説明

蓋用密封材組成物

【課題】 容器蓋へ塗布後の加熱成形時に、蓋構内で粘度低下による流動が少ない蓋密封材用組成物を提供する。
【解決手段】 (A)イソシアネート基をブロック化したブロックポリイソシアネート、(B)活性水素基含有化合物、(C)平均粒子径0.1〜10.0μmである粘度低下防止剤からなり、(A)イソシアネート基をブロック化したブロックポリイソシアネート100重量部当たり、(C)粘度低下防止剤40〜70重量部含有することを特徴とする液状はまたペースト状の蓋密封材用組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋用密封材組成物に係わり、更に詳しくは、容器蓋へ塗布後の加熱成形時に、蓋構内で粘度低下による流動が少ない蓋密封材用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、密封材付き蓋の製造方法は、あらかじめ成形加工した密封材成形物を適当な形状に切り取り、蓋に嵌め込む方法と、蓋の外周端部の構内に液状の高分子化合物を注入し、加熱硬化することにより密封材成形物を形成する方法の2つの方法が使用されている。
【0003】
あらかじめ成形加工した密封材成形物を適当な形状に切り取り、蓋に嵌め込む方法には、発泡加硫ゴムなどが使用されており、高密封性が得られるが、密封材を蓋に取り付けるまでに多くの工程を必要とし、作業効率が悪く、コスト高である。これに対して、蓋の外周端部の構内に液状高分子化合物を注入し、加熱硬化することにより密封材成形物を形成する方法は、比較的簡易な装置で高い生産性が得られるため、密封材付き蓋の多くはこの方法が使用されている。
【0004】
液状高分子化合物を蓋の外周端部の構内に注入、硬化させる方法には、作業性、成形性の容易さ、価格等の面から一般的にポリ塩化ビニルのプラスチゾルが用いられてきた。しかし、近年、ポリ塩化ビニルの燃焼による廃棄処理の際にダイオキシンが発生することが社会問題となっており、脱ポリ塩化ビニルが検討されるようになってきた。また、ポリ塩化ビニルのプラスチゾルは、溶剤系の内容物に不適であり、密封性もゴム系のシーリング剤に若干劣る傾向がある。
【0005】
ポリウレタン樹脂組成物からなる成形品は、高い引張強度、耐疲労性、良好な低温柔軟性、耐摩耗性を有しているため、ロール類、パッキン類、各種機械部品等の材料として広く使用されている。このような特性から、脱ポリ塩化ビニルを目的とした容器蓋用密封材組成物として、ポリウレタン樹脂組成物が提案されている。
【0006】
ポリウレタン樹脂をペール缶やオープンドラム等の容器蓋用密封材に用いた例としては、特開昭61−9481号公報に記載された技術がある。(特許文献1)
この技術は、ポリウレタンプレポリマーを主成分とする第一液と、ポリオールを主成分とする第二液とからなり、この二液の混合の際に、0〜60℃の温度範囲における混合物の粘度を200〜20000mPa・sに調整したものである。
【0007】
このような二液を用いた注型操作では、主剤成分を入れるタンクと硬化剤成分を入れるタンクを用意し、それぞれのタンクより、一定の配合比率になるように定量ポンプにて混合装置へ送液する。機械的攪拌または高圧衝突方式により二液を混合した後、金型に注型し、一定時間熱処理して、エラストマー成形品を得ている。
【0008】
特開昭61−9481号公報に記載のような二液型組成物の場合、加熱硬化成形物は引張り強度、耐疲労性、良好な低温柔軟性などの優れた物理的性質を有しているものの、完全硬化までの時間が長く、多量生産システムに不適当であった。また、二液混合機内での粘度上昇、一定吐出が難しく作業効率が悪いという問題が生じるため、硬化時間の短縮には限界があった。更にポリ塩化ビニルのプラスチゾルのような一液型から二液型に替える場合、二液定量送液装置、短時間攪拌用ミキサー等の新たな設備が必要となる。
【0009】
これらの二液型組成物の問題を解消すべく、特開2002−206930号公報に記載された技術がある。(特許文献2)この技術においてブロックイソシアネートを用いた一液型熱硬化性ポリウレタン樹脂が紹介されている。一液型であるので、二液型組成物の硬化時間の短縮が困難であるという問題が解消され、また二液定量送液装置、短時間攪拌用ミキサー等の新たな装置を必要とせず、従来から使用されているポリ塩化ビニルプラスチゾル用の注入装置が使用できる。
【0010】
【特許文献1】特開昭61−9481号公報
【特許文献2】特開2002−206930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特開2002−206930号公報に記載された技術においても、一液型熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物を蓋の外周端部の構内に注入し、硬化させる際に、加熱によりポリウレタン樹脂組成物の粘度が極端に低下して、加熱装置中で蓋を搬送するベルトコンベアーのわずかな傾きによりポリウレタン樹脂組成物が流動して蓋構内で偏在し、硬化成形品の厚みが均一でなくなり(以下、これを偏肉と称する。)、密封不良が生じるという問題があった。
【0012】
従って、本発明の目的は、蓋密封材用組成物を蓋の外周端部の構内に注入し、硬化させる際に、加熱により蓋密封材用組成物の粘度が極端に低下することがなく、硬化成形品の厚みが均一で密封性の優れた一液型熱硬化性ポリウレタン樹脂蓋密封材用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、粘度低下防止剤の添加により、前記課題が解決できることを見出し、完成に至った。本願の請求項1の発明の蓋密封材用組成物は、下記の成分(A)、(B)及び(C)からなり、(A)イソシアネート基をブロック化したブロックポリイソシアネート 100重量部当たり、(C)平均粒子径0.1〜10.0μmである粘度低下防止剤 40〜70の重量部含有することを特徴とする液状またはペース状の蓋密封材用組成物である。
(A)イソシアネート基をブロック化したブロックポリイソシアネート
(B)活性水素基含有化合物
(C)平均粒子径0.1〜10.0μmである粘度低下防止剤である。
又本願の請求項2の発明は、蓋密封材用組成物を加熱し液温を上昇させてゆき、加熱開始から反応により増粘が開始するまでの間の回転粘度(20rpm)の変化で、最も低下した際の粘度が600mPa・s以上であることを特徴とする液状またはペースト状の請求項1記載の蓋密封材用組成物である。
【0014】
上記に於ける本発明に用いられるブロック化されたイソシアネート成分を構成するポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、これらの変性体が挙げられる。これは、単独あるいは2種類以上を混合して使用することができる。
【0015】
また、これらの有機イソシアネートと活性水素基含有化合物とを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーの利用がより好ましい。
【0016】
イソシアネート基末端プレポリマーの合成に用いられる活性水素含有化合物は、通常のポリウレタン樹脂を構成する成分であり、アジペート系、ラクトン系、カーボネート系、エーテル系ポリオールを用途に応じ使用することができる。
【0017】
イソシアネート基のブロック化に使用されるブロック剤としては、ε−カプロラクタム、メチルエチルケトンオキシム、アセト酢酸エチル等を挙げることができる。
【0018】
本発明の(B)活性水素基含有化合物としては、高分子ポリオール、低分子ポリオール、ポリアミン、アミノアルコール、ヒドラジド等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
本発明に使用される(C)粘度低下防止剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、クレー、タルク等を挙げることができる。これらは、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。この粘度低下防止剤の平均粒子径は、0.1〜10.0μmであることが好ましい。平均粒子径が0.1μm以下であると、粘度が高くなり、連続的な蓋構内へのライニング時に十分な塗布量を吐出できない。平均粒子径が10.0μm以上であると、粘度が低くなり、加熱硬化時に偏肉してしまう。また、粘度が低いと経時的に粘度低下防止剤が沈殿し、蓋密封材用組成物が不均一となり、十分な密封性を維持できない。この粘度低下防止剤の配合量は、(A)イソシアネート基をブロック化したブロックポリイソシアネート100重量部当たり、40〜70重量部、好ましくは42〜68重量部、更に好ましくは50〜60重量部含有させるのがよい。粘度低下防止剤が40重量部以下であると粘度が低くなり加熱硬化時に偏肉してしまう。粘度低下防止剤が70重量部以上であると粘度が高くなり、連続的な蓋構内へのランニング時に十分な塗布量を吐出できない。
【0020】
本発明の蓋密封材用組成物には、必要に応じて、公知の各種添加剤を併用することができる。添加剤としては、可塑剤、発泡剤、触媒、染料、顔料、滑剤、補強剤、難燃向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、電気絶縁性向上剤、防カビ剤等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上詳述した如く、本発明によれば、蓋へ塗布後、加熱成形時に粘度低下が少なく、偏肉も少ないと共に、長期間良好な密封性を有する蓋密封材用組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0023】
使用した原料について下記に示す。
ブロックポリイソシアネート:メチルエチルケトンオキシムブロックイソシアネート
活性水素基含有化合物:ドデカン二酸ジヒドラジド
N−12、日本ヒドラジン工業(株)製
粘度低下防止剤c1:炭酸カルシウム、平均粒子径1.25μm
ホワイトンSSB、白石カルシウム(株)製
粘度低下防止剤c2:炭酸カルシウム、平均粒子径0.05μm
白艶華AA、白石カルシウム(株)製
粘度低下防止剤c3:炭酸カルシウム、平均粒子径14.8μm
NN#200、日東粉化工業(株)製
可塑剤:エポキシ化大豆油、O−130P、旭電化(株)製
発泡剤:ADCA系発泡剤、ユニフォームAZ−L、大塚化学(株)製
【0024】
実施例1 ブロックポリイソシアネートを100重量部と活性水素基含有化合物を7重量部混合後、更に可塑剤を30重量部、粘度低下防止剤c1を50重量部、発泡剤を4重量部加えて均一に混合した後、脱泡し、蓋密封材用組成物を調製した。ブルックフィールド回転粘度計で液温50℃、20rpmでのこの組成物の粘度を測定した。液温50℃、20rpmでの粘度は10000mPa・s以下を良好とする。さらにこの組成物を加熱し、反応による増粘開始までの連続的な粘度を測定し、増粘開始までの間の最低粘度を調査した。増粘開始までの最低粘度は600mPa・s以上を良好とする。次いでこの組成物を吐出機を用い、液温40℃、ノズル径2.5mm、圧力0.1〜0.4MPa、塗布速度30枚/分の条件で、ラグペール天蓋の構内に塗布し、塗布量を測定した。塗布量を17g以上保持できたものを良好とする。次いでこの組成物を吐出機を用い、ラグペール天蓋の構内に17g流し込み、ペール天蓋の生産に使用されているオーブン中で170℃、3分間加熱、発泡、硬化させ、成形されたパッキングの厚みを測定した。ペール天蓋1枚当たりのパッキング中の最大厚みと最小厚みの差が2mm未満を良好とする。さらに同様にこの組成物を吐出機を用い、ラグペール天蓋の構内に17g流し込み、170℃、3分間加熱、発泡、硬化させ、パッキングを備えた試験用のサンプル天蓋を作製した。ペール缶に5リットルの自動車用オートマチック液(イデミツゼプロATF)を充填し、サンプル天蓋を締め機でカシめ、試験ペール缶を準備した。水平なパレットに試験ペール缶を倒立で載せ、その上に200kg/缶となるように荷重をかける。室温、3ヶ月間保管後、荷重を取り除き、ペール缶を横倒しにして2時間静置させ、自動車用オートマチック液の漏洩を目視で確認した。漏洩の無いものを良好とする。これらの結果を表1に示す。
【0025】
実施例2 ブロックポリイソシアネートを100重量部と活性水素基含有化合物を7重量部混合後、更に可塑剤を30重量部、粘度低下防止剤c1を40重量部、発泡剤を4重量部加えて均一に混合した後、脱泡し、蓋密封材用組成物を調製した。以下、実施例1と同様の試験を行なった。これらの結果を表1に示す。
【0026】
実施例3 ブロックポリイソシアネートを100重量部と活性水素基含有化合物を7重量部混合後、更に可塑剤を30重量部、粘度低下防止剤c1を70重量部、発泡剤を4重量部加えて均一に混合した後、脱泡し、蓋密封材用組成物を調製した。以下、実施例1と同様の試験を行なった。これらの結果を表1に示す。
【0027】
比較例1 ブロックポリイソシアネートを100重量部と活性水素基含有化合物を7重量部混合後、更に可塑剤を30重量部、粘度低下防止剤c1を30重量部、発泡剤を4重量部加えて均一に混合した後、脱泡、蓋密封材用組成物を調製した。以下、実施例1と同様の試験を行なった。これらの結果を表1に示す。
【0028】
比較例2 ブロックポリイソシアネートを100重量部と活性水素基含有化合物を7重量部混合後、更に可塑剤を30重量部、粘度低下防止剤c1を80重量部、発泡剤を4重量部加えて均一に混合した後、脱泡、蓋密封材用組成物を調製した。以下、実施例1と同様の試験を行なった。これらの結果を表1に示す。
【0029】
比較例3 ブロックポリイソシアネートを100重量部と活性水素基含有化合物を7重量部混合後、更に可塑剤を30重量部、粘度低下防止剤c2を50重量部、発泡剤を4重量部加えて均一に混合した後、脱泡、蓋密封材用組成物を調製した。以下、実施例1と同様の試験を行なった。これらの結果を表1に示す。
【0030】
比較例4 ブロックポリイソシアネートを100重量部と活性水素基含有化合物を7重量部混合後、更に可塑剤を30重量部、粘度低下防止剤c3を50重量部、発泡剤を4重量部加えて均一に混合した後、脱泡、蓋密封材用組成物を調製した。以下、実施例1と同様の試験を行なった。これらの結果を表1に示す。
【0031】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イソシアネート基をブロック化したブロックポリイソシアネート
(B)活性水素基含有化合物
(C)平均粒子径0.1〜10.0μmである粘度低下防止剤
上記の成分(A)、(B)及び(C)からなり、(A)イソシアネート基をブロック化したポリイソシアネート100重量部当たり、(C)平均粒子径0.1〜10.0μmである粘度低下防止剤40〜70重量部含有することを特徴とする液状またはペースト状の蓋密封材用組成物。
【請求項2】
蓋密封材用組成物を加熱し液温を上昇させてゆき、加熱開始から反応により増粘が開始するまでの間の回転粘度(20rpm)の変化で、最も低下した際の粘度が600mPa・s以上であることを特徴とする請求項1記載の蓋密封材用組成物。

【公開番号】特開2007−126566(P2007−126566A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320718(P2005−320718)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(595044661)株式会社日本化学研究所 (14)
【Fターム(参考)】