説明

蒸しパン様食品、蒸しパン様食品用ミックス粉及び蒸しパン様食品の製造方法

【課題】しっとりとした、且つ弾力がなく、さっくりとした、独特の食感を有する蒸しパン様食品を提供する。そのような独特の食感を有する蒸しパン様食品を提供するための、手段及び製造方法を提供する。
【解決手段】おからを含む生地から製造された蒸しパン様食品;乾燥おからと穀粉とを質量比1:99〜100:0で含有し、乾燥おからと穀粉の合計量100質量部に対して糖類を30〜200質量部、及び膨張剤を0.2〜15質量部含有することを特徴とする、蒸しパン様食品製造用ミックス粉;乾燥おからと穀粉を質量比で1:99〜100:0、乾燥おからと穀粉の合計量100質量部に対して糖類を30〜200質量部、膨張剤を0.2〜15質量部、並びに水及び/又は卵を混合して生地を調製し、該生地を蒸すことを含む、蒸しパン様食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸しパン様食品、具体的におからを用いた蒸しパン様食品、そのような蒸しパン様食品の製造方法、及びそのような製造方法に使用できる蒸しパン様食品用ミックス粉に関する
【背景技術】
【0002】
蒸しパンは、一般的にイーストを使用しない小麦粉主体の生地を蒸すことによって製造されるパン類の一種である。従来の蒸しパンは、特有のモチモチした食感を有するものであるが、食の洋風化に伴い、軽いケーキ様の食感のものも求められている。油脂や卵を多く配合することや生地を起泡することにより、軽いケーキ様の食感を持たせようとしたものがある。
おからをベーカリー製品に利用する試みは、従来なされており、例えばおからをパン生地に含め加水、捏ね上げ、焼成するパンの製造方法が提案され(特許文献1参照。)、また、ドーナツ生地に対しておからを用いてドーナツを製造することが提案されている(特許文献2参照。)。
蒸しパンは、水蒸気を熱の媒体として一般的に100℃を超えない蒸成雰囲気内で、生地を加熱して製造されたものである。一方、上記のパンやドーナツといった焼成製品やフライ製品の製造方法は、熱源からの放射熱や油脂などを介しての伝導熱で加熱する方法であり、一般的に100℃以上の温度域で加熱され、蒸しパンを製造する際の加熱方法とは大きく異なる。
【0003】
【特許文献1】特開平8−163954号公報
【特許文献2】特開2000−333593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、しっとりとした、且つ弾力がなく、さっくりした、独特の食感を有する蒸しパン様食品を提供することである。本発明の目的はまた、そのような独特の食感を有する蒸しパン様食品を提供するための、手段及び製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、蒸しパンを製造する際に乾燥おからを使用することにより、好ましい食感の蒸しパン様食品が製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
従って本発明は、おからを含む生地から製造された蒸しパン様食品である。本発明はさらに、冷凍されている上記の蒸しパン様食品にも向けられている。
本発明はまた、乾燥おからと穀粉とを質量比1:99〜100:0で含有し、乾燥おからと穀粉の合計量100質量部に対して糖類を30〜200質量部、及び膨張剤を0.2〜15質量部含有することを特徴とする、蒸しパン様食品製造用ミックス粉である。
本発明はさらに、乾燥おからと穀粉を質量比で1:99〜100:0、乾燥おからと穀粉の合計量100質量部に対して糖類を30〜200質量部、膨張剤を0.2〜15質量部、並びに水及び/又は卵を混合して生地を調製し、該生地を蒸すことを含む、蒸しパン様食品の製造方法である。本発明はさらに、上記製造方法において該生地を蒸した後、冷凍することを含む、冷凍蒸しパン様食品の製造方法に向けられる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の蒸しパン様食品、及び本発明の製造方法により製造された蒸しパン様食品は、しっとりとした食感を持ちながら、弾力がなく、さっくりしていて、従来の蒸しパンでは達成できない食感を有する。また、本発明による蒸しパン様食品は、口溶け及びボリュームといった外観の点でも好ましいものである。
本発明の蒸しパン様食品製造用ミックス粉によれば、上記のような優れた蒸しパン様食品を簡便に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で使用する乾燥おからとは、豆腐の製造過程で、大豆を水に浸し、その後すり潰して豆乳とおから(豆腐穀、とうふがらともいう)に分離されて得られた該おからを過熱水蒸気乾燥や空気乾燥などによって水分10%以下に乾燥したものであって、乾燥後、粉末化されたものも包含する。これらの乾燥おからは市場で一般に入手でき、本発明では市販品を使用することができる。
本発明では粉末化された乾燥おからが好ましく用いられる。また使用する乾燥おからは、粒径が10〜100μm程度のものが好ましい。
【0008】
本発明は、従来蒸しパンの製造に用いる例えば小麦粉といった穀粉の一部あるいは全部を乾燥おからに置き換えて、蒸しパンを作ることを特徴とする。
本発明では好ましくは、乾燥おからと穀粉の合計を100質量部とすると、そのうち1〜100質量部を乾燥おからとすることができる。従って、乾燥おからと穀粉とを質量比で1:99〜100:0の割合で使用することが適当である。
本発明でより好ましくは、乾燥おからと穀粉の合計100質量部のうち、乾燥おからを20〜40質量部使用する。従って、乾燥おからと穀粉とを質量比で20:80〜40:60の割合で使用することが好ましい。
本発明で使用する穀粉として小麦粉、米粉、大豆粉、コーンフラワー、そば粉などが挙げられる。
【0009】
本発明の蒸しパン様食品の製造方法では、上記の乾燥おからと穀粉の合計量100質量部に対して、糖類を30〜200質量部用いることが食感の引き、しっとり感、ソフトさ、口溶け、火通りなどの観点から適当であり、より好ましくは80〜150質量部である。乾燥おからと穀粉の合計量100質量部に対して糖類が30質量部未満であると、引きが強く、ソフトさやしっとり感に欠ける傾向があり、一方200質量部を超えると、火通りが悪くなりねちゃつき口溶けが悪くなる傾向がある。
ここで使用する糖類として砂糖、ショ糖、水あめ、麦芽糖、乳糖、ブドウ糖、異性化糖、オリゴ糖、果糖、ソルビトール及びトレハロースなどが挙げられる。
【0010】
本発明ではさらに、上記の乾燥おからと穀粉の合計量100質量部に対して、膨張剤を0.2〜15質量部用いることがボリューム、口溶け、味、火通りの観点から適当であり、好ましくは2〜8質量部である。乾燥おからと穀粉の合計量100質量部に対して膨張剤が0.2質量部に満たないと、ボリュームが小さくなり、火通りが悪く口溶けが悪くなる傾向がある。一方15質量部を超えると苦味や渋みが出て味が悪くなる傾向がある。
膨張剤として化学膨張剤を使用することができる。化学膨張剤にはガス発生剤と酸性剤とがある。本発明ではガス発生剤及び酸性剤のどちらも使用することができる。ガス発生剤の例として炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウムなどがあり、これらを1種単独で又は2種以上を使用することができる。また、酸性剤の例として酒石酸、酒石酸水素カリウム、第一リン酸カルシウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、焼きみょうばん、グルコノデルタラクトン、炭酸カルシウムなどが挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を使用することができる。
【0011】
本発明はまた、乾燥おからと穀粉とを質量比1:99〜100:0で含有し、乾燥おからと穀粉の合計量100質量部に対して糖類を30〜200質量部、及び膨張剤を0.2〜15質量部含有することを特徴とする、蒸しパン様食品製造用ミックス粉にも向けられている。蒸しパン様食品製造用ミックス粉に使用する乾燥おから、穀粉、糖類及び膨張剤は上記に説明したとおりである。
本発明の蒸しパン様食品製造用ミックス粉の実施態様において、乾燥おからと穀粉とを質量比で20:80〜40:60の割合で使用することが好ましい。また、乾燥おからと穀粉の合計量100質量部に対して糖類を好ましくは80〜150質量部、及び膨張剤を好ましくは2〜8質量部含有する。
【0012】
本発明の蒸しパンの製造方法、及び本発明の蒸しパン様食品製造用ミックス粉を使用した製造方法では、上記の材料に水及び/又は卵を加えて、混合し生地を調製する。本発明では水のみでも、卵のみでも、又は水と卵の混合液を使用してよく、中でも水と卵を併用することが好ましい。卵を使用するとねちゃつきが抑えられ、より好ましい食感となる。
水及び/又は卵の使用量は、乾燥おからと穀粉の合計量100質量部に対して、一般的に50〜400質量部の範囲であり、好ましくは120〜200質量部である。卵として生全卵、冷凍卵、殺菌濾過卵、生卵白、生卵黄、乾燥全卵、乾燥卵白、乾燥卵黄やそれらの混合物などを用いることができる。
本発明の蒸しパンの製造方法及び本発明の蒸しパン様食品製造用ミックス粉を使用した製造方法において、生地を調製する際の水及び/又は卵の添加量は、蒸しパン製造に適した生地粘度となるように、適宜選択することができる。
【0013】
生地の調製に当たっては、上記の成分の他に、油脂類を使用することが好ましい。使用する油脂類としては液状油、固形油及びその溶解油脂、半流動状油脂などのいずれでもよいが、液状油が好ましい。例えば液状油としてサラダ油など、固形油としてショートニング、バターなど、半流動状油脂として液状ショートニングなどがある。
油脂類の使用量は、乾燥おからと穀粉の合計量100質量部に対して、5〜100質量部が適当であり、好ましくは20〜80質量部、より好ましくは40〜50質量部である。
生地の調製にはその他、澱粉、植物性蛋白、食塩、乳製品(牛乳、粉乳など)、乳化剤、香料、着色料、セルロース、増粘剤、起泡剤、餡などを適当な量で配合することができる。
【0014】
本発明の蒸しパン様食品製造用ミックス粉には、乾燥おから、穀粉、糖類及び膨張剤の他に、澱粉、植物性蛋白、食塩、粉乳、油脂類、乳化剤、香料、着色料、セルロース、増粘剤、卵粉、起泡剤などを適宜の量で配合することができる。
本発明の蒸しパン様食品製造用ミックス粉は、乾燥おから、穀粉、糖類、膨張剤、植物性蛋白、食塩、粉乳、油脂類、乳化剤、香料、着色料、セルロース、増粘剤、卵粉、及び起泡剤などを均一に混合することで得ることができる。混合の方法は特に限定されず、従来公知のケミカルミキサー、ニーダーミキサーなどの混合機を使用することができる。
【0015】
本発明において蒸しパン様食品の生地の調製は、蒸しパンを製造する常法に従って実施することができる。生地の調製は例えば、製菓用竪型ミキサーでホイッパーを使用して、低速1分、中速1分程度原料を混合して生地とする。こうして調製した生地を型に入れ、この生地を90〜100℃の蒸成雰囲気内で、好ましくは92〜94℃の蒸成雰囲気内で蒸成する。蒸成時間は一般的に10〜40分である。使用する蒸し器としては、ボックススチーマー、トンネル型蒸し装置などがある。
型1個における生地量は30〜500gの範囲が適当である。型としてグラシンカップ、アルミカップ、紙カップ、耐熱性プラスチックカップなどを用いることができる。
こうして生地を蒸成した後、蒸し器から取り出し、熱いうちに又は放冷した後に食することができる。また、蒸成後の製品を凍結させ、冷凍蒸しパン用食品として冷凍状態で保存、流通することができる。製品を凍結する手順は常法に従うことができ、例えば−20℃〜−30℃の急速冷凍が適当である。冷凍品の解凍方法としては、電子レンジ解凍や冷凍品を室温で1時間程度放置して解凍することが挙げられる。
【実施例】
【0016】
[実施例1〜7及び比較例1]
下記表1に示す材料組成(単位:質量部)にて、蒸しパン様食品を製造した。表1に示す各例の材料を、製菓用竪型ミキサーに入れホイッパーを使用して、低速1分、中速1分混合し、生地を調製した。なお、加水量を調整して、各例で生地粘度が大きく変動しないようにした。
生地を100gグラシンカップに量り、ボックススチーマー92℃の蒸成雰囲気内で18分間蒸成した。室温で放冷した後、各製品を食してみて評価した。なお、実施例7は蒸成後、室温で20分放冷後、−30℃の冷凍庫内で冷凍し、室温で1時間放置して解凍し、評価した。
評価は10名のパネラーによる官能評価で行い、以下の5段階の基準で、引きの弱さ(引きが弱いとは弾力がなくサックリした食感を意味する。すなわち引きが弱い方が好ましい。)、しっとり感、口溶け、外観及び味について評価した。
項目毎に10名の平均を以って各例の得点とした。さらに各評価項目の得点の平均を求め、これを総合評価とした。
5点:非常に良好、4点:良好、3点:普通、2点:やや不良、1点:不良
評価結果を表1にあわせて示す。
【0017】
【表1】

*1 薄力粉
*2 [組成]炭酸水素ナトリウム:35質量%、焼みょうばん:25質量%、第1リン酸カルシウム:10質量%、グルコノデルタラクトン:10質量%、コーンスターチ:20%
【0018】
上記の結果から、本発明に従った実施例1〜7で得られた製品は、食感がしっとりとしていて弾力がなく、さっくりとしていて、好ましい独特の食感を有する蒸しパン様食品であった。中でも実施例3及び4は食感、外観及び味において評価が高く、優れた品質であった。
【0019】
[実施例8〜11及び比較例3〜6]
下記表2に示す材料組成(単位:質量部)にて、糖類又は膨張剤の量を変動させて、蒸しパン様食品を製造した。表2に示す各例の材料を、製菓用竪型ミキサーに入れホイッパーを使用して、低速1分、中速1分混合し、生地を調製した。
生地を100gグラシンカップに量り、ボックススチーマー92℃の蒸成雰囲気内で18分間蒸成した。室温で放冷した後、各製品を食してみて評価した。評価方法は実施例1で採用したのと同じである。
結果を表2に併せて示す。
【0020】
【表2】

*1 薄力粉
*2 [組成]炭酸水素ナトリウム:35質量%、焼みょうばん:25質量%、第1リン酸カルシウム:10質量%、グルコノデルタラクトン:10質量%、コーンスターチ:20%
【0021】
[実施例12]
下記表3に記載するミックス粉材料(単位:質量部)にて、蒸しパン用食品製造用ミックス粉を製造した。これらの材料をケミカルミキサーで5分間混合し、ミックス粉を得た。さらに、このミックス粉を使用し、さらに表3に記載した仕込み配合(単位:質量部)に示す他の材料を製菓用竪型ミキサーに入れ、ホイッパーを使用し、低速1分、中速1分混合し、生地を調製した。実施例1と同様の方法で生地を蒸成、放冷し、得られた製品を評価した。
結果を併せて表3に示す。



【0022】
【表3】

*1 薄力粉
*2 [組成]炭酸水素ナトリウム:35質量%、焼みょうばん:25質量%、第1リン酸カルシウム:10質量%、グルコノデルタラクトン:10質量%、コーンスターチ:20%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
おからを含む生地から製造された蒸しパン様食品。
【請求項2】
冷凍されている請求項1記載の蒸しパン様食品。
【請求項3】
乾燥おからと穀粉とを質量比1:99〜100:0で含有し、乾燥おからと穀粉の合計量100質量部に対して糖類を30〜200質量部、及び膨張剤を0.2〜15質量部含有することを特徴とする、蒸しパン様食品製造用ミックス粉。
【請求項4】
乾燥おからと穀粉を質量比で1:99〜100:0、乾燥おからと穀粉の合計量100質量部に対して糖類を30〜200質量部、膨張剤を0.2〜15質量部、並びに水及び/又は卵を混合して生地を調製し、該生地を蒸すことを含む、蒸しパン様食品の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の蒸しパン様食品の製造方法において、該生地を蒸した後、冷凍することを含む、冷凍蒸しパン様食品の製造方法。

【公開番号】特開2006−115778(P2006−115778A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308422(P2004−308422)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【Fターム(参考)】