説明

菊の切り花の鮮度保持用包装袋及び菊の切り花の鮮度保持保存方法

【課題】 菊の切り花を包装して、保存、出荷、運搬する際に、花の開花が少なく、葉の黄化が少なく、花弁の褐変が少なく、異臭が少なく、外観が優れたいわゆる鮮度保持効果を発揮する菊の切り花の保存方法及び菊の切り花の鮮度保持用包装袋を提供する。
【解決手段】 高分子フィルムからなる菊の切り花の鮮度保持用包装袋であって、菊の切り花保存時の該鮮度保持用包装袋の酸素透過量Pが、50〜380cc/100g・day・atmであることを特徴とする菊の切り花の鮮度保持用包装袋である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菊の切り花を包装して、0℃以上10℃以下で保存する際の菊の切り花の保存方法及び菊の切り花の鮮度保持用包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
菊の切り花をはじめとする青果物は、周囲のガス雰囲気が大気よりも適度に低酸素濃度、高二酸化炭素濃度になると、大気中にある場合に比べて呼吸量が少なくなり、長持ちするようになる。しかし、青果物を過度な低酸素濃度、高二酸化炭素濃度条件下に置くと、呼吸障害を起こして、劣化しやすくなる。
【0003】
そのため、青果物を包装して、貯蔵、出荷、運搬、店頭陳列する際には、適度なガス条件で青果物を保存しなければならない。
【0004】
ところが、最適なガス条件は、青果物の種類により異なるため、菊の切り花以外の青果物では、良好な保存条件であったとしても、菊の切り花に応用できるとは限らない。特に、菊の切り花は、包装袋で包装して保存する場合、保存中に開花、しおれ、葉の黄化といった問題が生じやすく、包装袋を開封後に菊の切り花を開花させる必要があるため、菊の切り花以外の青果物での保存条件を、そのまま適用することはできない。
【0005】
菊は、冠婚葬祭などに広く使用されており、その需要はほぼ年中要求される。ハウス栽培を利用して加温を行なったりして栽培することによって周年供給が実現している。しかし、地球温暖化や石油価格高騰の影響で加温での調整方法に変わる方法が求められている。
また、菊の切り花は、盆、暮、彼岸に需要が集中するため、これに合わせて数量を調節するのは非常に困難であり、何らかの出荷調整方法も需要と供給の両方の関係者より熱望されている。菊は、通常全ての花弁が完全に閉じた状態で収穫、流通されており、市場着荷時の段階で少しでも花弁が開き始めていると商品価値が著しく低下してしまう。このため、冷蔵で貯蔵する方法が試みられているが、短期間で蕾が開き始めてしまうため、数日程度のごく短い期間しか貯蔵できないのが現状である。
【0006】
特願平7−272149号公報(特許文献1)には、菊の貯蔵方法として酸素及び二酸化炭素透過量が菊1kg当たり4,000〜8,000cc/袋・24h・atmの合成樹脂フィルムにより密封包装し、雰囲気を0〜5℃で酸素濃度10〜19%二酸化炭素濃度1〜10%にする菊の貯蔵方法が記載されている。この方法であれば、菊の開花を少し遅らせることができるが、ほぼ完全に菊の開花を休止することは難しかった。
【0007】
【特許文献1】特願平7−272149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
菊を長期間保存する場合において、特許文献1にて開示されている菊の貯蔵方法では、ほぼ完全に菊の開花を休止することが困難であった。本発明では、特許文献1より菊の開花を遅らせることにより、より長期間の間、菊を保存でき、従って、1年中菊を需要期に合わせて提供できる包装袋を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、開花しやすく、葉が黄化しやすく、市場流通段階では、蕾が開き出すと商品価値が著しく低下するという菊の切り花の鮮度保持に関する課題を解決する。また、特に葬祭で用いるので、菊の切り花の鮮度保持においては、花弁の褐変が少ないこと、腐敗が少ないこと、カビの発生が少ないこと、葉の黄化が少ないことという外観に関する菊の切り花固有の課題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、菊を低温保存し、菊の切り花100g当りの酸素透過量を特定の範囲の包装袋にて包装することにより、菊の切り花の鮮度保持効果が高くなり、長期間保存できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明(1)は、
高分子フィルムからなる菊の切り花の鮮度保持用包装袋であって、前記鮮度保持用包装袋には微細孔を有し、菊の切り花の平均保存温度T(℃)が0℃以上10℃以下であり、23℃における菊100gあたりの前記鮮度保持用包装袋の酸素透過量P(cc/100g・day・atm)が50〜380cc/100g・day・atmであることを特徴とする菊の切り花の鮮度保持用包装袋、
である。
【0012】
更に本発明は、
(2)前記菊の切り花の鮮度保持用包装袋の袋内の酸素濃度が4〜16%である(1)に記載の菊の切り花の鮮度保持用包装袋、
(3)前記菊の切り花の鮮度保持用包装袋の微細孔の開孔面積が、菊の切り花100gあたり1.7×10−4〜1.5×10−2mm/100gである(1)に記載の菊の切り花の鮮度保持用包装袋、
(4)前記菊の切り花の鮮度保持用包装袋の微細孔が、平均孔径5〜150μmの微細孔である(1)又は(3)に記載の菊の切り花の鮮度保持用包装袋、
である。
更に、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の菊の切り花の鮮度保持用包装袋を用いて菊の切り花を保存する菊の切り花の鮮度保持保存方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、菊の切り花を包装して、長期間の間、菊の開花を防いで、菊を均一の状態で保存することができ、その後の出荷、運搬、店頭陳列されても商品価値が下がること無く、優れた鮮度保持効果を発揮する菊の切り花の保存方法及び菊の切り花の鮮度保持用包装袋を提供することができる。従って、本発明により、開花しやすく、葉が黄化しやすく、市場流通段階では、蕾が動き(開き)出すと商品価値が著しく低下するという菊の切り花の鮮度保持についての課題を解決することができる。また、菊は特に葬祭で用いられるので、菊の切り花の鮮度保持においては、花弁の褐変が少ないこと、腐敗が少ないこと、カビの発生が少ないこと、葉の黄化が少ないこと等の外観に関する菊の切り花の固有の課題を解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の菊の切り花の保存方法は、菊の切り花を高分子フィルムで包装して保存する菊の切り花の保存方法において、保存時の菊の切り花の鮮度保持包装用袋の23℃における酸素透過量を菊100gあたり、50〜380[cc/(100g・day・atm)]とする菊の切り花の保存方法である。
【0015】
本発明の菊の切り花の保存方法は、該菊の切り花を収穫後、高分子フィルムで包装し、菊を貯蔵(保存)するが、その後、菊の切り花は出荷、運搬、店頭陳列される。その際の平均保存温度は0℃以上10℃以下である。出荷、運搬、店頭陳列でも上記の温度範囲内に置かれることが好ましいが、状況によっては難しい場合もあり、保存時の温度も含めて平均保存温度として0℃以上10℃以下の範囲に置かれることが好ましく、少なくとも保存時は上記の範囲にて保存される。なお、本発明においては、該包装体とは、該高分子フィルムで包装された該菊の切り花のことを指す。
【0016】
本発明に使用される菊は、キク科の多年草であり、花の直径が16cm以上の大菊、6cm以下の小菊、これらの中間の大きさの中菊のいずれでもかまわないが、特に切り花1本に花がひとつの一輪菊の鮮度保持に適しているが、切り花として使用可能なものであればなんら差し支えない。菊1本あたりの包装資材費や包装の手間を考慮すると、10本以上100本以下を1袋で包装することが好ましい。さらに好ましくは、30本以上100本以下を1袋で包装することが好ましい。
【0017】
本発明の菊の切り花の保存方法に係る該高分子フィルムは、特に制限されず、青果物の包装に用いられている高分子フィルムであればよく、材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステル、ポリ乳酸等、あるいは、これらの複合材料が挙げられる。これらは、防曇加工や印刷を施したものでもよい。また、延伸したフィルムでも、未延伸のフィルムでも良い。これらの材質の中で、ポリプロピレン、ポリエチレンなど透湿度が30(g/m・日)(測定方法:JIS Z 0208)以下のものが鮮度保持の点で好ましい。更にポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートとポリエチレンなどのラミネートフィルムは、強度の点で好ましい。
【0018】
該高分子フィルムの厚さは、特に制限されないが、通常、15〜60μmであり、取り扱い及びコストの観点から、25〜52μmが好ましい。
【0019】
本発明の菊の切り花の包装体の平均保存温度は、0℃以上10℃以下がよい。0℃未満では、凍結の恐れがあり、10℃を超えた温度では、切り花の開花が早くなり、長期間の保存が難しくなる可能性がある。好ましくは、2℃以上、8℃以下である。
【0020】
なお、本発明は、菊の切り花の長期間の保存を目的としたものであるが、当然のことながら、この条件内であれば数日間と言う短期の保存も可能であり、保存期間により何らの制約を受けるものではない。
【0021】
本発明の菊の切り花の保存方法では、高分子フィルムよりなる鮮度保持用包装袋の酸素透過量は、23℃において、菊の切り花100gあたり50〜380[cc/(100g・day・atm)]である。該保存時の酸素透過量が上記範囲にあることで、優れた鮮度保持効果が得られ、開花の抑制、葉の黄化抑制等の効果が得られる。一方、該保存時の酸素透過量が少な過ぎると花弁の褐変、異臭の発生が多くなる。逆に酸素透過量が多すぎると、開花しやすくなったり、葉が黄化しやすくなったりする。
好ましくは、菊の切り花100gあたりの酸素透過量150〜380[cc/(100g・day・atm)]である。
【0022】
菊の切り花は、開花しやすく、葉が黄化しやすい。市場流通段階では、蕾が動き出すと商品価値が著しく低下する。また、特に葬祭で用いるので、菊の切り花の鮮度保持においては、花弁の褐変が少ないこと、腐敗が少ないこと、カビの発生が少ないこと、葉の黄化が少ないことという外観などが特に重視される。
【0023】
本発明において、該保存時の酸素透過量P[cc/(100g・day・atm)]とは、23℃における、包装される菊の切り花100g当りの、1日当りの、包装体の内と外との酸素圧力差1気圧当りの酸素透過量である。
【0024】
23℃における単位面積当りの酸素透過量がF[cc/(m・day・atm)]の高分子フィルムを用いて、菊の切り花を包装する場合、該保存時の酸素透過量P[cc/(100g・day・atm)]は、23℃における該高分子フィルムの単位面積当りの酸素透過量F[cc/(m・day・atm)]に、該高分子フィルムの有効表面積S(m)を乗じて得た値を、包装される菊の切り花の質量W(g)で除し、100を乗じた値である。例えば、23℃における高分子フィルムの単位面積当りの酸素透過量がf[cc/(m・day・atm)]、高分子フィルムの有効表面積がs(m)、包装された菊の切り花の質量がw(g)であった場合、保存時の酸素透過量Pは、
P=f×s×(100/w)
となる。なお、該高分子フィルムの有効表面積とは、該高分子フィルムのうち、酸素透過に関与できる部分の表面積を指し、密封のために張り合わせられている部分のような、酸素透過に関与できない部分を除く表面積のことである。例えば、長方形の2枚の高分子フィルムを、4辺をヒートシールして密封して、該菊の切り花を包装する場合、密封後の包装袋の内側の表面積が、該高分子フィルムの有効表面積である。
【0025】
本発明の菊の切り花の保存方法では、該高分子フィルムの材質自体の酸素透過性が低い場合、例えば、該高分子フィルムに平均孔径5〜150μm、好ましくは平均孔径10〜100μmの微孔を開け、該微孔の大きさ及び数の選択により、該保存時の酸素透過量Pを上記範囲内に調整することができる。また、該高分子フィルムの材質によっては、微孔を開けなくても、材質自体での酸素透過により、該保存時の酸素透過量Pを上記範囲内に調整することができる。このような場合は、該高分子フィルムの材質や厚みを選択することによって、該保存時の酸素透過量Pを調整することができる。
【0026】
該高分子フィルムを用いて作成した鮮度保持用包装袋の形状は、特に制限されない。
【0027】
本発明の菊の切り花の保存方法では、該菊の切り花を、該高分子フィルムに入れ、密封するが、該高分子フィルムを密封する方法としては、ヒートシール、結束帯、輪ゴム、かしめ等、特に制限されない。この場合、菊の切り花を通気性のある容器に入れた状態で該高分子フィルムに入れても良い。また、本発明の菊の切り花の保存方法では、包装形態としては、袋詰めの形態だけではなく、例えば、トレイ容器にトップシールする形態であってもよく、あるいは、ダンボール箱と該高分子フィルムとを一体化させた形態であってもよい。
【0028】
本発明の菊の切り花の保存方法は、該菊の切り花を収穫後、該高分子フィルムで包装し、該菊の切り花が該高分子フィルムで包装された包装体を保存するが、その後、菊の切り花は出荷、運搬、店頭陳列される。その際の平均保存温度は0℃以上10℃以下である。出荷、運搬、店頭陳列でも上記の温度範囲内に置かれることが好ましいが、状況によっては難しい場合もあり、保存時の温度も含めて平均保存温度として0℃以上10℃以下の範囲に置かれることが好ましく、少なくとも保存時は上記の範囲にて保存される。つまり、本発明の菊の切り花の保存方法は、上記平均保存温度条件下における保存方法である。
【0029】
本発明の菊の切り花の保存方法は、次に述べる本発明の菊の切り花の鮮度保持用包装袋により、好適に行なわれる。
【0030】
本発明の菊の切り花の鮮度保持用包装袋は、高分子フィルムからなる菊の切り花の鮮度保持用包装袋であって、
23℃において、菊の切り花保存時の該鮮度保持用包装袋の酸素透過量Pが、50〜380[cc/(100g・day・atm)]の菊の切り花の鮮度保持用包装袋である。
【0031】
本発明の菊の切り花の鮮度保持用包装袋に係る該菊の切り花は、本発明の菊の切り花の保存方法に係る該菊の切り花と同様である。菊の切り花の鮮度保持用包装袋は、菊の切り花を包装した後、平均保存温度として0℃以上10℃以下の範囲で保存される菊の切り花の鮮度保持用包装袋である。
【0032】
本発明の菊の切り花の鮮度保持用包装袋に係る該高分子フィルムの材質は、本発明の菊の切り花の保存方法に係る該高分子フィルムの材質と同様である。
【0033】
該高分子フィルムの厚さは、特に制限されないが、通常、15〜60μmであり、取り扱い及びコストの観点から、25〜52μmが好ましい。
【0034】
該鮮度保持用包装袋は、該菊の切り花保存時の該鮮度保持用包装袋の酸素透過量P、又は該高分子フィルムの単位面積当りの酸素透過量Fを調節するために、微孔を有してもよく、この場合、該微孔の平均孔径は、5〜150μm、好ましくは10〜100μmであり、該微孔の開孔面積は、菊の切り花100gあたり1.7×10−4〜1.5×10−2mm/100g、好ましくは9.0×10−4〜1.3×10−2mm/100gである。なお、菊の切り花100gあたりの該微孔の開孔面積とは、該鮮度保持用包装袋で包装した菊の切り花の質量W(g)で、該高分子フィルムの有効表面積にあけた該微孔の総面積(mm)を除して100を積算した値である({微孔の総面積/包装した菊の切り花の質量}×100)。
【0035】
23℃における、該菊の切り花保存時の該鮮度保持用包装袋の酸素透過量Pは、50〜380[cc/(100g・day・atm)]であり、好ましくは150〜380[cc/(100g・day・atm)]である。該菊の切り花の保存時の該鮮度保持用包装袋の酸素透過量Pが上記範囲にあることにより、鮮度保持効果が高くなる。特に、該菊の切り花保存時の該鮮度保持用包装袋の酸素透過量Pが上記範囲にあることにより、該菊の切り花の開花の進行が抑制され、葉の黄化が少なくなり、異臭の発生が少なくなる。
【0036】
本発明の菊の切り花の鮮度保持用包装袋が、10〜100本(500〜120000g)の菊の切り花包装用の鮮度保持用包装袋である場合、すなわち、本発明の菊の切り花の鮮度保持用包装袋が、1袋当りに10〜100本の該菊の切り花を詰めて包装する際の包装袋として用いられる場合、23℃における該高分子フィルムの単位面積当りの酸素透過量Fは、1600〜40000[cc/(m・day・atm)]、好ましくは4800〜38000[cc/(m・day・atm)]であり、該高分子フィルムの有効表面積は、0.4〜2.1m、好ましくは0.6〜2.0mである。本発明の菊の切り花の鮮度保持用包装袋を、10〜100本の菊の切り花の包装用の鮮度保持用包装袋として用いる場合、該高分子フィルムの単位面積当りの酸素透過量F及び有効表面積を上記範囲内とすることにより、該菊の切り花保存時の該鮮度保持用包装袋の酸素透過量Pを上記範囲内にできるので、鮮度保持効果が高くなる。
【0037】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0038】
(実施例1〜6、比較例1〜3)
表1に示す厚みと素材の高分子フィルムの3辺をヒートシールして、表1に示した大きさの方形の包装袋を作製し、表1に示す微孔を開けた。次いで、該包装袋に、菊の切り花(切り前3で収穫、品種は、神馬)を表1に記載した量の通り詰め、袋開口部をシール巾10mmでヒートシールして密封し、菊の切り花が包装された包装体を得た。このとき、該高分子フィルムの有効表面積Sは、ヒートシール部を除いた該包装体の内側の表面積であり、保存時の酸素透過量Pは、表1に示す値となる。なお、該保存時の酸素透過量Pは、以下の式で求められる。
P=F×S×(100/W)
P:包装した菊の切り花100gあたりの包装袋の酸素透過量
[(cc/(100g・day・atm))(23℃)
F:23℃における高分子フィルムの単位面積当りの酸素透過量[cc/(m・day
・atm)]
S:高分子フィルムの有効表面積(m
W:包装体に詰められている菊の切り花の質量(g)
である。
【0039】
次いで、該包装体を、表1に示した温度で所定の日数保存した。各保存日数毎の菊の切り花の品質評価等の結果を表2に示す。なお、該品質評価では、各保存日数毎に2個の包装体を用意した。
【0040】
<高分子フィルムの単位面積当りの酸素透過量Fの測定>
(1)包装袋の準備
表1に示す開孔面積比率の高分子フィルムで、4辺がヒートシールで密封された方形の包装袋を作成する。このとき、ヒートシール後の包装袋の内側の表面積が、高分子フィルムの有効表面積S(m)であり、Sが0.06m以上となるように包装袋を作成する。なお、以下全ての作業は、大気のガス雰囲気(23℃)中で行う。
【0041】
(2)窒素ガスの封入
ヒートシールで包装袋を密封した後、アスピレーターを用いて包装袋を脱気する。脱気は、包装袋の両面が貼りつくまで行う。次に、この包装袋に白硬注射筒を用いて窒素ガス(純窒素ガス)を充填する。窒素ガスの充填量は、袋サイズによるが、包装フィルムにテンションがかからない範囲で極力多く入れ、注射筒の目盛りを用いて、窒素ガスの注入量を測定する。なお、注射針を包装袋に突き刺して、ガスの出し入れを行う。針を刺す際は、高分子フィルムに両面テープを貼り、この上からポリプロピレンフィルム製の粘着テープ(以下「PPテープ」という)を貼り付ける。また、針を抜いた後は、速やかにPPテープで針穴を塞ぐ。包装袋にはるテープは、4.5cm以下の面積に収まるようにする。また、微孔を開けた高分子フィルムの場合は、微孔を塞がないように注意する。
【0042】
(3)初期酸素濃度の測定
窒素ガス充填直後に、ガスクロマトグラフィー(TCD)で測定して、包装袋内の酸素量を求め、酸素濃度C(体積%)を算出した。このとき、Cが0.2体積%超えている場合は、上記(1)及び(2)作業をやり直す。なお、酸素濃度測定用のサンプリングガス量は、10cc以下とする。ガスクロマトグラフィーには、1cc程度を注入する。
【0043】
(4)包装袋の保存
初期酸素濃度を測定した包装袋を、23℃のインキュベーター中で保存する。このとき、袋の上に物が載ったり、インキュベーターのファンの風が直撃したりしないように静置する。
【0044】
(5)保存中の包装袋内の酸素濃度の測定及び酸素透過量の計算
少なくとも2点以上経時時間を代えて、包装袋内のガスをサンプリングし、包装袋内の酸素濃度を測定する。このとき、経時時間は、窒素ガス充填直後から3時間以上経過後であり、且つ、包装袋内の酸素濃度が1%以上7%以下の範囲内でなれければならない。そして、経時時間t(時間)と包装袋内の酸素濃度との間に比例関係(相関係数が0.98以上)が成り立つ必要がある。もし、包装袋内の酸素濃度が1%以上7%以下の範囲内からはずれていた場合、あるいは、比例関係が成り立たない場合は再試験を行う。なお、高分子フィルムの酸素透過量が大きすぎて包装袋内の酸素濃度の上昇が速すぎ、この条件をクリアできない場合は、高分子フィルムの一部を酸素透過量が小さい既知である同じ材質のフィルムと張り合わせて袋を作成して同様に行えばよい。この際、袋の表面積は既知である別のフィルムと張り合わせた部分は除く。
【0045】
次いで、高分子フィルムの単位面積当りの酸素透過量Fを、下記式により計算する。
F={1.143×(C−C)×V}/(t×S)
F : 23℃における単位面積当りの酸素透過量[(cc/(m・day・atm)]
: 窒素ガス充填時から経時時間t時間後の包装袋内の酸素濃度(体積%)1)
: 窒素ガス充填直後の包装袋内の酸素濃度(体積%)
V : 充填した窒素ガスの量(cc)
t : 窒素ガス充填直後からの経過時間(時間)1)
S : 包装袋の内側の表面積(高分子フィルムの有効表面積)(m
1)C及びtとしては、最も長い経時時間の値を用いて計算する。
【0046】
なお、高分子フィルムの一部を酸素透過量が小さい既知である同じ材質のフィルムと張り合わせて袋を作成した場合は、上記測定により得られる単位面積当りの酸素透過量から、該既知のフィルムの単位面積当りの酸素透過量を減じた値が、対象となる高分子フィルムの単位面積当りの酸素透過量である。
【0047】
<花の開花程度>
表1に記載の保存日数の間保存した後包装袋を開封して菊の切り花を取り出し評価を行った。花の直径(mm)を測定するとともに、花の蕾を次に記載した切り前の基準に準じて評価を行なった。
3:出荷適期(やや固切り)、4:出荷適期(標準の切り前)、5:出荷適期(やや開き気味)、6:開きすぎ(6以上は、全て6と記載)

なお、試験を開始する前の菊の切り花(蕾)の直径は15mmであり、切り前3の菊を用いて試験を行った。
【0048】
<官能評価>
表1に記載の保存日数の間保存した後包装袋を開封して菊の切り花を取り出し外観と臭気の評価を行った。葉の黄化、花弁の褐変、しおれ、カビ、臭気について、官能評価により、4段階(4:良好、3:普通、2:やや劣る、1:劣る)の点数を付けた。なお、官能試験では、3点以上の点数であれば、鮮度保持効果は良好である。
【0049】
<花持ち試験>
表1に記載の保存日数の間保存した後包装袋を開封して菊の切り花を取り出し評価を行った。菊の切り花の切り口からおよそ10cmの部分で茎を水きりした後、水に活けて25℃、60%RHで花持ちを評価した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子フィルムからなる菊の切り花の鮮度保持用包装袋であって、前記鮮度保持用包装袋には微細孔を有し、菊の切り花の平均保存温度T(℃)が0℃以上10℃以下であり、23℃における菊100gあたりの前記鮮度保持用包装袋の酸素透過量P(cc/100g・day・atm)が50〜380cc/100g・day・atmであることを特徴とする菊の切り花の鮮度保持用包装袋。
【請求項2】
菊の切り花を保存する際の前記菊の切り花の鮮度保持用包装袋の袋内の酸素濃度が4〜16%である請求項1に記載の菊の切り花の鮮度保持用包装袋。
【請求項3】
前記菊の切り花の鮮度保持用包装袋の微細孔の開孔面積が、菊の切り花100gあたり1.7×10−4〜1.5×10−2mm/100gである請求項1に記載の菊の切り花の鮮度保持用包装袋。
【請求項4】
前記菊の切り花の鮮度保持用包装袋の微細孔が、平均孔径5〜150μmの微細孔である請求項1又は3に記載の菊の切り花の鮮度保持用包装袋。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の菊の切り花の鮮度保持用包装袋を用いて菊の切り花を保存する菊の切り花の鮮度保持保存方法。

【公開番号】特開2009−298431(P2009−298431A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153735(P2008−153735)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】