説明

蓄電素子

【課題】複数の活物質の性能のそれぞれを十分に発揮できる蓄電素子を提供する。
【解決手段】電気的に並列に接続された複数の電極群10A〜10Dを備え、複数の電極群10A〜10Dの各々は、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、正極及び負極の間に配置されたセパレータとを含み、複数の電極群10A〜10Dの各々において、正極活物質及び負極活物質の構成が単一であり、複数の電極群10A〜10Dのうちの少なくとも2つの電極群において、正極活物質及び負極活物質の少なくとも一方の構成が異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子に関し、より特定的には、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、正極及び負極の間に配置されたセパレータとが巻回された電極群を2つ以上備えた蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電素子は、リチウムイオン二次電池などの非電解質二次電池や、リチウムイオンキャパシタ、ウルトラキャパシタなどのキャパシタなどとして使用されている。このような蓄電素子は、例えば特開2006−278256号公報(特許文献1)、特開平8−315860号公報(特許文献2)、特開2010−15852号公報(特許文献3)、特開2009−227171号公報(特許文献4)などに開示されている。
【0003】
特許文献1には、オリビン型燐酸マンガンリチウムとスピネル型マンガン酸リチウムとが混合された正極活物質を有する正極を備えた非水電解質二次電池が開示されている。特許文献2には、リチウムコバルト複合酸化物とリチウムマンガン複合酸化物との混合物からなる正極活物質を有する正極を備えた非水電解質二次電池が開示されている。
【0004】
特許文献3には、異なる活物質を含む負極活物質層が集電箔にストライプ状に塗着された負極を備えたリチウムイオン二次電池が開示されている。特許文献4には、亜鉛とカーボンとを混合せずに、集電箔において分離した領域に塗布し、焼き付けることで得られる負極を備えた鉛フリーバッテリーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−278256号公報
【特許文献2】特開平8−315860号公報
【特許文献3】特開2010−15852号公報
【特許文献4】特開2009−227171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1及び2のように、異なる組成の活物質を混合した場合には、活物質層(合剤層)内にそれぞれの活物質がランダムに存在するので、それぞれの活物質の性能が発揮されにくい。さらに、活物質の混合比率によっては、それぞれの性能が相殺されてしまう場合がある。
【0007】
また上記特許文献3及び4のように、異なる組成の活物質のそれぞれを、単一の集電箔における区画した領域のそれぞれに塗工した場合には、乾燥、プレス、塗布重量などの製造条件の自由度が制限される。このため、それぞれの活物質に最適な条件で製造することができないので、それぞれの活物質の性能を十分に発揮することができない。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、複数の活物質の性能のそれぞれを十分に発揮できる蓄電素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の蓄電素子は、電気的に並列に接続された複数の電極群を備え、複数の電極群の各々は、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、正極及び負極の間に配置されたセパレータとを含み、複数の電極群の各々において、正極活物質及び負極活物質の構成が単一であり、複数の電極群のうちの少なくとも2つの電極群において、正極活物質及び負極活物質の少なくとも一方の構成が異なる。
【0010】
本発明の蓄電素子によれば、複数の電極群の各々において、活物質の構成が単一であるため、各々の電極群を形成するための製造条件は各々の活物質に最適な条件で製造することができる。また、複数の電極群のうちの少なくとも2つの電極群において、活物質の構成が異なるため、蓄電素子は最適な条件で製造した2種以上の活物質を有する。したがって、複数の活物質の性能のそれぞれを十分に発揮できる蓄電素子を提供することができる。
【0011】
本発明の蓄電素子においては、複数の電極群のうちの少なくとも2つの電極群において、正極活物質及び負極活物質の少なくとも一方の成分が異なるようにすることができる。
【0012】
これにより、複数の活物質の成分によるそれぞれの性能を十分に発揮できる蓄電素子を得ることができる。
【0013】
本発明の蓄電素子においては、電極群を3つ以上備え、複数の電極群のうちの、相対的に外部側に配置される電極群と、相対的に内部側に配置される電極群とにおいて、正極活物質及び負極活物質の少なくとも一方の構成が異なるようにすることができる。
【0014】
蓄電素子において内部側は外部側に比べて高温になるので、内部側に配置する電極群に外部側に配置する電極群よりも耐熱性の高い活物質を用いることにより、内部側に配置する電極群と、外部側に配置する電極群との劣化の差を低減することができる。このため、蓄電素子全体として、耐久性を向上することができる。
【0015】
本発明の蓄電素子においては、正極は、正極基材と、正極基材に形成され、かつ正極活物質と、導電助剤と、正極バインダとを有する正極合剤層とを含み、負極は、負極基材と、負極基材に形成され、かつ負極活物質と、負極バインダとを有する負極合剤層とを含み、複数の電極群のうちの少なくとも2つの電極群において、セパレータ、正極基材、導電助剤、正極バインダ、負極基材及び負極バインダの少なくとも1つの構成が異なるようにすることができる。
【0016】
これにより、異なる構成を有する活物質において、それぞれの活物質に適したセパレータ、基材、導電助剤及びバインダを選択することができる。このため、それぞれの電極群において性能をより十分に発揮できるので、性能を向上した蓄電素子を得ることができる。
【0017】
本発明の蓄電素子において好ましくは、少なくとも2つの電極群のうちの少なくとも1つの電極群の負極活物質は結晶質炭素であり、残部の電極群のうちの少なくとも1つの電極群の負極活物質は非晶質炭素である。
【0018】
結晶質炭素を有することにより、容量及び出力性能を高めることができる。非晶質炭素を有することにより、入力性能を高めることができる。したがって、複数の電極群のうち、少なくとも1つの電極群の負極活物質が結晶質炭素で、残部の少なくとも1つの電極群の負極活物質が非晶質炭素であると、それぞれの活物質の良好な性能を発揮できるので、高容量かつ高入出力の蓄電素子を実現することができる。
【0019】
上記蓄電素子において好ましくは、少なくとも2つの電極群のうちの少なくとも1つの電極群において、正極活物質は、LiFePO4、LiaNixMnyCo(1-x-y)2(0≦a≦1.1、0<x<1、0<y<1、x+y<1)及びLiaNixCoyAlzb2(0.3≦a≦1.05、0.7≦x≦0.87、0.1≦y≦0.27、0.03≦z≦0.1、0≦b≦0.1、MはNi、Co及びAlを除く金属元素から選択される少なくとも1種)からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0020】
これにより、LiFePO4による安全性の性能、LiaNixMnyCo(1-x-y)2及びLiaNixCoyAlzb2による大容量の性能の少なくともいずれかの性能を発現した蓄電素子を実現することができる。
【0021】
本発明の蓄電素子において好ましくは、少なくとも2つの電極群のうちの少なくとも1つの電極群の正極活物質はLiaNixMnyCo(1-x-y)2(0≦a≦1.1、0<x<1、0<y<1、x+y<1)であり、残部の電極群のうちの少なくとも1つの電極群の正極活物質はLiMn24である。
【0022】
LiaNixMnyCo(1-x-y)2を有することにより、容量を大きくすることができる。LiMn24を有することにより、安全性を高めることができる。したがって、複数の電極群のうちの少なくとも1つの電極群の正極活物質がLiaNixMnyCo(1-x-y)2で、残部の少なくとも1つの電極群の正極活物質がLiMn24であると、それぞれの活物質の良好な性能を発揮できるので、高容量かつ高安全性の蓄電素子を実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、複数の活物質の性能のそれぞれを十分に発揮できる蓄電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態における蓄電素子を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態における蓄電素子の容器の内部を概略的に示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態における蓄電素子の容器の内部を概略的に示す断面図であり、図2における線分III−III線に沿った断面図である。
【図4】本発明の実施の形態における蓄電素子を構成する電極群を概略的に示す模式図である。
【図5】本発明の実施の形態における電極群を構成する正極または負極を概略的に示す拡大模式図である。
【図6】本発明の実施の形態の変形例における蓄電素子の容器の内部を概略的に示す模式図である。
【図7】比較例1などのリチウムイオン二次電池の容器の内部を概略的に示す模式図である。
【図8】本発明例4などのリチウムイオン二次電池の容器の内部を概略的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0026】
図1〜図5を参照して、本発明の一実施の形態である蓄電素子の一例である非水電解質二次電池を説明する。
【0027】
図1〜図3に示すように、本実施の形態の非水電解質二次電池1は、容器2と、この容器2に収容された複数の電極群10A〜10Dと、容器2に取り付けられた正極端子21及び負極端子22とを備えている。
【0028】
図1に示すように、容器2は、複数の電極群10A〜10Dを収容する本体部3と、本体部3を覆う蓋4とを有している。本体部3及び蓋4は、例えばステンレス鋼板からなり、互いに溶接されている。蓋4には、正極端子21及び負極端子22を容器2の外部に露出するための開口部が形成され、この開口部に正極端子21及び負極端子22が配置されている。また、蓋4には、電解液注入部5が設けられている。電解液注入部5は、内部に電解液を注入するものであり、非水電解質二次電池1の使用時には封止されている。
【0029】
図2及び図3に示すように、本体部3の内部には、複数の電極群10A〜10Dが収容されている。複数の電極群10A〜10Dは、電気的に並列に接続されている。本実施の形態では、容器2内に4個の電極群10A〜10Dが並置されており、電極群10A、10Dは容器2内において相対的に外部側に配置され、電極群10B、10Cは容器2内において相対的に内部側に配置されている。
【0030】
図4に示すように、複数の電極群10A〜10Dの各々は、正極11A〜11Dと、セパレータ12A〜12Dと、負極13A〜13Dとを含んでいる。電極群10A〜10Dの各々は、負極13A〜13D上にセパレータ12A〜12Dが配置され、このセパレータ12A〜12D上に正極11A〜11Dが配置され、この正極11A〜11D上にセパレータ12A〜12Dが配置された状態で巻回され、筒状に形成されている。即ち、電極群10A〜10Dの各々において、負極13A〜13Dの外周側にセパレータ12A〜12Dが形成され、このセパレータ12A〜12Dの外周側に正極11A〜11Dが形成され、この正極11A〜11Dの外周側にセパレータ12A〜12Dが形成されている。本実施の形態では、複数の電極群10A〜10Dの各々において、正極11A〜11D及び負極13A〜13Dの間に絶縁性のセパレータ12A〜12Dが配置されているので、正極11A〜11Dと負極13A〜13Dとは電気的に接続されていない。
【0031】
正極11A〜11Dは、正極端子21(図1参照)と電気的に接続され、負極13A〜13Dは、負極端子22(図1参照)と電気的に接続されている。
【0032】
図5に示すように、電極群10A〜10Dを構成する正極11A〜11Dは、正極集電箔11A1〜11D1と、正極集電箔11A1〜11D1に形成された正極合剤層11A2〜11D2とを有している。電極群10A〜10Dを構成する負極13A〜13Dは、負極集電箔13A1〜13D1と、負極集電箔13A1〜13D1に形成された負極合剤層13A2〜13D2とを有している。本実施の形態では、正極集電箔11A1〜11D1及び負極集電箔13A1〜13D1の表面及び裏面のそれぞれに、正極合剤層11A2〜11D2及び負極合剤層13A2〜13D2が形成されているが、本発明はこの構造に特に限定されない。例えば、正極集電箔11A1〜11D1及び負極集電箔13A1〜13D1の表面または裏面に、正極合剤層11A2〜11D2及び負極合剤層13A2〜13D2が形成されていてもよい。ただし、正極合剤層11A2〜11D2には、負極合剤層13A2〜13D2が対面している。
なお、本実施の形態では、正極及び負極基材として、正極及び負極集電箔を例に挙げて説明しているが、正極及び負極基材は箔状に限定されない。
【0033】
正極合剤層11A2〜11D2は、正極活物質と、導電助剤と、バインダとを有している。負極合剤層13A2〜13D2は、負極活物質と、バインダとを有している。なお、負極合剤層13A2〜13D2は、導電助剤をさらに有していてもよい。
【0034】
複数の電極群10A〜10Dの各々において、正極活物質及び負極活物質の構成は単一である。つまり、電極群10A〜10Dの各々において、異なる構成の正極活物質及び負極活物質は含まれていない。
【0035】
複数の電極群10A〜10Dのうちの少なくとも2つの電極群において、正極活物質及び負極活物質の少なくとも一方の構成が異なる。つまり、複数の電極群10A〜10Dのうちの少なくとも2つの電極群の正極活物質及び/または負極活物質と、残部の電極群の正極活物質及び/または負極活物質との構成が異なる。本実施の形態では、外部側に配置される電極群10A、10Dと、内部側に配置される電極群10B、10Cとにおいて、正極活物質及び負極活物質の少なくとも一方の構成が異なる。
【0036】
ここで、「構成」とは、例えば成分、量、多孔度、粒子径などである。この点について、以下説明する。
【0037】
「成分が単一」とは、活物質の組成式に含まれる各元素の係数(組成比)を比較したときに、その値の差が5%未満であること、又は、前記各元素が異種元素に置換される割合が5%未満ということを意味し、「成分が異なる」とは前記各元素の係数の差が5%以上であること、又は、活物質の組成式における各元素のうち、少なくとも1種についてその5%以上が異種元素で置換されていることを意味する。例えば、LiCoO2とLiCo(1-c)Mec2(Meは任意の金属元素)とにおいて、cが0.05未満の場合には成分が単一で、cが0.05以上の場合には成分が異なる。
【0038】
「量が単一」とは、質量又は密度の差が3%未満であるということを意味し、「量が異なる」とは、質量又は密度の差が3%以上であるということを意味する。
【0039】
「多孔度が単一」とは、下記の式(1)、(2)により算出される多孔度の差が2%未満であるということを意味し、「多孔度が異なる」とは、下記の式(1)、(2)により算出される多孔度の差が2%以上であるということを意味する。
多孔度(%)=100−{(塗布密度/真密度)×100}…式(1)
塗布密度(g/cm3)=塗布重量(g/cm2)/活物質層の厚み(cm)…式(2)
【0040】
「粒子径が単一」とは、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定される平均粒子径D50の差が20%未満ということを意味し、「粒子径が異なる」とは、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定される平均粒子径D50の差が20%以上ということを意味する。
【0041】
なお、複数の電極群10A〜10Dの各々において、正極活物質及び負極活物質の構成の全てが単一であり、かつ複数の電極群10A〜10Dのうちの少なくとも2つの電極群において、正極活物質及び負極活物質の少なくとも一方の構成の少なくとも1つが異なる。
【0042】
正極活物質及び負極活物質の少なくとも一方の構成が異なる少なくとも2つの電極群において、セパレータ、正極集電箔、導電助剤、正極バインダ、負極集電箔及び負極バインダの少なくとも1つの構成が異なることが好ましい。本実施の形態の場合、電極群10A、10Dと、電極群10B、10Cとにおいて、正極活物質及び負極活物質の少なくとも一方の構成が異なっているので、以下のa)〜f)の少なくとも1つであることが好ましい。
a)セパレータ12A、12Dの構成と、セパレータ12B、12Cの構成とが異なっている。
b)正極集電箔11A1、11D1の構成と、正極集電箔11B1、11C1の構成とが異なっている。
c)負極集電箔13A1、13D1の構成と、負極集電箔13B1、13C1の構成とが異なっている。
d)正極合剤層11A2、11D2の導電助剤の構成と、正極合剤層11B2、11C2の導電助剤の構成とが異なっている。
e)正極合剤層11A2、11D2の正極バインダの構成と、正極合剤層11B2、11C2の正極バインダの構成とが異なっている。
f)負極合剤層13A2、13D2の負極バインダの構成と、負極合剤層13B2、13C2の負極バインダの構成とが異なっている。
【0043】
なお、3つ以上の電極群が配置されている場合であって、かつ正極活物質及び負極活物質の構成が同一の電極群が2つ以上ある場合には、正極活物質及び負極活物質が同一の電極群の各々において、セパレータ、正極集電箔、導電助剤、正極バインダ、負極集電箔及び負極バインダの構成は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0044】
ここで、セパレータ及び正極(負極)集電箔の「構成」とは、セパレータ及び正極(負極)集電箔の成分、量、厚みなどであり、導電助剤及びバインダの「構成」とは、導電助剤及び正極(負極)バインダの成分、量、粒子径などである。「成分が異なる」とは有機化合物においては組成式が同一でないということであり、無機化合物においては、各構成要素に含まれる元素の割合の差が5%以上ということを意味する。「量が異なる」とは、質量又は密度の差が3%以上ということを意味する。「厚みが異なる」とは、厚みの差が10%以上ということを意味する。「粒子径が異なる」とは、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定される平均粒子径D50の差が20%以上ということを意味する。
【0045】
なお、複数の電極群10A〜10Dのそれぞれにおいて、巻数、厚みなどは、異なっていても、単一であってもよい。
【0046】
また、本実施の形態では、複数の電極群として4つの電極群10A〜10Dを備えた非水電解質二次電池1を例に挙げて説明したが、本発明は、図6に示すように、少なくとも2つの電極群10A、10Bを備えていれば特に限定されない。
【0047】
また、本実施の形態では、蓄電素子として非水質電解質電池を例に挙げて説明したが、本発明は非水質電解質電池に限定されず、例えばキャパシタなどにも適用可能である。本発明が非水質電解質電池として用いられる場合には、リチウムイオン二次電池が好適に用いられる。本発明がキャパシタとして用いられる場合には、リチウムイオンキャパシタやウルトラキャパシタが好適に用いられる。
【0048】
次に、本実施の形態における非水電解質二次電池1の効果について説明する。
本実施の形態の非水電解質二次電池1は、複数の電極群10A〜10Dの各々において、正極活物質及び負極活物質の構成が単一であるので、電極群10A〜10Dを形成するための製造条件は、それぞれの正極活物質及び負極活物質に最適な条件で製造することができる。また、複数の電極群10A〜10Dのうちの少なくとも2つの電極群において、正極活物質及び負極活物質の少なくとも一方の構成が異なるので、最適な条件で製造した2種類以上の正極及び負極活物質の少なくとも一方を有する。したがって、複数の活物質の良好な性能のそれぞれを十分に発揮することができる。
【0049】
このように、複数の活物質の良好な性能のそれぞれを十分に発揮した非水電解質二次電池1は、それぞれの活物質の長所を活かすと共に、短所を補い合うことが可能となる。このため、安全性、高容量、高出力、耐久性、充放電効率、充電状態(以下、SOC)、検知、極低温性能、生産性などの所望の性能を有する非水電解質二次電池を実現することができる。
【0050】
以下、具体的な構成を例に挙げて、本実施の形態における非水電解質二次電池1の効果についてさらに詳細に説明する。
【0051】
(第1の例)
正極活物質としてLiMn24などのスピネルマンガン系活物質または一般式LiFePO4で表されるリン酸鉄活物質を有する電極群と、正極活物質としてLiaNixCoyAlzb2(0.3≦a≦1.05、0.7≦x≦0.87、0.1≦y≦0.27、0.03≦z≦0.1、0≦b≦0.1、MはNi、Co及びAlを除く金属元素から選択される少なくとも1種)で表されるニッケル系活物質またはLiaNixMnyCo(1-x-y)2(0≦a≦1.1、0<x<1、0<y<1、x+y<1)で表される三成分系活物質を有する電極群とを備えた非水電解質二次電池について説明する。
【0052】
スピネルマンガン系活物質及びリン酸鉄活物質は、安全性は高いが、高温環境下では劣化が大きい。ニッケル系活物質及び三成分系活物質は、容量は大きいが、外部衝撃などに対する安全性がやや低い。図2及び図3に示す非水電解質二次電池1において、外部側に配置される電極群10A、10Dの正極活物質がスピネルマンガン系活物質またはリン酸鉄活物質で、内部側に配置される電極群10B、10Cの正極活物質がニッケル系活物質または三成分系活物質とする。図6に示す非水電解質二次電池1において、電池パック搭載時に外部側に相対的に近い位置の電極群10Aの正極活物質がスピネルマンガン系活物質またはリン酸鉄活物質で、外部側から相対的に遠い位置の電極群10Bの正極活物質がニッケル系活物質または三成分系活物質とする。これにより、電池中央部の蓄熱によるスピネルマンガン系活物質またはリン酸鉄活物質の劣化を抑制できると共に、スピネルマンガン系活物質またはリン酸鉄活物質の安全性の性能を発揮することができ、かつニッケル系活物質及び三成分系活物質の大容量の性能を発揮することができる。このため、高安全性と高容量とを両立した非水電解質二次電池1を実現することができる。
【0053】
さらに、平坦な充放電カーブを有するリン酸鉄活物質を正極活物質として用いた電極群と、傾斜のある充放電カーブを有するニッケル系活物質または三成分系活物質を正極活物質として用いた電極群とを非水電解質二次電池1が備えることにより、SOC検知が可能になる。このように、活物質の構成を適宜選択することにより、非水電解質二次電池1の性能をさらに向上することができる。
【0054】
なお、三成分系活物質において、上記効果をより発現する観点から、|x−y|<0.05であることが好ましい。
また、LiMn24、LiFePO4などの化合物は、Li、遷移金属、P、Oが異種元素で置換されていてもよい。この場合でも、上記と同様の効果を有する。
【0055】
(第2の例)
負極活物質として結晶質炭素としてのグラファイトを有する電極群と、非晶質炭素を有する電極群とを備えた非水電解質二次電池について説明する。グラファイトは、容量及び出力性能は高いものの、入力性能は十分でない。非晶質炭素は、放電容量はグラファイトに比べて低いが、入力性能に優れている。したがって、複数の電極群のうち、少なくとも1つの電極群の負極活物質がグラファイトで、残りのうちの少なくとも1つの電極群の負極活物質が非晶質炭素であると、それぞれの活物質の良好な性能を発揮できるので、高容量かつ高入出力の非水電解質二次電池1を実現することができる。
【0056】
さらに、平坦な充放電カーブを有するグラファイトを負極活物質として用いた電極群と、傾斜のある充放電カーブを有する非晶質炭素を負極活物質として用いた電極群とを非水電解質二次電池1が備えることにより、SOC検知が可能になる。このように、活物質の構成を適宜選択することにより、非水電解質二次電池1の性能をさらに向上することができる。
【0057】
(第3の例)
活物質の成分は同じであるが、少なくとも2つの電極群において活物質の量が異なる非水電解質二次電池1について説明する。活物質の塗布重量を大きくすると、活物質の量を増やすことができるので、容量を高くすることができるが、電極が厚くなるので、大電流での充放電(入出力性能)は十分でない。塗布重量を小さくすると、電極が薄くなるので、入出力性能が高くなるが、電極における集電箔の割合が大きくなるので、エネルギー密度は小さくなる。したがって、複数の電極群のうち、少なくとも1つの電極群の正極(負極)活物質の重量が相対的に大きく、残りのうちの少なくとも1つの電極群の正極(負極)活物質の重量が相対的に小さいと、それぞれの電極の良好な性能を発揮できるので、高エネルギー密度かつ高入出力の非水電解質二次電池1を実現することができる。
【0058】
(第4の例)
活物質の成分は同じであるが、少なくとも2つの電極群において活物質の多孔度が異なる非水電解質二次電池1について説明する。活物質を塗布した後にプレスをする負荷により、活物質の多孔度を調整できる。多孔度を大きくすると、活物質の量が少なくなるので、入出力性能を大きくできるが、容量は十分でない。多孔度を小さくすると、エネルギー密度を大きくできるが、抵抗が大きくなるため出力が十分でない。したがって、複数の電極群のうち、少なくとも1つの電極群の正極(負極)の多孔度が相対的に大きく、残りのうちの少なくとも1つの電極群の正極(負極)の多孔度が相対的に小さいと、それぞれの活物質の良好な性能を発揮できるので、高入出力性能かつ高エネルギー密度の非水電解質二次電池1を実現することができる。
【0059】
次に、非水電解質二次電池1の好ましい形態の効果について説明する。
非水電解質二次電池1の好ましい形態は、正極活物質及び負極活物質の少なくとも一方の構成が異なる少なくとも2つの電極群において、セパレータ、正極(負極)集電箔、導電助剤及び正極(負極)バインダの少なくとも1つの構成が異なる。これにより、異なる構成を有する正極(負極)活物質において、それぞれの正極(負極)活物質に適したセパレータ、正極(負極)集電箔、導電助剤及び正極(負極)バインダを選択することができる。このため、それぞれの電極群において性能をより十分に発揮できるので、性能を向上した蓄電素子を得ることができる。
【0060】
以下、具体的な構成を例に挙げて、非水電解質二次電池1のより好ましい形態の効果についてさらに詳細に説明する。
【0061】
(第1の例)
正極活物質として用いられるLiCoO2などのコバルト系活物質及び三成分系活物質は電位が高い。電位が高い活物質を有する電極群のセパレータは、酸化を抑制するために無機質層を含んでいることが好ましい。また、別の正極活物質として用いられるリン酸鉄活物質は、電位が低い。電位が低い活物質を有する電極群のセパレータは、劣化が小さく、エネルギー密度を高めるために、無機質層を含まないことが好ましい。このように、正極活物質の構成が異なる少なくとも2つの電極群において、セパレータの成分を各々の正極活物質に適するように選択することにより、非水電解質二次電池1の性能をさらに向上することができる。
【0062】
(第2の例)
図2及び図3に示すように、3つ以上の電極群を備えた非水電解質二次電池1であって、外部側に配置される電極群10A、10Dと、内部側に配置される電極群10B、10Cとにおいて、正極活物質及び負極活物質の少なくとも一方の構成が異なる場合、外部側に配置される電極群10A、10Dのセパレータ12A、12Dは無機質層を含むことが好ましく、内部側に配置される電極群10B、10Cのセパレータ12B、12Cは無機質層を含まない、または無機質層を有し、かつ透気性の良いことが好ましい。外部側に位置する電極群10A、10Dは内部側に位置する電極群10B、10Cよりも外部衝撃を受けやすいが、無機質層を含むセパレータは熱収縮が起こりにくいため、仮に外部衝撃によって内部短絡して発熱したとしても、熱逸走に至ることを防止できる。内部側の電極群10B、10Cに無機質層をもたない、又は、無機質層を有するとしても透気性の良いセパレータを用いることで、高温耐久試験におけるセパレータの目詰まりが抑制でき、非水電解質二次電池1の劣化を防止することができる。したがって、内部側の電極群と外部側の電極群において各々の活物質の構成が異なり、かつ各々の活物質の構成に対応した成分のセパレータを用いることにより、非水電解質二次電池1の安全性を高めると共にエネルギー密度を向上できる。
【実施例1】
【0063】
本実施例では、複数の電極群の各々において、正極活物質及び負極活物質の構成は単一であり、複数の電極群のうちの少なくとも2つの電極群において、負極活物質の成分が異なる蓄電素子の効果について調べた。
【0064】
(本発明例1)
本発明例1は、図6に示す2つの電極群10A、10Bを備えたリチウムイオン二次電池を以下のように製造した。
【0065】
まず、電極群10Aについて説明する。
負極活物質としてのグラファイト90重量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)10重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて負極合剤ペーストを形成した。1.5g/100cm2の負極合剤ペーストを、負極集電箔として10μmの厚さの銅箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで100kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。これにより、帯状の負極を作製した。負極の大きさは、長さが220cmで、幅が13cmで、負極集電箔と両面の負極合剤層との合計の厚みが120μmであった。
【0066】
正極活物質としてLiFePO486重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック7重量%と、PVDF7重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて正極合剤ペーストを形成した。3.2g/100cm2の正極合剤ペーストを、正極集電箔として20μmの厚さのアルミニウム箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで500kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。これにより、帯状の正極を作製した。正極の大きさは、長さが210cmで、幅が13cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが190μmであった。
【0067】
正極及び負極の各々に、正極タブ及び負極タブを取り付けた。
また、セパレータとして幅12cm、厚み25μmのポリオレフィン製微多孔膜を準備した。
【0068】
次に、正極、セパレータ、負極及びセパレータの順に積層し、長円筒状に巻回した。これにより、電極群10Aを作製した。
【0069】
電極群10Bは、基本的には電極群10Aと同様であったが、負極において異なっていた。具体的には、負極活物質としてのハードカーボン90重量%と、結着剤としてのPVDF10重量%とを混合し、この混合物に溶剤を加えて負極合剤ペーストを形成した。1.0g/100cm2の負極合剤ペーストを、負極集電箔として10μmの厚さの銅箔の負極集電箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで400kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。帯状の負極の大きさは、長さが220cmで、幅が13cmで、負極集電箔と両面の負極合剤層との合計の厚みが120μmであった。
【0070】
次に、2つの電極群10A、10Bを容器2の本体部3の内部に並置し、各電極群10A、10Bの正極タブ及び負極タブを電気的に並列に接続し、それぞれを蓋4の正極端子21及び負極端子22にそれぞれ溶着して蓋4を本体部3に取り付けた。
【0071】
蓋4の電解液注入部5から、電解液として1MのLiPF6(EC:DMC:DEC=40:40:20)を注液した。その後、電解液注入部5を封止した。以上の工程により、本発明例1のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0072】
(比較例1)
図7に示すように、比較例1のリチウムイオン二次電池100は、単一の負極活物質を含む負極合剤層を有する電極群100Aを1つ備えていた点において本発明例1と異なっていた。
【0073】
具体的には、負極の形成については、本発明例1の電極群10Aと同様に、負極合剤ペーストを形成して、負極集電箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで100kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。この負極の大きさは、長さが430cmで、幅が13cmで、負極集電箔と両面の負極合剤層との合計の厚みが120μmであった。
【0074】
正極の形成については、本発明例1と同様に、正極合剤ペーストを形成して、正極集電箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで500kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。この正極の大きさは、長さが420cmで、幅が13cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが190μmであった。
また、本発明例1と同様のセパレータを準備した。
【0075】
次に、本発明例1と同様に正極、負極及びセパレータを巻回して、電極群100Aを作製した。次に、本発明例1と同様に、この電極群100Aを容器2に収容し、電解液を注液することで、比較例1のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0076】
(比較例2)
比較例2のリチウムイオン二次電池は、基本的には比較例1のリチウムイオン二次電池と同様であったが、負極活物質がグラファイトの代わりにハードカーボンであった点において異なっていた。
【0077】
(比較例3)
図7に示すように、比較例3のリチウムイオン二次電池100は、2種類の負極活物質が混合された負極合剤層を有する電極群100Aを1つ備えていた点において本発明例1と異なっていた。
【0078】
具体的には、負極活物質としてのグラファイト45重量%及びハードカーボン45重量%と、結着剤としてのPVDF10重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN-メチルピロリドンを加えて負極合剤ペーストを形成した。1.3g/100cm2の負極合剤ペーストを、本発明例1と同様の負極集電箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで300kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。この負極の大きさは、長さが430cmで、幅が13cmで、負極集電箔と両面の負極合剤層との合計の厚みが120μmであった。
【0079】
正極は、比較例1と同様に形成した。また、本発明例1と同様のセパレータを準備した。
【0080】
次に、本発明例1と同様に正極、負極及びセパレータを巻回して、電極群100Aを作製した。次に、本発明例1と同様に、この電極群100Aを容器2に収容し、電解液を注液することで、比較例3のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0081】
(比較例4)
図7に示すように、比較例4のリチウムイオン二次電池100は、2種類の成分の負極活物質のそれぞれを区画した領域に形成した負極合剤層を有する電極群100Aを1つ備えていた点において本発明例1と異なっていた。
【0082】
具体的には、第1の負極活物質としてのグラファイト90重量%と、結着剤としてのPVDF10重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN-メチルピロリドンを加えて第1の負極合剤ペーストを形成した。第2の負極活物質としてのハードカーボン90重量%と、結着剤としてのPVDF10重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN-メチルピロリドンを加えて第2の負極合剤ペーストを形成した。本発明例1と同様の負極集電箔のそれぞれの面において、半分の領域に1.5g/100cm2の第1の負極合剤ペーストを塗布し、残りの半分の領域に1.0g/100cm2の第2の負極合剤ペーストを塗布した。これを乾燥した後、ロールプレスで300kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。この負極の大きさは、長さが430cmで、幅が13cmで、負極集電箔と両面の負極合剤層との合計の厚みが120μmであった。
【0083】
正極は、比較例1と同様に形成した。また、本発明例1と同様のセパレータを準備した。
【0084】
次に、本発明例1と同様に正極、負極及びセパレータを巻回して、電極群100Aを作製した。次に、本発明例1と同様に、この電極群100Aを容器2に収容し、電解液を注液することで、比較例4のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0085】
(評価方法)
本発明例1、比較例1〜4のリチウムイオン二次電池について、SOC検知、容量及び耐久性について評価した。
【0086】
SOC検知は、SOC50%付近での閉回路電圧(以下、OCV)の傾斜で評価し、具体的には、SOC49%からSOC51%までの間を1%刻みでOCV測定し、SOC49%からSOC50%までの間のOCV変化量と、SOC50%からSOC51%までの間のOCV変化量とを平均することによって測定した。
【0087】
容量は、次のようにして測定した。1CAの定電流にて所定の上限電圧まで充電し、その後前記上限電圧にて総充電時間が3時間となるように定電圧充電した後、1CAの定電流にて所定の下限電圧まで放電した。このときの放電容量を「容量」とした。
なお、1CAとは、上限電圧まで充電した電池を1時間で放電するときの電流値である。
各実施例における下限電圧と上限電圧との組み合わせは次のとおりであった。実施例1(2.5V−3.6V)、実施例2〜4、6(2.5V−4.2V)、実施例5(2.5V−4.0V)。
【0088】
耐久性は、容量保持率で評価し、具体的には、所定温度に設定した恒温槽中で、2CAの定電流にてSOC80%に相当する電圧まで充電した後、2CAの定電流にてSOC20%に相当する電圧まで放電するサイクル試験を所定のサイクル数行った後の容量をサイクル前の容量で除することによって測定した。
【0089】
(評価結果)
SOC50%付近でのOCV傾斜について、本発明例1が4mV/SOC%であり、比較例1が0mV/SOC%であり、比較例2が8mV/SOC%であり、比較例3が4mV/SOC%であり、比較例4が4mV/SOC%であった。本発明例1は、ハードカーボンの比率の大きい比較例2よりは小さかったものの、ハードカーボンを含まない比較例1よりもSOC検知が良好であった。このことから、本発明例1は負極活物質としてのハードカーボンの性能を発揮できることがわかった。
【0090】
容量について、本発明例1が85(相対比)であり、比較例1が100(相対比)であり、比較例2が70(相対比)であり、比較例3が85(相対比)であり、比較例4が80(相対比)であった。本発明例1は、グラファイトの比率の大きい比較例1よりは容量が小さかったものの、グラファイトを含まない比較2よりも容量が大きく、さらに2種類の活物質の領域を区画して形成した比較例4よりも容量が大きかった。このことから、本発明例1のリチウムイオン二次電池は、負極活物質としてのグラファイトの性能を発揮できることがわかった。
【0091】
25℃500サイクル試験後の容量保持率について、本発明例1が85%であり、比較例1が80%であり、比較例2が90%であり、比較例3が70%であり、比較例4が60%であった。本発明例1は、ハードカーボンの比率が大きい比較例2よりは耐久性が低かったものの、ハードカーボンを含まない比較例1よりも耐久性が高かった。さらに、本発明例1は、2種類の活物質を混合した比較例3及び2種類の活物質の領域を区画して形成した比較例4よりも耐久性を向上できた。このことから、本発明例1のリチウムイオン二次電池は負極活物質のハードカーボンの性能を発揮できることがわかった。
【0092】
以上より、本実施例によれば、複数の電極群の各々において、正極活物質及び負極活物質の構成が単一であり、複数の電極群のうちの少なくとも2つの電極群において、負極活物質の成分が異なることにより、複数の負極活物質の性能のそれぞれを十分に発揮できることを確認した。
【実施例2】
【0093】
本実施例では、複数の電極群の各々において、正極活物質及び負極活物質の構成は単一であり、複数の電極群のうちの少なくとも2つの電極群において、負極活物質の重量が異なることの効果について調べた。
【0094】
(本発明例2)
本発明例2は、図6に示す2つの電極群10A、10Bを備えたリチウムイオン二次電池を以下のように製造した。
【0095】
まず、電極群10Aについて説明する。
負極活物質としてのグラファイト92重量%と、結着剤としてのPVDF8重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて負極合剤ペーストを形成した。2.0g/100cm2の負極合剤ペーストを、負極集電箔として10μmの厚さの銅箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで150kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。これにより、帯状の負極を作製した。負極の大きさは、長さが180cmで、幅が13cmで、負極集電箔と両面の負極合剤層との合計の厚みが150μmであった。
【0096】
正極活物質としてのLiMn2490重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック3重量%と、PVDF7重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて正極合剤ペーストを形成した。1.1g/100cm2の正極合剤ペーストを、正極集電箔として20μmの厚さのアルミニウム箔の両面にそれぞれ塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで250kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。これにより、帯状の正極を作製した。正極の大きさは、長さが170cmで、幅が13cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが80μmであった。
【0097】
正極及び負極の各々に、正極タブ及び負極タブを取り付けた。
また、本発明例1と同様のセパレータを準備した。
【0098】
次に、正極、セパレータ、負極及びセパレータの順に積層し、長円筒状に巻回した。これにより、電極群10Aを作製した。
【0099】
電極群10Bは、基本的には電極群10Aと同様であったが、負極において異なっていた。具体的には、電極群10Aと同様の負極ペーストを、負極集電箔の両面のそれぞれに0.5g/100cm2塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで150kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。帯状の負極の大きさは、長さが320cmで、幅が13cmで、負極集電箔と両面の負極合剤層との合計の厚みが50μmであった。
【0100】
次に、本発明例1と同様に、2つの電極群10A、10Bを容器2に収容し、電解液を注液することで、本発明例2のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0101】
(比較例5)
図7に示すように、比較例5のリチウムイオン二次電池100は、1種類の負極活物質を有する負極合剤層を含む電極群100Aを1つ備えていた点において本発明例2と異なっていた。
【0102】
具体的には、本発明例2と同様の負極合剤ペーストを形成した。2.0g/100cm2の負極合剤ペーストを、本発明例2と同様の負極集電箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで150kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。この負極の大きさは、長さが350cmで、幅が13cmで、負極集電箔と両面の負極合剤層との合計の厚みが150μmであった。
【0103】
正極の形成については、本発明例2と同様に、正極合剤ペーストを形成して、正極集電箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで250kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。この正極の大きさは、長さが340cmで、幅が13cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが80μmであった。
【0104】
次に、本発明例2と同様のセパレータを準備し、本発明例2と同様に正極、負極及びセパレータを巻回して、電極群100Aを作製した。次に、本発明例2と同様に、この電極群100Aを容器2に収容し、電解液を注液することで、比較例5のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0105】
(比較例6)
比較例6のリチウムイオン二次電池は、基本的には比較例5と同様であったが、負極集電箔に塗布した負極合剤ペーストの重量が0.5g/100cm2であった点において異なっていた。
【0106】
(比較例7)
図7に示すように、比較例7のリチウムイオン二次電池100は、2種類の量の負極活物質のそれぞれを区画した領域に形成した負極合剤層を有する電極群100Aを1つ備えていた点において本発明例2と異なっていた。
【0107】
具体的には、本発明例2と同様の負極合剤ペーストを形成した。本発明例2と同様の負極集電箔のそれぞれの面において、半分の領域に2.0g/100cm2を塗布し、残りの半分の領域に0.5g/100cm2の負極合剤ペーストを塗布した。これを乾燥した後、ロールプレスで100kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。この負極の大きさは、長さが350cmで、幅が13cmで、負極集電箔と両面の負極合剤層との合計の厚みが150μmであった。
【0108】
正極は、比較例5と同様に形成した。また、本発明例2と同様のセパレータを準備した。
【0109】
次に、本発明例2と同様に正極、負極及びセパレータを巻回して、電極群100Aを作製した。次に、本発明例2と同様に、この電極群100Aを容器2に収容し、電解液を注液することで、比較例7のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0110】
(評価方法)
本発明例2、比較例5〜7のリチウムイオン二次電池について、容量及び出力について評価した。
容量は、実施例1と同様に測定した。なお、下限電圧と上限電圧との組み合わせは、2.5V−4.2Vであった。
出力は、次のようにして測定した。各電池を満充電状態としたのち、0.2、1、2、4CAの各電流値で、10秒ずつ放電した。電流値及び放電後の電圧からV−Iプロットを作成して最小二乗法で直線近似し、電圧が2.0Vとなる点まで外挿したときの電流値を算出した。このときの電流値に下限電圧(ここでは2.0V)を乗じて出力とした。
【0111】
(評価結果)
容量について、本発明例2が90(相対比)であり、比較例5が100(相対比)であり、比較例6が80(相対比)であり、比較例7が70(相対比)であった。このため、本発明例2のリチウムイオン二次電池は、相対的に活物質の量が多い負極の性能を発揮できることがわかった。
【0112】
出力について、本発明例3が80(相対比)であり、比較例5が30(相対比)であり、比較例6が100(相対比)であり、比較例7が50(相対比)であった。このため、本発明例2のリチウムイオン二次電池は、相対的に活物質の量が少ない負極の性能を発揮できることがわかった。
【0113】
以上より、本実施例によれば、複数の電極群の各々において、正極活物質及び負極活物質の構成が単一であり、複数の電極群のうちの少なくとも2つの電極群において、負極活物質の量が異なることにより、複数の負極の性能のそれぞれを十分に発揮できることを確認した。
【実施例3】
【0114】
本実施例では、正極活物質の構成が異なる少なくとも2つの電極群において、セパレータの構成が異なることの効果について調べた。
【0115】
(本発明例3)
本発明例3は、図6に示す2つの電極群10A、10Bを備えたリチウムイオン二次電池を以下のように製造した。
【0116】
まず、電極群10Aについて説明する。
正極活物質としてのLiNi0.8Co0.15Al0.05290重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック4重量%と、結着剤としてのPVDF6重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−ピロリドンを加えて正極合剤ペーストを形成した。2.0g/100cm2の正極合剤ペーストを、正極集電箔として20μmの厚さのアルミニウム箔の両面にそれぞれ塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで200kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。これにより、帯状の正極を作製した。正極の大きさは、長さが210cmで、幅が10cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが100μmであった。
【0117】
負極活物質としてグラファイト90重量%と、PVDF10重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−ピロリドンを加えて負極合剤ペーストを形成した。1.0g/100cm2の負極合剤ペーストを、負極集電箔として10μmの厚さの銅箔の両面にそれぞれ塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで100kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。これにより、帯状の負極を作製した。負極の大きさは、長さが220cmで、幅が10cmで、負極集電箔と両面の負極合剤層との合計の厚みが100μmであった。
【0118】
正極及び負極の各々に、正極タブ及び負極タブを取り付けた。
また、セパレータとして幅9cm、厚み40μmのポリオレフィン製微多孔膜を準備した。
【0119】
次に、正極、セパレータ、負極及びセパレータの順に積層し、長円筒状に巻回した。これにより、電極群10Aを作製した。
【0120】
電極群10Bは、基本的には電極群10Aと同様であったが、正極及びセパレータにおいて異なっていた。具体的には、正極活物質としてのLiMn2490重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック3重量%と、結着剤としてのPVDF7重量%とを混合し、この混合物に電極群10Aと同様の溶剤を加えて正極合剤ペーストを形成した。3.2g/100cm2の正極合剤ペーストを、正極集電箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで250kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。帯状の正極の大きさは、長さが150cmで、幅が10cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが140μmであった。
【0121】
正極及び負極の各々に、正極タブ及び負極タブを取り付けた。
また、セパレータとして幅9cm、厚み20μmのポリオレフィン製微多孔膜を準備した。
【0122】
次に、正極、セパレータ、負極及びセパレータの順に積層し、長円筒状に巻回した。これにより、電極群10Bを作製した。
【0123】
次に、本発明例1と同様に、2つの電極群10A、10Bを容器2に収容し、電解液を注液することで、本発明例3のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0124】
(比較例8)
図7に示すように、比較例8のリチウムイオン二次電池100は、2種類の正極活物質が混合された正極合剤層を有する電極群100Aを1つ備えていた点において本発明例3と異なっていた。
【0125】
具体的には、正極活物質としてのLiNi0.8Co0.15Al0.05245重量%及びLiMn2445重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック4重量%と、結着剤としてのPVDF6重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて正極合剤ペーストを形成した。2.6g/100cm2の正極合剤ペーストを、本発明例3と同様の正極集電箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで250kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。この正極の大きさは、長さが360cm、幅が10cm、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが120μmであった。
【0126】
負極の形成については、本発明例3と同様に、負極合剤ペーストを形成して、負極集電箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで100kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。この負極の大きさは、長さが370cmで、幅が10cmで、負極集電箔と両面の負極合剤層との合計の厚みが100μmであった。
【0127】
次に、本発明例3と同様に正極、負極及び厚みが40μmのセパレータを巻回して、電極群100Aを作製した。次に、本発明例3と同様に、この電極群100Aを容器2に収容し、電解液を注液することで、比較例8のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0128】
(比較例9)
比較例9のリチウムイオン二次電池は、基本的には比較例8と同様であったが、セパレータの厚みが20μmであった点において異なっていた。
【0129】
(評価方法)
本発明例3、比較例8及び9のリチウムイオン二次電池について、容量及び安全性について評価した。
容量は実施例1と同様に測定した。なお、下限電圧と上限電圧との組み合わせは、2.5V−4.2Vであった。
安全性は、満充電状態まで充電した電池の中央部に鉄製の釘を貫通させた際に、発煙・発火が起こらないかどうかを調査することにより測定した。
【0130】
(評価結果)
容量について、本発明例3が95(相対比)であり、比較例8が90(相対比)であり、比較例9が100(相対比)であった。このため、本発明例3のリチウムイオン二次電池は、正極活物質のLiNi0.8Co0.15Al0.052の性能を発揮できることがわかった。
【0131】
安全性について、本発明例3及び比較例8が良好であり、比較例9が発煙をした点で良好でなかった。このため、本発明例3のリチウムイオン二次電池は正極活物質のLiMn24の性能を発揮できることがわかった。
【0132】
また、本発明例3は、正極活物質としてLiNi0.8Co0.15Al0.052を備えた電極群10Aのセパレータの厚みは大きく、正極活物質としてLiMn24を備えた電極群10Bのセパレータの厚みは小さいため、それぞれの正極活物質の性能をより発揮することができた。
【0133】
以上より、本実施例によれば、正極活物質の構成が異なる少なくとも2つの電極群において、セパレータの構成が異なることにより、正極活物質の性能を顕著に発揮することができることを確認した。
【実施例4】
【0134】
本実施例では、正極活物質の構成が異なる少なくとも2つの電極群において、正極集電箔の構成が異なることの効果について調べた。
【0135】
(本発明例4)
本発明例4は、図8に示す3つの電極群10A、10B、10Dを備えたリチウムイオン二次電池を以下のように製造した。
【0136】
まず、電極群10A、10Dについて説明する。
正極活物質としてのLiNi0.8Co0.15Al0.05290重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック4重量%と、結着剤としてのPVDF6重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて正極合剤ペーストを形成した。1.6g/100cm2の正極合剤ペーストを、正極集電箔として30μmの厚さのアルミニウム箔の両面にそれぞれ塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで200kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。これにより、帯状の正極を作製した。正極の大きさは、長さが290cmで、幅が13cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが80μmであった。
【0137】
負極活物質としてハードカーボン90重量%と、PVDF10重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて負極合剤ペーストを形成した。0.7g/100cm2の負極合剤ペーストを、負極集電箔として10μmの厚さの銅箔の両面にそれぞれ塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで400kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。これにより、帯状の負極を作製した。負極の大きさは、長さが300cmで、幅が13cmで、負極集電箔と両面の負極合剤層との合計の厚みが80μmであった。
【0138】
正極及び負極の各々に、正極タブ及び負極タブを取り付けた。
また、本発明例1と同様のセパレータを準備した。
【0139】
次に、正極、セパレータ、負極及びセパレータの順に積層し、長円筒状に巻回した。これにより、電極群10A、10Dを作製した。
【0140】
電極群10Bは、基本的には電極群10A、10Dと同様であったが、正極及びセパレータにおいて異なっていた。具体的には、正極活物質としてのLiMn2490重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック4重量%と、結着剤としてのPVDF6重量%とを混合し、この混合物に溶剤を加えて正極合剤ペーストを形成した。この正極合剤ペーストを、正極集電箔として20μmの厚さのアルミニウム箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで250kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。帯状の正極の大きさは、長さが220cmで、幅が13cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが120μmであった。
【0141】
正極及び負極の各々に、正極タブ及び負極タブを取り付けた。
また、本発明例1と同様のセパレータを準備した。
【0142】
次に、正極、セパレータ、負極及びセパレータの順に積層し、長円筒状に巻回した。これにより、電極群10Bを作製した。
【0143】
次に、電極群10A、10Dが外部側に位置し、かつ電極群10Bが内部側に位置するように容器2に収容し、本発明例1と同様に電解液を注液することで、本発明例4のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0144】
(比較例10)
図7に示すように、比較例10のリチウムイオン二次電池100は、2種類の正極活物質が混合された正極合剤層を有する電極群100Aを1つ備えていた点において本発明例4と異なっていた。
【0145】
具体的には、正極活物質としてのLiNi0.8Co0.15Al0.05245重量%及びLiMn2445重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック4重量%と、結着剤としてのPVDF6重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて正極合剤ペーストを形成した。2.1g/100cm2の正極合剤ペーストを、正極集電箔としての厚みが30μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで250kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。この正極の大きさは、長さが740cmで、幅が13cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが100μmであった。
【0146】
負極の形成については、本発明例4と同様に、負極合剤ペーストを形成して、負極集電箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで400kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。この負極の大きさは、長さが750cmで、幅が13cmで、正極集電箔と両面の負極合剤層との合計の厚みが100μmであった。
【0147】
次に、本発明例4と同様のセパレータを準備して、本発明例4と同様に正極、負極及びセパレータを巻回して、電極群100Aを作製した。次に、本発明例4と同様に、この電極群100Aを容器2に収容し、電解液を注液することで、比較例10のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0148】
(比較例11)
比較例11のリチウムイオン二次電池は、基本的には比較例10と同様であったが、正極集電箔の厚みが20μmであった点において異なっていた。
【0149】
(評価方法)
本発明例4、比較例10及び11のリチウムイオン二次電池について、容量及び安全性について評価した。容量は、実施例1と同様に測定した。なお、下限電圧と上限電圧との組み合わせは、2.5V−4.2Vであった。安全性は、実施例3と同様に測定した。
【0150】
(評価結果)
容量について、本発明例4が95(相対比)であり、比較例10が90(相対比)であり、比較例11が100(相対比)であった。このため、本発明例4のリチウムイオン二次電池は、正極活物質のLiNi0.8Co0.15Al0.052の性能を発揮できることがわかった。
【0151】
安全性について、本発明例4及び比較例10が良好であり、比較例11が発煙をした点で良好でなかった。このため、本発明例4のリチウムイオン二次電池は正極活物質のLiMn24の性能を発揮できることがわかった。
【0152】
また、本発明例4は、正極活物質としてLiNi0.8Co0.15Al0.052を備えた電極群10A、10Dの正極集電箔の厚みは大きく、正極活物質としてLiMn24を備えた電極群10Bの正極集電箔の厚みは小さいため、それぞれの正極活物質の性能をより発揮することができた。
【0153】
以上より、本実施例によれば、正極活物質の構成が異なる少なくとも2つの電極群において、正極集電箔の構成が異なることにより、正極活物質の性能を顕著に発揮することができることを確認した。
【実施例5】
【0154】
本実施例では、電極群を3つ以上備えている場合の電極群の配置による効果について調べた。
【0155】
(本発明例5)
本発明例5は、図8に示す3つの電極群10A、10B、10Dを備えたリチウムイオン二次電池を以下のように製造した。
【0156】
まず、電極群10A、10Dについて説明する。
正極活物質としてのLiFePO486重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック7重量%と、結着剤としてのPVDF7重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて正極合剤ペーストを形成した。3.2g/100cm2の正極合剤ペーストを、正極集電箔として20μmの厚さのアルミニウム箔の両面にそれぞれ塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで500kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。これにより、帯状の正極を作製した。正極の大きさは、長さが140cmで、幅が13cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが190μmであった。
【0157】
負極活物質としてグラファイト90重量%と、PVDF10重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて負極合剤ペーストを形成した。1.5g/100cm2の負極合剤ペーストを、負極集電箔として10μmの厚さの銅箔の両面にそれぞれ塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで100kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。これにより、帯状の負極を作製した。負極の大きさは、長さが150cmで、幅が13cmで、負極集電箔と両面の負極合剤層との合計の厚みが120μmであった。
【0158】
正極及び負極の各々に、正極タブ及び負極タブを取り付けた。
また、本発明例1と同様のセパレータを準備した。
【0159】
次に、正極、セパレータ、負極及びセパレータの順に積層し、長円筒状に巻回した。これにより、電極群10A、10Dを作製した。
【0160】
電極群10Bは、基本的には電極群10A、10Dと同様であったが、正極において異なっていた。具体的には、正極活物質としてのLiNi0.8Co0.15Al0.05286重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック7重量%と、結着剤としてのPVDF7重量%とを混合し、この混合物に溶剤を加えて正極合剤ペーストを形成した。この正極合剤ペーストを、正極集電箔として20μmの厚さのアルミニウム箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで200kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。帯状の正極の大きさは、長さが160cmで、幅が13cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが160μmであった。
【0161】
正極及び負極の各々に、正極タブ及び負極タブを取り付けた。
また、本発明例1と同様のセパレータを準備した。
【0162】
次に、正極、セパレータ、負極及びセパレータの順に積層し、長円筒状に巻回した。これにより、電極群10Bを作製した。
【0163】
次に、電極群10A、10Dが外部側に位置し、かつ電極群10Bが内部側に位置するように容器2に収容し、本発明例1と同様に電解液を注液することで、本発明例5のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0164】
(比較例12)
図7に示すように、比較例12のリチウムイオン二次電池100は、2種類の正極活物質が混合された正極合剤層を有する電極群100Aを1つ備えていた点において本発明例6と異なっていた。
【0165】
具体的には、正極活物質としてのLiFePO443重量%及びLiNi0.8Co0.15Al0.05243重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック7重量%と、結着剤としてのPVDF7重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて正極合剤ペーストを形成した。3.0g/100cm2の正極合剤ペーストを、正極集電箔としての厚みが20μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで400kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。この正極の大きさは、長さが450cmで、幅が13cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが180μmであった。
【0166】
負極の形成については、本発明例5と同様に、負極合剤ペーストを形成して、負極集電箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで100kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。この負極の大きさは、長さが460cmで、幅が13cmで、負極集電箔と両面の負極合剤層との合計の厚みが110μmであった。
【0167】
次に、本発明例5と同様のセパレータを準備し、本発明例5と同様に正極、負極及びセパレータを巻回して、電極群100Aを作製した。次に、本発明例5と同様に、この電極群100Aを容器2に収容し、電解液を注液することで、比較例12のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0168】
(比較例13)
図7に示すように、比較例13のリチウムイオン二次電池100は、2種類の成分の正極活物質のそれぞれを区画した領域に形成した正極合剤層を有する電極群100Aを1つ備えていた点において本発明例5と異なっていた。
【0169】
具体的には、第1の正極活物質としてのLiFePO486重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック7重量%と、結着剤としてのPVDF7重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて第1の正極合剤ペーストを形成した。第2の正極活物質としてのLiNi0.8Co0.15Al0.05286重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック7重量%と、結着剤としてのPVDF7重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて第2の正極合剤ペーストを形成した。本発明例5と同様の負極集電箔のそれぞれの面において、半分の領域に3.2g/100cm2の第1の正極合剤ペーストを塗布し、残りの半分の領域に2.7g/100cm2の第2の正極合剤ペーストを塗布した。これを乾燥した後、ロールプレスで400kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。この負極の大きさは、長さが420cmで、幅が13cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが190μmであった。
【0170】
負極は、比較例12と同様に形成した。また、本発明例5と同様のセパレータを準備した。
【0171】
次に、本発明例5と同様に正極、負極及びセパレータを巻回して、電極群100Aを作製した。次に、本発明例5と同様に、この電極群100Aを容器2に収容し、電解液を注液することで、比較例13のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0172】
(評価方法)
本発明例5、比較例12及び13のリチウムイオン二次電池について、耐久性及び安全性について評価した。耐久性は、基本的には実施例1と同様に測定したが、45℃500サイクル試験後の容量保持率とした点において異なっていた。安全性は、満充電状態まで充電した電池の中央部近辺を丸棒冶具で押しつぶした際に、発煙・発火が起こらないかどうかを調査することにより評価した。
【0173】
(評価結果)
45℃500サイクル試験後の容量保持量について、本発明例5が80%であり、比較例12が70%であり、比較例13が30%であった。このため、本発明例5のリチウムイオン二次電池は、正極活物質のLiNi0.8Co0.15Al0.052の性能を発揮できることがわかった。
【0174】
安全性について、本発明例5及び比較例12が良好であり、比較例11は良好でなかった。このため、本発明例5のリチウムイオン二次電池は正極活物質のLiFePO4の性能を発揮できることがわかった。
【0175】
以上より、複数の電極群の各々において、正極活物質及び負極活物質の構成が単一であり、複数の電極群のうちの少なくとも2つの電極群において、正極活物質の成分が異なることにより、複数の正極活物質の性能のそれぞれを十分に発揮できることを確認した。
【0176】
さらに、本発明例5は、LiFePO4は耐熱性が低い特徴を有しているが、活物質としてLiFePO4を有する電極群10A、10Dを外部側に配置しているので、電池内部への蓄熱による影響を低減することができる。このため、本発明例5のリチウムイオン二次電池は、耐久性をより向上することができることがわかった。
【0177】
以上より、本実施例によれば、電極群を3つ以上備えている場合に、耐熱性が低い活物質を有する電極群を外部側に配置することにより、耐久性を向上できることを確認した。
【実施例6】
【0178】
本実施例では、電極群を3つ以上備えている場合の電極群の配置による効果について調べた。
【0179】
(本発明例6)
本発明例6は、図8に示す3つの電極群10A、10B、10Dを備えたリチウムイオン二次電池を以下のように製造した。
【0180】
まず、電極群10A、10Dについて説明する。
正極活物質としてのLiMn2490重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック4重量%と、結着剤としてのPVDF6重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて正極合剤ペーストを形成した。3.2g/100cm2の正極合剤ペーストを、正極集電箔として20μmの厚さのアルミニウム箔の両面にそれぞれ塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで250kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。これにより、帯状の正極を作製した。正極の大きさは、長さが110cmで、幅が10cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが140μmであった。
【0181】
負極活物質としてグラファイト92重量%と、PVDF8重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて負極合剤ペーストを形成した。1.0g/100cm2の負極合剤ペーストを、負極集電箔として10μmの厚さの銅箔の両面にそれぞれ塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで100kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。これにより、帯状の負極を作製した。負極の大きさは、長さが120cmで、幅が10cmで、負極集電箔と両面の負極合剤層との合計の厚みが100μmであった。
【0182】
正極及び負極の各々に、正極タブ及び負極タブを取り付けた。
また、セパレータとして幅が9cmで、厚みが20μmのポリオレフィン製微多孔膜を準備した。
【0183】
次に、正極、セパレータ、負極及びセパレータの順に積層し、長円筒状に巻回した。これにより、電極群10A、10Dを作製した。
【0184】
電極群10Bは、基本的には電極群10A、10Dと同様であったが、正極及びセパレータにおいて異なっていた。具体的には、正極活物質としてのLiNi0.8Co0.15Al0.05290重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック4重量%と、結着剤としてのPVDF6重量%とを混合し、この混合物に溶剤を加えて正極合剤ペーストを形成した。この正極合剤ペーストを、正極集電箔として20μmの厚さのN−メチルピロリドンの両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで200kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。帯状の正極の大きさは、長さが140cmで、幅が10cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが100μmであった。
【0185】
また、セパレータとして幅が9cmで、厚みが40μmのポリオレフィン製微多孔膜を準備した。
【0186】
次に、正極、セパレータ、負極及びセパレータの順に積層し、長円筒状に巻回した。これにより、電極群10Bを作製した。
【0187】
次に、電極群10A、10Dが外部側に位置し、かつ電極群10Bが内部側に位置するように容器2に収容し、本発明例1と同様に電解液を注液することで、本発明例6のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0188】
(比較例14)
図7に示すように、比較例14のリチウムイオン二次電池100は、2種類の正極活物質が混合された正極合剤層を有する電極群100Aを1つ備えていた点において本発明例6と異なっていた。
【0189】
具体的には、正極活物質としてのLiMn2445重量%及びLiNi0.8Co0.15Al0.05245重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック4重量%と、結着剤としてのPVDF6重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて正極合剤ペーストを形成した。2.6g/100cm2の正極合剤ペーストを、正極集電箔としての厚みが20μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで250kgh/cmの負荷を印加して圧縮成型した。この正極の大きさは、長さが360cmで、幅が10cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが120μmであった。
【0190】
負極の形成については、本発明例6と同様に、負極合剤ペーストを形成して、負極集電箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで100kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。この負極の大きさは、長さが370cmで、幅が10cmで、負極集電箔と両面の負極合剤層との合計の厚みが100μmであった。
【0191】
また、セパレータとして幅が9cmで、厚みが40μmのポリオレフィン製微多孔膜を準備した。
【0192】
次に、本発明例6と同様に正極、負極及びセパレータを巻回して、電極群100Aを作製した。次に、本発明例6と同様に、この電極群100Aを容器2に収容し、電解液を注液することで、比較例14のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0193】
(比較例15)
図7に示すように、比較例15のリチウムイオン二次電池100は、2種類の成分の正極活物質のそれぞれを区画した領域に形成した正極合剤層を有する電極群100Aを1つ備えていた点において本発明例6と異なっていた。
【0194】
具体的には、第1の正極活物質としてのLiMn2490重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック4重量%と、結着剤としてのPVDF6重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて第1の正極合剤ペーストを形成した。第2の正極活物質としてのLiNi0.8Co0.15Al0.05290重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック4重量%と、結着剤としてのPVDF6重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−ピロリドンを加えて第2の正極合剤ペーストを形成した。本発明例6と同様の正極集電箔のそれぞれの面において、半分の領域に3.2g/100cm2の第1の正極合剤ペーストを塗布し、残りの半分の領域に2.0g/100cm2の第2の正極合剤ペーストを塗布した。これを乾燥した後、ロールプレスで250kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。この負極の大きさは、長さが330cmで、幅が10cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが140μmであった。
【0195】
負極は、比較例14と同様に形成した。また、比較例14と同様のセパレータを準備した。
【0196】
次に、本発明例6と同様に正極、負極及びセパレータを巻回して、電極群100Aを作製した。次に、本発明例6と同様に、この電極群100Aを容器2に収容し、電解液を注液することで、比較例15のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0197】
(評価方法)
本発明例6、比較例14及び15のリチウムイオン二次電池について、耐久性及び安全性について評価した。耐久性は、基本的には実施例1と同様であったが、60℃300サイクル試験後の容量保持率とした点において異なっていた。安全性は、実施例5と同様に測定した。
【0198】
(評価結果)
60℃300サイクル試験後の容量保持量について、本発明例6が60%であり、比較例14が50%であり、比較例15が30%であった。このため、本発明例6のリチウムイオン二次電池は、正極活物質のLiNi0.8Co0.15Al0.052の性能を発揮できることがわかった。
【0199】
安全性について、本発明例6及び比較例14が良好であり、比較例15は良好でなかった。このため、本発明例6のリチウムイオン二次電池は正極活物質のLiMn24の性能を発揮できることがわかった。
【0200】
また、本発明例6は、LiMn24は耐熱性が低い性能を有しているが、活物質としてLiMn24を有する電極群10A、10Dを外部側に配置しているので、内部への蓄熱による影響を低減することができる。このため、本発明例6のリチウムイオン二次電池は、耐久性をより向上することができることがわかった。
【0201】
以上より、本実施例によれば、電極群を3つ以上備えている場合に、耐熱性が低い活物質を有する電極群を外部側に配置することにより、耐熱性をより向上できることを確認した。
【実施例7】
【0202】
本実施例では、正極活物質の構成が異なる少なくとも2つの電極群において、セパレータの構成が異なることの効果について調べた。
【0203】
(本発明例7)
本発明例7は、図6に示す2つの電極群10A、10Bを備えたリチウムイオン二次電池を以下のように製造した。
【0204】
まず、電極群10Aについて説明する。
正極活物質としてのLiNi1/3Mn1/3Co1/3290重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック4重量%と、結着剤としてのPVDF6重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−ピロリドンを加えて正極合剤ペーストを形成した。2.0g/100cm2の正極合剤ペーストを、正極集電箔として20μmの厚さのアルミニウム箔の両面にそれぞれ塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで200kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。これにより、帯状の正極を作製した。正極の大きさは、長さが210cmで、幅が10cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが100μmであった。
【0205】
負極活物質としてグラファイト90重量%と、PVDF10重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−ピロリドンを加えて負極合剤ペーストを形成した。1.0g/100cm2の負極合剤ペーストを、負極集電箔として10μmの厚さの銅箔の両面にそれぞれ塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで100kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。これにより、帯状の負極を作製した。負極の大きさは、長さが220cmで、幅が10cmで、負極集電箔と両面の負極合剤層との合計の厚みが100μmであった。
【0206】
正極及び負極の各々に、正極タブ及び負極タブを取り付けた。
また、セパレータとして幅9cm、厚み40μmのポリオレフィン製微多孔膜を準備した。
【0207】
次に、正極、セパレータ、負極及びセパレータの順に積層し、長円筒状に巻回した。これにより、電極群10Aを作製した。
【0208】
電極群10Bは、基本的には電極群10Aと同様であったが、正極及びセパレータにおいて異なっていた。具体的には、正極活物質としてのLiMn2490重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック3重量%と、結着剤としてのPVDF7重量%とを混合し、この混合物に電極群10Aと同様の溶剤を加えて正極合剤ペーストを形成した。3.2g/100cm2の正極合剤ペーストを、正極集電箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで250kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。帯状の正極の大きさは、長さが150cmで、幅が10cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが140μmであった。
【0209】
正極及び負極の各々に、正極タブ及び負極タブを取り付けた。
また、セパレータとして幅9cm、厚み20μmのポリオレフィン製微多孔膜を準備した。
【0210】
次に、正極、セパレータ、負極及びセパレータの順に積層し、長円筒状に巻回した。これにより、電極群10Bを作製した。
【0211】
次に、本発明例1と同様に、2つの電極群10A、10Bを容器2に収容し、電解液を注液することで、本発明例7のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0212】
(比較例16)
図7に示すように、比較例16のリチウムイオン二次電池100は、2種類の正極活物質が混合された正極合剤層を有する電極群100Aを1つ備えていた点において本発明例7と異なっていた。
【0213】
具体的には、正極活物質としてのLiNi1/3Mn1/3Co1/3245重量%及びLiMn2445重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック4重量%と、結着剤としてのPVDF6重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて正極合剤ペーストを形成した。2.6g/100cm2の正極合剤ペーストを、本発明例3と同様の正極集電箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで250kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。この正極の大きさは、長さが360cm、幅が10cm、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが120μmであった。
【0214】
負極の形成については、本発明例7と同様に、負極合剤ペーストを形成して、負極集電箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで100kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。この負極の大きさは、長さが370cmで、幅が10cmで、負極集電箔と両面の負極合剤層との合計の厚みが100μmであった。
【0215】
次に、本発明例7と同様に正極、負極及び厚みが40μmのセパレータを巻回して、電極群100Aを作製した。次に、本発明例7と同様に、この電極群100Aを容器2に収容し、電解液を注液することで、比較例16のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0216】
(比較例17)
比較例17のリチウムイオン二次電池は、基本的には比較例16と同様であったが、セパレータの厚みが20μmであった点において異なっていた。
【0217】
(評価方法)
本発明例7、比較例16及び17のリチウムイオン二次電池について、容量及び安全性について評価した。
容量は実施例1と同様に測定した。なお、下限電圧と上限電圧との組み合わせは、2.5V−4.2Vであった。
安全性は、実施例3と同様に測定した。
【0218】
(評価結果)
容量について、本発明例7が95(相対比)であり、比較例16が90(相対比)であり、比較例17が100(相対比)であった。このため、本発明例7のリチウムイオン二次電池は、正極活物質のLiNi1/3Mn1/3Co1/32の性能を発揮できることがわかった。
【0219】
安全性について、本発明例7及び比較例16が良好であり、比較例17が発煙をした点で良好でなかった。このため、本発明例7のリチウムイオン二次電池は正極活物質のLiMn24の性能を発揮できることがわかった。
【0220】
また、本発明例7は、正極活物質としてLiNi1/3Mn1/3Co1/32を備えた電極群10Aのセパレータの厚みは大きく、正極活物質としてLiMn24を備えた電極群10Bのセパレータの厚みは小さいため、それぞれの正極活物質の性能をより発揮することができた。
【0221】
以上より、本実施例によれば、正極活物質の構成が異なる少なくとも2つの電極群において、セパレータの構成が異なることにより、正極活物質の性能を顕著に発揮することができることを確認した。
【実施例8】
【0222】
本実施例では、正極活物質の構成が異なる少なくとも2つの電極群において、正極集電箔の構成が異なることの効果について調べた。
【0223】
(本発明例8)
本発明例8は、図8に示す3つの電極群10A、10B、10Dを備えたリチウムイオン二次電池を以下のように製造した。
【0224】
まず、電極群10A、10Dについて説明する。
正極活物質としてのLiNi1/3Mn1/3Co1/3290重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック4重量%と、結着剤としてのPVDF6重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて正極合剤ペーストを形成した。1.6g/100cm2の正極合剤ペーストを、正極集電箔として30μmの厚さのアルミニウム箔の両面にそれぞれ塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで200kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。これにより、帯状の正極を作製した。正極の大きさは、長さが290cmで、幅が13cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが80μmであった。
【0225】
負極活物質としてハードカーボン90重量%と、PVDF10重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて負極合剤ペーストを形成した。0.7g/100cm2の負極合剤ペーストを、負極集電箔として10μmの厚さの銅箔の両面にそれぞれ塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで400kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。これにより、帯状の負極を作製した。負極の大きさは、長さが300cmで、幅が13cmで、負極集電箔と両面の負極合剤層との合計の厚みが80μmであった。
【0226】
正極及び負極の各々に、正極タブ及び負極タブを取り付けた。
また、本発明例1と同様のセパレータを準備した。
【0227】
次に、正極、セパレータ、負極及びセパレータの順に積層し、長円筒状に巻回した。これにより、電極群10A、10Dを作製した。
【0228】
電極群10Bは、基本的には電極群10A、10Dと同様であったが、正極及びセパレータにおいて異なっていた。具体的には、正極活物質としてのLiMn2490重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック4重量%と、結着剤としてのPVDF6重量%とを混合し、この混合物に溶剤を加えて正極合剤ペーストを形成した。この正極合剤ペーストを、正極集電箔として20μmの厚さのアルミニウム箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで250kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。帯状の正極の大きさは、長さが220cmで、幅が13cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが120μmであった。
【0229】
正極及び負極の各々に、正極タブ及び負極タブを取り付けた。
また、本発明例1と同様のセパレータを準備した。
【0230】
次に、正極、セパレータ、負極及びセパレータの順に積層し、長円筒状に巻回した。これにより、電極群10Bを作製した。
【0231】
次に、電極群10A、10Dが外部側に位置し、かつ電極群10Bが内部側に位置するように容器2に収容し、本発明例1と同様に電解液を注液することで、本発明例8のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0232】
(比較例18)
図7に示すように、比較例18のリチウムイオン二次電池100は、2種類の正極活物質が混合された正極合剤層を有する電極群100Aを1つ備えていた点において本発明例8と異なっていた。
【0233】
具体的には、正極活物質としてのLiNi1/3Mn1/3Co1/3245重量%及びLiMn2445重量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック4重量%と、結着剤としてのPVDF6重量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて正極合剤ペーストを形成した。2.1g/100cm2の正極合剤ペーストを、正極集電箔としての厚みが30μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで250kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。この正極の大きさは、長さが740cmで、幅が13cmで、正極集電箔と両面の正極合剤層との合計の厚みが100μmであった。
【0234】
負極の形成については、本発明例8と同様に、負極合剤ペーストを形成して、負極集電箔の両面に塗布し、これを乾燥した後、ロールプレスで400kgf/cmの負荷を印加して圧縮成型した。この負極の大きさは、長さが750cmで、幅が13cmで、正極集電箔と両面の負極合剤層との合計の厚みが100μmであった。
【0235】
次に、本発明例8と同様のセパレータを準備して、本発明例8と同様に正極、負極及びセパレータを巻回して、電極群100Aを作製した。次に、本発明例8と同様に、この電極群100Aを容器2に収容し、電解液を注液することで、比較例18のリチウムイオン二次電池を製造した。
【0236】
(比較例19)
比較例19のリチウムイオン二次電池は、基本的には比較例18と同様であったが、正極集電箔の厚みが20μmであった点において異なっていた。
【0237】
(評価方法)
本発明例8、比較例18及び19のリチウムイオン二次電池について、容量及び安全性について評価した。容量は、実施例1と同様に測定した。なお、下限電圧と上限電圧との組み合わせは、2.5V−4.2Vであった。安全性は、実施例3と同様に測定した。
【0238】
(評価結果)
容量について、本発明例8が95(相対比)であり、比較例18が90(相対比)であり、比較例19が100(相対比)であった。このため、本発明例8のリチウムイオン二次電池は、正極活物質のLiNi1/3Mn1/3Co1/32の性能を発揮できることがわかった。
【0239】
安全性について、本発明例8及び比較例18が良好であり、比較例19が発煙をした点で良好でなかった。このため、本発明例8のリチウムイオン二次電池は正極活物質のLiMn24の性能を発揮できることがわかった。
【0240】
また、本発明例8は、正極活物質としてLiNi1/3Mn1/3Co1/32を備えた電極群10A、10Dの正極集電箔の厚みは大きく、正極活物質としてLiMn24を備えた電極群10Bの正極集電箔の厚みは小さいため、それぞれの正極活物質の性能をより発揮することができた。
【0241】
以上より、本実施例によれば、正極活物質の構成が異なる少なくとも2つの電極群において、正極集電箔の構成が異なることにより、正極活物質の性能を顕著に発揮することができることを確認した。
【0242】
以上のように本発明の実施の形態及び実施例について説明を行なったが、各実施の形態及び実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0243】
1 非水電解質二次電池、2 容器、3 本体部、4 蓋、5 電解液注入部、10A,10B,10C,10D 電極群、11A,11B、11C,11D 正極、11A1,11B1,11C1,11D1 正極集電箔、11A2,11B2,11C2,11D2 正極合剤層、12A,12B,12C,12D セパレータ、13A,13B,13C,13D 負極、13A1,13B1,13C1,13D1 負極集電箔、13A2,13B2,13C2,13D2 負極合剤層、21 正極端子、22 負極端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に並列に接続された複数の電極群を備え、
前記複数の電極群の各々は、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、前記正極及び前記負極の間に配置されたセパレータとを含み、
前記複数の電極群の各々において、前記正極活物質及び前記負極活物質の構成が単一であり、
前記複数の電極群のうちの少なくとも2つの電極群において、前記正極活物質及び前記負極活物質の少なくとも一方の構成が異なる、蓄電素子。
【請求項2】
前記少なくとも2つの電極群において、前記正極活物質及び前記負極活物質の少なくとも一方の成分が異なる、請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
前記電極群を3つ以上備え、
前記複数の電極群のうちの、相対的に外部側に配置される電極群と、相対的に内部側に配置される電極群とにおいて、前記正極活物質及び前記負極活物質の少なくとも一方の構成が異なる、請求項1または2に記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記正極は、正極基材と、前記正極基材に形成され、かつ前記正極活物質と、導電助剤と、正極バインダとを有する正極合剤層とを含み、
前記負極は、負極基材と、前記負極基材に形成され、かつ前記負極活物質と、負極バインダとを有する負極合剤層とを含み、
前記少なくとも2つの電極群において、前記セパレータ、前記正極基材、前記導電助剤、前記正極バインダ、前記負極基材及び前記負極バインダの少なくとも1つの構成が異なる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項5】
前記少なくとも2つの電極群のうちの少なくとも1つの電極群の前記負極活物質は結晶質炭素であり、残部の電極群のうちの少なくとも1つの電極群の前記負極活物質は非晶質炭素である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項6】
前記少なくとも2つの電極群のうちの少なくとも1つの電極群において、前記正極活物質は、LiFePO4、LiaNixMnyCo(1-x-y)2(0≦a≦1.1、0<x<1、0<y<1、x+y<1)及びLiaNixCoyAlzb2(0.3≦a≦1.05、0.7≦x≦0.87、0.1≦y≦0.27、0.03≦z≦0.1、0≦b≦0.1、MはNi、Co及びAlを除く金属元素から選択される少なくとも1種)からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載の蓄電素子。
【請求項7】
前記少なくとも2つの電極群のうちの少なくとも1つの電極群の前記正極活物質はLiaNixMnyCo(1-x-y)2(0≦a≦1.1、0<x<1、0<y<1、x+y<1)であり、残部の電極群のうちの少なくとも1つの電極群の前記正極活物質はLiMn24である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓄電素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−77529(P2013−77529A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218306(P2011−218306)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】