蓋部材の取付構造、免震構造物

【課題】蓋部材の傾きを調整可能にした上で、自動車等が蓋部材の上を通過した際に発生する騒音を低減することができる蓋部材の取付構造及び免震構造物を得る。
【解決手段】蓋部材34の上を自動車等が通過することで生じた振動は、蓋部材34の他端部に取り付けられた調整部材48に備えられた雌ねじ部52及び雄ねじ部54を通って振動吸収部材56に伝達される。振動が振動吸収部材56に伝達されるとプレート部材62に挟まれたゴム部材60が変形することで、自動車等が蓋部材34の上を通過する際に発生する振動が吸収される。ゴム部材60の鉛直方向両面がプレート部材62に接着されているため、ゴム部材60の鉛直方向両面での変形が抑制される。つまり、ゴム部材60の鉛直方向両面の変形が抑制されているため、変形が鉛直方向両面に集中することが防止されることで、ゴム部材60が全体的に変形して振動が吸収される。これにより騒音が低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋部材の取付構造、及びこの構造を備えた免震構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の免震構造物は、基礎と、免震装置を介して基礎の上に構築された建築物と、を備えている。そして、基礎の擁壁と建築物の外周壁との間には、水平方向に免震クリアランスが設けられ、この免震クリアランスを覆うように蓋部材(犬走り)が設けられている。
【0003】
さらに、蓋部材の先端側と擁壁との間には、建築物と擁壁との間で生じる水平方向の振動を減衰(吸収)させる減衰部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−115420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の構造では、水平方向の振動を吸収することはできるが、鉛直方向の振動を吸収することができないようになっている。このため、自動車等が蓋部材の上を通過した際には、鉛直方向に蓋部材が振動して騒音が発生することが考えられる。また、従来の構造では、蓋部材が建築物の外周壁に固定されているため、蓋部材の傾きを調整することができなかった。
【0006】
本発明の課題は、蓋部材の傾きを調整可能にした上で、自動車等が蓋部材の上を通過した際に発生する騒音を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る蓋部材の取付構造は、上部構造体の外周壁と前記外周壁との周りに構築された擁壁との間に設けられた免震クリアランスの上部を覆う蓋部材と、前記蓋部材の一端側を前記外周壁に回転自在に連結する回転連結部材と、前記蓋部材の他端側に固定されると共に、前記擁壁の上面に支持され、前記蓋部材の傾きを調整する調整部材と、前記調整部材に設けられ、鉛直方向の振動を吸収する振動吸収部材と、を備え、前記振動吸収部材には、弾性変形可能なゴム部材と、前記ゴム部材の鉛直方向両面に接着された一対のプレート部材と、が設けられることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、蓋部材が、上部構造体の外周壁とこの外周壁との周りに構築された擁壁との間に設けられた免震クリアランスの上部を覆うように設けられている。
【0009】
また、この蓋部材の一端側が、回転連結部材によって上部構造体の外周壁に回転自在に連結されることで、蓋部材の他端側は上下方向に揺動する。そして、蓋部材の他端側には、擁壁の上面に支持され、蓋部材の傾きを調整すると共に、蓋部材の荷重を支持する調整部材が設けられ、この調整部材は蓋部材の、鉛直方向の振動を吸収する振動吸収部材を備えている。
【0010】
さらに、この振動吸収部材は、弾性変形可能なゴム部材と、ゴム部材の鉛直方向両面に接着された一対のプレート部材とを備えている。
【0011】
自動車等が蓋部材の上を通過した際には、プレート部材に挟まれたゴム部材が変形することで振動が吸収され、騒音が低減する。
【0012】
ここで、ゴム部材の鉛直方向両面がプレート部材に接着されているため、プレート部材が固定されたゴム部材の鉛直方向両面での変形が抑制される。このため、ゴム部材の変形が鉛直方向両面に集中することが防止され、ゴム部材の側面が外側に膨らむことで、ゴム部材が全体的に変形して効果的に振動が吸収される。
【0013】
以上説明したように、調整部材に振動吸収部材を設けることで、蓋部材の傾きを調整可能にした上で、自動車等が蓋部材の上を通過した際に発生する騒音を低減することができる。
【0014】
本発明の請求項2に係る蓋部材の取付構造は、請求項1に記載において、前記蓋部材の下面と前記擁壁の上面との間には、前記蓋部材が受けた鉛直方向の荷重を前記擁壁に伝達する荷重伝達部材が設けられることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、蓋部材の下面と擁壁の上面との間には、荷重伝達部材が、蓋部材が受けた鉛直方向の荷重を擁壁に伝達するため、過大な荷重が、蓋部材に負荷された場合に、蓋部材が損傷するのを抑制することができる。
【0016】
本発明の請求項3に係る免震構造物は、上部構造体と基礎構造体との間に設けられた免震装置と、前記上部構造体の外周壁と前記基礎構造体から立ち上がった擁壁との間に設けられた免震クリアランスの上部を覆う請求項1又は2に記載の蓋部材の取付構造と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、免震装置が、上部構造体と基礎構造体との間に設けられている。さらに、請求項1又は2に記載の蓋部材の取付構造が、上部構造体の外周壁と基礎構造体から立ち上がった擁壁との間に設けられた免震クリアランスの上部を覆うように設けられている。
【0018】
このように、請求項1又は2に記載の蓋部材の取付構造が設けられることで、蓋部材の傾きを調整可能にした上で、自動車等が蓋部材の上を通過した際に発生する騒音を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、蓋部材の傾きを調整可能にした上で、自動車等が蓋部材の上を通過した際に発生する騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る蓋部材の取付構造を示した断面図である。
【図2】(A)(B)本発明の実施形態に係る蓋部材の取付構造を示した断面図である。
【図3】(A)(B)本発明の実施形態に係る蓋部材の取付構造を示した断面図である。
【図4】(A)(B)本発明の実施形態に係る蓋部材の取付構造に用いられた振動吸収部材を示した断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る蓋部材の取付構造を示した斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る蓋部材の取付構造が採用された免震構造物を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係る蓋部材の取付構造及び免震構造物の一例について図1〜図6に従って説明する。なお、図中矢印UPは鉛直方向上方を示す。
【0022】
(全体構成)
図6に示されるように、免震構造物10は、地盤(GL)に鉛直方向に埋め込まれた円柱状の複数本の杭12と、地盤(GL)に構築され、杭12に支持された基礎構造体14とを備えている。
【0023】
さらに、この基礎構造体14の上側(鉛直方向上側)には、積層ゴムを用いた免震装置16を介して、上部構造体24が設けられている。そして、この上部構造体24は、水平方向に延びる梁部材18と、鉛直方向に延びる柱部材20と、外周に設けられた外周壁22と、を備えて構築されている。地震等で、上部構造体24と基礎構造体14との間で水平方向に相対変位が発生した場合には、免震装置16の積層ゴムを弾性変形させることで、水平方向の地震力を緩和するようになっている。つまり、上部構造体24の揺れの周期を大きくして、地震等によって基礎構造体14から上部構造体24に伝播しようとする振動を緩和し、上部構造体24の躯体に生じる応力や変形を小さく抑えるようになっている。
【0024】
また、基礎構造体14には、外周から鉛直方向上方に立ち上がる擁壁28が設けられ、この擁壁28は、上部構造体24の下方部を外側から囲むように配置されている。さらに、擁壁28の上端部には、擁壁28の一部を構成すると共に上部構造体24の外周壁22に向って延びる延出部28Aがもうけられている。そして、延出部28Aの先端部と上部構造体24の外周壁22との間には、上部構造体24と基礎構造体14との間の水平方向の相対変位を許容するための空間である免震クリアランス30が設けられている。
【0025】
さらに、免震クリアランス30の上部を覆うように、取付構造32によって取り付けられた蓋部材34が設けられている。
【0026】
このように、免震クリアランス30の上部を覆うように、蓋部材34を設けることで、免震クリアランス30から内部に雨水やねずみ等が浸入したり、人や物が落下するのを防止すると共に、人や車両が蓋部材34の上面を通って通行できるようになっている。
【0027】
(要部構成)
次ぎに、蓋部材34の取付構造32について説明する。
【0028】
図5に示されるように、蓋部材34は、現場打ちではなく工場で予め製造されるプレキャストコンクリート製(PC製)の板状とされ、外周壁22の外周に複数個並んで設けられている。
【0029】
また、蓋部材34には、基礎構造体14と上部構造体24との間に設けられた空間である免震層42(図1参照)に自然光を取り込むための矩形状のガラスブロックが埋め込まれた採光窓44が設けられている。さらに、蓋部材34の一端側は、外周壁22に固定される回転連結部材40に固定され、これにより、蓋部材34は、外周壁22に対しに回転自在に連結されている。つまり、蓋部材34の他端部は上下方向に揺動するようになっている。なお、回転連結部材40は、図1に示されるように、回転のみならず、蓋部材34の上下方向の変位にも追随できるようなピン形状及び孔形状としてもよい。
【0030】
図1に示されるように、蓋部材34の他端部には、先端がグランドラインGLと当る鉄板46の基端が固定され、グランドラインGLと、蓋部材34の上面とが滑らかに繋げられている。さらに、蓋部材34の他端部には、擁壁28の一部を構成する上面28Bに支持され、蓋部材34の上面の傾きを調整すると共に蓋部材34の荷重を支持する調整部材48が設けられている。
【0031】
詳細には、調整部材48は、蓋部材34の他端部に固定されたL字状のL字板50に溶接等で固定された雌ねじ部52と、この雌ねじ部52に締め込まれて鉛直方向に延びる雄ねじ部54と、を含んで構成されている。この構成により、図2(A)(B)に示されるように、雄ねじ部54の雌ねじ部52へのねじ込み量を変えることで、蓋部材34に回転連結部材40(図1参照)を中心に回転移動をさせ、蓋部材34の傾き(蓋部材34の上面の傾き)が調整されるようになっている。
【0032】
さらに、雄ねじ部54の鉛直方向下端部には、鉛直方向の振動を吸収する振動吸収部材56が設けられている。そして、振動吸収部材56は、弾性変形可能な円柱状のゴム部材60と、このゴム部材60の鉛直方向両面(ゴム部材60の上下面)に接着剤にて接着された一対のプレート部材62とを備えている。なお、延出部28Aの上面28Bに載置されるプレート部材62は、上面28Bに対して固定されておらず、上面28Bに対して相対移動とされている。
【0033】
この構成により、図3(A)(B)に示されるように、地震や風等で、上部構造体24と基礎構造体14(図6参照)との間で水平方向の相対変位が発生した場合は、擁壁28の上面28Bと、上面28Bに載置される振動吸収部材56のプレート部材62と、の間で振動吸収部材56が上面28Bに対して相対移動することで水平方向の相対変位が吸収されるようになっている。
【0034】
また、図4(A)(B)に示されるように、蓋部材34(図3参照)に鉛直方向の振動が付加された場合は、ゴム部材60の鉛直方向両面がプレート部材62に接着されているため、プレート部材62が固定されたゴム部材60の鉛直方向両面での変形が抑制される。このため、ゴム部材60の変形が鉛直方向両面に集中することが防止され、ゴム部材60の側面が外側に膨らむことで、ゴム部材60が全体的に変形して振動を吸収するようになっている。
【0035】
さらに、図1に示されるように、調整部材48と回転連結部材40との間であって、蓋部材34の下面と擁壁28の上面28Bとの間には、蓋部材34が外部から受けた鉛直方向下方の荷重を擁壁28に伝達する直方体状の荷重伝達部材66が設けられている。詳細には、荷重伝達部材66は、テフロン(登録商標)等で成形されており、擁壁28の上面28Bに図示せぬ固定部材で固定されている。また、蓋部材34の下面には、ステンレス製の板部材68が荷重伝達部材66と接するように埋め込まれている。
【0036】
この構成により、蓋部材34が外部から鉛直方向下向きの荷重を受けたときは、荷重伝達部材66が、蓋部材34が受けた荷重を擁壁28に伝達するようになっている。また、地震や風等で、上部構造体24と基礎構造体14(図6参照)との間で水平方向の相対変位が発生した場合は、荷重伝達部材66と板部材68との間で摺動して水平方向の相対変位が吸収されるようになっている。
【0037】
(作用・効果)
以上説明した取付構造32によって取り付けられた蓋部材34の上を自動車等が通過した際には、蓋部材34に振動が生じる。蓋部材34に生じた振動は、蓋部材34の他端部に取り付けられた雌ねじ部52及び雄ねじ部54を通って振動吸収部材56に伝達される。
【0038】
図4に示されるように、振動が振動吸収部材56に伝達されるとプレート部材62に挟まれたゴム部材60が変形することで、自動車等が蓋部材34の上を通過する際に発生する振動が吸収される。
【0039】
ここで、ゴム部材60の鉛直方向両面がプレート部材62に接着されているため、プレート部材62が固定されたゴム部材60の鉛直方向両面での変形が抑制される。このため、ゴム部材60の変形が鉛直方向両面に集中することが防止され、ゴム部材60の側面が外側に膨らむことで、ゴム部材60が全体的に変形して振動が吸収される。
【0040】
また、蓋部材34が自動車等から受けた鉛直方向下向きの荷重は、振動吸収部材56を備えた調整部材48と、荷重伝達部材66とによって擁壁28に伝達される。
【0041】
以上説明したように、ゴム部材60の鉛直方向両面をプレート部材62に接着させてゴム部材60を全体的に変形させることで、効果的に振動を吸収することができる。
【0042】
また、蓋部材34の振動が吸収されることで、蓋部材34が振動することで生じる騒音を低減することができる。
【0043】
また、蓋部材34の振動が吸収されることで、蓋部材34が損傷するのを抑制することができる。
【0044】
また、雄ねじ部54の雌ねじ部52へのねじ込み量を変えることで、蓋部材34を回転連結部材40を中心に回転移動させ、蓋部材34の傾きを調整することができる。
【0045】
また、蓋部材34が受けた鉛直方向の荷重を、調整部材48と伴に荷重伝達部材66が擁壁28に伝達するため、過度の荷重によって蓋部材34が変形したり損傷したりするのを防止することができる。つまり、調整部材48と回転連結部材40との間で、蓋部材34が凹状に変形するのを抑制することで蓋部材34が損傷するのを防止することができる。
【0046】
また、蓋部材34として、プレキャストコンクリート製(PC製)の部材を用いることで、現場でのコンクリートの打設が必要ないため、工期を短縮することができる。
【0047】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、ゴム部材60とプレート部材62とを接着剤を用いて接着したが、加硫することでゴム部材60とプレート部材62とを接着(加硫接着)してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、荷重伝達部材66を擁壁28の上面28Bに固定させ、板部材68を蓋部材34の下面に埋め込んで荷重伝達部材66と板部材68との間を摺動可能としたが、特これに限定されることなく、蓋部材34の下面に荷重伝達部材を固定して、擁壁28の上面28Bに荷重伝達部材と摺動する板部材を埋め込んでもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 免震構造物
14 基礎構造体
16 免震装置
22 外周壁
24 上部構造体
28 擁壁
28B 上面
30 免震クリアランス
32 取付構造(蓋部材の取付構造)
34 蓋部材
40 回転連結部材
48 調整部材
56 振動吸収部材
60 ゴム部材
62 プレート部材
66 荷重伝達部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造体の外周壁と前記外周壁との周りに構築された擁壁との間に設けられた免震クリアランスの上部を覆う蓋部材と、
前記蓋部材の一端側を前記外周壁に回転自在に連結する回転連結部材と、
前記蓋部材の他端側に固定されると共に、前記擁壁の上面に支持され、前記蓋部材の傾きを調整する調整部材と、
前記調整部材に設けられ、鉛直方向の振動を吸収する振動吸収部材と、を備え、
前記振動吸収部材には、
弾性変形可能なゴム部材と、
前記ゴム部材の鉛直方向両面に接着された一対のプレート部材と、
が設けられる蓋部材の取付構造。
【請求項2】
前記蓋部材の下面と前記擁壁の上面との間には、前記蓋部材が受けた鉛直方向の荷重を前記擁壁に伝達する荷重伝達部材が設けられる請求項1に記載の蓋部材の取付構造。
【請求項3】
上部構造体と基礎構造体との間に設けられた免震装置と、
前記上部構造体の外周壁と前記基礎構造体から立ち上がった擁壁との間に設けられた免震クリアランスの上部を覆う請求項1又は2に記載の蓋部材の取付構造と、
を備えた免震構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−190656(P2011−190656A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59727(P2010−59727)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,661)
【Fターム(参考)】