説明

蓄電デバイス

【課題】 リチウムイオンを短時間かつ均一に負極電極にドープさせ、低抵抗化および低コスト化を実現した蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】 正極電極および前記負極電極からなる電極15には、集電体14の片面もしくは両面に活物質層12が形成され、この活物質層12の形成領域に、切り込み部13が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン二次電池などの蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスには、電気二重層キャパシタ、リチウムイオン二次電池などがある。また、電気二重層キャパシタの正極電極とリチウムイオン二次電池の負極電極とで構成されたリチウムイオンキャパシタ等のハイブリッドタイプのキャパシタも知られている。
【0003】
このような蓄電デバイスは、エネルギー源、エネルギー回生用途への適用において、更なる高エネルギー密度化、低抵抗化、低コスト化が求められている。
【0004】
リチウムイオン二次電池やリチウムイオンキャパシタの低抵抗化のために、負極電極にリチウムイオンをドープさせる技術が用いられており、例えば特許文献1に提案されている。
【0005】
特許文献1には、表裏面を貫通する孔を有する貫通箔やエキスパンドメタルを集電体として使用し、リチウム金属から負極電極にドープさせる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−67097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示されている貫通孔を備えた集電体はコストが高いという課題があり、例えそれが許容されたとしても、更に短時間かつ均一にリチウムイオンを負極電極にドープさせることができるような改善が求められている。
【0008】
また、集電体に貫通孔のない箔を用いる場合、低コスト化は図れるという利点はあるが、リチウムイオンを短時間かつ均一に負極電極にドープさせることが困難であるという課題が依然として存在する。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、その目的は、リチウムイオンを短時間かつ均一に負極電極にドープさせ、低抵抗化および低コスト化を図った蓄電デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、正極電極および負極電極に、切り込み部を形成することにより、リチウムイオンを短時間かつ均一に負極電極にドープさせる蓄電デバイスである。
【0011】
すなわち、本発明によれば、帯状の金属箔からなる正極集電体の少なくとも一方の主面に正極活物質層を形成した正極電極と、帯状の金属箔からなる負極集電体の少なくとも一方の主面に負極活物質層を形成した負極電極と、前記正極電極および前記負極電極にそれぞれ対向して配置されるセパレータと、リチウムイオンを含有する非水系電解液と、前記負極電極へリチウムイオンを供給するリチウム供給源とを備え、前記セパレータを介して前記正極電極と前記負極電極を交互に積層し巻回したユニットと、前記ユニットに対向して配置される前記リチウム供給源と、前記電解液とを外装材にて密閉した蓄電デバイスであって、前記正極電極および前記負極電極の少なくとも一方に、切り込み部を有することを特徴とする蓄電デバイスが得られる。
【0012】
また、本発明によれば、前記正極集電体および前記負極集電体は、貫通孔を有することを特徴とする上記の蓄電デバイスが得られる。
【0013】
また、本発明によれば、前記正極電極および前記負極電極の一方の電極に前記切り込み部を有し、他方の電極の集電体には貫通孔を有することを特徴とする蓄電デバイスが得られる。
【0014】
また、本発明によれば、前記切り込み部は、前記正極電極および前記負極電極の巻回方向に対して角度をなす方向に形成することを特徴とする蓄電デバイスが得られる。
【0015】
また、本発明によれば、前記切り込み部は、0.1mm以上100mm以下の間隔で連続して形成することを特徴とする蓄電デバイスが得られる。
【0016】
また、本発明によれば、前記正極電極および前記負極電極の少なくとも一辺には、前記切り込み部を形成しないことを特徴とする蓄電デバイスが得られる。
【0017】
また、本発明によれば、前記切り込み部は、刃物で形成することを特徴とする蓄電デバイスが得られる。
【0018】
また、本発明によれば、前記リチウム供給源は、前記ユニットの中心または前記ユニットの最外周の少なくとも一部に配置されることを特徴とする蓄電デバイスが得られる。
【0019】
また、本発明によれば、前記ユニットは、扁平状に巻回されることを特徴とする蓄電デバイスが得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、リチウムイオンを短時間かつ均一に負極電極にドープさせ、低抵抗化および低コスト化を実現した蓄電デバイスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の蓄電デバイスの断面図。
【図2】本発明の蓄電デバイスの電極を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の蓄電デバイスの断面図である。本実施の形態では、蓄電デバイスとしてリチウムイオンキャパシタを例にとって説明するが、リチウムイオン二次電池にも応用可能である。図1に示すように、正極電極8は、帯状の正極集電体4と、アニオンまたはカチオンが可逆的に担持可能な活物質を有する正極活物質層1を備えている。また、負極電極9は、帯状の負極集電体5と、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、脱離可能な活物質を有する負極活物質層2を備えている。セパレータ3は、正極電極8および負極電極9に対向するように配置されている。
【0024】
正極電極8と負極電極9は、セパレータ3を介して交互に積層し巻回され、ユニット11が構成される。このとき、ユニット11の最外層が負極電極9となるように、積層および巻回するのが好ましい。ユニット11の形状は、巻回方向に平行に切断した断面が、円状や楕円状であってもよいし、対向する2つの平坦面を有するような扁平状であってもよい。ユニット11の最外周の少なくとも一部には、ユニット11に対向するように、金属リチウム7と集電体10からなるリチウム供給源17が配置されている。リチウム供給源17は、巻回したユニットの中心部分に更に配置してもよい。また、扁平状に巻回した場合には、平坦面と平行に対向するように配置するのが好ましい。
【0025】
ユニット11は、リチウムイオンを含有する非水系溶液である電解液6に含侵され、リチウム供給源17とともに外装材へ収納される。この状態で、リチウム供給源17から負極活物質層2に、リチウムイオンがドープされる。本実施の形態において、負極活物質層2にリチウムイオンをドープさせる手段は特に限定されず、例えば、電気化学的にリチウムイオンを負極活物質層2にドープさせる方法や、負極活物質層2とリチウム供給源17を物理的に短絡してドープさせる方法で行うことができる。
【0026】
ユニット11を構成する正極電極8および負極電極9の枚数や巻回回数は、所望の容量および抵抗に応じて、適宜設定できる。しかしながら、ユニット11の密度の増加に伴う、ドープするリチウムイオンの動き難さ、すなわちドープ進行速度の低下を防ぐことを考慮すると、正極電極8および負極電極9の枚数と巻回回数の積が300以下であることが好ましい。
【0027】
本発明の正極電極および負極電極の少なくとも一方の各活物質層形成領域には、切り込み部が形成されている。図2は、本発明の蓄電デバイスの電極を示す平面図であり、正極電極および負極電極ともに同様の構成とすることが可能である。図2に示すように、本発明の電極15には、集電体14の片面もしくは両面に活物質層12が形成され、この活物質層12の形成領域に、切り込み部13が設けられている。電極15は、巻回方向16の方向に巻回される。本実施の形態において、切り込み部13とは、電極15の表裏面を貫通する線状の切れ目のことであり、切れ目による開口部分の大きさが、電極15の面積の減少による容量や抵抗の変動を無視できる程度のものをいう。この構成により、リチウム供給源から電解液を介して拡散するリチウムイオンが、切り込み部13を通じて移動し、リチウムイオンの拡散距離が小さくなり、所定の量までドープする時間が短くなるとともに、切り込み部13を通じて、リチウムイオンは均一にドープされ、負極電極の電荷移動抵抗が小さくなり、低抵抗化を図れる。本実施の形態における切り込み部は、集電体に活物質層を形成した後に設けてもよいし、集電体に予め設けてもよい。
【0028】
正極電極および負極電極に使用される集電体として、箔(プレーン箔)の他に、貫通孔を有するエッチング箔、エキスパンドメタル等の多孔ラス箔を使用することが可能である。貫通孔を有する集電体を用いる場合においても、切り込み部を形成することで、更なるドープ時間の短縮が実現できる。
【0029】
また、切り込み部は、正極電極および負極電極の一方にのみ形成されていてもよい。このとき、他方の電極の集電体には、貫通孔を有するものを用いるのが好ましい。この構成によっても、リチウムイオンのドープ時間を短縮する効果が得られる。
【0030】
切り込み部の方向は、正極電極および負極電極の巻回方向に対して平行、垂直および斜め(角度をなす)のいずれでも構わない。巻回方向に対して角度をなして形成する場合、巻回した際に切り込み部に隙間ができ、リチウムイオンの拡散距離をより小さくする効果が期待できる。ただし、このとき、隣接する正極電極と負極電極が接触しないように、切り込み部が外側に開かない程度に切り込み部の長さを調整する必要がある。
【0031】
また、切り込み部は、0.1mm以上100mm以下の間隔で連続して形成することがより好ましく、間隔が2mm以上であるのが特に好ましい。ここで、切り込み部の間隔とは、例えば破線状のように、一直線上に切れ目を複数形成して切り込み部としたときの、切れ目と切れ目の間の距離を示す。切り込み部の間隔を0.1mm未満とすると、製造工程が煩雑になる可能性があり、特に2mm以上であれば、製造工程の簡略化が可能となる。100mm以下であれば、リチウムイオンの拡散距離を小さくする効果がより顕著に得られる。
【0032】
切り込み部は、正極電極および負極電極の少なくとも一辺まで到達しないように形成し、各電極の辺は繋がっている状態とするのが好ましい。この構成により、巻回が容易にできるとともに、電極が変形しにくく、正極電極と負極電極とのショートも抑制できる。また、切り込み部は、巻回後のユニットにおいて、一部に偏って形成されるのではなく、全体的に配置されているのが好ましい。
【0033】
さらに、切り込み部の数は、それぞれの正極電極および負極電極において、1本以上、さらに切り込み部に対して平行または略平行に間隔を空けて4000本以下であるのが好ましく、切り込み部がない(0本)とリチウムイオンの拡散距離を短くする効果がなくなり、4000本以下にすることにより、切り込み部を形成する工程や巻回工程の簡略化が図れる。2本以上、14本以下であると上記の効果が顕著に得られるため、より好ましい。
【0034】
正極活物質層および負極活物質層の形成領域の外周の寸法に対する切り込み部の寸法の和の比率は、10%以上、10万%以下であるのが好ましく、比率が10%未満だとリチウムイオンの拡散距離を小さくする効果が少なくなり、10万%以下であると切り込み部を形成する工程や巻回工程の簡略化が図れる。10%以上、350%以下であると上記の効果が顕著に得られるため、より好ましい。
【0035】
切り込み部は、刃物で形成するのが好ましい。金型等を用いた打ち抜き加工による加工方法を用いると、切り込み部の開口面積が大きくなり、接触面積の減少による内部抵抗の増加、電極面積の減少による容量の低下等の問題が発生する可能性がある。したがって、カッター等の刃物を、電極に垂直に押し付けたり、さらに電極に対して平行に引いたりして切れ目を入れるような、加工方法が好ましい。カッター等の刃物は、板状、円形状等の様々な形状のものを用いることができる。これにより、特別な金型も必要なくなり、製造コストが削減でき、製造方法も非常に容易になる。
【0036】
負極集電体の材質としては、一般にリチウムイオン二次電池などに使用されている種々の材質、すなわち、ステンレス、銅、ニッケル等をそれぞれ用いることができる。これらの集電体には、圧延箔、電解箔、表裏面を貫通する孔を備えた貫通箔、エキスパンドメタルなど網状の多孔ラス箔等を用いることができる。
【0037】
負極活物質層の主成分である負極活物質は、リチウムイオンを可逆的にドープできる物質から形成される。例えば、リチウムイオン二次電池の負極に用いられる黒鉛材料や、難黒鉛化炭素材料、コークスなどの炭素材料、ポリアセン系物質等を挙げることができる。低抵抗化や低コスト化を考慮すると、黒鉛材料や、難黒鉛化炭素材料がより好ましい。
【0038】
正極集電体にはアルミニウム、ステンレス等を用いることができる。正極活物質層の低抵抗化かつ低コスト化には、一般的にアルミ電解コンデンサや電気二重層キャパシタに用いられているアルミエッチング箔を使用することが好ましい。アルミエッチング箔は、アルミをエッチング処理することで比表面積を増やしているため、正極活物質層との接触面積が増えて接触抵抗が低減し、出力特性は向上する。また、汎用品であることから低コストが期待できる。アルミエッチング箔のエッチング処理は圧延箔、電解箔のいずれのものでも使用できる。またリチウムイオン二次電池などに使用されている種々の圧延箔、電解箔、多孔ラス箔を用いることもできる。
【0039】
正極活物質層の主成分である正極活物質は、アニオンまたはカチオンを可逆的に担持できる物質から形成される。例えば、分極性を有するフェノール樹脂系活性炭、ヤシガラ系活性炭、石油コークス系活性炭やポリアセンなどの炭素材料を用いることができる。またリチウムイオン二次電池の正極材料なども用いることができる。
【0040】
正極活物質層および負極活物質層には、必要により導電助剤やバインダが添加される。導電助剤としては、黒鉛、カーボンブラック、ケッチェンブラック、気相成長カーボンやカーボンナノチューブなどが挙げられ、特にカーボンブラック、黒鉛が好ましい。バインダとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム系バインダやポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0041】
リチウムイオン供給源には、金属箔からなる集電体と、集電体上に形成された金属リチウムまたはリチウム−アルミニウム合金のようにリチウムイオンを供給できる物質を使用することができる。リチウム供給源の集電体を除く厚さはリチウムイオンのドープ量によって変更することができるが、好ましくは5μm以上、400μm以下がよい。5μm以上とすることで、作業性が良くなり、400μm以下とすることで、リチウム供給源の残存を抑制することが可能となる。リチウム供給源の集電体には、負極集電体と同様の材質のものを使用できる。
【0042】
電解液には、リチウムイオンを含有する非水系の溶液を使用する。リチウムイオンを含有する非水系の溶液から構成される電解液の溶媒は、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチルラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホラン等が挙げられる。さらに、これらの溶媒を2種類以上混合した混合溶媒も用いることができる。この中で、少なくともプロピレンカーボネートとエチレンカーボネートいずれかを有することが特性上、好ましい。
【0043】
また、上記溶媒に溶解させる電解質は、電離してリチウムイオンを生成するものであれば良く、例えば、LiI、LiClO、LiAsF、LiBF、LiPF等が挙げられる。これらの溶質は、上記溶媒中に0.5mol/L以上とすることが好ましく、0.5mol/L以上、2.0mol/L以下とすることが特性上や製造上、特に好ましい。
【実施例】
【0044】
(実施例1)
実施例1では、正極電極および負極電極に、長さが7mm、間隔が5mm、全長139mmである破線状の切り込み部を、巻回方向に平行となるように1本設けた。
【0045】
正極電極は以下のように作製した。すなわち正極活物質である比表面積1200〜1800m/gのフェノール系活性炭の粉末を92質量部と、導電剤として黒鉛を8質量部混合した粉末に対し、バインダとしてスチレンブタジエンゴム3質量部、カルボキシルメチルセルロース3質量部、溶媒として水200質量部となるように加え、混練してスラリーを得た。次いでエッチング処理により両表面が粗面化された厚さ20μmのアルミニウム箔を正極集電体として、その両面に上記スラリーを均一に塗布し、その後乾燥させて圧延プレスし、厚さが両面にそれぞれ30μmの正極活物質層を形成し正極電極を得た。この正極電極の厚さは80μmとした。また正極電極の端面の一部は集電体がタブ状に延出して取り出せるように、その部分の集電体の両面には正極活物質層を形成せず、アルミニウム箔を露出させた。なお、正極集電体は、貫通孔が設けられていないプレーン箔を使用した。
【0046】
負極電極は以下のように作製した。すなわち負極活物質である難黒鉛化材料粉末88質量部と、導電剤としてアセチレンブラック6質量部混合した粉末に対し、バインダとしてスチレンブタジエンゴム5質量部、カルボキシルメチルセルロース4質量部、溶媒として水200質量部となるように加え、混練してスラリーを得た。次いで厚さ10μmの銅箔を負極集電体として、その両面に上記スラリーを均一に塗布し、その後乾燥させて圧延プレスし、厚さが両面にそれぞれ20μmの負極活物質層を形成し負極電極を得た。この負極電極の厚さは50μmとした。また負極電極の端面の一部は集電体がタブ状に延出して取り出せるように、その部分の集電体の両面には負極活物質層を形成せず、銅箔を露出させた。なお、負極集電体は、貫通孔が設けられていないプレーン箔を使用した。
【0047】
セパレータとして、厚さ30μmの天然セルロース材の薄板を使用した。このセパレータの寸法形状は、電極の箔の露出部分を除いた形状よりも少しだけ大きくなるように構成した。
【0048】
ユニットあたりの積層した正極電極は1枚、負極電極は1枚、セパレータは3枚とした。集電体の露出部分を除いたその寸法は、正極電極を200mm×30mm、負極電極を200mm×30mmとし、セパレータの寸法は、201mm×31mmとした。セパレータ、負極電極、セパレータ、正極電極、セパレータの順番でこれら三者を積層し捲回した。
【0049】
作製したユニットは、真空乾燥機を用いて130℃で6時間減圧処理した後、アルミラミネートフィルムで形成した外装材に入れ、ユニットの外周には、金属リチウムと集電体からなるリチウム供給源を負極活物質層の最外層と対向するように配置した。
【0050】
さらに、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1対1の割合で混合した混合溶媒に、1mol/LのLiPFを溶かした電解液を外装材に注入し密閉して、リチウムイオンキャパシタを作製した。
【0051】
(実施例2)
実施例2では、正極電極および負極電極に、長さが3mm、間隔が3mm、全長33mmである破線状の切り込み部を、巻回方向に対して30度の角度をもたせて斜めに4本設けた。それ以外は、実施例1と同様の構成とした。
【0052】
(実施例3)
実施例3では、正極電極にアルミニウムの多孔ラス箔、負極電極に銅の多孔ラス箔を用い、実施例1と同様の切り込み部を設けた。その他の構成も実施例1と同様に作製した。
【0053】
(実施例4)
実施例4では、正極電極にアルミニウムの多孔ラス箔、負極電極は実施例1と同一の銅箔を用い、負極電極にのみ、実施例1と同様の切り込み部を設けた。
【0054】
(比較例1)
比較例1では、正極電極と負極電極に切り込み部を設けず、それ以外は、実施例1と同様の構成とした。
【0055】
実施例1〜4、比較例1のリチウムイオンキャパシタは、リチウム金属から負極活物質層に450mAh/gのリチウムイオンがドープされるように定電圧放電を行った。この際のドープ時間を測定した。
【0056】
上記の状態で、正極活物質層を対極にしてESR(等価直列抵抗)を測定した。ESRはLCRメーターを用いて、周波数1kHzの値を測定した。その後、定電流定電圧にて3.8Vで充電を1時間行い、電圧が2.2Vになるまで、80mAで放電し、容量を測定した。また、直流抵抗は、放電時の電圧降下より算出した。表1に、実施例および比較例のドープ時間、ESR、容量、直流抵抗の値を示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1に示すように、本発明の構成により、ドープ時間を短縮し、容量を低減させず、低抵抗化を実現した蓄電デバイスが得られた。
【0059】
以上、実施の形態および実施例を用いて、本発明について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然なしえるであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1 正極活物質層
2 負極活物質層
3 セパレータ
4 正極集電体
5 負極集電体
6 電解液
7 金属リチウム
8 正極電極
9 負極電極
10、14 集電体
11 ユニット
12 活物質層
13 切り込み部
15 電極
16 巻回方向
17 リチウム供給源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の金属箔からなる正極集電体の少なくとも一方の主面に正極活物質層を形成した正極電極と、
帯状の金属箔からなる負極集電体の少なくとも一方の主面に負極活物質層を形成した負極電極と、
前記正極電極および前記負極電極にそれぞれ対向して配置されるセパレータと、
リチウムイオンを含有する非水系電解液と、
前記負極電極へリチウムイオンを供給するリチウム供給源とを備え、
前記セパレータを介して前記正極電極と前記負極電極を交互に積層し巻回したユニットと、
前記ユニットに対向して配置される前記リチウム供給源と、
前記電解液と
を外装材にて密閉した蓄電デバイスであって、
前記正極電極および前記負極電極の少なくとも一方に、切り込み部を有することを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項2】
前記正極集電体および前記負極集電体は、貫通孔を有することを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記正極電極および前記負極電極の一方の電極に前記切り込み部を有し、他方の電極の集電体には貫通孔を有することを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記切り込み部は、前記正極電極および前記負極電極の巻回方向に対して角度をなす方向に形成することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記切り込み部は、0.1mm以上100mm以下の間隔で連続して形成することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の蓄電デバイス。
【請求項6】
前記正極電極および前記負極電極の少なくとも一辺には、前記切り込み部を形成しないことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の蓄電デバイス。
【請求項7】
前記切り込み部は、刃物で形成することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の蓄電デバイス。
【請求項8】
前記リチウム供給源は、前記ユニットの中心または前記ユニットの最外周の少なくとも一部に配置されることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の蓄電デバイス。
【請求項9】
前記ユニットは、扁平状に巻回されることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の蓄電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−74283(P2013−74283A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214773(P2011−214773)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】