蒸気加湿器
【課題】
水蒸気をノズルチップから噴霧する蒸気加湿器において、空調空気中の水滴の除去が充分なされる状態で噴霧する蒸気加湿器を提供する。
【解決手段】
高圧の水蒸気が供給される加湿管において、加湿管の表面の適所には加湿管内部に貫通する複数のノズルチップを設け、ノズルチップの入口先端部を加湿管の内壁よりも内側に突出させ、ノズルチップのノズル孔の孔径を0.03mm乃至1.0mmとし、ノズルチップの先端面は、ノズル孔を中心として擂り鉢状の斜面を設け、加湿管の下側底部にはスチームトラップを連接し、スチームトラップには所望の長さの排水口に接続した凝縮水排水用配管を連接した蒸気加湿器。
水蒸気をノズルチップから噴霧する蒸気加湿器において、空調空気中の水滴の除去が充分なされる状態で噴霧する蒸気加湿器を提供する。
【解決手段】
高圧の水蒸気が供給される加湿管において、加湿管の表面の適所には加湿管内部に貫通する複数のノズルチップを設け、ノズルチップの入口先端部を加湿管の内壁よりも内側に突出させ、ノズルチップのノズル孔の孔径を0.03mm乃至1.0mmとし、ノズルチップの先端面は、ノズル孔を中心として擂り鉢状の斜面を設け、加湿管の下側底部にはスチームトラップを連接し、スチームトラップには所望の長さの排水口に接続した凝縮水排水用配管を連接した蒸気加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水滴が混入しない蒸気加湿器に関し、特に、空気調和機に用いる蒸気加湿器の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内の空気調和において、空気の温度を適正に維持するとともに、適正の湿度を保つために加湿器が設けられている。
これら従来の空気調和機に組み込まれた加湿器は、例えば、特許文献1に開示され、給水管に設けたスプレー式ノズルから水が霧状に散布される。このスプレー式加湿器からの散布された噴霧は、ノズル形状が複雑になり、水滴に戻る量が多く効率が悪く、必ずしも湿度の制御には寄与しないばかりか、大量の排水が発生し、その処理装置を設けなければならず、更に問題なのは、この空調された空気中に水滴が混入していると、空調機内やダクトに飛散し、設備に害を与える恐れがあるので、極力避けなければならない。
このため、近時、加湿器の加湿管には高圧の水蒸気を供給して、なるべく水滴を生じない蒸気噴霧が行われているが、ノイズの形状が簡単であるが、水滴除去は充分ではない。
ここで、従来の加湿管に水蒸気を供給する蒸気加湿器について説明すると、ノズルチップを加湿管に挿入したもの、或いは、加湿管自体にノズル孔を空けたタイプがあるが、設計加湿量により口径が決定されるのが普通であるが、そのノズル口径はφ3mm〜φ6mm程度である。
【特許文献1】実開平4−90826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたもので、水蒸気をノズルチップから噴霧する蒸気加湿器において、空調空気中の水滴の除去が充分なされた状態で噴霧する蒸気加湿器を提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、蒸気加湿器において、高圧の水蒸気が供給される加湿管において、該加湿管の表面の適所には加湿管内部に貫通する複数のノズルチップを設け、該ノズルチップの入口先端部を加湿管の内壁よりも内側に突出させ、該ノズルチップのノズル孔の孔径を0.03mm乃至1.0mmとしたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の蒸気加湿器において、前記ノズルチップの先端面は、ノズル孔を中心として擂り鉢状の斜面を設けたことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の蒸気加湿器において、前記加湿管の下側底部にはスチームトラップを連接し、更に、スチームトラップには所望の長さの排水口に接続した凝縮水排水用配管を連接したことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3に記載の蒸気加湿器を、空気調和機に用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明によれば、ノズルチップの入口先端部を加湿管の内壁よりも内側に突出させて凝縮水が入口を通過しないようにし、更に、ノズルチップのノズル内径を0.03mm乃至1.0mmと、ノズル径を小さくすることで、水滴は狭い隙間を通過する際に破砕され粒径がこまかく、表面積が大きくなり、空気との接触面積が増え再蒸発しやすくなる(a.水滴の粒径を小さくする破砕効果)。また、水は圧力が高いほど保持できるエネルギーが大きく、水滴が噴霧によって加湿管での高圧から大気圧まで減圧されると、その時に水滴の一部が蒸発する(b.フラッシュ蒸気による蒸発効果)ため、噴霧空気中の凝縮水の混在量を少なくすることができる。
請求項2の発明によれば、前項の効果に加えて、ノズル先端にテーパー加工を施したので、ノズルチップのノズル孔32に目詰まりが生じた場合、先端を突いて詰まりを取り除く際の掃除具を挿入しやすい。また、先端をテーパーにすることで、蒸気がテーパー面に沿い気流が拡散しやすく再蒸発距離を短く出来る。
請求項3の発明によれば、前項までの効果に加えて、加湿始動時の大量の凝縮水がスチームトラップから排水されるが、加湿管のノズルチップからの凝縮水の噴霧を少なくすることができ、凝縮水の発生が少量となる通常運転時においても、凝縮水のみを連続排水するので、高圧蒸気が空調機内に噴霧される事が無い。
また、蒸気加湿器を設計する場合にはノズルチップからの噴霧量のみを考慮して設計するが、スチームトラップを出た高温高圧の凝縮水が大気圧まで減圧されると、凝縮水の一部が再蒸発しフラッシュ蒸気となり、排出凝縮水の量が不正確となるので、凝縮水排水用管は適度な長さを持たせて放熱面積を増やすことにより、フラッシュ蒸気を再凝縮させて、精密な加湿制御を行うことができる。
請求項4の発明によれば、前項までの効果に加えて、本蒸気加湿器を空気調和機に用いれば、水滴が空調機内やダクトに飛散することが少なく、設備に害を与えることも防げる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の作用原理の概要を図1、図2を参照して説明する。
蒸気加湿器において、高圧の水蒸気が供給される加湿管2内は、水蒸気流aと凝縮水bとが混在しているが、多くは加湿管2の内壁面21に付着し、大粒の水滴b1になって管底22に移動し貯留されるが、途中にノズル開口23があると水蒸気aと共にこの水滴b1がノズルから外気に噴出されてしまう。このことを、図1で説明すると、ボイラー等から供給される水蒸気aは、途中の配管や加湿管2での放熱により一部は凝縮水b1となり、加湿管2の内部は水蒸気aと凝縮水bが混在した状態で、大凡図1(a)の状態である。
図1(a)において、加湿管2の内壁面21に対向する外側表面は常に外気に触れているので、内壁面21には蒸気の熱交換により凝縮水(水滴)b1が発生し、この凝縮水b1は内壁面21を伝って流れ落ち、管底22に凝縮水b2が滞留する。勿論、溜まった凝縮水b2は適宜排水する。
ここで、単に開口23が設けられただけの加湿管2の構成であると、図1(b)に示すように、凝縮水bは加湿管2の内壁面21を伝わり、凝縮水b1は水蒸気aと共に外部に噴霧されてしまう。また、図1(c)のようにノズル開口23が上部であっても同様である。
【0007】
そこで、図2(a)に示すように、加湿管2に蒸気噴霧のための開口2にノズルチップ3を挿入固着し、このノズルチップ3の入口先端部31を、加湿管2の内壁面21から4mm以上の長さに突出させることで、凝縮水bがノズルチップの入口を通過しないようにすれば、水蒸気aが外部に噴霧されないと思われる。しかし、実際は、図2(b)に模擬的に図示したように、加湿管2の内部は明確に蒸気と凝縮水に分かれているわけではなく、蒸気aの流れによって凝縮水bは加湿管2内で激しく動くので、一部は微細な水滴b3となって蒸気とともに噴出する。したがって、ノズルチップ3の入口側の一部を加湿管2の内壁面21に突出しただけでは、噴霧気中の水滴除去には不十分である。
本発明者は、ノズルチップ3のノズル孔32の孔径φd=0.03〜1.0mmの極小とすることで、ノズルチップ3から飽和蒸気のみを噴霧し、水滴が極めて少なくなることを見出した。
【0008】
このことは、ノズル孔32の孔径を小さくする事で、水滴は狭い隙間を通過する際に破砕され粒径が細かくなり、例えば、粒径が半分になれば水滴の体積は1/8に、表面積は1/4になる。つまり、噴霧される水滴の量が同じで粒径が半分の場合、水滴の表面積は8/4=2倍になり、同じ体積でも表面積が大きいほど空気との接触面積が増え、再蒸発しやすくなることから、水滴は極めて少なくなる。
また、水は圧力が高いほど保持できるエネルギー(エンタルピー)が大きく、水滴が噴霧によって大気圧まで減圧されると、保持できないエネルギーは蒸発熱として放出され、その時に水滴の一部が蒸発し(フラッシュ蒸気)、減圧量が大きいほど、水滴はより多く蒸発することからも、水滴は極めて少なくなる。具体的には、加湿管2の内部は通常200kPaGなど高圧で、噴霧により大気圧(=0PaG)まで減圧されるので、フラッシュ蒸気は多くなる。
そして、本発明者は、ノズル孔32の孔径を小さくすることにより、
a.水滴の粒径を小さくする破砕効果
b.フラッシュ蒸気による蒸発効果
の相乗効果で、特に、孔径を極めて小さな1.0mm以下の極小とすることで、この効果が急激に噴霧蒸気が水滴の無い飽和蒸気に近づくことを見出した。
【0009】
以下、本発明の好適な蒸気加湿器を空気調和機に用いた実施例1について、図を参照して説明する。
図3は、空気調和機Aに蒸気加湿器1を設けたもので、空気調和機AはファンFが空気調和した空気SAをダクトや吹出装置(図示せず)等を介して各室内に送風するが、このファンFの上流には熱交換器Cと蒸気加湿器1とが配備され、外気OA及び還気RAを吸引し、この空気に蒸気加湿器1で適当な湿度を付与され、熱交換器Cで温度調整している。
本実施例1の蒸気加湿器1の全体の構成を図4に示して説明すると、10個のノズルチップ3を等間隔に挿入固着した長さ1000mm程度の加湿管2を設け、加湿管2の上流側には水蒸気供給装置(図示せず)が接続されるが、水蒸気供給装置からの配管41には調整供給量バルブ42とストレーナ43が設けられ、加湿管2の上流側の端部開口24に連接している。なお、配管41側の入口端部開口24の近傍には圧力計44が設けられている。
【0010】
他方、加湿管2の下流側の端部開口25には、スチームトラップ51と凝縮水排水用配管52が連接されるが、凝縮水排水用配管52は適度な長さを持たせるため螺旋状にし、末端を空調機排水口53に挿入する。前記の凝縮水排水用配管52は適度な長さとは水蒸気が冷やされ凝縮水となるような充分な長さである。
また、スチームトラップ51も加湿始動時に発生する凝縮水量をまかなえる容量が必要である。同様に、凝縮水排水用配管52の配管径も加湿始動時の多量の凝縮水を速やかに排水可能な配管径とすることが必要である。
前述した凝縮水排水構造の作用を説明すると、加湿始動時の大量の凝縮水が発生するが、発生した凝縮水はスチームトラップ51から速やかに排水されるので、加湿管2のノズルチップ3からの凝縮水bの噴霧を防止できる。また、凝縮水bの発生が少量となる通常運転時においても、凝縮水bのみを連続排水するので、加湿管2の内部の高圧蒸気がスチームトラップ51の排出側から空気調和機A内に噴霧される事は無い。
【0011】
また、加湿器1の全体構造を設計する場合は、通常、ノズルチップからの噴霧量のみを考慮して設計するが、スチームトラップ51から排出された高温高圧の凝縮水が大気圧まで減圧されと、凝縮水bの一部が再蒸発しフラッシュ蒸気となるが、フラッシュ蒸気の発生は空気調和機A内が加湿過多となり、精密な加湿制御を行う場合の妨げとなるので、本実施例では、凝縮水排水用配管52を螺旋状にして充分な長さを確保し、放熱面積を増やすことにより、フラッシュ蒸気を再凝縮させ凝縮水として排出している。なお、凝縮水排水用配管52の末端を空調機排水口53に挿入することで、凝縮水が周囲に飛散する事を防止している。
【0012】
次に、前述の加湿管2に装着した10個のノズルチップ3の形状について説明する。
図5に示すように、ノズルチップ3は基本的には中心にノズル孔32を有する円筒状で、加湿管2の表面側に位置するノズル孔32に対して直角に延びる前面がフラットの鍔状円板部33と、その背後で加湿管2の開口23に挿入する円筒部34とから構成され、円筒部34は加湿管2の開口23の肉厚よりも4mm以上長く、加湿管2に装着した際には、円筒部34の入口先端部31がL=4mm(加湿管2の内壁からの突出長さ)〜加湿管2の内径の約1/2程度の長さを加湿管2の内壁に突出させることで、凝縮水bがノズルチップの入口を通過しないようにして、凝縮水bが水蒸気aと共にが外部に噴霧されないようにしている。
前記のL=4mm(加湿管2の内壁からの突出長さ)〜加湿管2の内径の約1/2での4mm以上の意味は、凝縮水bの水滴の大きさはせいぜい4mm未満であるので、少なくとも4mm以上内壁から突出していれば凝縮水bが、ノズル孔32を通過することがなく、また、加湿管2は中心部ほど高温で凝縮水も少ないので、ノズル孔32はこの中心部で開口するようにしてもよく、この場合には、加湿管2の内径の約1/2の長さにまで張りだせば、ノズル孔32は加湿管2の中心部で開口して、その近傍の水蒸気aを吸い込んで噴霧するようになり凝縮水の含有量は少ないので好ましく、逆に、加湿管2の内径の1/2の長さ以上では、次第に管中心部から離れ、冷やされる加湿管2に近づく凝縮水bが多くなるので避けるべきであり、加えてノズルチップの材料費及び加工費が過大になり無駄となるからである。
【0013】
[ノズル孔径]
前記のノズルチップ3のノズル孔32を極めて小さくする作用原理は、前述したとおりであるが、ノズル孔32の内壁の直径(孔径)φd=0.03〜1.0mmの数値の根拠について、実験内容に基づいて説明する。
実験装置は、図4で説明した蒸気加湿器1を用い、図6に示すように、加湿管2のノズル孔32の方向を水平方向に高さ300mmの高さに位置させ、ノズル孔32の孔径を変えて、凝縮水が多いほど凝縮水で濡れる面積が大きくなり、同時に凝縮水の最大飛散距離も大きくなるので、その一番外側の位置である、凝縮水飛散距離の最大値を目視確認して測定した。
測定条件
(1)蒸気圧力:50kPaG、200kPaG、300kPaG
(2)周囲空気条件:DB20℃ RH40%
(3)10分間×3回の間に飛散した凝縮水飛散距離の最大値を目視確認
この実験結果を図7のグラフに示すが、この実験結果から判ることは、ノズル孔が従来同様のφ2mm〜φ7mmでは、凝縮水飛散距離の最大値が、50kPaGでは600mm〜800mm、200kPaGでは800mm〜ほぼ1000mm、300kPaGでは900mm〜ほぼ1200mmであり、ほぼφ1.5mmでは200kPaGで400mm〜600mmであった。そして、ノズル孔の孔径がφ1.0mm以下では、50kPaG、200kPaG、300kPaGの高圧水蒸気圧では、いずれも急激に減少し、凝縮水飛散距離の最大値は200mm以下となった。
このように、50〜300kPaG範囲の高圧水蒸気圧の気圧の高低で凝縮水飛散距離は多少異なるが、ノズル孔の孔径がφ1.0mmで、飛散距離の変化が急激でほぼ同じ傾向であり、ノズル孔の孔径が、おおむねφ1.0mm以下であれば、前述した効果が得られることが判る。
【0014】
前述したように、ノズル孔の孔径はφ1.0mm以下であれば、散布された雰囲気中に凝縮水が極めて少なくなり、水蒸気が噴霧することができれば孔径は小さい方が良いが、噴霧効率と製造(加工)のし易さから限度がある。
通常、孔径φ0.3mm以下の小径になるとドリルが細く、切削深さが深いと刃が破損しやすいので困難であるが、ノズル孔の内径の一部が所望の寸法(φd)になっていれば良く、それ以外の部分が円筒やテーパーになっていても差し支えないので、図8(a)に示すように、段落ち加工により孔径φ0.03mmまで可能である。
この製造方法は、先ず、図8(b)に示すように、円筒部34側の入口先端部31から、例えば、D=φ0.5mmで太い孔の段落ち加工孔35をドリルで途中のほぼ鍔状円板部33の厚さまで切削し、図8(c)に示すように、残り部分を本来のノズル孔径d=φ0.03mmの小径のドリルで仕上げれば、ドリル破損の割合を減らすことができ、容易に製造可能である。
【0015】
[先端テーパー形状]
図9(a)に示す実施例は、実施例1(図5)のノズルチップ3の直角に延びる鍔状円板部33のフラットな先端面にノズル孔32を中心として、擂り鉢状の先端テーパー形状の斜面36を設けたものである。
この先端テーパー形状斜面36を設けたことにより、ノズルチップ3のノズル孔32に目詰まりが生じた場合、先端にテーパー加工を施すことにより、掃除具を挿入しやすくなり、先端を突いて詰まりを取り除くことが容易になる。
また、先端に擂り鉢状のテーパー斜面を施すことにより、図10に示すように蒸気がテーパー斜面36の面に沿い気流が拡散しやすく(図面10:矢印a)、再蒸発距離を短く出来る。
この図9(a)に示す実施例の変形として、図9(b)に示すように、円筒部34の入口先端部31にテーパー形状の斜面37を設けてもよく、図9(c)は、図8(a)のように、段落ち加工孔35を設けて、テーパー形状の斜面36と組み合わせてもよい。
【0016】
[ノズルチップの管への取付加工]
従来の加湿管2へのノズルチップ3の装着方法として、ロー付け・ネジ込み・圧入方法がある。このうち、ネジ込みはノズルの取替えが容易であるが、図11(a)に示すように、加湿管2側の開口23に雌ネジを設けノズルチップ3の円筒部34に雄ネジを切ってネジ込むが、図11(b)に示すように、通常、加湿管2が断面円形であるためノズルチップ3の鍔状円板部33と加湿管2の接触部分に隙間xが生じ、水蒸気は高圧であるため、そこから蒸気が漏れる恐れがあった。特に、蒸気加湿器1においては、蒸気漏れは、加湿過多や蒸気の再凝縮による漏水事故につながる恐れがあり、避けなければならない。
こような、ネジ込みをはじめ、加湿管2とノズルチップ3の隙間を無くすには、次の方法がある。
(1)Oリング:加湿管2とノズルチップ3の間に耐熱性のOリング6を挿入する。これは図12に示すように、加湿管2のノズル開口23の外側側面とノズルチップ3の鍔状円板部33の下側平面331との隙間xをOリング6の変形により塞ぐものである。
(2)フラットプレス:加湿管2の一部をプレスして平坦にし、平坦部分にノズルチップ3を装着する。これは図13に示すように、加湿管2にプレスによる平坦部26と、ノズルチップ3の鍔状円板部33の下側平面331との平坦面同士が密着させて隙間を無くして塞ぐものである。なお、ノズルチップ3が加湿管2と接触する部分はノズルチップ3の鍔状円板部33の下側全面である必要は無なく一部で良いが、少なくとも巾2mm程度は必要である。このフラットプレスの場合を例にとると、フラットに加工可能なのは加湿管2の半分から、ノズルチップ3の鍔状円板部33の下側底面331の2mm程度が密着する位置までが可能である。
なお、ノズルチップ3が加湿管2と接触する部分は、この(2)プレスの場合、次の(3)切削の場合も、ノズルチップ3の鍔状円板部33の下側全面である必要は無なく一部で良いが、少なくとも巾2mm程度は必要である。
(3)フラット切削:加湿管2の管肉厚の一部を切削して平坦にして、平坦部分にノズルチップ3を装着する。これは図14に示すように、加湿管2に切削による平坦部27と、ノズルチップ3の鍔状円板部33の下側平面331との平坦面同士が密着させて隙間を無くして塞ぐものである。前述の実施例1等は、この切削により平坦部27を形成して、ノズルチップ3の鍔状円板部33の下側平面331と密着させ、ロー付けで加湿管2に固着している。
【0017】
以上のように、本実施例は、ノズルチップ3の入口先端部31を加湿管2の内壁面21よりも内側に突出させて凝縮水bがノズル入口(開口23)を通過しないようにし、更に、ノズルチップ3のノズル孔32の孔径を0.03mm乃至1.0mmと、ノズル孔径を小さくすることで、水滴は狭い隙間を通過する際に破砕され粒径が細り、表面積が大きくなり、空気との接触面積が増え再蒸発しやすくなる(a.水滴の粒径を小さくする破砕効果)。また、水は圧力が高いほど保持できるエネルギーが大きく、水滴が噴霧によって加湿管での高圧から大気圧まで減圧されると、その時に水滴の一部が蒸発(b.フラッシュ蒸気による蒸発効果)するため、噴霧空気中の凝縮水の混在量を少なくすることができ、ノズル先端の鍔状円板部33にテーパー加工36,37を施せば、ノズルチップ3のノズル孔32に目詰まりが生じた場合、先端を突いて詰まりを取り除く際の掃除具が挿入しやすい。
また、先端をテーパーにすることで、蒸気がテーパー面に沿い気流が拡散しやすく再蒸発距離を短く出来き、加湿始動時の大量の凝縮水がスチームトラップ51から排水されるが、加湿管2のノズルチップ3からの凝縮水の噴霧を少なくすることができ、凝縮水の発生が少量となる通常運転時においても、凝縮水のみを連続排水するので、高圧蒸気が空調機内に噴霧される事が無く、蒸気加湿器1を設計する場合にはノズルチップ3からの噴霧量のみを考慮して設計するが、スチームトラップ51を出た高温高圧の凝縮水が大気圧まで減圧されると、凝縮水の一部が再蒸発しフラッシュ蒸気となり、排出凝縮水の量が不正確となり制御しにくくなり、凝縮水排水用管は適度な長さを持たせて放熱面積を増やすことにより、フラッシュ蒸気を再凝縮させて、精密な加湿制御を行うことができる。更に、本蒸気加湿器1を空気調和機Aに用いれば、水滴が空調機内やダクトに飛散することが少なく、設備に害を与えることが防げるという作用をも有する。
なお、本発明の特徴を損うものでなければ、上記の実施例に限定されるものでないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の蒸気加湿管内での凝縮水の挙動を説明する説明図、
【図2】蒸気加湿管にノズルチップを装着した凝縮水の挙動を説明する説明図、
【図3】本発明の実施例の蒸気加湿管を空気調和機に装着した概略図、
【図4】本発明の蒸気加湿器の全体を示す概略図、
【図5】本発明の実施例1の加湿管にノズルチップを装着した断面図、
【図6】本発明のノズル孔の孔径と凝縮水飛散距離とを測定する関係を示した説明図、
【図7】本発明の高圧水蒸気毎のノズル孔の孔径と凝縮水飛散距離との関係を示したグラフの図、
【図8】段落ち加工孔を施したノズルチップの別の実施例の断面図、
【図9】テーパー形状の斜面を施した更に別のノズルチップの実施例の断面図、
【図10】テーパー形状の斜面を施したノズルチップの噴霧状態を説明する説明図、
【図11】ノズルチップを加湿管への取付けた従来での状態を説明する説明図、
【図12】本発明の実施例におけるOリング介してノズルチップを加湿管への取付けた状態を説明する説明図、
【図13】本発明の実施例におけるプレス平坦部を設けてノズルチップを加湿管への取付けた状態を説明する説明図、
【図14】本発明の実施例における切削平坦部を設けてノズルチップを加湿管への取付けた状態を説明する説明図、
【符号の説明】
【0019】
A…空気調和機、F…ファン、C…熱交換器(コイル)、
a…水蒸気、b,b1,b2,b3…凝縮水、x…隙間、
1…蒸気加湿器
2…加湿管、21…内壁面、22…管底、23…ノズル開口、 24,25…端部開口、
26…(プレス)平坦部、27…(切削)平坦部、
3…ノズルチップ、31…入口先端部、32…ノズル孔、33…鍔状円板部、
331…下側平面、34…円筒部、35…段落ち加工孔、36,37…テーパー形状の斜面、
41…蒸気配管、42…調整供給量バルブ、43…ストレーナ、44…圧力計、
51…スチームトラップ、52…凝縮水排水用配管、53…空調機排水口、
6…Oリング
【技術分野】
【0001】
本発明は、水滴が混入しない蒸気加湿器に関し、特に、空気調和機に用いる蒸気加湿器の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内の空気調和において、空気の温度を適正に維持するとともに、適正の湿度を保つために加湿器が設けられている。
これら従来の空気調和機に組み込まれた加湿器は、例えば、特許文献1に開示され、給水管に設けたスプレー式ノズルから水が霧状に散布される。このスプレー式加湿器からの散布された噴霧は、ノズル形状が複雑になり、水滴に戻る量が多く効率が悪く、必ずしも湿度の制御には寄与しないばかりか、大量の排水が発生し、その処理装置を設けなければならず、更に問題なのは、この空調された空気中に水滴が混入していると、空調機内やダクトに飛散し、設備に害を与える恐れがあるので、極力避けなければならない。
このため、近時、加湿器の加湿管には高圧の水蒸気を供給して、なるべく水滴を生じない蒸気噴霧が行われているが、ノイズの形状が簡単であるが、水滴除去は充分ではない。
ここで、従来の加湿管に水蒸気を供給する蒸気加湿器について説明すると、ノズルチップを加湿管に挿入したもの、或いは、加湿管自体にノズル孔を空けたタイプがあるが、設計加湿量により口径が決定されるのが普通であるが、そのノズル口径はφ3mm〜φ6mm程度である。
【特許文献1】実開平4−90826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたもので、水蒸気をノズルチップから噴霧する蒸気加湿器において、空調空気中の水滴の除去が充分なされた状態で噴霧する蒸気加湿器を提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、蒸気加湿器において、高圧の水蒸気が供給される加湿管において、該加湿管の表面の適所には加湿管内部に貫通する複数のノズルチップを設け、該ノズルチップの入口先端部を加湿管の内壁よりも内側に突出させ、該ノズルチップのノズル孔の孔径を0.03mm乃至1.0mmとしたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の蒸気加湿器において、前記ノズルチップの先端面は、ノズル孔を中心として擂り鉢状の斜面を設けたことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の蒸気加湿器において、前記加湿管の下側底部にはスチームトラップを連接し、更に、スチームトラップには所望の長さの排水口に接続した凝縮水排水用配管を連接したことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3に記載の蒸気加湿器を、空気調和機に用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明によれば、ノズルチップの入口先端部を加湿管の内壁よりも内側に突出させて凝縮水が入口を通過しないようにし、更に、ノズルチップのノズル内径を0.03mm乃至1.0mmと、ノズル径を小さくすることで、水滴は狭い隙間を通過する際に破砕され粒径がこまかく、表面積が大きくなり、空気との接触面積が増え再蒸発しやすくなる(a.水滴の粒径を小さくする破砕効果)。また、水は圧力が高いほど保持できるエネルギーが大きく、水滴が噴霧によって加湿管での高圧から大気圧まで減圧されると、その時に水滴の一部が蒸発する(b.フラッシュ蒸気による蒸発効果)ため、噴霧空気中の凝縮水の混在量を少なくすることができる。
請求項2の発明によれば、前項の効果に加えて、ノズル先端にテーパー加工を施したので、ノズルチップのノズル孔32に目詰まりが生じた場合、先端を突いて詰まりを取り除く際の掃除具を挿入しやすい。また、先端をテーパーにすることで、蒸気がテーパー面に沿い気流が拡散しやすく再蒸発距離を短く出来る。
請求項3の発明によれば、前項までの効果に加えて、加湿始動時の大量の凝縮水がスチームトラップから排水されるが、加湿管のノズルチップからの凝縮水の噴霧を少なくすることができ、凝縮水の発生が少量となる通常運転時においても、凝縮水のみを連続排水するので、高圧蒸気が空調機内に噴霧される事が無い。
また、蒸気加湿器を設計する場合にはノズルチップからの噴霧量のみを考慮して設計するが、スチームトラップを出た高温高圧の凝縮水が大気圧まで減圧されると、凝縮水の一部が再蒸発しフラッシュ蒸気となり、排出凝縮水の量が不正確となるので、凝縮水排水用管は適度な長さを持たせて放熱面積を増やすことにより、フラッシュ蒸気を再凝縮させて、精密な加湿制御を行うことができる。
請求項4の発明によれば、前項までの効果に加えて、本蒸気加湿器を空気調和機に用いれば、水滴が空調機内やダクトに飛散することが少なく、設備に害を与えることも防げる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の作用原理の概要を図1、図2を参照して説明する。
蒸気加湿器において、高圧の水蒸気が供給される加湿管2内は、水蒸気流aと凝縮水bとが混在しているが、多くは加湿管2の内壁面21に付着し、大粒の水滴b1になって管底22に移動し貯留されるが、途中にノズル開口23があると水蒸気aと共にこの水滴b1がノズルから外気に噴出されてしまう。このことを、図1で説明すると、ボイラー等から供給される水蒸気aは、途中の配管や加湿管2での放熱により一部は凝縮水b1となり、加湿管2の内部は水蒸気aと凝縮水bが混在した状態で、大凡図1(a)の状態である。
図1(a)において、加湿管2の内壁面21に対向する外側表面は常に外気に触れているので、内壁面21には蒸気の熱交換により凝縮水(水滴)b1が発生し、この凝縮水b1は内壁面21を伝って流れ落ち、管底22に凝縮水b2が滞留する。勿論、溜まった凝縮水b2は適宜排水する。
ここで、単に開口23が設けられただけの加湿管2の構成であると、図1(b)に示すように、凝縮水bは加湿管2の内壁面21を伝わり、凝縮水b1は水蒸気aと共に外部に噴霧されてしまう。また、図1(c)のようにノズル開口23が上部であっても同様である。
【0007】
そこで、図2(a)に示すように、加湿管2に蒸気噴霧のための開口2にノズルチップ3を挿入固着し、このノズルチップ3の入口先端部31を、加湿管2の内壁面21から4mm以上の長さに突出させることで、凝縮水bがノズルチップの入口を通過しないようにすれば、水蒸気aが外部に噴霧されないと思われる。しかし、実際は、図2(b)に模擬的に図示したように、加湿管2の内部は明確に蒸気と凝縮水に分かれているわけではなく、蒸気aの流れによって凝縮水bは加湿管2内で激しく動くので、一部は微細な水滴b3となって蒸気とともに噴出する。したがって、ノズルチップ3の入口側の一部を加湿管2の内壁面21に突出しただけでは、噴霧気中の水滴除去には不十分である。
本発明者は、ノズルチップ3のノズル孔32の孔径φd=0.03〜1.0mmの極小とすることで、ノズルチップ3から飽和蒸気のみを噴霧し、水滴が極めて少なくなることを見出した。
【0008】
このことは、ノズル孔32の孔径を小さくする事で、水滴は狭い隙間を通過する際に破砕され粒径が細かくなり、例えば、粒径が半分になれば水滴の体積は1/8に、表面積は1/4になる。つまり、噴霧される水滴の量が同じで粒径が半分の場合、水滴の表面積は8/4=2倍になり、同じ体積でも表面積が大きいほど空気との接触面積が増え、再蒸発しやすくなることから、水滴は極めて少なくなる。
また、水は圧力が高いほど保持できるエネルギー(エンタルピー)が大きく、水滴が噴霧によって大気圧まで減圧されると、保持できないエネルギーは蒸発熱として放出され、その時に水滴の一部が蒸発し(フラッシュ蒸気)、減圧量が大きいほど、水滴はより多く蒸発することからも、水滴は極めて少なくなる。具体的には、加湿管2の内部は通常200kPaGなど高圧で、噴霧により大気圧(=0PaG)まで減圧されるので、フラッシュ蒸気は多くなる。
そして、本発明者は、ノズル孔32の孔径を小さくすることにより、
a.水滴の粒径を小さくする破砕効果
b.フラッシュ蒸気による蒸発効果
の相乗効果で、特に、孔径を極めて小さな1.0mm以下の極小とすることで、この効果が急激に噴霧蒸気が水滴の無い飽和蒸気に近づくことを見出した。
【0009】
以下、本発明の好適な蒸気加湿器を空気調和機に用いた実施例1について、図を参照して説明する。
図3は、空気調和機Aに蒸気加湿器1を設けたもので、空気調和機AはファンFが空気調和した空気SAをダクトや吹出装置(図示せず)等を介して各室内に送風するが、このファンFの上流には熱交換器Cと蒸気加湿器1とが配備され、外気OA及び還気RAを吸引し、この空気に蒸気加湿器1で適当な湿度を付与され、熱交換器Cで温度調整している。
本実施例1の蒸気加湿器1の全体の構成を図4に示して説明すると、10個のノズルチップ3を等間隔に挿入固着した長さ1000mm程度の加湿管2を設け、加湿管2の上流側には水蒸気供給装置(図示せず)が接続されるが、水蒸気供給装置からの配管41には調整供給量バルブ42とストレーナ43が設けられ、加湿管2の上流側の端部開口24に連接している。なお、配管41側の入口端部開口24の近傍には圧力計44が設けられている。
【0010】
他方、加湿管2の下流側の端部開口25には、スチームトラップ51と凝縮水排水用配管52が連接されるが、凝縮水排水用配管52は適度な長さを持たせるため螺旋状にし、末端を空調機排水口53に挿入する。前記の凝縮水排水用配管52は適度な長さとは水蒸気が冷やされ凝縮水となるような充分な長さである。
また、スチームトラップ51も加湿始動時に発生する凝縮水量をまかなえる容量が必要である。同様に、凝縮水排水用配管52の配管径も加湿始動時の多量の凝縮水を速やかに排水可能な配管径とすることが必要である。
前述した凝縮水排水構造の作用を説明すると、加湿始動時の大量の凝縮水が発生するが、発生した凝縮水はスチームトラップ51から速やかに排水されるので、加湿管2のノズルチップ3からの凝縮水bの噴霧を防止できる。また、凝縮水bの発生が少量となる通常運転時においても、凝縮水bのみを連続排水するので、加湿管2の内部の高圧蒸気がスチームトラップ51の排出側から空気調和機A内に噴霧される事は無い。
【0011】
また、加湿器1の全体構造を設計する場合は、通常、ノズルチップからの噴霧量のみを考慮して設計するが、スチームトラップ51から排出された高温高圧の凝縮水が大気圧まで減圧されと、凝縮水bの一部が再蒸発しフラッシュ蒸気となるが、フラッシュ蒸気の発生は空気調和機A内が加湿過多となり、精密な加湿制御を行う場合の妨げとなるので、本実施例では、凝縮水排水用配管52を螺旋状にして充分な長さを確保し、放熱面積を増やすことにより、フラッシュ蒸気を再凝縮させ凝縮水として排出している。なお、凝縮水排水用配管52の末端を空調機排水口53に挿入することで、凝縮水が周囲に飛散する事を防止している。
【0012】
次に、前述の加湿管2に装着した10個のノズルチップ3の形状について説明する。
図5に示すように、ノズルチップ3は基本的には中心にノズル孔32を有する円筒状で、加湿管2の表面側に位置するノズル孔32に対して直角に延びる前面がフラットの鍔状円板部33と、その背後で加湿管2の開口23に挿入する円筒部34とから構成され、円筒部34は加湿管2の開口23の肉厚よりも4mm以上長く、加湿管2に装着した際には、円筒部34の入口先端部31がL=4mm(加湿管2の内壁からの突出長さ)〜加湿管2の内径の約1/2程度の長さを加湿管2の内壁に突出させることで、凝縮水bがノズルチップの入口を通過しないようにして、凝縮水bが水蒸気aと共にが外部に噴霧されないようにしている。
前記のL=4mm(加湿管2の内壁からの突出長さ)〜加湿管2の内径の約1/2での4mm以上の意味は、凝縮水bの水滴の大きさはせいぜい4mm未満であるので、少なくとも4mm以上内壁から突出していれば凝縮水bが、ノズル孔32を通過することがなく、また、加湿管2は中心部ほど高温で凝縮水も少ないので、ノズル孔32はこの中心部で開口するようにしてもよく、この場合には、加湿管2の内径の約1/2の長さにまで張りだせば、ノズル孔32は加湿管2の中心部で開口して、その近傍の水蒸気aを吸い込んで噴霧するようになり凝縮水の含有量は少ないので好ましく、逆に、加湿管2の内径の1/2の長さ以上では、次第に管中心部から離れ、冷やされる加湿管2に近づく凝縮水bが多くなるので避けるべきであり、加えてノズルチップの材料費及び加工費が過大になり無駄となるからである。
【0013】
[ノズル孔径]
前記のノズルチップ3のノズル孔32を極めて小さくする作用原理は、前述したとおりであるが、ノズル孔32の内壁の直径(孔径)φd=0.03〜1.0mmの数値の根拠について、実験内容に基づいて説明する。
実験装置は、図4で説明した蒸気加湿器1を用い、図6に示すように、加湿管2のノズル孔32の方向を水平方向に高さ300mmの高さに位置させ、ノズル孔32の孔径を変えて、凝縮水が多いほど凝縮水で濡れる面積が大きくなり、同時に凝縮水の最大飛散距離も大きくなるので、その一番外側の位置である、凝縮水飛散距離の最大値を目視確認して測定した。
測定条件
(1)蒸気圧力:50kPaG、200kPaG、300kPaG
(2)周囲空気条件:DB20℃ RH40%
(3)10分間×3回の間に飛散した凝縮水飛散距離の最大値を目視確認
この実験結果を図7のグラフに示すが、この実験結果から判ることは、ノズル孔が従来同様のφ2mm〜φ7mmでは、凝縮水飛散距離の最大値が、50kPaGでは600mm〜800mm、200kPaGでは800mm〜ほぼ1000mm、300kPaGでは900mm〜ほぼ1200mmであり、ほぼφ1.5mmでは200kPaGで400mm〜600mmであった。そして、ノズル孔の孔径がφ1.0mm以下では、50kPaG、200kPaG、300kPaGの高圧水蒸気圧では、いずれも急激に減少し、凝縮水飛散距離の最大値は200mm以下となった。
このように、50〜300kPaG範囲の高圧水蒸気圧の気圧の高低で凝縮水飛散距離は多少異なるが、ノズル孔の孔径がφ1.0mmで、飛散距離の変化が急激でほぼ同じ傾向であり、ノズル孔の孔径が、おおむねφ1.0mm以下であれば、前述した効果が得られることが判る。
【0014】
前述したように、ノズル孔の孔径はφ1.0mm以下であれば、散布された雰囲気中に凝縮水が極めて少なくなり、水蒸気が噴霧することができれば孔径は小さい方が良いが、噴霧効率と製造(加工)のし易さから限度がある。
通常、孔径φ0.3mm以下の小径になるとドリルが細く、切削深さが深いと刃が破損しやすいので困難であるが、ノズル孔の内径の一部が所望の寸法(φd)になっていれば良く、それ以外の部分が円筒やテーパーになっていても差し支えないので、図8(a)に示すように、段落ち加工により孔径φ0.03mmまで可能である。
この製造方法は、先ず、図8(b)に示すように、円筒部34側の入口先端部31から、例えば、D=φ0.5mmで太い孔の段落ち加工孔35をドリルで途中のほぼ鍔状円板部33の厚さまで切削し、図8(c)に示すように、残り部分を本来のノズル孔径d=φ0.03mmの小径のドリルで仕上げれば、ドリル破損の割合を減らすことができ、容易に製造可能である。
【0015】
[先端テーパー形状]
図9(a)に示す実施例は、実施例1(図5)のノズルチップ3の直角に延びる鍔状円板部33のフラットな先端面にノズル孔32を中心として、擂り鉢状の先端テーパー形状の斜面36を設けたものである。
この先端テーパー形状斜面36を設けたことにより、ノズルチップ3のノズル孔32に目詰まりが生じた場合、先端にテーパー加工を施すことにより、掃除具を挿入しやすくなり、先端を突いて詰まりを取り除くことが容易になる。
また、先端に擂り鉢状のテーパー斜面を施すことにより、図10に示すように蒸気がテーパー斜面36の面に沿い気流が拡散しやすく(図面10:矢印a)、再蒸発距離を短く出来る。
この図9(a)に示す実施例の変形として、図9(b)に示すように、円筒部34の入口先端部31にテーパー形状の斜面37を設けてもよく、図9(c)は、図8(a)のように、段落ち加工孔35を設けて、テーパー形状の斜面36と組み合わせてもよい。
【0016】
[ノズルチップの管への取付加工]
従来の加湿管2へのノズルチップ3の装着方法として、ロー付け・ネジ込み・圧入方法がある。このうち、ネジ込みはノズルの取替えが容易であるが、図11(a)に示すように、加湿管2側の開口23に雌ネジを設けノズルチップ3の円筒部34に雄ネジを切ってネジ込むが、図11(b)に示すように、通常、加湿管2が断面円形であるためノズルチップ3の鍔状円板部33と加湿管2の接触部分に隙間xが生じ、水蒸気は高圧であるため、そこから蒸気が漏れる恐れがあった。特に、蒸気加湿器1においては、蒸気漏れは、加湿過多や蒸気の再凝縮による漏水事故につながる恐れがあり、避けなければならない。
こような、ネジ込みをはじめ、加湿管2とノズルチップ3の隙間を無くすには、次の方法がある。
(1)Oリング:加湿管2とノズルチップ3の間に耐熱性のOリング6を挿入する。これは図12に示すように、加湿管2のノズル開口23の外側側面とノズルチップ3の鍔状円板部33の下側平面331との隙間xをOリング6の変形により塞ぐものである。
(2)フラットプレス:加湿管2の一部をプレスして平坦にし、平坦部分にノズルチップ3を装着する。これは図13に示すように、加湿管2にプレスによる平坦部26と、ノズルチップ3の鍔状円板部33の下側平面331との平坦面同士が密着させて隙間を無くして塞ぐものである。なお、ノズルチップ3が加湿管2と接触する部分はノズルチップ3の鍔状円板部33の下側全面である必要は無なく一部で良いが、少なくとも巾2mm程度は必要である。このフラットプレスの場合を例にとると、フラットに加工可能なのは加湿管2の半分から、ノズルチップ3の鍔状円板部33の下側底面331の2mm程度が密着する位置までが可能である。
なお、ノズルチップ3が加湿管2と接触する部分は、この(2)プレスの場合、次の(3)切削の場合も、ノズルチップ3の鍔状円板部33の下側全面である必要は無なく一部で良いが、少なくとも巾2mm程度は必要である。
(3)フラット切削:加湿管2の管肉厚の一部を切削して平坦にして、平坦部分にノズルチップ3を装着する。これは図14に示すように、加湿管2に切削による平坦部27と、ノズルチップ3の鍔状円板部33の下側平面331との平坦面同士が密着させて隙間を無くして塞ぐものである。前述の実施例1等は、この切削により平坦部27を形成して、ノズルチップ3の鍔状円板部33の下側平面331と密着させ、ロー付けで加湿管2に固着している。
【0017】
以上のように、本実施例は、ノズルチップ3の入口先端部31を加湿管2の内壁面21よりも内側に突出させて凝縮水bがノズル入口(開口23)を通過しないようにし、更に、ノズルチップ3のノズル孔32の孔径を0.03mm乃至1.0mmと、ノズル孔径を小さくすることで、水滴は狭い隙間を通過する際に破砕され粒径が細り、表面積が大きくなり、空気との接触面積が増え再蒸発しやすくなる(a.水滴の粒径を小さくする破砕効果)。また、水は圧力が高いほど保持できるエネルギーが大きく、水滴が噴霧によって加湿管での高圧から大気圧まで減圧されると、その時に水滴の一部が蒸発(b.フラッシュ蒸気による蒸発効果)するため、噴霧空気中の凝縮水の混在量を少なくすることができ、ノズル先端の鍔状円板部33にテーパー加工36,37を施せば、ノズルチップ3のノズル孔32に目詰まりが生じた場合、先端を突いて詰まりを取り除く際の掃除具が挿入しやすい。
また、先端をテーパーにすることで、蒸気がテーパー面に沿い気流が拡散しやすく再蒸発距離を短く出来き、加湿始動時の大量の凝縮水がスチームトラップ51から排水されるが、加湿管2のノズルチップ3からの凝縮水の噴霧を少なくすることができ、凝縮水の発生が少量となる通常運転時においても、凝縮水のみを連続排水するので、高圧蒸気が空調機内に噴霧される事が無く、蒸気加湿器1を設計する場合にはノズルチップ3からの噴霧量のみを考慮して設計するが、スチームトラップ51を出た高温高圧の凝縮水が大気圧まで減圧されると、凝縮水の一部が再蒸発しフラッシュ蒸気となり、排出凝縮水の量が不正確となり制御しにくくなり、凝縮水排水用管は適度な長さを持たせて放熱面積を増やすことにより、フラッシュ蒸気を再凝縮させて、精密な加湿制御を行うことができる。更に、本蒸気加湿器1を空気調和機Aに用いれば、水滴が空調機内やダクトに飛散することが少なく、設備に害を与えることが防げるという作用をも有する。
なお、本発明の特徴を損うものでなければ、上記の実施例に限定されるものでないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の蒸気加湿管内での凝縮水の挙動を説明する説明図、
【図2】蒸気加湿管にノズルチップを装着した凝縮水の挙動を説明する説明図、
【図3】本発明の実施例の蒸気加湿管を空気調和機に装着した概略図、
【図4】本発明の蒸気加湿器の全体を示す概略図、
【図5】本発明の実施例1の加湿管にノズルチップを装着した断面図、
【図6】本発明のノズル孔の孔径と凝縮水飛散距離とを測定する関係を示した説明図、
【図7】本発明の高圧水蒸気毎のノズル孔の孔径と凝縮水飛散距離との関係を示したグラフの図、
【図8】段落ち加工孔を施したノズルチップの別の実施例の断面図、
【図9】テーパー形状の斜面を施した更に別のノズルチップの実施例の断面図、
【図10】テーパー形状の斜面を施したノズルチップの噴霧状態を説明する説明図、
【図11】ノズルチップを加湿管への取付けた従来での状態を説明する説明図、
【図12】本発明の実施例におけるOリング介してノズルチップを加湿管への取付けた状態を説明する説明図、
【図13】本発明の実施例におけるプレス平坦部を設けてノズルチップを加湿管への取付けた状態を説明する説明図、
【図14】本発明の実施例における切削平坦部を設けてノズルチップを加湿管への取付けた状態を説明する説明図、
【符号の説明】
【0019】
A…空気調和機、F…ファン、C…熱交換器(コイル)、
a…水蒸気、b,b1,b2,b3…凝縮水、x…隙間、
1…蒸気加湿器
2…加湿管、21…内壁面、22…管底、23…ノズル開口、 24,25…端部開口、
26…(プレス)平坦部、27…(切削)平坦部、
3…ノズルチップ、31…入口先端部、32…ノズル孔、33…鍔状円板部、
331…下側平面、34…円筒部、35…段落ち加工孔、36,37…テーパー形状の斜面、
41…蒸気配管、42…調整供給量バルブ、43…ストレーナ、44…圧力計、
51…スチームトラップ、52…凝縮水排水用配管、53…空調機排水口、
6…Oリング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧の水蒸気が供給される加湿管において、
該加湿管の表面の適所には加湿管内部に貫通する複数のノズルチップを設け、
該ノズルチップの入口先端部を加湿管の内壁よりも内側に突出させ、
該ノズルチップのノズル孔の孔径を0.03mm乃至1.0mmとした
ことを特徴とする蒸気加湿器。
【請求項2】
前記ノズルチップの先端面は、ノズル孔を中心として擂り鉢状の斜面を設けたことを特徴とする請求項1に記載の蒸気加湿器。
【請求項3】
前記加湿管の下側底部にはスチームトラップを連接し、
更に、スチームトラップには所望の長さの排水口に接続した凝縮水排水用配管を連接したことを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸気加湿器。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載の蒸気加湿器は、空気調和機に用いることを特徴とする空気調和機の蒸気加湿器。
【請求項1】
高圧の水蒸気が供給される加湿管において、
該加湿管の表面の適所には加湿管内部に貫通する複数のノズルチップを設け、
該ノズルチップの入口先端部を加湿管の内壁よりも内側に突出させ、
該ノズルチップのノズル孔の孔径を0.03mm乃至1.0mmとした
ことを特徴とする蒸気加湿器。
【請求項2】
前記ノズルチップの先端面は、ノズル孔を中心として擂り鉢状の斜面を設けたことを特徴とする請求項1に記載の蒸気加湿器。
【請求項3】
前記加湿管の下側底部にはスチームトラップを連接し、
更に、スチームトラップには所望の長さの排水口に接続した凝縮水排水用配管を連接したことを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸気加湿器。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載の蒸気加湿器は、空気調和機に用いることを特徴とする空気調和機の蒸気加湿器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−8338(P2009−8338A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170910(P2007−170910)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(390003333)新晃工業株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(390003333)新晃工業株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
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