説明

蒸気弁

【課題】弁ケーシングに従来使用されている鋳造材では、蒸気の高圧化・高温化に伴うねじ穴部への影響である負荷の増加及び許容荷重の低下に対して強度が不足し適用が困難である。このため、蒸気の高圧化・高温化に適用できる蒸気弁を提供する。
【解決手段】蒸気弁90は、弁内蔵物を収納する弁ケーシング11と、弁ケーシング11の上部開口部91を上蓋取付けボルト20により閉じる上蓋12と、を備え、弁ケーシング11が、上蓋取付けボルト20が締め込まれ鍛造材より製造されるねじ部弁ケーシング11aと鋳造材より製造される下部弁ケーシング11bとが溶接されて形成されること、を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービン等に使用される蒸気弁に係り、特に高圧・高温化した蒸気に対応するケーシングを有する蒸気弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、火力・原子力発電所プラント等で使用される蒸気タービンにおいては、タービン回転エネルギーとしての蒸気は、一般的に蒸気弁を介してタービンに供給される。この蒸気弁は、タービンの入口に設置されるものであるから、高温高圧の蒸気にさらされる。
【0003】
この高温高圧で使用される蒸気タービンの蒸気弁について、図11、図12を用いて説明する。
【0004】
図11は、蒸気弁を有する発電設備の概略を示す系統図である。
【0005】
機械駆動や発電用蒸気タービンおよび火力・原子力発電所プラントの蒸気タービンにおいては、タービン回転エネルギーとしての蒸気は、蒸気弁を介してタービンに供給される。
【0006】
この蒸気弁は、図11に示す蒸気タービンを備えた発電設備に使用されている。ボイラー100からの蒸気は、蒸気弁である主蒸気止め弁101、蒸気加減弁102を通過し高圧タービン110で仕事をした後に、逆止弁107を経由して再びボイラー100の再熱器にて加熱され、再熱蒸気止め弁103、インターセプト弁104を経て中圧タービン111、低圧タービン112へ流入し仕事をする。低圧タービン112で仕事をした後は、復水器113にて水に戻され、給水ポンプ114にて昇圧して再びボイラー110に供給されるように循環する。
【0007】
また、プラントの運用効率を高めるために、プラントによっては主蒸気止め弁101の前からボイラー100の再熱器の前に接続された高圧タービンバイパス弁105やボイラー100の再熱器の後方から復水器113に接続された低圧タービンバイパス弁106が設置され、タービンの運転に拘らずボイラー系統単独の循環運転が出来るようになっている。
【0008】
図11に例示した発電設備に用いられる従来の蒸気弁の構成を図12に示す。
【0009】
図12において、11は弁内蔵物を収納する弁ケーシング、12は弁ケーシング11の上蓋を示している。上蓋12は、上蓋取付けボルト20を介して弁ケーシング11の上面に設置される。上蓋取付けボルト20の上部にも図示しないねじ山が切られており、このねじ山部に上蓋ナット21締結されている。この弁ケーシング11及び上蓋12により蒸気弁の蒸気室が構成される。
【0010】
弁ケーシング11の内部には、弁ケーシング11内に設けられた弁座13、弁座13に接触し開閉する主弁14を有している。主弁14には、弁棒16が取り付けられ、主弁キャップ15により固定される。この弁棒16は、ガイドブッシュ17に案内されて、弁ケーシング11の外部より操作される。弁ケーシング11には、蒸気を導入する蒸気入口管30、蒸気を導出する蒸気出口管31が設けられている。 このような蒸気タービンの蒸気弁について、主蒸気や再熱蒸気の高圧化・高温化に対応するため、本体ケーシングに上蓋および内蓋によって本体内の蒸気室を冷却する冷却室を設け、この冷却室に低温の蒸気を導く技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平08−93407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
蒸気タービン発電機の発電効率向上のため、タービンに供給される蒸気の温度・圧力は上昇する傾向にある。また、近年環境問題の観点から蒸気タービンの一層の効率化が要求されており、そのため蒸気温度が益々高温化される傾向にある。この蒸気の高圧化に伴い蒸気弁が受ける内圧が大きくなり負荷される荷重が大きくなる。また、蒸気の高温化に伴い使用環境温度が上昇するため蒸気弁の各部材料の許容荷重が低下する傾向にある。
【0012】
特に、図11における上蓋12を固定する上蓋取付けボルト20が締め付けられる弁ケーシング11のねじ穴部は、上蓋12の内面へ付加される内圧により発生する荷重にねじ締結構造にて耐える必要があるため蒸気の高圧化による影響がその他部位に比べて大きい。上蓋取付けボルト20が締め付けられるねじ穴部が設置されている弁ケーシング11が常に蒸気に接する部位であるため蒸気の高温化によりねじ穴部の温度が上昇し許容応力が低下する。
【0013】
この弁ケーシング11に従来使用されている鋳造材では、上述した蒸気の高圧化・高温化に伴うねじ穴部への影響である負荷の増加及び許容荷重の低下に対して強度が不足し適用が不可能になっているという課題があった。
【0014】
このような課題に対し、上述の特許文献1のように弁ケーシング内に低温の蒸気を導き冷却を行ない対処することも可能であるが、このような構成では弁ケーシング内に低温の蒸気を導入する必要があり、設備が拡大する可能性があるという課題があった。
【0015】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、設備を拡大することがなくとも蒸気の高圧化・高温化に適用できる蒸気弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の蒸気弁においては、弁内蔵物を収納する弁ケーシングと、この弁ケーシングの上部開口部を上蓋取付けボルトにより閉じる上蓋と、を備え、鍛造材より製造され前記上蓋取付けボルトが締め込まれるねじ部弁ケーシングと鋳造材より製造される下部弁ケーシングとが溶接されて前記弁ケーシングが形成されること、を特徴とするものである。
【0017】
また、上記目的を達成するため、本発明の蒸気弁においては、鋳造材より製造され弁内蔵物を収納する弁ケーシングと、この弁ケーシングの上部開口部を上蓋取付けボルトにより閉じる上蓋と、を備え、前記弁ケーシングの上面に形成された弁ケーシングツバ部と、この弁ケーシングツバ部及び前記上蓋を貫通する上蓋取付けボルトと、この上蓋取付けボルトに締め込まれる袋ナットと、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の蒸気弁によれば、蒸気の高圧化・高温化に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る蒸気弁の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図12に示した従来の蒸気弁と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施の形態の蒸気弁90の構成を示す縦断面図である。
【0021】
まず、蒸気弁90の構成について、図1を用いて説明する。
【0022】
本図に示すように、蒸気弁90は、弁内蔵物を収納する弁ケーシング11、この弁ケーシング11の上部開口部91の蓋である上蓋12を備えている。上蓋12は、上蓋取付けボルト20を介して弁ケーシング11の上面に設置される。上蓋取付けボルト20の上部にも図示しないねじ山が切られており、このねじ山部に上蓋ナット21が締結されている。この弁ケーシング11及び上蓋12により蒸気弁90の蒸気室が構成される。
【0023】
弁ケーシング11の内部には、弁ケーシング11内に設けられた弁座13、弁座13に接触し開閉する主弁14を有している。主弁14には、弁棒16が取り付けられ、主弁キャップ15により固定される。この弁棒16は、ガイドブッシュ17に案内されて、弁ケーシング11の外部より操作される。弁ケーシング11には、蒸気を導入する蒸気入口管30、蒸気を導出する蒸気出口管31が設けられている。
【0024】
上記弁ケーシング11は、上蓋12が上蓋取付けボルト20により固定されるねじ部弁ケーシング11aと、この隣接部分である下部弁ケーシング11bにより形成される。ねじ部弁ケーシング11aと下部弁ケーシング11bとは、接合面における溶接により溶接部44が形成されて一体化されている。なお、ねじ部弁ケーシング11a及び下部弁ケーシング11bの両方に、しかも、弁ケーシング11の内外面に溶接開先44a、44bが設けられている。そして、上蓋12とねじ部弁ケーシング11aとの間にはガスケット22を設けることによりシール性を向上させている。
【0025】
このように構成された本実施の形態において、蒸気入口管30から蒸気室内に蒸気が流入すると、上蓋12の内面に蒸気圧力が付加され、上蓋取付けボルト20に引張力が発生する。これと同時に、ねじ部弁ケーシング11aに設けられたねじ穴部にせん断応力および面圧が発生する。これらの応力に対応するために、ねじ部弁ケーシング11aに鍛造材を使用し高温環境下での強度を確保する。下部弁ケーシング11bの材料は従来通りの鋳造材とする。また、上蓋取付けボルト20、および上蓋ナット21についても鍛造材を使用している。
【0026】
なお、鍛造とは、金属の塑性加工法の一種で、金属をハンマー等で叩いて圧力を加えることで、金属内部の空隙をつぶし、結晶を微細化し、結晶の方向を整えて強度を高めると共に目的の形状に成形するか、あるいは、金属の素材を金型などで圧力を加えて塑性流動させて成形するものである。鍛造では、このように金属に圧力を加えた際、輪郭に従った結晶組織の流れが生じることによって鍛流線が連続して形成されるために組織が緻密になり、鋳造に比べて鋳巣(空洞)ができにくいので、強度に優れた粗形材をつくることができる。
【0027】
また、鋳造とは、(主に鉄・アルミ合金・銅・真鍮などの金属)を融点よりも高い温度で熱して液体にしたあと、型に流し込み、冷やして目的の形状に固める加工方法である。
【0028】
上述のように、蒸気弁90の弁ケーシング11において、蒸気の高圧化・高温化に伴う上蓋取付けボルト20が締結されるねじ穴部の負荷の増加及び許容荷重の低下に対して、従来使用されていた鋳造材は強度が不足し適用できない。これを解決するために、上蓋取付けボルト20が締結されるねじ穴部周辺の弁ケーシングであるねじ部弁ケーシング11aの材料に、鋳造材よりも高温でより大きい強度を実現できる鍛造材を採用する。鍛造材を使用したねじ穴部周辺のねじ部弁ケーシング11aとそれ以外の部位である下部弁ケーシング11bとを溶接にて接合し一体化することによって弁ケーシング11を形成する。ねじ穴部周辺の部位以外のねじ穴部周辺の下部弁ケーシング11bには従来の鋳造材を採用する。
【0029】
本実施の形態によれば、弁ケーシングのねじ穴部周辺のねじ部弁ケーシング11aの材料に鍛造材を使用し、それ以外の部分の下部弁ケーシング11bには従来より使用している鋳造材を適用し、ねじ部弁ケーシング11aと下部弁ケーシング11bとを溶接にて一体化する。かくして、異種材料の組み合わせで弁ケーシング11を形成することによって、蒸気の高圧化・高温化に適用できる蒸気弁を実現することができる。
【0030】
図2は、図1の蒸気弁90の変形例を示す縦断面図である。図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0031】
本図に示すように、本変形例に係る蒸気弁90は、ねじ部弁ケーシング11aと下部弁ケーシング11bとの溶接部40の開先形状を工夫して、図1に示す溶接部44における溶接に比較して容易に溶接することを目的としたものである。すなわち、ねじ部弁ケーシング11aの外周側下面全周及び下部弁ケーシング11bの外周側上面全周に溶接開先40aを設けている。ねじ部弁ケーシング11aと下部弁ケーシング11bとを、弁ケーシング11の外側から溶接にて接合して一体化することによって弁ケーシング11を形成する。
【0032】
本変形例によれば、図1に示した第1の実施の形態に比べ、溶接開先40aを外周側のみに設けたことにより溶接による接合が容易になる。また、ねじ部弁ケーシング11aの外周側下面全周及び下部弁ケーシング11bの外周側上面全周に溶接開先40aの角度についても、ねじ部弁ケーシング11aの外周側下面全周あるいは下部弁ケーシング11bの外周側上面のいずれか一方のみに溶接開先40aを設けたものよりも大きく取ることができる。かくして、ねじ部弁ケーシング11aに鍛造材を使用し高温環境下での強度を確保し、下部弁ケーシング11bの材料は従来通りの鋳造材として、異種材料の組み合わせで弁ケーシング11を形成することにより、蒸気の高圧化・高温化に適用可能な蒸気弁90を実現できる。
【0033】
図3は、図1の蒸気弁90の他の変形例を示す縦断面図である。図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0034】
本図に示すように、本変形例に係る蒸気弁90は、図2に示す溶接部40に比較して溶接量を低減することを目的としたものである。すなわち、本変形例では、ねじ部弁ケーシング11aの外周側下面全周のみに溶接開先41aを設けている。
【0035】
本変形例によれば、溶接開先41aがねじ部弁ケーシング11aの外周側下面全周のみに設けられているため、溶接40による接合が容易となり、溶接作業時間の短縮が可能になる。これにより、溶接40の際にねじ部弁ケーシング11a及び下部弁ケーシング11bに加わる熱量を低減し、溶接熱による変形および残留応力を抑止することもできる。かくして、ねじ部弁ケーシング11aに鍛造材を使用し高温環境下での強度を確保し、下部弁ケーシング11bの材料は鋳造材し、異種材料の組み合わせで弁ケーシング11を形成することにより、蒸気の高圧化・高温化に適用可能な蒸気弁90を得ることができる。
【0036】
図4は、図1の蒸気弁90のさらに他の変形例を示す縦断面図である。図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0037】
本図に示した変形例は、ねじ部弁ケーシング11aの外周側下面全周のみに溶接開先を設けた図3に示した変形例に対し、下部弁ケーシング11bの外周側上面全周のみに溶接開先42aを設けたものである。本変形例によっても、図3に示した変形例と同様な作用効果を奏することが可能である。
【0038】
図5は、図1の蒸気弁のさらに他の変形例を示す縦断面図である。図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0039】
本図に示すように、本変形例に係る蒸気弁90は、図1乃至図3に示した蒸気弁の溶接の溶接開先40a,41a,42a,44a,44bの機械加工時間を低減することを目的としたものである。すなわち、本変形例においては、鍛造材を使用し高温環境下での強度を確保したねじ部弁ケーシング11aの外形を、下部弁ケーシング11bに対して小さく形成し、ねじ部弁ケーシング11a及び下部弁ケーシング11bの接合部に段差を設けている。そしてこの段差部を溶接部43として、ねじ部弁ケーシング11aと下部弁ケーシング11bとを溶接により接合する。
【0040】
本変形例によれば、ねじ部弁ケーシング11aの外径寸法を下部弁ケーシング11bよりも小さくし、これによりできた段差を溶接部43とすることにより、溶接開先加工が不要となり、製作時間の低減が可能とし、かつ図1乃至図4に示したものと同様に蒸気の高圧化・高温化に適用可能な蒸気弁90を得ることができる。
【0041】
図6は、本発明の第2の実施の形態の蒸気弁90の構成を示す縦断面図である。図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0042】
本図に示すように、蒸気弁90は、図1に示す弁ケーシング11に対して、上蓋12との接合面である弁ケーシング11の上部に弁ケーシングツバ部51が設けられている。下部弁ケーシング11bの材料は鋳造材とし、弁ケーシングツバ部51も同一の材料の鋳造材で作製されている。この弁ケーシングツバ部51を貫通した上蓋取付けボルト20に鍛造材で作製された袋ナット61を取り付け、弁ケーシング11と上蓋12とを締め付けている。
【0043】
そして、本実施の形態においては、この袋ナット61と上蓋取付けボルト20、および上蓋ナット61について鍛造材が使用されている。このように、袋ナット21を使用して上蓋取付けボルト20と締結させることにより、ねじ穴からの蒸気の漏れを防止することが可能である。また、袋ナット61は、上蓋取付けボルト20を締結することにより弁ケーシングツバ部51の内面に押し付けられ、そこがシール面となり蒸気の漏れが防止される。
【0044】
本実施の形態によれば、弁ケーシング11の上部に弁ケーシングツバ部51を設けることにより、この弁ケーシングツバ部51を貫通した上蓋取付けボルト20を介して弁ケーシング11と上蓋12とを締め付けている。そして、弁ケーシング11の部位の中で最も材料強度が要求される上蓋取付けボルト20を締結するねじ穴部を有する袋ナット61、上蓋取付けボルト20、上蓋ナット21を高強度材料の鍛造材としている。かくして、弁ケーシングツバ部51を貫通した上蓋取付けボルト20を介して弁ケーシング11と上蓋12とを締め付けることにより、製造コストアップを抑制しつつ、蒸気の高圧化・高温化に適用可能な蒸気弁90を得ることができる。
【0045】
図7は、図6に示した第2の実施の形態に係る蒸気弁の変形例を示す縦断面図である。図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0046】
本図に示すように、本変形例に係る蒸気弁90は、図6に示した蒸気弁90において、袋ナット61と弁ケーシングツバ部51の内面との間に、ガスケット71を設けている。このガスケット71を設けることにより、キリ穴からの蒸気の漏れを防ぐことが可能である。
【0047】
本変形例によれば、図6に示した蒸気弁90と同様な作用効果をそうするとともに、袋ナット61と弁ケーシングツバ部51の内面との間にガスケット71を設けることにより、さらにシール性を向上させ、袋ナット61を使用することによりねじ穴からの蒸気の漏れを防止することが可能である。
【0048】
図8は、図6の蒸気弁90の他の変形例を示す縦断面図である。図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0049】
本図に示すように、蒸気弁90は、図7に示した蒸気弁90と同様、袋ナット61と弁ケーシングツバ部51の内面との間にガスケット71を設けている。さらに、本変形例においては、袋ナット61の下面の弁ケーシング11の内側面に脱落防止板81が設けられている。
【0050】
本変形例によれば、図7に示した蒸気弁90と同様な作用効果を奏するとともに、袋ナット61の下面に設けられた脱落防止板81により、上蓋取付けボルト20の締結作業が容易になり、上蓋12を取り外した時に袋ナット61が脱落しないようにすることができる。 図9は、図6の蒸気弁90のさらに他の変形例を示す縦断面図である。図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0051】
本図に示すように、本変形例に係る蒸気弁90についても、図6に示した蒸気弁90と同様、弁ケーシングツバ部51対して、弁ケーシング11の内面に鍛造材で作製された袋ナット61を取り付けて上蓋取付けボルト20と締結している。また、図7に示した蒸気弁90と同様、本変形例においても、袋ナット61と弁ケーシングツバ部51の内面との間に、ガスケット71を設けている。そして、本変形例においては、弁ケーシングツバ部51の下面に、左ネジ穴51aが加工されるとともに、鍛造材で製作された袋ナット61の外周に左ネジが加工されている。そして、本変形例においては、袋ナット61を左ネジ穴51aにねじ込み、その後袋ナット61と上蓋取付けボルト20とを締結することを特徴としている。
【0052】
本変形例によれば、袋ナット61の外周に左ねじを加工し弁ケーシングツバ部51の左ねじ穴51aにねじ込むため、上蓋取付けボルト20の締結作業が容易になり、上蓋12を取り外し時に袋ナット61が脱落しない蒸気弁を得ることができる。そして、袋ナット61と弁ケーシングツバ部51の内面との間にガスケット71を設けることにより、さらにシール性を向上させ、袋ナット61を使用することによりねじ穴からの蒸気の漏れを防止することが可能である。
【0053】
図10は、図6の蒸気弁90のさらに他の変形例を示す縦断面図である。図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0054】
本図に示すように、蒸気弁90は、袋ナット61を弁ケーシングツバ部の左ネジ部に締結させた図9の蒸気弁90に対し、弁ケーシングツバ部51の内面に鍛造材で製作された袋ナット61を溶接にて取り付け、袋ナット61と上蓋取付けボルト20と締結することを特徴としている。
【0055】
本変形例によれば、図7に示した変形例に係る蒸気弁90の作用効果を奏するとともに、弁ケーシングツバ部51の内面に鍛造材で製作された袋ナット61を溶接にて取り付けているために、上蓋取付けボルト20の締結作業が容易になり、上蓋12を取り外し時に袋ナット61が脱落しない蒸気弁を得ることができる。
【0056】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は、上述したような各実施の形態に何ら限定されるものではなく、各実施の形態の構成を組み合わせて、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施の形態の蒸気弁の構成を示す縦断面図。
【図2】図1の蒸気弁の変形例を示す縦断面図。
【図3】図1の蒸気弁の他の変形例を示す縦断面図。
【図4】図1の蒸気弁のさらに他の変形例を示す縦断面図。
【図5】図1の蒸気弁のさらに他の変形例を示す縦断面図。
【図6】本発明の第2の実施の形態の蒸気弁の構成を示す縦断面図。
【図7】図6の蒸気弁の変形例を示す縦断面図。
【図8】図6の蒸気弁の他の変形例を示す縦断面図。
【図9】図6の蒸気弁のさらに他の変形例を示す縦断面図。
【図10】図6の蒸気弁のさらに他の変形例を示す縦断面図。
【図11】蒸気弁を有する発電設備の概略を示す系統図。
【図12】従来の蒸気弁の構成を示す構成図。
【符号の説明】
【0058】
11…弁ケーシング、11a…ねじ部弁ケーシング、11b…下部弁ケーシング、12…上蓋、13…弁座、14…主弁、15…主弁キャップ、16…弁棒、17…ガイドブッシュ、20…上蓋取付けボルト、21…上蓋ナット、22…ガスケット、30…蒸気入口管、31…蒸気出口管、40〜45…溶接、40a、41a、42a、44a、44b…溶接開先、51…弁ケーシングツバ部、51a…左ねじ穴、61…袋ナット、71…ガスケット、81…脱落防止板、90…蒸気弁、91…上部開口部、100…ボイラー、101…主蒸気止め弁、102…蒸気加減弁、103…再熱蒸気止め弁、104…インターセプト弁、105…高圧タービンバイパス弁、106…低圧タービンバイパス弁、107…逆止弁、110…高圧タービン、111…中圧タービン、112…低圧タービン、113…復水器、114…給水ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁内蔵物を収納する弁ケーシングと、
この弁ケーシングの上部開口部を上蓋取付けボルトにより閉じる上蓋と、
を備え、
鍛造材より製造され前記上蓋取付けボルトが締め込まれるねじ部弁ケーシングと鋳造材より製造される下部弁ケーシングとが溶接されて前記弁ケーシングが形成されること、を特徴とする蒸気弁。
【請求項2】
前記ねじ部弁ケーシング及び前記下部弁ケーシングの少なくとも一方の全周に溶接開先を設け、この溶接開先が溶接されて前記弁ケーシングが形成されること、を特徴とする請求項1記載の蒸気弁。
【請求項3】
前記ねじ部弁ケーシングと前記下部弁ケーシングと間に段差を設け、この段差が溶接されて前記弁ケーシングが形成されること、を特徴とする請求項1記載の蒸気弁。
【請求項4】
鋳造材より製造され弁内蔵物を収納する弁ケーシングと、
この弁ケーシングの上部開口部を上蓋取付けボルトにより閉じる上蓋と、
を備え、
前記弁ケーシングの上面に形成された弁ケーシングツバ部と、
この弁ケーシングツバ部及び前記上蓋を貫通する上蓋取付けボルトと、
この上蓋取付けボルトに締め込まれる袋ナットと、
を有することを特徴とする蒸気弁。
【請求項5】
前記上蓋取付けボルトおよび前記袋ナットが鍛造材からなることを特徴とする請求項4記載の蒸気弁。
【請求項6】
前記弁ケーシングツバ部と前記袋ナットとの間に設けられたガスケットを有すること、を特徴とする請求項4又は5記載の蒸気弁。
【請求項7】
前記袋ナットの下方の前記弁ケーシングの内側面に設けられた脱落防止板を有すること、を特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項記載の蒸気弁。
【請求項8】
外周面にねじ山を加工した前記袋ナットを前記弁ケーシングツバ部の下面に加工されたねじ穴にねじ込み取り付けられること、を特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項記載の蒸気弁。
【請求項9】
前記袋ナットが前記弁ケーシングツバ部の下面に溶接されて取り付けられること、を特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項記載の蒸気弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−121558(P2010−121558A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296735(P2008−296735)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】