説明

蒸気タービン内における水誘導を検出する方法

【課題】蒸気タービン内における水誘導を検出する方法を提供する。
【解決手段】本方法は、
一定の時間間隔で蒸気タービンの蒸気管のうちの1つの温度を測定する段階と、温度測定値を記録する段階と、記録した温度測定値から、蒸気管の緩やかな温度上昇をその後伴う急激な温度降下があったか否かを判定する段階とを含むことができる。本方法はさらに、蒸気管の温度降下の変化率及び蒸気管の温度上昇の変化率を計算する段階を含むことができる。蒸気管の緩やかな温度上昇をその後伴う急激な温度降下は、その温度降下の変化率が温度上昇の変化率を超えるような温度上昇をその後伴う温度降下を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的には蒸気タービン内における水誘導を検出するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に蒸気管内の水又は低温蒸気として定義することができる蒸気タービン内における水誘導は、タービンの寿命及び性能に悪影響を与える問題である。この異常は、現在は蒸気管内の低温測定値又は急激な温度変化によって検出されている。これらの温度読取り値は一般的に、外側シェル内の軸方向の幾つかのポイントにおいて蒸気管のケーシングの上半分及び下半分内に対として取付けられた熱電対を用いて取得される。正常条件下では、下方及び上方の熱電対は、ほぼ同じ温度を示すことになる。しかしながら、上方熱電対が本質的に不変のままで下方熱電対が急激に温度降下すること或いは両方の熱電対において測定した温度が所定レベル以下に大きく降下することは、蒸気管内における水の存在を示す可能性がある。
【0003】
一般的に、公知のシステムは、熱電対の対における急激な温度差に依存して水誘導を検出する。これらのシステムは、上方及び下方熱電対間の温度差が所定の限界値を超えた時に、水誘導が発生していることを示す。しかしながら、蒸気タービンの通常運転中に起こる変動により、そのようなシステムは、それが発生してないのに水誘導が発生していることを示すことになる。従って、それらの公知のシステムは、多くの「誤認警告」を発する。時が経つにつれて、定期的に発生する誤認警告により、実際の水誘導が無視されることになる可能性があり、実際の水誘導により、タービンシステムの健全性に重大な影響をおよぼすおそれがある。水誘導が発生していないことをシステムオペレータに確認させることになる誤認警告は、最小でも時間及び資源を浪費させることになる。
【特許文献1】米国特許第6,773,227B2号公報
【特許文献2】米国特許第5,794,446号公報
【特許文献3】米国特許第5,791,147号公報
【特許文献4】米国特許第5,412,936号公報
【特許文献5】米国特許第5,131,230号公報
【特許文献6】米国特許第4,995,257号公報
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0016175A1号公報
【特許文献8】米国特許出願公開第2004/0136827A1号公報
【特許文献9】欧州特許第1500792A2号公報
【特許文献10】欧州特許第0605156B1号公報
【特許文献11】欧州特許第0605156A2号公報
【特許文献12】日本特許出願公開第2003/193807号公報
【特許文献13】日本特許出願公開第2001/193417号公報
【特許文献14】日本特許第11148310号公報
【特許文献15】日本特許第05321608号公報
【特許文献16】日本特許第05125908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、蒸気タービン内で水誘導が発生している時点を高い信頼性で判定するための方法及びシステムの改善が必要とされている。本発明のその他の目的、特徴及び利点は、以下の説明及び図面並びに特許請求の範囲の全体を通して明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本出願は、蒸気タービン内における水誘導を検出する方法を記述することができ、本方法は、蒸気タービンの蒸気管のうちの1つの温度を測定する段階と、測定した温度から、蒸気管内に温度上昇をその後伴う温度降下があったか否かを判定する段階とを含む。幾つかの実施形態では、本方法はさらに、温度降下の変化率がその後の温度上昇の変化率を超えたか否かを判定する段階を含むことができる。本方法はさらに、蒸気管内に温度上昇をその後伴う温度降下がありかつその温度降下の変化率が温度上昇の変化率を超えた場合には、水誘導の可能性があると判定する段階を含むことができる。本方法はさらに、蒸気タービンがその最大出力の約20%で作動しているか否かを判定する段階と、蒸気タービンがその最大出力の約20%の最小出力で作動していると最初に判定しない限り、水誘導の可能性はないと判定する段階とを含むことができる。
【0006】
別の実施形態では、本方法は、蒸気タービンの蒸気シールシステムの温度を判定する段階と、蒸気シールシステムの温度が、所定温度以下に降下しかつ所定時間にわたって所定レベル以下の状態を保つ場合には、水誘導の可能性があると判定する段階とを含むことができる。蒸気システムの温度を判定する段階は、蒸気タービン補助システムの蒸気シールシステムパイプの出口における温度を測定する段階を含むことができる。所定温度は、約200〜300°F(93〜149℃)とすることができ、また所定時間は、約10秒とすることができる。
【0007】
別の実施形態では、蒸気管のうちの1つの温度を測定する段階は、0.5〜2.5秒の時間間隔で温度測定値を取得する段階を含むことができる。温度降下があったか否かを判定する段階は、所定数の連続した降下温度測定期間の各々にわたって、温度が少なくとも所定量だけ降下したか否かを判定する段階を含むことができる。所定量は、約3°F(1.7℃)とすることができ、また連続した降下温度の測定期間の所定数は、6とすることができる。
【0008】
別の実施形態では、温度降下があったか否かを判定する段階は、温度が少なくとも所定数の連続した降下温度測定期間にわたって降下したか否かを判定する段階を含むことができる。温度上昇があったか否かを判定する段階は、温度が少なくとも所定数の連続した上昇温度測定期間にわたって上昇したか否かを判定する段階を含むことができる。連続した降下温度測定期間の所定数及び連続した上昇温度測定期間の所定数は、6とすることができる。
【0009】
別の実施形態では、温度降下の変化率がその後の温度上昇の変化率を超えたか否かを判定する段階は、所定数の連続した降下温度測定値についての平均変化率を計算する段階と、所定数の連続した上昇温度測定値についての平均変化率を計算する段階と、所定数の連続した降下温度測定値についての平均変化率を所定数の連続した上昇温度測定値についての平均変化率と比較する段階とを含むことができる。蒸気管のうちの1つの温度を測定する段階は、高圧セクションの第1段ボウル、高圧セクションの排出ボウル、中圧セクションの第1段ボウル及び/又は中圧セクションの排出ボウル内で行うことができる。
【0010】
本出願はさらに、蒸気タービン内における水誘導を検出する方法を記述することができ、本方法は、一定の時間間隔で蒸気タービンの蒸気管のうちの1つの温度を測定する段階と、温度測定値を記録する段階と、記録した温度測定値から、蒸気管の緩やかな温度上昇をその後伴う急激な温度降下があったか否かを判定する段階とを含むことができる。本方法の幾つかの実施形態はさらに、蒸気管の温度降下の変化率及び蒸気管の温度上昇の変化率を計算する段階を含むことができる。そのような実施形態では、蒸気管の緩やかな温度上昇をその後伴う急激な温度降下は、その温度降下の変化率が温度上昇の変化率を超えるような温度上昇をその後伴う温度降下を含むことができる。
【0011】
別の実施形態では、蒸気管のうちの1つの温度を測定する段階は、0.5〜2.5秒の時間間隔で温度測定値を取得する段階を含むことができる。蒸気管の急激な温度降下があったか否かを判定する段階は、所定数の連続した温度降下測定において温度降下があったか否かを判定する段階を含むことができ、また蒸気管の緩やかな温度上昇があったか否かを判定する段階は、所定数の連続した温度上昇測定において温度上昇があったか否かを判定する段階を含む。蒸気管の急激な温度降下は、所定数の連続した降下温度測定の間の平均変化率が所定の率を超えるような温度降下を含むことができる。蒸気管の緩やかな温度上昇は、所定数の連続した温度上昇測定の間の平均変化率が所定の率よりも小さいような温度上昇を含むことができる。
【0012】
本発明のこれらの及びその他の特徴は、図面及び特許請求の範囲と関連させて好ましい実施形態の以下の詳細な説明を精査する時、明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に幾つかの図全体を通して様々な符号が同様な要素を表している図面を参照すると、図1は、本発明の実施形態、すなわち蒸気タービンの蒸気管内における水誘導の存在を正確に予測する方法及びシステムにおいて使用することができるデータ流れ図100を示している。データ流れ図100は、水誘導異常を予測するために使用する3つの主要なデータ流れを含むことができる。幾つかの実施形態では、データ流れ図100は、蒸気タービンが以下の状態、すなわちアクティブターニングギヤ、加速、速度保持、無負荷全速及び/又は負荷全速で作動している間に使用することができる。
【0014】
これらの主要データ流れは、DWATT102から開始することができかつ蒸気タービンの出力に関連したDWATTデータ流れと、Temp.Tag104から開始することができかつ蒸気管の温度に関連したTemp.Tagデータ流れと、TTSSH106から開始することができかつ蒸気シールシステムの温度に関連することができるTTSSHデータ流れとを含むことができる。本明細書に記載した発明概念から逸脱せずに、本明細書に記載したデータ流れは幾らか変更することができ或いはデータ流れのこれら3つの全てよりも少ない数のデータ流れを使用することができることは、当業者には分かるであろう。図1の3つのデータ流れ全ての使用は、単に例示的実施形態であるに過ぎない。一層詳細に後述するように、本プロセスは、Temp. Tagデータ流れのみを使用することによって、DWATTデータ流れと共にTemp. Tagデータ流れを使用することによって、TTSSHデータ流れのみを使用することによって、或いは図1に示すデータ流れの3つ全てを使用することによって水誘導を判定するのに成功裏に使用することができる。
【0015】
DWATTデータ流れは、DWATTブロック102におけるDWATT読取り値を含むことができる。この読取り値は、蒸気タービンの出力を示すことができ、蒸気タービンシステムを制御しかつ作動させるための当技術分野で公知の制御システム及び方法により取得することができる。公知の制御及び作動システムの実施例には、Speedtronic(登録商標) Mark V(登録商標)及びMark VI(登録商標)システムが含まれる。DWATT読取り値が取得されると、プロセスは、判定ブロック108へ進むことができ、そこでDWATTが少なくとも20%定格であるか否か、すなわち蒸気タービンがその最大出力の20%で作動しているか否かについて判定を行うことができる。この判定結果が「yes」である場合には、プロセスは、ANDブロック110(その動作ついては、一層詳細に後述する)へ続くことができる。判定結果が「no」である場合には、プロセスは、NO ACTION REQUIREDブロック112へ続き、そこで蒸気タービン内に水誘導が存在している可能性がない、従って何らの措置も必要でないと判定することができる。上記で使用した20%のレベルは、単に例示的なものに過ぎず、このレベルは、本明細書に記載した発明概念から逸脱せずに、幾分高い値又は低い値に調整することができることは、当業者には分かるであろう。
【0016】
Temp. Tagブロック104において、蒸気タービン内の1つ又はそれ以上の位置からの温度読取り値が取得される。これらの位置は、蒸気タービンシステムの高圧セクションの第1段ボウルの蒸気管からの温度読取り値を含むことができる。この位置で取得した温度は、蒸気管の金属温度を反映することができ、熱電対のような装置及び当技術分野で公知のその他のシステムによって取得しかつ記録することができる。
【0017】
高圧セクションの第1段ボウルにおける温度読取り値は、単一の又は対の測定値として取得することができる。単一の測定値として取得した場合には、温度読取り値は、蒸気管上の単一のポイントを測定することによって、高圧セクション内の蒸気管の金属温度を記録することができる。対として取得した場合(工業においてまた水誘導の検出のために使用する公知システムにおいて一般的であるような)には、第1の測定値は、蒸気管の上半分の金属温度を記録することができ、また第2の測定値は、蒸気管の下半分の金属温度を記録することができる。次に2つの測定値を平均して、管内の特定ポイントにおける蒸気管の金属温度を得ることができる。単一の又は平均した対の測定値は、短い時間間隔(例えば、0.5〜2.5秒毎のような)で取得することができ、また読取り値は、記録した温度読取り値をその後の計算において参照しかつ使用することができるような当技術分野で公知の方法に従って記録することができる。このことは、その幾つかについて前述した蒸気タービンの公知の制御及び作動システムを使用することによって達成することができる。さらに、本明細書に記載した本発明プロセスでは高圧セクションの第1段ボウル内の複数の温度位置を採用することができることは、当業者には分かるであろう。
【0018】
蒸気タービンについてのその他の位置からの温度読取り値もまた、Temp. Tagブロック104において取得しかつ記録することができる。例えば、温度読取り値は、蒸気タービンシステムの高圧セクションの排出ボウルの蒸気管において取得しかつ記録することができる。上記で取得した温度と同様に、これらの測定値はまた、前述したように単一の測定値又は対の測定値として取得することができる。単一の又は対の測定値は、短い時間間隔(例えば、0.5〜2.5秒毎のような)で取得することができ、また読取り値は、記録した温度読取り値をその後の計算において参照しかつ使用することができるような当技術分野で公知の方法に従って記録することができる。本明細書に記載した本発明プロセスでは高圧セクションの排出ボウル内の複数の温度位置を採用することができることは、当業者には分かるであろう。
【0019】
Temp. Tagブロック104において、温度読取り値はまた、中圧セクションの第1段ボウルの蒸気管において取得しかつ記録することもできる。この測定値もまた、上述したように単一の測定値又は対の測定値として取得することができる。単一の又は対の測定値は、短い時間間隔(例えば、0.5〜2.5秒毎のような)で取得することができ、また読取り値は、記録した温度読取り値をその後の計算において参照しかつ使用することができるような当技術分野で公知の方法に従って記録することができる。本明細書に記載した本発明プロセスでは中圧セクションの第1段ボウル内の複数の温度位置を採用することができることは、当業者には分かるであろう。
【0020】
Temp. Tagブロック104において、温度読取り値はまた、蒸気タービンシステムの中圧セクションの排出ボウルの蒸気管において取得しかつ記録することができる。上記で取得した温度と同様に、これらの測定値もまた、上述したように単一の測定値又は対の測定値として取得することができる。単一の又は対の測定値は、短い時間間隔(例えば、0.5〜2.5秒毎のような)で取得することができ、また読取り値は、記録した温度読取り値をその後の計算において参照しかつ使用することができるような当技術分野で公知の方法に従って記録することができる。本明細書に記載した本発明プロセスでは中圧セクションの排出ボウル内の複数の温度位置を採用することができることは、当業者には分かるであろう。さらに、蒸気タービンのその他のセクションにおけるその他の位置もまた、必要な温度測定値を取得するために使用することができることは、当業者には分かるであろう。
【0021】
ブロック114において、ブロック104において取得した温度測定値は、以前に記録した温度測定値と共に分析して、一般的にプロセスが、緩やかな温度上昇をその後伴う急激な温度降下をチェックすることができるようにすることができる。幾つかの実施形態では、これは、温度降下の変化率が温度上昇の変化率よりも大きいような、温度上昇をその後伴う温度降下として定義することができる。その他の実施形態では、急激な温度降下は、所定の率を超えた温度降下率として定義することができる。緩やかな温度上昇は、所定の率よりも小さい温度上昇率として定義することができる。そのようなパターン、すなわち緩やかな温度上昇をその後伴う急激な温度降下は、蒸気タービン内における水誘導異常を示すことができる。このプロセスの特定の実施形態(すなわち、それによって本方法が緩やかな温度上昇をその後伴う急激な温度降下をチェックするプロセス)は、図2に関連する記載において一層詳細に説明する。この状態を検出するその他の方法があり、本明細書ではそれらの方法の幾つかを説明していること、また図2で説明するプロセスは、単に例示的なものであることは、当業者には分かるであろう。判定ブロック116において、ブロック114の条件が満たされた場合には、プロセスは、ANDブロック110へ進むことができる。しかしながら、ブロック114に記載した条件が存在しないことが判明した場合には、プロセスは、ブロック116からNO ACTION REQUIREDブロック112へ進み、そこで蒸気タービン内には水誘導が存在している可能性がなく、従って何らの措置も必要でないと判定することができる。
【0022】
ANDブロック110において、ブロック108及びブロック116からの入力に対して「and」論理関数を実行することができる。従って、ブロック108及びブロック116による条件の両方が満たされた場合(すなわち、ブロック108及びブロック116の両方の結果が「yes」である場合)には、プロセスは、ブロック118へ続き、そこで蒸気タービン内には水誘導が存在する可能性があると判定することができる。システムは次に、当技術分野で公知の方法に従って、警報、Eメール等により、蒸気タービン内に水誘導が存在する可能性があること及び是正措置を取るべきであることをオペレータに警告する。しかしながら、ブロック108及びブロック116からの「yes」入力の一方又は両方が存在しない場合には、プロセスは、ブロック118へは続かないことになる。その代わり、プロセスは、NO ACTION REQUIREDブロック112へ続き、そこで蒸気タービン内には水誘導が存在している可能性がなく、従って何らの措置も必要でないと判定されることになる。
【0023】
TTSSHデータ流れは、ブロック106におけるTTSSH温度読取り値を含むことができる。TTSSH温度読取り値は、蒸気タービンの蒸気シールシステムの温度を示すことができる。この読取り値は、蒸気タービン補助システムの蒸気シールシステムパイプの出口における温度を記録することによって取得することができる。この温度測定値は、熱電対のような装置及び当技術分野で公知のシステムによって取得することができる。ブロック106におけるTTSSH読取り値はまた、以前の読取り値をその後の計算において参照しかつ使用することができるような当技術分野で公知の制御システムによって記録することができる。判定ブロック120において、TTSSH温度が所定レベル以下に降下しかつ所定時間にわたってほぼ安定した状態を保っているか否かの判定を行うことができる。所定温度レベルは、約200〜300°F(93〜149℃)とすることができるが、この温度は一般的に蒸気タービン内で蒸気が凝縮する温度に基づいているので、この温度レベルは、異なる蒸気タービン用途及び蒸気タービンが作動する温度に応じて変更することができる。図1に示すように、所定温度レベルは、250°F(121℃)とすることができる。
【0024】
温度が降下温度測定においてほぼ安定した状態に保たれなくてはならない時間は、約5〜15秒とすることができるが、これもまた、異なる用途に応じて変更することができる。幾つかの用途の場合には、温度がほぼ安定した状態に保たれなくてはならない時間は、約10秒とすることができる。ブロック120において条件が満たされた場合、すなわち「yes」の応答が得られた場合には、プロセスは、ブロック118へ進み、そこで蒸気タービン内に水誘導が存在する可能性があると判定することができる。ブロック108の問合せにより「no」の結果が得られた場合には、プロセスは、NO ACTION REQUIREDブロック112へ続き、そこで蒸気タービン内には水誘導が存在している可能性がなく、従って何らの措置も必要でないと判定されることになる。
【0025】
図2は、図1のTemp. Tagデータ流れ要素の実施形態を一層詳細に説明したデータ流れ図200である。プロセスは、Temp. Tagブロック201から開始し、ここで蒸気タービン内の上記の位置のうちの1つからの温度読取り値を取得することができる。これらの温度位置は、高圧セクションの第1段ボウル、高圧セクションの排出ボウル、中圧セクションの第1段ボウル、中圧セクションの排出ボウル又はその他の部位における蒸気管を含むことができる。プロセスは、ブロック201において温度位置のうちの1つにおける現在の読取り値を測定することができ、またデータ流れ図200は、蒸気タービン内の温度位置のうちの1つからデータが受けた時における、本発明の実施形態によるこのデータの処理手順を表すことができる。
【0026】
ブロック201において温度読取り値が取得されると、プロセスは、ブロック202へ進むことができ、そこで以前に記録したサンプルの平均値を計算することができる。幾つかの実施形態では、以前の3つの温度測定値(すなわち、現在の温度測定値に先立って取得しかつ記録した温度測定値)を平均して平均温度値を得ることができる。平均値を得るために、より多数の又はより少数の以前の温度測定値を使用することができることは、当業者には分かるであろう。さらに、幾つかの実施形態では、プロセスは、単一の以前の温度測定値のみを使用し、従って平均する段階を回避することができる。
【0027】
ブロック204において、プロセスは、現在の温度測定値とブロック202において求めた平均温度値との差を計算することができる。ブロック204において計算した差に基づいて、プロセスは、ブロック206へ進んで、温度位置における温度が上昇している(ブロック204において求めた差が0よりも大きい場合)又は降下している(ブロック204において求めた差が0よりも小さい場合)か否かを判定することができる。温度が上昇していると判定した場合には、プロセスは、判定ブロック208へ進むことができる。温度が降下していると判定した場合には、プロセスは、判定ブロック210へ進むことができる。
【0028】
判定ブロック210において、プロセスは、降下温度読取り値が急激に降下しているかどうかを判定することができ、幾つかの実施形態では、急激な降下は、所定の率よりも大きな率として定義することができる。幾つかの実施形態では、所定の率は、測定値間における−3°Fよりも大きい率とすることができる。この計算は、例えばブロック204において計算した温度差を基準にし、次に特定数の連続したサンプルが所定の率を超えているか否かを判定することによって達成することができる。幾つかの実施形態では、6つの連続したサンプルを使用することができる。従って、判定ブロック210が6つの連続したサンプルについて現在値と平均値との間の差が−3°F(約−1.7℃)であると判定した場合には、プロセスは、温度が急激に降下していると判定することになる。用途に応じて、所定の率としてより大きい又はより小さい値の温度差を使用することができること及びより多数の又はより少数の連続したサンプルを必要とするようにすることができることは、当業者には分かるであろう。本明細書に示した値は、幾つかの用途で有効であるが、それらの値は、単に例示的なものに過ぎない。
【0029】
判定ブロック210において、温度測定値が急速に減少していると判定した場合には、プロセスは、ブロック220へ進むことができる。判定ブロック210において、温度測定値が急速に減少していないと判定した場合には、プロセスは、ブロック222へ進み、そこで水誘導が存在している可能性がなく、何らの措置も必要でないと判定することができる。さらに、判定ブロック210において、降下温度に関連したデータは、温度降下が温度上昇をその後伴っていたか否かに関する回答を得ることができるようになった判定ブロック214に送ることができる。このデータの流れは、図2に点線で表している。
【0030】
判定ブロック208において、連続したサンプル期間にわたって温度が上昇しているか否かについての判定を行うことができる。幾つかの実施形態では、プロセスは、6つの連続した期間にわたって温度が上昇しているかどうかを判定することができる。別の実施形態では、プロセスは、連続した期間にわたって温度が、緩やかな温度上昇を定義するために使用することができる所定の率よりも小さい率で上昇していたか否かを判定することができる。従って、図2に示すようにブロック208において、プロセスは、判定ブロック206において行った計算による記録した結果を返り見て、温度が6つの連続したサンプルについて上昇していたかどうかを判定することができる。(図2に示していない別の実施形態では、プロセスは、以前の温度測定値及び計算値を分析して、温度が上昇した率が所定の率よりも小さいか否かを判定することができる。)ブロック208において、6つの連続したサンプルについて温度が上昇していなかったと判定した場合には、プロセスは、ブロック212へ進み、そこで蒸気タービン内には水誘導が存在している可能性がないこと及び何らの措置も必要でないことを判定することができる。しかしながら、ブロック208において、6つの連続したサンプルについて温度が上昇していたと判定した場合には、プロセスは、ブロック214へ進むことができる。さらに、ブロック206及び208において行った上昇温度測定及び計算に関連したデータは、ブロック216に送る(図2に点線で表したように)ことができ、上昇温度の変化率を判定することができるが、このことに関しては一層詳細に後述する。プロセスは、6つよりも多数の又は少数の上昇温度の連続したサンプルを必要とするようにすることができることは、当業者には分かるであろう。さらに、連続していない上昇温度読取り値でも可能になる処理規定も、成功裏に使用することができる。例えば、そのような処理規定は、以前の7つの温度読取り値のうちの6つにおいて温度が上昇していることを必要とするようにすることができる。ブロック210において降下温度について行う計算に関連して、同様な率を採用することができる。
【0031】
判定ブロック214において、プロセスは、過去の温度読取り値が温度上昇をその後伴う温度降下があったことを示しているか否かを判定することができる。これは、例えばブロック208で確認された6つの連続した上昇温度読取り値に連続した降下温度が先行したか否かを判定することによって判定することができる。必要とする連続した降下温度の数は、その数が約6つであるが、この数は異なる用途に応じて変化させることができる。図2に点線で表したように、プロセスは、降下温度に関する情報を判定ブロック210から判定ブロック214に送ることができる。判定ブロック214が温度上昇をその後伴う温度降下があったと判定した場合には、プロセスは、ANDブロック218へ続くことができる。判定ブロック214が温度上昇を伴う温度降下がなかったと判定した場合には、プロセスは、ANDブロック212へ続き、そこで何らの措置も必要でないと判定することができる。
【0032】
ブロック216において、連続した上昇温度測定値についての変化率を計算することができる。これは、6つの連続した温度読取り値の各々間の差を平均することによって計算することができる。6つの連続したサンプルの使用は、単に例示的なものに過ぎず、より多数の又はより少数の連続した(又は、場合によっては連続していない)温度読取り値を使用することができる。同様に、ブロック220において、過去の6つの連続した降下温度測定値について変化率を計算することができる。これは、連続した(又は、前述したように、場合によっては連続していない)温度測定値の各々間の差を平均することによって求めることができる。次に、ブロック216及びブロック220で求めた変化率は、ブロック224に送ることができ、そこで降下温度測定値の変化率と上昇温度測定値の変化率との間の差を求めることができる。これは、降下温度測定値の変化率から上昇温度測定値の変化率を減算することによって計算することができる。
【0033】
判定ブロック226において、プロセスは、降下温度測定値の変化率が上昇温度測定値の変化率よりも大きいか否かを判定することができる。これは、ブロック224において行った計算結果が正又は負であるかどうかを判定することによって判定することができる。降下温度測定値の変化率が上昇温度測定値の変化率よりも大きい場合には、プロセスは、問合せに対する「yes」の判定と共にANDブロック218へ進むことができる。降下温度測定値の変化率が上昇温度測定値の変化率よりも大きくない場合には、プロセスは、ブロック222へ進むことができ、そこで水誘導が存在している可能性がなく、何らの措置も必要でないと判定することができる。
【0034】
ANDブロック218において、ブロック214及びブロック226からの入力に対して「and」論理関数を実行することができる。従って、ブロック214及びブロック226の両方が「yes」の判定をした場合には、プロセスは、図1に関連して前述したANDブロック110へ続くことができる。しかしながら、ブロック214又はブロック226のいずれか或いはその両方が「no」の結果になった場合には、プロセスは、ブロック218を通過して次へ続くことはないことになる。
【0035】
ANDブロック110において、プロセスは、ブロック108及びブロック218からの入力に対して「and」論理関数を実行することができる。前述したように、図2に関連した上記の説明は、ブロック114及びブロック116によって図1に示した分析の一層詳細な説明である。従って、ブロック218からの出力は、図1のブロック116の出力を表している。ブロック108及びブロック218(又は、図1を参照すると、ブロック116)からの条件の両方が満たされた場合には、プロセスは、ブロック118へ続き、そこで蒸気タービン内に水誘導が存在する可能性があると判定することができる。システムは次に、当技術分野で公知の方法に従って警報、Eメール等によって蒸気タービン内に水誘導が存在する可能性があること及び是正措置を取るべきであることをオペレータに警告することができる。しかしながら、ブロック108及びブロック218(又は、図1を参照すると、ブロック116)からの「yes」入力の一方又は両方が存在しない場合には、プロセスは、ブロック118へ続かないことになり、また何らの水誘導もプロセスによって表示されないことになる。
【0036】
流れ図200のデータ流れは、蒸気タービン内の単一の位置における温度測定値に基づいて水誘導の可能性を検出する本発明による例示的な方法を示している。本方法は、高圧セクションの第1段ボウル、高圧セクションの排出ボウル、中圧セクションの第1段ボウル、中圧セクションの排出ボウル又はその他の部位内のような蒸気タービン内の幾つかの位置からの温度データを使用して実行することができる。蒸気タービン内の複数の温度位置に本プロセスを適用することにより、水誘導の発生を検出する信頼性及び精度を高めるようにすることができる。しかしながら、特定の条件下では、複数の温度収集位置は、矛盾した結果を生じる、すなわち1つの位置が肯定的な結果を生じ、他の位置が否定的な結果を生じる場合がある。これらは、プロセスが水誘導の発生を表示することになる時点を判定するという付加的な処理規定セットを採用することによって解決することができる。例えば、プロセスは、該プロセスが水誘導の可能性があると見なす前に一定の割合の温度収集位置に水誘導を報告させるようにすることができる。幾つかの実施形態では、この割合は50%に設定することができるが、このレベルは、調整可能である。一部のその他の用途においてまたシステムオペレータの所望に応じて、水誘導の可能性及び是正措置の必要性を見出すのに、温度測定位置のいずれかにおける水誘導の単一の判定で十分であると思われる場合もある。
【0037】
本明細書に記載した方法は、本明細書の記載及び当技術分野で公知の装置又はシステムによって実行することができる。温度測定値は、熱電対又はその他の同様な装置によって取得することができる。温度測定値の記録及びデータ処理は、当技術分野で公知の幾つかのソフトウェアパッケージによって行うことができる。前述したように、そのようなソフトウェアパッケージは一般に、蒸気タービンシステムを制御しかつ作動させるために使用されている。
【0038】
従って、以上の記載は、単に本発明の原理を説明するものと考えている。本発明の特徴及び態様は、一例としてのみ説明又は図示したものであり、従って本発明の必須の又は本質的な要素として解釈されることを意図するものではない。以上の記載は、単に本発明の特定の例示的な実施形態に関するものであるに過ぎず、いずれかの特許請求項によって特定した本発明の技術思想及び技術的範囲から逸脱することなく、本発明に対して多くの変更及び追加を加えることができることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による水誘導検出アルゴリズムの実施形態の流れ図。
【図2】図1に示す流れ図の構成要素の一層詳細な流れ図。
【符号の説明】
【0040】
100 データ流れ図
200 データ流れ図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービン内における水誘導を検出する方法であって、
前記蒸気タービンの蒸気管のうちの1つの温度を測定する段階と、
前記測定した温度から、その後に続く温度上昇を伴った温度降下が前記蒸気管内において発生しているか否かを判定する段階と、
を含む方法。
【請求項2】
前記温度降下の変化率が前記その後の温度上昇の変化率を超えたか否かを判定する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記蒸気管内においてその後に温度上昇を伴った温度降下があり且つ前記温度降下の変化率が前記温度上昇の変化率を超えた場合には、水誘導の可能性があると判定する段階をさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記蒸気タービンがその最大出力の20%で作動しているか否かを判定する段階と、
前記蒸気タービンがその最大出力の20%の最小出力で作動していると最初に判定しない限り、水誘導の可能性はないと判定する段階と、
をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記蒸気タービンの蒸気シールシステムの温度を判定する段階と、
前記蒸気シールシステムの温度が、所定温度以下に降下しかつ所定時間にわたって前記所定レベル以下の状態を保つ場合には、水誘導の可能性があると判定する段階と、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記蒸気管のうちの1つの温度を測定する段階が、0.5〜2.5秒の時間間隔で前記温度測定値を取得する段階を含む、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記温度降下があったか否かを判定する段階が、所定数の連続した降下温度測定期間の各々にわたって、前記温度が少なくとも所定量だけ降下したか否かを判定する段階を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記温度降下があったか否かを判定する段階が、前記温度が少なくとも所定数の連続した降下温度測定期間にわたって降下したか否かを判定する段階を含む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記温度上昇があったか否かを判定する段階が、前記温度が少なくとも所定数の連続した上昇温度測定期間にわたって上昇したか否かを判定する段階を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記温度降下の変化率が前記その後の温度上昇の変化率を超えたか否かを判定する段階が、
前記所定数の連続した降下温度測定値についての平均変化率を計算する段階と、
前記所定数の連続した上昇温度測定値についての平均変化率を計算する段階と、
前記所定数の連続した降下温度測定値についての平均変化率を前記所定数の連続した上昇温度測定値についての平均変化率と比較する段階と、
を含む、請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−224917(P2007−224917A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44823(P2007−44823)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】