説明

葉つきタマネギの皮むき機

【課題】
葉つきタマネギの皮むき作業を人手で行うことを基本としつつ、最外生皮をタマネギの玉部から迅速且つ確実に剥離させ、容易に分離させることができる作業機を工夫することをその技術的課題とする。
【解決手段】
葉つきタマネギの最外生皮の首部が少し引き剥がされたものに、その肩部近傍に前後一対の空気ノズルから高速空気流を所定角度で吹き付けて、肩部及び玉部から剥離させるものであって、
上記空気ノズルが、透明の天板を備えた容器の中にあり、上記容器の天板に丸孔と、当該丸孔に繋がった横方向長穴とがあり、上記空気ノズルが水平に対して40度〜50度の範囲において傾斜しており、さらに、上記高速空気流の噴出速度が20m/秒〜30m/秒であり、さらに、上記空気ノズルの吹き出し口が横長の扁平形状であることが、解決手段である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般的にタマネギは、根、葉を切除し、外皮を乾燥させたものであり、保存性に富んだものであるが、この他に、葉つきタマネギと称されているものがある。この葉つきタマネギは、通常のタマネギを未成熟の段階で早期に収穫したものであり、水にさらさなくても食べられ、柔らかくて葉も食べられるものであり、例えば、図4に示されているように、葉が付けられた状態で消費者に提供される。
葉つきタマネギは、圃場から収穫された後、細根が切除され、最外生皮1枚が剥ぎ取られ、表面を布で拭いて清掃した状態で包装される。
なお、葉つきタマネギについては、水洗するとこれを乾燥させなければならず、水洗、乾燥すると葉が損傷されて商品価値が下がるので、水洗せずに外皮を剥ぎ取ってからこれを拭いて清掃している。
【0002】
ところで、葉つきタマネギは肉厚の皮が幾重にも密着して重なっており、最外生皮は概ね2枚の生皮である。そして、これらの最外生皮を剥ぎ取る必要があるが、葉つきタマネギの皮むき作業は機械化されにくく、未だ機械化されていない。
この発明は、葉つきタマネギの皮むき機、すなわち、最外生皮を剥ぎ取り、かつ清掃する作業の補助機に関するものであり、最外生皮のはぎ取り及び清掃作業を簡単、容易にし、かつ作業能率を著しく向上させることができるものである。
【背景技術】
【0003】
タマネギの皮むき機としては、通常のタマネギ、すなわち首部で切断され、首部及び最外生皮が乾燥されたタマネギについて、これが調理に供される段階で、その乾燥外皮を剥ぎとる作業機が公知である。タマネギの皮むきは、最外生皮の一部を玉部から剥離させて起こし、これを引き剥がすことによってなされるが、この乾燥した最外生皮はその下皮に堅く密着しているためにその一部を剥離させて起こし、外皮を引き剥がすことは容易でなく、手間のかかる作業である。公知のタマネギの皮むき機は、通常のタマネギの皮むきを自動で行うものであり、回転する一対のローラの上にタマネギを載せて回転させ、これに高速空気流を吹き付けてその乾燥外皮の一部を剥離させて起こし、これを上記回転ローラで掴んで引き剥がすものである(特許文献1、特許文献2)。
しかし、上記タマネギの乾燥外皮の皮むき機を葉つきタマネギの皮むきに利用することはできず、また、その原理を応用することもできない。
【0004】
また、葉つきタマネギは、その首部から長い茎が伸び、その先に葉があって、特殊な形状をしているので、これを機械的に扱うのは非常に困難であり、また、皮むき作業で葉が損傷されると、葉つきタマネギの商品価値が著しく低下するので、葉を損傷する可能性のある皮むき機は実用化されない。
葉つきタマネギの皮むき作業は、細根を切除し、葉の先を切除して長さを調整してから、最外生皮(通常は2枚)を玉部から引きはがし、引きちぎり、玉部を拭いて清掃するという一連の作業である。
【0005】
ところで、葉つきタマネギは肩部の上方が首部になっており、さらにその上方が茎部、葉部になっている(図5参照)。このため、最外生皮を剥ぎ取るには、その茎部を引き離し、引き続いて肩部を引き剥がし、さらに玉部を引き剥がす必要があり、上から下に向けて引き剥がすという手順でなされる。そして、最外生皮は生皮であるから縦方向に容易に裂けるが、下皮に堅く密着しているので無理に引っ張ると途中で引きちぎられる。したがって、球部からスムーズにかつ速やかに最外生皮をはぎ取るのは容易でない。
【0006】
他方、首部は密着に弱いので、これを人手で引き剥がすのは簡単であるが、これを機械で引き剥がすのは容易でなく、他方、玉部を手作業で速やかに引き剥がすのは容易でない。したがって、首部を人手で引き剥がすことにして、玉部を機械的に引き剥がすことができれば、この皮むき作業の能率を大幅に向上にさせることができる。
以上のことから、葉つきタマネギの最外生皮を玉部から迅速かつ確実に引き剥がせるタマネギの皮むき機の開発が求められる。
【特許文献1】特開昭48−56878号公報
【特許文献2】特開2002−191339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、葉つきタマネギの皮むき作業を人手で行うことを基本としつつ、最外生皮をタマネギの玉部から迅速且つ確実に剥離させ、容易に分離させることができる作業機を工夫することをその技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、葉つきタマネギの最外生皮の首部が少し引き剥がされたものに、その肩部近傍に前後一対の空気ノズルから高速空気流を所定角度で吹き付けて、肩部及び玉部から剥離させるものであって、次の(イ)〜(ロ)によるものである。
(イ)上記空気ノズルが、天板を備えた容器の中にあり、
(ロ)上記容器の天板に丸孔と、当該丸孔に繋がった横方向長穴とがあり、
さらに、次の(ハ)〜(ニ)によるものである。
(ハ)上記空気ノズルが水平に対して40度〜50度の範囲において傾斜しており、
(ニ)上記高速空気流の噴出速度が20m/秒〜30m/秒であること。
さらに、次の(ホ)によるものである。
(ホ)上記空気ノズルの吹き出し口が横長の扁平形状であること。
【発明の効果】
【0009】
首部を手で少し引き剥がされ、葉つきタマネギ(図3(a))がその茎部を把持され、つり下げられた状態で上記丸孔から容器内に挿入され、その後、横方向長穴へ移動される。そうすると、横方向長穴にあるとき、その首部から肩部に向けて上記角度で上記高速空気流が吹き付けられ、この高速空気流が首部の隙間(少し引き裂かれた裂け目における微小隙間)に吹き込まれて、これが最外生皮と下皮との間に侵入して密着面を剥離させ、この剥離が瞬間的に広げられ、密着面に侵入した薄い空気層の圧力によって最外生皮が下皮から分離され、引き剥がされる(図3(b))。そして、上記高速空気流を当てながら横方向長穴内でタマネギをゆっくりと90度回転させると、葉つきタマネギの全面に高速空気流が吹き付けられ、上記の引き剥がし現象が全面に及んで、その肩部及び玉部まで瞬間的に引き剥がされる(図3(c))。このとき、引き剥がされた最外生皮は風圧で吹き飛ばされ、あるいは下方に反転される(図3(d))。
【0010】
上記天板が透明であるから、高速空気流を当てる位置を外から目視し、また高速空気流による最外生皮の剥離状況を外から目視しながら皮むき作業を行うことができるので、最外生皮が十分に剥離され、引き剥がされたことを確認しながら葉つきタマネギを取り出すことができる。
なお、各空気ノズルからの単位時間当たりの吹き出し量が多いほど作業能率がよく、吹き出し空気量にほぼ比例することが確認されている。
また、空気ノズルが横長の扁平形状であると、少ない空気量を高速で広い範囲でタマネギに吹き付けることができ、最外生皮の下皮との密着面に高速空気流が迅速に導入され、単位空気流量による最外生皮の剥離効率、清掃効率が高められる。
【0011】
以上のとおりであるから、高速空気流による皮むき作業は作業性がよくてきわめて能率的(手作業の3〜4倍)で、傷つけることがなくてきれいに仕上げられ、かつ作業が簡単、容易である。
最外生皮がめくれて残っているときは、反転された状態で上記丸孔から引き出し、これを引きちぎることで容易に除去することができる。
また、タマネギに付着している泥は高速空気流で吹き飛ばされるので、外皮が剥かれるときに表面の清掃がなされる。
よって、最外生皮の剥ぎ取り作業を能率良く、かつ簡単容易に行うことができる。
【0012】
また、天板については透明でなくても上記の皮むき作業を行うことが可能である。したがって、天板が透明であることは必ずしも必要不可欠の条件ではないが、透明であることが作業能率を高くするのに極めてよい。
なぜなら、容器の中に挿入されたタマネギを外から目視しながら皮むき作業を行い、また目視しながら必要なところに選択的に高速空気流を集中的に当ててその剥離、清掃を促進させることができ、さらに、外皮の剥離、表面の清掃を外から確認しつつ取り出せるから、その作業能率が極めてよい。
【0013】
上記の高速空気流による最外生皮の剥離、分離の能率は、高速空気流の噴射角度と噴射速度によって著しく左右され、噴射角度が水平に対して45〜60度の範囲で、噴射速度が20m/秒〜30m/秒の範囲のときに、最も効率的である。
【0014】
高速空気流の噴射角度(水平に対する角度)については、それが40度未満であれば、最外生皮とその下皮との間の境面に侵入する空気力が不足する傾向があり、角度が小さいほどその傾向が顕著になる。また、60度を超えると同様に、最外生皮とその下皮との間の境界に剥離させる方向に作用する空気力が不足するようになる傾向があり、角度が大きいほどその傾向が顕著になる。
【0015】
また、高速空気流の噴射速度については、20m/秒未満では最外生皮とその下皮との密着面に空気を侵入させる作用が低下し、最外生皮が剥離しにくくなり、流速が低いほどその傾向が顕著になる。また、30m/秒を超えても上記剥離効果は余り変わらず、圧縮空気の消費量が増大するだけマイナスが大きくなる。
また、ノズルの噴射口は大きければ噴射速度が不足し、噴射口が小さければ噴射空気量が不足する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次いで、図面を参照しつつ、実施例を説明する。これは、天板と側壁とによる中空の作業容器1と左右の畜圧器2,2とコンプレッサー3と濾過器4と前後一対の空気ノズル5,5を基本要素として備えている。
なお、作業容器1については、必ずしも周囲が完全に囲われたものである必要はないが、空気ノズル5から高速空気流が吹き出され、葉つきタマネギに付着した泥やゴミが吹き飛ばされるので、これらが周囲に飛散することを防止するために、実際には周囲を囲ったものであることが望ましい。
【0017】
作業容器1の天板はアクリル樹脂製で厚さ3mmの透明な板であり、この天板11の中央に左右一対の丸孔があり、この左右の丸孔12,12が横方向長穴13でつながれている。
丸孔12は葉つきタマネギの玉部を挿入するためのものである(図6参照)。タマネギの玉部の出し入れが容易であり(葉つきタマネギの玉部の直径は、商品になるもので概略50〜100mm)、出し入れする時にその縁に当たってタマネギの玉部が損傷されることのない程度の大きさであることが必要であるが、余り大径であると泥やゴミがこの丸孔から吹き出して飛散するので、このようなことがない程度の大きさであることが望ましい。この実施例では直径Rが100mmであり、この程度が実用上適当な大きさである。そして、一方の手でタマネギを把持し、それを一方の丸孔12から挿入し、横方向長穴13に移動してそこで高速空気流を当てて最外生皮を剥ぎ取る作業を行い、他方の丸孔に移動させ、他方の手に持ち替えて当該丸孔から取り出すという手順で繰り返される。このような作業を行う時に最良の距離に左右の丸孔の間隔Pを設定する。この実施例では当該間隔Pを200mmにしている。
【0018】
また、左右の丸孔12,12を繋いでいる横方向長穴13はタマネギの茎部をここに移動させて、空気ノズル5,5からの高速空気流を吹きつけるところであり、実際には葉つきタマネギを様々に傾け、上げ下げして、最適の位置と角度で高速空気流を当てながら作業が行われる。したがって、横方向長穴13の幅bは上記作業を行うのに支障のない広さであることが必要である。他方、横方向長穴13の幅が大きくて空気ノズルが露出していると、これに葉つきタマネギが当たるので作業性が悪く、しかも、空気ノズルに当たると、葉つきタマネギが著しく損傷されることになる。これを防ぐために、横方向長穴13の幅bは、前後の空気ノズル5,5がこの横方向長穴に露出することがない程度でなければならない。
以上のことを勘案して、この実施例では横方向長穴13の幅bを50mmにしている。因みに、前後の空気ノズル5,5の先端の間隔Dは74mmである。
【0019】
なお、横方向長穴13の左右方向長さBは、丸孔12の間隔P、直径R、横方向長穴13の幅bによって決まる長さであり、この長さの大小は余り重要なことではなく、丸孔12の間隔D、直径R、横方向長穴13の幅bをどのように選択するかが重要である。しかし、横方向長穴13の長さについては、これが余り長すぎても、また短すぎても作業性がよくない。
因みに、この実施例では横方向長穴13の左右方向長さBは約110mmになっており、この程度であると作業性がよい。
【0020】
また、空気ノズル5は、この作業機の性能を左右する重要な要素である。空気ノズル管の太さの最適値は、空気容量によって左右される設計的事項である。
そして、高速空気流が左右に広げられた状態でタマネギに吹き付けられることが重要である。
この実施例の空気ノズル管5aは内径d1が2mm、外径d2が6mmの金属管である。そして、その先端は扁平に潰されていて、その吹き出し口5bが横長になっている。吹き出し口5bの長さwは3.5mmであり、厚さsは0.8mmであり、高速空気流の吹き出し角の左右方向への広がり角度θb(図4(b))は約5度である。
【0021】
前後の空気ノズル5,5の先端は、その間隔Dが74mmであり、横方向長穴13の幅bよりも24mm大きいので、横方向長穴13の端縁から12mmだけ引っ込められた位置にある。ノズル先端と葉つきタマネギの首部との距離はほぼ20〜50mm程度であるが、空気ノズル先端をこの程度に引っ込めておけば、葉つきタマネギ30が種々に傾けられ、上下されても、空気ノズル5の先端に当たることはない。
この実施例での空気ノズルに関する仕様は以上のとおりであるが、これは一つの具体例にすぎないので、実情に応じて種々に選択すればよいことである。
【0022】
また、空気ノズル先端の構造は次のとおりである。
すなわち、少ない空気量で作業能率を高くするには、高速空気流をタマネギの広い範囲に吹き付けられるようにする必要があり、そのためには、空気ノズル5の吹き出し口5bをできるだけ薄くし、横幅を広くするのがよいが、薄いほど空気ノズル流通抵抗が増大し、吹き出し速度が低下する。他方、作業能率の観点から、定格空気圧(約0.6〜0.9Mpa)の下で20〜30m/秒の流速が必要である。したがって、使用圧力と空気容量(畜圧タンク容量及びコンプレッサーの容量)との兼ね合いで、空気ノズルの諸寸法を選択すればよい。
【0023】
空気容量の大小がこの作業機全体の性能を大きく左右するので、空気容量が十分に大きいことが必要である。この実施例のコンプレッサーの定格圧力は0.88Mpaである。
上記空気容量はコンプレッサーの吐出容量と畜圧タンクの容量によるが、畜圧タンクを大きくしてコンプレッサーの吐出容量を小さくすることができ、また畜圧タンクの容量を小さくしてコンプレッサーの容量を大きくすることもできる。
なお、コンプレッサーについては小型のものを2台組み合わせて全体の容量を大きくすることもできる。
【0024】
畜圧タンク圧が約0.6〜0.9Mpaの範囲であれば、所定の性能を確保することができ、これが実用的で効率的な範囲である。0.6Mpa以下に低下すると、作業を継続することはほとんどできないので、作業を一時中止して再び畜圧することになる。
前者の場合は、作業開始前の畜圧に長い時間を要するが、廉価なコンプレッサーを使用できるという利点がある。
通常は、0.9Mpaまで畜圧器の圧力を高め、その後、コンプレッサーを運転しながら作業を続行するとき、4〜5時間は0.6Mpa以上の圧力が維持されるように空気容量(コンプレッサーの吐出容量、畜圧タンクの容量)を設計するのがよい。
【0025】
この実施例では、左右の両蓄圧器の容量が40リットルで、コンプレッサーの容量が1.1kwである(最高吐出圧0.88Mpa)。なお、コンプレッサーとして1.1kwを採用したのは、一般家庭用電源を使用できるからである。
空気ノズルからの空気噴射は、ペダル操作で間欠的に行われ、3〜4時間連続して作業を行うことができる。
【0026】
この実施例のその他の構成の詳細は次のとおりである。
作業容器1は前後方向幅が350mm、左右方向長さが550mm、側壁高さが405mmの脚付の箱型容器であり、全高さ(天板の地上高)は710mmである。この 作業容器1の下部前後に2つの蓄圧器2,2があり、両蓄圧器2,2は、1Mpa以上の耐圧強度を有するものである。この畜圧器の構造は鋼板を溶接した単純な密封容器であり、導入口と排出口を有し、導入口が連結管2aで互いに連結され、排出口に配管5pが接続されており、この配管5pの先に空気ノズル5が接続されている。そして、上記連結管2aに油濾過用の濾過器4が接続されていて、コンプレッサー3からの空気に混入している微量の油がこの分離器で除去されるようになっている。
【0027】
コンプレッサー3にバルブ21が接続されており、このバルブ21がフートペダル22で開閉操作される。バルブ21に上記濾過器4が接続されている。フートペダル22を踏み込むことで、空気ノズル5,5から空気が高速で噴出される。
【0028】
以上が、この実施例の構成である。次いでこの実施例による葉つきタマネギの最外生皮の除去作業の手順を説明する。
圃場から収穫された葉つきタマネギは、柔らかくて損傷しやすい。茎、葉も食用に供されるものであるから、これが傷付けられると商品価値が大きく下がる。
皮むき作業をしやすくするために、収穫した葉つきタマネギの細根を除去し、葉を適当に切除したものを一方の手で把持し、その最外生皮を首部で少し引き割いて小さな裂け目を入れ(図3(a)参照)、これを天板11の右又は左の丸孔から挿入する(図7の例では右側の丸孔12に挿入している)。このときの様子は図8に示すようになる。
【0029】
丸孔12に挿入した状態(図7(b))から葉つきタマネギ30を横方向長穴13に移動させ(図7(c))、前後の空気ノズル5,5から高速空気流を葉つきタマネギ30の首部(図4、図5参照)に吹き付ける(図7(c)、図3(b))。そうすると、上記裂け目から高速空気流が侵入して最外生皮とその下皮との密着面に侵入する。密着面に空気が侵入すると、その圧力で最外生皮が剥離され、その空気圧で吹き飛ばされ(図7(c))、このとき泥も吹き飛ばされる。その後、葉つきタマネギを横方向長穴から他方の丸孔に移動させ(図7(d))、当該丸孔から取り出す。取り出されたものに最外生皮が付着している場合はこれを掴んで引きちぎる。また汚れが付着している場合は、これを布で拭き取る。
なお、熟練者は孔から片方の手を入れて、空気を吹き付けながら反転された最外生皮を掴んで引きちぎることもできる。このようにすることよって一層迅速に作業が行われる。
【0030】
なお、図示の例では細根を、その一部を残して切除しているが、最外生皮一枚を削り取りながら細根を根元から完全に除去すれば、最外生皮は風圧で剥離され、吹き飛ばされたときに風圧で簡単に玉部から分離される。したがって、最外生皮をつまんで引きちぎる手数が省ぶかれる。
【0031】
〔効果確認〕
細根、葉の余部を切除した葉つきタマネギを用意して皮むき作業を行ってその所要時間を測定した。葉つきタマネギの数量は作業者一人当たり1000個であり、手作業で2人、作業機利用で1人について試験を行った。
その結果、各1人の単純平均は、手作業の場合が12.6時間、作業機利用の場合が3.3時間であり、個人差によるバラツキは手作業の場合が30%、作業機利用の場合が5%であった。
以上のことから、単純平均では作業機利用の場合が手作業の場合の約3.8倍の能率であり、また、個人差によるバラツキは、作業機利用の場合が手作業の場合よりも小さく、約1/6であった。これにより、この作業機を利用することにより、皮むき作業の習熟度の如何に関わらず、ほぼ4倍弱の作業能率が得られることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】は、実施例の全体を示す斜視図
【図2】は、葉つきタマネギと天板、天板と空気ノズルの相対的配置関係を示す断面図
【図3】は、高速空気流で葉つきタマネギの最外生皮を剥離させ、分離させる作用の説明図
【図4】(a)は、空気ノズルと葉つきタマネギとの位置関係を示す側面図、(b)は、空気ノズル先端の拡大図
【図5】は、葉つきタマネギの各部位を示す側面図
【図6】は、天板の一部拡大図であって、丸孔、横方向長穴、空気ノズルの位置関係を示す平面図
【図7】は、実施例による葉つきタマネギの皮むき作業の手順を模式的に示す斜視図
【図8】は、葉つきタマネギを丸孔に挿入する様子を示す拡大図
【符号の説明】
【0033】
1:作業容器
2:畜圧器
3:コンプレッサー
4:濾過器
5:空気ノズル
5a:空気ノズル管
5b:吹き出し口
5p:配管
12:丸孔
13:横方向長穴
21:バルブ
22:フートペダル
30:葉つきタマネギ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
葉つきタマネギの肩部近傍に、空気ノズルによって高速空気流を所定角度で吹き付けて、その最外生皮を肩部及び玉部から剥離させるものであって、
前後方向に対向する一対の空気ノズルが、天板を備えた容器の中にあり、
上記容器の天板に丸孔と、当該丸孔に繋がった横方向長穴とがあり、
上記一対の空気ノズルが上記横方向長穴の中央部にあって、天板で完全に覆われている、葉つきタマネギの皮むき機。
【請求項2】
上記丸孔が上記横方向長穴の左右両端にある、請求項1の葉つきタマネギの皮むき機。
【請求項3】
上記空気ノズルが水平に対して40度〜50度で傾斜しており、
上記高速空気流の噴出速度が20m/秒〜30m/秒である請求項1又は請求項2の葉つきタマネギの皮むき機。
【請求項4】
上記空気ノズルが横長の扁平ノズルである請求項1乃至請求項3の葉つきタマネギの皮むき機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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