説明

蒸気発生器

【課題】Uベンド部の耐震性及び流動振動に対する耐性を確保すること。
【解決手段】蒸気発生器は、複数の伝熱管の曲がり部が集合しているUベンド部18の周囲を一周して取り囲み、かつ、Uベンド部18の外周部を取り囲む管群外筒3との間に、Uベンド部18に対して所定の間隔を有して設けられる環状部材21と、環状部材21と管群外筒3との間に設けられる第2の支持部材22と、複数の伝熱管を格納する胴部2に取り付けられて、第2の支持部材22を支持する第3の支持部材23と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気発生器が有する伝熱管の曲がり部が集合した部分の耐震構造に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気発生器は、U字形状の曲がり部を有したU字形状の伝熱管が複数整列されたものである。U字形状の曲がり部が集合している部分をUベンド部という。この部分の地震に対する耐性(耐震性)を向上させるための構造が知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6772832号明細書
【特許文献2】米国特許第5692557号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、Uベンド部において複数の伝熱管を保持する部材を支持部材が固定する構造であるが、前記支持部材は蒸気発生器の容器に固定されていないので、Uベンド部の耐震性を十分に確保できないおそれがある。特許文献2の技術は、支持部材を介して伝熱管を蒸気発生器の容器に固定する構造であるが、Uベンド部の拘束力が大きいと、流動振動に対する耐性に影響を与えるおそれがある。
【0005】
本発明は、Uベンド部の耐震性及び流動振動に対する耐性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、複数の伝熱管の曲がり部が集合しているUベンド部の周囲を取り囲み、かつ、前記Uベンド部の外周部を取り囲む管群外筒との間に、前記Uベンド部に対して所定の間隔を有して設けられる第1の支持部材と、前記第1の支持部材と前記管群外筒との間に設けられる第2の支持部材と、前記複数の伝熱管を格納する胴部に取り付けられて、前記第2の支持部材を支持する第3の支持部材と、を含むことを特徴とする蒸気発生器である。
【0007】
この蒸気発生器は、地震等により、断面が円形形状の胴部の径方向と平行な方向にUベンド部が振動すると、第1の支持部材と、第2の支持部材及び第3の支持部材とを介して、Uベンド部の振動を胴部で受けることができるので、Uベンド部の耐震性が確保される。また、第1の支持部材は、Uベンド部に対して所定の間隔を有して配置されているので、Uベンド部の拘束力を低減することができる。このため、蒸気発生器が運用されているときには、第1の支持部材とUベンド部との間を通過する二次冷却水による伝熱管等の振動摩耗等を抑制することができるので、伝熱管の流動振動に対する耐性に与える影響を低減して、前記耐性を確保することができる。
【0008】
本発明において、前記第1の支持部材は、前記Uベンド部における前記伝熱管の間に配置された複数の振止部材の端部を連結する保持部材を複数連結するブリッジを、所定の間隔を有して挟み込んで、前記ブリッジの動きを規制する重なることが好ましい。第1の支持部材に取り付けられた規制部材は、Uベンド部において、振止部材及び保持部材を介してブリッジに支持されている伝熱管を拘束しない。このため、蒸気発生器が運用されているときには、規制部材とUベンド部との間に形成された隙間を通過する二次冷却水によるブリッジの振動摩耗等を抑制することができるので、伝熱管の流動振動に対する耐性に与える影響を低減し、前記耐性の低下を抑制することができる。また、地震等によってUベンド部及びブリッジが振動した場合、第1の支持部材、第2の支持部材及び第3の支持部材を介して胴部に支持されている規制部材は、ブリッジの振動を規制する。規制部材とブリッジとの間隔は、第1の支持部材とUベンド部の複数の伝熱管との間隔よりも小さいので、より効果的にUベンド部の振動を抑制することができる。その結果、規制部材を用いることにより、Uベンド部の耐震性をより確実に確保することができる。
【0009】
本発明において、前記規制部材は、前記ブリッジと対向する部分にオリフィスを有することが好ましい。このようにすると、ブリッジの振動を減衰させる減衰作用が得られるので、Uベンド部が有する複数の伝熱管へ作用する加速度の急激な変化が緩和されるので、Uベンド部の耐震性がより向上する。
【0010】
本発明において、複数の前記第2の支持部材が、前記第1の支持部材から前記管群外筒に向かって放射状に延在して前記管群外筒に固定され、複数の前記第3の支持部材が、前記管群外筒から放射状に延在して、前記管群外筒と前記胴部とを連結することが好ましい。このようにすることで、第1の支持部材は、第2の支持部材及び第3の支持部材を介して蒸気発生器の胴部に支持されるとともに、管群外筒は、第3の支持部材によって胴部に支持される。さらに、管群外筒は、第1の支持部材と第2の支持部材とによって補強されるので、強度が向上する。その結果、地震によって振動したUベンド部の伝熱管は、第1の支持部材、第2の支持部材、管群外筒及び第3の支持部材を介して支持されるので、Uベンド部の耐震性が向上する。
【0011】
本発明において、前記第1の支持部材は、前記Uベンド部の頂部に向かって複数配列される重なることが好ましい。このようにすることで、よりUベンド部の振動をより確実に抑制して、耐震性を向上させることができる。
【0012】
本発明において、複数の前記第1の支持部材間において、複数の前記第2の支持部材同士及び複数の前記第2部材同士は、複数の前記第1の支持部材が配列される方向から見た場合において重なることが好ましい。このようにすると、管支持板からUベンド部の頂部に向かう二次冷却水の流れの乱れを抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、Uベンド部の耐震性及び流動振動に対する耐性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本実施形態に係る蒸気発生器の概略図である。
【図2】図2は、伝熱管の曲がり部を示す図である。
【図3】図3は、Uベンド部の斜視図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る蒸気発生器の耐震構造を示す斜視図である。
【図5】図5は、本実施形態に係る蒸気発生器の耐震構造の平面図である。
【図6】図6は、本実施形態に係る蒸気発生器の耐震構造の一部を拡大した図である。
【図7】図7は、本実施形態に係る蒸気発生器の耐震構造において、規制部材とブリッジとの関係を示す図である。
【図8】図8は、本実施形態の変形例に係る耐震構造を示す平面図である。
【図9】図9は、規制部材の変形例を示す図である。
【図10】図10は、規制部材の変形例を示す図である。
【図11】図11は、規制部材の変形例を示す図である。
【図12】図12は、規制部材の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。本実施形態において、下とは鉛直方向(重力が作用する方向)側であり、上とは鉛直方向に対して反対側である。
【0016】
図1は、本実施形態に係る蒸気発生器の概略図である。図2は、伝熱管の曲がり部を示す図である。図3は、Uベンド部の斜視図である。蒸気発生器1は、例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)に用いられる。加圧水型原子炉は、原子炉冷却材および中性子減速材として軽水を使用している。加圧水型原子炉は、軽水を一次冷却材として用いる。加圧水型原子炉は、一次冷却材(一次冷却水)を、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水として、蒸気発生器1に送る。蒸気発生器1では、高温高圧の一次冷却水の熱を二次冷却材(二次冷却水)に伝え、二次冷却水を水蒸気とする。この水蒸気は、蒸気タービンに送られてこれを駆動する。前記蒸気タービンの出力軸には発電機の入力軸が連結されているので、蒸気タービンによって駆動された発電機は、電力を発生する。
【0017】
蒸気発生器1は、胴部2を有する。胴部2は、上下方向に延在し、かつ密閉された中空円筒形状であって、上半部に対して下半部の方が小径の構造物である。胴部2は、一端部側に水室7が配置され、他端部側に蒸気排出口12が配置される。蒸気発生器1は、水室7を下方に、蒸気排出口12を上方に向けて設置される。
【0018】
胴部2の下半部内から上半部にかけて、胴部2の内壁面と所定間隔をもって配置された円筒形状の管群外筒(ラッパー管)3が設けられている。この管群外筒3は、その下端部が、胴部2の下半部内の下方に配置された管板4まで延在している。管群外筒3内には、図2に示すようなU字形状の曲がり部5Uを有する複数の伝熱管5を有する伝熱管群51が設けられている。各伝熱管5は、曲がり部のU字形状の部分を上方、すなわち蒸気排出口12に向けて配置され、下方、すなわち水室7側に向く端部は管板4に支持されるとともに、中間部が複数の管支持板6により支持されている。複数の伝熱管5のU字形状の曲がり部が集合した部分は、Uベンド部18である。Uベンド部18は、伝熱管群51の上方、すなわち蒸気排出口12側に配置される。管支持板6には、多数の貫通孔が形成されており、この貫通孔内に各伝熱管5が非接触状態で貫通している。
【0019】
胴部2の下端部には、水室7が設けられている。水室7は、内部が隔壁8により入室71と出室72とに区画されている。入室71には、各伝熱管5の一端部が連通され、出室72には、各伝熱管5の他端部が連通されている。また、入室71には、胴部2の外部に通じる入口ノズル711が形成され、出室72には、胴部2の外部に通じる出口ノズル721が形成されている。そして、入口ノズル711には、加圧水型原子炉から一次冷却水が送られる冷却水配管が連結される。出口ノズル721には、熱交換された後の一次冷却水を加圧水型原子炉に送る冷却水配管が連結される。
【0020】
胴部2の上半部には、給水Wを蒸気Sと熱水とに分離する気水分離器9及び分離された蒸気Sの湿分を除去して乾き蒸気に近い状態とする湿分分離器10が設けられている。気水分離器9と伝熱管群51との間には、外部から胴部2内に二次冷却水を給水する給水管11が挿入されている。さらに、胴部2の上端部には、蒸気排出口12が形成されている。また、胴部2の下半部内には、給水管11から胴部2内に給水された二次冷却水を、胴部2と管群外筒3との間を流下させて管板4で折り返させ、伝熱管群51に沿って上昇させる給水路13が設けられている。なお、蒸気排出口12には、タービンに蒸気を送る冷却水配管が連結され、給水管11には、タービンで使用された蒸気が復水器で冷却された二次冷却水を供給するための冷却水配管が連結される。
【0021】
このような蒸気発生器1は、加圧水型原子炉で加熱された一次冷却水が入室71に送られ、多数の伝熱管5内を通って循環して出室72に至る。一方、復水器で冷却された二次冷却水は、給水管11に送られ、胴部2内の給水路13を通って伝熱管群51に沿って上昇する。このとき、胴部2内においては、高圧高温の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換が行われる。そして、冷やされた一次冷却水は出室72から加圧水型原子炉に戻される。一方、高圧高温の一次冷却水と熱交換した二次冷却水は、胴部2内を上昇し、気水分離器9で蒸気と熱水とに分離される。そして、分離された蒸気は、湿分分離器10で湿分を除去されてからタービンに送られる。
【0022】
蒸気発生器1において、一次冷却水が各伝熱管5内を通過する際、逆U字形状の曲がり部5Uにおいて、流体励起振動が発生する。そこで、伝熱管5の曲がり部5Uには、振止部材が設けられている。伝熱管群51の上端は、Uベンド部18である。ベンド部18は、複数の伝熱管5の逆U字形状の曲がり部5Uが集合して配置されている部分である。図3に示すように、伝熱管5は、外側(上側)に向けて曲がり部5Uの曲率半径が大きなものが配列され、かつ配列されたものを重ねつつ曲がり部5Uの曲率半径を変化させることで、伝熱管群51の上端部を半球形状に形成している。すなわち、Uベンド部18は、半球形状であり、図1に示す蒸気排出口12に最も近い部分がUベンド部18の頂部になる。
【0023】
振止部材14は、重ねられた伝熱管5の列の間に挿入されている。振止部材14は、矩形断面の棒状部材をほぼV字形状に形成した部材である。振止部材14は、重ねられた各伝熱管の列における同径の部位(所定位置)に屈曲部が配置され、かつ、曲がり部の曲率半径が最も大きい伝熱管5の円弧部の外側に両端部が突出されている。このため、振止部材14の端部は、伝熱管群51の円弧に沿って一列に並んで配置される。
【0024】
また、振止部材14は、大きいほぼV字形状のものの内側に、小さいV字形状のものが配置されて対をなしている。本実施形態においては、この振止部材14の対が、伝熱管5の半円部分に3つ配置されている。さらに、振止部材14は、重ねられた伝熱管5の列の間に挿入されている部分が、振動を抑止するのに好ましい材料(例えば、SUS405)で形成されている。
【0025】
振止部材14の端部には、図3に示すように保持部材16が溶接されて、複数の振止部材14の端部を連結している。保持部材16は、Uベンド部18の外周、すなわち、伝熱管群51の半球状の外周に沿って取り付けられた円弧状の棒状部材である。保持部材16は、複数の伝熱管5が重ねられる方向と直交する方向に延在している。複数の保持部材16は、ブリッジ17が連結する。ブリッジ17は、Uベンド部18の外周、すなわち、伝熱管群51の半球状の外周に沿って配置された、円弧形状かつ板状の部材である。ブリッジ17は、Uベンド部18において伝熱管5が延在する方向に沿って延在している。図3においては1本のブリッジ17が示されているが、ブリッジ17は、複数の伝熱管5が重ねられる方向と平行な方向に向かって複数配置されている。次に、本実施形態に係る蒸気発生器の耐震構造を説明する。
【0026】
図4は、本実施形態に係る蒸気発生器の耐震構造を示す斜視図である。図5は、本実施形態に係る蒸気発生器の耐震構造の平面図である。図6は、本実施形態に係る蒸気発生器の耐震構造の一部を拡大した図である。図7は、本実施形態に係る蒸気発生器の耐震構造において、規制部材とブリッジとの関係を示す図である。蒸気発生器の耐震構造(以下、耐震構造という)20は、第1の支持部材としての環状部材21(21A、21B)と、第2の支持部材22(22A、22B)と、第3の支持部材23(23A、23B)とを含んでいる。耐震構造20は、環状部材21と、第2の支持部材22と、第3の支持部材23とを、それぞれ2つずつ有している。以下において、これらを区別するときには、管支持板6側のものに符号Aを追加し、Uベンド部18の頂部18T側のものに符号Aを追加する。これらを区別しないときには、符号A、Bは追加しない。
【0027】
環状部材21は、複数の伝熱管5の曲がり部5Uが集合しているUベンド部18の周囲を一周して取り囲んでいる。そして、環状部材21は、Uベンド部18の外周部を取り囲む管群外筒3との間に、Uベンド部18に対して所定の間隔を有して設けられる。第2の支持部材22は、環状部材21と管群外筒3との間に設けられて、環状部材21を管群外筒3に支持する。第3の支持部材23は、複数の伝熱管23を格納する胴部2(より具体的には胴部2の内周面)に取り付けられて、第2の支持部材22を支持する。第2の支持部材22と第3の支持部材23との間には、管群外筒3が介在しているので、第3の支持部材23は、管群外筒3を介して環状部材21を胴部2に支持する。環状部材21は、平面視が円形の構造体である。環状部材21は、中空の円管を環状に形成してもよいし、中実かつ断面が円形の棒状部材を環状に形成してもよい。
【0028】
図6に示すように、複数の第2の支持部材22は、環状部材21の径方向外側に設けられて、管群外筒3に向かって環状部材21から放射状に延在する。複数の第3の支持部材23は、断面円形の胴部2の内面から管群外筒3に向かって、胴部2の径方向と平行な方向に延在する。すなわち、複数の第3の支持部材23は、管群外筒3から放射状に延在する。
【0029】
第2の支持部材22は、環状部材21側とは反対側の端部が、台座27を介して管群外筒3に固定されている。第2の支持部材22と台座27とは、例えば、溶接によって接合されて取り付けられる。台座27は、例えば、ボルト等の締結手段によって管群外筒3に固定される。このような構造により、第2の支持部材22は、管群外筒3に固定される。
【0030】
第3の支持部材23は、両端部に台座27が取り付けられている。第3の支持部材23と台座27とは、例えは、溶接によって接合されて取り付けられる。第3の支持部材23の一端部側の台座27は、例えば、ボルト等の締結手段によって胴部2に固定される。また、第3の支持部材23の他端部側の台座27は、第2の支持部材22に取り付けられている台座27を管群外筒3に固定しているボルトによって、管群外筒に固定される。このような構造により、第3の支持部材23は、胴部2と管群外筒3とを連結する。そして、環状部材21は、第2の支持部材22と第3の支持部材23とを介して、胴部2に支持される。本実施形態において、管支持板6側の環状部材21Aと、Uベンド部18の頂部18T側の環状部材21Bとは、直径が異なるが、それぞれ、第2の支持部材22A、22Bと第3の支持部材23A、23Bとによって、胴部2に支持される。
【0031】
地震等により、断面が円形形状の胴部2の径方向と平行な方向にUベンド部18が振動すると、環状部材21と、第2の支持部材22及び第3の支持部材23とを介して、Uベンド部18の振動を胴部2で受けることができるので、Uベンド部18の耐震性が確保される。また、環状部材21は、Uベンド部18に対して所定の間隔を有して配置されているので、Uベンド部18の拘束力を低減することができる。なお、本実施形態では、環状部材21がUベンド部18の伝熱管5を拘束しないので、拘束力は0である。このため、蒸気発生器1が運用されているときには、環状部材21とUベンド部18との間を通過する二次冷却水による伝熱管5等の振動摩耗等を抑制することができる。その結果、環状部材21を有する耐震構造20は、伝熱管5の流動振動に対する耐性に与える影響を低減して、前記耐性を確保することができる。また、耐震構造20は、既設の蒸気発生器1に対しても補修工事により環状部材21、第2の支持部材22及び第3の支持部材23を取り付けることができるので、既設の蒸気発生器1の耐震性を向上させることができる。
【0032】
本実施形態において、耐震構造20の環状部材21は、図5、図6に示す規制部材24を有する。規制部材24は、図6、図7に示すように、Uベンド部18における伝熱管5の間に配置された複数の振止部材14の端部を連結する保持部材16を複数連結するブリッジ17を、所定の間隔Cを有して挟み込んで、ブリッジ17の動きを規制する。より具体的には、保持部材16は、伝熱管5が重ねられる方向におけるブリッジ17の動きを規制する。
【0033】
規制部材24Aは、溝部24Sを有している。この溝部24Sに、ブリッジ17が所定の間隔Cを有して挟み込まれる。規制部材24Aは、環状部材21Aに、規制部材24Bは環状部材21Bに、例えば、溶接等の接合手段によって接合されて、取り付けられる。規制部材24とブリッジ17とは、所定の間隔C(5mmから10mm程度)を有しているので、両者の間には隙間が生じる。
【0034】
このような構造により、環状部材21に取り付けられた規制部材24は、Uベンド部18において、振止部材14及び保持部材16を介してブリッジ17に支持されている伝熱管5を拘束しないので、伝熱管5の拘束力は0である。このため、蒸気発生器1が運用されているときには、規制部材24とUベンド部18との間に形成された隙間を通過する二次冷却水によるブリッジ17の振動摩耗等を抑制することができる。その結果、環状部材21を有する耐震構造20は、伝熱管5の流動振動に対する耐性に与える影響を低減し、前記耐性の低下を抑制することができる。また、地震等によってUベンド部18及びブリッジ17が振動した場合、環状部材21、第2の支持部材22及び第3の支持部材23を介して胴部2に支持されている規制部材24は、ブリッジ17の振動を規制する。ブリッジ17は、Uベンド部18の複数の伝熱管5を支持しているので、これらの振動も規制部材24によって規制される。規制部材24とブリッジ17との間隔は、環状部材21とUベンド部18の複数の伝熱管5との間隔よりも小さいので、規制部材24を用いれば、より効果的にUベンド部18の振動を抑制することができる。その結果、規制部材24を有する耐震構造20は、Uベンド部18の耐震性をより確実に確保することができる。
【0035】
本実施形態において、環状部材21は、Uベンド部18の頂部18Tに向かって複数配列されている。より具体的には、管支持板6からUベンド部18の頂部18Tに向かって、2つの環状部材21A、21Bが配置されている。このようにすることで、Uベンド部18の振動をより確実に抑制して、耐震性をさらに確保することができる。環状部材21の数は2個に限定されるものではなく、3個以上でもよい。また、1個の環状部材21でUベンド部18の耐震性を確保することができれば、環状部材21は1個でもよい。
【0036】
耐震構造20が複数の環状部材21を有する場合、複数の環状部材21間において、複数の第2の支持部材22同士及び複数の第2部材23同士は、複数の環状部材21が配列される方向から見た場合に、重なることが好ましい。このようにすると、管支持板6からUベンド部18の頂部18Tに向かう二次冷却水の流れの乱れを抑制することができる。なお、複数の第2の支持部材22同士及び複数の第2部材23同士は、複数の環状部材21が配列される方向から見た場合に、重なっていることを排除するものではない。
【0037】
図8は、本実施形態の変形例に係る耐震構造を示す平面図である。図5に示した耐震構造20は、第2の支持部材22と第3の支持部材23とが、環状部材21から放射状に延出しているが、本変形例の耐震構造20aは、第2の支持部材22aと第3の支持部材23aとが、環状部材21aから放射状に延出していない点が異なる。第2の支持部材22と第3の支持部材23とが、環状部材21から放射状に延出する場合は、環状部材21の径方向と平行な方向に延出する。すなわち、第2の支持部材22と第3の支持部材23とは、環状部材21の外周部の接線と直交する方向に延出する。本変形例においては、第2の支持部材22aと第3の支持部材23aとは、環状部材21aの外周部の接線と直交以外の方向に延出する。このようにしても、環状部材21aは、第2の支持部材22aと第3の支持部材23aとを介して、胴部2に支持される。
【0038】
本実施形態において、第1の支持部材の一例として環状部材21、21aを説明したが、第1の支持部材は、環状部材21等に限定されるものではない。すなわち、第1の支持部材は、Uベンド部18の周囲を一周して取り囲み、かつ、Uベンド部18の外周部を取り囲む管群外筒3との間に、Uベンド部18に対して所定の間隔を有して設けられる部材であればよい。したがって、第1の支持部材は、例えば、Uベンド部18を取り囲んで覆うような、かご状の部材であってもよい。
【0039】
(規制部材の変形例)
図9から図12は、規制部材の変形例を示す図である。本変形例に係る規制部材は、ブリッジと対向する部分にオリフィスを有する点が異なる。図9、図10に示す規制部材24aは、溝部24S内のブリッジ17aと対向する部分から、外側部24Yに貫通するオリフィス25を複数有している。ブリッジ17aは、両方の側面17Saが規制部材24aに挟み込まれるが、規制部材24aは、両方の側面17Saと対向する部分にオリフィス25を有している。なお、ブリッジ17aは、規制部材24aの溝部24Sに挟まれる部分(ブリッジ端部)17Taは、それ以外の部分よりも幅が大きくなっている。規制部材24aは、両方の外側部24Yから溝部24Sの開口部に延出する延出部24Eを有している。両方の延出部24E間の寸法は、ブリッジ端部17Taの幅よりも小さいので、溝部24Sからのブリッジ17aの脱落が防止される。図10に示すように、オリフィス25は、開口部よりも内部の方が内径の小さくなっているが、オリフィス25は、このような形態に限定されるものではない。
【0040】
ブリッジ端部17Taの両方の側面17Saと規制部材24aの溝部24Sとの間は、所定の間隔Caが設けられている。また、延出部24Eとブリッジ端部Taとの間には、所定の間隔Cbが設けられている。規制部材24がオリフィス25を有することにより、溝部24S内でブリッジ端部Taが移動した場合、溝部24S内の二次冷却水がオリフィス25から流出入する。これによって、ブリッジ17aの振動を減衰させる減衰作用が得られるので、Uベンド部18が有する複数の伝熱管5へ作用する加速度の急激な変化が緩和される。その結果、Uベンド部の耐震性がより向上する。なお、延出部24Eとブリッジ端部Taとの間に設けられる所定の間隔Cbからも、二次冷却水が流出入する。その結果、これによってもブリッジ17aの振動の減衰作用が得られるので、Uベンド部18の耐震性がより向上する。
【0041】
図11に示す規制部材24bは、溝部24S内に、ブリッジ17の両方の側面17Sと対向する、断面コの字形状の中間支持部材26を有する。中間支持部材26と規制部材24bとの間には、ばね27が配置される。ばね27は、ブリッジ17へ向かう力を中間支持部材26に与えている。また、規制部材24bは、図9、図10に示す規制部材24aと同様に、溝部24S内のブリッジ17と対向する部分から、外側部24Yに貫通するオリフィス25を複数有している。このような構造により、規制部材24bは、オリフィス25によるブリッジ17の振動の減衰作用に加え、ばね27による衝撃吸収作用が得られる。その結果、規制部材24bは、Uベンド部18の耐震性をより向上させることができる。
【0042】
図12に示す規制部材24cは、図11に示す規制部材24bと同様に、溝部24S内に、ブリッジ17の両方の側面17Sと対向する中間支持部材26cを有するが、2個の板状の中間支持部材26cで、ブリッジ端部17Tcを挟持する点が異なる。このため、2個の中間支持部材26cは、ブリッジ端部17Tcと接している。また、ブリッジ端部17Tcは、断面が円形である。このようにすることで、ブリッジ17cの中間支持部材26cに対する傾斜を許容できる。
【0043】
それぞれの中間支持部材26cと、規制部材24cとの間には、ばね27が配置される。ばね27は、ブリッジ17へ向かう力を中間支持部材26に与えている。このような構造により、規制部材24cは、上述した規制部材24bと同様に、オリフィス25によるブリッジ17cの振動の減衰作用に加え、ばね27による衝撃吸収作用が得られる。その結果、規制部材24cは、Uベンド部18の耐震性をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 蒸気発生器
2 胴部
3 管群外筒
4 管板
5 伝熱管
5U 曲がり部
6 管支持板
7 水室
8 隔壁
9 気水分離器
10 湿分分離器
11 給水管
12 蒸気排出口
13 給水路
14 振止部材
16 保持部材
17、17a、17c ブリッジ
17Ta、17Tc ブリッジ端部
17S、17Sa 側面
18 Uベンド部
18T 頂部
20、20a 耐震構造
21、21A、21B、21a 環状部材(第1の支持部材)
22、22A、22B、22a 第2の支持部材
23、23A、23B、23a 第3の支持部材
24、24A、24B、24a 規制部材
24E 延出部
24Y 外側部
24S 溝部
25 オリフィス
26、26c 中間支持部材
27 台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の伝熱管の曲がり部が集合しているUベンド部の周囲を取り囲み、かつ、前記Uベンド部の外周部を取り囲む管群外筒との間に、前記Uベンド部に対して所定の間隔を有して設けられる第1の支持部材と、
前記第1の支持部材と前記管群外筒との間に設けられる第2の支持部材と、
前記複数の伝熱管を格納する胴部に取り付けられて、前記第2の支持部材を支持する第3の支持部材と、
を含むことを特徴とする蒸気発生器。
【請求項2】
前記第1の支持部材は、前記Uベンド部における前記伝熱管の間に配置された複数の振止部材の端部を連結する保持部材を複数連結するブリッジを、所定の間隔を有して挟み込んで、前記ブリッジの動きを規制する規制部材を有する請求項1に記載の蒸気発生器。
【請求項3】
前記規制部材は、前記ブリッジと対向する部分にオリフィスを有する請求項2に記載の蒸気発生器。
【請求項4】
複数の前記第2の支持部材が、前記第1の支持部材から前記管群外筒に向かって放射状に延在して前記管群外筒に固定され、
複数の前記第3の支持部材が、前記管群外筒から放射状に延在して、前記管群外筒と前記胴部とを連結する請求項1から3のいずれか1項に記載の蒸気発生器。
【請求項5】
前記第1の支持部材は、前記Uベンド部の頂部に向かって複数配列される請求項1から4のいずれか1項に記載の蒸気発生器。
【請求項6】
複数の前記第1の支持部材間において、複数の前記第2の支持部材同士及び複数の前記第2部材同士は、複数の前記第1の支持部材が配列される方向から見た場合において重なる請求項5に記載の蒸気発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−11380(P2013−11380A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143554(P2011−143554)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】