説明

莢付豆類の異常検出方法とその異常検出装置

【課題】本発明は、枝豆、いんげん豆、えんどう豆などの莢付き豆類の莢内に害虫が侵入していたり、食害痕を残していたりする異常があり、食用不適な莢付豆類を容易に検出し、選別排除できるようにした莢付豆類の異常検出方法とその異常検出装置に関する。
【解決手段】 ブランチング又は加熱した後、そのまま若しくはIQF凍結又はIQF半凍結した状態の莢付豆類に、光を透過させ、莢内の異常の有無や莢内子葉の異常の有無や莢内への異物混入の有無を透過光の光量変化や色調変化として目視により判断可能にしたことを特徴とする莢付豆類の異常検出方法であり、そのために作業台面の下部の透過光ランプを点灯し、光を透過させるようにした莢付豆類の異常検出装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枝豆、いんげん豆、えんどう豆などの莢付き豆類の莢内に害虫が侵入していたり、食害痕を残していたりする異常があり、食用不適な莢付豆類を容易に検出し、選別排除できるようにした莢付豆類の異常検出方法とその異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農産物に残留する農薬が問題になり、農薬の使用量が減少するに伴い、農産物が病害虫にさらされる確率が高くなっている。このため、冷凍枝豆やいんげん豆、えんどう豆などの莢付き豆類などの加工農産物においても、当該害虫が混入したり、食害痕を残していたりする異常によって品質低下品になったり、食用不適品になったりすることが多くなった。
【0003】
これら害虫が侵入したり、食害痕を残した莢付豆類は、通常、加工農産物の製造工程において、目視又はカメラを使用したカラーセンサーなどと呼ばれる外観的な色差、形を判別する装置によって、選別、排除されてきた。しかしながら、例えば冷凍枝豆などの加工農産物においては、外見に異常が認められなくとも、莢の内部に枝豆の害虫である鱗翅目昆虫の幼虫の侵入が認められ、品質低下につながっている。そのため害虫が侵入したり、食害痕を残したりした莢付豆類のうち、外部にその形跡が認められない物については、その検出、選別、排除が非常に困難な状況にあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、この害虫が侵入したり、食害痕を残したりした莢付豆類のうち、外部にその形跡が認められない莢付豆類の検出、選別、除去をするため、莢付豆類に光をあて、透過させることにより、内部に侵入した虫や食害痕を影として可視化し、目視による検出、選別、除去が可能になることを見出した。
【0005】
従来より、透過光を利用する食品の異物検出法と装置については、存在している。例えば、特開平11−183118号がそれである。これは、異物を含まない物体の周辺外側透過光出力と内部内側透過光出力とが同じ値となるようにするため、物体を全方向から一様に照明し、同値化した透過光出力を正常値と定め、該正常値から透過光出力の変化の有無によって異物の有無を判断可能にしたことを特徴とする光透過度を利用する物体中の異物検出法である。
【0006】
本発明と当該引用例(特開平11−183118号)とを比較すると、確かに透過光を利用する食品の異物検出法という原理において共通する点があるが、引用例は、異物を含まない物体を特殊な方法で照明して正常値を定め、正常値から透過光出力の変化の有無によって異物の有無を判断可能にしたもので、その透過光の使い方と判断方法が本発明とまるで相違する。特に本発明の場合には、検出対象が莢付の豆類という自然物であり、生のままの場合には、光を透過させることが難しいうえ、形状も大きさも一つ一つ別個になっているので、引用例のように標準を定めてこれと比較しながらその差異を判断し検出するという方式では、検出が事実上困難である。また、本発明は、透過光出力の変化によって判断検出するだけでなく、視覚によって光量変化と色調変化の総合判断により適格食品か不適食品かを判断し検出するものである点でその検出法は基本的に相違する。
【0007】
従来、冷凍枝豆などの莢付き豆類の生産工程では、枝豆の中に卵が産み付けられ幼虫が莢の中で育ってしまったような場合には、外見に異常が認められないため、通常の視覚を介しての検査やカメラなどを用いた検査であっても検出することができなかった。このため、莢付き豆類の生産メーカー各社は、虫混入問題の解決策を見出せず、消費者からのクレームに困っていた。
【0008】
本発明者は、莢付き豆類をブランチングするか、加熱するか、冷凍することによって細胞組織が壊れて光が透過し易くなることにより、透過光を利用した異物の有無や異常の有無を視覚的に容易に判断できるようにしたのである。その上で光を照射し、発明者らは、莢付き豆類の内に侵入した害虫やその食害痕について、透過光を利用して目視により判断可能にしたことを特徴とする莢付豆類の異常検出方法とそのための異常検出装置を開発したのである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特許を受けようとする第1発明は、ブランチング又は加熱した後、そのまま若しくはIQF凍結又はIQF半凍結した状態の莢付き豆類に、光を透過させ、莢内の異常の有無や莢内子葉の異常の有無や莢内への異物混入の有無を透過光の光量変化や色調変化として目視により判断可能にしたことを特徴とする莢付豆類の異常検出方法である。
【0010】
当該第1発明は、枝豆、いんげん豆、えんどう豆など莢付き豆類を透過光を利用して莢内に害虫が侵入していたり、食害痕を残していたりする異常を目視により容易に判断できるようにした莢付豆類の異常検出方法である。
【0011】
まず莢付き豆類をブランチング又は加熱することにより、または凍結することにより、細胞が破壊され光が通りやすくなる。このような前処理なくしては可視光線で透過する光がほとんどなく、これを利用しての莢内の異常を目視により判断できるような状態にはならない。前処理したうえで透過光をバックライト照明にして莢付き豆類を透過させると、当該透過光の光量変化や色調変化として目視により容易に判断可能になる。従って、害虫の侵入の有無は、主に光量変化(影)により判断できるし、食害痕の有無は正常な豆と異なる形の影として光量変化により判断できるとともに、食害された組織周辺の色調変化としても容易に判別できる。光の量は、多ければ良いが検出者の目の疲労が発生しない程度の弱い光でも充分に検出可能である。
【0012】
特許を受けようとする第2発明は、異常検出用作業台の作業台面を透明又は半透明の板状体で形成し、その作業台面の下部に透過光ランプを光源として配するとともに、周囲から不快グレアが起こらないように構成したバックライト照明となし、当該作業台面上にブランチング又は加熱した後、そのまま若しくはIQF凍結又はIQF半凍結した状態の莢付豆類を供給できるようにして、莢内の異常の有無や莢内子葉の異常の有無や莢内への異物混入の有無を透過光の光量変化や色調変化として目視により判断可能にしたことを特徴とする莢付豆類の異常検出装置である。
【0013】
特許を受けようとする第3発明は、異常検出用作業台の作業台面における透明又は半透明の板状体に、乳白色若しくは他の色に着色されたフィルターを施し、バックライト照明の照度と輝度を異常検出に適した照度と輝度に調整するようにしたことを特徴とする第1発明に記載する莢付豆類の異常検出装置である。
【0014】
当該第2発明、第3発明は、透過光を利用した莢付き豆類の異常検出装置である。
作業台面を透明又は半透明の板状体で形成し、その作業台面の下部に透過光ランプを光源として配し、透過光をバックライト照明にして作業台面に乗せた莢付き豆類を透過させる。このとき、周囲から光源の光が漏れて不快グレアが起こらないように構成したバックライト照明となす。また、照射する光は可視光線であり、透過光の光量変化や色調変化により目視で判断可能にしたものである。更に、検査対象となる莢付き豆の種類によって、色の対比をより明確にして判別しやすくするため、乳白色若しくは他の色に着色されたフィルターを施すとともに、バックライト照明の照度と輝度を異常検出に適した照度と輝度に調整するようにすることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本願第1発明は、ブランチング又は加熱した後、そのまま若しくはIQF凍結又はIQF半凍結した状態の莢付豆類に、光を透過させることにより、莢内の異常の有無や莢内子葉の異常の有無や莢内への異物混入の有無を透過光の光量変化や色調変化として目視により判断可能にした莢付豆類の異常検出方法である。
【0016】
このように、簡単に前処理するだけで、莢付豆類に関して非破壊状態で害虫の侵入や食害痕などの不適食品の検出をすることが出来るようになる。しかも、莢内の異常の有無や莢内子葉の異常の有無或いは莢内への異物混入の有無について透過光の光量変化や色調変化により検査員の視覚を通じて容易に判断が可能になるので、簡単な装置により確実に食用不適の商品を検出し、選別し、排除できることとなった。
【0017】
本願第2発明は、第1発明に係る莢付豆類の異常検出方法を利用した莢付豆類の異常検出装置である。本装置は、異常検出用作業台の作業台面上にブランチング又は加熱した後、そのまま若しくはIQF凍結又はIQF半凍結した状態の莢付豆類をのせ、バックライト照明を点灯するだけで、莢内の異常の有無や莢内子葉の異常の有無や莢内への異物混入の有無を透過光の光量変化や色調変化として目視により容易に判断可能することができるものである。
【0018】
本願第3発明は、異常検出用作業台の作業台面における透明又は半透明の板状体に、乳白色若しくは他の色に着色されたフィルターを施し、バックライト照明の照度と輝度を異常検出に適した照度と輝度に調整するようにしたことにより、疲労することなく容易に莢内の異常の有無や莢内子葉の異常の有無や莢内への異物混入の有無を判断することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
ブランチング又は加熱した後、そのまま若しくはIQF凍結又はIQF半凍結した状態の莢付豆類を異常検出用作業台の作業台面上に載せ、作業台面の下部の透過光ランプを点灯し、光を透過させ、莢内の異常の有無や莢内子葉の異常の有無や莢内への異物混入の有無を透過光の光量変化や色調変化として目視により判断可能にしたことを特徴とする莢付豆類の異常検出方法である。
【実施例1】
【0020】
以下、本発明にかかる莢付豆類の異常検出方法とそのための莢付豆類の異常検出装置 の図示実施例に基づいて説明する。
【0021】
図1は、冷凍枝豆を透過光を利用した本発明に係る莢付豆類の異常検出方法を実施して、莢内の異常の有無や莢内への異物混入の有無を透過光の変化として目視により判断可能にした状態を示す説明図であり、図2は、莢付豆類の異常検出方法により莢内への異物混入状態を示す要部拡大説明図であり、図3は、本発明に係る莢付豆類の異常検出装置の実施例を示す縦断側面図であり、図4は、莢付枝豆の異常検出装置を用いて食用不適商品の検出、選別作業をしている状態を示す斜視図である。
【0022】
図4に示すように、異常検出用作業台1の作業台面2を透明又は半透明の板状体で形成し、その作業台面2の下部に透過光ランプ3を配して構成したバックライト照明となす。当該作業台面2上に莢付枝豆4を載せて、莢内の異常の有無や莢内子葉の異常の有無や莢内への異物混入の有無を透過光の光量変化や色調変化として検査官5の目視により判断可能になった。
【0023】
図1、図2は、莢付枝豆4をバックライト照明により光を透過させたとき、虫6が進入している状態とか、食害痕7を目視により容易に判断できる状態を示している。図2は、莢付豆類の異常検出方法により莢内への異物混入状態を示す要部拡大説明図である。図中6は、莢付枝豆3の莢の中に虫として入っている状態であり、7は、莢付枝豆4の莢の中にある食害痕を示す透過光の光量変化や色調変化状態である。
【0024】
図3は、本発明に係る莢付豆類の異常検出装置の実施例であるが、供給された莢付豆類の莢内の異常の有無や莢内子葉の異常の有無や莢内への異物混入の有無を透過光の光量変化や色調変化として目視により判断できるようにした異常検出用作業台1である。その作業台面2は透明又は半透明の板状体8で形成する。その作業台面2の下部に透過光ランプ3を配しておき、作業台面2上のバックライト照明とする。
【0025】
第2発明は、異常検出用作業台1の作業台面2を透明又は半透明の板状体8で形成し、その作業台面2の下部に透過光ランプ3を光源として配するとともに、透明又は半透明の板状体8以外から不用意に透過光ランプ3の光が漏れないように不透明膜9を設けてある。これによって周囲から不快グレアが起こらないようなバックライト照明を構成した。本発明は、当該バックライト照明を構成した異常検出用作業台1を台枠10に配設して、作業が容易に行えるようにしたものである。
【0026】
そのうえで当該作業台面2上にブランチング又は加熱した後、そのまま若しくはIQF凍結又はIQF半凍結した状態の莢付豆類を供給できるようにして、莢内の異常の有無や莢内子葉の異常の有無や莢内への異物混入の有無を透過光の光量変化や色調変化として目視により判断可能にした莢付豆類の異常検出装置である。
【0027】
尚、異常検出用作業台1の作業台面2における透明又は半透明の板状体8に、乳白色若しくは他の色に着色されたフィルター11を施すことがのぞましい。それは、照射する光が可視光線であり、透過光の光量変化や色調変化により目視で判断できるようにしたからである。更に、検査対象となる莢付き豆の種類によって、色の対比をより明確にして判別しやすくするため、乳白色若しくは他の色に着色されたフィルターを施すとともに、バックライト照明の照度と輝度を異常検出に適した照度と輝度に調整可能にすることが望ましい。

【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、冷凍枝豆を透過光を利用した本発明に係る莢付豆類の異常検出方法を実施して、莢内の異常の有無や莢内への異物混入の有無を透過光の変化として目視により判断可能にした状態を示す説明図である。
【図2】莢付豆類の異常検出方法により莢内への異物混入状態を示す要部拡大説明図である。
【図3】本発明に係る莢付豆類の異常検出装置の実施例を示す縦断側面図であり、
【図4】莢付豆類の異常検出装置を用いて不適食品の検出作業をしている状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1:異常検出用作業台
2:作業台面
3:透過光ランプ
4:莢付枝豆
5:検査官
6:虫
7:食害痕
8:透明又は半透明の板状体
9:不透明膜
10:台枠
11:食害痕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランチング又は加熱した後、そのまま若しくはIQF凍結又はIQF半凍結した状態の莢付豆類に、光を透過させ、莢内の異常の有無や莢内子葉の異常の有無や莢内への異物混入の有無を透過光の光量変化や色調変化として目視により判断可能にしたことを特徴とする莢付豆類の異常検出方法。
【請求項2】
異常検出用作業台の作業台面を透明又は半透明の板状体で形成し、その作業台面の下部に透過光ランプを光源として配すとともに、周囲から不快グレアが起こらないように構成したバックライト照明となし、当該作業台面上にブランチング又は加熱した後、そのまま若しくはIQF凍結又はIQF半凍結した状態の莢付豆類を供給できるように構成して、莢内の異常の有無や莢内子葉の異常の有無や莢内への異物混入の有無を透過光の光量変化や色調変化として目視により判断可能にしたことを特徴とする莢付豆類の異常検出装置。
【請求項3】
異常検出用作業台の作業台面における透明又は半透明の板状体に、乳白色若しくは他の色に着色されたフィルターを施設し、バックライト照明の照度と輝度を異常検出し易い適度な照度と輝度に調整するようにしたことを特徴とする請求項2に記載する莢付豆類の異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−162438(P2006−162438A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354344(P2004−354344)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000233620)株式会社ニチロ (34)
【Fターム(参考)】