説明

蒸気滅菌装置およびその運転制御方法

【課題】機械室や隣接する部屋の温度低減を図り、高温対策に講じられる設備コスト、エネルギーコストを低減させる蒸気滅菌装置を提供する。
【解決手段】起動時に蒸気ジャケット2および必要に応じて滅菌室1に給蒸して滅菌室を暖める暖機運転と、滅菌室に収容された被滅菌物を蒸気ジャケットからの熱で暖める予熱工程、滅菌室内の空気を排除する空気排除工程、滅菌室に設定された温度となる飽和蒸気圧力まで給蒸する給蒸工程、滅菌室内を設定温度に所定時間保持する滅菌工程、滅菌後に滅菌室の蒸気を排出する排蒸工程、滅菌室内の被滅菌物を乾燥させる乾燥工程からなる工程を含む滅菌運転を行う蒸気滅菌装置であって、暖機運転終了後から最初の滅菌運転を開始するまでの間および滅菌運転完了後から次の滅菌運転を開始するまでの間、蒸気ジャケットへ給蒸する外缶給蒸弁3を閉じて蒸気ジャケットへの給蒸を遮断する制御手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気滅菌装置およびその運転制御方法に関するもので、この発明の蒸気滅菌装置は、主として、医療用の器具、衣類等の滅菌を行うのに用いられる。
【背景技術】
【0002】
蒸気滅菌装置は、滅菌室内に被滅菌物を収容した後、滅菌室およびこの滅菌室の外側に設けた蒸気ジャケットに蒸気を供給し、蒸気の保有する熱により滅菌処理を行う装置である。このような蒸気滅菌装置としては、通常、起動時に蒸気ジャケット内に給蒸して滅菌運転が直ぐにできるように暖める暖機工程、滅菌室に収容された被滅菌物を蒸気ジャケットからの熱によって予熱する予熱工程、滅菌室内の空気を排除する空気排除工程、空気を排除した滅菌室に給蒸する給蒸工程、滅菌室内に蒸気を充満させた状態を所定時間維持する滅菌工程、滅菌後に滅菌室の蒸気を排出する排蒸工程、排蒸後に被滅菌物を乾燥させる乾燥工程の順で滅菌運転を行い、乾燥工程後の次の滅菌運転は空気排除工程(設定があれば予熱工程)から始まる運転工程を備えている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
このような運転工程を備えた蒸気滅菌装置の運転にあっては、例えば、朝作業前において蒸気滅菌装置が冷態の状態では、電源スイッチを操作することにより暖機運転が開始し、蒸気ジャケットに蒸気が供給され、蒸気ジャケットの蒸気圧力が滅菌時の蒸気圧力以上に維持される。そして、滅菌作業に際し、滅菌運転スタートスイッチを操作することにより、滅菌運転の各工程が行われる。
【0004】
滅菌運転完了後、滅菌済みの被滅菌物を取り出し、次の被滅菌物を用意して、蒸気滅菌装置に収容し、再び滅菌運転スタートスイッチを操作することにより、滅菌運転の各工程が行われる。前記電源スイッチにあっては、滅菌運転を完了しても操作されたままの状態にあり、蒸気ジャケットの圧力制御やそのほか安全装置に関する制御などを行っている。そして、通常はその日の作業終了までは終日電源スイッチは操作されたままであり、蒸気ジャケットの圧力は高い圧力に保持されたままの状態にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−56974号公報
【特許文献2】特開平11−206859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように従来の蒸気滅菌装置は、乾燥工程の終了により滅菌運転が終了しても、次の滅菌運転まで、すなわち空気排除工程の開始までの間、蒸気ジャケットに蒸気の圧力が高い圧力に維持されたままの状態にあり、蒸気ジャケットからの放熱や配管からの放熱は1台あたり約6kWにもなる。
【0007】
このような蒸気滅菌装置では、蒸気導入用の配管や制御されるバルブなどは、機械室と呼ばれる部屋で、被滅菌物の洗浄、包装などの作業を行う部屋とは仕切られているが、蒸気ジャケットや配管からの放熱によって機械室内の温度が上昇し、機械室内にある機器の故障を引き起こすおそれがあり、また隣接する部屋では過剰な冷房運転が必要となり、これが設備コスト、エネルギーコストの増大の要因になっているといった問題があった。
【0008】
本発明の目的とするところは、蒸気滅菌装置の運転において、滅菌運転終了後、次の滅菌運転までの間、蒸気を可能な限り使用しないようにして、蒸気ジャケットや配管からの放熱を低下させることにより、機械室や隣接する部屋における温度低減を図り、高温対策に講じられる設備コスト、エネルギーコストを低減させる蒸気滅菌装置およびその運転制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、起動時に蒸気ジャケットおよび必要に応じて滅菌室に給蒸して前記滅菌室を暖める暖機運転と、前記滅菌室に収容された被滅菌物を蒸気ジャケットからの熱で暖める予熱工程、前記滅菌室内の空気を排除する空気排除工程、前記滅菌室に設定された温度となる飽和蒸気圧力まで給蒸する給蒸工程、前記滅菌室内を設定温度に所定時間保持する滅菌工程、滅菌後に前記滅菌室の蒸気を排出する排蒸工程、前記滅菌室内の被滅菌物を乾燥させる乾燥工程からなる工程を含む滅菌運転を行う蒸気滅菌装置であって、前記暖機運転終了後から最初の前記滅菌運転を開始するまでの間および前記滅菌運転完了後から次の前記滅菌運転を開始するまでの間、前記蒸気ジャケットへ給蒸する外缶給蒸弁を閉じて前記蒸気ジャケットへの給蒸を遮断する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項1の発明によれば、機械室や隣接する部屋における温度低減を図り、高温対策に講じられる設備コスト、エネルギーコストを低減させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、起動時に蒸気ジャケットおよび必要に応じて滅菌室に給蒸して前記滅菌室を暖める暖機運転と、前記滅菌室に収容された被滅菌物を蒸気ジャケットからの熱で暖める予熱工程、前記滅菌室内の空気を排除する空気排除工程、前記滅菌室に設定された温度となる飽和蒸気圧力まで給蒸する給蒸工程、前記滅菌室内を設定温度に所定時間保持する滅菌工程、滅菌後に前記滅菌室の蒸気を排出する排蒸工程、前記滅菌室内の被滅菌物を乾燥させる乾燥工程からなる工程を含む滅菌運転を行う蒸気滅菌装置における運転制御方法であって、前記暖機運転終了後から最初の前記滅菌運転を開始するまでの間および前記滅菌運転完了後から次の前記滅菌運転を開始するまでの間を待機工程とし、前記待機工程では前記蒸気ジャケットへ給蒸する外缶給蒸弁を閉じて前記蒸気ジャケットへの給蒸を遮断することを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明によれば、機械室や隣接する部屋における温度低減を図り、高温対策に講じられる設備コスト、エネルギーコストを低減させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の、前記滅菌室内の圧力を検出する内缶圧力センサと前記蒸気ジャケット内の圧力を検出する外缶圧力センサを設け、前記滅菌運転における各工程のうち前記滅菌室に給蒸する工程は、前記内缶圧力センサと外缶圧力センサにより前記蒸気ジャケットおよび前記滅菌室の蒸気圧力を検出して、前記蒸気ジャケットの蒸気圧力が前記滅菌室の蒸気圧力よりも高くなるように前記外缶給蒸弁を制御し、前記乾燥工程での前記蒸気ジャケットの圧力は前記滅菌工程時の前記蒸気ジャケットの圧力と等しくなるように前記外缶給蒸弁を制御することを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明によれば、前記蒸気ジャケットの使用蒸気を可能な限り少なくして、前記滅菌室内表面に凝縮することを防止するとともに、前記乾燥工程時における前記蒸気ジャケットからの熱量の低下を防止しながら、機械室や隣接する部屋における温度低減を図り、高温対策に講じられる設備コスト、エネルギーコストを低減させることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の、前記待機工程では、待機工程中に前記蒸気ジャケットの蒸気圧力が所定圧力より低下した場合、前記蒸気ジャケット内に給蒸し前記蒸気ジャケットの蒸気圧力を少なくとも所定圧力まで上昇させるように前記外缶給蒸弁を制御することを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明によれば、前記蒸気ジャケットの使用蒸気を可能な限り少なくして、長時間待機状態にある滅菌装置でも、直ぐの滅菌運転に対応させることができるので、機械室や隣接する部屋における温度低減を図り、高温対策に講じられる設備コスト、エネルギーコストを低減させることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項2または3に記載の、前記滅菌運転は、前記蒸気ジャケットの蒸気圧力が所定圧力以上に上昇していなければ前記工程を開始せず、前記蒸気ジャケットへ給蒸を行うように前記外缶給蒸弁を制御し、前記蒸気ジャケットの蒸気圧力が所定圧力以上となってから前記工程を開始することを特徴とする。
【0018】
請求項5の発明によれば、前記蒸気ジャケットの使用蒸気を可能な限り少なくして、前記滅菌室内表面に凝縮することを防止することができるので、被滅菌物への凝縮水の落下などによる乾燥不良を防止でき、機械室や隣接する部屋における温度低減を図り、高温対策に講じられる設備コスト、エネルギーコストを低減させることができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項2から5のいずれか1に記載の、前記空気排除工程は、前記滅菌室内における減圧と給蒸を交互に行うようにし、減圧時には、前記外缶給蒸弁を閉じて前記蒸気ジャケットへの給蒸を遮断することを特徴とする。
【0020】
請求項6の発明によれば、前記蒸気ジャケットの使用蒸気を可能な限り少なくして、前記滅菌室内表面に凝縮することを防止することができるので、被滅菌物への凝縮水の落下などによる乾燥不良を防止でき、機械室や隣接する部屋における温度低減を図り、高温対策に講じられる設備コスト、エネルギーコストを低減させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、蒸気滅菌装置の運転において、滅菌運転終了後、つぎの滅菌運転までの間、蒸気をできる限り使用しないようにして、蒸気ジャケットや配管からの放熱を低下させるように運転を制御することができるので、機械室や隣接する部屋における温度低減を図り、高温対策に講じられる設備コスト、エネルギーコストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を実施する蒸気滅菌装置の一例を示す説明図である。
【図2】本発明に係る蒸気滅菌装置における運転制御方法の第1実施例の各運転工程と各運転工程における滅菌室と蒸気ジャケット内の蒸気圧力の変化を示す説明図である。
【図3】本発明に係る蒸気滅菌装置における運転制御方法の第2実施例の各運転工程と各運転工程における滅菌室と蒸気ジャケット内の蒸気圧力の変化を示す説明図である。
【図4】本発明に係る蒸気滅菌装置における運転制御方法の第3実施例の各運転工程と各運転工程における滅菌室と蒸気ジャケット内の蒸気圧力の変化を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
まず、本発明に係る蒸気滅菌装置の実施の形態についてに説明する。本例の蒸気滅菌装置は、蒸気ジャケットを処理槽の外周に有して蒸気を導入することにより保温や加熱に用いる装置、例えば、調理装置、乾燥機などにも適用される。
本例の蒸気滅菌装置の実施の一例を図1により説明すると、本例の蒸気滅菌装置は、被滅菌物を収容する滅菌室1の外側に加熱用の蒸気ジャケット2を設けている。蒸気ジャケット2は、滅菌室1のほぼ全周を覆う一つの部屋にすることもできるし、滅菌室1の周囲に加熱管を巻回した構成にすることもできる。
【0024】
この蒸気ジャケット2には、遮断弁28、外缶給蒸弁3、逆止弁29を備えた外缶給蒸路4を接続している。外缶給蒸路4において、遮断弁28と外缶給蒸弁3の間から、外缶給蒸路4を分岐させて滅菌室1へ蒸気を供給する内缶給蒸路5を滅菌室1に接続している。内缶給蒸路5には、内缶給蒸弁6を設けている。外缶給蒸弁3および内缶給蒸弁6の開閉を制御することにより、滅菌室1および蒸気ジャケット2への蒸気の供給を制御するようになっている。
【0025】
内缶給蒸路5における内缶給蒸弁6の下流位置には、給気路7を接続している。この給気路7には、上流側より順に空気フィルタ8、給気弁9、逆止弁10を設けてあり、給気路7を通して無菌空気を滅菌室1へ供給するようになっている。
【0026】
滅菌室1には内缶排気路11を、蒸気ジャケット2には、外缶排蒸路12をそれぞれ接続する。内缶排気路11には、内缶温度センサ30、真空排気弁13、真空ポンプ14、逆止弁15、16を設ける。外缶排蒸路12には、外缶スチームトラップ17および逆止弁18を設ける。内缶排気路11からは、ドレン排出路19および蒸気排出路20を分岐させ、ドレン排出路19には内缶スチームトラップ21および逆止弁22を、蒸気排出路20には、排蒸弁23および逆止弁24をそれぞれ設けている。これらの内缶排気路11、外缶排蒸路12、ドレン排出路19および蒸気排出路20は、それぞれの下流位置で合流している。
【0027】
滅菌室1には、内部の圧力を検出する内缶圧力センサ25を設けている。蒸気ジャケット2には、内部の圧力を検出する外缶圧力センサ26を設けている。これらの内缶圧力センサ25、外缶圧力センサ26からの検出信号に基づいて、制御器27により、外缶給蒸弁3および内缶給蒸弁6の開閉を制御する。
【0028】
このように構成された蒸気滅菌装置は、起動時に蒸気ジャケット2および必要に応じて滅菌室1に給蒸して滅菌室1を暖める暖機運転と、滅菌室1に収容された被滅菌物を蒸気ジャケット2の熱で暖める予熱工程、滅菌室1内の空気を排除する空気排除工程、滅菌室1に設定された温度となる飽和蒸気圧力まで給蒸する給蒸工程、滅菌室1内を設定温度に所定時間保持する滅菌工程、滅菌後に滅菌室1の蒸気を排出する排蒸工程、滅菌室1内の被滅菌物を乾燥させる乾燥工程からなる工程を含む滅菌運転を行うようになっており、各工程における滅菌室1および蒸気ジャケット2への蒸気の供給は、制御器27により制御される。
【0029】
そして、制御器27は、暖機運転終了後から最初の滅菌運転を開始するまでの間および滅菌運転完了後から次の滅菌運転を開始するまでの間、蒸気ジャケット2へ給蒸する外缶給蒸弁3を閉じて蒸気ジャケット2への給蒸を遮断する制御手段を備えている。
【0030】
このように構成された蒸気滅菌装置によれば、滅菌運転時に、制御器27に備えた制御手段によって暖機運転終了後から最初の滅菌運転を開始するまでの間および滅菌運転完了後から次の滅菌運転を開始するまでの間、蒸気ジャケット2へ給蒸する外缶給蒸弁3を閉じて蒸気ジャケット2への給蒸を遮断することにより、機械室や隣接する部屋における温度低減を図り、高温対策に講じられる設備コスト、エネルギーコストを低減させることができる。
【0031】
つぎに、前記した本発明に係る蒸気滅菌装置における運転制御方法の実施の形態について説明する。
本発明に係る蒸気滅菌装置における運転制御方法は、起動時に蒸気ジャケット2および必要に応じて滅菌室1に給蒸して滅菌運転が直ぐにできるように暖める暖機運転、滅菌室1に収容された被滅菌物を蒸気ジャケット2からの熱によって予熱する予熱工程、滅菌室1内の空気を排除する空気排除工程、滅菌室1に設定された温度となる飽和蒸気圧力まで給蒸する給蒸工程、滅菌室1内を設定温度に所定時間保持する滅菌工程、滅菌後に滅菌室1の蒸気を排出する排蒸工程、滅菌室1内の被滅菌物を乾燥させる乾燥工程からなる工程を含む滅菌運転を行う運転制御方法である。
【0032】
そして、前記の運転中、暖機運転終了後から最初の滅菌運転を開始するまでの間および滅菌運転完了後から次の滅菌運転を開始するまでの間を待機工程とし、待機工程では蒸気ジャケット2へ給蒸する外缶給蒸弁3を閉じて蒸気ジャケット2への給蒸を遮断するように運転を制御する。
【0033】
また、前記の運転にあって、滅菌運転における各工程のうち滅菌室1に給蒸する工程は、内缶圧力センサ25と外缶圧力センサ26により蒸気ジャケット2および滅菌室1の蒸気圧力を検出して、蒸気ジャケット2の蒸気圧力が滅菌室1の蒸気圧力よりも高くなるように外缶給蒸弁3を制御し、乾燥工程での蒸気ジャケット2の圧力は滅菌工程時の蒸気ジャケット2の圧力と等しくなるように外缶給蒸弁3を制御するとよい。
【0034】
また、待機工程では、待機工程中に蒸気ジャケット2の蒸気圧力が所定圧力より低下した場合、蒸気ジャケット2内に給蒸し蒸気ジャケット2の蒸気圧力を少なくとも所定圧力まで上昇させるように外缶給蒸弁3を制御するとよい。
【0035】
ここでいう所定圧力とは、滅菌運転の際、滅菌室1内に供給された蒸気が滅菌室1内の壁面や上部で凝縮しないように、滅菌室1内の圧力上昇よりも早く、蒸気ジャケット2内の圧力を上昇させることができる圧力をいう。
【0036】
通常、蒸気ジャケット2内の温度は、滅菌設定温度+α(135℃+2.3℃)に制御され、蒸気ジャケット2内の圧力は前記滅菌設定温度+α(137.3℃)に対応する飽和蒸気圧力(233.7kPaG)に制御される。
【0037】
電源スイッチが切られてから長時間を経過して大気圧まで低下した状態では、蒸気ジャケット2内の圧力を所望する飽和蒸気圧力まで上昇させる場合、蒸気ジャケット2内の圧力が50kPaGまではやや長い時間を要するするが、50kPaGを超えると、所望する飽和蒸気圧力まで比較的短時間に上昇する。また、100kPaGを超えると、より短時間で所望する飽和蒸気圧力まで上昇する。このようなことから、所定圧力は、50kPaG〜100kPaGが好適であり、100kPaGがより好適である。
【0038】
また、滅菌運転は、蒸気ジャケット2の蒸気圧力が前記した所定圧力以上に上昇していなければ前記の工程を開始せず、蒸気ジャケット2へ給蒸を行うように外缶給蒸弁3を制御し、蒸気ジャケット2の蒸気圧力が所定圧力以上となってから前記の工程を開始するようにしてもよい。
【0039】
また、空気排除工程は、滅菌室1内における減圧と給蒸を交互に行うようにし、減圧時には、外缶給蒸弁3を閉じて蒸気ジャケット2への給蒸を遮断するようにしてもよい。
【実施例】
【0040】
つぎに、本発明に係る蒸気滅菌装置における運転制御方法の実施例を図面を参照しながら説明する。
図2は本発明の第1実施例の各運転工程と各運転工程における滅菌室と蒸気ジャケット内の蒸気圧力の変化を示す説明図、図3は本発明の第2実施例の各運転工程と各運転工程における滅菌室と蒸気ジャケット内の蒸気圧力の変化を示す説明図、図4は本発明の第3実施例の各運転工程と各運転工程における滅菌室と蒸気ジャケット内の蒸気圧力の変化を示す説明図、図5は本発明の第4実施例の各運転工程と各運転工程における滅菌室と蒸気ジャケット内の蒸気圧力の変化を示す説明図である。
【0041】
[第1実施例]
本発明の第1実施例を図2により説明する。蒸気滅菌装置の運転開始は、先ず電源スイッチを操作することにより、遮断弁28および外缶給蒸弁3が開き、蒸気ジャケット2に蒸気が供給されて滅菌室1を暖める暖機運転が行われる。この暖機運転では、蒸気ジャケット2の蒸気圧を所定圧力(50kPaG〜100kPaG)まで上昇させて、暖機運転は終了し、待機工程へ移行する。
【0042】
そして、被滅菌物の滅菌を行う場合は、被滅菌物を滅菌室1に収容し、滅菌室1を密閉する扉(図示省略)を閉じて密閉し、スタートスイッチを操作することにより、滅菌運転が開始される。予熱工程が設定されている際には被滅菌物の予熱が行われ、次いで空気排除工程、給蒸工程、滅菌工程、排蒸工程、乾燥工程からなる工程が、制御器27で制御されて行われる。
【0043】
本例では、前記の運転中、暖機運転は蒸気ジャケット2の蒸気圧が所定圧力まで上昇することにより終了し、暖機運転終了後、滅菌運転を開始するまでの間、外缶給蒸弁3を閉じて蒸気ジャケット2への給蒸を遮断し、また、滅菌運転完了後からつぎの滅菌運転を開始するまでの間、外缶給蒸弁3を閉じて蒸気ジャケット2への給蒸を遮断する待機工程としている。
【0044】
本例について詳細に説明すると、まず、起動時に、電源スイッチを操作することにより、遮断弁28および外缶給蒸弁3が開き、蒸気ジャケット2に蒸気が供給され、滅菌室1を暖める暖機運転が行われる。この暖機運転は、本例では、蒸気ジャケット2の蒸気圧を100kPaGまで上昇させる。外缶圧力センサ26が蒸気ジャケット2の蒸気圧を100kPaGまで上昇したことを検出すると、外缶圧力センサ26からの検出信号に基づいて、制御器27により、外缶給蒸弁3の缶給蒸弁6が閉じられ、暖機運転が終了し、待機工程へ移行する。待機工程では、滅菌運転を開始するまでの間、外缶給蒸弁3が閉じられ蒸気ジャケット2への給蒸が遮断された状態にある。
【0045】
滅菌運転の開始に際し、まず、予熱工程が設定されている場合は、予熱工程が行われる。滅菌運転がスタートしても予熱工程では外缶給蒸弁3を閉じたままとする。そして、排蒸弁23を閉、給気弁9を閉として、予め設定された時間、被滅菌物を蒸気ジャケット2からの輻射熱で加熱する。予熱工程では、暖気運転によって暖められた蒸気ジャケット2の熱を利用するが、必要に応じて、外缶給蒸弁4を開き、所定圧力に制御して行っても良い。滅菌運転の開始にあっては、蒸気ジャケット2の蒸気圧が50kPaG以上であることが好ましい。
【0046】
予熱工程がタイムアップすると空気排除工程に移行する。図2における空気排除工程は、つぎのように行われる。
まず、排蒸弁23を開として、内缶給蒸弁6を開き、滅菌室1内に蒸気を流通させる工程を設定時間行わせた後、(1)排蒸弁23および内缶給蒸弁6を閉じ、真空排気弁13を開いて、真空ポンプ14を作動させて滅菌室1内を設定圧力まで減圧する。次いで、(2)真空ポンプ14を停止するとともに真空排気弁13を閉じ、内缶給蒸弁6を開いて、内缶圧力センサ25で検出される滅菌室1内の圧力が大気圧になるまで給蒸して、内缶給蒸弁6を閉じる。これら(1)および(2)を複数回繰り返す。
【0047】
(1)および(2)を複数回繰り返して、次に(1)を行った後、設定された滅菌温度にほぼ等しい飽和蒸気圧力になるまで滅菌室1内に蒸気を供給して加圧し(加圧パルス)、その直後、内缶給蒸弁6を閉、排蒸弁23を開にして、滅菌室1内を大気圧まで急減圧する。この滅菌室1内の圧力変化に応じて、蒸気ジャケット2はつぎのように制御される。(1)および(2)の動作中は滅菌室1内の圧力は大気圧を越えないので、蒸気ジャケット2内の圧力が大気圧以上であれば良い。暖気運転が終了し、待機工程後滅菌運転をさせた場合には、蒸気ジャケット2内の圧力は大気圧以上となっているので、外缶給蒸弁3は閉の状態のままである。
【0048】
次に、加圧パルスに移行すると、滅菌室1内は大気圧以上に加圧されるため、外缶給蒸弁3を開き、蒸気ジャケット2内へ蒸気を供給する。蒸気ジャケット2内の圧力は、設定されている滅菌温度となる飽和蒸気圧力よりもやや高い圧力、例えば135℃の滅菌温度設定の場合は137.3℃(飽和蒸気圧力233.7kPaG)になるよう昇圧される。外缶圧力センサ26の設定圧力に到達したら、設定圧力±5kPaG内になるよう外缶給蒸弁3を制御する。
【0049】
なお、加圧パルス移行時において、滅菌室1内の圧力上昇よりも蒸気ジャケット2内の圧力上昇が遅い場合には、内缶給蒸弁6を一時的に閉じて、滅菌室1内の給蒸を一時的に停止させるか、もしくは、必ず、蒸気ジャケット2内の圧力が先に上昇するように、外缶給蒸弁3の開動作のタイミングを早くするように設定しておけばよい。
【0050】
空気排除工程が終了すると、給蒸工程に移行する。給蒸工程は、所望の滅菌温度になるように滅菌室1内を蒸気加圧して飽和蒸気温度を上昇させる工程である。この工程において、蒸気ジャケット2内の圧力はすでに滅菌室1内の圧力よりもかならず高く制御されている。
【0051】
滅菌室1内の温度が所望の温度まで上昇したら滅菌工程に移行する。滅菌工程は、滅菌室1内を所望の温度で所定時間維持する工程である。この滅菌工程において、蒸気ジャケット2は、蒸気ジャケット2内の圧力≧滅菌室1内の圧力の関係になるよう内缶温度センサ30の検出温度に基づき、外缶給蒸弁3を制御する。
【0052】
滅菌工程が終了すると、滅菌室1内の蒸気を排出し(排蒸工程)、乾燥工程に移行する。乾燥工程では、減圧沸騰によって被滅菌物上の水分を蒸発させて乾燥させるため滅菌室1内の圧力は大気圧以下となる。排蒸弁23を閉じて、真空排気弁13を開き、真空ポンプ14を作動させて滅菌室1内を設定圧力まで減圧する。次に真空排気弁13を閉じ、真空ポンプ14を停止し、給気弁9を開いて、大気圧まで空気を導入して復圧する。乾燥工程は、この減圧と復圧の操作を設定時間の間繰り返して行う。あるいは、設定時間中、真空排気弁13を開き、真空ポンプ14を作動させて、滅菌室1内の減圧を継続しても良い。被滅菌物の乾燥の効果を高めるためには、蒸気ジャケット2からの輻射熱は必要である。このため、蒸気ジャケット2内の圧力は、滅菌工程と同じ圧力に保たれるよう、外缶圧力センサ26の検出圧力に基づいて、外缶給蒸弁3が制御される。この乾燥工程は、予め設定された時間継続する。
【0053】
乾燥工程が終了したら、真空排気弁13を閉じ、真空ポンプ14を停止するとともに、給気弁9を開いて、滅菌室1内を復圧する。内缶圧力センサ25が大気圧を検出すると滅菌運転が終了する。滅菌運転が終了すると同時に、外缶給蒸弁3を閉じて、蒸気ジャケット2への給蒸を遮断し、待機工程へ移行する。外缶給蒸弁3の遮断、すなわち待機工程は、次の滅菌運転のスタートスイッチが操作されるまで継続する。
【0054】
上記した本例の蒸気滅菌装置の運転制御では、待機工程では蒸気ジャケット2へ給蒸する外缶給蒸弁3を閉じて蒸気ジャケット2への給蒸を遮断するので、待機工程中は、蒸気ジャケット2や配管からの放熱が低下し、機械室や隣接する部屋における温度低減を図り、高温対策に講じられる設備コスト、エネルギーコストを低減させることができる。
【0055】
また、前記の滅菌運転における各工程のうち滅菌室1に給蒸する工程は、内缶圧力センサ25と外缶圧力センサ26により蒸気ジャケット2および滅菌室1の蒸気圧力を検出して、蒸気ジャケット2の蒸気圧力が滅菌室1の蒸気圧力よりも高くなるように外缶給蒸弁3を制御しているので、滅菌室1へ供給した蒸気が滅菌室1の表面で凝縮することを防止できる。また、乾燥工程での蒸気ジャケット2の圧力が滅菌工程時の蒸気ジャケット2の圧力と等しくなるように外缶給蒸弁3を制御するので、滅菌後に蒸気を排出した滅菌室1内の被滅菌物の乾燥も良好に行うことができる。
【0056】
[第2実施例]
本発明の第2実施例を図3により説明する。本例も、前記した第1実施例と同様に、蒸気滅菌装置の運転開始は、先ず電源スイッチを操作することにより、遮断弁28および外缶給蒸弁3が開き、蒸気ジャケット2に蒸気が供給されて滅菌室1が暖められる暖機運転が行われ、そして、被滅菌物の滅菌を行う場合は、被滅菌物を滅菌室1に収容し、滅菌室1を密閉する扉(図示省略)を閉じて密閉し、スタートスイッチを操作することにより、滅菌運転が開始され、予熱工程が設定されている際には被滅菌物の予熱が行われ、次いで空気排除工程、給蒸工程、滅菌工程、排蒸工程、乾燥工程からなる工程が、制御器27で制御されて行われる。
【0057】
本例では、前記の運転中、暖機運転は蒸気ジャケット2の蒸気圧が所定上限圧力まで上昇することにより終了し、暖機運転終了後、滅菌運転を開始するまでの間、外缶給蒸弁3を閉じて蒸気ジャケット2への給蒸を遮断し、また、滅菌運転完了後からつぎの滅菌運転を開始するまでの間、外缶給蒸弁3を閉じて蒸気ジャケット2への給蒸を遮断する待機工程とし、この待機工程中に蒸気ジャケット2の蒸気圧力が所定下限圧力より低下したことを検出したとき、外缶給蒸弁3を開いて蒸気ジャケット2内に給蒸し、蒸気ジャケット2の蒸気圧力を少なくとも所定下限圧力よりも高く、所定上限圧力よりも低い設定圧力まで上昇させ、蒸気ジャケット2への給蒸を遮断する。本実施例では、前記した前記の所定上限圧力は100kPaG、所定下限圧力は50kPaGであり、設定圧力は60kPaGとしている。
【0058】
さらに詳細に説明すると、まず、起動時に、電源スイッチを操作することにより、遮断弁28および外缶給蒸弁3が開き、蒸気ジャケット2に蒸気が供給され、滅菌室1を暖める暖機運転が行われる。この暖機運転は、本例では、蒸気ジャケット2の蒸気圧を所定上限圧力である100kPaGまで上昇させる。外缶圧力センサ26が蒸気ジャケット2の蒸気圧を100kPaGまで上昇したことを検出すると、外缶圧力センサ26からの検出信号に基づいて、制御器27により、外缶給蒸弁3の缶給蒸弁6が閉じられ、暖機運転が終了し、待機工程へ移行する。
【0059】
待機工程では、滅菌運転を開始するまでの間、外缶給蒸弁3が閉じられ蒸気ジャケット2への給蒸が遮断された状態にあるが、蒸気ジャケット2内の圧力を検出する外缶圧力センサ26が、待機工程中における蒸気ジャケット2の蒸気圧力が所定下限圧力である50kPaGまで低下したことを検出したとき、制御器27により制御されて外缶給蒸弁3が開となり、蒸気ジャケット2内に給蒸され、外缶圧力センサ26が、蒸気ジャケット2の蒸気圧力が少なくとも所定下限圧力よりも高く、所定上限圧力よりも低い設定圧力まで上昇させ、蒸気ジャケット2の蒸気圧力が設定圧力に達したら再び蒸気ジャケット2への給蒸が遮断される。
【0060】
滅菌運転の開始および滅菌運転にあっては、前記した第1実施例と同様なので、第1実施例の説明を援用する。滅菌運転が終了すると、同時に外缶給蒸弁3を閉じて、蒸気ジャケット2への給蒸を遮断し、待機工程へ移行する。待機工程は次の滅菌運転のスタートスイッチが操作されるまで継続する。
【0061】
上記した本例の蒸気滅菌装置の運転制御では、蒸気ジャケット2内の圧力を検出する外缶圧力センサ26が、待機工程中における蒸気ジャケット2の蒸気圧力が所定下限圧力である50kPaGまで低下したことを検出したとき、外缶給蒸弁3を開いて蒸気ジャケット2内に給蒸し、蒸気ジャケット2の蒸気圧力を少なくとも所定下限圧力である50kPaGよりも高く、所定上限圧力である100kPaGよりも低い設定圧力である60kPaGまで上昇させるので、滅菌運転の際、予熱工程で蒸気ジャケット2を、滅菌室1内に供給された蒸気が滅菌室1の表面や上部で凝縮しない温度とすることができる圧力まで短時間で上昇させることができ、工程を直ぐに開始しても、工程で滅菌室1へ供給した蒸気が滅菌室の表面で凝縮するといった事態が発生せず、また、滅菌運転の短縮が図れる。
そして、蒸気ジャケット2の蒸気圧力が設定圧力である60kPaGに達すると、再び蒸気ジャケット2への給蒸を遮断するので、蒸気ジャケット2の使用蒸気を可能な限り少なくすることができ、機械室や隣接する部屋における温度低減を図り、高温対策に講じられる設備コスト、エネルギーコストを低減させることができる。
【0062】
[第3実施例]
本発明の第3実施例を図4により説明する。本例も、前記した第1実施例と同様に、蒸気滅菌装置の運転開始は、先ず電源スイッチを操作することにより、遮断弁28および外缶給蒸弁3が開き、蒸気ジャケット2に蒸気が供給されて滅菌室1が暖められる暖機運転が行われ、そして、被滅菌物の滅菌を行う場合は、被滅菌物を滅菌室1に収容し、滅菌室1を密閉する扉(図示省略)を閉じて密閉し、スタートスイッチを操作することにより、滅菌運転が開始され、予熱工程が設定されている際には被滅菌物の予熱が行われ、次いで空気排除工程、給蒸工程、滅菌工程、排蒸工程、乾燥工程からなる工程が、制御器27で制御されて行われる。
【0063】
本例では、前記した第1実施例と同様に、前記の運転中、暖機運転は蒸気ジャケット2の蒸気圧が所定上限圧力まで上昇することにより終了し、暖機運転終了後、滅菌運転を開始するまでの間、外缶給蒸弁3を閉じて蒸気ジャケット2への給蒸を遮断し、また、滅菌運転完了後からつぎの滅菌運転を開始するまでの間、外缶給蒸弁3を閉じて蒸気ジャケット2への給蒸を遮断する待機工程としている。
【0064】
本例では、滅菌運転の開始に際し、そのときの蒸気ジャケット2の蒸気圧が所定下限圧力より低下していると、滅菌運転は開始せず、蒸気ジャケット2内に給蒸され、蒸気ジャケット2の蒸気圧力が所定下限圧力まで上昇すると蒸気ジャケット2への給蒸を遮断すると同時に、滅菌運転が開始する。本例にあっても、前記した第2実施例と同様に、前記の所定上限圧力は100kPaGに、そして所定下限圧力は50kPaGに設定されている。
【0065】
本例について詳細に説明すると、まず、起動時に、電源スイッチを操作することにより、遮断弁28および外缶給蒸弁3が開き、蒸気ジャケット2に蒸気が供給され、滅菌室1を暖める暖機運転が行われる。この暖機運転は、本例では、蒸気ジャケット2の蒸気圧を100kPaGまで上昇させる。外缶圧力センサ26が蒸気ジャケット2の蒸気圧を100kPaGまで上昇したことを検出すると、外缶圧力センサ26からの検出信号に基づいて、制御器27により、外缶給蒸弁3の缶給蒸弁6が閉じられ、暖機運転が終了し、待機工程へ移行する。待機工程では、滅菌運転を開始するまでの間、外缶給蒸弁3が閉じられ蒸気ジャケット2への給蒸が遮断された状態にある。
【0066】
そして、滅菌運転の開始に際し、滅菌運転スタートスイッチを操作したとき、そのときの蒸気ジャケット2の蒸気圧が50kPaGより低下していることを外缶圧力センサ26が検出すると、滅菌運転は開始せず、制御器27により制御されて外缶給蒸弁3が開となり、蒸気ジャケット2内に給蒸され、外缶圧力センサ26が、蒸気ジャケット2の蒸気圧力が50kPaGまで上昇したことを検出すると外缶給蒸弁3が閉となり、蒸気ジャケット2への給蒸を遮断すると同時に、滅菌運転が開始し、まず、予熱工程が設定されている場合は、予熱工程が行われる。
【0067】
予熱工程がタイムアップすると空気排除工程が行われる。空気排除工程は、つぎのように行われる。まず、排蒸弁23を開として、内缶給蒸弁6を開き、滅菌室1内に蒸気を流通させる工程を設定時間行わせた後、(1)排蒸弁23および内缶給蒸弁6を閉じ、真空排気弁13を開いて、真空ポンプ14を作動させて滅菌室1内を設定圧力まで減圧する。次いで、(2)真空ポンプ14を停止するとともに真空排気弁13を閉じ、内缶給蒸弁6を開いて、内缶圧力センサ25で検出される滅菌室1内の圧力が設定圧力(大気圧以上)になるまで給蒸して、内缶給蒸弁6を閉じる。
【0068】
これら(1)および(2)の操作を複数回繰り返す。このとき蒸気ジャケット2内の圧力は、滅菌室1内の検出圧力より必ず高くなるよう制御される。具体的には、(1)の動作で、滅菌室1内の圧力は大気圧以下、すなわち100℃以下であるので、外缶給蒸弁3は閉じたままとする。次に(2)の動作に移行したとき、外缶給蒸弁3を開き、内缶圧力センサ25の検出圧力よりも外缶圧力センサ26で検出される蒸気ジャケット2内の圧力が必ず滅菌室1内の圧力よりも高くなるように外缶給蒸弁3を制御する。再び、(1)に制御が移行したときには、滅菌室1内の圧力は低くなるので、外缶給蒸弁3を遮断する。なお、滅菌室1内の圧力が上昇に転じたとき、蒸気ジャケット2内の圧力の上昇が遅れて、滅菌室1内の圧力>蒸気ジャケット2内の圧力にならないよう、外缶給蒸弁3は内缶給蒸弁6が開くタイミングよりも早めに動作するように設定しておけばよい。
【0069】
空気排除工程が終了すると、給蒸工程に移行し、順次前記各工程を行う。給蒸工程移行の滅菌運転にあっては、前記した第1実施例と同様なので、第1実施例の説明を援用する。滅菌運転が終了すると、同時に外缶給蒸弁3を閉じて、蒸気ジャケット2への給蒸を遮断し、待機工程へ移行する。待機工程は次の滅菌運転のスタートスイッチが操作されるまで継続する。
【0070】
上記した本例の蒸気滅菌装置の運転制御では、待機工程では蒸気ジャケット2へ給蒸する外缶給蒸弁3を閉じて蒸気ジャケット2への給蒸を遮断するので、待機工程中は、蒸気ジャケット2や配管からの放熱が低下し、機械室や隣接する部屋における温度低減を図り、高温対策に講じられる設備コスト、エネルギーコストを低減させることができる。
【0071】
また、滅菌運転の開始に際し、そのときの蒸気ジャケット2の蒸気圧が所定下限圧力として設定された50kPaGより低下していると、滅菌運転は開始せず、蒸気ジャケット2内に給蒸され、蒸気ジャケット2の蒸気圧力が50kPaGまで上昇すると蒸気ジャケット2への給蒸を遮断すると同時に、滅菌運転が開始するので、滅菌運転の際、予熱工程で蒸気ジャケット2を、滅菌室1内に供給された蒸気が滅菌室1の表面や上部で凝縮しない温度とすることができる圧力まで短時間で上昇させることができ、前記工程を直ぐに開始しても、前記工程で滅菌室1へ供給した蒸気が滅菌室1の表面で凝縮するといった事態が発生せず、また、滅菌運転の短縮を図ることができる。
【符号の説明】
【0072】
1.滅菌室
2.蒸気ジャケット
3.外缶給蒸弁
4.外缶給蒸路
5.内缶給蒸路
6.内缶給蒸弁
7.給気路
8.空気フィルタ
9.給気弁
10.逆止弁
11.内缶排気路
12.外缶排蒸路
13.真空排気弁
14.真空ポンプ
15.逆止弁
16.逆止弁
17.外缶スチームトラップ
18.逆止弁
19.ドレン排出路
20.蒸気排出路
21.内缶スチームトラップ
22.逆止弁
23.排蒸弁
24.逆止弁
25.内缶圧力センサ
26.外缶圧力センサ
27.制御器
28.遮断弁
29.逆止弁
30.内缶温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起動時に蒸気ジャケットおよび必要に応じて滅菌室に給蒸して前記滅菌室を暖める暖機運転と、前記滅菌室に収容された被滅菌物を蒸気ジャケットからの熱で暖める予熱工程、前記滅菌室内の空気を排除する空気排除工程、前記滅菌室に設定された温度となる飽和蒸気圧力まで給蒸する給蒸工程、前記滅菌室内を設定温度に所定時間保持する滅菌工程、滅菌後に前記滅菌室の蒸気を排出する排蒸工程、前記滅菌室内の被滅菌物を乾燥させる乾燥工程からなる工程を含む滅菌運転を行う蒸気滅菌装置であって、
前記暖機運転終了後から最初の前記滅菌運転を開始するまでの間および前記滅菌運転完了後から次の前記滅菌運転を開始するまでの間、前記蒸気ジャケットへ給蒸する外缶給蒸弁を閉じて前記蒸気ジャケットへの給蒸を遮断する制御手段を備えたことを特徴とする蒸気滅菌装置。
【請求項2】
起動時に蒸気ジャケットおよび必要に応じて滅菌室に給蒸して前記滅菌室を暖める暖機運転と、前記滅菌室に収容された被滅菌物を蒸気ジャケットからの熱で暖める予熱工程、前記滅菌室内の空気を排除する空気排除工程、前記滅菌室に設定された温度となる飽和蒸気圧力まで給蒸する給蒸工程、前記滅菌室内を設定温度に所定時間保持する滅菌工程、滅菌後に前記滅菌室の蒸気を排出する排蒸工程、前記滅菌室内の被滅菌物を乾燥させる乾燥工程からなる工程を含む滅菌運転を行う蒸気滅菌装置における運転制御方法であって、
前記暖機運転終了後から最初の前記滅菌運転を開始するまでの間および前記滅菌運転完了後から次の前記滅菌運転を開始するまでの間を待機工程とし、前記待機工程では前記蒸気ジャケットへ給蒸する外缶給蒸弁を閉じて前記蒸気ジャケットへの給蒸を遮断することを特徴とする蒸気滅菌装置の運転制御方法。
【請求項3】
前記滅菌室内の圧力を検出する内缶圧力センサと前記蒸気ジャケット内の圧力を検出する外缶圧力センサを設け、前記滅菌運転における各工程のうち前記滅菌室に給蒸する工程は、前記内缶圧力センサと外缶圧力センサにより前記蒸気ジャケットおよび前記滅菌室の蒸気圧力を検出して、前記蒸気ジャケットの蒸気圧力が前記滅菌室の蒸気圧力よりも高くなるように前記外缶給蒸弁を制御し、前記乾燥工程での前記蒸気ジャケットの圧力は前記滅菌工程時の前記蒸気ジャケットの圧力と等しくなるように前記外缶給蒸弁を制御することを特徴とする請求項2に記載の蒸気滅菌装置の運転制御方法。
【請求項4】
前記待機工程では、待機工程中に前記蒸気ジャケットの蒸気圧力が所定圧力より低下した場合、前記蒸気ジャケット内に給蒸し前記蒸気ジャケットの蒸気圧力を少なくとも所定圧力まで上昇させるように前記外缶給蒸弁を制御することを特徴とする請求項2または3に記載の蒸気滅菌装置の運転制御方法。
【請求項5】
前記滅菌運転は、前記蒸気ジャケットの蒸気圧力が所定圧力以上に上昇していなければ前記工程を開始せず、前記蒸気ジャケットへ給蒸を行うように前記外缶給蒸弁を制御し、前記蒸気ジャケットの蒸気圧力が所定圧力以上となってから前記工程を開始することを特徴とする請求項2または3に記載の蒸気滅菌装置の運転制御方法。
【請求項6】
前記空気排除工程は、前記滅菌室内における減圧と給蒸を交互に行うようにし、減圧時には、前記外缶給蒸弁を閉じて前記蒸気ジャケットへの給蒸を遮断することを特徴とする請求項2から5のいずれか1に記載の蒸気滅菌装置の運転制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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