説明

蒸着トリアジンを含む紙基材、および前記基材を含むラミネートの製造方法

本発明は、結晶トリアジンの量が約g/m以上かつ約100g/m以下である、蒸着トリアジンを含む紙基材に関する。本発明はまた、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂と紙との少なくとも1つの硬化層を含むラミネートの製造方法であって、a)トリアジンを蒸着によって紙上に付着させて、蒸着トリアジンを含む紙基材を得、b)トリアジン付着紙にホルムアルデヒド溶液か、またはF/M比率が1.5以上であるメラミンホルムアルデヒド樹脂を含浸させるか、あるいはトリアジン付着紙をF/M比率が1.5以上であるメラミンホルムアルデヒド樹脂を有する含浸シートに隣接させて置くか、あるいはb’)前記トリアジン付着紙の1つまたは複数の層を1つまたは複数の他の層と一緒にプレス内に置いて紙のスタックを得、さらにホルムアルデヒドをプレス内に注入し、c)複合材料のF/M比率が1.6以下であるような量にし、d)1つまたは複数の他の層とともに紙に圧力を加え、かつ/または十分な温度を加えてトリアジンおよび樹脂を硬化させる、ラミネートの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ラミネート、特に化粧板を製造するための方法に関する。ラミネートは、好ましくはメラミン−ホルムアルデヒド樹脂と紙(好ましくは色またはパターン(装飾)の付いた紙)との少なくとも1つの硬化層を含む。
【0002】
化粧板は建築工業および家具製造業で多く使用されている。そのような製品は、高い摩耗抵抗のある硬化樹脂の外装材(これは、そのほかに薬品および湿気に対する大きな抵抗力を有する)を有する。一般に、それらの製品は硬化樹脂および繊維材料を含む。一般に、ラミネートは、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を含浸させた化粧紙から製造され、1枚または複数枚のベースシートへの熱または圧力によって硬化される。例えば、パーティクルボードまたは厚紙を1枚または複数枚のメラミン−ホルムアルデヒド樹脂含浸紙シートで覆うことができ、その後でそれは熱および圧力によって硬化される。別の例では、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂含浸紙をフェノール−ホルムアルデヒド樹脂含浸クラフト紙のスタックの最上部の上に置き、その後で硬化させる。メラミン−ホルムアルデヒド樹脂は、例えば、EP−A−0561432に記載されている。
【0003】
最終ラミネートを製造するためによく用いられる3つの方法が知られており、それは低圧ラミネート(Low Pressure Laminate)(LPL)、高圧ラミネート(HPL)および連続加圧ラミネート(Continuous Pressure Laminate)(CPL)である。低圧は厚紙またはパーティクルボードに使用されることが最も多いが、高圧は一般にはいわゆるクラフト紙に使用される。シート(つまり、HPL法で得られる製品)は一般には自立性(self−supportive)ではない。一般に、それらはパーティクルボードまたは中質繊維板(MDF)などの剛性基材に、好適な接着剤またはにかわで接着される。連続加圧ラミネート法では、紙はロールから連続ベルトプレス内へ供給される。
【0004】
現行の製造には、容易に克服されない欠点がある。1つの問題は、高圧または連続法で製造されるラミネートは非常に固くて、そうしたシートを曲げることまたは「二次成形」することが難しいというものである。それでも、耐摩耗性および耐化学薬品性を保持しつつHPLまたはCPLシートが曲げられ、それゆえに、例えば、MDF板を、1つの工程ステップで片面だけでなく、他方の面の1つ以上を覆うようにそれらのシートを製造できるならば、それは有利であろう。現在、二次成形特性は、ベンゾグアナミンまたはアセトグアナミン(例えば、EP−A−0561432に記載されている)のような高価な変性剤を含有させるか、またはメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を高圧で製造して、より多くのメラミンがホルムアルデヒドと反応するようにさせることにより達成されることが多い。後者の方法は比較的高価であり、高圧容器を必要とする。別の欠点は、毒性化学薬品として知られているホルムアルデヒドの使用である。紙の含浸に用いる樹脂は、基本的にホルムアルデヒド−メラミン樹脂である。硬化後も、ラミネートはまだいくらかのホルムアルデヒドを放出し、それは環境問題を引き起こしうる。さらに、紙の含浸に使用される樹脂には、欠点として、安定性が限られている(一般には約1カ月に限られている)という点がある。明らかなことだが、樹脂を製造するなら製造ステップが増すので、それ自体が不利な点である。別の不利な点は、用いることができるメラミン以外のトリアジンが限られているという点である。二次成形特性の改善されたラミネートを製造するのに有用であるはずの別の1つのトリアジン型化合物は、例えば、メラム(melam)である。
【0005】
本発明の1つの目的は、ホルムアルデヒド放散が少なく、かつ/または二次成形特性が優れているラミネートに好適であり、しかも樹脂の使用をまったく不要にすることもあり得る、紙シートを提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、ホルムアルデヒド放散が少なく、かつ/または二次成形特性が改善されたラミネートに好適な、樹脂含浸紙である。
【0007】
本発明の別の目的は、改善された、ホルムアルデヒド放散の少ない、かつ/または二次成形特性を有するラミネートを製造する方法である。
【0008】
これらの目的および他の有利な特徴は、紙基材にトリアジンの蒸着を施して、結晶トリアジンの量が約5g/m以上かつ約100g/m以下である蒸着結晶トリアジン紙を得る、本発明によって達成される。
【0009】
蒸着により結晶トリアジンが生じることになる。結晶とは、本明細書では、走査型電子顕微鏡法によって10の6乗倍に拡大してトリアジンの結晶を見ることができるという意味で用いられている。(1cmが10nmである)。
【0010】
蒸着用の好適なトリアジンとしては、メラミン、メラム、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ジシアンジアミン(dicyanediamine)、トルエンスルホンアミドおよび尿素があるが、これらに限定されない。好ましい例は、費用上の理由からメラミンおよび尿素である。
【0011】
1つの実施態様では、メラミンは広く入手可能な物質であり非常に良好な特性を示すものなので、メラミンを蒸着用のトリアジン化合物として使用するのが好ましい。実際、メラムを用いて樹脂を製造するのは困難なようであり、ラミネートへのそうした物質の使用は非常に限られてきた。本発明では、少なくともある程度は樹脂の製造ステップを不要にする。その結果として、今や最終硬化樹脂中にメラムを含むラミネートを容易に製造することが可能になっている。
【0012】
本発明の1つの実施態様では、トリアジンの混合物が蒸着に使用される。本発明の別の実施態様では、2種以上のトリアジンが別々の蒸着容器から連続的に蒸着される。いろいろなトリアジンで昇華温度が異なっている限り、これは混合物を使用するよりも有利でありうる。
【0013】
本発明の1つの実施態様では、紙の両面に蒸着トリアジンを有する。
【0014】
ラミネートの大半は紙を用いて製造される。一部のラミネートは、紙のような特性を有する不織の繊維材料(不織のガラス繊維のようなもの)、炭素繊維、天然繊維または高分子繊維の布またはそうした材料の混合物などから製造される。本発明では、特に定義されていない限り、紙という言葉は他の不織材料を含むものとして使用されている。
【0015】
1つの実施態様では、不織および非紡糸(non−spun)のセルロース繊維からなっている紙を使用するのが好ましい。
【0016】
1つの実施態様では、紙は化粧紙である。化粧は、好ましくは印刷装飾であり、木目構造(wood structure)を描いていてよい。別の実施態様では、装飾紙は白色のような単色である。別の実施態様では、装飾は、花こう岩、大理石または天然の他の物質を描いている。印刷インキは、例えば、アルキドをベースにしたインキ、またはポリエステルアクリレートをベースにしたインキであってよい。
【0017】
別の実施態様では、紙はいわゆるオーバーレイ紙として好適である。オーバーレイ紙は、含浸および硬化させると非常に透明であり、化粧紙の上に施される傷のつきにくい最上層として使用される。オーバーレイ紙は、フローリング用の木製パネル(wood panels)のラミネート製造に使用されることが多い。
【0018】
印刷紙は、好ましくは重量が約15g/m以上、好ましくは約70g/m以上である。一般には、紙の重量は約200g/m以下、好ましくは約150g/m以下になる。そのような紙の種類の場合、得られる化粧パネルの外観が確かに最適なものとなるだけでなく、樹脂の浸透能力が良好なものとなる。オーバーレイ紙は、一般には重量が約10g/m以上、好ましくは約15g/m以上であり、また一般には重量が約60g/m以下、好ましくは約40g/m以下である。
【0019】
本発明の別の実施態様では紙は着色されるが、着色は、トリアジンの付着と一緒に少なくとも1種類の有機染料を蒸着させるか、あるいはトリアジン蒸着室に隣接した蒸着室で達成される。
【0020】
紙上のトリアジンの量は、一般には約5g/m以上、好ましくは約10g/m以上である。トリアジンの量が、例えば、約1g/mまたは約3g/m以上のように少ないとしても、やはり有利でありうる。なぜなら、メラミンの量を増やすことは好ましいが、付加価値は低いからである。
【0021】
紙上のトリアジンの量は一般には約100g/m以下、好ましくは約90g/m以下である。量が多くなると、トリアジンを含んでいる紙の加工が困難になりうる。硬化ステップにおいてすべてのトリアジンを溶解させることを要求条件と仮定すると、すべてのトリアジンを溶解させることはいっそう困難になりうる。
【0022】
紙基材上へのトリアジンの蒸着は、米国特許第6,632,519号明細書、国際公開第2004/101662号パンフレットおよび国際公開第2004/101843号パンフレットに記載されているようにして実施することができる。これらの開示内容を本書に援用する。これらの文献に従って付着させたトリアジン層は、一般には薄く(例えば、100nm)、基材1平方メートル当たりのトリアジンの量が少なくなる。蒸着は、好ましくは真空室中で減圧して実施される。付着は、例えば、窒素雰囲気のような不活性雰囲気中で実施されるのが好ましい。好ましくは、蒸着工程は、圧力が約10mbar以下、好ましくは約1mbar以下、より好ましくは約10−3mbar以下の真空室中で行われる。圧力は一般には約10−5mbar以上になるが、下側の限界は主に経済上および実用上の事情に従う。一般に、トリアジンは加熱されることになる。昇華に必要な温度は、真空度によって異なり、好ましくは約150℃以上、好ましくは約200℃、さらにより好ましいのは約300℃である。一般には、トリアジンを加熱する温度は、それぞれのトリアジンごとに異なる分解温度に近くなる。メラミンの場合、その温度は約350℃以下になる。メラムの場合、その温度は約450℃以下になる。一般には、トリアジンを確実に蒸着させるには、基材をトリアジンの加熱温度より約100℃低い温度に保つことが好ましく、その温度差が好ましくは約200℃以上、さらにより好ましいのは約300C以上である。基材は、ほぼ室温、例えば、約20℃の温度に保つのが好ましい。付着ステップの間にいくらかの加熱が行われることになるが、これは絶対必要なことではない。トリアジンの付着量は、紙に蒸着を施す時間の量、蒸気中のトリアジンの濃度(これは、トリアジンを加熱する温度および圧力などに左右される)によって操作できる。
【0023】
本発明の1つの実施態様では、真空室における紙の速度は約0.5m/秒以上である。速度は、一般には約10m/秒以下になる。真空室中のトリアジンの温度は、約250℃以上、好ましくは約330℃以上の温度である。真空は好ましくは約10−4mbar以下である。
【0024】
蒸着は数分間までの間に実施することが可能であるが、一般にそうすることは経済的に魅力的とはならないであろう。トリアジンと基材との温度差が約250℃以上の状態において高速、高真空、高い蒸気濃度で付着を行う利点は、トリアジンが非常に微晶質の層として付着するという点であり、これにより積層工程時における溶解が実質的に改善される。
【0025】
したがって、付着トリアジンを有する紙基材上のトリアジンは、好ましくは微晶質構造を有することになる。SEM写真では、メラミンの結晶のサイズが好ましくは多数の結晶性小板のように見える。小板は、一般には幅が約100μm以下、より好ましくは約50μm以下となるであろう。一般には、幅は約20nm以上、好ましくは約50nm以上であろう。一般には、小板の厚さは約10μm以下、好ましくは約5μm以下であろう。一般には、厚さは約1nm以上、好ましくは約5nm以上であろう。図1は紙上の蒸着メラミンの写真である。メラミンの量は17g/mである。図2は、メラミンの量が約35g/mである蒸着メラミンの写真である。紙は110g/mの青い紙である。画像を見て分かるように、セルロース繊維は微晶質のメラミンによって十分に覆われているが、紙およびメラミン結晶は、紙が樹脂を容易に吸収して取り込むにはまだ構造が荒い。他の方法ではメラミンが別の構造に結晶することがありうるので、本発明は本明細書に記載した構造に限定されない。
【0026】
1つの実施態様では、紙は連続ロール紙であり、それを引っ張って蒸着用の低圧室を通過させる。そのようなロール紙は、一般には数百メートル、例えば、長さが500m以上、好ましくは1km以上であろう。一般に、長さは約20km以下、または約10km以下であろう。一般に、紙の幅は50cm以上、好ましくは1m以上であろう。一般に、幅は約8m以下、または6m以下であろう。別の実施態様では、紙は枚葉であってよい。
【0027】
本発明の1つの実施態様によれば、蒸着トリアジンを有する紙にメラミン−ホルムアルデヒド樹脂をさらに含浸させる。ホルムアルデヒド放散が少ないことおよび/または二次成形性に関して最適な特性を実現するには、含浸紙が以下に説明する特定の特性を示すようにメラミン樹脂を使用することが好ましい。
【0028】
一般には、メラミン−ホルムアルデヒド(MF)樹脂はラミネート用の紙の含浸に使用される。それらのMF樹脂は一般には、ホルムアルデヒドとメラミンとの比率が約1.7〜約1.55である。これらの値は、(通常、実際に使用されている)55〜65%の固形分で大気圧合成において達成される。F/M比率(ホルムアルデヒド対メラミン)が低くなると、メラミンは(標準圧力では)溶解しなくなる。F/M比率の高い樹脂も有用であるが、得られたラミネートは比較的砕けやすく、そのため通常は使用されない。そうした高い比率のF/M樹脂を使用できるとしたら、メラミンの溶解が速くなるので、樹脂調製が短縮されるであろうため、方法の経済性を改善しうる。
【0029】
本発明の1つの実施態様では、蒸着トリアジン紙の含浸に用いるMF樹脂は、F/M比率が約1.5以上であり、樹脂の量は、含浸紙(付着トリアジンの量を含めて計算)の理論上のF/M比率が約1.6以下、好ましくは、約1.5以下であるようにする。そのように量が少ないと、ホルムアルデヒド放散が少なくなり、二次成形性が向上するからである。一般に、理論上のF/M比率は約1以上、好ましくは約1.1以上であろう。
【0030】
1つの実施態様では、硬化(加圧)ステップ時に大部分または全部のトリアジンを溶解させることが重要となるであろう。適度な速度で全部のトリアジンを溶解させるためには、F/M比率が約1.1以上であることが好ましい。プレスサイクルがいくらか長くなるが、約1の比率も効果的でありうる。メラムの場合、理論上のF/Mの計算において1モルのメラムが1.33モルのメラミンと等しくなるようにする。本明細書では、メラミンを部分的または完全に別のトリアジンと交換することができるF/M比率を使用している。紙上のメラミンの量を計算すると、メラムは1.66メラミンに相当するが、アセトグアナミンは約0.66メラミンに相当する。
【0031】
別の実施態様では、メラミンの量および硬化方法はメラミンの一部が固体のままであるように選択する。そのようにすることは白いラミネートを製造する場合に特に役立つ。そのようにすると、白色の濃さが改善されるからである。
【0032】
更なる実施態様では、蒸着トリアジン紙は、最初にUF(尿素−ホルムアルデヒド)樹脂を含浸させ、乾燥させ、その後でMF樹脂を含浸させる。
【0033】
別の実施態様では、蒸着トリアジン紙にホルムアルデヒド溶液を含浸させてよい。1つの実施態様では、F/M比率は今日におけるように1.5〜約1.8のような通常の比率である。これには、樹脂の製造が不要になるという利点があり、現在の含浸トリアジン紙の使用者は現在の方法を調整する必要がない。別の好ましい実施態様では、このようにして得られた紙のF/M比率は、上に説明したとおりである(約1.5以下)。樹脂の製造がまったく不要になり、さらに硬化ラミネートはホルムアルデヒド放散が少なく、二次成形特性がよくなるので、これは好ましいものとなりうる。
【0034】
含浸ステップをいっそう正確に行えるため、また従来の含浸紙よりもトリアジン使用量を多くすることが容易にできるため、MF樹脂を含浸させることは有利でありうる。
【0035】
メラミン−ホルムアルデヒド樹脂は当業者に知られているようにして製造できる。一般には、メラミンをホルムアルデヒド溶液に加える。一般には、ホルムアルデヒドの量は水中に約30重量%以上である。ホルムアルデヒドの量は一般には約40重量%以下である。メラミンの量は一般には約30重量%以上である。一般には、メラミンの量は約50重量%以下である。一般には、樹脂を調製している間、触媒が存在する。好適な触媒は有機塩基または無機塩基である。好適な塩基としては、水酸化ナトリウムおよび炭酸カリウムがあるが、これらに限定されない。さらに可塑剤、増量剤、流動促進剤(flow promoters)をメラミン−ホルムアルデヒド樹脂と一緒に存在させるか、またはメラミン−ホルムアルデヒド樹脂と共反応させることができる。好適な例としては、カプロラクトン、カプロラクタム、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、またはトリエチレングリコール、モノアルコール、ジアルコール、および多価アルコール(ブタンジオール、ソルビトールおよびブドウ糖のようなもの)、グリコールエーテル(トリオキシトール(trioxytol)のようなもの)、および尿素またはチオ尿素があるが、これらに限定されない。さらに、メラミンの一部を尿素で置き換えて、メラミン−尿素−ホルムアルデヒド樹脂(MUF)を製造することができる。本出願で用いられているメラミン−ホルムアルデヒド樹脂という用語は、こうした変形形態を包含する。樹脂は酸で触媒することができる。酸の好適な例としてはp−トルエンスルホン酸があるが、これに限定されない。
【0036】
好ましくは、紙上の樹脂の量(蒸着物と樹脂を合わせたトリアジンと見なす)は約30重量%以上、好ましくは約35重量%以上である。一般には、その量は約95重量%以下、または例えば90重量%以下になるであろう。これらの重量パーセントは、紙とトリアジンと樹脂の全重量を基準にして計算される。用途に応じて、使用量はさまざまでありうる。例えば、従来のオーバーレイ紙は、好ましくは樹脂含量が約65〜80重量%になるであろう。例えば、従来の無地の紙は樹脂使用量を約45〜55重量%にすることができ、従来の印刷紙は樹脂使用量を約35〜45重量%にすることができる。含浸紙の揮発分は、好ましくは約5〜10重量%である。
【0037】
本発明の製品および方法では、得られる1平方メートル当たりのトリアジンの量を、非常に効率的な仕方で、通常得られるよりも多くすることができる。通常の樹脂の調製および含浸では、一般には、軽量紙に約30g/mのメラミンを有する紙を得ることができる。本方法では、1平方メートル当たりの(メラミンのような)トリアジンの量を、例えば30g/mの紙の上に約40g/m以上など、実質的により多くすることができる。化粧板に使用した場合、こうした紙は流れ特性がよくなり、また二次成形特性もよくなる。トリアジンの量を多くすると同時にF/M比率を約1.6以下にすると、そのホルムアルデヒド放散特性も向上する。
【0038】
本発明の1つの実施態様では、本発明は、B段階のメラミンおよびMF樹脂を含んでいる紙であって、メラミンの量が紙1g/m当たり約0.8g/m以上、好ましくは約0.85g/m以上、さらにより好ましくは紙1g/m当たり約0.9g/m以上のメラミンである、紙を提供する。一般には、メラミンの量は紙1g/m当たり約2g/m以下、例えば、約1.2g/m以下になるであろう。一般に、B段階は(手の感触で)乾燥した含浸紙が得られる程度まで反応したMF樹脂を意味するのに用いられる。一般にこれは、ホルムアルデヒドとメラミンが約1:1で反応していることを意味する。従来の含浸紙では、これは約5〜10%の反応である。紙は一般には約5〜15%の水分を含み、乾燥した含浸紙が得られるが、それでもなお柔軟性を示す。
【0039】
本発明によるラミネートの製造方法は、
a)トリアジンを蒸着によって紙上に付着させるステップと、
b)トリアジン付着紙にホルムアルデヒド溶液か、またはF/M比率が1.5以上であるメラミンホルムアルデヒド樹脂を含浸させるステップと、
c)最終F/M比率が1.6以下であるような量にするステップと、
d)1つまたは複数の他の層とともに紙に圧力を加え、かつ/または十分な温度を加えてトリアジンおよび樹脂を硬化させるステップとを含む。
【0040】
ラミネート製造の際に、隣接した層が十分な樹脂を含んでいる場合には、未処理のシートを使用してプレスサイクル時に未処理のシートの含浸が行われるようにすることもできる。隣接したシートが、プレスサイクル時にトリアジンの全部または大部分と反応するのに十分なホルムアルデヒドを含んだ樹脂を含んでいる場合、トリアジン蒸着シートを使用することが同様に可能である。
【0041】
本発明の別の実施態様では、ラミネートの製造方法は、
a)トリアジンを蒸着によって紙上に付着させるステップと、
b)そのトリアジン付着紙を、F/M比率が1.5以上であるメラミンホルムアルデヒド樹脂を有する含浸シートに隣接させて置くステップと、
c)複合材料のF/M比率が1.6以下であるような量にするステップと、
d)1つまたは複数の他の層とともに紙に圧力を加え、かつ/または十分な温度を加えてトリアジンおよび樹脂を硬化させるステップとを含む。
【0042】
本発明の別の実施態様では、ラミネートの製造方法は、
a)トリアジンを蒸着によって紙上に付着させるステップと、
b)前記トリアジン付着紙の1つまたは複数の層を1つまたは複数の他の層と一緒にプレス内に置いてスタックを得るステップと、
c)トリアジンがトリアジン−ホルムアルデヒド樹脂に変換され、該樹脂が同時に硬化されるような量のプレス内におけるホルムアルデヒドの存在下で、前記スタックに圧力および/または十分な温度を加えるステップとを含む。
【0043】
この実施態様では、B段階のMF含浸紙の製造ステップがまったく不要になる。環境問題を考えると、現在、硬化ラミネートを製造している工場ではなんとしてもホルムアルデヒドの気体を処理できる必要があるので、これにはさらなる明確な利点がある。ホルムアルデヒドの気体は、圧力を増大させる直前に金型内に注入するのが好ましい。
【0044】
本発明の1つの実施態様では、他の層は、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂を含浸させ、スタックに約30N/m以上、好ましくは100N/m以上の圧力を加えたクラフト紙を含む。一般には、圧力は約150N/m以下であろう。このHPL法では、温度は好ましくは約130℃以上である。好ましくは、温度は約220℃以下であり、他の実施態様では150℃以下である。一般には、硬化に用いる時間は一般には約2〜約60分であろう。
【0045】
別の実施態様では、他の層はパーティクルボード、中質繊維板、厚紙であり、スタックに約20N/m以下の圧力を加える。一般には、このLPLの場合、温度は約170℃以上であろう。一般には、温度は約220℃以下であろう。一般には、硬化に用いる時間は約5秒以上であり、例えば10秒以上であろう。一般には、硬化に用いる時間は約120秒以下、好ましくは約60秒以下、最も好ましいのは約20秒以下であろう。
【0046】
1つの実施態様では、オーバーレイ紙は硬質の研磨鉱物粒子を含むが、これは鉱物粒子により耐引掻性および耐摩耗性を向上させることができるからである。一般には、粒径は約50ナノメートル以上、好ましくは約30マイクロメートル以上であろう。一般には、粒径は200マイクロメートル以下、好ましくは約150マイクロメートル以下であろう。50ナノメートル〜30マイクロメートルの粒径は、例えば、耐引掻性を向上させるのに適している。30〜150マイクロメートルの粒径は、例えば、耐摩耗性を向上させるのに適している。鉱物粒子の好適な例としては、二酸化ケイ素(シリカ)、炭化ケイ素および酸化アルミニウム(コランダム)があるが、これらに限定されない。またそれらの中で酸化アルミニウムが好ましい。オーバーレイ紙に含浸させる樹脂中に鉱物粒子が存在していてよい。オーバーレイ紙の含浸後に、前記紙の表面を粒子で覆ってもよい。化粧紙上に研磨粒子を、好ましくは含浸後に付着させることも可能である。この実施態様では、オーバーレイ紙は際立った耐摩耗性が実現されている必要はないことがある。
【0047】
好ましいラミネートは、従来の市販のラミネートよりもホルムアルデヒド放散が少ない。ホルムアルデヒド放散は、EN120に従って、またEN717−1、−2、および−3に従って測定できる。
【0048】
得られたラミネートは二次成形特性が優れている。ラミネートは基材にくっ付ける必要があり、また所望される場合にはラミネートを曲げることができることが好ましいので、このことはHPLにとって特に重要である。しかし、二次形成特性により、穴あけ、のこ引きなどにおけるような製品の取扱適性が向上するので、二次成形特性はLPLにおいても有用である。二次成形特性はEN438/2.1によって測定できる。本発明のラミネートは、ラミネートの厚さの10倍あるエッジ全体にわたってラミネートを曲げることができなければならない前記試験に合格することが好ましい。
【0049】
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、それらに限定されることはない。
【0050】
[実施例1〜5]
紙へのメラミンの蒸着:
100g/mの青い紙を真空室に入れた。真空室はメラミンを有する小さなオーブンを備えていた。オーブンの温度を10分間105℃にしている間に、10−5mbarの真空にして紙を乾燥させた。その後、メラミン付着量を評価できるようにするため、乾燥させた紙の重量を測定した。紙を真空室に入れ、圧力が10−5mbarまで減圧されている間に、メラミンを305℃まで加熱した。表1に示すように、ある特定時間の間にメラミンを付着させた。
【0051】
【表1】

【0052】
メラミン付着量は、オーブンおよび室の付着物によって悪影響を受けた。それゆえに、必要なメラミン付着が行われるのに必要な時間は、実施例3以降増大した。しかし、実施例では、米国特許第6,632,519号明細書に従った方法で一般に用いられるよりも実質的に多くの量のメラミンが、紙上(片面および両面の両方)にうまく蒸着したことが示されている。これらの実験は実験装置で実施されていることにも注目されたい。工業規模では、この表に示すような量を生じるであろう高速(1メートル当たり数秒以下)蒸着を容易に行うことができる。紙1および2のSEM写真を撮った。
【0053】
[実施例6〜7および比較実験1]
[樹脂の調製]
メラミン樹脂は、542gの水および十分な10%NaOHを加えてpHを9.3にし、高温(約100℃)において956gのメラミンを924(37%)ホルマリンおよび78gのジエチレングリコールと反応させて、1.5のF/M比率で製造した。曇り点に達してから、水分許容性(WT)を試験した。WTが260%であったとき、反応混合物を迅速に室温まで冷却し、pHを再び9.3に調節した。この樹脂990gに、2gの湿潤剤(Wuertz 9594)および2gの離型剤(Wuertz2523W)を加えた。pHはここで8.9になり、B時間は304秒であった。その樹脂自体を使用した。B時間が多くなるようであったなら、ある量のp−トルエンスルホン酸を加えてB時間が約300秒となるようにしたであろう。
【0054】
[紙の含浸]
紙1および5を含浸および積層に使用した。未処理の紙を比較として使用した。紙(青色、110g/m)に110%の樹脂を含浸させ、Fresenbergerオーブン中において100℃で9分間乾燥させて、水分が約6%の樹脂となるようにした。紙1はメラミンが付着していない面で含浸が行われ、紙が丸まって辺が樹脂の外に出た。十分含浸させた後、紙は再び平らになった。紙はすべて、紙繊維とメラミン結晶の両方とも十分含浸が行われた。メラミン結晶は十分にしっかりと紙にくっ付いていたので、含浸ステップに持ちこたえることができた。
【0055】
[ラミネートの形成]
ラミネートは、3つの層の1つを、二次成形に適したフェノール−ホルムアルデヒド紙上に積み重ねることによって製造した。ラミネートは、EN438に記載されているようにして8MPa(=8MN/m)の圧力でプレスした。二次成形特性は、EN438/2.1に記載されているようにして測定したが、この場合、ラミネートの厚さの10倍の範囲にわたって曲げることが可能でなければならない。結果は、亀裂が観察されなければ合格であり、最上層に欠陥が見えた場合には不合格である。
【0056】
結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
これらの結果は、硬化時にメラミンの少なくとも一部が樹脂に確かに溶解したこと、および特別な樹脂の必要もなく二次成形特性が改善されたことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】紙上の蒸着メラミンの写真でありメラミンの量は17g/mである。
【図2】メラミンの量が約35g/mである蒸着メラミンの写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶トリアジンの量が約5g/m以上かつ約100g/m以下である、蒸着結晶トリアジンを含む紙基材。
【請求項2】
前記トリアジンがメラミンである、請求項1に記載の紙基材。
【請求項3】
前記トリアジンがメラムである、請求項1に記載の紙基材。
【請求項4】
前記紙にさらなるトリアジンまたは染料を付着させた、請求項1に記載の紙基材。
【請求項5】
前記紙が不織および非紡糸のセルロース繊維からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の紙。
【請求項6】
前記紙の重量が約15g/m以上かつ約200g/m以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の紙。
【請求項7】
前記紙が化粧紙である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の紙。
【請求項8】
前記紙が単一色である、請求項7に記載の紙。
【請求項9】
前記紙が天然の物質を模倣したプリントを有する、請求項7に記載の紙。
【請求項10】
前記紙がオーバーレイ紙である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の紙。
【請求項11】
前記トリアジンが約100μm以下の幅の小板構造を有する微晶質である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の紙。
【請求項12】
真空室の1つの開口部で紙に蒸着を施し、前記真空室における前記紙の速度は約0.5m/秒以上かつ約10m/秒以下であり、前記真空室中のトリアジンは温度が約250℃以上、好ましくは約330℃以上であり、真空が約10Pa以下であり、それにより前記紙基材の温度が前記トリアジンの温度より250℃低い、請求項1〜11のいずれか一項に記載の紙の製造方法。
【請求項13】
メラミン−ホルムアルデヒド樹脂と紙との少なくとも1つの硬化層を含むラミネートの製造方法であって、
a)トリアジンを蒸着によって紙上に付着させて、蒸着トリアジンを含む紙基材を得、
b)前記トリアジン付着紙にホルムアルデヒド溶液か、またはF/M比率が1.5以上であるメラミンホルムアルデヒド樹脂を含浸させ、
c)最終F/M比率が1.6以下であるような量にし、
d)1つまたは複数の他の層とともに前記紙に圧力を加え、かつ/または十分な温度を加えてトリアジンおよび樹脂を硬化させる、
ラミネートの製造方法。
【請求項14】
ラミネートの製造方法であって、
a)トリアジンを蒸着によって紙上に付着させるステップと、
b)前記トリアジン付着紙を、F/M比率が1.5以上であるメラミンホルムアルデヒド樹脂を有する含浸シートに隣接させて置くステップと、
c)複合材料のF/M比率が1.6以下であるような量にするステップと、
d)1つまたは複数の他の層とともに前記紙に圧力を加え、かつ/または十分な温度を加えて前記トリアジンおよび樹脂を硬化させるステップと
を含む、ラミネートの製造方法。
【請求項15】
前記含浸シートが約65%以上のMF樹脂を含浸させたオーバーレイ紙である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ラミネートの製造方法であって、
a)トリアジンを蒸着によって紙上に付着させるステップと、
b)前記トリアジン付着紙の1つまたは複数の層を1つまたは複数の他の層と一緒にプレス内に置いて、紙のスタックを得るステップと、
c)トリアジンがトリアジン−ホルムアルデヒド樹脂に変換され、該樹脂が同時に硬化されるような量の前記プレス内におけるホルムアルデヒドの存在下で、前記スタックに圧力および/または十分な温度を加えるステップと
を含む、ラミネートの製造方法。
【請求項17】
蒸着トリアジンを有する前記紙基材が請求項1〜11に記載のいずれか一項に記載の紙である、請求項13〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項12に記載の方法によって前記トリアジンを前記紙に付着させる、請求項13〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
メラミンとして計算したトリアジンの量が紙1g/m当たり約0.8g/m以上である、B段階のトリアジンおよびMF樹脂を含んでいる紙。
【請求項20】
メラミンとして計算したトリアジンの量が紙1g/m当たり約0.9g/m以上である、請求項19に記載の紙。
【請求項21】
前記トリアジンがメラミンである、請求項19〜20のいずれか一項に記載の紙。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−533563(P2009−533563A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504608(P2009−504608)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/002980
【国際公開番号】WO2007/104584
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】