説明

蓋材

【課題】油染みを防止できると共に、印刷インキの溶剤等に対するバリア性に優れてインキ臭気の転移や別製品の臭気の転移を防止できて、しかも、デッドホールド性に優れる蓋材を提供すること。
【解決手段】紙層11と多層の樹脂層12とを積層して蓋材1を構成する。多層樹脂層12のうち前記容器本体の上端開口部に接する樹脂層がヒートシール性樹脂層122であり、かつ、少なくとも1層がバリア性樹脂層121である。そして、紙層の坪量が90g/mm以上であると共に、バリア性樹脂層121がAPET層、共重合PET層、又はEVOH層から成り、このバリア性樹脂層の厚さが2〜5μmである。APET層、共重合PET層、又はEVOH層はバリア性に優れると共に、結晶性が低く内部応力が小さく、しかもその厚みが薄く、紙層の坪量が大きいから、デッドホールド性にも優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用カップ型容器の熱封緘性蓋材に関し、更に詳しくは、構成材料からアルミニウム箔などの金属を除き、紙と樹脂を主とする材料で構成した蓋材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食品用カップ型容器の蓋材としては、例えば、紙/ポリエチレン樹脂層/アルミニウム箔/ポリエチレン樹脂層/ヒートシール性樹脂層の積層構成からなる熱封緘性蓋材が一般的に使用されている。この構成の蓋材には、アルミニウム箔が、その剛性、塑性変形性、或いはカール防止などの点から用いられている。
【0003】
また、アルミニウム箔を使用しない構成の蓋材では、例えば、紙/遮光性インキ層/樹脂フィルム層/ヒートシール性樹脂層のような積層構成のものが知られている(特許文献1)。
【0004】
上述したように、アルミニウム箔を用いた構成の蓋材は、アルミニウム箔の特性である剛性、塑性変形性によりカールの発生を少なくできる。また、この蓋材が熱封緘性蓋材としてカップ型容器に取り付けられ、収容された食品を食するに際し、蓋材の一部分を捲り上げるように開いてからお湯を差し、そして蓋材を閉じて容器内の食品を蒸らしてから食する商品もある。この商品での蓋材にアルミニウム箔が層構成の一部として用いられていることで、注湯時の蓋材の部分的な開口性およびそれを戻した時の再封性に優れるなどの長所を有する。
【0005】
しかし、その反面、商品製造ラインでの内容物充填後の金属探知機による金属異物の混入検査ができず、商品購入者側でも、注湯による調理法以外に最近注目されている電子レンジ調理加熱ができない。そして、蓋材の製造コストも割高となり、使用後の廃棄性についても、焼却では燃えかすが残り、埋め立てでは分解しないなどの問題があった。
【0006】
また、後者のアルミニウム箔を使用しない構成の蓋材は、アルミニウム箔の使用による欠点は解消されるものの、逆に、アルミニウム箔の使用による長所が失われ、カールが発生し易くなると共に、気体成分の遮断性(バリア性)に乏しいことから、例えば、遮光性インキ層の臭気が内容物に転移したり、製品販売時に隣接する別製品の臭気が容器内の内容物に転移することがあった。また、内容物が油揚げ調理したものである場合には、同様の理由から、蓋材に油染みが発生することがあった。
【0007】
これに対し、前記樹脂フィルム層として、ポリエステルフィルムを使用して、紙/遮光性インキ層/2軸延伸ポリエステルフィルム層/ヒートシール性樹脂層の積層構成とした蓋材も知られている(特許文献2)。
【0008】
この蓋材では、2軸延伸ポリエステルフィルム層がバリア性に優れるため、インキ臭気の転移や隣接する別製品の臭気の転移を防止することができる。しかしながら、この蓋材は加工が複雑でコストが高くなると共に、2軸延伸ポリエステルフィルム層は腰が強いため、蓋材の反発力が高まり、この蓋材を開封したとき、その開封状態を維持する性質(デッドホールド性)が低いという技術的問題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−310273号公報
【特許文献2】特開平2003−137332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、油染みを防止できると共に、前記バリア性に優れてインキ臭気の転移や別製品の臭気の転移を防止できて、しかも、デッドホールド性に優れる蓋材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、請求項1に記載の発明は、容器本体の上端開口部を密封する蓋材において、
紙層と多層の樹脂層とを積層して構成される積層体であって、かつ、金属層を含まない積層体で構成され、
前記多層樹脂層の総厚みが30〜50μmであり、
多層の前記樹脂層のうち前記容器本体の上端開口部に接する樹脂層がヒートシール性樹脂層であり、かつ、これら多層の樹脂層のうち少なくとも1層がバリア性樹脂層であり、
前記紙層の坪量が90g/mm以上であると共に、前記バリア性樹脂層がAPET層、共重合PET層、又はEVOH層から成り、このバリア性樹脂層の厚さが2〜5μmである、
ことを特徴とする蓋材である。
【0012】
この発明においては、APET層、共重合PET層、又はEVOH層から成るバリア性樹脂層が、極めて高い気体遮断性(バリア性)を有することから、インキ臭気の転移や別製品の臭気の転移を防止することができる。これらバリア性樹脂層は、後述する試験例1〜3に示すように、2μmの厚みがあれば、十分なバリア性を発揮する。なお、APETとは、アモルファス(非結晶)なポリエステルのことであり、共重合PETとは、エチレングリコールとテレフタル酸に加えて、第三成分として多価アルコール又は多塩基酸をモノマーとして共重合させて得られたポリエステルである。また、EVOHはエチレンとビニルアルコールの共重合体を意味する。
【0013】
これらAPET層、共重合PET層、又はEVOH層は、いずれも結晶性が低いことから、その内部応力が小さく、このため、蓋材の端部を容器本体の上端開口部から引き剥がし折り曲げて開封したとき、この蓋材は元の平坦な状態に戻ることなく、折り曲げた形状をそのまま保持することができる。すなわち、デッドホールド性に優れている。
【0014】
なお、バリア性樹脂層として、これらAPET層、共重合PET層、又はEVOH層を使用した場合であっても、その厚みが厚い場合には、デッドホールド性に劣る結果となる。例えば、後述する試験例7から分かるように、バリア性樹脂層が10μmの場合にはデッドホールド性が劣る。これに対し、バリア性樹脂層が5μmの場合には優れたデッドホールド性を示す(試験例2参照)。
【0015】
また、バリア性樹脂層が5μm以下であっても、紙層として坪量が小さい紙を使用すると、優れたデッドホールド性を得ることができない(試験例5参照)。これに対し、請求項1記載の発明においては、坪量90g/mm以上の紙層を使用しているため、優れたデッドホールド性を示すことができる。
【0016】
また、前記多層樹脂層の総厚みは50μm以下である。多層樹脂層が厚いと、たとえバリア性樹脂層が5μm以下で紙層の坪量が90〜130g/mmであっても、充分なデッドホールド性を得ることができない。例えば、後述する試験例6は多層樹脂層の総厚みが60μmであり、この場合、デッドホールド性に劣っている。
【0017】
次に、請求項2に記載の発明は、開封時の折り曲げ適性とデッドホールド性とを共に充足させたもので、前記紙層が片面コート紙であり、前記紙層の坪量に対しコート剤の塗布量が20〜30質量%であることを特徴とする請求項1に記載の蓋材である。
【0018】
コート剤の塗布量が20質量%に満たない場合には、紙繊維の影響が大きく、蓋材開封時のデッドホールド性が低下する。他方、30質量%を越える場合には、コート層の硬さにより折り曲げ適性が得られず、コート層が片面に偏在するからフラット性も向上しない。これに対し、コート剤の塗布量を20〜30質量%にすることで、適度な折り曲げ適性、デッドホールド性、製品のフラット性が得られるのである。
【0019】
次に、請求項3に記載の発明は、前記多層樹脂層が共押し出し成形された多層フィルムから成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓋材である。この発明によれば、一体に共押し出し成形された多層樹脂層を使用するから、この多層樹脂層を紙層に接着することによって、容易かつ安価に蓋材を製造することができる。
【0020】
次に、請求項4に記載の発明は、容器に接着するヒートシール樹脂層の材質を特定したもので、すなわち、前記ヒートシール性樹脂層がポリオレフィン樹脂又はオレフィンから成る構成部分と酸性基を有する構成部分とを有する樹脂から成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蓋材である。なお、ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンが例示できる。また、オレフィンから成る構成部分と酸性基を有する構成部分とを有する樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メタアクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)等が例示できる。
【0021】
なお、密封する容器がポリスチレン製である場合には、ヒートシール樹脂層としてタッキファイアを添加したEMAAが好ましく使用できる。この場合、ポリスチレン製容器の上端開口部にヒートシールした蓋材を引き剥がすと、蓋材はポリスチレン製容器の上端開口部とヒートシール性樹脂層との境界面から界面剥離する。
【0022】
また、密封する容器が紙基材の内面にポリエチレンを積層したものであれば、ヒートシール樹脂層としてポリエチレンを主成分としてこれにポリブチレンを添加した樹脂組成物が好ましく使用できる。この場合には、容器の上端開口部にヒートシールした蓋材を引き剥がすと、ヒートシール樹脂層が凝集破壊して蓋材が引き剥がされる。
【0023】
次に、請求項5に記載の発明は、前記紙層と前記多層樹脂層との間に遮光性インキ層を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の蓋材である。遮光性インキ層は前記紙層に印刷してもよいし、前記多層樹脂層に印刷してもよい。すなわち、前記紙層に遮光性インキ層を印刷形成した後、接着剤を使用して前記多層樹脂層を積層して蓋材を製造することができる。また、前記多層樹脂層に遮光性インキ層を印刷形成した後、接着剤を使用して前記紙層を積層して蓋材を製造することも可能である。遮光性インキ層としては、黒色インキが好ましく使用できるが、黒色インキと白色インキとを重ね刷りして、多層構造の遮光性インキ層とすることも可能である。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明の蓋材は、紙層として坪量90g/mm以上の紙を使用し、多層樹脂層中に結晶性の低いバリア性樹脂層を有し、しかも、このバリア性樹脂層の厚さが2〜5μmで、しかも総厚みが30〜50μmであるから、インキ臭気の転移や別製品の臭気の転移を防止できて、しかも、デッドホールド性に優れるという性質を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例に係る蓋材の断面図
【図2】本発明の他の実施例に係る蓋材の断面図
【図3】本発明の実施例に係る蓋材で密封した容器の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、図面を参照して本発明を説明する。
【0027】
本発明の蓋材1は、紙層11と多層の樹脂層12とを必須の構成材料とする積層体から構成されるもので、金属異物の混入の有無を検査可能とするため、アルミニウム箔などの金属層を含まない。なお、この他、図1に示すように、紙層11と多層樹脂層12との間に遮光性インキ層13を備えることが望ましい。また、紙層11の表面に、図示しない印刷絵柄層を設けることもできる。
【0028】
また、図3の使用状態を示す斜視図に示すように、本発明の蓋材1は、容器本体2の上端開口部周縁のフランジ2aにヒートシールして、この開口部を密封するものである。このため、前記多層樹脂層12のうち、前記フランジ2aに接する樹脂層122、すなわち、もっとも外面に位置する樹脂層122は前記フランジ2aにヒートシール可能な樹脂である必要がある。また、本発明の蓋材1は、開封用タブ1aを摘み引き剥がして折り曲げ開封できる必要があり、このため、前記ヒートシール性樹脂層122は、この程度の力でフランジ2aから引き剥がすことのできるイージーピール性を有している必要がある。このようなイージーピール性を有するヒートシール性樹脂層122としては、ポリオレフィン樹脂又はオレフィンから成る構成部分と酸性基を有する構成部分とを有する樹脂が使用できる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)やポリプロピレン樹脂(PP)が例示できる。また、オレフィンから成る構成部分と酸性基を有する構成部分とを有する樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂(EAA)が例示できる。
【0029】
次に、前記多層樹脂層12は、前記ヒートシール性樹脂層122の他に、遮光性インキ層13中の溶剤蒸気や隣接する別製品の臭気などの遮断性に優れるバリア性樹脂層121を備える必要がある。また、このバリア性樹脂層121は、折り曲げ開封したとき元の平坦な状態に戻ることなく、折り曲げた形状をそのまま保持する性質(デッドホールド性)を要することから、APET層、共重合PET層、又はEVOH層のいずれかで構成される必要がある。これらAPET層、共重合PET層、又はEVOH層はいずれも、いずれも結晶性が低いことから、その内部応力が小さく、このため、デッドホールド性に優れている。
【0030】
なお、これらAPET層、共重合PET層、又はEVOH層のいずれかをバリア性樹脂層121として使用した場合であっても、その厚みが厚すぎる場合には、デッドホールド性が損なわれる。また、その厚みが薄すぎる場合にはバリア性が不足する。その適正厚みは2〜5μmである。
【0031】
次に、前記多層樹脂層12は、前記ヒートシール性樹脂層122及びバリア性樹脂層121に加えて、その他の樹脂層123を含むものであってもよい。例えば、低密度ポリエチレンなどのポリオレフィン層である。その層構成としては、例えば、紙層11側から順に、「ポリオレフィン123/バリア性樹脂層121/ヒートシール性樹脂層122」を積層したものが例示できる(図2参照)。もちろん、「バリア性樹脂層121/ポリオレフィン123/ヒートシール性樹脂層122」の順に積層したものであってもよい。
【0032】
なお、多層樹脂層12がヒートシール性樹脂層122及びバリア性樹脂層121の2層から構成される場合、あるいは、これに加えてその他の層を有する3層以上の樹脂層から構成される場合のいずれの場合であっても、この多層樹脂層12の総厚みが厚すぎる場合には、デッドホールド性が損なわれることがある。この理由から、多層樹脂層12の総厚みは30〜50μmであることが必要である。
【0033】
この多層樹脂層12を構成する各樹脂層は、接着剤や接着性樹脂層を介して接着積層することができる。望ましくは、共押し出し成形により一体にフィルム状に形成する方法である。こうしてフィルム状に一体に積層された多層樹脂層12は、接着剤を使用して紙層11の遮光性インキ層13面に接着すればよい。また、いわゆるサンドラミネーションによって多層樹脂層12と紙層11とを積層してもよい。すなわち、多層樹脂層12と紙層11の間に溶融した樹脂を押し出し、この溶融樹脂によって積層する方法である。
【0034】
次に、バリア性樹脂層121の厚みが2〜5μmであっても、紙層11の坪量が小さいと、優れたデッドホールド性を得ることができない。このため、紙層11としては坪量が90g/mm以上のものを使用する必要がある。なお、坪量が大きすぎると、容器本体2に対するヒートシールに時間を要し、紙の層間強度なども低下傾向となるため、130g/mm以下であることが望ましい。
【0035】
坪量90〜130g/mmの紙層11としては、片面コート紙が好ましく使用できる。例えば前記紙層11の坪量に対しコート剤の塗布量が20〜30質量%である片面コート紙である。20%未満の場合は、コート層積層よる効果が十分に発揮されず、30%を超える場合は、コート層による過剰な剛性が付与されてしまう為、デッドホールド性を低減させるので好ましくない。
【0036】
紙層11を構成する片面コート紙のコート剤は顔料成分と樹脂成分からなり、顔料成分としては、カオリン、重炭、樹脂成分としてはSBR(スチレンブタジエンラバー)、でんぷんなどを主成分として使用することができる。これらの質量比が、顔料成分/樹脂成分=90/10〜60/40の範囲内であり、且つ、主要な顔料成分としてカオリンを顔料成分中の70%以上含有し、主要な樹脂成分としてSBRを樹脂成分中の50%以上含有している。このようなコート剤をコートする方法としては、エアナイフ法やブレード法などにより片面塗工紙にする紙材料の外面側(片面側)にコートすることができる。
【0037】
また、遮光性インキ層13は、紙層11に印刷することもできるし、多層樹脂層12に印刷することもできる。遮光性インキ層としては、黒色インキが好ましく使用できるが、黒色インキと白色インキとを重ね刷りして、多層構造の遮光性インキ層とすることも可能である。
【0038】
本発明に係る蓋材1は、こうして紙層11と多層樹脂層12とを積層して得られた積層体を、適宜形状に打ち抜いて製造できる。例えば、図3に示すように、容器本体2の上端開口部の形状と略同一で、その一部に開封用タブ1aを設けた形状である。
【実施例】
【0039】
次に、試験例に基づいて本発明を説明する。試験例1〜3は本発明に係る蓋材を使用したものである。試験例4は、バリア性樹脂層の代わりに高密度ポリエチレン(HDPE)を用いた例であり、試験例5は、坪量90g/mm以上の紙の代わりに坪量80g/mmの片面アート紙を使用した例である。また、試験例6は、多層樹脂層の総厚みを60μmとした例であり、試験例7はバリア性樹脂層の厚みを10μmとした例である。
【0040】
(試験例1)
紙層として、坪量105g/mmの片面コート紙を使用した。この片面コート紙は、坪量80g/mの原紙に対し、顔料成分であるカオリン75/重炭25/樹脂成分であるSBR15/でんぷん3の質量比(75:25:15:3)の各成分を固形分として含む水系のコート剤を、二回に分けてブレード法で合計25g/mで塗工して得たものである。そして、この紙層の表面に絵柄印刷層を印刷し、また、その裏面に遮光性インキ層を印刷した。
【0041】
多層樹脂層としては、「LDPE/tie/共重合PET/tie/ヒートシール性樹脂」から成る5層共押し出しフィルムを使用した。なお、ヒートシール性樹脂は、タッキファイアを添加したEMAAを使用した。また、「tie」は接着性樹脂を意味している。この多層樹脂層の総厚みは30μm、共重合PETの厚みは3μmである。
【0042】
次に、ノンソルベント接着剤を使用して、紙層の遮光性インキ層側に多層樹脂層に接着した。そして、この積層体を打ち抜いて蓋材とした。
【0043】
(試験例2)
紙層としては、試験例1と同じものを使用した。絵柄印刷層及び遮光性インキ層も試験例1と同じである。
【0044】
多層樹脂層としては、「tie/APET/tie/ヒートシール性樹脂」から成る4層共押し出しフィルムを使用した。なお、ヒートシール性樹脂は、ポリエチレンを主成分としてこれにポリブチレンを添加した樹脂組成物を使用した。また、この多層樹脂層の総厚みは30μm、APETの厚みは5μmである。
【0045】
次に、紙層と多層樹脂層の間に溶融した低密度ポリエチレンを押し出し、この溶融ポリエチレンを接着性樹脂として紙層の遮光性インキ層側に多層樹脂層に接着した。そして、この積層体を打ち抜いて蓋材とした。
【0046】
(試験例3)
紙層としては、試験例1と同じものを使用した。絵柄印刷層及び遮光性インキ層も試験例1と同じである。
【0047】
多層樹脂層としては、「EVOH/tie/ヒートシール性樹脂」から成る3層共押し出しフィルムを使用した。ヒートシール性樹脂は、タッキファイアを添加したEMAAである。この多層樹脂層の総厚みは25μm、EVOHの厚みは2μmである。
【0048】
次に、ノンソルベント接着剤を使用して、紙層の遮光性インキ層側に多層樹脂層に接着した。そして、この積層体を打ち抜いて蓋材とした。
【0049】
(試験例4)
紙層としては、試験例1と同じものを使用した。絵柄印刷層及び遮光性インキ層も試験例1と同じである。
【0050】
多層樹脂層としては、「LDPE/tie/HDPE/tie/ヒートシール性樹脂」から成る5層共押し出しフィルムを使用した。ヒートシール性樹脂は、タッキファイアを添加したEMAAである。この多層樹脂層の総厚みは30μm、HDPEの厚みは3μmである。
【0051】
次に、ノンソルベント接着剤を使用して、紙層の遮光性インキ層側に多層樹脂層に接着した。そして、この積層体を打ち抜いて蓋材とした。
【0052】
(試験例5)
紙層として、坪量80g/mmの片面アート紙を使用した。この片面アート紙の表面に絵柄印刷層を印刷し、また、その裏面に遮光性インキ層を印刷した。
【0053】
多層樹脂層としては試験例1と同じものを使用した。
【0054】
次に、ノンソルベント接着剤を使用して、紙層の遮光性インキ層側に多層樹脂層に接着した。そして、この積層体を打ち抜いて蓋材とした。
【0055】
(試験例6)
紙層としては、試験例1と同じものを使用した。絵柄印刷層及び遮光性インキ層も試験例1と同じである。
【0056】
多層樹脂層としては、「LDPE/tie/共重合PET/tie/ヒートシール性樹脂」から成る5層共押し出しフィルムを使用した。なお、ヒートシール性樹脂は、タッキファイアを添加したEMAAである。この多層樹脂層の総厚みは60μm、共重合PETの厚みは5μmである。この多層樹脂層の各層の材質は試験例1の多層樹脂層と同一であるが、総厚み及び共重合PETの厚みが試験例1の多層樹脂層とは異なるものである。
【0057】
次に、接着剤を使用して、紙層の遮光性インキ層側に多層樹脂層に接着した。そして、この積層体を打ち抜いて蓋材とした。
【0058】
(試験例7)
紙層としては、試験例1と同じものを使用した。絵柄印刷層及び遮光性インキ層も試験例1と同じである。
【0059】
多層樹脂層としては、「LDPE/tie/共重合PET/tie/ヒートシール性樹脂」から成る5層共押し出しフィルムを使用した。なお、ヒートシール性樹脂は、タッキファイアを添加したEMAAである。この多層樹脂層の総厚みは50μm、共重合PETの厚みは10μmである。この多層樹脂層の各層の材質は試験例1の多層樹脂層と同一であるが、総厚み及び共重合PETの厚みが試験例1の多層樹脂層とは異なるものである。
【0060】
次に、接着剤を使用して、紙層の遮光性インキ層側に多層樹脂層に接着した。そして、この積層体を打ち抜いて蓋材とした。
【0061】
(評価手法)
カップシーラーを使用して、試験例1〜7の蓋材をカップ容器本体の上端開口部にヒートシールした後、デッドホールド性、耐油性及び臭気遮断性について、次のように評価した。なお、ヒートシール性樹脂としてタッキファイアを添加したEMAAを使用した蓋材(試験例1,3〜7)については、カップ容器としてポリスチレン製容器を使用し、ヒートシール性樹脂としてポリエチレンを主成分としてこれにポリブチレンを添加した樹脂組成物を使用した(試験例2)については、カップ容器として内面にポリエチレンフィルムを積層した紙製容器を使用した。
【0062】
デッドホールド性の評価;開封用タブを摘んで蓋材を半分まで引き剥がし、折り曲げ開封した後、引き剥がされた部位とカップ容器本体の上端開口部との角度を測定した。そして、この角度が45度以上であれば○、これ未満であれば×とした。
【0063】
耐油性の評価;内容物として乾麺及び乾燥てんぷらを収容し、逆さ置きの状態で、40
℃、3週間放置し、油染みが生じない場合に○、生じた場合に×とした。
【0064】
臭気遮断性の評価;折り曲げ開封して注湯した際、蒸気と共にインキ由来の臭気が感じられなければ○、感じられた場合に×とした。
【0065】
この結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

(考察)
試験例4と試験例1〜3とを比較すると、多層樹脂層中にHDPEを有する場合(試験例4)には、デッドホールド性については優れるものの、耐油性と臭気遮断性の双方に劣るのに対して、共重合PET、APET、あるいはEVOHを有する場合(試験例1〜3)には、デッドホールド性に加えて、耐油性と臭気遮断性の双方についても優れた品質を備えることが分かる。
【0067】
また、これら試験例1と試験例5とを比較すると、多層樹脂層中に共重合PETを有する場合であっても、紙層の坪量が小さい場合(試験例5、坪量80g/mm)にはデッドホールド性に劣ることが分かる。
【0068】
次に、試験例1と試験例6とを比較すると、多層樹脂層中に共重合PETを有する場合であっても、多層樹脂層が厚い場合(試験例6、多層樹脂層の総厚み60μm)にはデッドホールド性に劣ることが分かる。
【0069】
また、試験例1と試験例7とを比較すると、多層樹脂層中に共重合PETを有する場合であっても、共重合PETが厚い場合(試験例7、共重合PETの厚み10μm)にはデッドホールド性に劣ることが分かる。
【0070】
これらの結果、多層樹脂層中に共重合PET、APET、あるいはEVOHを有し、その厚さが2〜5μmであり、多層樹脂層の総厚みが30〜50μmであり、しかも、紙層の坪量が90g/mm以上である場合、デッドホールド性、耐油性及び臭気遮断性のいずれについても、優れた品質を有することが確認できた。
【符号の説明】
【0071】
1 蓋材
11 紙層
12 多層樹脂層
121 バリア性樹脂層
122 ヒートシール性樹脂層
123 その他の樹脂層
13 遮光性インキ層
1a 開封用タブ
2 容器本体
2a フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の上端開口部を密封する蓋材において、
紙層と多層の樹脂層とを積層して構成される積層体であって、かつ、金属層を含まない積層体で構成され、
多層の前記樹脂層のうち前記容器本体の上端開口部に接する樹脂層がヒートシール性樹脂層であり、かつ、これら多層の樹脂層のうち少なくとも1層がバリア性樹脂層であり、
前記紙層の坪量が90g/mm以上であると共に、前記バリア性樹脂層がAPET層、共重合PET層、又はEVOH層から成り、このバリア性樹脂層の厚さが2〜5μmである、
ことを特徴とする蓋材。
【請求項2】
前記紙層が片面コート紙であり、前記紙層の坪量に対しコート剤の塗布量が20〜30質量%であることを特徴とする請求項1に記載の蓋材。
【請求項3】
前記多層樹脂層が共押し出し成形された多層フィルムから成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓋材。
【請求項4】
前記ヒートシール性樹脂層がポリオレフィン樹脂又はオレフィンから成る構成部分と酸性基を有する構成部分とを有する樹脂から成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蓋材。
【請求項5】
前記紙層と前記多層樹脂層との間に遮光性インキ層を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の蓋材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−157078(P2011−157078A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17981(P2010−17981)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】