説明

蓄電モジュールの制御装置及び制御方法

【課題】回路規模を抑えて、直列に接続された各蓄電部にかかる電圧を計測し、その制御を行うことのできる蓄電モジュールの制御装置を提供する。
【解決手段】直列に接続された複数の蓄電部の両端及び接続部分の端子のうち、所定の基準端子を除いた端子のそれぞれについて、当該端子と基準端子との間の電圧に応じた電圧信号を出力し、基準端子を除いた端子のそれぞれについて、当該端子の電圧信号に基づいて当該端子と基準端子との間の電圧を示すデジタル値を生成し、複数の蓄電部のそれぞれについて、当該蓄電部の両端の端子の電圧を示すデジタル値の差を演算して当該蓄電部の端子間電圧を示すデジタル値を算出し、算出されるデジタル値に応じて各蓄電部の端子間電圧を制御する蓄電モジュールの制御装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列に接続された複数の蓄電部を含んだ蓄電モジュールを制御する制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気二重層キャパシタや各種の二次電池などの蓄電デバイスを、複数個直列に接続した蓄電モジュールがある。このような蓄電モジュールを充電して、電源として使用する場合、一般的に、充放電の際に各蓄電デバイスの電圧が均一化されるよう制御する必要がある。このような制御を実行しなければ、各蓄電デバイスの内部抵抗、容量、自己放電の個体差などが原因で、各蓄電デバイスにかかる電圧にばらつきが生じてしまい、特定の蓄電デバイスの寿命を早めてしまうなどの問題が生じるからである。
【0003】
このような制御を実現するためには、充放電の際に、各蓄電デバイスにかかっている電圧を計測する必要がある。例えば特許文献1においては、電位差算出回路を用いて直列に接続された各二次電池のセル電圧を計測する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平9‐140067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例の技術においては、直列に接続された蓄電デバイスの数だけ電位差算出回路が必要となり、特に蓄電デバイスの数が増えた場合などにおいて、回路規模が大きくなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的の一つは、回路規模を抑えて、直列に接続された各蓄電デバイスにかかる電圧を計測し、その制御を行うことのできる蓄電モジュールの制御装置及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明に係る蓄電モジュールの制御装置は、直列に接続された複数の蓄電部を含む蓄電モジュールの制御装置であって、前記複数の蓄電部の両端及び接続部分の端子のうち、所定の基準端子を除いた端子のそれぞれについて、当該端子と前記基準端子との間の電圧に応じた電圧信号を出力する電圧信号出力手段と、前記基準端子を除いた端子のそれぞれについて、前記電圧信号出力手段が出力する当該端子の電圧信号に基づいて、当該端子と前記基準端子との間の電圧を示すデジタル値を生成するデジタル値生成手段と、前記複数の蓄電部のそれぞれについて、前記デジタル値生成手段によって生成される当該蓄電部の両端の端子の電圧を示すデジタル値の差を演算して、当該蓄電部の端子間電圧を示すデジタル値を算出する端子間電圧算出手段と、前記端子間電圧算出手段により算出されるデジタル値に応じて、前記各蓄電部の端子間電圧を制御する電圧制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、上記蓄電モジュールの制御装置において、前記デジタル値生成手段は、前記電圧信号出力手段が出力する複数の端子それぞれの電圧信号を、順次受け付けることとしてもよい。
【0008】
また、前記電圧信号出力手段は、前記基準端子を除いた端子のそれぞれについて、当該端子と前記基準端子との間の電圧を、当該端子と前記基準端子との間に接続されている前記蓄電部の数に応じて減少させた電圧を示す電圧信号を出力することとしてもよい。
【0009】
さらに、前記電圧信号出力手段は、前記基準端子を除いた端子のそれぞれについて、当該端子と前記基準端子との間の電圧を、当該端子と前記基準端子との間に接続されている前記蓄電部の数で除してなる電圧を示す電圧信号を出力することとしてもよい。
【0010】
また、上記蓄電モジュールの制御装置において、前記電圧制御手段は、前記複数の蓄電部のそれぞれについて、前記端子間電圧算出手段により算出される当該蓄電部の端子間電圧を示すデジタル値と、前記各蓄電部の端子間電圧の最大値と最小値との間の値である比較基準値と、を比較した結果に応じて、当該蓄電部の端子間電圧を制御することとしてもよい。
【0011】
また、上記蓄電モジュールの制御装置は、前記複数の蓄電部のそれぞれに対して並列に接続され、それぞれ直列に接続された抵抗とスイッチとを含んでなる複数の電圧制御回路をさらに含み、前記電圧制御手段は、制御対象となる蓄電部に並列に接続された前記電圧制御回路に含まれる前記スイッチを導通させることにより、当該蓄電部の端子間電圧を低下させる制御を行うこととしてもよい。
【0012】
また、前記比較基準値は、前記各蓄電部の端子間電圧の平均値であることとしてもよい。
【0013】
さらに、前記電圧制御手段は、前記各蓄電部の端子間電圧の平均値として、直列に接続された前記複数の蓄電部の両端の間の電圧を前記蓄電部の数で除してなる値を用いて、当該平均値と前記複数の蓄電部それぞれの端子間電圧を示すデジタル値との比較を行うこととしてもよい。
【0014】
また、本発明に係る蓄電モジュールの制御方法は、直列に接続された複数の蓄電部を含む蓄電モジュールの制御方法であって、前記複数の蓄電部の両端及び接続部分の端子のうち、所定の基準端子を除いた端子のそれぞれについて、当該端子と前記基準端子との間の電圧に応じた電圧信号を出力する電圧信号出力ステップと、前記基準端子を除いた端子のそれぞれについて、前記電圧信号出力ステップで出力される当該端子の電圧信号に基づいて、当該端子と前記基準端子との間の電圧を示すデジタル値を生成するデジタル値生成ステップと、前記複数の蓄電部のそれぞれについて、前記デジタル値生成ステップで生成される当該蓄電部の両端の端子の電圧を示すデジタル値の差を演算して、当該蓄電部の端子間電圧を示すデジタル値を算出する端子間電圧算出ステップと、前記端子間電圧算出ステップで算出されるデジタル値に応じて、前記各蓄電部の端子間電圧を制御する電圧制御ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る蓄電モジュールの制御装置1の構成例を示す回路図である。本実施形態に係る蓄電モジュールの制御装置1による制御対象となる蓄電モジュール2は、直列に接続された全部でN個の蓄電部10を含んで構成されている。以下では、これら蓄電部10のそれぞれを、一方の端から接続順に、それぞれ蓄電部10(1),10(2),10(3),・・・,10(N−1),10(N)と表記する。各蓄電部10は、電圧を印加することによって蓄電可能なデバイスであって、例えば電気二重層キャパシタであってもよいし、リチウムイオン電池などの二次電池であってもよい。
【0017】
この蓄電モジュール2を充電する場合、直列に接続された複数の蓄電部10の両端の端子に対して、外部から電圧が印加される。以下では、この両端の端子のうちの一方を、端子T(0)と表記し、他方を端子T(N)と表記する。ここでは、蓄電部10(1)の両端のうち蓄電部10(2)に接続されている側と反対側の端子をT(0)とし、蓄電部10(N)の両端のうち蓄電部10(N−1)に接続されている側と反対側の端子をT(N)としている。また、各蓄電部10が互いに接続される接続部分(接続点)の端子を、端子T(0)の側から数えて順に、端子T(1),T(2),T(3),・・・,T(N−1)と表記する。すなわち、蓄電部10(n)の両端の端子のうち、端子T(0)に近い側の端子はT(n−1)、端子T(0)から遠い側の端子はT(n)となる。ここで、nは1からNまでの整数である。
【0018】
また、複数の蓄電部10の両端及び接続部分の端子である、T(0)からT(N)までの(N+1)個の端子のうち、いずれか一つの端子は、各端子の電圧を計測する際の基準となる所定の基準端子として用いられる。ここでは、端子T(0)が基準端子であるものとする。
【0019】
本実施形態に係る蓄電モジュールの制御装置1は、図1に示すように、N個の電圧バッファ12と、N個のシャント回路14と、制御回路20と、を含んで構成される。
【0020】
N個の電圧バッファ12は、複数の蓄電部10の両端及び接続部分の端子のうち、基準端子T(0)を除いた端子のそれぞれについて、当該端子と基準端子T(0)との間の電圧に応じた電圧信号を出力する電圧信号出力手段として機能する。具体的に、各電圧バッファ12は、いずれも基準端子T(0)と接続されている。さらに、各電圧バッファ12は、基準端子T(0)を除くT(1)からT(N)までのN個の端子のうち、いずれか一つと接続される。以下では、端子T(n)と接続される電圧バッファ12を電圧バッファ12(n)と表記する。
【0021】
電圧バッファ12(n)は、接続された端子T(n)と、基準端子T(0)と、の間の電圧に応じた電圧信号を、制御回路20に対して出力する。以下では、端子T(n)と基準端子T(0)との間の電圧をVt(n)と表記する。また、この電圧Vt(n)に応じて実際に電圧バッファ12(n)が出力する電圧信号を、Vb(n)と表記する。
【0022】
本実施形態においては、電圧バッファ12(n)が出力する電圧信号Vb(n)は、電圧Vt(n)を、端子T(n)と基準端子T(0)との間に接続されている蓄電部10の数(すなわち、n)に応じて減少させた電圧を示す電圧信号である。具体的に、電圧バッファ12(n)は例えばオペアンプ等を含んで構成され、入力電圧をnに応じた比で減少させる。その結果、電圧バッファ12(n)が出力する電圧信号Vb(n)は、電圧Vt(n)をnで除してなる電圧Vt(n)/nを示すものとなる。また、電圧バッファ12(n)は、端子T(n)から入力される電圧信号に対して、ノイズ性の信号を除去するローパスフィルタとして機能してもよい。
【0023】
このように、電圧バッファ12(n)が、端子T(n)と基準端子T(0)との間に接続される蓄電部10の数nに応じて電圧Vt(n)を減少させることによって、各電圧バッファ12が出力する電圧の高低差を抑えることができる。特に、電圧Vt(n)はn個の蓄電部10に対して印加されている電圧になっているので、電圧バッファ12(n)が電圧Vt(n)/nを示す電圧信号Vb(n)を出力することにより、各電圧バッファ12が出力する電圧を略等しい値に揃えることができ、制御回路20に入力される電圧を、制御回路20の入力上限電圧以下に抑え、かつ広ダイナミックレンジとすることができる。
【0024】
N個のシャント回路(電圧制御回路)14のそれぞれは、N個の蓄電部10のそれぞれに対して並列に接続され、当該並列に接続された蓄電部10の端子間電圧を制御するために用いられる。以下では、蓄電部10(n)に並列に接続されるシャント回路14を、シャント回路14(n)と表記する。シャント回路14(n)は、直列に接続された抵抗16(n)とスイッチ18(n)とを含んで構成される。
【0025】
スイッチ18(n)は、例えばトランジスタスイッチ等であって、制御回路20から出力される制御信号によってオン/オフが切り替えられる。スイッチ18(n)がオフ(開放)の状態では抵抗16(n)に電流は流れず、スイッチ18(n)がオン(導通)の状態では抵抗16(n)に電流が流れる。すなわち、スイッチ18(n)を導通させることによって、蓄電部10(n)は蓄えている電荷の一部を放電し、その結果、蓄電部10(n)の両端の間の電圧(端子間電圧)が低下することとなる。N個の蓄電部10のそれぞれに対してシャント回路14が並列に接続されているので、制御回路20は、各シャント回路14に備えられたスイッチ18を個別にオン/オフする制御信号を出力することで、特定の蓄電部10の端子間電圧を低下させる制御を実現できる。
【0026】
制御回路20は、例えばマイクロコンピュータ等であって、各電圧バッファ12が出力する電圧信号に基づいて、各蓄電部10の端子間電圧を示すデジタル値を算出する。そして、算出されるデジタル値に応じて、各蓄電部10の端子間電圧を制御するための制御信号を出力する。具体的に、制御回路20は、外部との入出力ポートとして、N個の入力ポートと、N個の出力ポートと、を少なくとも備えている。N個の入力ポートのそれぞれは、N個の電圧バッファ12のそれぞれと接続される。以下では、電圧バッファ12(n)と接続される入力ポートを、Pi(n)と表記する。また、N個の出力ポートのそれぞれは、N個のシャント回路14のそれぞれに含まれるスイッチ18と接続される。以下では、シャント回路14(n)に含まれるスイッチ18(n)と接続される出力ポートを、Po(n)と表記する。
【0027】
図2は、制御回路20の内部構成例を示す図である。図2に示すように、制御回路20は、接続切り替えスイッチ22と、A/Dコンバータ24と、演算ユニット26と、を含んで構成されている。また、演算ユニット26は、プログラム制御デバイスであって、機能的に、デジタル値算出部30と、端子間電圧算出部32と、電圧制御部34と、を含んでいる。これらの機能は、メモリ(不図示)に格納されたプログラムを演算ユニット26が実行することにより、実現される。また、A/Dコンバータ24と、デジタル値算出部30と、によって、デジタル値生成部36が実現される。
【0028】
接続切り替えスイッチ22は、演算ユニット26からの制御命令に従って、複数の入力ポートPi(n)のそれぞれと、A/Dコンバータ24と、の間の接続を順次切り替える。これにより、各電圧バッファ12が出力する電圧信号は、順次A/Dコンバータ24に対して入力される。このように、接続切り替えスイッチ22によって各電圧バッファ12からのA/Dコンバータ24に対する入力が順次切り替えられることによって、1個のA/Dコンバータ24だけで、T(1)からT(N)までのN個の端子のそれぞれの電圧に応じた電圧信号を受け付けることができる。
【0029】
デジタル値生成部36は、基準端子T(0)を除くT(1)からT(N)までの端子のそれぞれについて、当該端子と接続された電圧バッファ12が出力する電圧信号に基づいて、当該端子と基準端子T(0)との間の電圧を示すデジタル値を生成する。
【0030】
具体的に、まずA/Dコンバータ24が、接続切り替えスイッチ22の切り替えによって接続される各電圧バッファ12が出力する電圧信号を受け付けて、受け付けた電圧信号をデジタル値に変換する。そして、変換の結果得られるデジタル値を、演算ユニット26のデジタル値算出部30に入力する。なお、以下では、電圧バッファ12(n)が出力する電圧信号Vb(n)をA/Dコンバータ24が変換して得られるデジタル値を、Db(n)と表記する。
【0031】
次に、デジタル値算出部30が、A/Dコンバータ24によって変換されたデジタル値Db(n)に対して所定の演算を行うことにより、端子T(n)と基準端子T(0)との間の電圧Vt(n)を示すデジタル値(以下、Dt(n)と表記する)を算出する。このとき、デジタル値算出部30による所定の演算は、電圧バッファ12(n)が電圧Vt(n)を変化させた電圧を示す電圧信号Vb(n)を出力している場合に、当該電圧の変化を補正するために実行される。したがって、電圧バッファ12(n)が電圧Vt(n)を示す電圧信号をそのまま出力している場合には、デジタル値算出部30による演算は必要ない。
【0032】
本実施形態においては、前述したように、電圧バッファ12(n)が出力する電圧信号Vb(n)は、電圧Vt(n)/nを示している。そこで、デジタル値算出部30は、電圧信号Vb(n)をA/Dコンバータ24が変換して得られるデジタル値Db(n)を、n倍することによって、電圧Vt(n)を示すデジタル値Dt(n)を算出する。すなわち、計算式
Dt(n)=n・Db(n)
によってDt(n)を算出する。
【0033】
端子間電圧算出部32は、複数の蓄電部10のそれぞれについて、デジタル値生成部36によって生成された当該蓄電部10の両端の端子の電圧を示すデジタル値の差を演算することで、当該蓄電部10の端子間電圧を示すデジタル値を算出する。以下では、蓄電部10(n)の端子間電圧をVc(n)、当該端子間電圧を示すデジタル値をDc(n)と表記する。具体的に、端子間電圧算出部32は、蓄電部10(n)について、その一方の端子T(n)の電圧Vt(n)を示すデジタル値Dt(n)から、他方の端子T(n−1)の電圧Vt(n−1)を示すデジタル値Dt(n−1)を減算して、Dc(n)を算出する。すなわち、計算式
Dc(n)=Dt(n)−Dt(n−1)
によってDc(n)を算出する。なお、蓄電部10(1)の両端のうち端子T(1)と反対側の端子は、基準端子T(0)なので、Vt(0)は0になる。そのため、蓄電部10(1)の端子間電圧を示すデジタル値Dc(1)としては、Dt(1)の値をそのまま用いればよい。
【0034】
電圧制御部34は、端子間電圧算出部32によって算出される各蓄電部10の端子間電圧を示すデジタル値に応じて、各蓄電部10の端子間電圧を制御する。具体的に、電圧制御部34は、N個の蓄電部10のそれぞれについて、当該蓄電部10(n)の端子間電圧を示すデジタル値Dc(n)と、予め定められた方法により決定される比較基準値Drと、を比較し、その結果に応じて、当該蓄電部10(n)の端子間電圧Vc(n)を制御する。
【0035】
具体例として、電圧制御部34は、デジタル値Dc(n)が比較基準値Drより大きい場合、蓄電部10(n)に並列に接続されたシャント回路14(n)のスイッチ18(n)を導通させるための制御信号を、出力ポートPo(n)から出力する。これにより、電圧制御部34は、蓄電部10(n)の電圧を低下させる制御を実現する。一方、デジタル値Dc(n)が比較基準値Dr以下の場合、スイッチ18(n)を開放させるための制御信号を、出力ポートPo(n)から出力する。これにより、蓄電部10(n)の電圧を低下させる制御を停止する。
【0036】
ここで、電圧制御部34による比較に用いられる比較基準値Drについて、説明する。この比較基準値Drは、各蓄電部10の端子間電圧の最大値と最小値との間の値(中間値)とする。具体的に、例えば電圧制御部34は、各蓄電部10の端子間電圧の平均値を比較基準値Drとして用いる。このような比較基準値Drを用いることにより、電圧制御部34は、他の蓄電部10より端子間電圧が高い蓄電部10の電圧を低下させ、他の蓄電部10より端子間電圧が低い蓄電部10については、電圧を低下させないように、制御することができる。このとき、蓄電モジュール2の全体に印加される電圧(すなわち、端子T(0)と端子T(N)との間の電圧)に変化がなければ、他の蓄電部10より端子間電圧の高い蓄電部10の電圧を低下させることにより、その他の蓄電部10の端子間電圧は上昇する。そのため、上述した比較基準値Drを用いた各蓄電部10に対する電圧の制御を定期的に実行することにより、各蓄電部10の端子間電圧にばらつきがある場合に、このばらつきを効率よく補正し、各蓄電部10の端子間電圧を素早く均一化させることができる。
【0037】
以下、比較基準値Drとして各蓄電部10の端子間電圧の平均値を用いる場合に、電圧制御部34がこの平均値を取得する方法について、説明する。端子間電圧の平均値は、全ての蓄電部10の端子間電圧の合計値を、蓄電部10の個数であるNで割った値である。ここで、蓄電部10(n)の端子間電圧Vc(n)は、
Vc(n)=Vt(n)−Vt(n−1)
で表される。従って、N個の蓄電部10全ての端子間電圧の合計値Vsumは、
【数1】

と計算され、Vt(N)に一致する。以上より、各蓄電部10の端子間電圧の平均値は、Vt(N)/Nとなる。
【0038】
ここで、前述したように、電圧バッファ12(N)が出力する電圧信号Vb(N)は、電圧Vt(N)/Nを示している。そこで、この電圧信号Vb(N)をA/Dコンバータ24が変換して得られるデジタル値Db(N)を、そのまま比較基準値Drとして用いることができる。このように、比較基準値Drとして各蓄電部10の端子間電圧の平均値を用いる場合、端子間電圧の合計値VsumがVt(N)に一致することを利用すれば、N個の蓄電部10それぞれの端子間電圧を示すデジタル値を合計する演算処理を実行する必要がなくなり、演算ユニット26の処理負荷を軽減することができる。
【0039】
次に、本実施形態において演算ユニット26が実行する処理の流れの具体例について、図3のフロー図に基づいて説明する。
【0040】
最初に、演算ユニット26は、以下に説明する端子電圧値取得処理を、n=1から開始して、n=Nまで、nの値を1ずつ増やしながら、繰り返し実行する。
【0041】
すなわち、まず演算ユニット26が、接続切り替えスイッチ22を切り替えて、入力ポートPi(n)とA/Dコンバータ24とを接続させる(S1)。そして、S1で切り替えられた接続状態において、電圧バッファ12(n)からの電圧信号をA/Dコンバータ24が変換して得られるデジタル値Db(n)を、A/Dコンバータ24から受け付ける(S2)。
【0042】
ここで、n=Nの場合、演算ユニット26は、S2で受け付けたDb(N)の値を、メモリに書き込む(S3)。この値は、後に電圧制御部34によって比較基準値Drとして用いられる。
【0043】
次に、演算ユニット26のデジタル値算出部30が、S2で受け付けたデジタル値Db(n)をn倍して、電圧Vt(n)を示すデジタル値Dt(n)を算出し、メモリに書き込む(S4)。なお、n=1の場合には、Db(1)=Dt(1)なので、S2で受け付けたデジタル値Db(1)をそのままメモリに書き込めばよい。
【0044】
ここで、演算ユニット26は、S1からS4までの端子電圧値取得処理を、n=1からn=Nまで全てのnについて実行したかを判定する(S5)。N回の端子電圧値取得処理が実行され、1からNまでN個のデジタル値Dt(n)が得られれば、S6の処理に進む。一方、まだ全てのnについて端子電圧値取得処理を実行していなければ、nに1を加算し、S1に戻って、次のnに対する端子電圧値取得処理を実行する。
【0045】
N個のデジタル値Dt(n)が得られると、次に演算ユニット26は、各蓄電部10について、端子間電圧を示すデジタル値を算出し、当該蓄電部10の電圧を制御する処理を、再びn=1からn=Nまで、nの値を1ずつ増やしながら、繰り返し実行する。
【0046】
すなわち、まず端子間電圧算出部32が、蓄電部10(n)の端子間電圧Vc(n)を示すデジタル値Dc(n)を、S4でメモリに書き込まれたデジタル値Dt(n−1)及びDt(n)を用いて、算出する(S6)。なお、n=1の場合には、Dt(1)の値をそのままDc(1)とすればよい。
【0047】
次に、電圧制御部34が、S6で算出したDc(n)と、S3でメモリに書き込まれている比較基準値Dr(=Db(N))と、の大小を比較する(S7)。比較の結果、Dc(n)がDrより大きいと判定された場合、電圧制御部34は、スイッチ18(n)を導通させる制御信号を出力ポートPo(n)から出力する(S8)。これにより、シャント回路14(n)によって、蓄電部10(n)の端子間電圧Vc(n)が低下する。
【0048】
一方、S7の比較の結果、Dc(n)がDr以下であると判定された場合、電圧制御部34は、スイッチ18(n)を開放させる制御信号を出力ポートPo(n)から出力する(S9)。これにより、シャント回路14(n)による蓄電部10(n)の端子間電圧Vc(n)の低下は、生じなくなる。
【0049】
ここで、演算ユニット26は、S6からS9までの処理による蓄電部10(n)の端子間電圧の制御を、n=1からn=Nまで全てのnについて実行したかを判定する(S10)。N個の蓄電部10の全てについて、S6からS9までの処理が実行されれば、各蓄電部10の端子間電圧の制御を終えたことになるので、演算ユニット26は処理を終了する。一方、まだ全てのnについて処理を実行していなければ、nに1を加算し、S6に戻って、次の蓄電部10(n)に対する制御を実行する。
【0050】
以上説明した図3のフロー図に示す処理は、蓄電モジュール2の充電又は放電が行われている間、所定時間おきに繰り返し実行される。これにより、常時、他の蓄電部10より端子間電圧の高い蓄電部10の端子間電圧を低下させる制御が行われ、各蓄電部10の端子間電圧が均一化された状態を保つことができる。
【0051】
続いて、本実施形態において演算ユニット26が実行する処理の流れの図3とは別の例について、図4のフロー図に基づいて説明する。
【0052】
この図4に示す処理においては、まず演算ユニット26のデジタル値算出部30は、端子T(N)と基準端子T(0)との間の電圧Vt(N)を示すデジタル値Dt(N)を取得する端子電圧値取得処理を実行する(S21)。この処理は、前述した図3の処理におけるS1からS4までの処理と同様のものであって、この処理によって、比較基準値Drとして用いられるDb(N)の値がメモリに書き込まれるとともに、Db(N)の値をn倍して得られるデジタル値Dt(N)がメモリに書き込まれる。
【0053】
次に、演算ユニット26は、以下に説明する処理を、n=Nから開始して、n=2まで、nの値を1ずつ減らしながら、繰り返し実行する。
【0054】
すなわち、まずデジタル値算出部30が、端子T(n−1)と基準端子T(0)との間の電圧Vt(n−1)を示すデジタル値Dt(n−1)を取得する端子電圧値取得処理を実行する(S22)。この処理は、前述した図3の処理におけるS1,S2及びS4の処理と同様のものであって、この処理によって、デジタル値Dt(n−1)がメモリに書き込まれる。
【0055】
続いて、端子間電圧算出部32が、蓄電部10(n)の端子間電圧Vc(n)を示すデジタル値Dc(n)を、S21又はS22でメモリに書き込まれたデジタル値Dt(n)及びDt(n−1)を用いて、算出する(S23)。具体的に、n=Nの場合、端子間電圧算出部32は、S21の処理により得られるDt(N)の値と、直前のS22の処理によって得られるDt(N−1)の値と、を用いてデジタル値Dc(N)を算出する。また、n<Nの場合、端子間電圧算出部32は、直前のS22の処理によって得られるDt(n−1)の値と、その前のループにおいてS22の処理によって得られたDt(n)の値と、を用いてデジタル値Dc(n)を算出する。
【0056】
次に、電圧制御部34が、S23で算出したDc(n)と、S21でメモリに書き込まれている比較基準値Dr(=Db(N))と、を用いて、蓄電部10(n)に対する端子間電圧Vc(n)の制御処理を行う(S24)。この処理は、前述した図3の処理におけるS7からS9までの処理と同様のものであって、Dc(n)がDrより大きい場合にはスイッチ18(n)を導通させる制御信号を、Dc(n)がDr以下の場合にはスイッチ18(n)を開放させる制御信号を、それぞれ出力ポートPo(n)から出力する処理である。
【0057】
次に、演算ユニット26は、S22からS24までの処理を、n=Nからn=2までn=1を除く全てのnについて実行したかを判定する(S25)。これらの処理が(N−1)回繰り返されれば、演算ユニット26は次の処理に進む。一方、まだn=1を除く全てのnについて処理を実行していなければ、nから1を減算し、S22に戻って、次のnに対する処理を実行する。
【0058】
最後に、電圧制御部34は、n=1の場合について、前述したS24の処理と同様にして、蓄電部10(1)に対する端子間電圧Vc(1)の制御処理を実行する(S26)。このとき、比較基準値Drとの間の比較に用いられるDc(1)の値は、Dt(1)の値に等しいため、直前のS22の処理によって得られる値がそのまま用いられる。すなわち、端子間電圧算出部32は、これまでのn>1の場合と異なり、S23のようなDc(1)を算出する演算を行う必要はない。
【0059】
演算ユニット26は、以上説明した図4のフロー図に示す処理を、蓄電モジュール2の充電又は放電が行われている間、所定時間おきに繰り返し実行する。この図4に示す処理の例によっても、図3の場合と同様の蓄電部10に対する端子間電圧の制御を実現できる。
【0060】
以上説明した本実施の形態によれば、A/Dコンバータ24及び演算ユニット26によってT(1)からT(N)までの各端子と基準端子T(0)との間の電圧を示すデジタル値を生成することで、演算ユニット26は、各蓄電部10について、当該蓄電部10の両端の端子の電圧を示すデジタル値の差を演算して、当該蓄電部10の端子間電圧を示すデジタル値を算出することができる。そのため、N個の蓄電部10のそれぞれごとに、当該蓄電部10の端子間電圧を演算する回路を設ける必要がなくなるので、回路規模を抑えることができる。
【0061】
なお、本発明の実施の形態は、以上説明したものに限られない。例えば、以上の説明において演算ユニット26がプログラムを実行することで実現することとした機能の少なくとも一部は、デジタル回路によって実現されてもよい。また、電圧制御部34は、例えば予め定められた固定値と各蓄電部10の端子間電圧を比較するなど、上述した方法とは異なる方法で各蓄電部10に対する制御内容を決定してもよい。
【0062】
また、以上の説明においては、電圧バッファ12(n)とA/Dコンバータ24との接続を切り替える接続切り替えスイッチ22が、制御回路20内に設けられていることとしたが、これに代えて、1個の電圧バッファの前段に接続切り替えスイッチが設けられてもよい。この場合、接続切り替えスイッチによって複数の端子と電圧バッファとの間の接続が切り替えられ、この切り替えに応じて電圧バッファが各端子と基準端子との間の電圧に応じた電圧信号を順次出力する。A/Dコンバータ24は、この電圧バッファからの電圧信号を受け付けることで、各端子と基準端子との間の電圧に応じた電圧信号を、順次受け付けることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態に係る蓄電モジュールの制御装置の構成例を表す回路図である。
【図2】制御回路の内部構成例を表す図である。
【図3】制御回路内の演算ユニットによって実行される処理の流れの一例を示すフロー図である。
【図4】制御回路内の演算ユニットによって実行される処理の流れの別の例を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0064】
1 蓄電モジュールの制御装置、2 蓄電モジュール、10 蓄電部、12 電圧バッファ、14 シャント回路、16 抵抗、18 スイッチ、20 制御回路、22 接続切り替えスイッチ、24 A/Dコンバータ、26 演算ユニット、30 デジタル値算出部、32 端子間電圧算出部、34 電圧制御部、36 デジタル値生成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の蓄電部を含む蓄電モジュールの制御装置であって、
前記複数の蓄電部の両端及び接続部分の端子のうち、所定の基準端子を除いた端子のそれぞれについて、当該端子と前記基準端子との間の電圧に応じた電圧信号を出力する電圧信号出力手段と、
前記基準端子を除いた端子のそれぞれについて、前記電圧信号出力手段が出力する当該端子の電圧信号に基づいて、当該端子と前記基準端子との間の電圧を示すデジタル値を生成するデジタル値生成手段と、
前記複数の蓄電部のそれぞれについて、前記デジタル値生成手段によって生成される当該蓄電部の両端の端子の電圧を示すデジタル値の差を演算して、当該蓄電部の端子間電圧を示すデジタル値を算出する端子間電圧算出手段と、
前記端子間電圧算出手段により算出されるデジタル値に応じて、前記各蓄電部の端子間電圧を制御する電圧制御手段と、
を含むことを特徴とする蓄電モジュールの制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の蓄電モジュールの制御装置において、
前記デジタル値生成手段は、前記電圧信号出力手段が出力する複数の端子それぞれの電圧信号を、順次受け付ける
ことを特徴とする蓄電モジュールの制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の蓄電モジュールの制御装置において、
前記電圧信号出力手段は、前記基準端子を除いた端子のそれぞれについて、当該端子と前記基準端子との間の電圧を、当該端子と前記基準端子との間に接続されている前記蓄電部の数に応じて減少させた電圧を示す電圧信号を出力する
ことを特徴とする蓄電モジュールの制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の蓄電モジュールの制御装置において、
前記電圧信号出力手段は、前記基準端子を除いた端子のそれぞれについて、当該端子と前記基準端子との間の電圧を、当該端子と前記基準端子との間に接続されている前記蓄電部の数で除してなる電圧を示す電圧信号を出力する
ことを特徴とする蓄電モジュールの制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項記載の蓄電モジュールの制御装置において、
前記電圧制御手段は、前記複数の蓄電部のそれぞれについて、前記端子間電圧算出手段により算出される当該蓄電部の端子間電圧を示すデジタル値と、前記各蓄電部の端子間電圧の最大値と最小値との間の値である比較基準値と、を比較した結果に応じて、当該蓄電部の端子間電圧を制御する
ことを特徴とする蓄電モジュールの制御装置。
【請求項6】
請求項5記載の蓄電モジュールの制御装置において、
前記複数の蓄電部のそれぞれに対して並列に接続され、それぞれ直列に接続された抵抗とスイッチとを含んでなる複数の電圧制御回路をさらに含み、
前記電圧制御手段は、制御対象となる蓄電部に並列に接続された前記電圧制御回路に含まれる前記スイッチを導通させることにより、当該蓄電部の端子間電圧を低下させる制御を行う
ことを特徴とする蓄電モジュールの制御装置。
【請求項7】
請求項5又は6記載の蓄電モジュールの制御装置において、
前記比較基準値は、前記各蓄電部の端子間電圧の平均値である
ことを特徴とする蓄電モジュールの制御装置。
【請求項8】
請求項7記載の蓄電モジュールの制御装置において、
前記電圧制御手段は、前記各蓄電部の端子間電圧の平均値として、直列に接続された前記複数の蓄電部の両端の間の電圧を前記蓄電部の数で除してなる値を用いて、当該平均値と前記複数の蓄電部それぞれの端子間電圧を示すデジタル値との比較を行う
ことを特徴とする蓄電モジュールの制御装置。
【請求項9】
直列に接続された複数の蓄電部を含む蓄電モジュールの制御方法であって、
前記複数の蓄電部の両端及び接続部分の端子のうち、所定の基準端子を除いた端子のそれぞれについて、当該端子と前記基準端子との間の電圧に応じた電圧信号を出力する電圧信号出力ステップと、
前記基準端子を除いた端子のそれぞれについて、前記電圧信号出力ステップで出力される当該端子の電圧信号に基づいて、当該端子と前記基準端子との間の電圧を示すデジタル値を生成するデジタル値生成ステップと、
前記複数の蓄電部のそれぞれについて、前記デジタル値生成ステップで生成される当該蓄電部の両端の端子の電圧を示すデジタル値の差を演算して、当該蓄電部の端子間電圧を示すデジタル値を算出する端子間電圧算出ステップと、
前記端子間電圧算出ステップで算出されるデジタル値に応じて、前記各蓄電部の端子間電圧を制御する電圧制御ステップと、
を含むことを特徴とする蓄電モジュールの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−112071(P2009−112071A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278839(P2007−278839)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【特許番号】特許第4162701号(P4162701)
【特許公報発行日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】