん、2本の導線31、32は、絶縁を保ちながら埋め込まれていく。このとき、樹脂は、ホース状になっていてよく、他の形状であってもよい。例えば、円柱状になっていもよい。
【0062】
2本の導線31,32を埋め込み終わったら、樹脂を硬化させる。これにより、樹脂がホース状になるとともに、導線31、32がホース34内で固定される。すなわち、螺旋部10を有する樹脂製ホース34が形成される。この状態では、第1の導線31と第2の導線32が絶縁を保った状態で、第1の導線31と第2の導線32が樹脂に囲まれる。第1の導線31と第2の導線32とは、所定の間隔を隔てた状態で樹脂内に埋め込まれていく。なお、樹脂を硬化して円柱を形成した後、その中心をくり抜くことで、樹脂製ホースを形成してもよい。
【0063】
このように樹脂に対して硬化処理を行うことで、二重螺旋構造を有する螺旋部10が形成される。よって、実施の形態1、2と同様の効果を得ることができる。また、導線31,32が樹脂からなるホース34に埋め込まれて、固定されるため、任意の硬さの導線を用いることができる。また、導電体13に真空保持用の真空配管を用いてもよい。また、本実施の形態では、ホース34の帯電量に応じてバイアス電圧を調整する。
【0064】
ホース34の内部をイオンが通過する。そして、イオンは、導線31、32によって発生した電場の影響を受けながら、飛行する。本実施の形態にかかるガイド装置を用いることで、所望の位置まで、簡便に荷電粒子を輸送することができる。なお、本実施の形態においても、3重以上の螺旋構造としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるガイド装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】ガイド装置の螺旋部の構成を示す側面断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るガイド装置の変形例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2にかかるガイド装置の構造及び製造方法を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態2にかかるガイド装置の構造及び製造方法を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態2にかかるガイド装置の構造及び製造方法を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態3にかかるガイド装置の構造及び製造方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0066】
10 螺旋部
11 第1の被覆導線
11a 導線
11b 被覆部
12 第1の被覆導線
12a 導線
12b 被覆部
13 導電体
15 屈曲部
16 変化部
21 RF電源
22 RF電源
23 DC電源
31 第1の導線
32 第2の導線
33 テープ
34 ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体で被覆された被覆導線によって荷電粒子を輸送するための電場を発生させるガイド装置であって、
荷電粒子が内部を通過する螺旋部を設けるために螺旋状に巻かれた第1の被覆導線と、
前記螺旋部における前記第1の被覆導線と多重螺旋構造を形成するように螺旋状に巻かれた第2の被覆導線と、
前記螺旋部を包むように設けられた導電材料と、を備えるガイド装置。
【請求項2】
螺旋状に巻かれた絶縁性テープと
前記絶縁性テープに固定され、荷電粒子が内部を通過する螺旋部を設けるために螺旋状になっている第1の導線と、
前記第1の導線と所定の間隔を隔てて、螺旋状になるよう、前記テープに固定された第2の導線と、
前記螺旋状に巻かれた絶縁性テープを包むように設けられた導電材料と、を備えるガイド装置。
【請求項3】
絶縁性のホースと
荷電粒子が内部を通過する螺旋部を設けるため、前記ホースに対して螺旋状に固定されている第1の導線と、
前記第1の導線と所定の間隔を隔てて、螺旋状になるよう、前記ホースに固定された第2の導線と、
前記ホースを包むように設けられた導電材料と、を備えるガイド装置。
【請求項4】
前記導電材料がメッシュ形状になっている請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガイド装置。
【請求項5】
前記導電材料に真空保持用の真空配管が用いられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のガイド装置。
【請求項6】
前記螺旋部が荷電粒子の輸送方向を変えるために、屈曲していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のガイド装置。
【請求項7】
前記螺旋部に、螺旋の径が変化する変化部が設けられている請求項1乃至6のいずれか1項に記載のガイド装置。
【請求項8】
請求項1に記載のガイド装置に沿って荷電粒子を輸送する荷電粒子輸送方法であって、
第1の被覆導線にRF電圧を印加し、
第2の被覆導線に前記第1の被覆導線の前記RF電圧と異なる位相でRF電圧を印加し、
前記導電材料にバイアス電圧を印加する、荷電粒子輸送方法。
【請求項9】
請求項2、又は3に記載のガイド装置に沿って荷電粒子を輸送する荷電粒子輸送方法であって、
前記第1の導線にRF電圧を印加し、
前記第2の導線に前記第1の導線の前記RF電圧と異なる位相でRF電圧を印加し、
前記導電材料にバイアス電圧を印加する、荷電粒子輸送方法。
【請求項10】
前記第1及び第2の被覆導線、又は前記第1及び第2の導線に、前記RF電圧と重畳してDC電圧が印加されていることを特徴とする請求項8、又は9に記載の荷電粒子輸送方法。
【請求項11】
前記バイアス電圧を、前記第1及び第2の被覆導線、前記絶縁性テープ、又は前記ホースの帯電量に応じて調整する請求項8乃至10のいずれか1項に記載の荷電粒子輸送方法。
【請求項12】
絶縁体で被覆された被覆導線によって荷電粒子を輸送するための電場を発生させるガイド装置の製造方法であって、
ポールに対して第1及び第2の被覆導線を螺旋状に巻き付けていき、多重螺旋構造を有する螺旋部を形成し、
導電材料によって前記螺旋部を包むガイド装置の製造方法。
【請求項13】
絶縁体で被覆された被覆導線によって荷電粒子を輸送するための電場を発生させるガイド装置の製造方法であって、
螺旋状に巻かれた第1の被覆導線と第2の被覆導線とを用意し、
前記第1の被覆導線と前記第2の被覆導線を組み合わせて、多重螺旋構造を有する螺旋部を形成し、
導電材料によって前記螺旋部を包むガイド装置の製造方法。
【請求項14】
絶縁性テープに第1の導線を付着させ、
前記絶縁性のテープに、前記第1の導線に所定の間隔を隔てた状態の第2の導線を付着させ、
前記第1及び第2の導線が付着した前記絶縁性テープを螺旋状に巻き、
前記絶縁性テープの螺旋部を包むように導電材料を配置するガイド装置の製造方法。
【請求項15】
樹脂に対して第1の導線を螺旋状に埋め込み、
前記第1の導線に対して絶縁を保った状態の第2の導線を、前記樹脂に対して埋め込み、
前記第1及び第2の導線が埋め込まれた樹脂に対して硬化処理を行って、螺旋部を有する樹脂製ホースを形成し、
前記樹脂製ホースを包むように導電材料を配置するガイド装置の製造方法。
【請求項16】
前記荷電粒子の輸送経路に応じて、前記螺旋部を屈曲させる請求項12乃至15のいずれか1項に記載のガイド装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−129439(P2010−129439A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304250(P2008−304250)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(598014814)株式会社コンポン研究所 (24)
【Fターム(参考)】