説明

蓄電デバイス、その製造方法および蓄電モジュール

【課題】ラミネートシート部材の金属層を導電層として利用する新規な蓄電デバイス、その製造方法および蓄電モジュールを提供する。
【解決手段】ラミネートシート部材4において、デバイス本体2の外側に位置する正極11の少なくとも一部に対面する領域では、第1絶縁層51および第2絶縁層52が被覆されておらず、金属層50が正極11に対向しつつ露出されている。金属層50のうち正極11に対向しつつ露出する金属層部分50cは正極11側金属層部分50cとして導電性接着剤層7を介してデバイス本体2の正極11に電気的に導通可能に接着されている。負極12側も同様な構造とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄電デバイス、その製造方法および蓄電モジュールに関する。蓄電デバイスとしては、キャパシタ等の物理的電池、リチウムイオン電池等の化学的電池が例示される。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、リチウムイオン電池本体を密閉する外装体に収容して密閉する工程において、タブに接着性フィルムを巻き付けて高周波誘電加熱させることによりタブと接着性フィルムと熱融着させるリチウムイオン電池を開示する。このものによれば、タブの密封性を高めることができると記載されている。特許文献2は、キャパシタ本体にアルミラミネートフィルムを外装部材として被覆した電気二重層キャパシタを開示する。このものによれば、集電端子に折り曲げ部を形成させると共に、折り曲げ部にアルミラミネートフィルムを被覆しつつ、織り曲げ部分の先端部をアルミラミネートフィルムから外方に引き出し、外部回路との電気的な導通を可能とさせている。特許文献3は、キャパシタユニットをアルミラミネートフィルムで被覆する電気二重層キャパシタを開示する。このものによれば、集電端子はL字形状をなし、集電板に接触する接触部分と、接触部分に対して垂直であって外部回路と電気的に接続される端子部分とからなる。更に、端子部分を露出させる穴を有するアルミラミネートフィルムと端子部分とが熱溶着され、集電端子がキャパシタユニットから突出することが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−307777号公報
【特許文献2】特開2009−64946号公報
【特許文献3】特開2009−64992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したリチウムイオン電池やキャパシタ等の蓄電デバイスの分野では、更なる改良が要望されている。上記したリチウムイオン電池やキャパシタ等では、ラミネートシート部材を外装として用いており、ラミネートシート部材の金属層を導電パスとしては利用していない。
【0005】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、金属層と金属層をこれの厚み方向に挟むように配置された高分子材料で形成された第1絶縁層および第2絶縁層とを有するラミネートシート部材を用い、ラミネートシート部材の金属層を、厚み方向の導電パスとして利用する新規な蓄電デバイス、その製造方法および蓄電モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の様相1に係る蓄電デバイスは、(i)セパレータとセパレータをこれの厚み方向に挟むように設けられた正極および負極を有するデバイス本体と、(ii)金属層と金属層をこれの厚み方向に挟むように配置された高分子材料で形成された第1絶縁層および第2絶縁層とを有すると共に、デバイス本体を電解質物質と共に密閉させるラミネートシート部材で形成された容器とを具備しており、(iii)ラミネートシート部材において、デバイス本体の外側に位置する正極の少なくとも一部に対面する領域では、第1絶縁層および第2絶縁層が被覆されておらず、金属層が正極に対向しつつ露出されており、金属層のうち正極に対向しつつ露出する金属層部分は正極側金属層部分として導電性接着剤層を介してデバイス本体の正極に電気的に導通可能に接着されており、且つ、(iv)ラミネートシート部材において、デバイス本体の外側に位置する負極の少なくとも一部に対面する領域では、第1絶縁層および第2絶縁層が被覆されておらず、金属層が負極に対向しつつ露出されており、金属層のうち負極に対向しつつ露出する金属層部分は負極側金属層部分として導電性接着剤層を介してデバイス本体の負極に電気的に導通可能に接着されている。
【0007】
本様相によれば、蓄電デバイスとしては、物理的電池および化学的電池が例示される。物理的電池としては電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタが例示される。化学的電池としてはリチウムイオン二次電池、リチウムポリマー電解質二次電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池が例示される。デバイス本体は、セパレータとセパレータをこれの厚み方向に挟むように設けられた正極および負極を有する。セパレータは正極および負極の電気的短絡を抑えるものであり、電解質物質を流通させる孔が形成されていても良い。
【0008】
ラミネートシート部材において、デバイス本体の外側に位置する正極の少なくとも一部に対面する領域では、第1絶縁層および第2絶縁層が被覆されておらず、金属層が正極に対向しつつ露出されている。そして、金属層のうち正極に対向しつつ露出する金属層部分は、正極側金属層部分として、導電性接着剤層を介してデバイス本体の正極に電気的に導通可能に接着されている。
【0009】
また、ラミネートシート部材において、デバイス本体の外側に位置する負極の少なくとも一部に対面する領域では、第1絶縁層および第2絶縁層が被覆されておらず、金属層が負極に対向しつつ露出されている。そして、金属層のうち負極に対向しつつ露出する金属層部分は、負極側金属層部分として、導電性接着剤層を介してデバイス本体の負極に電気的に導通可能に接着されている。第1絶縁層および第2絶縁層が被覆されていない領域では、金属層は第1絶縁層および第2絶縁層から露出するものの、導電性接着剤層により覆われている。従って金属層をこれの厚み方向の導電パスとして利用できる。このように第1絶縁層および第2絶縁層が被覆されていない領域では、金属層は導電性接着剤層により覆われてシールされている、このため、露出した金属層と蓄電デバイスの電解質物質との接触が導電性接着剤層により制限される。よってラミネートシート部材の金属層の耐久性を高めることができる。
【0010】
(2)本発明の様相2に係る蓄電デバイスによれば、上記様相において、デバイス本体は、セパレータとセパレータをこれの厚み方向に挟むように設けられた正極および負極を有するデバイスシートを、つづら折り状に曲成して形成されている。本様相によれば、デバイスシートの蓄電容量を確保しつつ小型化を図り得る。
【0011】
(3)本発明の様相3に係る蓄電デバイスによれば、上記様相において、正極側金属層部分に被覆されつつ電気的に導通する正極端子と、負極側金属層部分に被覆されつつ電気的に導通する負極端子とを具備する。本様相によれば、蓄電デバイスは、外部回路に接触可能な正極端子および負極端子を有することができる。
【0012】
(4)本発明の様相4に係る蓄電デバイスの製造方法は、セパレータとセパレータをこれの厚み方向に挟むように設けられた正極および負極を有するデバイス本体と、金属層と金属層をこれの厚み方向に挟むように配置された高分子材料で形成された第1絶縁層および第2絶縁層とを有すると共に、デバイス本体を電解質物質と共に密閉させるラミネートシート部材とを具備する蓄電デバイスを製造する製造方法であって、ラミネートシート部材について、デバイス本体の外側に位置する正極および負極の少なくとも一部に対面する領域において、第1絶縁層および第2絶縁層を除去して金属層を部分的に露出させる工程と、金属層のうち部分的に露出させた金属層部分に導電性接着剤層を介してデバイス本体の正極および負極をそれぞれ接着させつつ、デバイス本体にラミネートシート部材を被覆させて容器を形成する工程とを含む。
【0013】
本様相によれば、ラミネートシート部材について、第1絶縁層および第2絶縁層を除去して、金属層を部分的に露出させる。その後、金属層のうち部分的に露出させた金属層部分に導電性接着剤層を介してデバイス本体の正極および負極をそれぞれ接着させる。このため部分的に露出された金属層部分は導電性接着剤層で被覆されるため、デバイス本体の正極および負極と電気的に導通されつつ、保護される。
【0014】
(5)本発明の様相5に係る蓄電モジュールは、(i)上記様相1〜3のうちのいずれかに係る複数の蓄電デバイスを直列に積層して形成したデバイス群と、(ii)デバイス群を包囲して保持するコンテナと、(iii)コンテナで包囲されたデバイス群のうち蓄電デバイスの積層方向の一方向において最も外側に位置する蓄電デバイスの正極に電気的に導通する正極主端子と、(iv)コンテナで包囲されたデバイス群のうち蓄電デバイスの積層方向の他方向において最も外側に位置する蓄電デバイスの負極に電気的に導通する負極主端子とを具備する。本様相によれば、蓄電デバイスを直列に積層して形成した蓄電モジュールが提供できる。デバイス群は、複数の蓄電デバイスを少なくとも直列に積層して形成されている。従って、複数の蓄電デバイスを直列に配置させると共に、並列に配置させていても良い。蓄電モジュールを形成する蓄電デバイスによれば、金属層をこれの厚み方向の導電パスとして利用できる。このように第1絶縁層および第2絶縁層が被覆されていない領域では、金属層は導電性接着剤層により覆われている、このため、露出した金属層と蓄電デバイスの電解質物質と接触が導電性接着剤層により制限される。よってラミネートシート部材の金属層の耐久性を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金属層と金属層をこれの厚み方向に挟むように配置された高分子材料で形成された第1絶縁層および第2絶縁層とを有するとラミネートシート部材を用い、ラミネートシート部材の金属層を、これの厚み方向に導電パスとして利用する新規な蓄電デバイスおよび蓄電モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】デバイスシートを模式的に示す断面図である。
【図2】デバイス本体を模式的に示す斜視図である。
【図3】蓄電デバイスを模式的に示す断面図である。
【図4】(A)は組付前のラミネートシート部材の断面図であり、(B)は組付前のラミネートシート部材において金属層を露出させる過程を模式的に示す断面図であり、(C)はラミネートシート部材において露出させた金属層を模式的に示す断面図である。
【図5】ラミネートシート部材における露出させた金属層にデバイス本体の正極が接触している状態を模式的に示す断面図である。
【図6】ラミネートシート部材における露出させた金属層にデバイス本体の負極が接触している状態を模式的に示す断面図である。
【図7】実施形態2に係り、蓄電デバイスに正極端子を取り付けた状態を模式的に示す断面図である。
【図8】実施形態2に係り、蓄電デバイスに負極端子を取り付けた状態を模式的に示す断面図である。
【図9】実施形態3に係り、蓄電デバイスを直列に並設したデバイス群を模式的に示す断面図である。
【図10】実施形態3に係り、蓄電デバイスを直列に並設したデバイス群をコンテナに収容した蓄電モジュールを模式的に示す断面図である。
【図11】実施形態4に係り、蓄電デバイスを直列に並設したデバイス群をコンテナに収容した蓄電モジュールを模式的に示す断面図である。
【図12】実施形態5に係り、蓄電デバイスを直列に並設したデバイス群をコンテナに収容した蓄電モジュールを模式的に示す断面図である。
【図13】実施形態6に係り、導電性接着剤層をラミネートシート部材に塗布した状態を模式的に示す断面図である。
【図14】実施形態7に係り、導電性接着剤層をラミネートシート部材に塗布した状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ラミネートシート部材において、デバイス本体の外側に位置する電極(正極および負極)の少なくとも一部に対面する領域では、第1絶縁層および第2絶縁層が被覆されていない。従って、ラミネートシート部材において金属層が露出されている。そして、金属層のうち電極(正極および負極)に対向しつつ露出する金属層部分は、導電性接着剤層を介してデバイス本体の電極(正極および負極)に電気的に導通可能にそれぞれ接着されている。導電性接着剤層は導電性および接着性を有するものであれば良い。導電性接着剤層は有機系でも無機系でも良い。有機系接着剤は樹脂系でもゴム系でも良く、ビニル系、エポキシ系、フェノール系、ウレタン系、アクリル系、スチレン系、メラミン系、シリコーンゴム系、ニトリルゴム系などが例示されるが、これらに限定されるものではない。導電性接着剤層は固化すると、硬質でも良いし、軟質でも良い。導電性接着剤層はそれ自体が導電性を有するものでも、導電物質およびバインダを混在させてものでも良い。導電物質としては炭素系、金属系、導電セラミックスが例示され、粉末粒子状でも、繊維状でも良い。
【0018】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1について図1〜図6を参照して説明する。本実施形態によれば、図1に示す可撓性をもつ平板状のデバイスシート1が用いられる。デバイスシート1は、可撓性をもつ平板状のセパレータ10と、セパレータ10をこれの厚み方向(矢印T1方向)において挟むように積層された平板状の正極11および負極12とを有する。正極11は一方の電極に相当する。負極12は他方の電極に相当する。セパレータ10は正極11と負極12との内部短絡を防止するものであり、高分子材料の不織布、織布(電気絶縁性をもつ多孔質材料)が例示される。セパレータ10は電解液を保持して正極11および負極12間におけるイオン化伝導性を向上させる。セパレータ10はポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリアミド系に代表される高分子材料の多孔膜が例示される。セパレータ10には電解液が含浸される。
【0019】
図2に示すように、平板状をなすデバイスシート1をつづら折り状に曲成させることにより、デバイス本体2が形成される。図2に示すように、つづら折り状に曲成されたデバイス本体2は、断面でC形状および逆C形状に交互に曲成されている。デバイス本体2は、一方側(C形状)に位置する複数の第1曲成部21と、他方側(逆C形状)に位置する複数の第2曲成部22とを有する。第1曲成部21では正極11が曲げ外周となり、負極12が曲げ内周となる。第2曲成部22では負極12が曲げ外周となり、正極11が曲げ内周となる。但し、これに限らず、第1曲成部21では負極12が曲げ外周となり、正極11が曲げ内周となり、第2曲成部22では正極11が曲げ外周となり、負極12が曲げ内周となる形態としても良い。図2に示すように、つづら折り状に曲成されたデバイス本体2においては、正極11同士(同極同士)が対向する領域が存在する。デバイス本体2のうち積層方向(矢印T2方向)において一方側の最も外側の正極11(一方の電極)の端面は、X方向およびY方向(図2参照)に延設されている。デバイス本体2のうち積層方向(矢印T方向)において他方側の最も外側の負極12(他方の電極)の端面は、X方向およびY方向(図2参照)に延設されている。
【0020】
図3は蓄電デバイス3の断面を模式的に示す。蓄電デバイス3は、つづら折り状に曲成されたデバイス本体2を容器4により液密状態に密閉して形成されている。すなわち、図3に示すように、帯電デバイスは、つづら折り状に曲成されたデバイス本体2と、デバイス本体2を電解液(電解質物質)と共に密閉させる外装部材として機能するラミネートシート部材41,42で形成された容器4とを備える。電解液は電解質物質を溶媒に溶解させたものである。図3に示すように、容器4は、デバイス本体2を電解液と共に密閉状態に収容する密閉室30を形成しつつ、互いに接合された第1ラミネートシート部材41および第2ラミネートシート部材42で形成されている。
【0021】
図4(A)はラミネートシート部材41,42の断面を模式的に示す。図4(A)に示すように、ラミネートシート部材41,42は、フィルム状をなす金属層50と、金属層50をラミネートシート部材4の厚み方向(矢印T2方向)に挟むように配置された有機系高分子材料(例えば樹脂やゴム系)で形成されたフィルム状をなす第1絶縁層51および第2絶縁層52とを有する。図3に示すように、第1絶縁層51は、容器4内の蓄電デバイス3に対向する側に位置する。第2絶縁層52は、容器4内の蓄電デバイス3と反対側に位置する。金属層50は、アルミニウム、アルミニウム合金、純鉄、炭素鋼系、合金鋼(ステンレス鋼を含む)、チタン、チタン合金、銅、銅合金などの金属箔、金属フィルムまたは金属シートで形成できる。第1絶縁層51および第2絶縁層52の材質については、ポリエチレン(PE)、変性ポリプロピレン(PP)、ボリエステル(PET)、ナイロン、アイオノマー等が例示されるが、これらに限定されるものではない。第1絶縁層51の材質については、電解液に対して耐久性を有するものが好ましい。図4(A)において、金属層50の厚みTmについては、20〜500マイクロメートル、30〜300マイクロメートル、40〜100マイクロメートルが例示される。第1絶縁層51の厚みTfおよび第2絶縁層52の厚みTsについては、20〜1000マイクロメートル、30〜500マイクロメートル、40〜200マイクロメートルが例示される。なお、Tf=Ts、Tf≒Ts、Tf>Ts、Tf<Tsのいずれでも良い。
【0022】
図3に示すように、組み付け時には、第1ラミネートシート部材41の端部である第1鍔部41wと第2ラミネートシート部材42の端部である第2鍔部42wとが厚み方向に積層された状態で、第1鍔部41wおよび第2鍔部42wは、接合手段により互いに液密状態に接合されている。これにより図3に示す蓄電デバイス3が形成される。第1鍔部41wと第2鍔部42wとを直接接合させても良い。必要に応じて、第1鍔部41wと第2鍔部42wとの間に、高い電気絶縁性を有するフィルム状の中間部材41x(図3参照,例えば樹脂系)を介在させて接合させても良い。この場合、第1ラミネートシート部材41および第2ラミネートシート42間の短絡抑制に有利である。第1鍔部41wと第2鍔部42wとは接合されているが、図3では、明確化のため離間されて図示されている。
【0023】
蓄電デバイス3の製造過程では、まず、第1ラミネートシート部材41および第2ラミネートシート部材42から第1絶縁層51および第2絶縁層52を部分的に除去させる除去工程を実施する。すなわち、図4(B)に示すように、第1ラミネートシート部材41の所定の投影面積S(デバイス本体2の電極である正極11に対面する領域の一部)において、高温状態の熱プレス型61の平坦な先端加圧面61aおよび相手熱プレス型62の平坦な先端加圧面62aで、第1ラミネートシート部材41をこれの厚み方向に加圧させて挟持させる。これにより第1ラミネートシート部材41において第1絶縁層51および第2絶縁層52を昇温させて軟化または溶融させる。その後、図4(C)に示すように、剥離手段の一部である熱プレス型61および相手熱プレス型62を外した後、軟化又は溶融した第1絶縁層51および第2絶縁層52を剥離手段等により金属層50から剥離させて除去させる。これにより、金属層50のうち金属層部分50の互いに背向する第1表面50fおよび第2表面50sを、外部に部分的に露出させる。第1表面50fは、容器4の密閉室30に対面する側とする。第2表面50sは、容器4の密閉室30と反対側とする。そして、図5に示すように、第1ラミネートシート部材41のうち外部に露出する金属層部分50cの第1表面50fに導電性接着剤を塗布させて導電性接着剤層7iを形成すると共に、金属層50の第2表面50sに導電性接着剤を所定量塗布させて導電性接着剤層7pを形成する。
【0024】
本実施形態によれば、図5に示すように、導電性接着剤層7iの厚みTiは、第1絶縁層51の厚みTfよりも大きいことが好ましい。導電性接着剤層7pの厚みTpは、第2絶縁層52の厚みTsよりも大きいことが好ましい。従って、図5に示すように、導電性接着剤層7iの表面7isは、第1ラミネートシート部材41の厚み方向において、第1ラミネートシート部材41の絶縁層51の表面51sよりも寸法γiぶん突出していることが好ましい。同様に、導電性接着剤層7pの表面7psは、第2ラミネートシート部材42の厚み方向において、第2ラミネートシート部材42の絶縁層52の表面52sよりも寸法γpぶん突出していることが好ましい。なお、表面7is,7psは加圧部材の加圧面により加圧されて平坦化されていることが好ましい。その後、第1ラミネートシート部材41を蓄電デバイス3に被覆させる。これにより図5に示すように、第1ラミネートシート部材41の金属層50において露出する金属層部分50cの第1表面50fは、デバイス本体2の正極11に対面しつつ、導電性接着剤層7iにより正極11に電気的に導通可能に接着される。
【0025】
同様に、第2ラミネートシート部材42についても第1絶縁層51および第2絶縁層52を金属層50から剥離させて除去させ、金属層部分50cを露出させ、その金属層部分50cの第1表面50fに導電性接着剤を塗布させて導電性接着剤層7iを形成すると共に、金属層部分50cの第2表面50sに導電性接着剤を塗布させて導電性接着剤層7pを形成する。その後、第2ラミネートシート部材42を蓄電デバイス3に被覆させる。これにより図6に示すように、第2ラミネートシート部材42の金属層50において露出する金属層部分50cの第1表面50fは、デバイス本体2の負極12に対面しつつ、導電性接着剤層7iにより電気的に接続可能に接着される。図6に示すように、第2ラミネートシート部材42についても、導電性接着剤層7iの厚みTiは、第1絶縁層51の厚みTfよりも大きいことが好ましい。導電性接着剤層7pの厚みTpは、第2絶縁層52の厚みTsよりも大きいことが好ましい。従って、図6に示すように、導電性接着剤層7iの表面7isは、第2ラミネートシート部材42の厚み方向において、第2ラミネートシート部材42の絶縁層51の表面51sよりも突出していることが好ましい。導電性接着剤層7pの表面7psは、厚み方向において、第2ラミネートシート部材42の絶縁層52の表面52sよりも突出していることが好ましい。
【0026】
コストなどを考慮すると、導電性接着剤層7i,7pを形成する導電性接着剤としては、導電性粉末粒子等の導電性物質を含有する樹脂系やゴム系(高分子材料系)のバインダで形成された接着剤が好ましい。導電性物質としては、カーボン粉末(例えばカーボンブラック、黒鉛等)、炭素繊維が好ましいが、金属粉末、金属繊維、導電セラミックス粉末、導電セラミックス繊維などでも良い。金属としてはアルミニウム、アルミニウム合金、純鉄、鉄合金(例えば炭素鋼,合金鋼)、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金等が例示される。金属としては電解液等に対する高い耐久性をもつものが好ましい。本発明者が実施して試験例では、導電性接着剤層7i,7pを形成する導電性接着剤は、品名:バニーハイト(日本黒鉛工業株式会社、硬化条件:140〜160°×20〜40分間,導電物室:黒鉛+カーボンブラック,溶媒:フェノール樹脂溶液)を用いた。但しこれに限定されるものではない。
【0027】
更に説明を加える。図5は、蓄電デバイス3のうち最も外側の正極11付近の断面を模試的に示す。図5に示すように、第1ラミネートシート部材41においては、デバイス本体2の外側に位置する正極11に対面する領域では、第1絶縁層51および第2絶縁層52が被覆されておらず、第1ラミネートシート部材41の金属層50がデバイス本体2の正極11に対向しつつ投影面積S(図5参照)において部分的に露出されている。このように第1ラミネートシート部材41の金属層50のうちデバイス本体2の正極11に対向しつつ露出する金属層部分50cは、正極側金属層部分50xc(図5参照)として、デバイス本体2の最も外側の正極11に導電性接着剤層7iを介して電気的に導通可能に接着されている。従って、図5から理解できるように、デバイス本体2の正極11、導電性接着剤層7i、第1ラミネートシート部材41の金属層50における正極側金属層部分50xc、導電性接着剤層7pを介して導電パスPA(図5参照)が形成されている。導電パスPAは、外部に電気的に導通可能とされている。
【0028】
図6は、蓄電デバイス3のうち最も外側の負極12付近の断面を模試的に示す。図6に示すように、第2ラミネートシート部材42についても、デバイス本体2の外側に位置する負極12に対面する領域では、第1絶縁層51および第2絶縁層52が被覆されておらず、第2ラミネートシート部材42の金属層50は、負極12に対向しつつ、投影面積S(図6参照)において部分的に露出されている。このように第2ラミネートシート部材42の金属層50のうち負極12に対向しつつ露出する金属層部分50cは、負極側金属層部分50yc(図6参照)として、導電性接着剤層7iを介してデバイス本体2の負極12に電気的に導通可能に接着されている。従って図6から理解できるように、デバイス本体2の負極12、導電性接着剤層7i、第2ラミネートシート部材42の金属層50の負極側金属層部分50yc、金属層50に被覆された導電性接着剤層7pを介して導電パスPBが形成されている。導電パスPBは外部に導通可能とされている。なお本実施形態によれば、蓄電デバイス3としては、電子や電荷を吸着および放電させる物理的電池、あるいは、電気化学的な酸化還元反応を伴う化学的電池が挙げられる。物理的電池としては電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタが挙げられる。化学的電池としてはリチウムイオン二次電池、リチウムポリマー電解質二次電池が挙げられる。
【0029】
以上説明したように本実施形態によれば、金属層50と金属層50をこれの厚み方向に挟むように配置された樹脂等の有機系高分子材料で形成された第1絶縁層51および第2絶縁層52とを有するラミネートシート部材41,42を用いる。そして、ラミネートシート部材41,42のうち部分的に露出させた金属層50を、これの厚み方向に導電パスとして利用する新規な蓄電デバイス3を提供することができる。導電性接着剤層7i、導電性接着剤層7pが可撓性を有する場合には、蓄電デバイス3(図3参照)は、容器4を形成するラミネートシート部材41,42、導電性接着剤層7i、導電性接着剤層7pと共に可撓性を有する。上記したよう本実施形態によれば、第1ラミネートシート部材41および第2ラミネートシート部材42についても、第1絶縁層51および第2絶縁層52が部分的に被覆されておらず、金属層50は、正極11または負極12に対向しつつ部分的に露出されている。そして、このように第1ラミネートシート部材41および第2ラミネートシート部材42の金属層50のうち露出する金属層部分50c(第1絶縁層51および第2絶縁層52が除去された領域の金属層部分50c)を、導電性物質を含むバインダで形成された導電性接着剤層7i、導電性接着剤層7pによって被覆して保護するため、露出する金属層部分50cの耐久性を高め得る。更に、露出する金属層部分50cを導電性接着剤層7i、導電性接着剤層7pによって補強させて強化させることができる利点が得られる。
【0030】
本実施形態によれば、図5に示すように、第1ラミネートシート部材41によれば、外側に位置する導電性接着剤層7pの投影面積Spは、露出する金属層部分50cの投影面積Sよりも大きく、寸法αぶん外方にはみ出ていることが好ましい。図5から理解できるように、導電性接着剤層7iの投影面積も、露出する金属層部分50cの投影面積Sよりも大きく、外方にはみ出ていることが好ましい。更に図6に示すように、第2ラミネートシート部材42によれば、外側に位置する導電性接着剤層7pの投影面積Spは、露出する金属層部分50cの投影面積Sよりも大きく、寸法βぶん外方にはみ出ていることが好ましい。同様に図6から理解できるように、内側に位置する導電性接着剤層7iの投影面積も、露出する金属層部分50cの投影面積Sよりも大きく、外方にはみ出ていることが好ましい。これにより導電性接着剤層7i,7pのうち外方にはみ出た部分により、シール性を高めることができ、電解液に対する金属層部分50cに対するシール性を高めることができる。
【0031】
上記した導電性接着剤層7i、導電性接着剤層7pの硬さは、導電性接着剤層7i、導電性接着剤層7pに含まれるバインダの材質で調整できる。バインダは熱可塑性樹脂でも良いし、熱硬化性樹脂でも良い。固化後の導電性接着剤層7i、導電性接着剤層7pが可撓性を有する場合には、蓄電デバイス3は所望の可撓性を示すことができる。固化後の導電性接着剤層7i、導電性接着剤層7pが可撓性を示さず、硬質を示す場合には、蓄電デバイス3の剛性を高め、蓄電デバイス3(図3参照)は、所望の剛性、形状保持性を有することができる。なお導電性接着剤層7i、導電性接着剤層7pの硬度は、蓄電デバイス3の用途や種類等に応じて、必要に応じて設定することができる。
【0032】
本実施形態に係る製造過程によれば、前述したように、部分的に露出された金属層部分50cは、導電性接着剤層7i,7pでシールされつつ被覆される。このため、部分的に露出された金属層部分50cと電解液とが直接接触することが抑制されて、部分的に露出された金属層部分50cは保護される。更に本実施形態によれば、容器4を構成するラミネートシート部材41,42に収容されているデバイス本体2は、セパレータ10とセパレータ10をこれの厚み方向に挟むように設けられた正極11および負極12を有するデバイスシート1を、つづら折り状に曲成して形成されている。従ってデバイスシート1の蓄電容量を確保しつつ小型化を図り得る。更に、デバイス本体2はつづら折り状に曲成されて積層されているため、デバイス本体2の積層方向(図2に示す矢印T2方向)におけるスプリングバックが生じることがある。スプリングバックにより、デバイス本体2のうち最も外側に位置する正極11および負極12を導電性接着剤層7iに良好に密接させることを期待でき、接触抵抗の低減に有利である。
【0033】
本実施形態によれば、図3、図5、図6から理解できるように、導電性接着剤層7iは容器4の内側に位置し、露出する金属層部分50cを保護し、電解液に触れる。導電性接着剤層7pは容器4の外側に位置し、電解液には触れないものの、容器4の外部に露出する。ここで、導電性接着剤層7i,7pは、同材質の導電性接着剤で形成されていても良く、同一のバインダ、同一の導電物質、同一の硬度でも良い。この場合、兼用できるため、コスト的に有利となる。但し、導電性接着剤層7i,7pについては、異なる配合比率、異なる材質、異なる組成の導電性接着剤で形成されていても良く、異なるバインダ、異なる導電物質、異なる硬度でも良い。例えば、容器4の外側に位置して外部に露出するため機械的耐久性が要請される導電性接着剤層7pについては、導電性接着剤層7iに比較して、バインダの配合比率を高めて高硬度としても良い。電解液から金属層部分50cを保護する導電性接着剤層7iについては、金属層部分50cの保護性を高めるべく、導電性接着剤層7pよりも、電解液に対して膨潤しにくく耐久性が良いバインダおよび導電物質(例えば黒鉛。カーボンブラック)を採用できる。
【0034】
(実施形態2)
図7および図8は実施形態2を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1〜図6を準用できる。図7に示すように、第1ラミネートシート部材41の金属層50のうち、デバイス本体2の正極11に対向しつつ露出する金属層部分50cは、正極側金属層部分50xcとして、導電性接着剤層7iを介してデバイス本体2の正極11に電気的に導通可能に接着されている。正極側金属層部分50xcは、導電性接着剤層7pを介して正極端子27の被接着面27rに電気的に導通可能に接着されており、ひいては正極端子27に電気的に導通可能されている。図8に示すように、第2ラミネートシート部材42の金属層50のうちデバイス本体2の正極11に対向しつつ露出する金属層部分50cは、負極側金属層部分50ycとして、導電性接着剤層7iを介してデバイス本体2の負極12に電気的に導通可能に接着されている。負極側金属層部分50ycは、外側の導電性接着剤層7pを介して負極端子28の被接着面28rに電気的に接着可能に接着されており、ひいては負極端子28に電気的に導通可能されている。ここで、正極端子27および負極端子28は導電性を有する金属で形成された電極端子であり、高い剛性を有する。このように高い剛性を有する正極端子27および負極端子28が帯電デバイス3に接合されているため、帯電デバイス3の剛性を高めることができる。なお、正極端子27および負極端子28は平盤状にできるが、これに限定されるものではなく、タブ状としても良い。
【0035】
(実施形態3)
図9および図10は実施形態3を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1〜図6を準用できる。図9は蓄電モジュール9の組み付け途中を示す。図9に示すように、上記した複数の蓄電デバイス3を厚み方向(矢印T3方向)に直列に積層して形成することによりデバイス群93が形成される。蓄電デバイス3のうち積層方向(矢印T3方向の)の両側には、導電性接着剤層7pが外方に突出しつつ容器4に積層されている。図9に示すように、隣接する蓄電デバイス3の導電性接着剤層7p同士が電気的に面接触しつつ、デバイス群93が形成されている。図10に示すように、蓄電モジュール9は、複数の蓄電デバイス3からなるデバイス群93を包囲して保持するコンテナ90と、正極主端子91と、負極主端子92とを備えている。正極主端子91は、コンテナ90で包囲されたデバイス群93のうち蓄電デバイス3の積層方向の一方向(矢印T6方向)において最も外側に位置する蓄電デバイス3Eの正極11に電気的に導通する導電金属で形成されている。負極主端子92は、コンテナ90で包囲されたデバイス群93のうち蓄電デバイス3の積層方向の他方向(矢印T7方向)において最も外側に位置する蓄電デバイス3Fの負極12に電気的に導通する導電金属で形成されている。負極主端子92は、外側に位置する蓄電デバイス3Fの負極12に導電性接着剤層7pを介して電気的に導通する。正極主端子91は、外側に位置する蓄電デバイス3Eの正極11に導電性接着剤層7pを介して電気的に導通する。
【0036】
図10に示すように、コンテナ90は、蓄電デバイス3の積層方向に延設された延設壁部901と、延設壁部901と交差する交差壁部903と、デバイス群93を収容する収容室904とを有する。蓄電デバイス3の保持性を高めるため、コンテナ90は、硬質樹脂(電気絶縁体)または金属で、ある程度剛性を有するように形成されていることが好ましい。但し、この場合、デバイス群93の変位を抑制できる。正極主端子91は平坦な導電面91e,91fを有する盤状とされていることが好ましい。コンテナ90が金属である場合には、コンテナと正極主端子91側との間がオーリング等の絶縁材料で絶縁されている。負極主端子92側についても同様である。負極主端子92は平坦な導電面92e,92fを有する盤状とされていることが好ましい。但しこれに限定されるものではない。図10に示すように、正極主端子91はコンテナ90よりも微小量ΔA1突出する。負極主端子92はコンテナ90よりも微小量ΔA2突出する。必要に応じて、コンテナ90の延設壁部901とデバイス群93との間に、バネ部材906が介在することが好ましい。バネ部材906の付勢力により蓄電デバイス3同士の電気的接触性を高めることができる。本実施形態によれば、複数の蓄電デバイス3を直列に積層して電気エネルギを高めた蓄電モジュール9を提供できる。なお、デバイス群93は、複数の蓄電デバイス3を少なくとも直列に積層して形成されているが、これに限らず、複数の蓄電デバイス3を直列に配置させると共に、並列に配置させていても良い。
【0037】
(実施形態4)
図11は実施形態4を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1〜図6を準用できる。図11に示すように、蓄電モジュール9は、複数の蓄電デバイス3を直列に積層して形成したデバイス群93と、デバイス群93を包囲して保持する収容室935をもつコンテナ90Bと、コンテナ90Bで包囲されたデバイス群93のうち蓄電デバイス3の積層方向の一方向(矢印T6方向)において最も外側に位置する蓄電デバイス3Eの正極11に電気的に導通する正極主端子91と、コンテナ90Bで包囲されたデバイス群93のうち蓄電デバイス3の積層方向の他方向(矢印T7方向)において最も外側に位置する蓄電デバイス3Fの負極12に電気的に導通する負極主端子92とを有する。
【0038】
図11に示すように、コンテナ90Bは、硬質樹脂等の比較的剛性を有する材料で形成されており、底壁930と、天井壁931と、第1端壁932と、第2端壁933とを有する。収容室935内には空気等のガスが収容されている。正極主端子91は、積層方向において外側に位置する蓄電デバイス3Eの正極11に導電性接着剤層7pを介して電気的に導通する。負極主端子92は、積層方向において外側に位置する蓄電デバイス3Fの負極12に導電性接着剤層7pを介して電気的に導通する。正極主端子91、蓄電デバイス3Eの正極11に導電性接着剤層7pを介して電気的に導通する。正極主端子91および負極主端子92は、蓄電モジュール9の高さ方向(矢印H方向)において延設されており、上方に突出する突出部91w,92wを有する。突出部91w,92wに接続線910,920を電気的に接続できる。図11に示すように、蓄電デバイス3が直列に接続されているとき、隣接する蓄電デバイス3同士の外部に露出する導電性接着剤層7p同士が接触している。なお、図11に示すデバイス本体2は、図2に示すようにつづら折り状に曲成されているが、断面が異なるため、図11はつづら折り状を図示しない。
【0039】
(実施形態5)
図12は実施形態5を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1〜図6を準用できる。図12に示すように、蓄電モジュール9は、複数の蓄電デバイス3を直列に積層して形成したデバイス群93と、デバイス群93を包囲して保持する収容室をもつコンテナ90と、蓄電デバイス3Eの正極11に電気的に導通する正極主端子91と、蓄電デバイス3Fの負極12に電気的に導通する負極主端子92とを有する。コンテナ90は、蓄電デバイス3の積層方向に延設された延設壁部901と、延設壁部901と交差する交差壁部903とを有する。図12に示すように、コンテナ90の延設壁部901とデバイス群93との間に、バネ部材906が介在することが好ましい。バネ部材906の付勢力により、隣接する蓄電デバイス3の導電性接着剤層7p同士の電気的接触性を高めることができる。更に図12に示すように、コンテナ90においては、積層方向に延びる延設壁部901には、伸縮可能な蛇腹部で形成された伸縮可能部909が形成されている。伸縮可能部909が収縮した状態で、積層した複数個の蓄電デバイス3が配置される。すると、伸縮可能部909が発揮する収縮方向(矢印T8方向)のバネ性により、隣接する蓄電デバイス3の導電性接着剤層7p同士の密接性を高め、隣接する蓄電デバイス3同士の電気的接触性、蓄電デバイス3の内部における電気的接触性を高めることができる。
【0040】
(実施形態6)
図13は実施形態6を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1〜図6を準用できる。図13に示すように、熱プレス型やレーザビームによって、第1ラミネートシート部材41において第1絶縁層51および第2絶縁層52を除去させる。その後、除去された空間に、導電材料で形成された箔状、フィルム状またはシート状の導電部材100を配置する。その状態で、導電性接着剤を塗布させて導電性接着剤層7i,7pを形成させる。導電部材100は、なじみ性などを考慮すると、金属層50と同系または同一の材質であることが好ましいが、必ずしもこれに限定されない。導電性接着剤層7i,7pの面積が大きいとき、導電部材100は、導電性接着剤層7i,7pおよび金属層部分50cの補強も兼用できる。
【0041】
図13に示すように、導電性接着剤層7iは厚み方向において第1絶縁層51の表面51sよりも突出させることが好ましい。導電性接着剤層7pは厚み方向において第2絶縁層52の表面52sよりも突出させることが好ましい。第2ラミネートシート部材42についても同様な構造にできる。容器4の耐久性を高める等のため、ラミネートシート部材41,42における第1絶縁層51および第2絶縁層52の肉厚が厚くされているため、導電性接着剤層7i,7pの厚みが厚くなる場合において、厚み方向の導電性を高めるのに特に有効である。図13によれば、導電部材100の厚みは第1絶縁層51および第2絶縁層52の厚みよりも薄くされているが、これに限らず、これらと同等または厚くしても良い。
【0042】
(実施形態7)
図14は実施形態7を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1〜図6を準用できる。図14は、ラミネートシート部材41,42における露出させた金属層部分50cにデバイス本体2の正極11が接触している状態を示す。図14は剥離手段として機能する熱プレス型61,62も併せて示す。図14に示すように、第1ラミネートシート部材41において、樹脂等の高分子材料で形成された第1絶縁層51および第2絶縁層52を剥離手段(例えば、熱プレス型61,62、レーザビーム)により金属層50から剥離させて除去させる。但し、投影面積Sにおいて第1絶縁層51および第2絶縁層52の構成材料を除去させつつも局部的に残留させることにより残留部分51r,52rを形成する。このように残留部分51r,52rで金属層部分50cを覆いつつ、金属層部分50cのうち互いに背向する第1表面50fおよび第2表面50sを、外部に部分的に露出させる。そして、図14に示すように、第1表面50fに導電性接着剤層7iを塗布させ、第2表面50sに導電性接着剤層7pを塗布させる。第2ラミネートシート部材42についても同様とする。
【0043】
絶縁層51,52の残留部分51r,52rは、金属層50の第1表面50fおよび第2表面50sを局部的に覆うため、露出する金属層部分50cの保護性を向上できる。この場合、第1絶縁層51および第2絶縁層52を除去させる投影面積Sが大きい場合に有効である。残留部分51r,52rについては、熱プレス型61,62に凹部61m,62mを形成しておけば良い。レーザビーム照射で高分子系の絶縁層51,52を除去させる場合には、残留部分51r,52rのみについてレーザビームを照射しなければ良い。残留部分51r,52rは、絶縁層51,52の本体部分と繋がっている構造でも良いし、絶縁層51,52の本体部分と繋がっていないものの金属層部分50cに接合されている島状でも良い。要するに、残留部分51r,52r以外の部分に導電性接着剤層7i,7pが塗布される。
【0044】
(その他)
前記した実施形態1によれば、第1ラミネートシート部材41および第2ラミネートシート部材42から高分子系の第1絶縁層51および第2絶縁層52を熱および機械的力を利用して金属層50から除去させることにしているが、場合によっては、第1絶縁層51および第2絶縁層52を熱および機械的力のうちのいずれか一方のみで金属層50から除去させることにしても良い。更には、第1絶縁層51および第2絶縁層52を熱で溶融または軟化させた後に、空気等のガスで吹き飛ばしても良い。更には、レーザビーム等の高エネルギ密度ビームの照射、または、有機系溶剤により第1ラミネートシート部材41および第2ラミネートシート部材42から第1絶縁層51および第2絶縁層52を除去させることにしても良い。上記した実施形態1では、第1ラミネートシート部材41および第2ラミネートシート部材42を接合して形成しているが、これに限らず、1枚のラミネートシート部材で形成しても良い。デバイス本体は、デバイスシート1をつづら折り状に曲成して形成されているが、つづら折り状に限定されるものではない。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0045】
1はデバイスシート、10はセパレータ、11は正極、12は負極、2はデバイス本体、21は第1曲成部、22は第2曲成部、27は正極端子、28は負極端子、3は蓄電デバイス、30は密閉室、4は容器、41,42はラミネートシート部材、50は金属層、50cは金属層部分、50xcは正極側金属層部分、50ycは負極側金属層部分、51は第1絶縁層、52は第2絶縁層、61,62は熱プレス型、7i,7pは導電性接着剤層、9は蓄電モジュール、90はコンテナ、91は正極主端子、92は負極主端子、93はデバイス群を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータと前記セパレータをこれの厚み方向に挟むように設けられた正極および負極を有するデバイス本体と、
金属層と前記金属層をこれの厚み方向に挟むように配置された高分子材料で形成された第1絶縁層および第2絶縁層とを有すると共に、前記デバイス本体を電解質物質と共に密閉させるラミネートシート部材で形成された容器とを具備しており、
前記ラミネートシート部材において、前記デバイス本体の外側に位置する正極の少なくとも一部に対面する領域では、前記第1絶縁層および前記第2絶縁層が被覆されておらず、前記金属層が前記正極に対向しつつ露出されており、前記金属層のうち前記正極に対向しつつ露出する金属層部分は正極側金属層部分として導電性接着剤層を介して前記デバイス本体の前記正極に電気的に導通可能に接着されており、且つ、
前記デバイス本体の外側に位置する負極の少なくとも一部に対面する領域では、前記第1絶縁層および前記第2絶縁層が被覆されておらず、前記金属層が前記負極に対向しつつ露出されており、前記金属層のうち前記負極に対向しつつ露出する金属層部分は負極側金属層部分として前記導電性接着剤層を介して前記デバイス本体の前記負極に電気的に導通可能に接着されている蓄電デバイス。
【請求項2】
請求項1において、前記デバイス本体は、前記セパレータと前記セパレータをこれの厚み方向に挟むように設けられた前記正極および前記負極を有するデバイスシートを、つづら折り状に曲成して形成されている蓄電デバイス。
【請求項3】
請求項1または2において、前記正極側金属層部分に被覆されつつ電気的に導通する正極端子と、前記負極側金属層部分に被覆されつつ電気的に導通する負極端子とを具備する蓄電デバイス。
【請求項4】
セパレータとセパレータをこれの厚み方向に挟むように設けられた正極および負極を有するデバイス本体と、金属層と前記金属層をこれの厚み方向に挟むように配置された高分子材料で形成された第1絶縁層および第2絶縁層とを有すると共に、前記デバイス本体を電解質物質と共に密閉させるラミネートシート部材とを具備する蓄電デバイスを製造する製造方法であって、
前記ラミネートシート部材について、前記デバイス本体の外側に位置する正極および負極の少なくとも一部に対面する領域において、前記第1絶縁層および前記第2絶縁層を除去して前記金属層を部分的に露出させる工程と、
前記金属層のうち部分的に露出させた金属層部分に導電性接着剤層を介して前記デバイス本体の前記正極および前記負極をそれぞれ接着させつつ、前記デバイス本体に前記ラミネートシート部材を被覆させて密閉状態に保護して容器を形成する工程とを含む蓄電デバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に係る複数の前記蓄電デバイスを直列に積層して形成したデバイス群と、
前記デバイス群を包囲して保持するコンテナと、
前記コンテナで包囲された前記デバイス群のうち前記蓄電デバイスの積層方向の一方向において最も外側に位置する前記蓄電デバイスの前記正極に電気的に導通する正極主端子と、
前記コンテナで包囲された前記デバイス群のうち前記蓄電デバイスの積層方向の他方向において最も外側に位置する前記蓄電デバイスの前記負極に電気的に導通する負極主端子とを具備する蓄電モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−4563(P2013−4563A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131044(P2011−131044)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】