説明

蓄熱タンク

【課題】 蓄熱タンクの保温性能の向上を図る。
【解決手段】 内筒81は液体を貯留する貯留部811を有するとともに貯留部811の下部位置に開口部812を有し、液体流入通路841および液体流出通路842が形成されたボデー84によって開口部812を閉塞した蓄熱タンクにおいて、内筒81の内径をタンク内径Dとし、貯留部811の上下方向長さをタンク高さHとしたとき、D/H≦0.5とすることにより、貯留部811が上下方向に細長くなり、主な放熱部であるボデー84と高温水域(貯留部における上端近傍)との距離が長くなって、高温水域が上下に拡がる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を保温貯蔵する蓄熱タンクに関するもので、特に水冷エンジンの冷却装置に適用して有効である。
【背景技術】
【0002】
従来、高温のエンジン冷却水を蓄熱タンクにて保温貯蔵し、次回のエンジン始動時(コールドスタート時)に、その保温された冷却水をエンジンに循環させることによりエンジンの暖機運転を促進したり、或いは保温された冷却水を車両用暖房装置のヒータコアに供給することで即効的に車室内を暖房するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開10−71840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そして、蓄熱タンクにおいては、保温性能が特に重要視され、保温性能のさらなる向上が望まれている。
【0004】
本発明は上記点に鑑みて、蓄熱タンクの保温性能の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、液体を貯留する貯留部(811)を有するとともに貯留部(811)の下部位置に開口部(812)を有する内筒(81)と、内筒(81)を内部に収納して内筒(81)との間に断熱空間(83)を形成する外筒(82)と、貯留部(811)と外部とを連通させる液体流入通路(841)および液体流出通路(842)が形成されるとともに開口部(812)を閉塞するボデー(9)84とを備え、貯留部(811)は上下方向に延びる円柱状の空間である蓄熱タンクにおいて、内筒(81)の内径をタンク内径Dとし、貯留部(811)の上下方向長さをタンク高さHとしたとき、D/H≦0.5であることを特徴とする。
【0006】
これによると、図3に示すように、D/H≦0.5の領域では、貯留後の貯留水の温度が高く、高い保温性能を得ることができる。これは、貯留部が上下方向に細長くなり、主な放熱部であるボデーと高温水域(貯留部における上端近傍)との距離が長くなって、高温水域が上下に拡がるためである。
【0007】
また、開口部の内径および貯留部の容量を一定にした場合、D/Hを小さくするほどタンク内径Dが小さくなって、タンク内径Dと開口部の内径との寸法差が小さくなるため、内筒の絞り性が向上し、内筒を例えばスピニング加工にて一体成形することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の蓄熱タンクは、車両用水冷式内燃機関(1)を冷却して高温になった冷却水を貯留するのに用いることができる。
【0009】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一実施形態について説明する。図1は一実施形態に係る蓄熱タンクを用いた水冷エンジン用冷却装置の模式図、図2は図1の蓄熱タンクの断面図である。
【0011】
図1において、冷却装置は、図示しない車両の水冷内燃機関(以下、エンジンという)1を冷却して高温になった冷却水をラジエータ2にて冷却するものであり、エンジン1とラジエータ2との間で冷却水を流通させる主冷却水回路3や、冷却水流を発生させる電動式のウォータポンプ4を備えている。
【0012】
ラジエータ2を迂回させて冷却水を流通させるバイパス回路5が、主冷却水回路3に対して並列に接続されている。主冷却水回路3とバイパス回路5との接続部に設けられたサーモスタット6により、バイパス回路5に冷却水を流通させる場合とラジエータ2に冷却水を流通させる場合との切り換え制御がなされる。因みに、両回路3、5の切り換えは、通常、冷却水温度が約80℃以上の場合にはラジエータ2に流れるように制御され、約80℃未満の場合にはバイパス回路5に流れるように制御される。
【0013】
主冷却水回路3およびバイパス回路5を迂回させて冷却水を流通させる副冷却水回路7が、主冷却水回路3およびバイパス回路5に対して並列に接続されている。副冷却水回路7には、冷却水を保温(蓄熱)する蓄熱タンク8と、副冷却水回路7を開閉する電磁式の開閉弁9が設けられている。
【0014】
次に、蓄熱タンク8について、図2を用いて説明する。
【0015】
蓄熱タンク8は、例えばステンレスのような耐食性に優れた材質にて有底円筒状に形成された内筒81および外筒82を備えている。外筒82の内部に内筒81を収納した状態で内筒81および外筒82の下端部8aを溶接した構造となっており、内筒81と外筒82との間に略真空状態の断熱空間83が形成されている。因みに、内筒81はスピニング加工にて一体成形されている。
【0016】
内筒81の内部には、冷却水を貯留する貯留部811が形成されており、貯留部811は、上下方向に延びる円柱状の空間になっている。貯留部811の下部に位置する内筒81の小径開口部812および大径開口部813には、両開口部812、813を閉塞する樹脂製のボデー84が挿入されている。因みに、内筒81の大径開口部813に形成された雌ねじとボデー84に形成された雄ねじとを螺合させて、内筒81とボデー84とを結合している。
【0017】
内筒81とボデー84との間には、内筒81とボデー84との間をシールするリング状のゴム製パッキン85が配置されている。より詳細には、パッキン85は、内筒81における小径開口部812と大径開口部813の境界部に配置されている。
【0018】
ボデー84には、開閉弁9側の副冷却水回路7と貯留部811とを連通させる冷却水流入通路841が形成されている。冷却水流入通路841における貯留部811側の端部は、内筒81の小径開口部812に近い位置、すなわち貯留部811における下部の位置に開口している。なお、冷却水流入通路841は本発明の液体流入通路に相当する。
【0019】
ボデー84における貯留部811側の端部にはパイプ10が装着されている。そして、ボデー84に形成されたボデー内冷却水流出通路842と、パイプ10に形成されたパイプ内冷却水流出通路101とにより、ウォータポンプ4側の副冷却水回路7と貯留部811とが連通されている。パイプ内冷却水流出通路101における貯留部811側の端部は、内筒81の上壁に近い位置、すなわち貯留部811の上端近傍位置に開口している。なお、ボデー内冷却水流出通路842は、本発明の液体流出通路に相当する。
【0020】
また、ボデー84における貯留部811側の端部には、冷却水流入通路841における貯留部811側の端部を囲むようにして、略カップ状の混合防止板11が装着されている。混合防止板11には複数個の流出穴111が形成されており、冷却水流入通路841から流入した冷却水は、流出穴111を介して貯留部811側に略均等に流入するようになっている。
【0021】
外筒82の外周部にアングル12が装着され、蓄熱タンク8はこのアングル12によって車両に固定されている。
【0022】
次に、上記構成になる冷却装置の作動について説明する。
【0023】
エンジン1の運転により冷却水が高温になると、開閉弁9を開弁させて蓄熱タンク8に高温の冷却水を流入させる。エンジン停止後は、高温の冷却水を蓄熱タンク8にて保温貯蔵する。
【0024】
そして、エンジン始動の際には、蓄熱タンク8に保温貯蔵された冷却水をエンジン1に循環させることによりエンジン燃焼室近傍の温度を上昇させる。
【0025】
具体的には、エンジン始動直前に、ウォータポンプ4を作動させるとともに開閉弁9を開弁させる。これにより、副冷却水回路7や冷却水流入通路841を介して蓄熱タンク8の貯留部811に低温の冷却水が流入する。
【0026】
この流入してきた冷却水により、貯留部811内に保温貯蔵されていた高温の冷却水が押し上げられ、その高温の冷却水は、パイプ内冷却水流出通路101、ボデー内冷却水流出通路842、および副冷却水回路7を介して、エンジン1に循環する。
【0027】
この際、貯留部811に流入してくる低温の冷却水は、混合防止板11の作用により、貯留部811に貯蔵されていた高温の冷却水を全周均等に押し上げるようになっている。したがって、流入してくる低温の冷却水と貯蔵されていた高温の冷却水との混合が抑制され、高温の冷却水がエンジン1に循環される。
【0028】
次に、内筒81の内径D(以下、タンク内径という)と貯留部811の上下方向長さH(以下、タンク高さという)との比率(D/H)をパラメータとして、蓄熱タンク8の保温性を評価した。因みに、貯留部811の上端、すなわち内筒81の上壁から小径開口部812までが、タンク高さHに相当する。
【0029】
図3はその検討結果を示すもので、横軸は、タンク内径Dとタンク高さHとの比率(D/H)である。また、図3の縦軸は、初期温度90℃の温水を蓄熱タンク8にて24時間保温した後の、蓄熱タンク8内の温水の平均温度である。
【0030】
なお、評価した蓄熱タンク8は、タンク内径Dをφ100mmの一定とし、また、小径開口部812の内径も一定とし、タンク高さHを変更した。
【0031】
図3から明らかなように、D/H≦0.5の領域では、24時間保温後の温水の温度が高く、高い保温性能を得ることができる。これは、貯留部811が上下方向に細長くなり、主な放熱部であるボデー84と高温水域(貯留部811における上端近傍)との距離が長くなって、高温水域が上下に拡がるためである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る蓄熱タンクを用いた水冷エンジン用冷却装置の模式図である。
【図2】図1の蓄熱タンクの断面図である。
【図3】タンク内径とタンク高さの比率(D/H)と、蓄熱タンクの保温性との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
81…内筒、82…外筒、83…断熱空間、811…貯留部、812…開口部、84…ボデー、841…冷却水流入通路(液体流入通路)、842…ボデー内冷却水流出通路(液体流出通路)、D…タンク内径、H…タンク高さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する貯留部(811)を有するとともに前記貯留部(811)の下部位置に開口部(812)を有する内筒(81)と、前記内筒(81)を内部に収納して前記内筒(81)との間に断熱空間(83)を形成する外筒(82)と、前記貯留部(811)と外部とを連通させる液体流入通路(841)および液体流出通路(842)が形成されるとともに前記開口部(812)を閉塞するボデー(84)とを備え、前記貯留部(811)は上下方向に延びる円柱状の空間である蓄熱タンクにおいて、
前記内筒(81)の内径をタンク内径Dとし、前記貯留部(811)の上下方向長さをタンク高さHとしたとき、
D/H≦0.5であることを特徴とする蓄熱タンク。
【請求項2】
冷却水にて冷却される水冷式内燃機関(1)を備える車両に搭載されるものであって、
前記貯留部(811)に貯留する液体は、前記水冷式内燃機関(1)を冷却して高温になった冷却水であることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−104974(P2006−104974A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290113(P2004−290113)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】