蓄電システム
【課題】組電池システムの劣化や寿命低下を促進することなく組電池システムを制御するための充放電技術の提供を課題とする。ここに、本発明は、二次電池と電力変換器とをユニットとし、前記ユニットが複数並列接続され各ユニットの充放電電力を制御する機能を備えた組電池システムであって、組電池システムは各ユニットが充電もしくは放電を少なくとも1回以上実施した場合、所定の休止時間を経過するまでは充放電を実施しないよう各ユニットの充放電を制御することを特徴とする。
【解決手段】上記課題は、二次電池と電力変換器とをユニットとし、前記ユニットが複数並列接続され各ユニットの充放電電力を制御する機能を備えた組電池システムにおいて、組電池システムは各ユニットが充電もしくは放電を少なくとも1回以上実施した場合、所定の休止時間を経過するまでは充放電を実施しないよう各ユニットの充放電を制御する、ことにより解決することができる。
【解決手段】上記課題は、二次電池と電力変換器とをユニットとし、前記ユニットが複数並列接続され各ユニットの充放電電力を制御する機能を備えた組電池システムにおいて、組電池システムは各ユニットが充電もしくは放電を少なくとも1回以上実施した場合、所定の休止時間を経過するまでは充放電を実施しないよう各ユニットの充放電を制御する、ことにより解決することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電力系統の負荷変動を抑制するために用いられる蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電や太陽光発電等の自然エネルギを利用する自然エネルギ発電装置の電力系統への導入に伴い、それに連系する電力系統に周波数変動や電圧変動等の悪影響を及ぼす可能性がある。その対策の一つとして、自然エネルギ発電装置に蓄電装置を併設し、その電力系統の電圧変動を抑制する方法が提案されている。例えば、特許文献1に記載の自然エネルギ発電装置の出力変動を補償する蓄電装置は、互いに並列接続された複数のリチウム電池の直列電池ユニットと制御装置を具備した組電池システムを構成し、自然エネルギ発電装置の出力変動に応じて充放電を切り替えるものである。また、各直列電池ユニットには、電流制御素子が備えられており、電池ユニットの電圧,温度,内部抵抗またはユニットを構成する電池セルの電圧,温度,内部抵抗に応じて、電流制御素子を制御し、各ユニット間で電圧のばらつきが生じないように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−29015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の組電池システムでは、例えば他のユニットに比べて容量が小さいユニットが存在した場合、充放電によってユニット間に電圧差を生じさせないために容量が大きいユニットへ負荷を集中させるよう電流制御素子が制御され、当該ユニットに負荷が集中することになる。このような使用方法を継続すると、電池の劣化が促進され最終的には組電池システムの寿命が短くなる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の代表的な発明は、長寿命化を図ることができる蓄電システムを提供する。
【0006】
ここに、本願の代表的な発明は、蓄電器と電力変換器とをユニットとし、このユニットを複数、電気的と並列に接続し、各ユニットの充放電電力を制御する機能を備えた蓄電システムであって、各ユニットが充電もしくは放電を少なくとも1回以上実施した場合、所定の休止時間を経過するまでは充放電を実施しないように各ユニットの充放電を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本願の代表的な発明によれば、蓄電器の劣化による寿命低下促進を抑制できるので、蓄電システムの長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態における組電池システムの構成例。
【図2】組電池システムのシステムコントローラの構成例。
【図3】休止時間の演算方法の一例。
【図4】休止時間の演算方法の一例。
【図5】充放電出力の配分方法の一例。
【図6】充放電出力の配分方法の一例。
【図7】本発明の実施形態におけるフローチャートの一例。
【図8】本発明の実施形態におけるフローチャートの一例。
【図9】タイムチャートの一例。
【図10】リチウム電池セルの材料の違いによる600sec間の電圧プロフィールの一例。
【図11】600sec間の電圧プロフィールの計測方法の一例。
【図12】休止時間の決定方法の一例。
【図13】材料ごとの休止時間の計測結果。
【図14】オリビン酸系のリチウム電池セルにおける600secのセル電圧の計測結果。
【図15】コバルト酸リチウム系のリチウム電池セルにおける600secのセル電圧の計測結果。
【図16】ニッケル・コバルト酸リチウム系のリチウム電池セルにおける600secのセル電圧の計測結果。
【図17】オリビン酸系,コバルト酸リチウム系,ニッケル・コバルト酸リチウム系のリチウム電池セルにおける、SOC毎の休止時間の設定値の一例。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
以下本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は本発明の適用例の一例である。電力系統100には自然エネルギ発電装置200と変圧器300を介して組電池システム400が接続され、自然エネルギ発電装置からの出力電力PNと組電池システムからの出力電力PBが連系点Aで合流してPSとなり電力系統へ供給される。組電池システムは、電力変換器411とリチウム電池セルが複数直列並列接続された組電池412とを構成単位とするユニットが複数並列接続され、さらに各ユニットに充放電電力の指令値を与えるシステムコントローラ500とで構成される。システムコントローラは電力系統に供給された出力電力PS、自然エネルギ発電装置の出力電力PN、電力系統の要求電力PSTから組電池システムが出力すべき電力PBRを算出し、さらに各ユニットの充放電可能な電力に基づいて各ユニットの充放電電力の目標値PBRxを演算する。各ユニットは充放電電力PBxがPBRxと一致するよう電力変換器を制御する。
【0012】
図2に上記システムコントローラの構成について詳細を示す。
【0013】
システムコントローラは、電力系統の要求電力PSTと実際に供給された電力PSの差分を積算し組電池システムの出力PBの補正値PSCを演算する出力補正部501、電力系統の要求電力PSTと補正値PSCの加算結果から自然エネルギ発電装置の出力電力PNを減算し組電池システムの目標充放電電力PBRを求める充放電電力目標値演算手段502、ユニットの充放電電力PBxまたは充放電電力の指令値PBRxから各ユニットの充放電後の休止時間BTxを演算する休止時間演算部503、PBRと各ユニットの充電状態であるSOCx(State of Charge)とBTxから各ユニットへの充放電指令値PBRxを演算する充放電指令値配分部504で構成される。なおSOCは電池容量に対して充電している電気量を比率で表したものである。
【0014】
さらに、図3および図4を用いて休止時間演算部503での休止時間の演算方法を説明する。
【0015】
図3はPBxを用いて休止時間を求めるケースを示す。PBxの絶対値が所定値P以下となる時刻t1からシステムコントローラ内の制御周期毎に制御周期の時間と一致した値を積算しBTxとする。
【0016】
なお、所定値Pの決定方法は、各ユニットの最大出力に対して十分小さな値とし、例えば電力,電圧,電流、の各センサの誤差を考慮してその各センサによる計測誤差以上となるよう決定する。また、十分小さい値として予め所定値を与えても良い。
【0017】
図4には、PBRxを用いて休止時間を求めるケースを示す。
【0018】
この場合はPBRx=0が成立した時刻t2からシステムコントローラ内の制御周期毎に制御周期の時間と一致した値を積算しBTxとする。
【0019】
次に、図5と図6を用いて充放電指令値配分部504の動作について詳細を説明する。
【0020】
図5(a)は放電場合の充放電指令値の配分方法を示す。
【0021】
充放電指令値配分部では、各ユニットのSOCの情報に基づき、SOCが高い順にユニットの放電最大出力値PBDMを配置する。
【0022】
図5の(a)では、ユニット410,ユニット420,ユニット430の順にSOCが高かったものとして表わしている。従って、優先順位は上記の順となり、この場合の充放電指令値PBRxはユニット410に放電最大出力値であるPBDM1、ユニット420にはPBRからPBDM1を減算した値が配分される。また、その他のユニットへのPBRxはゼロとなる。
【0023】
同様に図5(b)は充電の場合を示している。充電の場合は、SOCが低い順に優先順位が付けられ、図5(b)では、ユニット410,ユニット420,ユニット430の順にSOCが低い場合を示している。従って、PBRxはユニット410に充電最大出力値であるPBCM1、ユニット420にはPBRxからPBCM1を減算した値が配分される。放電同様にその他のユニットへのPBRxはゼロとなる。
【0024】
次に、図6を用いて休止時間が短く使用できないユニットがある場合の動作について説明する。
【0025】
図6(a)は、ユニット410の休止時間が短く使用不可と判定されている場合の放電の例を示している。ユニット410はSOCの大きさに関わらず使用不可とされ、ユニットの優先順位はユニット420,ユニット430,ユニット440となる。従って、ユニット420のPBRxはPBDM2、ユニット430にはPBRからPBDM2を減算した値となる。その他のユニット、そしてユニット410のPBRxはゼロとなる。休止時間により使用不可判定を実施する方法については後述する。
【0026】
同様に図6(b)は充電の例を示している。
【0027】
ユニット410の使用時間が短い時は、ユニット410が不使用と判定され、ユニットの優先順位はユニット420,ユニット430,ユニット440となる。従って、ユニット420のPBRxはPBCM2、ユニット430にはPBRからPBCM2を減算した値となる。その他のユニット、そしてユニット410のPBRxはゼロとなる。
【0028】
図7に、本発明を適用した組電池システムが放電する場合のフローチャートの一例を示す。
【0029】
システムコントローラの起動(Start)後、S701でシステムコントローラは系統電力PS,系統要求電力PST,自然エネルギ発電装置の出力PN,各ユニットの充電状態SOCx,充放電電力PBx,充放電最大出力値PBDMx,PBCMxを計測し、さらにS702で、組電池システムの出力補正値PSC,システムの出力目標値PBR,各ユニットの休止時間PBxを演算する。そしてS703で、休止時間BTxと所定値LTを比較し、S703の処理が成立した場合はS704にて条件が成立したユニットを不使用ユニットの候補とする。S703の処理が非成立、またはS704の処理の終了後はS705となり、全ユニットのPBDMの合計値から不使用ユニットの候補となったユニットのPBDMの合計を減算し、その結果をPBRと比較する。なお、不使用ユニットが無い場合は不使用ユニットのPBDMの合計値はゼロである。S705が成立した場合は、不使用ユニットを抜いて残ったユニットにPBRを配分することが可能であることを意味するため、S706にて不使用候補だったユニットを不使用と決定する。S705が非成立の場合は、残ったユニットでPBRを配分しきれず出力が不足することを意味するため、S707にて不使用ユニット「無し」としS708へ移行する。S708では、SOCxの高い順に放電の優先順位を決定し、S709にて前述の方法に従い充放電指令値PBRx演算し各ユニットへPBRxを配分する。システムコントローラが起動している間は、S701からS709を繰り返し実行する。なお、所定値LTの決定方法について後述する。
【0030】
同様に図8に、本発明を適用した組電池システムが充電する場合のフローチャートの一例を示す。
【0031】
S801でシステムコントローラは系統電力PS,系統要求電力PST,自然エネルギ発電装置の出力PN,各ユニットの充電状態SOCx,充放電電力PBx,充放電最大出力値PBDMx,PBCMxを計測し、さらにS802で、組電池システムの出力補正値PSC,システムの出力目標値PBR,各ユニットの休止時間PBxを演算する。そしてS803で、休止時間BTxと所定値LTを比較し、S803の処理が成立した場合はS804にて条件が成立したユニットを不使用ユニットの候補とする。S803の処理が非成立、またはS804の処理の終了後はS805となり、全ユニットのPBCMの合計値から不使用ユニットの候補となったユニットのPBCMの合計を減算し、その結果をPBRと比較する。なお、不使用ユニットが無い場合は不使用ユニットのPBCMの合計値はゼロである。S805が成立した場合は、不使用ユニットを抜いて残ったユニットにPBRを配分することが可能であることを意味するため、S806にて不使用候補だったユニットを不使用と決定する。S805が非成立の場合は、残ったユニットでPBRを配分しきれず出力が不足することを意味するため、S807にて不使用ユニット「無し」としS808へ移行する。S808では、SOCxの低い順に放電の優先順位を決定し、S809にて前述の方法に従い充放電指令値PBRx演算し各ユニットへPBRxを配分する。システムコントローラが起動している間は、S801からS809を繰り返し実行する。
【0032】
図9は、図7のフローチャートを実行し、組電池システムを放電した場合のタイムチャートの一例である。
【0033】
ここでは簡単のため組電池システム内にユニットが2つ(ユニット1,ユニット2)の場合を示している。また、両ユニットの容量は同じであるが、ユニット1のSOC1がわずかにユニット2よりも大きいとする。
【0034】
ある時刻T0からT1まではPBRが最大値で放電した場合であり、ユニット1およびユニット2の両方ともが放電しSOCが低下する。ここで、時刻T1からPBRが最大値からP1に低下し、どちらかのユニットで出力が賄えるようになると、SOCが小さいユニット2の放電が停止し、ユニットの停止時間BT2が積算される。その後は、ユニット1のみが放電し、時刻T2で各ユニットのSOCが一致して、T2以降はユニット1のSOCがユニット2よりも小さくなるものの、ユニット2の休止時間が所定値LTに到達していないためにユニット1の放電は、BT2がLTに到達するT3まで継続される。T3からは、ユニット2が放電となりこの間PBRがP2に変更されたとしても、ユニット2で賄える範囲であればユニット2のみでの放電が継続され、時刻T5でユニット1とユニット2のSOCが等しくなるものの、ユニット1の休止時間BT1がLTに到達するT6まではユニット2の放電が継続される。
【0035】
次に、図10から図17を用いて、休止時間LTの決定方法について説明する。
【0036】
まず、図10に、現在のリチウム電池セルに一般的に使用される材料であるオリビン酸系,コバルト酸リチウム系,ニッケルコバルト酸リチウム系の材料を用いて作成したリチウム電池(18650型)のSOC40%におけるセル電圧の経過を示す。このグラフは、図11に示すように、各電池セルともに、SOC20%から0.5Cの定電流充電を行いSOC40%に到達後600sec放置した際のセルのプロフィールである。時間0secは充電を停止した時刻を示している。いずれのセルも充電停止直後の電圧の降下が大きく、600secが経過する頃には殆ど電圧の変化が無い。この現象は分極電圧と呼ばれ、充放電によってリチウム電池の電極表面のイオンが材料の内部に拡散して行くことに主要因である。イオンが拡散しきらない内に充放電を行うと、電極表面でイオンが結晶化してしまい電極表面を覆うことや電解液との反応により電極表面の状態が悪化して、リチウム電池の性能が低下する。従って、休止時間は拡散が進み、時間に対する電圧の変化が十分に小さくなるまで設定するのが望ましい。
【0037】
そこで、図12に休止時の計算例を示す。
【0038】
図10の結果から、ここでは一例として600secの電圧を基準として充電停止直後(0sec)での電圧との差がA%低下した時間を休止時間とした。
【0039】
図13に、図10のデータから各セルでA=80%として休止時間を算出した結果を示す。
【0040】
この結果、オリビン酸系では約420sec、コバルト酸リチウム系は約360sec、ニッケル・コバルト酸リチウム系では約300secとなり、材料により休止時間が異なることが分かった。
【0041】
さらに図14から図16には各材料において600secのセル電圧のプロフィールをSOC40%とSOC60%で計測した場合の結果を示す。
【0042】
いずれにおいても、SOC60%の方が、電圧変化が平坦になるまでの時間が約60sec程度短くなる傾向が見られた。
【0043】
そこで、図17にSOC40%とSOC60%における休止時間の結果を外挿しSOC0%から100%までの休止時間を求めた結果を示す。
【0044】
この結果、オリビン酸系のリチウム電池の場合は約240secから540sec、コバルト酸リチウム系のリチウム電池の場合は約180secから480sec、ニッケル・コバルト酸リチウム系のリチウム電池の場合は約120secから420sec程度の時間を、休止時間の所定値LTとしてSOCに応じて与えるのが良い。
【0045】
また、本実施形態では休止時間を求める際のAの値を80%としたが、電池を適用する用途や要求される寿命によってAの値は変わる。このため、Aを小さくした場合は、LTの値を図17よりも短く、Aを大きくした場合は大きくする必要がある。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電力系統の負荷変動を抑制するために用いられる蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電や太陽光発電等の自然エネルギを利用する自然エネルギ発電装置の電力系統への導入に伴い、それに連系する電力系統に周波数変動や電圧変動等の悪影響を及ぼす可能性がある。その対策の一つとして、自然エネルギ発電装置に蓄電装置を併設し、その電力系統の電圧変動を抑制する方法が提案されている。例えば、特許文献1に記載の自然エネルギ発電装置の出力変動を補償する蓄電装置は、互いに並列接続された複数のリチウム電池の直列電池ユニットと制御装置を具備した組電池システムを構成し、自然エネルギ発電装置の出力変動に応じて充放電を切り替えるものである。また、各直列電池ユニットには、電流制御素子が備えられており、電池ユニットの電圧,温度,内部抵抗またはユニットを構成する電池セルの電圧,温度,内部抵抗に応じて、電流制御素子を制御し、各ユニット間で電圧のばらつきが生じないように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−29015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の組電池システムでは、例えば他のユニットに比べて容量が小さいユニットが存在した場合、充放電によってユニット間に電圧差を生じさせないために容量が大きいユニットへ負荷を集中させるよう電流制御素子が制御され、当該ユニットに負荷が集中することになる。このような使用方法を継続すると、電池の劣化が促進され最終的には組電池システムの寿命が短くなる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の代表的な発明は、長寿命化を図ることができる蓄電システムを提供する。
【0006】
ここに、本願の代表的な発明は、蓄電器と電力変換器とをユニットとし、このユニットを複数、電気的と並列に接続し、各ユニットの充放電電力を制御する機能を備えた蓄電システムであって、各ユニットが充電もしくは放電を少なくとも1回以上実施した場合、所定の休止時間を経過するまでは充放電を実施しないように各ユニットの充放電を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本願の代表的な発明によれば、蓄電器の劣化による寿命低下促進を抑制できるので、蓄電システムの長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態における組電池システムの構成例。
【図2】組電池システムのシステムコントローラの構成例。
【図3】休止時間の演算方法の一例。
【図4】休止時間の演算方法の一例。
【図5】充放電出力の配分方法の一例。
【図6】充放電出力の配分方法の一例。
【図7】本発明の実施形態におけるフローチャートの一例。
【図8】本発明の実施形態におけるフローチャートの一例。
【図9】タイムチャートの一例。
【図10】リチウム電池セルの材料の違いによる600sec間の電圧プロフィールの一例。
【図11】600sec間の電圧プロフィールの計測方法の一例。
【図12】休止時間の決定方法の一例。
【図13】材料ごとの休止時間の計測結果。
【図14】オリビン酸系のリチウム電池セルにおける600secのセル電圧の計測結果。
【図15】コバルト酸リチウム系のリチウム電池セルにおける600secのセル電圧の計測結果。
【図16】ニッケル・コバルト酸リチウム系のリチウム電池セルにおける600secのセル電圧の計測結果。
【図17】オリビン酸系,コバルト酸リチウム系,ニッケル・コバルト酸リチウム系のリチウム電池セルにおける、SOC毎の休止時間の設定値の一例。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
以下本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は本発明の適用例の一例である。電力系統100には自然エネルギ発電装置200と変圧器300を介して組電池システム400が接続され、自然エネルギ発電装置からの出力電力PNと組電池システムからの出力電力PBが連系点Aで合流してPSとなり電力系統へ供給される。組電池システムは、電力変換器411とリチウム電池セルが複数直列並列接続された組電池412とを構成単位とするユニットが複数並列接続され、さらに各ユニットに充放電電力の指令値を与えるシステムコントローラ500とで構成される。システムコントローラは電力系統に供給された出力電力PS、自然エネルギ発電装置の出力電力PN、電力系統の要求電力PSTから組電池システムが出力すべき電力PBRを算出し、さらに各ユニットの充放電可能な電力に基づいて各ユニットの充放電電力の目標値PBRxを演算する。各ユニットは充放電電力PBxがPBRxと一致するよう電力変換器を制御する。
【0012】
図2に上記システムコントローラの構成について詳細を示す。
【0013】
システムコントローラは、電力系統の要求電力PSTと実際に供給された電力PSの差分を積算し組電池システムの出力PBの補正値PSCを演算する出力補正部501、電力系統の要求電力PSTと補正値PSCの加算結果から自然エネルギ発電装置の出力電力PNを減算し組電池システムの目標充放電電力PBRを求める充放電電力目標値演算手段502、ユニットの充放電電力PBxまたは充放電電力の指令値PBRxから各ユニットの充放電後の休止時間BTxを演算する休止時間演算部503、PBRと各ユニットの充電状態であるSOCx(State of Charge)とBTxから各ユニットへの充放電指令値PBRxを演算する充放電指令値配分部504で構成される。なおSOCは電池容量に対して充電している電気量を比率で表したものである。
【0014】
さらに、図3および図4を用いて休止時間演算部503での休止時間の演算方法を説明する。
【0015】
図3はPBxを用いて休止時間を求めるケースを示す。PBxの絶対値が所定値P以下となる時刻t1からシステムコントローラ内の制御周期毎に制御周期の時間と一致した値を積算しBTxとする。
【0016】
なお、所定値Pの決定方法は、各ユニットの最大出力に対して十分小さな値とし、例えば電力,電圧,電流、の各センサの誤差を考慮してその各センサによる計測誤差以上となるよう決定する。また、十分小さい値として予め所定値を与えても良い。
【0017】
図4には、PBRxを用いて休止時間を求めるケースを示す。
【0018】
この場合はPBRx=0が成立した時刻t2からシステムコントローラ内の制御周期毎に制御周期の時間と一致した値を積算しBTxとする。
【0019】
次に、図5と図6を用いて充放電指令値配分部504の動作について詳細を説明する。
【0020】
図5(a)は放電場合の充放電指令値の配分方法を示す。
【0021】
充放電指令値配分部では、各ユニットのSOCの情報に基づき、SOCが高い順にユニットの放電最大出力値PBDMを配置する。
【0022】
図5の(a)では、ユニット410,ユニット420,ユニット430の順にSOCが高かったものとして表わしている。従って、優先順位は上記の順となり、この場合の充放電指令値PBRxはユニット410に放電最大出力値であるPBDM1、ユニット420にはPBRからPBDM1を減算した値が配分される。また、その他のユニットへのPBRxはゼロとなる。
【0023】
同様に図5(b)は充電の場合を示している。充電の場合は、SOCが低い順に優先順位が付けられ、図5(b)では、ユニット410,ユニット420,ユニット430の順にSOCが低い場合を示している。従って、PBRxはユニット410に充電最大出力値であるPBCM1、ユニット420にはPBRxからPBCM1を減算した値が配分される。放電同様にその他のユニットへのPBRxはゼロとなる。
【0024】
次に、図6を用いて休止時間が短く使用できないユニットがある場合の動作について説明する。
【0025】
図6(a)は、ユニット410の休止時間が短く使用不可と判定されている場合の放電の例を示している。ユニット410はSOCの大きさに関わらず使用不可とされ、ユニットの優先順位はユニット420,ユニット430,ユニット440となる。従って、ユニット420のPBRxはPBDM2、ユニット430にはPBRからPBDM2を減算した値となる。その他のユニット、そしてユニット410のPBRxはゼロとなる。休止時間により使用不可判定を実施する方法については後述する。
【0026】
同様に図6(b)は充電の例を示している。
【0027】
ユニット410の使用時間が短い時は、ユニット410が不使用と判定され、ユニットの優先順位はユニット420,ユニット430,ユニット440となる。従って、ユニット420のPBRxはPBCM2、ユニット430にはPBRからPBCM2を減算した値となる。その他のユニット、そしてユニット410のPBRxはゼロとなる。
【0028】
図7に、本発明を適用した組電池システムが放電する場合のフローチャートの一例を示す。
【0029】
システムコントローラの起動(Start)後、S701でシステムコントローラは系統電力PS,系統要求電力PST,自然エネルギ発電装置の出力PN,各ユニットの充電状態SOCx,充放電電力PBx,充放電最大出力値PBDMx,PBCMxを計測し、さらにS702で、組電池システムの出力補正値PSC,システムの出力目標値PBR,各ユニットの休止時間PBxを演算する。そしてS703で、休止時間BTxと所定値LTを比較し、S703の処理が成立した場合はS704にて条件が成立したユニットを不使用ユニットの候補とする。S703の処理が非成立、またはS704の処理の終了後はS705となり、全ユニットのPBDMの合計値から不使用ユニットの候補となったユニットのPBDMの合計を減算し、その結果をPBRと比較する。なお、不使用ユニットが無い場合は不使用ユニットのPBDMの合計値はゼロである。S705が成立した場合は、不使用ユニットを抜いて残ったユニットにPBRを配分することが可能であることを意味するため、S706にて不使用候補だったユニットを不使用と決定する。S705が非成立の場合は、残ったユニットでPBRを配分しきれず出力が不足することを意味するため、S707にて不使用ユニット「無し」としS708へ移行する。S708では、SOCxの高い順に放電の優先順位を決定し、S709にて前述の方法に従い充放電指令値PBRx演算し各ユニットへPBRxを配分する。システムコントローラが起動している間は、S701からS709を繰り返し実行する。なお、所定値LTの決定方法について後述する。
【0030】
同様に図8に、本発明を適用した組電池システムが充電する場合のフローチャートの一例を示す。
【0031】
S801でシステムコントローラは系統電力PS,系統要求電力PST,自然エネルギ発電装置の出力PN,各ユニットの充電状態SOCx,充放電電力PBx,充放電最大出力値PBDMx,PBCMxを計測し、さらにS802で、組電池システムの出力補正値PSC,システムの出力目標値PBR,各ユニットの休止時間PBxを演算する。そしてS803で、休止時間BTxと所定値LTを比較し、S803の処理が成立した場合はS804にて条件が成立したユニットを不使用ユニットの候補とする。S803の処理が非成立、またはS804の処理の終了後はS805となり、全ユニットのPBCMの合計値から不使用ユニットの候補となったユニットのPBCMの合計を減算し、その結果をPBRと比較する。なお、不使用ユニットが無い場合は不使用ユニットのPBCMの合計値はゼロである。S805が成立した場合は、不使用ユニットを抜いて残ったユニットにPBRを配分することが可能であることを意味するため、S806にて不使用候補だったユニットを不使用と決定する。S805が非成立の場合は、残ったユニットでPBRを配分しきれず出力が不足することを意味するため、S807にて不使用ユニット「無し」としS808へ移行する。S808では、SOCxの低い順に放電の優先順位を決定し、S809にて前述の方法に従い充放電指令値PBRx演算し各ユニットへPBRxを配分する。システムコントローラが起動している間は、S801からS809を繰り返し実行する。
【0032】
図9は、図7のフローチャートを実行し、組電池システムを放電した場合のタイムチャートの一例である。
【0033】
ここでは簡単のため組電池システム内にユニットが2つ(ユニット1,ユニット2)の場合を示している。また、両ユニットの容量は同じであるが、ユニット1のSOC1がわずかにユニット2よりも大きいとする。
【0034】
ある時刻T0からT1まではPBRが最大値で放電した場合であり、ユニット1およびユニット2の両方ともが放電しSOCが低下する。ここで、時刻T1からPBRが最大値からP1に低下し、どちらかのユニットで出力が賄えるようになると、SOCが小さいユニット2の放電が停止し、ユニットの停止時間BT2が積算される。その後は、ユニット1のみが放電し、時刻T2で各ユニットのSOCが一致して、T2以降はユニット1のSOCがユニット2よりも小さくなるものの、ユニット2の休止時間が所定値LTに到達していないためにユニット1の放電は、BT2がLTに到達するT3まで継続される。T3からは、ユニット2が放電となりこの間PBRがP2に変更されたとしても、ユニット2で賄える範囲であればユニット2のみでの放電が継続され、時刻T5でユニット1とユニット2のSOCが等しくなるものの、ユニット1の休止時間BT1がLTに到達するT6まではユニット2の放電が継続される。
【0035】
次に、図10から図17を用いて、休止時間LTの決定方法について説明する。
【0036】
まず、図10に、現在のリチウム電池セルに一般的に使用される材料であるオリビン酸系,コバルト酸リチウム系,ニッケルコバルト酸リチウム系の材料を用いて作成したリチウム電池(18650型)のSOC40%におけるセル電圧の経過を示す。このグラフは、図11に示すように、各電池セルともに、SOC20%から0.5Cの定電流充電を行いSOC40%に到達後600sec放置した際のセルのプロフィールである。時間0secは充電を停止した時刻を示している。いずれのセルも充電停止直後の電圧の降下が大きく、600secが経過する頃には殆ど電圧の変化が無い。この現象は分極電圧と呼ばれ、充放電によってリチウム電池の電極表面のイオンが材料の内部に拡散して行くことに主要因である。イオンが拡散しきらない内に充放電を行うと、電極表面でイオンが結晶化してしまい電極表面を覆うことや電解液との反応により電極表面の状態が悪化して、リチウム電池の性能が低下する。従って、休止時間は拡散が進み、時間に対する電圧の変化が十分に小さくなるまで設定するのが望ましい。
【0037】
そこで、図12に休止時の計算例を示す。
【0038】
図10の結果から、ここでは一例として600secの電圧を基準として充電停止直後(0sec)での電圧との差がA%低下した時間を休止時間とした。
【0039】
図13に、図10のデータから各セルでA=80%として休止時間を算出した結果を示す。
【0040】
この結果、オリビン酸系では約420sec、コバルト酸リチウム系は約360sec、ニッケル・コバルト酸リチウム系では約300secとなり、材料により休止時間が異なることが分かった。
【0041】
さらに図14から図16には各材料において600secのセル電圧のプロフィールをSOC40%とSOC60%で計測した場合の結果を示す。
【0042】
いずれにおいても、SOC60%の方が、電圧変化が平坦になるまでの時間が約60sec程度短くなる傾向が見られた。
【0043】
そこで、図17にSOC40%とSOC60%における休止時間の結果を外挿しSOC0%から100%までの休止時間を求めた結果を示す。
【0044】
この結果、オリビン酸系のリチウム電池の場合は約240secから540sec、コバルト酸リチウム系のリチウム電池の場合は約180secから480sec、ニッケル・コバルト酸リチウム系のリチウム電池の場合は約120secから420sec程度の時間を、休止時間の所定値LTとしてSOCに応じて与えるのが良い。
【0045】
また、本実施形態では休止時間を求める際のAの値を80%としたが、電池を適用する用途や要求される寿命によってAの値は変わる。このため、Aを小さくした場合は、LTの値を図17よりも短く、Aを大きくした場合は大きくする必要がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電器と電力変換器とをユニットとして、このユニットを複数、電気的に並列に接続し、各ユニットの充放電電力を制御する機能を備えた蓄電システムであって、前記各ユニットが充電もしくは放電を少なくとも1回以上実施した場合、所定の休止時間を経過するまでは充放電を実施しないよう前記各ユニットの充放電を制御することを特徴とする蓄電システム。
【請求項2】
請求項1において、放電の場合には、前記各ユニットのSOCが高い順に、放電に用いるユニットを選択して使用し、充電の場合には、SOCが低い順に、充電に用いるユニットを選択して使用することを特徴とする蓄電システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記各ユニットを構成する蓄電器に使用されるセルの材料に応じて休止時間を設定し、オリビン酸系では180sec〜900sec、コバルト酸リチウム系では120sec〜840sec、ニッケル・コバルト酸リチウム系では60sec〜780secとすることを特徴とする蓄電システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記各ユニットのSOCに応じて、SOCが大きいほど休止時間が短くなるよう設定することを特徴とする蓄電システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、休止中のユニットが存在し、システムに要求される電力が休止中のユニットを除いた全ユニットが出力可能な電力の合計値を上回る場合には、休止時間に関わらず前記各ユニットの充放電を制御することを特徴とする蓄電システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、系統に供給した電力と系統の要求電力の差からシステムの出力の補正値を演算する出力補正部と、前記出力補正部の出力と系統の要求電力と発電装置から供給される電力に基づいてシステムの目標出力を演算する目標値演算部と、前記各ユニットの出力値または出力の目標値に基づいて前記各ユニットの休止時間を演算する休止時間演算部と、前記出力補正部の出力と、前記目標値演算部の出力と、前記各ユニットの充電状態であるSOCと、前記休止時間演算部の出力に基づいて、前記各ユニットに対応する充放電指令値の配分を決定する充放電指令値配分部とを有することを特徴とする蓄電システム。
【請求項1】
蓄電器と電力変換器とをユニットとして、このユニットを複数、電気的に並列に接続し、各ユニットの充放電電力を制御する機能を備えた蓄電システムであって、前記各ユニットが充電もしくは放電を少なくとも1回以上実施した場合、所定の休止時間を経過するまでは充放電を実施しないよう前記各ユニットの充放電を制御することを特徴とする蓄電システム。
【請求項2】
請求項1において、放電の場合には、前記各ユニットのSOCが高い順に、放電に用いるユニットを選択して使用し、充電の場合には、SOCが低い順に、充電に用いるユニットを選択して使用することを特徴とする蓄電システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記各ユニットを構成する蓄電器に使用されるセルの材料に応じて休止時間を設定し、オリビン酸系では180sec〜900sec、コバルト酸リチウム系では120sec〜840sec、ニッケル・コバルト酸リチウム系では60sec〜780secとすることを特徴とする蓄電システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記各ユニットのSOCに応じて、SOCが大きいほど休止時間が短くなるよう設定することを特徴とする蓄電システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、休止中のユニットが存在し、システムに要求される電力が休止中のユニットを除いた全ユニットが出力可能な電力の合計値を上回る場合には、休止時間に関わらず前記各ユニットの充放電を制御することを特徴とする蓄電システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、系統に供給した電力と系統の要求電力の差からシステムの出力の補正値を演算する出力補正部と、前記出力補正部の出力と系統の要求電力と発電装置から供給される電力に基づいてシステムの目標出力を演算する目標値演算部と、前記各ユニットの出力値または出力の目標値に基づいて前記各ユニットの休止時間を演算する休止時間演算部と、前記出力補正部の出力と、前記目標値演算部の出力と、前記各ユニットの充電状態であるSOCと、前記休止時間演算部の出力に基づいて、前記各ユニットに対応する充放電指令値の配分を決定する充放電指令値配分部とを有することを特徴とする蓄電システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−249484(P2012−249484A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121223(P2011−121223)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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