説明

蓄電デバイス

【課題】高い信頼性を有する蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】本発明に係る蓄電デバイス100は、正極、負極、および電解液が収容された外装体12を有する蓄電セル10と、外装体12の外表面に形成された放熱板20と、放熱板20の一方の端部22が固定されたヒートシンク30と、放熱板20の他方の端部24が挿入された開口部を有する保持部材50と、を含み、他方の端部24と、開口部の内面とは、離間している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスの構成要素である蓄電セルは、例えば、シート状の正極および負極をセパレータを介して対向配置させながら所定数積層してなる電極体を、電解液とともに外装体内に密封したものである。このような密閉型蓄電セルは、例えば、充放電を繰り返し行うと発熱して高温になる場合があり、その高温化によって性能が劣化する場合がある。
【0003】
このような問題に対して、例えば特許文献1に開示された技術では、ラミネートフィルムを電池容器とした密閉型二次電池を、金属製の放熱板に固定して、放熱性を向上させている。放熱板は、例えばヒートシンクなどに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−272048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、放熱板は、蓄電セルの温度上昇に伴って膨張する。そして、例えばヒートシンクに固定されていることにより、放熱板に応力がかかり、放熱板が屈曲するなど変形する場合がある。これにより、蓄電セルが放熱板から剥離してしまう場合があり、蓄電デバイスとしての信頼性が低下してしまう場合がある。
【0006】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、高い信頼性を有する蓄電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0008】
[適用例1]
本発明に係る蓄電デバイスの一態様は、
正極、負極、および電解液が収容された外装体を有する蓄電セルと、
前記外装体の外表面に形成された放熱板と、
前記放熱板の一方の端部が固定されたヒートシンクと、
前記放熱板の他方の端部が挿入された開口部を有する保持部材と、
を含み、
前記他方の端部と、前記開口部の内面とは、離間している。
【0009】
[適用例2]
適用例1において、
前記他方の端部と前記保持部材との間の距離を、Dとし、
前記放熱板の前記一方の端部から前記他方の端部に向かう方向の長さを、Lとし、
前記放熱板の線膨張係数を、αとし、
前記放熱板の使用温度範囲のうちの最低温度を、θとし、
前記放熱板の使用温度範囲のうちの最高温度を、θとすると、
下記式(1)を満たすことができる。
D≧L×α×(θ−θ) ・・・ (1)
【0010】
[適用例3]
適用例1または2において、
前記放熱板の材質は、アルミニウムまたは銅であることができる。
【0011】
[適用例4]
適用例1ないし3のいずれか1例において、
前記蓄電セルは、複数設けられ、
複数の前記蓄電セルは、直列に接続されており、
前記放熱板は、隣り合う前記蓄電セルの間に設けられていることができる。
【0012】
[適用例5]
適用例1ないし4のいずれか1例において、
前記ヒートシンクを冷却するための冷却部を、さらに含むことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る蓄電デバイスによれば、保持部材は、放熱板の他方の端部が挿入された開口部を有し、他方の端部と開口部の内面とは、離間している。そのため、放熱板が蓄電セルの温度上昇によって膨張したとしても、放熱板に応力がかかることを抑制することができる。これにより、放熱板が屈曲することを抑制することができる。したがって、本発明に係る蓄電デバイスは、高い信頼性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る蓄電デバイスを模式的に示す斜視図。
【図2】本実施形態に係る蓄電デバイスを模式的に示す断面図。
【図3】本実施形態に係る蓄電デバイスを模式的に示す断面図。
【図4】本実施形態に係る蓄電デバイスを模式的に示す断面図。
【図5】本実施形態に係る蓄電デバイスの蓄電セルを模式的に示す断面図。
【図6】本実施形態の第1変形例に係る蓄電デバイスを模式的に示す斜視図。
【図7】本実施形態の第1変形例に係る蓄電デバイスを模式的に示す断面図。
【図8】本実施形態の第1変形例に係る蓄電デバイスを模式的に示す断面図。
【図9】本実施形態の第2変形例に係る蓄電デバイスを模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
1. 蓄電デバイス
まず、本実施形態に係る蓄電デバイスについて、図面を参照しなら説明する。図1は、本実施形態に係る蓄電デバイス100を模式的に示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る蓄電デバイス100を模式的に示す断面図であって、図1のII−II線断面図(XY平面の断面図)である。図3は、本実施形態に係る蓄電デバイス100を模式的に示す断面図であって、図1のIII−III線断面図(XZ平面の断面図)である。なお、図1では、便宜上、外郭部材40を透視して図示し、図2では、外郭部材40を省略して図示している。また、図2および図3では、便宜上、外装体12内に収容される正極や負極等を省略して図示している。
【0017】
蓄電デバイス100は、図1〜図3に示すように、蓄電セル10と、放熱板20と、ヒートシンク30と、外郭部材40と、保持部材50と、を含むことができる。
【0018】
蓄電セル10の形態としては、リチウムイオンキャパシタ、二次電池、電気二重層キャパシタなどを例示することができる。蓄電セル10は、外装体12と、正極端子16と、負極端子18と、を有する。
【0019】
外装体12は、正極、負極、および電解液を収容している。外装体12の形状は、正極、負極、および電解液を収容することができれば特に限定されず、例えば、2枚のフィルムを張り合わせたラミネート型でもよし、箱型でもよいし、円筒型でもよい。図1〜図3の例では、外装体12をラミネート型(ラミネートフィルム)として図示している。
【0020】
ラミネートフィルムからなる外装体12は、図2および図3に示すように、第1扁平面13と、第1扁平面13と反対を向き(図示の例では+X方向を向き)第1扁平面13より面積の小さい第2扁平面14と、を有することができる。外装体12は、図2に示すように、例えば、凸の部分を有し、第2扁平面14は、凸の部分を形成する面であるともいえる。第1扁平面13と第2扁平面14との間の距離(蓄電セル10の厚み)は、例えば、5mm程度である。
【0021】
ラミネートフィルムの材質としては、ポリプロピレンやナイロンなどの合成樹脂の一部を、アルミニウム箔や銅箔などの金属箔としたものなどが挙げられる。このようなフィルム状の外装体12を用いることにより、例えば、金属等からなる硬質の外装体(金属缶等)を用いる場合に比べて、蓄電セル10の小型化や軽量化を図ることができる。
【0022】
正極端子16および負極端子18は、図2に示すように、外装体12から突出して設けられている。より具体的には、正極端子16および負極端子18は、外装体12の密閉性を保持した状態で、外装体12の内側から外側まで延出している。図示の例では、正極端子16は、外装体12から−Y方向に向けて突出し、負極端子18は、外装体12から+Y方向に向けて突出している。正極端子16は、外装体12内の正極と電気的に接続されており、負極端子18は、外装体12内の負極と電気的に接続されている。正極端子16の材質としては、例えば、アルミニウムが挙げられる。負極端子18の材質としては、例えば、銅、ニッケルが挙げられる。なお、外装体12の内部構造については、後述する。
【0023】
放熱板20は、図1〜図3に示すように、外装体12の外表面に設けられている。より具体的には、放熱板20は、接着剤によって、外装体12の第1扁平面13に接合されている。接着剤としては、例えば、粘着性および熱伝熱率が高く、熱抵抗の低い、アクリル系熱伝導シートや、アクリル接着剤付グラファイトシートを用いることができる。なお、図示はしないが、放熱板20は、さらに第2扁平面14に設けられていてもよく、2つの放熱板20で蓄電セル10を挟む形態であってもよい。これにより、蓄電デバイス100の放熱性を、より向上させることができる。
【0024】
放熱板20としては、熱伝導率の高い材料を用いることができる。具体的に放熱板20の材質としては、アルミニウム、銅が挙げられる。放熱板20は、蓄電セル10において発生した熱を、放熱させながら、ヒートシンク30に伝熱させることができる。すなわち、放熱板20は、伝熱板としての機能を有することができる。
【0025】
放熱板20は、例えば、X軸方向を厚み方向とする板状の形状を有し、その厚みは、0.2mm以上20mm以下である。放熱板20のY軸方向の長さは、例えば、100mm以上200mm以下であり、放熱板20のZ軸方向の長さは、例えば、100mm以上200mm以下である。
【0026】
放熱板20は、一方の端部22(以下「第1端部22」ともいう)と、他方の端部24(以下「第2端部24」ともいう)と、を有する。第1端部22および第2端部24は、放熱板20のZ軸方向における端部である。
【0027】
第1端部22は、放熱板20の第1端部22以外の部分(例えば第2端部22)に比べて、大きな厚みを有することができる。すなわち、第1端部22は、X軸方向の長さが大きい。これにより、放熱板20とヒートシンク30との接合面積を大きくすることができる。第1端部22は、放熱板20のヒートシンク30と接合されている部分であるともいえる。
【0028】
第2端部24は、Z軸方向において、放熱板20の第1端部22と反対側の端部である。第2部分24は、後述する保持部材50の開口部52に挿入されている部分であるともいえる。
【0029】
ヒートシンク30は、図1および図3に示すように、放熱板20と接合されている。より具体的には、ヒートシンク30は、放熱板20の第1端部22と接合されている。ヒートシンク30としては、放熱性の高い材料を用いることができる。具体的にヒートシンク30の材質としては、アルミニウム、銅が挙げられる。蓄電セル10において発生した熱は、放熱板20をZ軸方向に伝わり、端部22からヒートシンク30へ伝熱されて、ヒートシンク30から放熱されることができる。
【0030】
ヒートシンク30と放熱板20との接合は、特に限定されないが、例えば、予め、ヒートシンク30および放熱板20の第1端部22に複数の穴(図示せず)を設け、ヒートシンク30の穴と第1端部22の穴とが重なるように両者を配置したのち、該穴径(直径)より外径の大きいノックピン(図示せず)を圧入することにより行うことができる。ノックピンは、塑性変形しながら穴に挿入されるため、ノックピンと穴との間に空隙が生じず、ヒートシンク30と放熱板20と間の熱抵抗を小さくすることができる。これにより、放熱板20に伝わった蓄電セル10の熱を、効率よくヒートシンク30から放熱することができる。さらに、ヒートシンク30と第1端部22との間に、シリコングリスや銀入りペースト等の高い伝熱特性を示す材料を塗布して、放熱板20とヒートシンク30等との間の空隙を充填してもよい。これにより、放熱板20とヒートシンク30等との間の熱抵抗を小さくすることができる。
【0031】
ヒートシンク30は、例えば、直方体の一面に複数の凹部を形成してなる凸部32を有する。凸部32は、ヒートシンク30の放熱板20と接合された面と反対側の面に形成されている。凸部32の数は、特に限定されない。凸部32により、ヒートシンク30の表面積を大きくすることができ、放熱性を向上させることができる。
【0032】
外郭部材40は、図1および図3に示すように、放熱板20とヒートシンク30とが接合できる形態で、蓄電セル10、放熱板20、および保持部材50を包囲している。外郭部材40の形態は、特に限定されず、例えば、箱型のケース体からなる外郭部材40内に蓄電セル10等を収容することによって、蓄電セル10等を包囲してもよいし、粘着テープからなる外郭部材40を蓄電セル10等に巻きつけることによって、蓄電セル10等を包囲していてもよい。後述するように、保持部材50が外郭部材40に支持されている場合は、強度等を考慮し外郭部材40としては、アルミニウムなどからなるケース体であることが望ましい。
【0033】
保持部材50は、例えば、外郭部材40に固定されている。保持部材50と外郭部材40との固定方法は、特に限定されない。図示はしないが、保持部材50は、外郭部材40と一体的に形成されていてもよく、例えば、外郭部材40の内側の上面と一体的に保持部材50が形成されていてもよい。保持部材50の材質としては、強度と柔軟性が要求されるが、例えば、アルミニウム、銅などの金属やABS樹脂などが挙げられる。
【0034】
保持部材50は、図3に示すように、放熱板20の第2端部24が挿入された開口部52を有する。第2端部24と、開口部52との内面53(開口部52を区画する保持部材50の面)とは、離間している。すなわち、第2端部24と保持部材50とは、離間している。放熱板20は、ヒートシンク30に固定された固定端である第1端部22と、自由端である第2部分24と、を有しているといえる。
【0035】
ここで、図4は、図3に示した放熱板20の第2端部24近傍を模式的に示す断面図である。図4に示す例では、開口部52の内面53は、平坦な面である面53a,53b,53cを含んで構成されている。面53aは、面53b,53cと直交している。面53aは、例えば、第2端部24を形成する面24aと離間して対向している。同様に、面53b,53cは、それぞれ、第2端部24aを形成する面24b,24cと離間して対向している。すなわち、図4に示すようにY軸方向から見て、開口部52の内面53の形状は、第2端部24の外周と、相似であるともいえる。
【0036】
なお、図示の例では、第2端部24の面24a,24b,24cの全ては、開口部52の内面53と離間しているが、例えば、面24b,24cのいずれか一方は、内面53に接していてもよい。すなわち、放熱板20が熱膨張したときに、保持部材50から応力を受けないように、第2端部24の一部分が内面53と離間していれば、第2端部24の他の部分(前記一部分とは異なる部分)は、保持部材50に接していてもよい。また、放熱板20の第2端部24は、例えば外部から衝撃(例えばX軸方向の衝撃)が加わったときに、保持部材50に接してもよい。すなわち、外部から衝撃が加わった場合に、保持部材50は、放熱板20を支持することができる。
【0037】
図4に示すように、第2端部24と開口部52の内面53との間の距離をDとすると、距離Dは、下記式(1)を満たすことができる。
D≧L×α×(θ−θ) ・・・ (1)
【0038】
ただし、上記式(1)において、Lは、図3に示すように、放熱板20の第1端部22から第2端部24に向かう方向(Z軸方向)の長さである。αは、放熱板20の線膨張係数である。θは、放熱板20の使用温度範囲のうちの最低温度である。θは、放熱板20の使用温度範囲のうちの最高温度である。
【0039】
上記式(1)において、Lは、上述のとおり、例えば、100mm以上200mm以下である。αは、上述のとおり、放熱板20の材質として、銅(線膨張係数:17.7×10−6―1)やアルミニウム(線膨張係数:23.6×10−6―1)が挙げられるため、例えば、17.7×10−6―1以上23.6×10−6―1以下である。θとθとの差は、例えば、70℃以上100℃以下である。
【0040】
以上を考慮すると、距離Dは、例えば、0.1mm以上0.5mm以下である。より具体的には、放熱板20の材質が銅の場合には、距離Dは、0.13mm以上0.35mm以下である。放熱板20の材質がアルミニウムの場合には、距離Dは、0.17mm以上0.47mm以下である。なお、これらの値に、放熱板20を加工する際の加工精度を加味して、距離Dを決定してもよい。
【0041】
さらに、距離Dは、下記式(2)を満たすことができる。
D=L×α×(θ−θ) ・・・ (2)
【0042】
上記式(2)を満たすことにより、放熱板20の温度が使用温度範囲のうちの最高温度θ℃の場合には、第2端部24と開口部52の内面53とは接することができる。より具体的には、第2端部24の面24a,24b,24cは、それぞれ、面53a,53b,53cと接することができる。そのため、保持部材50は、安定して放熱板20を保持することができる。
【0043】
図4に示す例では、内面53を構成する面53aと、第2端部24の面24aと、の間の距離をDとしているが、面53bと面24bとの間の距離、および面53cと面24cとの間の距離もDであってもよい。
【0044】
なお、図3および図4に示す例では、第2端部24と内面53とは、離間しているが、これは、放熱板20の温度がθ℃(使用温度範囲のうちの最高温度)未満の状態(例えば蓄電セル10を充放電する前の状態)を示したものである。
【0045】
次に、蓄電セル10の内部構造について説明する。図5は、図2に示した本実施形態に係る蓄電デバイス100の蓄電セル10を示す断面図あって、蓄電セル10の(外装体12の)内部構造を模式的に示す断面図である。以下では、一例として、蓄電セル10がリチウムイオンキャパシタである場合について説明する。
【0046】
蓄電セル10は、図5に示すように、外装体12に収容された電極積層体5および電解液(図示せず)を有する。図示の例では、電極積層体5および電解液は、第1ラミネートフィルム12aと第2ラミネートフィルム12bとからなる外装体12内に収容されている。
【0047】
電極積層体5は、電解液に浸漬されている。電極積層体5は、正極1と、負極2と、リチウム極3と、セパレータ4と、を有する。正極1、負極2、リチウム極3、およびセパレータ4は、シート状の形状を有する。図示の例では、電極積層体5は、第1ラミネートフィルム12aの内側の底面から、リチウム極3、負極2、正極1、負極2、正極1、負極2、リチウム極3の順で積層され、極と極との間、および極とラミネートフィルムとの間にセパレータ4を介することによって構成されている。電極積層体5において、正極1および負極2は、それぞれ並列に接続されている。
【0048】
なお、正極1および負極2の数は、特に限定されない。同様に、リチウム極3の数および設置場所も特に限定されない。また、電極積層体5の形態は、図示の例に限定されず、例えば、正極、負極、リチウム極、およびセパレータを重ねて積層シートを形成し、該積層シートを捲回させてなる捲回構造体でもよい。
【0049】
正極1は、正極集電体1aと、正極活物質層1bと、を有する。正極集電体1aとしては、多孔性の金属箔を用いることができる。正極集電体1aの材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレスが挙げられる。正極集電体1aの厚みは、例えば、15μm以上50μm以下である。正極集電体1aは、正極リード6を介して、正極端子16に接続されている。
【0050】
正極活物質層1bは、正極集電体1aに形成されている。図示の例では、正極活物質層1bは、正極集電体1aの両面に形成されているが、片面にのみ形成されていてもよい。正極活物質層1bの厚みは、例えば、60μm以上90μm以下である。
【0051】
正極活物質層1bは、正極活物質を含有している。正極活物質は、ヘキサフルオロホスフェート(PF)や、テトラフルオロボレート(BF)のようなアニオンを可逆的に担持できる物質である。より具体的には、正極活物質としては、活性炭、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であるポリアセン系物質(PAS)が挙げられる。
【0052】
正極活物質層1bの形成方法としては、まず、正極活物質粉末およびバインダーを、水系媒体または有機溶媒中に分散してスラリーを調整する。必要に応じて、導電性粉末を混入させてもよい。次に、調整したスラリーを正極集電体1aの表面に塗布して乾燥させる。このようにして、正極活物質層1bを得ることをできる。
【0053】
負極2は、負極集電体2aと、負極活物質層2bと、を有する。負極集電体2aとしては、多孔性の金属箔を用いることができる。負極集電体2aの材質としては、例えば、銅、ステンレス、ニッケルが挙げられる。負極集電体2aの厚みは、例えば、10μm以上50μm以下である。負極集電体2aは、負極リード7を介して、負極端子18に接続されている。
【0054】
負極活物質層2bは、負極集電体2aに形成されている。図示の例では、負極活物質層2bは、負極集電体2aの両面に形成されているが、片面にのみ形成されていてもよい。負極活物質層2bの厚みは、例えば、20μm以上50μm以下である。
【0055】
負極活物質層2bは、負極活物質を含有している。負極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵できる物質である。より具体的には、負極活物質としては、黒鉛(グラファイト)、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、もしくはそれらの粉砕品が挙げられる。
【0056】
負極活物質層2bの形成方法としては、まず、負極活物質粉末およびバインダーを、水系媒体または有機溶媒中に分散してスラリーを調整する。必要に応じて、導電性粉末を混入させてもよい。次に、調整したスラリーを負極集電体2aの表面に塗布して乾燥させる。このようにして、負極活物質層2bを得ることをできる。
【0057】
リチウム極3は、リチウム極集電体3aと、リチウム箔3bと、を有する。リチウム極集電体3aとしては、多孔性の金属箔を用いることができる。リチウム極集電体3aの材質としては、例えば、銅、ステンレスが挙げられる。リチウム極集電体3aの厚みは、例えば、10μm以上200μm以下である。
【0058】
リチウム箔3bは、例えば、リチウム極集電体3aの一方の面に圧着されている。リチウム箔3bの材質は、リチウムである。リチウム箔3bは、リチウムイオンの供給源として機能することができる。すなわち、リチウム極集電体3aと負極集電体2aとを負極リード7を介して接続させて短絡させることにより、リチウム箔3bは、電解液に溶解してリチウムイオンとなることができる。そして、リチウムイオンは、電気化学的に電解液を介して負極活物質層2bにドープ(「プレドープ」ともいえる)される。その結果、負極2の電位を下げることができる。リチウム箔3bの厚みは、例えば、50μm以上300μm以下である。
【0059】
なお、リチウム箔3bは、プレドープによって、例えば完全に電解液に溶解するが、図示の例では、便宜上、電解液の図示を省略し、電解液に溶解する前のリチウム箔3bを図示している。
【0060】
電解液としては、リチウム塩を電解質とする非プロトン性有機溶媒電解質溶液を用いる。非プロトン性有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホランなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、Li(CSONなどが挙げられる。
【0061】
本実施形態に係る蓄電デバイス100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0062】
蓄電デバイス100によれば、保持部材50は、放熱板20の第2端部24が挿入された開口部52を有し、第2端部24と開口部52の内面53とは、離間している。そのため、放熱板20が蓄電セル10の温度上昇によって膨張したとしても、放熱板20に応力がかかることを抑制することができる。これにより、放熱板20が屈曲することを抑制することができる。したがって、蓄電デバイス100は、高い信頼性を有することができる。例えば、放熱板のZ軸方向における一方の端部と他方の端部が固定されている場合には、放熱板が熱膨張すると、両端が固定されていることにより放熱板に応力がかかり、放熱板が屈曲する等変形する場合がある。
【0063】
蓄電デバイス100によれば、放熱板20の第2端部24と開口部52の内面53との間の距離Dは、上記式(2)を満たすことができる。これにより、例えば、放熱板20の温度が使用温度範囲のうちの最高温度θ℃の場合には、第2端部24と内面53とは接することができる。そのため、保持部材50は、安定して放熱板20を保持することができる。
【0064】
2. 変形例
2.1. 第1変形例
次に、本実施形態の第1変形例に係る蓄電デバイスについて、図面を参照しながら説明する。図6は、本実施形態の第1変形例に係る蓄電デバイス200を模式的に示す斜視図である。図7は、本実施形態の第1変形例に係る蓄電デバイス200を模式的に示す断面図であって、図6のVII−VII線断面図(XY平面の断面図)である。図8は、本実施形態の第1変形例に係る蓄電デバイス200を模式的に示す断面図であって、図6のVIII−VIII線断面図(XZ平面の断面図)である。なお、図6では、便宜上、外郭部材40を透視して図示し、図7では、外郭部材40を省略して図示している。また、図7および図8では、便宜上、外装体12内に収容される正極や負極等を省略して図示している。
【0065】
以下、本実施形態の第1変形例に係る蓄電デバイス200において、本実施形態に係る蓄電デバイス100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0066】
蓄電デバイス100の例では、図1〜図3に示すように、1つの蓄電セル10を有していた。これに対し、蓄電デバイス200は、図6〜図8に示すように、複数の蓄電セル10を有する。図示の例では、蓄電デバイス10は、6つ設けられているが、その数は特に限定されず、蓄電デバイス200の用途に応じて適宜変更することができる。図7に示す例では、隣り合う蓄電セル10の正極端子16および負極端子18は、配線17を介して接続され、複数の蓄電セル10は、直列に接続されている。図示はしないが、蓄電デバイス200の用途に応じて、複数の蓄電セル10は、並列に接続されてもよい。
【0067】
放熱板20は、隣り合う蓄電セル10の間に設けられている。放熱板20は、例えば、複数の蓄電セル10の各々を挟んで設けられている。図示の例では、蓄電セル10と放熱板20とは、X軸方向に沿って交互に積層されている。隣り合う蓄電セル10は、例えば、放熱板20を介して、第1扁平面13と第2扁平面14とが対向するように、配置されている。図示はしないが、隣り合う蓄電セル10は、第1扁平面13同士、または第2扁平面14同士が対向するように配置されていてもよい。
【0068】
ヒートシンク30は、図6および図8に示すように、複数の放熱板20と接合されている。図示の例では、ヒートシンク30は、全ての放熱板20と接合されている。これにより、複数の放熱板20を熱的に連結することができる。そのため、蓄電セル10において発生した熱によって、例えば1つの蓄電セル10のみが劣化することを抑制しつつ、蓄電デバイス200全体を冷却することができる。蓄電セル10において発生した熱は、放熱板20によってZ軸方向に伝わり、放熱板20の第1端部22からヒートシンク30へ伝熱されて、ヒートシンク30から放熱されることができる。
【0069】
保持部材50の開口部52は、放熱板20の数に応じて複数設けられている。図8に示す例では、複数の開口部52は、X軸方向に配列している。
【0070】
蓄電デバイス200によれば、例えば蓄電デバイス100に比べて、高エネルギー化を図ることができる。
【0071】
2.2. 第2変形例
次に、本実施形態の第2変形例に係る蓄電デバイスについて、図面を参照しながら説明する。図9は、本実施形態の第2変形例に係る蓄電デバイス300を模式的に示す斜視図である。なお、図9では、便宜上、外郭部材40を透視して図示している。
【0072】
以下、本実施形態の第2変形例に係る蓄電デバイス300において、本実施形態の第1変形例に係る蓄電デバイス200の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0073】
蓄電デバイス300は、図9に示すように、冷却部60を有する。冷却部60としては、ヒートシンク30を冷却することができれば、その形態は特に限定されないが、例えば、冷却ファンを用いることができる。冷却部60の配置は、例えば、ヒートシンク30の凸部32に直接送風できるように、ヒートシンク30に接続されている。これにより、ヒートシンク30は、より効率よく放熱することができる。
【0074】
蓄電デバイス300によれば、例えば蓄電デバイス200に比べて、放熱性を向上させることができる。
【0075】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0076】
1 正極、1a 正極集電体、1b 正極活物質層、2 負極、2a 負極集電体、
2b 負極活物質層、3 リチウム極、3a リチウム極集電体、3b リチウム箔、
4 セパレータ、5 電極積層体、6 正極リード、7 負極リード、10 蓄電セル、
12 外装体、12a 第1ラミネートフィルム、12b 第2ラミネートフィルム、
13 第1扁平面、14 第2扁平面、16 正極端子、17 配線、18 負極端子、
20 放熱板、22 第1端部、24 第2端部、30 ヒートシンク、32 凸部、
40 外郭部材、50 保持部材、52 開口部、53 内面、60 冷却部、
100〜300 蓄電デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、および電解液が収容された外装体を有する蓄電セルと、
前記外装体の外表面に形成された放熱板と、
前記放熱板の一方の端部が固定されたヒートシンクと、
前記放熱板の他方の端部が挿入された開口部を有する保持部材と、
を含み、
前記他方の端部と、前記開口部の内面とは、離間している、蓄電デバイス。
【請求項2】
請求項1において、
前記他方の端部と前記保持部材との間の距離を、Dとし、
前記放熱板の前記一方の端部から前記他方の端部に向かう方向の長さを、Lとし、
前記放熱板の線膨張係数を、αとし、
前記放熱板の使用温度範囲のうちの最低温度を、θとし、
前記放熱板の使用温度範囲のうちの最高温度を、θとすると、
下記式(1)を満たす、蓄電デバイス。
D≧L×α×(θ−θ) ・・・ (1)
【請求項3】
請求項1または2において、
前記放熱板の材質は、アルミニウムまたは銅である、蓄電デバイス。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記蓄電セルは、複数設けられ、
複数の前記蓄電セルは、直列に接続されており、
前記放熱板は、隣り合う前記蓄電セルの間に設けられている、蓄電デバイス。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記ヒートシンクを冷却するための冷却部を、さらに含む、蓄電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−174970(P2012−174970A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37098(P2011−37098)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(307037543)JMエナジー株式会社 (57)
【Fターム(参考)】