説明

蓄電モジュール

【課題】直列及び並列に接続された蓄電セル及び/又は蓄電セル群の電圧を均等化する。
【解決手段】B1A〜B2A、B1B〜B2B、B2C〜B3Cの複数個のセルにより構成される3つの直列回路を半導体スイッチSa1〜Sa6、Sb1〜Sb6を介して並列に接続し、発振回路からなるドライバを用いて半導体スイッチSa1〜Sa6とSb1〜Sb6を交互にオンし、いずれの接続状態においても回路から開放状態となるセルが存在せず、且つモジュール内の各並列回路の合成容量が等しい構成を維持しつつ、並列に接続されるセル間において相互充放電を行い各セルの電圧を均等化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタ及び二次電池に代表される電源用蓄電セルを用いて構成される蓄電モジュールにおいて、各蓄電セルの電圧を均等化する方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシタモジュールや二次電池モジュール等の蓄電モジュールは用途に応じた所望の電圧及び容量を実現するために複数個のセルを直列及び並列に接続して構成されている。
上述した蓄電モジュールにおいては繰り返し充放電を行ううちに、各セルの容量、内部抵抗、環境温度、自己放電率等のばらつきに起因するセル電圧のばらつきが発生する。そして、ばらつきが発生すると電圧の高くなったセルの劣化は加速され、最終的にそのセルは過充電及び過放電状態に陥り蓄電モジュール全体の寿命を著しく短縮させてしまう。
上述したモジュール内の各セルの電圧を均等化し、モジュールとしての劣化を防ぐ手法が種々提案されている。均等化手法の代表的なものとして、バイパス回路方式、インダクタを用いた均等化方式、トランスを用いた均等化方式、コンデンサを用いた均等化方式等が考案されている。
【0003】
図1に示す回路は直列/並列切り替え式均等化機能付き蓄電モジュールであり、このモジュールの構成は3直列/3並列である。B1A〜B4A、B1B〜B3B、B0C〜B3Cはセル、Sa1〜Sa8、Sb1〜Sb8は半導体スイッチを示しており、Sa系統とSb系統で示される2系統の半導体スイッチをドライバを用いて交互にオン/オフすることにより図2と図3に示すように、モジュール内において並列接続されるセルの組み合わせは切り替えられ、モジュール内の各セルはそれぞれの間において相互充放電を行いセル電圧を均等化することが可能である。
【0004】
【特許文献1】特願2006−298006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述の回路による場合、図2においてはB4AとB0C、図3においてはB1AとB3Cのように、それぞれの接続状態において電気的に開放状態となるセルが存在するため、開放状態となる期間においてはそれらのセルは使用されないためセルの使用率は低くなる。
【0006】
また上述のスイッチのオン/オフ動作を行う場合、Sa系統とSb系統の両方がオンするとセルがショート状態に陥ってしまうので、両系統のスイッチが同時にオンしないように図4中のt2およびt4に示すように両系統のスイッチ駆動信号が共にオフとなるデッドタイムを設ける必要がある。
【0007】
このようなスイッチ駆動制御を行った場合、図2に示すSa系統オン/Sb系統オフの状態と図3に示すSa系統オフ/Sb系統オンの状態以外にデッドタイム時(t2およびt4)において図5に示す両系統のスイッチがオフとなる接続状態が存在する。図2と図3の状態においては3直列/3並列の構成であるが、図5の状態においては1並列(その容量はx)の3直列構成となる。この状態においてはB1A〜B4AとB0C〜B3Cが切り離されており、蓄電モジュールに流れる電流はB1B〜B3Bに集中するため、B1B〜B3Bのセルにストレスがかかってしまう。またセルの容量に対する電流の比が大きくなるため、セルの内部抵抗に起因する電圧降下(IRドロップ)も大きくなってしまう。このIRドロップは接続状態を切り替える度に発生するため、接続状態の切り替え周期に応じた大きなノイズが発生することになる。
【0008】
上述のスイッチオン/オフ動作を行う場合、並列に接続されるセルとセルの電圧差が大きな場合、セル間に大きな横流れ電流が流れてセルやスイッチを損傷してしまう恐れがある。例えば、二つのセルが並列に接続された状態の等価回路を示した図6の場合、電圧がBaとBbのセルaとセルbの間にはセルの内部抵抗ra、rbとスイッチのオン抵抗rA、rBにより制限される横流れ電流I=(Ba―Bb)/(ra+rb+rA+rB)が流れる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る蓄電モジュールは、n個(nは2以上の整数)の蓄電セル及び/又は蓄電セル群を直列にしたm個の直列回路と、n−1個の蓄電セル及び蓄電セル群を直列にしたm個又はm±1個の複数個(ただし並列数が4L−2個の場合は除く。Lは自然数)の直列回路をそれぞれ交互に並列接続して構成したモジュールであり、各直列回路のセル及びセル群を異なる直列回路のセル及びセル群とを並列接続させる第1の接続状態と、前記第1の並列状態とは異なる組み合わせで各直列回路のセル及びセル群を異なる直列回路のセル及びセル群とを並列接続させる第2の接続状態を切り替えるスイッチ群を備え、前記の第1と第2の接続状態を繰り返し切り替えることが出来ることを特徴とする。
【0010】
上記において、第1の接続状態と第2の接続状態との間の切り替え前後においてモジュールを構成する各並列回路の合成容量値が変化しないよう、前記蓄電セル及び/又は蓄電セル群の容量値を選択することが望ましい。
【0011】
前記蓄電セルはキャパシタ、二次電池、あるいはキャパシタと二次電池を混在させたハイブリッド型とすることができる。この場合、いずれの並列回路においてもその並列回路を構成するキャパシタセルと二次電池セルの容量比及び総容量が等しくなることが望ましい。
【0012】
前記スイッチ群は、半導体スイッチから構成されるもの、あるいは機械式スイッチから構成されるものとすることができる。
【0013】
前記蓄電モジュールにおいて、蓄電モジュールの接続状態を切り替える際に少なくとも2つ以上の直列回路が並列に接続された状態を維持するようにスイッチ群の駆動タイミングをずらしたスイッチ駆動手段を備えるようにすることができる。
【0014】
さらに、本発明に係る蓄電モジュールは、n個(nは2以上の整数)の蓄電セル及び/又は蓄電セル群を直列にしたm個の直列回路と、n−1個の蓄電セル及び蓄電セル群を直列にしたm個又はm±1個の複数個(ただし並列数が4L−2個の場合は除く。Lは自然数)の直列回路をそれぞれ交互に並列接続して構成したモジュールであり、各直列回路のセル及びセル群を異なる直列回路のセル及びセル群とを並列接続させる第1の接続状態と、前記第1の並列状態とは異なる組み合わせで各直列回路のセル及びセル群を異なる直列回路のセル及びセル群とを並列接続させる第2の接続状態を切り替えるスイッチ群を備え、前記の第1と第2の接続状態を繰り返し切り替えることが出来るよう前記スイッチ群を切り替えるスイッチ制御手段と、各蓄電セルの電圧を検出する電圧検出手段と、前記電圧検出回路からの電圧の検出結果に基づいて、前記スイッチ制御手段の動作を制御する制御手段を含むことを特徴とする。
【0015】
上述の本発明の蓄電セルモジュールによれば、電気エネルギー貯蔵を目的とした電源用蓄電セルを複数個直列及び並列に接続して構成された蓄電モジュール内の各セルをFET、サイリスタ、フォトMOSリレー等の半導体スイッチ(以下、「半導体スイッチ」という)を用いて均等化する方法であって、蓄電モジュール内において直列及び並列接続されるセルの組み合わせを半導体スイッチを用いて切り替えることにより蓄電モジュール内の各セル間で相互充放電を行い、各セル電圧を均等化することができる。
【0016】
さらに、本発明に係る蓄電モジュールは、二次電池セルと電気エネルギー貯蔵を目的とした電源用キャパシタセルから成る蓄電モジュール内の各セル電圧を半導体スイッチを用いて均等化する蓄電モジュールであって、蓄電モジュール内において直列及び並列接続されるセルの組み合わせを半導体スイッチを用いて切り替えることにより蓄電モジュール内の各セル間で相互充放電を行い、各セル電圧を均等化する蓄電モジュールであり、2つの接続状態のうちいずれの接続状態においてもモジュール内のいずれの並列回路においてもその並列回路を構成するキャパシタセルと二次電池セルの容量比及び総容量が等しい蓄電モジュールである。
【0017】
この蓄電モジュールによれば、蓄電モジュール内における各セルの直列及び並列接続される組み合わせは2系統の半導体スイッチにより切り替えられ、各セルはいずれかのセルを介して間接的に全てのセルに並列接続されることになる。並列接続されるセル間に電圧ばらつきが生じている場合、互いのセル間において相互充放電が行われ、電圧ばらつきは均等化される。また、2つの接続状態のうちいずれの接続状態においてもモジュール内の全ての並列段が二次電池セルとキャパシタセルの両方を含むため、二次電池セルとキャパシタセルを並列に接続したハイブリッド蓄電モジュールを構成することが可能である。なお、上記各並列段において、いずれの並列段においてもその並列段を構成するキャパシタセルと二次電池セルの容量比及び総容量が等しいこととする。
【0018】
本発明は前記蓄電モジュールの接続状態を切り替える際に少なくとも2つ以上の直列回路が並列に接続された状態を維持するようにスイッチ群の駆動タイミングをずらすことにより、蓄電モジュール内のある直列回路に電流が集中するのを防ぐことができる。これによりセルにかかるストレスを低減し、且つ、セルの内部抵抗に起因するIRドロップを小さくすることにより、接続状態を切り替える際に発生するノイズを低減することが可能となる。
【0019】
また本発明は、各蓄電セルの電圧を計測する電圧検出回路からの電圧の検出結果に基づいて、前記スイッチ群への入力信号を制御することにより、蓄電モジュール内の各セル間に流れる横流れ電流を制御することが可能となる。
【0020】
また本発明は、蓄電モジュールを構成する半導体スイッチのうち、いずれかの1つの半導体スイッチがオープン故障しても均等化機能を維持することを特徴とする。前記蓄電モジュールにおいて蓄電モジュール内のある半導体スイッチがオープン故障した場合、その半導体スイッチを介して並列接続されるセル間においては相互充放電による均等化は行えない。しかし別系統のスイッチ動作時には上記セルは別のセルに並列接続されるため相互充放電による均等化が可能となる。
【0021】
さらに、本発明は、蓄電モジュール内のいずれか1つのセルがオープン故障しても均等化機能を維持することを特徴とする。前記蓄電モジュールにおいて蓄電モジュール内のあるセルがオープン故障した場合、そのセルを含む並列段においてセルの並列接続数は減少するが並列接続内における相互充放電は可能であり、また半導体スイッチにより直列/並列接続が切り替えられた後においても相互充放電による均等化は可能である。
【発明の効果】
【0022】
電気エネルギー貯蔵を目的とした電源用セルを複数個直列及び並列に接続して構成された蓄電モジュール内の各セルを半導体スイッチのみを用いて均等化することが可能である。
【0023】
接続状態に応じて回路から開放状態となるセルが存在しないため、セルの使用率を高くすることが可能となる。また、開放状態となるセルが存在するような回路構成の場合と比較して、セル数やスイッチ数を削減することが出来る。
【0024】
接続状態を切り替える際においても1並列構成の状態になることがないため、電流が集中することにより発生するセルへのストレスを軽減することが可能となる。また、電流の集中を防ぐことによりセルの内部抵抗に起因するIRドロップを小さくすることができるので、接続状態の切り替えの際に発生するノイズを低減することが可能となる。
【0025】
接続状態を切り替える際にセル間に流れる横流れ電流を制御することにより、電圧ばらつきの大きな状態においても接続状態の切り替えを行うことが可能となり、セルやスイッチの損傷を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図7は本発明のセル電圧均等化回路の第1の実施形態を示す回路図である。これは、蓄電セルとしての二次電池セルを用い、3つの直列回路を並列に接続した2並列−3並列−2並列の並列段より構成される3直列構成である。B1A〜B2A、B1B〜B3B、B2C〜B3Cはセルであり、B1BとB3Bは容量が2xであるセルであり、他のセルの容量はxである。Sa1〜Sa6、Sb1〜Sb6は半導体スイッチを示す。Sa系統とSb系統で示される2系統の半導体スイッチをドライバを用いて交互にオン/オフすることによりモジュール内において並列接続されるセルの組み合わせは切り替えられ、モジュール内の各セルはそれぞれのセル間において相互充放電を行いセル電圧を均等化することが可能である。なお、ドライバを用いたオン/オフ動作は、一定周期でオンとオフを切り替えるよう動作させることができる他、経時変化や負荷変動などに応じてこの周期を変えるようにしてもよい。
【0027】
図8にSa系統のスイッチがオン、Sb系統のスイッチがオフの状態の回路図を示す。この状態においてはB1AとB2BとB3C、B2AとB3B、B1BとB2Cがそれぞれ並列に接続されており、2並列−3並列−2並列の並列段より構成される3直列構成のモジュールを構成している。この接続状態においてはいずれの並列段の合成容量も3xであり等しい。並列接続されているセル間において電圧ばらつきが発生している場合はセル間で相互充放電が行われ、電圧ばらつきは解消される方向に向かう。
【0028】
図9にSa系統のスイッチがオフ、Sb系統のスイッチがオンの状態の回路図を示す。この状態においてはB1AとB1B、B2AとB2BとB2C、B3BとB3Cがそれぞれ並列に接続されており、2並列−3並列−2並列の並列段より構成される3直列構成のモジュールを構成している。この接続状態においてはいずれの並列段の合成容量も3xであり等しい。並列接続されているセル間において電圧ばらつきが発生している場合はセル間で相互充放電が行われ、電圧ばらつきは解消される方向に向かう。
【0029】
上述のスイッチのオンオフ動作の繰り返しにより、常に2並列−3並列−2並列の並列段より構成される3直列構成を維持しつつ、且つ、いずれの並列段の合成容量も等しい(3x)まま直列及び並列接続の組み合わせは切り替えられ、モジュール内の各セルはいずれかのセルを介して全てのセルに並列接続されることになり、並列接続されるセル間において相互充放電が行われ各セルの電圧は均等化される。
【0030】
図10は本発明のセル電圧均等化回路の第1の実施形態において、4つの直列回路を並列に接続して構成される場合の回路図である。図11にSa系統のスイッチがオン、Sb系統のスイッチがオフの状態、図12にSa系統のスイッチがオフ、Sb系統のスイッチがオンの状態の回路図をそれぞれ示す。図13は本発明のセル電圧均等化回路の第1の実施形態において、5つの直列回路を並列に接続して構成される場合の回路図である。図14にSa系統のスイッチがオン、Sb系統のスイッチがオフの状態、図15にSa系統のスイッチがオフ、Sb系統のスイッチがオンの状態の回路図をそれぞれ示す。
【0031】
いずれの構成のモジュールにおいても上述と同様のスイッチのオンオフ動作の繰り返しにより、常に同じ構成を維持しつつ、且つ、いずれの並列段の合成容量も等しいまま直列及び並列接続の組み合わせは切り替えられ、モジュール内の各セルはいずれかのセルを介して全てのセルに並列接続されることになり、並列接続されるセル間において相互充放電が行われ各セルの電圧は均等化される。
【0032】
上記の第1の実施形態の構成を一般化すると、n個(nは2以上の整数)の蓄電セル及び蓄電セル群を直列にしたm個の直列回路と、n−1個の蓄電セル及び蓄電セル群を直列にしたm個又はm±1個の複数個(ただし並列数が4L−2個の場合は除く。Lは自然数)の直列回路をそれぞれ交互に並列接続したものということができる。例えば、図7の回路はn=3、m=1の場合の例であり、図10の回路はn=3、m=2の場合の例であり、図13はn=3、m=3の場合の例である。
【0033】
図16は本発明のセル電圧均等化回路の第2の実施形態を示す回路図である。これは、蓄電セルとしてキャパシタセルと二次電池セルが混在するハイブリッド型であり、二次電池セル×2セルとキャパシタセル×1セルから成る並列段が3つ直列接続された構成である。B1A〜B2A、B1BとB3B、B2C〜B3Cは容量xの二次電池セル、C1B〜C3Bは容量yのキャパシタセル、Sa1〜Sa6、Sb1〜Sb6は半導体スイッチを示す。また、この例では、C1BとB1Bが一つのセル群、C3BとB3Bが一つのセル群となる。
【0034】
図16において、Sa系統とSb系統で示される2系統の半導体スイッチをドライバを用いて交互にオン/オフすることによりモジュール内において並列接続されるセルの組み合わせは切り替えられ、モジュール内の各セルはそれぞれのセル間において相互充放電を行いセル電圧を均等化することが可能である。なお、ドライバを用いたオン/オフ動作は、一定周期でオンとオフを切り替えるよう動作させることができる他、経時変化や負荷変動などに応じてこの周期を変えるようにしてもよい。
【0035】
図17にSa系統のスイッチがオン、Sb系統のスイッチがオフの状態の回路図を示す。この状態においてはB1AとC2BとB3C、B2AとC3BとB3B、C1BとB1BとB2Cがそれぞれ並列に接続されており、いずれの並列段も二次電池セル×2セルとキャパシタセル×1セルから成る3直列構成である。この接続状態においてはいずれの並列段の合成容量も2x+yであり等しい。並列接続されているセル間において電圧ばらつきが発生している場合はセル間で相互充放電が行われ、電圧ばらつきは解消される方向に向かう。
【0036】
図18にSa系統のスイッチがオフ、Sb系統のスイッチがオンの状態の回路図を示す。この状態においてはB1AとC1BとB1B、B2AとC2BとB2C、C3BとB3BとB3Cがそれぞれ並列に接続されており、いずれの並列段も二次電池セル×2セルとキャパシタセル×1セルから成る3直列構成である。この接続状態においてはいずれの並列段の合成容量も2x+yであり等しい。並列接続されているセル間において電圧ばらつきが発生している場合はセル間で相互充放電が行われ、電圧ばらつきは解消される方向に向かう。
【0037】
上述のスイッチのオンオフ動作の繰り返しにより、いずれの並列段も二次電池セル×2セルとキャパシタセル×1セルから成る3直列構成を維持しつつ、且つ、全ての並列段の合成容量は等しい(2x+y)まま直列及び並列接続の組み合わせは切り替えられ、モジュール内の各セルはいずれかのセルを介して全てのセルに並列接続されることになり、並列接続されるセル間において相互充放電が行われ各セルの電圧は均等化される。
【0038】
なお、図16の回路は、n個(nは2以上の整数)の蓄電セル及び蓄電セル群を直列にしたm個の直列回路と、n−1個の蓄電セル及び蓄電セル群を直列にしたm個又はm±1個の複数個(ただし並列数が4L−2個の場合は除く。Lは自然数)の直列回路をそれぞれ交互に並列接続するという条件を満たしていれば、図10や図13に示すようなより多くのセルを含む回路に容易に拡張することができる。
【0039】
図19は本発明のスイッチ駆動制御方式の一実施形態を示す図である。蓄電モジュール内のスイッチ群をSa系統とSb系統に分類する他、B1A〜B2AとB1B〜B3Bを並列接続するスイッチ群をA系統、B1B〜B3BとB2C〜B3Cを並列接続するスイッチ群をB系統とする。蓄電モジュール内のスイッチ群は合計4系統に分類されている。そしてこれらのスイッチ群をドライバを用いて図20に示すタイミングチャートのように駆動する。このタイミングチャートに従ってスイッチ群を駆動させた場合、スイッチの駆動状態に応じて図21−1及び図21−2にC1〜C8で示すの8つの接続状態が存在する。
【0040】
C1の接続状態ではa―A系統とa−B系統のスイッチ群が共にオンで、2並列−3並列−2並列の3直列構成であり、いずれの並列段の合成容量も3xであり等しい。次に、C1の状態からa−B系統のスイッチ群をオフにするとC2の接続状態へと移行する。この場合、上段と中段の合成容量は2xであり下段の合成容量は3xである。次に、C2の状態からb−B系統のスイッチ群をオンにするとC3の接続状態へと移行する。この場合、上段の合成容量は2x、中段の合成容量は3x、下段の合成容量は4xである。次に、C3の状態からa−A系統のスイッチ群をオフにするとC4の接続状態へと移行する。この場合、上段と中段の合成容量は2x、下段の合成容量は3xである。
【0041】
次に、C4の状態からb−A系統のスイッチ群をオンにするとC5の接続状態へと移行する。この場合、いずれの並列段の合成容量も3xであり等しい。次に、C5の状態からb−B系統のスイッチ群をオフにするとC6の接続状態へと移行する。この場合、上段の合成容量は3x、中段と下段の合成容量は2xである。次に、C6の状態からa−B系統のスイッチ群をオンにするとC7の接続状態へと移行する。この場合、上段の合成容量は4x、中段の合成容量は3x、下段の合成容量は2xである。次に、C7の状態からb−A系統のスイッチ群をオフにするとC8の接続状態へと移行する。この場合、上段の合成容量は3x、中段と下段の合成容量は2xである。次に、C8の状態からa−A系統のスイッチ群をオンにするとC1の接続状態へと再び戻る。
【0042】
上述の図4のタイミングチャートを用いた場合、その期間t2において、前述のように3直列を構成する各1並列の合成容量がxとなる並列段が存在したが(図5参照)、上記の図20のタイミングチャートを用いた場合は図21のC1〜C8に示すように一連の接続状態切り替え動作の中で合成容量がxとなる並列段が存在しないことからセルにかかるストレスを低減することが可能となる。またセルに対する電流の大きさの比が図8の場合よりも小さいため、セルの内部抵抗に起因するIRドロップを小さくすることができるので、接続状態の切り替えの際に発生するノイズを低減することが可能となる。
【0043】
なお、図19、図20に示したスイッチ駆動制御方式は、図10や図13に示した回路にも適用できる。その場合は、例えば中央の直列回路よりも左側のスイッチ群をA系統、右側のスイッチ群をB系統というように分類すればよく、このようにすれば並列数が増えてもこのようにA系統、B系統という2系統について図19、図20に示したスイッチ駆動制御方式を適用できる。
【0044】
図22は図7に示した回路に、電圧検出回路、平均回路、減算回路、振幅調整回路を付加した実施形態を示しており、接続状態切り替えの際に並列に接続されるセル間に流れる横流れ電流を制御させる方法の一例である。
【0045】
図22の回路は、前述の2並列−3並列−2並列の並列段より構成される3直列構成の蓄電モジュールであり、モジュール内の各セルは電圧検出回路及び平均回路に接続されており、電圧検出回路は各セル電圧に応じた電圧信号を出力し、平均回路は各セル電圧の平均電圧に応じた電圧信号を出力する。電圧検出回路及び平均回路からの出力信号は減算回路に入力され、各セル電圧とセル電圧の平均電圧との差、つまり電圧ばらつきに応じた電圧信号が減算回路から出力される。減算回路からの出力信号は振幅調整回路に入力され、振幅調整回路は半導体スイッチを駆動させるドライバの出力信号の振幅を制御する。
【0046】
図23に示すように、半導体スイッチに流れる電流は半導体スイッチへの入力信号に依存する。つまり半導体スイッチへの入力信号を制御することにより、半導体スイッチに流れる電流を制御することができる。減算回路からの出力信号の大きさ、つまり各セル電圧のばらつき度合いに応じて半導体スイッチを駆動させるドライバの出力信号の振幅を調節することにより、半導体スイッチに流れる電流を制限する。以上の動作により、各セル間の電圧ばらつきが大きな場合は半導体スイッチに流れる横流れ電流を制御し、セルやスイッチが損傷するのを防ぐことが出来る。
【0047】
本発明の蓄電モジュールにおいて用いられるセルは全て電気エネルギー貯蔵を目的とした電源用蓄電セルであり、複数個の蓄電セルを用いて蓄電モジュールを構成する。よってモジュール内のあるセルがオープン故障した場合やモジュール内のある半導体スイッチが故障した場合においても蓄電モジュールとしての機能は失われない。
【0048】
本発明の蓄電モジュールを構成する半導体スイッチのうち、いずれかの1つの半導体スイッチがオープン故障した場合、その半導体スイッチを介して並列接続されるセル間では相互充放電による均等化は行えなくなる。しかし別系統のスイッチ動作時には上記セルは別のセルに並列接続されるため相互充放電による均等化が可能となる。ただし、2つ以上のスイッチが故障した場合などはモジュールから電気的に切り離されるセルが発生するケースがある。
【0049】
図24は、蓄電モジュール内のあるセルがオープン故障した場合について説明するための図である。モジュール内のあるセルがオープン故障した場合であっても、並列状態を切り替えることによって、すべてのセルの均等化を行うことが可能である。
【0050】
本発明の蓄電モジュールにおいて蓄電モジュール内のある1つのセルがオープン故障した場合、その故障したセルを含む並列段の合成容量は小さくなってしまう。しかし他のセルとの電気的な接続を阻害する故障ではないため、モジュール内の各セルは必ず1つ以上のその他のセルと並列接続されることになるので均等化機能は失われない。ただし、2つ以上のセルが故障した場合などは並列に接続される相手のいないセルが発生、もしくは故障セルのみにより構成される並列段などが発生するケースがある。
【0051】
図25乃至図26は、半導体スイッチがオープン故障した場合について説明するための図であり、図25はSa系統、図26はSb系統のあるスイッチが故障した場合を示す。いずれの場合においても接続状態を切り替えることにより、すべての蓄電セルの均等化を行うことが可能である。
【0052】
本発明の蓄電モジュールにおいて蓄電モジュール内のある1つの半導体スイッチがオープン故障した場合、その故障したスイッチを介して接続されるセルは均等化を行うことが出来ない。しかし別系統のスイッチ動作時には上記セルは別のセルに並列接続されるため相互充放電による均等化が可能となる。ただし、2つ以上のスイッチが故障した場合などはモジュールから電気的に切り離されるセルが発生するケースがある。
【0053】
上記においてはセルという語句を用いて説明してきたが、単一のセルを意味する他に複数個のセルから構成されるセル群であっても適用可能である。
また上記においては半導体スイッチを用いることを前提として説明してきたが、図22に示す横流れ電流を制御させる方法以外においては、スイッチの切り替え周期を十分遅くした場合などにおいてはパワーリレー等の応答速度の遅い機械式スイッチを用いて均等化を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、電気自動車用電源,UPS電源,パソコン用電源,モバイル機器用電源,飛行機を含む移動体用電源,家庭用電源,非常時用電源等に広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】回路は直列/並列切り替え式均等化機能付き蓄電モジュールの一例を示した回路図である。
【図2】モジュール内において並列接続されるセルの組み合わせを切り替える様子を示した図である。
【図3】モジュール内において並列接続されるセルの組み合わせを切り替える様子を示した図である。
【図4】スイッチ駆動信号がオン/オフとなるタイミングを示したタイミングチャートである。
【図5】両系統のスイッチがオフとなった状態を示した図である。
【図6】二つのセルが並列に接続された状態の等価回路を示した図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るセル電圧均等化回路の一例を示す回路図である。
【図8】図7においてSa系統のスイッチがオン、Sb系統のスイッチがオフの状態の回路図である。
【図9】図7においてSa系統のスイッチがオフ、Sb系統のスイッチがオンの状態の回路図である。
【図10】本発明の第1の実施形態において、4つの直列回路を並列に接続して構成した場合の回路図である。
【図11】図10においてSa系統のスイッチがオン、Sb系統のスイッチがオフの状態の回路図である。
【図12】図10においてSa系統のスイッチがオフ、Sb系統のスイッチがオンの状態の回路図である。
【図13】本発明の第1の実施形態において、5つの直列回路を並列に接続して構成される場合の回路図である。
【図14】図13においてSa系統のスイッチがオン、Sb系統のスイッチがオフの状態の回路図である。
【図15】図13においてSa系統のスイッチがオフ、Sb系統のスイッチがオンの状態の回路図である。
【図16】本発明の第2の実施形態に係るセル電圧均等化回路を示す回路図である。
【図17】図16においてSa系統のスイッチがオン、Sb系統のスイッチがオフの状態の回路図である。
【図18】図16においてSa系統のスイッチがオフ、Sb系統のスイッチがオンの状態の回路図である。
【図19】本発明の蓄電モジュールにおけるスイッチ駆動制御方式の一実施形態を示す図である。
【図20】ドライバを用いて蓄電モジュール内の4系統に分類されたスイッチ群を駆動するタイミングチャートである。
【図21−1】図20のこのタイミングチャートに従ってスイッチ群を駆動させた場合の接続状態を説明するための図である。
【図21−2】図20のこのタイミングチャートに従ってスイッチ群を駆動させた場合の接続状態を説明するための図である。
【図22】図7に示した回路に、電圧検出回路、平均回路、減算回路、振幅調整回路を付加した実施形態を示した回路図である。
【図23】半導体スイッチへの入力信号に対する半導体スイッチに流れる電流の依存関係を示したグラフである。
【図24】蓄電モジュール内のあるセルがオープン故障した場合について説明するための図である。
【図25】半導体スイッチがオープン故障した場合について説明するための図である。
【図26】半導体スイッチがオープン故障した場合について説明するための図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n個(nは2以上の整数)の蓄電セル及び/又は蓄電セル群を直列にしたm個の直列回路と、n−1個の蓄電セル及び蓄電セル群を直列にしたm個又はm±1個の複数個(ただし並列数が4L−2個の場合は除く。Lは自然数)の直列回路をそれぞれ交互に並列接続して構成したモジュールであり、各直列回路のセル及びセル群を異なる直列回路のセル及びセル群とを並列接続させる第1の接続状態と、前記第1の並列状態とは異なる組み合わせで各直列回路のセル及びセル群を異なる直列回路のセル及びセル群とを並列接続させる第2の接続状態を切り替えるスイッチ群を備え、前記の第1と第2の接続状態を繰り返し切り替えることが出来ることを特徴とする蓄電モジュール。
【請求項2】
第1の接続状態と第2の接続状態との間の切り替え前後においてモジュールを構成する各並列回路の合成容量値が変化しないよう、前記蓄電セル及び/又は蓄電セル群の容量値を選択したことを特徴とする請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記蓄電セルにキャパシタセル及び二次電池セルを用い、いずれの並列回路においてもその並列段を構成するキャパシタセルと二次電池セルの容量比及び総容量を等しくしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記接続状態を切り替える際に、少なくとも2つ以上の直列回路が並列に接続された状態を維持するようにスイッチ群の駆動タイミングをずらすスイッチ制御手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
各蓄電セルの電圧を計測する電圧検出回路からの電圧の検出結果に基づいて、前記スイッチ群への入力信号を制御することにより、各セル間に流れる横流れ電流を制御するスイッチ制御手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【請求項6】
n個(nは2以上の整数)の蓄電セル及び/又は蓄電セル群を直列にしたm個の直列回路と、n−1個の蓄電セル及び蓄電セル群を直列にしたm個又はm±1個の複数個(ただし並列数が4L−2個の場合は除く。Lは自然数)の直列回路をそれぞれ交互に並列接続して構成したモジュールであり、各直列回路のセル及びセル群を異なる直列回路のセル及びセル群とを並列接続させる第1の接続状態と、前記第1の並列状態とは異なる組み合わせで各直列回路のセル及びセル群を異なる直列回路のセル及びセル群とを並列接続させる第2の接続状態を切り替えるスイッチ群を備え、さらに、前記の第1と第2の接続状態を繰り返し切り替えることが出来るよう前記スイッチ群を切り替えるスイッチ制御手段と、各蓄電セルの電圧を検出する電圧検出手段と、前記電圧検出回路からの電圧の検出結果に基づいて、前記スイッチ制御手段の動作を制御する制御手段を含むことを特徴とする蓄電モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21−1】
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【図21−2】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2008−219964(P2008−219964A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49692(P2007−49692)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【Fターム(参考)】