説明

蓄熱装置およびそれを用いた燃料電池システム

【課題】燃料電池を用いたコジェネレーションシステムにおいて、設置スペースの拡大を抑制しつつ、蓄熱量を増加させる。
【解決手段】燃料電池から回収された排熱を蓄熱する蓄熱装置36に、排熱回収装置の熱交換器12で回収した排熱を水に貯える貯湯タンク37と、排熱回収装置が回収した排熱を潜熱蓄熱材に貯える蓄熱タンク38と、を備える。潜熱蓄熱材は、水の顕熱蓄熱に比べて単位容積当たり約1桁大きい蓄熱容量を持つため、蓄熱装置36全体の蓄熱量を変えずに貯湯タンク37を小型化することができる。また、貯湯タンク37と蓄熱タンク38とを併用することにより、潜熱蓄熱材の相変化の回数を減らすことができ、劣化を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱装置およびそれを用いた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜を挟んで燃料極であるアノード側電極と酸化剤極であるカソード側電極を向い合わせた電池セルをセパレータで挟持した構造物を複数枚積層して構成されている。車載用などでは機動性を重視するため、通常、燃料には純水素を使用し、酸化剤には空気を用いたシステムが多い。
【0003】
ところが、定置用や家庭用になると、インフラの問題から燃料にはメタン成分の多い都市ガスやプロパンガスを使用するシステムが求められる。この場合は、燃料を水素に改質するために、燃料に水蒸気を混合して水素を生成させる燃料処理器を用いる方法が一般的である。いずれのシステムもアノード電極側に供給された水素がイオン化して固体高分子電解質膜内を流れ、カソード電極側の酸素と反応し、水を生成するとともに、外部に対して電気エネルギが得られる。
【0004】
ところで、この固体高分子型燃料電池は、電気エネルギの発生とともに、約100℃以下の排熱を生じる。このため、電池効率が100%にならない限り、つまり電池本体温度が周囲温度のままで発電できるようにならない限り、温度の高い電池から周囲への放熱分が熱として発生する。燃料を水素に改質するための燃料処理器においても、通常、改質器などの改質反応の加熱に燃焼器を使うため、燃焼排ガスや燃料処理器外部からの排熱が生じる。
【0005】
このような排熱を利用すれば、電気エネルギとのハイブリッド運転、すなわちコジェネレーション運転となるため、非常に経済的でエネルギ効率の高い、地球環境に優しい運転が実現できる。近年、このような燃料電池システムを家庭に導入しようという開発活動が日本を中心に非常に高まっており、実用化は間近に来ている。地球温暖化を防止する方法として、二酸化炭素の排出量が少ないこのエネルギが脚光を浴び、その省エネ性や経済性に注目が集まっているためである。省エネ性や経済性を高めためのシステム運転としては、熱利用量を増やすことが特に有効であることが各家庭での実証試験において確認されている。
【0006】
一方、各家庭の熱需要は、主に炊事やお風呂への給湯が支配的であり、家族構成だけでなく、設置地域や環境温度に左右される。一般的には夏場より冬場、温暖地より寒冷地の方が熱需要は高く、燃料電池システムの省エネ性は高まる。ただ、家庭の発電負荷と熱負荷は時間軸的には必ずしも一致しておらず、前者は朝晩、後者は夕食後にピークを迎えることが多い。このため、システムの排熱を一時的に蓄熱する熱利用系が別に設置され、貯湯タンクに温水として蓄熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−333207号公報
【特許文献2】特開2003−240465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
燃料電池を用いたコジェネレーションシステムの排熱蓄熱量を増加させるには、温水温度を高める、あるいは貯湯タンクの容量を大きくする方法が考えられる。温水は、システムの構成で限界温度が決まるという制約がある。また、貯湯タンク容量は設置性やコスト面の商品性から制約を受ける。貯湯タンク容量を増やすと、コストアップするとともに、設置スペースが広く必要となり、一般ユーザにとっては現実的では無い。
【0009】
また、たとえば特許文献1および特許文献2には、熱利用系に潜熱型蓄熱タンクのみを用いる方法が開示されている。しかし、本蓄熱方式のみでは、必ずしもユーザの使い勝手が良いものではない。
【0010】
そこで、本発明は、燃料電池を用いたコジェネレーションシステムにおいて、設置スペースの拡大を抑制しつつ、蓄熱量を増加させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明は、燃料電池システムにおいて、燃料電池と、前記燃料電池の排熱を回収する排熱回収装置と、前記排熱回収装置が回収した排熱を水に貯える貯湯タンクと、前記排熱回収装置が回収した排熱を潜熱蓄熱材に貯える蓄熱タンクと、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、燃料電池から回収された排熱を蓄熱する蓄熱装置において、前記排熱回収装置が回収した排熱を水に貯える貯湯タンクと、前記排熱回収装置が回収した排熱を潜熱蓄熱材に貯える蓄熱タンクと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、燃料電池を用いたコジェネレーションシステムにおいて、設置スペースの拡大を抑制しつつ、蓄熱量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る燃料電池システムの第1の実施の形態における蓄熱装置の詳細を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る燃料電池システムの第1の実施の形態のブロック図である。
【図3】本発明に係る燃料電池システムの第1の実施の形態における蓄熱装置のノーマル貯湯時の温水フローを示すブロック図である。
【図4】本発明に係る燃料電池システムの第1の実施の形態における蓄熱装置の蓄熱貯湯運転時の温水フローを示すブロック図である。
【図5】本発明に係る燃料電池システムの第1の実施の形態における蓄熱装置の蓄熱放熱運転時の温水フローを示すブロック図である。
【図6】本発明に係る燃料電池システムの第2の実施の形態における蓄熱装置の詳細を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る燃料電池システムの実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
[第1の実施の形態]
図2は、本発明に係る燃料電池システムの第1の実施の形態のブロック図である。
【0017】
本実施の形態の燃料電池システムは、燃料処理系と、電池本体2と、蓄熱装置36とを有している。燃料処理系および電池本体2の大部分は、1つのパッケージ16内に収められている。電池本体2は、CSA(Cell Stack Assembly)とも呼ばれる。
【0018】
FPS(Fuel Processing System)とも呼ばれる燃料処理系は、燃料供給源3、脱硫器4、水蒸気発生器5、改質器6、COシフト反応器7、CO選択酸化器8、水蒸気分離器9、改質用水ポンプ11、2つの排熱熱交換器81,82、タンク80を備えている。改質器6には、改質用燃焼器10が設けられている。燃料供給源3は、たとえばパッケージ16の外部に設けられて、都市ガスやプロパンなどの炭化水素系燃料を供給する。
【0019】
電池本体2は、アノード極13、カソード極14を備えている。アノード極13とカソード極14とは、固体高分子電解質膜を挟んで設けられる。電池本体2には、電池本体2を冷却するための冷却流路70が形成されている。
【0020】
たとえば都市ガスを燃料として使用する場合、燃料処理系は、都市ガスから水素ガスへの改質を行う。都市ガスは、燃料供給源3から、ブロワ31によって、弁20、脱硫器4、弁22を通過して、改質器6に送られる。都市ガスなどの燃料は、脱硫器4の内部で、たとえば活性炭やゼオライト吸着などによって硫黄分が取り除かれる。また、タンク80からフィルタ30を介して改質用水ポンプ11によって送られた水は、水蒸気発生器5で加熱されてガス化する。水蒸気発生器5から水蒸気分離器9に送られた気体から水蒸気のみが抽出され、弁27を通過して、脱硫済の燃料ガスに合流する。水蒸気分離器9で分離された液体の水は、弁83を介してタンク80に送られる。改質器6の排気は、水蒸気発生器5に送られて水を加熱した後、タンク80に併設された排熱熱交換器81に送られ、その後排気される。
【0021】
改質用燃焼器10によって改質器6の内部は加熱されており、吸熱反応である水蒸気改質反応が維持されている。改質用燃焼器10には、弁21を介して燃料供給源3から燃料が供給されるとともに、ブロア26によって、弁25を介して、あるいはこの弁25を介さずに、空気などの酸素が供給される。また、改質用燃焼器10には、電池反応に用いられなかった水素を含有する電池本体2のアノード極13から排出されるガスが、逆止弁24を介して供給される。
【0022】
改質器6では触媒により都市ガスと水蒸気の反応から、水素が生成するが同時にCOが生成される。固体高分子型燃料電池では、電池本体2の固体高分子電解質膜および触媒層から構成されるMEA(Membrane Electrode Assembly)でのCO被毒が問題となるため、COはCOへ酸化させる必要がある。このため、COシフト反応器7ではHOによるシフト反応を進める必要がある。また、CO選択酸化用空気ブロア18の空気供給により、CO選択酸化器8では触媒のCO被毒が発生しない程度に酸化反応を進める必要がある。また、改質器6を含めたこれらの触媒反応温度はそれぞれ異なり、改質器6の数百度からCO選択酸化器8の百数十度と、改質ガスの上流と下流の温度差が大きいため、下流側温度を下げるための水熱交換器を設けてもよい。
【0023】
次に、各触媒での主なプロセス反応を以下に示す。たとえば、メタン成分が主体の都市ガス改質の場合、水蒸気改質反応は(1)式、COシフト反応は(2)式、CO選択酸化反応は(3)式のようになる。
【0024】
CH+2HO→CO+4H …(1)
CO+HO→CO+H …(2)
2CO+O→2CO …(3)
CO選択酸化器8を通過した改質ガスは、主に水素、炭酸ガスおよび余った水蒸気などを含有する。これらのガスは、アノード極13に送り込まれる。アノード極13に送り込まれた水素ガスは、MEAの触媒層を経てプロトンHが電解質膜を通過し、カソード極用空気ブロア15によってカソード極14を通過する空気中の酸素および電子と結びついて水が生成される。したがって、アノード極13は−極、カソード極14は+極となり、電位を持って直流電圧を発電する。この電位間に電気負荷が接続されれば、本システムは電源としての機能を持つことになる。
【0025】
発電に使われずに残ったアノード極13の出口ガスは、水蒸気加熱器5および改質器6の加熱用燃料ガスとして使われる。また、カソード極14の出口中の水蒸気および燃焼排気ガス中の水蒸気は、排熱熱交換器81により、水分が回収され、システムでの水自立が図られる。一方、電池本体2の排熱は、冷却流路70を通過する電池冷却水ポンプ29の循環ラインに配置された排熱熱交換器82によって熱回収される。温水循環ポンプ33の運転により、排熱熱交換器81,82で熱交換して暖められた温水は、蓄熱装置36に蓄熱され、給湯やお風呂への温水として使われる。蓄熱装置36には、必要に応じて水道管84を介して水道水が供給される。
【0026】
図1は、本実施の形態における蓄熱装置の詳細を示すブロック図である。図1において、カソード極14の出口中の水蒸気および燃焼排気ガス中の水蒸気と熱交換する排熱熱交換器81、および、電池冷却水ポンプ29の循環ラインに配置された排熱熱交換器82は、まとめて熱交換器12として示している。この熱交換器12および電池冷却水ポンプなどは、燃料電池2および改質器6などの排熱を回収する排熱回収装置を形成している。
【0027】
蓄熱装置36は、貯湯タンク37および蓄熱タンク38を有している。貯湯タンク37および蓄熱タンク38は、たとえば樹脂で形成される。
【0028】
貯湯タンク37には、加熱された水道水が貯えられている。蓄熱タンク38には、2種類の異なる温度の潜熱蓄熱材が上下に区分けされて内蔵されている。潜熱蓄熱材とは、使用温度の範囲で相変化することにより、顕熱だけでなく、潜熱をも貯える材料である。本実施の形態では、たとえば、下側の高温側蓄熱タンク60に、パラフィン系のトリアコンタン(融点65℃)や有機物系ステアリン酸(融点71℃)が内蔵され、上側の低温側蓄熱タンク61には、パラフィン系のエイコサン(融点36℃)やトリミリスチン(融点33℃)が内蔵されている。蓄熱タンク38の内部には、潜熱蓄熱材に囲まれて2本の配管91,92が貫通している。
【0029】
貯湯タンク37と熱交換器12との間には、水を循環させる配管が設けられていて、この配管の途中には第一の逆止弁41、第一の電動遮断弁43および温水循環ポンプ33が設けられている。この配管には、蓄熱タンク38を貫通する配管91が第二の電動遮断弁44を介して接続されている。第一の逆止弁41は、この接続部よりも貯湯タンク37側に設けられている。さらに、蓄熱タンク38を貫通する配管91は、第二の電動遮断弁44を介して接続する側に対して蓄熱タンク38の反対側から延びる配管によって、第二の逆止弁42を介して第一の電動遮断弁43および温水循環ポンプ33の間に接続されている。
【0030】
貯湯タンク37から、たとえば家庭内の給湯器などには配管が延びていて、この配管の途中には、第四の電動遮断弁47および給湯加圧ポンプ48が設けられている。この配管は、第四の電動遮断弁47の上流側で第三の電動遮断弁46を介して、第四の電動遮断弁47の下流側で第三の逆止弁45を介して、蓄熱タンク38を貫通する配管92に接続されている。給湯加圧ポンプ48は、水張りや気抜きを考慮すると下部に配置されることが望ましい。
【0031】
このように、貯湯タンク37と蓄熱タンク38とは直列に設けられていて、貯湯タンク37に貯えられた水と蓄熱タンク38内の潜熱蓄熱材とは熱交換可能に構成されている。
【0032】
蓄熱タンク38は、貯湯タンク37の下部に配置されていてもよい。第一の逆止弁41、第一の電動遮断弁43及び第二の電動遮断弁44を三方弁で代用してもよい。
【0033】
この蓄熱装置36は、たとえばノーマル貯湯、蓄熱貯湯、および、蓄熱放熱の3つの運転モードで運転される。各運転モードにおける弁の開閉、ポンプの駆動などは、たとえば制御装置によって制御される。
【0034】
図3は、本実施の形態における蓄熱装置のノーマル貯湯時の温水フローを示すブロック図である。
【0035】
ノーマル貯湯運転時には、第一の電動遮断弁43を開き、第二の電動遮断弁44は閉じる。ノーマル貯湯運転時は、温水循環ポンプ33を駆動し、燃料電池システム16の排熱を排熱熱交換器12にて60〜90℃の温水として回収し、蓄熱装置36の貯湯タンク37に貯める。給湯時には、温水利用時は、第三の電動遮断弁46を閉じて、第四の電動遮断弁47を開き、給湯加圧ポンプ48を運転して、貯湯タンク37の温水を利用する。
【0036】
図4は、本実施の形態における蓄熱装置の蓄熱貯湯運転時の温水フローを示すブロック図である。
【0037】
蓄熱貯湯運転は、貯湯タンク37の蓄熱量が最大容量に達した後、たとえば貯湯タンク37下部の温度が上昇し貯湯が完了したと判断された後に開始する。この場合、温水循環ポンプ33は駆動したまま、第一の電動遮断弁43を閉じ、第二の電動遮断弁44を開く。
【0038】
この状態において、温水は、貯湯タンク37を経て、蓄熱タンク38の蓄熱熱交換器48を通過後、温水循環ポンプ33に戻る。この際、たとえばパラフィン系の潜熱蓄熱材は固体状態から液体状態に相変化して、顕熱および潜熱として蓄熱する。上流側の高温側蓄熱タンク60と下流側の低温側蓄熱タンク61に内蔵された2種類の潜熱蓄熱材は異なる融点を持ち、下流側の低温側蓄熱タンク61通過した温水は、燃料電池2および燃料処理系への戻り温度が低めに制御される。
【0039】
温水利用時は、第三の電動遮断弁46を閉じて、第四の電動遮断弁47を開き、給湯加圧ポンプ48を運転する。この給湯加圧ポンプ48は、家屋の給湯配管の長さや径が支配する圧損に応じて、必要給湯量と給湯温度の関係を満たすように、任意に可変出力制御される。
【0040】
図5は、本実施の形態における蓄熱装置の蓄熱放熱運転時の温水フローを示すブロック図である。
【0041】
蓄熱放熱運転時は、貯湯タンク37のバックアップ的な温水利用である。蓄熱放熱運転時には、第三の電動遮断弁46を開き、第四の電動遮断弁47を閉じて、給湯加圧ポンプ48を運転する。この場合、貯湯タンク37に貯まっていた温水が使われた後に冷たくなった水が、蓄熱タンク38の低温側蓄熱タンク61及び高温側蓄熱タンク60で加熱され、給湯加圧ポンプ48を経て炊事やお風呂の給湯に利用される。
【0042】
具体的な蓄熱放熱運転時の開始判断は、たとえば貯湯タンク37上部の温度が低下し、貯湯タンク37での高温水利用が終了した場合である。この際、たとえば異なる融点を有する2種類のパラフィン系の潜熱蓄熱材はそれぞれ放熱することにより、液体状態から固体状態に相変化する。これにより潜熱蓄熱材の温度低下に伴う顕熱の放出および相変化による潜熱の放出によって貯湯タンク37から送られる水を加熱して給湯することができる。本実施の形態では、低温側蓄熱タンク61の潜熱蓄熱材とし融点が33℃のトリミルスチンなどを用いるため、貯湯タンク37から送られる水が夏場などに30℃程度まで上昇したとしても、潜熱蓄熱材から受熱可能である。
【0043】
潜熱蓄熱材は、水の顕熱蓄熱に比べて単位容積当たり約1桁大きい蓄熱容量を持つ。このため、蓄熱装置36全体の蓄熱量を変えずに貯湯タンク37を小型化することができ、蓄熱タンク38を別途設けたとしても、蓄熱装置36全体を小型化できる。たとえば、貯湯タンク37の容量を150L(リットル)、蓄熱タンク38の容量を20Lの合計170Lとすると、容量が200Lの貯湯タンク37を単独で用いた場合に比べて、蓄熱量増加するにも関わらずコンパクト化できる。また、潜熱蓄熱材のみを用いて蓄熱する場合に比べて、水よりは高価な潜熱蓄熱材の必要量が限定されるためコストダウンを図ることができる。
【0044】
蓄熱装置36のコンパクト化によって、設置場所の制約が少なくなる。また、軽量化に伴って、蓄熱装置36の運搬が容易になる。
【0045】
さらに、貯湯タンク37の水への蓄熱が完了した後に潜熱蓄熱材への蓄熱が開始されるため、蓄熱時における潜熱蓄熱材と熱交換する水の平均的な温度は、潜熱蓄熱材のみを用いて蓄熱する場合に比べて、高くなる。このため、蓄熱材への蓄熱に要する時間が短くなる。また、貯湯タンク37から湯が供給できなくなった後に、潜熱蓄熱材からの放熱を開始させると、放熱時における潜熱蓄熱材と熱交換する水の平均的な温度は低くなる。このため、放熱が終了するまでの時間が短くなる。このように、潜熱蓄熱材の蓄熱および放熱の時間が短くなることにより、蓄熱材の耐久性が大幅に向上させることができる。
【0046】
本実施の形態では、蓄熱の際は、貯湯タンク37に優先して蓄熱し、その後蓄熱タンク38に蓄熱する。放熱の際は、貯湯タンク37から優先して放熱し、その後蓄熱タンク38から放熱している。このため、蓄熱タンク38の内部の潜熱蓄熱材の相変化の回数は少なくなり、潜熱蓄熱材の劣化を抑制することができる。また、潜熱蓄熱材の相変化に伴う体積変化が少なくなるため、潜熱蓄熱材を貯える蓄熱タンク38などの劣化も抑制することができる。
【0047】
また、潜熱蓄熱材を用いる蓄熱タンク38は、貯湯タンク37に貯えられた湯を加熱するために従来設けられていた補助燃焼バーナや補助電気ヒータの代替となるため、これらの機器が不要となる。このため、蓄熱装置36の大幅なコストダウンだけでなく、燃料電池システム全体のコストダウンにもなり、一般家庭への導入が容易となる。潜熱蓄熱材として、異なる融点を有する2種類の高温側蓄熱材と低温側蓄熱材とを用いることで、燃料電池2への温水戻り温度を低めに制御でき、安定して燃料電池システムを運転できる。
【0048】
貯湯タンク37および蓄熱タンク38を樹脂製とすることにより、金属製とするよりも軽量化およびコストダウンすることができる。特に、沸点が水よりも高い潜熱蓄熱材を用いることにより、蓄熱媒体が沸騰しない状態でより高い温度の湯を供給できるようになるため、貯湯タンク37の内部の圧力を従来の0.8MPa程度に高める必要がない。本実施の形態の貯湯タンク37の内部の圧力は、たとえば0.17MPa程度とすることができる。また、潜熱蓄熱材は、金属の容器に収納するとその容器が腐食するおそれがあるが、本実施の形態では、潜熱蓄熱材を高圧で保持する必要がないため、樹脂製の容器に収納しても問題ない。
【0049】
なお、本実施の形態では、融点が異なる2種類の潜熱蓄熱材を用いているが、1種類あるいは3種類以上の潜熱蓄熱材を用いてもよい。潜熱蓄熱材としては、融点が、貯湯タンク37に供給される水の温度より高く、燃料電池システムの排熱を回収する排熱回収媒体の最高温度より低いものであればどのようなものでもよい。貯湯タンク37に供給される水は、一般的に水道水であり、水道水の温度は夏場でも30℃を超えない。また、燃料電池システムの排熱を回収する排熱回収媒体としては、通常、水が常圧で用いられるため、この排熱回収媒体の最高温度はおよそ95℃を超えることがない。そこで、潜熱蓄熱材としては、融点が30℃以上95℃以下のものを用いるとよい。
【0050】
また、たとえば2階建以上の家屋などでは、家庭内部に敷設する温水配管が長くなって圧損が大きくなり、給湯の供給流量が不足する場合がある。しかし、本実施の形態では、給湯加圧ポンプ48を運転することにより、必要な供給量を確保できるため、給湯の使い勝手や快適性が向上する。
【0051】
[第2の実施の形態]
図6は、本発明に係る燃料電池システムの第2の実施の形態における蓄熱装置の詳細を示すブロック図である。
【0052】
本実施の形態では、蓄熱タンク38を貫通して水が流れる配管93を1本としている。
【0053】
貯湯タンク37と熱交換器12との間には、水を循環させる配管が設けられていて、この配管の途中には第一の逆止弁41、第一の電動遮断弁43および温水循環ポンプ33が設けられている。この配管には、蓄熱タンク38を貫通する配管93が第二の電動遮断弁44を介して接続されている。第一の逆止弁41は、この接続部よりも貯湯タンク37側に設けられている。さらに、蓄熱タンク38を貫通する配管93は、第二の電動遮断弁44を介して接続する側に対して蓄熱タンク38の反対側から延びる配管によって、第五の電動遮断弁50を介して第一の電動遮断弁43および温水循環ポンプ33の間に接続されている。また、蓄熱タンク38を貫通する配管93は、第二の電動遮断弁44を介して接続する側に対して蓄熱タンク38の反対側から延びる配管によって、第四の電動遮断弁47の上流側で第三の電動遮断弁46を介して、貯湯タンク37から家庭内の給湯器などに延びる配管に接続されている。
【0054】
貯湯タンク37から家庭内の給湯器などに延びる配管の途中には、第四の電動遮断弁47および給湯加圧ポンプ48が設けられている。この配管は、第四の電動遮断弁47の下流側で第三の逆止弁45および第六の電動遮断弁51を介して、蓄熱タンク38を貫通する配管93に接続されている。
【0055】
運転方法は第1の実施の形態に準じている。本実施の形態において、ノーマル運転の温水利用時は、第二の電動遮断弁44、第三の電動遮断弁46、第五の電動遮断弁50、第六の遮断弁51を閉じて、第一の電動遮断弁43と第四の電動遮断弁47を開く。また、蓄熱運転の温水利用時は、第三の電動遮断弁46、第六の電動遮断弁51、第一の電動遮断弁43を閉じて、第二の電動遮断弁44、第四の電動遮断弁47、第五の電動遮断弁50を開く。放熱運転の温水利用時は、第二の電動遮断弁44、第四の電動遮断弁47、第五の電動遮断弁50を閉じて、第一の電動遮断弁43、第三の電動遮断弁46、第六の電動遮断弁51を開く。
【0056】
このような本実施の形態でも、第1の実施の形態と同様に、設置スペースの拡大を抑制しつつ、蓄熱量を増加させることができる。また、弁の数は若干増加するものの、蓄熱タンク38の内部の構造を第1の実施の形態に比べて単純化することができる。このため、潜熱蓄熱材を燃料電池システム全体の寿命よりも短い間隔で交換しなければならない場合、交換部分の構造を単純化させ、メンテナンスに必要な手間およびコストを低減することができる。
【0057】
[他の実施の形態]
上述の各実施の形態は単なる例示であり、本発明はこれらに限定されない。また、各実施の形態の特徴を組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0058】
2…電池本体、3…燃料供給源、4…脱硫器、5…水蒸気発生器、6…改質器、7…COシフト反応器、8…CO選択酸化器、9…水蒸気分離器、10…改質用燃焼器、11…改質用水ポンプ、12…熱交換器、13…アノード極、14…カソード極、15…カソード極用空気ブロア、16…パッケージ、18…CO選択酸化用空気ブロア、20…弁、21…弁、22…弁、24…逆止弁、25…弁、26…ブロア、27…弁、29…電池冷却水ポンプ、30…フィルタ、31…ブロワ、33…温水循環ポンプ、36…蓄熱装置、37…貯湯タンク、38…蓄熱タンク、41…第一の逆止弁、42…第二の逆止弁、43…第一の電動遮断弁、44…第二の電動遮断弁、45…第三の逆止弁、46…第三の電動遮断弁、47…第四の電動遮断弁、48…給湯加圧ポンプ、50…第五の電動遮断弁、51…第六の電動遮断弁、60…高温側蓄熱タンク、61…低温側蓄熱タンク、70…冷却流路、80…タンク、81…排熱熱交換器、82…排熱熱交換器、83…弁、84…水道管、91…配管、92…配管、93…配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池の排熱を回収する排熱回収装置と、
前記排熱回収装置が回収した排熱を水に貯える貯湯タンクと、
前記排熱回収装置が回収した排熱を潜熱蓄熱材に貯える蓄熱タンクと、
を有することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記蓄熱媒体の融点は前記貯湯タンクに供給される水の温度よりも高く、前記燃料電池の排熱を回収する排熱回収媒体の温度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記貯湯タンクに貯えられた水と前記潜熱蓄熱材とが熱交換可能に構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記蓄熱タンクは、第1の潜熱蓄熱材を収納した高温側蓄熱タンクと、前記高温側蓄熱タンクよりも低い融点の第2の潜熱蓄熱材を収納した低温側蓄熱タンクと、を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記蓄熱タンクには前記貯湯タンクの蓄熱容量を超えた排熱が貯えられるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記潜熱蓄熱材が放熱可能な温度以下のときに前記貯湯タンクから放熱されるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記貯湯タンクは樹脂性容器であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記貯湯タンクおよび前記蓄熱タンクの下流に設けられた能力可変の昇圧水ポンプを有することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
燃料電池から回収された排熱を蓄熱する蓄熱装置において、
前記排熱回収装置が回収した排熱を水に貯える貯湯タンクと、
前記排熱回収装置が回収した排熱を潜熱蓄熱材に貯える蓄熱タンクと、
を有することを特徴とする蓄熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−186668(P2010−186668A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30798(P2009−30798)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301060299)東芝燃料電池システム株式会社 (358)
【Fターム(参考)】