蔓科植物育成用螺旋状ロープ及びその製造方法並びに壁面緑化システム
【課題】蔓科植物の成長特性等に適するように構成に工夫を凝らしてなる蔓科植物育成用螺旋状ロープ及びその製造方法並びに当該螺旋状ロープを用いてなる壁面緑化システムを提供する。
【解決手段】蔓科植物育成用螺旋状ロープRは、芯材10及び側材20を備えている。側材20は、芯材10に対し、地球の北半球で成長する蔓科植物Bの蔓B1の巻回方向に沿うように巻装されている。
【解決手段】蔓科植物育成用螺旋状ロープRは、芯材10及び側材20を備えている。側材20は、芯材10に対し、地球の北半球で成長する蔓科植物Bの蔓B1の巻回方向に沿うように巻装されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蔓科植物育成用螺旋状ロープ及びその製造方法並びに当該螺旋状ロープを用いる壁面緑化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の螺旋状ロープとしては、下記特許文献1に開示された壁面緑化工法とワイヤ張設装置において採用されているロープがある。このロープは、鋼線を撚り合わせたワイヤ主体に樹脂をコーティングしたものに、金属製芯材に樹脂のコーティングを施した線材を螺旋状に巻きつけた構成となっている。
【特許文献1】特開2006−36号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した壁面緑化工法とワイヤ張設装置において採用されているロープは、上述のような螺旋状に巻きつけた構成を有するにすぎない。
【0004】
従って、当該ワイヤ張設装置を蔓科植物に適用するにあたり、上述の線材のワイヤ主体に対する巻き付け方向が、蔓科植物の成長に伴う蔓の巻き特性に合わないと、蔓が、ロープに円滑に巻き付きにくく、脱落したりするという不具合を招く。
【0005】
また、ロープの外表面の色調が、蔓科植物等の当該ロープの周囲の色調に合わないと、見映えが低下するという不具合を招く。
【0006】
そこで、本発明は、以上述べたことに対処するために、蔓科植物の成長特性等に適するように構成に工夫を凝らしてなる蔓科植物育成用螺旋状ロープ及びその製造方法並びに当該螺旋状ロープを用いてなる壁面緑化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決にあたり、本発明に係る蔓科植物育成用螺旋状ロープは、請求項1の記載によれば、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる芯材(10、10A、Ra、Rc)と、
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる側材(20、20A、Rb、Rd)とを備えて、
側材は、芯材に対し、蔓科植物(B)の蔓(B1)の巻回方向に沿う方向に間隔をおいて螺旋状に巻装されている。
【0008】
このように、側材の芯材に対する巻装方向が蔓科植物の蔓の巻回方向に沿う方向である。従って、蔓科植物の蔓の巻回方向が、当該蔓の成長端部側からみて、反時計方向であれば、側材の芯材に対する巻装方向は、当該反時計方向に沿う方向である。このため、この方向に沿うように、螺旋状溝が螺旋状ロープの外周に形成される。
【0009】
一方、蔓科植物の蔓の巻回方向が、当該蔓の成長端部側からみて、時計方向であれば、側材の芯材に対する巻装方向は、当該時計方向に沿う方向である。このため、この方向に沿うように、螺旋状溝が螺旋状ロープの外周に形成される。
【0010】
その結果、蔓科植物の蔓の巻回方向が反時計方向及び時計方向のいずれであっても、当該蔓科植物は、蔓を、ロープの螺旋状溝に沿わせて、芯材に対し円滑に巻回させながら成長し得る。
【0011】
また、上述のごとく、芯材及び側材を構成する材料は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線である。これによれば、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線の熱伝導率が、一般の炭素鋼の約2分の1程度と低いことから、当該撚り線は、温まりにくく、冷めにくい性質を有する。しかも、芯材及び側材は、上述のように撚り線とすることで、芯材及び側材の各表面積を増大させる構造となっている。このため、夏の日照りのときには、オーステナイト系ステンレス鋼からなる撚り線が、螺旋状ロープの熱放射を助長する。その結果、蔓科植物の熱焼けが良好に防止され得る。
【0012】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープにおいて、芯材を被覆してなる芯被覆体(60)と、側材を被覆してなる側被覆体(70)とを備えており、
芯被覆体及び側被覆体は、互いに、同一或いは同種の樹脂材料でもって形成されていることを特徴とする。
【0013】
このように、芯材及び側材を被覆する芯被覆体及び側被覆体が、互いに、同一或いは同種の樹脂材料でもって形成されている。このため、芯被覆体とこの芯被覆体に巻装されている側被覆体との間に凝着現象が発生して、芯被覆体と側被覆体との間の滑りを不能にし得る。
【0014】
その結果、側被覆体で被覆された側材が、芯被覆体で被覆された芯材に巻装された状態において、請求項1に記載の発明の作用効果を達成しつつ、当該側材の芯材に対する巻装位置のずれが確実に防止され得る。
【0015】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項2に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープにおいて、上記同一或いは同種の樹脂材料には、芯被覆体及び側被覆体のうち少なくとも一方において、蔓科植物の色調と同化の可能な色調を発現する材料が付加されていることを特徴とする。
【0016】
これによれば、芯被覆体及び側被覆体のうち少なくとも一方が、同一或いは同種の樹脂材料に蔓科植物の色調と同化の可能な色調を発現する材料を付加してなる樹脂材料でもって形成されている。
【0017】
従って、芯被覆体及び側被覆体のうち少なくとも一方が、蔓科植物の色調に同化している。その結果、請求項2に記載の発明の作用効果を達成し得るのは勿論のこと、芯被覆体及び側被覆体のうち少なくとも一方が、蔓科植物に比べて、目立つことがないという特有の作用効果を達成し得る。このような特有の作用効果を達成する当該螺旋状ロープを壁面緑化システムに用いれば、この壁面緑化システムの見映えが良好に維持され得る。
【0018】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項2に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープにおいて、上記同一或いは同種の樹脂材料には、芯被覆体及び側被覆体のうち少なくとも一方において、蔓科植物の色調と補色対比の可能な色調を発現する材料が付加されていることを特徴とする。
【0019】
これによれば、芯被覆体及び側被覆体のうち少なくとも一方が、同一或いは同種の樹脂材料に蔓科植物の色調と補色対比の可能な色調を発現する材料を付加してなる材料でもって形成されている。
【0020】
従って、芯被覆体及び側被覆体のうち少なくとも一方の色調が、蔓科植物の色調と補色対比の色調となっている。その結果、請求項2に記載の発明の作用効果を達成し得るのは勿論のこと、芯被覆体及び側被覆体のうち少なくとも一方が、蔓科植物に比べて、目立つことがないという特有の作用効果を達成し得る。このような特有の作用効果を達成する当該螺旋状ロープを壁面緑化システムに用いれば、この壁面緑化システムの見映えが良好に維持され得る。
【0021】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項1に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープにおいて、
芯材は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線(11、12)からなる芯ストランド(10、10A)であり、
側材は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線(21、22)からなる1束または複数束の側ストランド(20、20A)であり、
上記1束または複数束の側ストランドの撚り線としての各素線の撚り方向は、芯ストランドの撚り線としての各素線の撚り方向に対し、所定の交叉角(α)をなしていることを特徴とする。
【0022】
これによれば、側ストランドの撚り線としての各素線の撚り方向は、芯ストランドの撚り線としての各素線の撚り方向に対し、上記所定の交叉角をなしているから、いわゆるアンカー効果が、側ストランドと芯ストランドとの間に発生する。
【0023】
このため、側ストランドの芯ストランドに対する係合力が強固に発生する。これにより、請求項1に記載の発明の作用効果が達成され得るのは勿論のこと、側ストランドの芯ストランドに対する巻装位置のずれが確実に防止され得る。
【0024】
また、本発明は、請求項6の記載によれば、請求項2〜4のいずれか1つに記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープにおいて、
芯材は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線(11、12)からなる芯ストランド(10、10A)であり、
側材は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線(21、22)からなる1束または複数束の側ストランド(20、20A)であり、
上記1束または複数束の側ストランドの撚り線としての各素線の撚り方向は、芯ストランドの撚り線としての各素線の撚り方向に対し、所定の交叉角(α)をなしており、
芯被覆体は、芯材を被覆してなる芯被覆層(60)であり、
側被覆体は、上記1束または複数束の側ストランドをそれぞれ被覆してなる側被覆層(70)であり、
芯被覆層は、上記側被覆層と上記同一或いは同種の樹脂材料でもって形成されていることを特徴とする。
【0025】
これによれば、1束または複数束の側ストランドの撚り線としての各素線の撚り方向は、芯ストランドの撚り線としての各素線の撚り方向に対し、上記所定の交叉角をなしているから、いわゆるアンカー効果が、上記1束または複数束の側ストランドと芯ストランドとの間に発生する。
【0026】
このため、上記1束または複数束の側ストランドの芯ストランドに対する係合力が強固に発生する。これにより、請求項2〜4のいずれか1つに記載の発明の作用効果が達成され得るのは勿論のこと、上記1束または複数束の側ストランドの芯ストランドに対する巻装位置のずれが確実に防止され得る。
【0027】
また、本発明は、請求項7の記載によれば、請求項1〜4のいずれか1つに記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープにおいて、
芯材は、芯ロープ部材(Ra)でもって構成されており、
側材は、側ロープ部材(Rb)でもって構成されており、
芯ロープ部材は、
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線(11、12)からなる複数束のストランド(10、10A)を撚って形成した芯ストランド(30)と、
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線(11、12)からなる複数束のストランド(10、10A)を撚って形成されて芯ストランドに螺旋状に連続的に巻装してなる複数束の側ストランド(40)とを備えており、
側ロープ部材は、芯ロープ部材に対し、蔓科植物の蔓の巻回方向に沿う方向に間隔をおいて螺旋状に巻装されたオーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなるストランドであることを特徴とする。
【0028】
これによれば、芯ロープ部材は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる複数束のストランドで構成した芯ストランドと、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる複数束のストランドをそれぞれ撚ってなる複数束の側ストランドとでもって構成されている。また、側ロープ部材は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなるストランドである。
【0029】
ここで、このように芯ロープ部材及び側ロープ部材が構成されていても、側ロープ部材の芯ロープ部材に対する巻装方向は蔓科植物の蔓の巻回方向に沿う方向である。
【0030】
その結果、本請求項7に記載の発明によっても、請求項1〜4のいずれか1つに記載の発明と同様の作用効果が達成され得る。
【0031】
また、本発明は、請求項8の記載によれば、請求項7に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープにおいて、
側ロープ部材であるストランドの撚り線としての各素線の撚り方向は、芯ロープ部材の複数束の側ストランドの撚り線としての各素線の撚り方向に対し、所定の交叉角(α)をなしていることを特徴とする。
【0032】
これによれば、側ロープ部材であるストランドの撚り線としての各素線の撚り方向が、芯ロープ部材の複数束の側ストランドの撚り線としての各素線の撚り方向に対し、上記所定の交叉角(α)をなしている。従って、いわゆるアンカー効果が、側ロープ部材と芯ロープ部材との間に発生する。このため、側ロープ部材の芯ロープ部材に対する係合力が強固に発生する。これにより、請求項7に記載の発明の作用効果が達成され得るのは勿論のこと、側ロープ部材の芯ロープ部材に対する巻装位置のずれが確実に防止され得る。
【0033】
また、本発明は、請求項9の記載によれば、請求項6または8に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープにおいて、上記所定の交叉角は、90°±10°の範囲以内の角度、好ましくは90°であることを特徴とする。
【0034】
これにより、請求項6または8に記載の発明の作用効果がより一層確実に達成され得る。
【0035】
また、本発明に係る壁面緑化システムは、請求項10の記載によれば、
請求項1〜9のいずれか1つに記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープを、複数、備えて、
当該複数の螺旋状ロープを、所定の張設パターンにて壁面(W)に対向するように、当該壁面に支持されてなるものである。
【0036】
これによれば、上記所定の張設パターンが、例えば、ダイヤクロスパターン、チェッククロスパターン或いはストライプパターンであっても、請求項1〜9のいずれか1つに記載の発明の作用効果を達成し得る壁面緑化システムの提供が可能となる。
【0037】
また、本発明は、請求項11の記載によれば、
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる芯材(10、10A、Ra)及びオーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる側材(20、20A、Rb)を被覆するように同一或いは同種の樹脂材料でもって芯被覆層(60)及び側被覆層(70)を形成し、
側材を、芯材に対し、蔓科植物(B)の蔓(B1)の巻回方向に沿う方向に間隔をおいて螺旋状に巻装するようにした蔓科植物育成用螺旋状ロープの製造方法であって、
芯被覆層及び側被覆層の少なくとも一方が、分子構造の異なる着色樹脂材料を上記同一或いは同種の樹脂材料に混合してなる第1の同化用着色樹脂材料、或いはメルトインデックスの相違する着色樹脂材料を上記同一或いは同種の樹脂材料に混合してなる第2の同化用着色樹脂材料でもって、芯材及び側材の少なくとも一方を被覆するように形成される。
【0038】
これによれば、芯被覆層及び側被覆層のうち少なくとも一方が、蔓科植物の色調に同化することで、請求項3に記載の発明の作用効果を達成し得る螺旋状ロープの提供が可能となる。
【0039】
また、本発明は、請求項12の記載によれば、
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる芯材(10、10A、Ra)及びオーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる側材(20、20A、Rb)を被覆するように同一或いは同種の樹脂材料でもって芯被覆層(60)及び側被覆層(70)を形成し、
側材を、芯材に対し、蔓科植物(B)の蔓(B1)の巻回方向に沿う方向に間隔をおいて螺旋状に巻装するようにした蔓科植物育成用螺旋状ロープの製造方法であって、
芯被覆層及び側被覆層の少なくとも一方が、組成の異なる着色樹脂材料を上記同一或いは同種の樹脂材料に混合してなる第1の補色対比用着色樹脂材料、或いはメルトインデックスの相違する着色樹脂材料を上記同一或いは同種の樹脂材料に混合してなる第2の補色対比用着色樹脂材料でもって、芯材及び側材の少なくとも一方を被覆するように形成される。
【0040】
これによれば、芯被覆層及び側被覆層のうち少なくとも一方の色調が、蔓科植物の色調と補色対比の色調となることで、請求項4に記載の発明の作用効果を達成し得る蔓科植物育成用螺旋状ロープの提供が可能となる。
【0041】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の各実施形態を図面により説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明を適用してなる壁面緑化システムの第1実施形態を示している。この壁面緑化システムは複数の蔓科植物育成用螺旋状ロープRを備えており、これら各螺旋状ロープRは、図1にて示すごとく、所定の張設パターンの1つであるダイヤクロスパターンにて壁面Wに傾斜状に対向するように、当該壁面Wの上部と地面との間に、複数の締結金具Tでもって支持されている。本第1実施形態では、蔓科植物Bが、図1及び図2にて示すごとく、当該壁面緑化システムに沿い成長する例として示されている。
【0043】
螺旋状ロープRは、図2及び図3にて示すごとく、芯材10及び側材20を備えている。芯材10は、1本の芯素線11に、6本の側素線12をZ撚りに撚り合わせて撚り線として形成されている(図3参照)。
【0044】
側材20は、1本の芯素線21に、6本の側素線22をS撚りに撚り合わせて撚り線として形成されており、この側材20は、芯材10に、その長手方向に沿い、所定の巻回ピッチP(図3参照)にて、反時計方向(Z撚りの方向)に螺旋状に巻装されている。これに伴い、溝10aが、図2及び図3にて示すごとく、図示上方に向けて芯材10の外周に沿い反時計方向に、螺旋状に巻回するように形成されている。
【0045】
なお、上述した「Z撚り」とは、芯材10を図3にて図示上方からみたとき、芯素線11に対し各側素線12を図示上方に向けて反時計方向に撚ることをいい、また、「S撚り」とは、Z撚りとは逆方向の撚り、即ち、時計方向に撚ることをいう。また、側材20の芯素線21及び各側素線22は、上述した芯材10の芯素線11及び各側素線12と共に、オーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)でもって形成されている。
【0046】
ここで、側材20を芯材10に対し反時計方向に巻装する根拠について説明する。蔓科植物Bを当該壁面緑化システムの各螺旋状ロープRに沿い円滑に成長させるためには、側材20の芯材10に対する巻装方向を蔓科植物Bの蔓B1の成長特性に合わせることが必要であり、一般的に、当該蔓科植物の蔓の巻回方向は、地球の北半球と南半球とで相違する。このような相違は、地球の自転による遠心力に起因すると考えられている。
【0047】
具体的には、地球の北半球で成長する蔓科植物の蔓は、その成長先端部側から見て、反時計方向(左巻き方向)に巻回しながら成長する。一方、地球の南半球で成長する蔓科植物の蔓は、その成長先端部側から見て、時計方向(右巻き方向)に巻回しながら成長する。
【0048】
従って、螺旋状ロープRにおいて、北半球では、側材20の芯材10に対する巻装方向を、図4にて矢印で示すごとく、芯材10の図示上方から見て、北半球で成長する蔓科植物の蔓の巻回方向(上記反時計方向)に合わせる必要がある。一方、南半球でも同様に、図5にて矢印で示すごとく、南半球で成長する蔓科植物の蔓の巻回方向(上記時計方向)に合わせる必要がある。
【0049】
以上のことから、本第1実施形態では、蔓科植物Bが地球の北半球で成長することを前提に、側材20の芯材10に対する巻装方向は、図2〜図4にて示すごとく、蔓科植物Bの蔓B1(図2参照)の巻回方向(上記反時計方向)に沿うように、芯材10の上方から見て、反時計方向に設定されている。
【0050】
また、本第1実施形態では、螺旋状ロープRの形成にあたり、専用の撚り線機を用いることなく、適宜な機械を用いて、側材20を芯材10に巻装することで、上述の所定の巻回ピッチPは、任意に設定できる。
【0051】
なお、専用の撚り線機を用いて、側材20を芯材10にそれぞれストランドとして撚り合わせる場合には、上述の所定の巻回ピッチPは、撚り線機の仕様で決まる撚りピッチに規制される。例えば、当該撚り線機が1束の芯ストランドの周りに6束の側ストランドを同時に撚り合わせる仕様を有すれば、本第1実施形態にいう螺旋状ロープRは、側ストランドを5束欠落させた状態で、側材20を芯材10に撚り合わせることで形成される。
【0052】
以上のように構成した本第1実施形態では、上述したごとく、螺旋状ロープRにおいて、側材20が、地球の北半球で成長する蔓科植物Bの蔓B1の巻回方向に沿うように、上述のごとく、芯材10に対し反時計方向(Z撚りの方向)に巻装されている。しかも、螺旋状溝10aが、上述のごとく、芯材10の外周に沿い形成されている。
【0053】
従って、蔓科植物Bは、図2にて示すごとく、蔓B1を、側材20の螺旋状溝10aに沿わせて、芯材10に対し時計方向に円滑に巻回させながら成長し得る。
【0054】
また、上述のように側材20の芯材10に対する巻装方向が蔓科植物Bの蔓B1の巻回方向に沿うことで、蔓科植物Bの螺旋状ロープRに対する係着力を強固に維持し得る。その結果、当該蔓科植物Bは、螺旋状ロープRから脱落したりすることがなく、当該蔓科植物Bの上方への伸長が円滑に助長され得る。
【0055】
また、上述のように蔓科植物Bの螺旋状ロープRに対する係着力を強固に維持し得ることから、例えば、強風、降雨や地震等が生じても、蔓科植物Bの螺旋状ロープRからの脱落や地上への落下を未然に防止することができ、その結果、当該蔓科植物Bの成長を阻害することがない。
【0056】
また、本第1実施形態によれば、側材20の芯材10に対する巻装構造が、上述のことから明らかなように、螺旋状構造であることから、さらに、次のような作用効果が達成され得る。
【0057】
即ち、ロープRが螺旋状構造であるため、従来の螺旋状構造を有しないロープにおいて発生しがちであった耳障りな風切り音の発生が抑制され得る。このことは、上述の従来のロープに発生しがちな風騒音が、螺旋状ロープRによって、大幅に低減され得ることを意味する。
【0058】
この点につき詳細に述べれば、一般に、風が、図6にて矢印1でもって示すごとく、丸棒2にその左側から吹き付けると、風下側である丸棒2の右側には、カルマン渦列3が、図6にて示すごとく発生して、風騒音を発生させる原因となっている。
【0059】
これに対し、図6において、本第1実施形態の螺旋状ロープRが丸棒2に代えて位置すると仮定したとき、このロープRは、上述のごとく、螺旋状構造を有するため、当該螺旋状ロープRの風下側におけるカルマン渦列の発生が抑制される。その結果、上述した風騒音の発生が螺旋状ロープRによって良好に低減され得る。
【0060】
また、上述のように耳障りな風切り音の発生が抑制されるということは、螺旋状ロープRの風切り特性が良好であることを意味する。従って、当該螺旋状ロープRが風圧により受ける力が良好に低減され得る。その結果、次のような作用効果がさらに達成され得る。
【0061】
従来の多数のロープを用いた壁面緑化システムでは、風圧に耐え得るように、ロープの締結金具に対する引張強度が増大されていた。また、風圧のために、ロープの張設バランスの崩れが発生することから、壁面緑化システムとしての見映えが低下するおそれがあった。従って、ロープの張設状態に対する再調整作業が必要であった。また、強風時、特に台風時においては、過大な引張力が、風圧のために、ロープに作用し、その結果、ロープが締結金具から離脱するおそれがあった。
【0062】
これに対し、本第1実施形態のように、螺旋状ロープRを複数用いて壁面緑化システムを構成する場合、この螺旋状ロープRが上述のように風切り特性の良好な螺旋状構造を有する。このため、この螺旋状ロープRの締結金具Tに対する引張強度を増大させる必要がなく、従って、螺旋状ロープRの張設状態に対する再調整作業が不要となり、また、張設バランスも適正に確保されて、当該壁面緑化システムの見映えが良好に維持され得る。また、台風の時等においては、上述のように螺旋状ロープRの締結金具Tに対する引張強度を増大させなくても、螺旋状ロープRが締結金具Tから離脱することもない。
【0063】
また、当該壁面緑化システムは、以下に述べるように、悪天候による降雨で生ずる雨水や、蔓科植物Bへの放水に対し、整流作用を発揮するとともに、放水等による水を均一に分散させる作用(分散作用)を発揮する。
【0064】
以下、このような当該壁面緑化システムの作用について詳細に述べる。当該壁面緑化システムにおいては、複数の螺旋状ロープRが、上述のごとく、ダイヤクロスパターンを構成するように張設されている。しかも、各螺旋状ロープRは、上述のごとく、螺旋状溝10aを有する。
【0065】
このため、雨水が螺旋状ロープRに当たると、当該雨水が、図7にて符号fで示すごとく、螺旋状溝10aに溜まり、雨水の流れとなる。そして、この雨水の流れは、重力により、図7にて各矢印で示すごとく、螺旋状溝10aに沿い流下していく。このことは、螺旋状溝10aが、連続する排水溝としての役目を果たし、雨水の流れに対し、整流作用を発揮することを意味する。その結果、上述の雨水の流れは、螺旋状溝10aにより整流されて、当該螺旋状溝10aから流れ出ることなく、流下し得る。
【0066】
また、当該壁面緑化システムでは、複数の螺旋状ロープRが、上述のごとく、ダイヤクロスパターンを構成するように張設されている。このため、隣り合う両螺旋状ロープRが、そのクロス部C(図8参照)において、上述のように整流されながら当該両螺旋状ロープRの各螺旋状溝10aを流下する雨水の流れ(図8の各符号g、h参照)に対し、分流作用を発揮する。このため、当該雨水の流れは、上述のように整流されつつ、隣り合う各両螺旋状ロープRに沿い、そのクロス部Cでもって、各矢印i、j(図8参照)にて示すごとく、分流されながら流下していく。
【0067】
ここで、上述の雨水が蔓科植物への放水であるとすれば、蔓科植物の全体への放水が、その特定部分を地上へ落下させることなく、上述のような整流作用及び分流作用の相乗作用でもって、効率よく、均一に分散するようになされ得る。
【0068】
なお、雨水が一箇所に集中すると、水はけが悪いために蔓科植物の根腐れを生じ易いが、このような根腐れの発生が、上述のような整流作用と分流作用との相乗作用でもって、適正に低減され得る。
【0069】
また、本第1実施形態においては、上述のごとく、芯素線11と側素線12とからなる撚り線及び芯素線21と側素線22とからなる撚り線が、オーステナイト系ステンレス鋼線でもって形成されている。また、芯材10及び側材20は、オーステナイト系ステンレス鋼線を所定のダイスでもって伸線加工し、このように伸線加工したオーステナイト系ステンレス鋼線を、複数本、撚り線加工することで形成される。
【0070】
ここで、オーステナイト系ステンレス鋼線の熱伝導率は、14(kcal/m.hr.℃)であって、一般の炭素鋼の約2分の1である。従って、オーステナイト系ステンレス鋼線は、温まりにくく、冷めにくい性質を有する。しかも、上述のように撚り線とすることで、芯材10及び側材20の各表面積を増大させる構造となっている。
【0071】
これにより、夏の日照りのときには、芯材10及び側材20の熱放射が助長される。その結果、蔓科植物の熱焼け等が良好に防止され得る。
【0072】
さらには、本第1実施形態の螺旋状ロープRの外周面は、撚り線構造のため、凸状かつ螺旋状となっているから、当該螺旋状ロープRの外周面の面積が増大されている。このため、螺旋状ロープRとしての熱放射が促進されて、上述した蔓科植物の熱焼けの防止がより一層向上され得る。
【0073】
なお、上述の撚り線の各オーステナイト系ステンレス鋼線は、上述のごとく、ダイスでもって、伸線加工されているから、当該撚り線の表面は、概ね、鏡面状となっている。このため、当該撚り線、即ち芯材10や側材20の表面の水滴との接触角が小さく、雨水の地面への排水作用が高いといえる。
(第2実施形態)
図9及び図10は、本発明の第2実施形態の要部を示している。この第2実施形態では、蔓科植物育成用螺旋状ロープR1が、上記第1実施形態にて述べた螺旋状ロープRに代えて、図9にて示すごとく、採用されている。なお、この螺旋状ロープR1は、複数、上記第1実施形態にて述べたと同様に、ダイヤクロスパターンにて壁面Wに対向するように、複数の締結金具Tでもって支持されて、当該壁面緑化システムを構成している。
【0074】
螺旋状ロープR1は、芯ロープ部材Ra及び側ロープ部材Rbを備えており、側ロープ部材Rbは、芯ロープ部材Raにその長手方向に沿い所定の巻回ピッチ(13.8(mm))にて反時計方向(Z撚りの方向)(図9及び図10参照)に巻装されている。これに伴い、芯ロープ部材Raの外周には、螺旋状溝10bが形成されている。
【0075】
芯ロープ部材Raは、図10にて示すごとく、7×7の複撚り構成にて、1束の芯ストランド30及び6束の側ストランド40を備えている。芯ストランド30は、上記第1実施形態にて述べた芯材10である撚り線を7本用い、Z撚りの撚り線として形成されている。なお、ここでいう7×7の複撚り構成とは、1束7本の撚り線を7束撚り合わせたロープ構造のことをいう。
【0076】
6束の側ストランド40は、当該側ストランド毎に、上記第1実施形態にて述べた芯材10である撚り線を7本用い、S撚りの撚り線として形成されている。
【0077】
本第2実施形態において、芯ロープ部材Raにおいて、芯ストランド30の外径は、0.77(mm)であり、芯ストランド30の芯を構成する素線外径は、0.27(mm)であり、側を構成する側ストランドの素線外径は0.25(mm)である。また、側ストランド40の外径は、0.66(mm)であり、側ストランド40の芯を構成する素線外径及び側を構成する側ストランドの素線外径は、共に、0.22(mm)である。
【0078】
側ロープ部材Rbは、図10にて示すごとく、1本の芯素線51に対し、撚りピッチ(6.40(mm))にて、6本の側素線52をZ撚りに撚り合わせて撚り線として構成されている。本実施形態では、芯素線51及び各側素線52は、上述のオーステナイト系ステンレス鋼線でもって形成されている。なお、側ロープ部材Rbの外径は、0.6(mm)である。また、当該側ロープ部材Rbの芯素線51及び側素線52の各外径は、0.22(mm)及び0.20(mm)である。
【0079】
このように構成した螺旋状ロープR1によれば、側ロープ部材Rbは、その撚り線としての各側素線52の撚り方向にて、芯ロープ部材Raの各側ストランド40の撚り線としての各側素線の撚り方向に対し、所定の交叉角(以下、交叉角αという)をなすように、巻装されている。
【0080】
本第2実施形態において、上述した交叉角αは、90°±10°の範囲以内の角度に設定されている。このように設定した根拠は、次の通りである。
【0081】
芯ロープ部材Raにおける各側ストランド40の撚り線としての各側素線の撚り方向が、当該芯ロープ部材Raに巻装した側ロープ部材Rbの撚り線としての各側素線の撚り方向に対し、概ね、直交することで、側ロープ部材Rbの芯ロープ部材Raに対する巻装位置のずれが防止され得る。従って、交叉角αは90°であることが最も好ましいといえる。
【0082】
これに対し、交叉角αにつきさらに検討したところ、当該交叉角αは、好ましくは、90°±10°の範囲以内の角度であれば、上述の側ロープ部材Rbの芯ロープ部材Raに対する巻装位置のずれを防止し得ることが確認できた。このため、本第2実施形態では、上述のように交叉角が設定されている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0083】
このように構成した本第2実施形態では、螺旋状ロープR1において、側ロープ部材Rbが、地球の北半球で成長する蔓科植物Bの蔓B1の巻回方向に沿うように、芯ロープ部材Raに対し反時計方向(Z撚りの方向)に巻装されている。しかも、螺旋状溝10bが、上述のごとく、芯ロープ部材Raの外周に形成されている。
【0084】
その結果、上記第1実施形態にて述べた螺旋状ロープR及び当該壁面緑化システムによる作用効果と同様の作用効果が、本第2実施形態における螺旋状ロープR1及び壁面緑化システムにおいても、達成され得る。
【0085】
また、螺旋状ロープR1においては、側ロープ部材Rbが、上述したごとく、その撚り線としての各側素線52にて、芯ロープ部材Raの各側ストランド40の撚り線としての各側素線の撚り方向に対し、90°±10°の範囲以内の角度をなすように、即ち、ほぼ直交するように、芯ロープ部材Raに巻装されている。
【0086】
本実施形態では、芯ロープ部材Raの外表面に現れる側ストランド40の側素線の方向が、芯ロープ部材Raの長手方向とほぼ平行となり、当該長手方向と側ロープ部材Rbの側素線52の方向とがほぼ直交する。
【0087】
このため、いわゆるアンカー効果が、螺旋状ロープR1において、側ロープ部材Rbと芯ロープ部材Raとの間に発生し、側ロープ部材Rbの芯ロープ部材Raに対する係合力を強固に発生させる。これにより、側ロープ部材Rbの芯ロープ部材Raに対する巻装位置のずれが確実に防止され得る。
【0088】
その結果、螺旋状ロープR1を張設するにあたっては、当該螺旋状ロープR1を、一定張力でもって、均一に張設することが可能となるのは勿論のこと、風圧又は蔓科植物Bの手入れや伐採時等に螺旋状ロープR1に作用する外的引張力が発生しても、螺旋状ロープR1の側ロープ部材Rbが芯ロープ部材Raに対し位置ずれを生じることもない。
(第3実施形態)
図11は、本発明の第3実施形態の要部を示している。この第3実施形態において、蔓科植物育成用螺旋状ロープR2が、上記第1実施形態にて述べた螺旋状ロープR(図3参照)に代えて、採用されている。なお、この螺旋状ロープR2は、複数、上記第1実施形態にて述べたと同様に、ダイヤクロスパターンにて壁面Wに対向するように、複数の締結金具Tでもって支持されて、当該壁面緑化システムを構成している。
【0089】
当該螺旋状ロープR2は、側ストランドを欠落構成とする複撚りのロープからなるもので、当該螺旋状ロープR2は、上記第1実施形態にて述べた芯材10である撚り線を、本第3実施形態の芯ストランド(以下、芯ストランド10Aという)として採用するとともに、上記第1実施形態にて述べた側材20である撚り線を、4本、本第3実施形態の4束の側ストランド(以下、4束の側ストランド20Aという)として採用して構成されている。
【0090】
ここで、螺旋状ロープR2は、1束の芯ストランド及び6束の側ストランドを同時に撚る仕様を有する専用の撚り線機を用いて形成されるため、側ストランド20Aを4束とすることは、螺旋状ロープR2が、2束の側ストランド(図11にて二点鎖線で示す円参照)を欠落したロープとして、形成されることを意味する。
【0091】
即ち、4束の側ストランド20Aは、上記専用の撚り線機でもって、その固有の撚りピッチにて、芯ストランド10Aに対し、同時に、Z撚りに撚られている。これに伴い、芯ストランド10Aの外周には、螺旋状溝10cが、欠落した2束の側ストランドに対応して形成されている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0092】
このように構成した本第3実施形態においては、上述したごとく、螺旋状ロープR2において、4束の側ストランド20Aが、地球の北半球で成長する蔓科植物Bの蔓B1の巻回方向(反時計方向)に沿うように、芯ストランド10Aに対し反時計方向(Z撚りの方向)に巻装されている。しかも、芯ストランド10Aの外周には、螺旋状溝10cが、上述したごとく、形成されている(図11参照)。
【0093】
従って、蔓科植物Bは、上記第1実施形態にて述べたと同様に、蔓B1を、螺旋状溝10cに沿わせて、芯ストランド10Aに対し時計方向に円滑に巻回させながら成長する。その結果、本第3実施形態によっても、上記第1実施形態にて述べたと同様の作用効果が達成され得る。
【0094】
また、上述のように、螺旋状ロープR2は、2束の側ストランドを欠落させた構成とすることで、通常のロープと同様に製造することができ、その結果、大量生産に適している。
【0095】
また、上述のように、螺旋状ロープR2は、複撚り構造で、2束の側ストランドを欠落させた構成であることから、螺旋状ロープR2の表面が、より凹凸形状の螺旋状となっている。このため、螺旋状ロープR2は、その外表面積を増大させた構造となっている。その結果、螺旋状ロープR2の熱放射が促進されて蔓科植物の熱焼けが防止され得る。
【0096】
なお、上記第3実施形態においては、螺旋状ロープR2を、上述のごとく、2束の側ストランドを欠落させた構成とした例について説明したが、これに限らず、当該螺旋状ロープR2を、1束及び3束〜5束のいずれかを欠落させた構成としても、上記第3実施形態にて述べたと実質的に同様の作用効果が達成され得る。
【0097】
ちなみに、一般的には、例えば、外径2(mm)の撚り構成の7束×7本の側ストランドに対して、側ストランドの束数を2束或いは3束少なくした5束×7本或いは4束×7本の撚り構成を用いて、芯ストランドと各側ストランドとを同時に撚り合わせて形成する。
(第4実施形態)
図12は、本発明の第4実施形態の要部を示している。この第4実施形態では、上述した第3実施形態にて述べた各側ストランド20Aの撚り線としての各側素線22の撚り方向が、共に、芯ストランド10Aの撚り線としての各側素線12の撚り方向に対し、上述の交叉角α(=90°±10°の範囲以内の角度)をなすように、各側ストランド20Aが芯ストランド10Aに撚り合わされている。その他の構成は、上記第3実施形態と同様である。
【0098】
このように構成した本第4実施形態においては、4束の側ストランド20Aが、上述したごとく、その撚り線としての各側素線22の撚り方向にて、芯ストランド10Aの撚り線としての各側素線12の撚り方向に対し、90°±10°の範囲以内の角度をなすように、即ち、ほぼ直交するように撚られて、芯ストランド10Aに撚り合わされている。
【0099】
このため、上述したアンカー効果が、螺旋状ロープR2において、各側ストランド20Aと芯ストランド10Aとの間に発生し、各側ストランド20Aの芯ストランド10Aに対する係合力を強固に発生させる。これにより、各側ストランド20Aの芯ストランド10Aに対する巻装位置のずれが確実に防止され得る。
【0100】
その結果、螺旋状ロープR2を張設するにあたっては、当該螺旋状ロープR2を、一定張力でもって、均一に張設することが可能となるのは勿論のこと、風圧又は蔓科植物Bの手入れや伐採時等に各螺旋状ロープR2に作用する外的引張力が発生しても、螺旋状ロープR2の各側ストランド20Aが芯ストランド10Aに対し位置ずれを生じることもない。その他の作用効果は上記第3実施形態と同様である。
【0101】
ちなみに、螺旋状ロープR2、芯ストランド10A及び各側ストランド20Aの仕様を次の表1にて示すように選定したとき、上記交叉角は、α=95.2°として得られた。但し、芯ストランド10Aの芯素線の外径及び側素線の外径は、それぞれ、0.27(mm)及び0.25(mm)とする。また、側ストランド20Aの芯素線の外径及び側素線の外径は、共に、0.22(mm)とする。
【表1】
この表1において、螺旋状ロープR2の撚りピッチとは、芯ストランド10Aに対する4束の側ストランド20Aの撚りピッチをいう。芯ストランド10Aの撚りピッチとは、芯素線11に対する6本の側素線12の撚りピッチをいう。また、側ストランド20Aの撚りピッチとは、芯素線21に対する6本の側素線22の撚りピッチをいう。
【0102】
上述のように交叉角αが95.2°であることから、当該交叉角は、90°±10°の範囲以内の角度を満たす。従って、各側ストランド20Aの芯ストランド10Aに対する位置ずれが確実に防止され得ることが分かる。
(第5実施形態)
図13〜図15は、本発明の第5実施形態の要部を示している。この第5実施形態では、蔓科植物育成用螺旋状ロープR3が、上記第1実施形態にて述べた螺旋状ロープRに代えて、採用されている。なお、この螺旋状ロープR3は、複数、上記第1実施形態にて述べたと同様に、ダイヤクロスパターンにて壁面Wに対向するように、複数の締結金具Tでもって支持されて、当該壁面緑化システムを構成している。
【0103】
螺旋状ロープR3は、図13にて示すごとく、芯ロープ部材Rc及び側ロープ部材Rdを備えている。芯ロープ部材Rcは、図14にて示すごとく、上記第1実施形態にて述べた芯材10と、芯被覆層60とでもって構成されており、芯被覆層60は、樹脂材料でもって芯材10を被覆するように形成されている。
【0104】
一方、側ロープ部材Rdは、図15にて示すごとく、上記第1実施形態にて述べた側材20と、側被覆層70とでもって構成されており、側被覆層70は、樹脂材料でもって側材20を被覆するように形成されている。
【0105】
しかして、螺旋状ロープR3においては、側ロープ部材Rdが、芯ロープ部材Rcの芯被覆層60の外周に沿い、当該芯ロープ部材Rcに対し反時計方向(Z撚りの方向)に所定の巻回ピッチにて巻装されている。なお、芯ロープ部材Rc(或いは芯被覆層60)の外径は、2.4(mm)である。側ロープ部材Rd(或いは側被覆層70)の外径及び巻回ピッチは、1.8及び8.4(mm)である。また、側ロープ部材Rdの巻装後の螺旋外径は、5.7(mm)である。
【0106】
本第5実施形態においては、上述した芯被覆層60及び側被覆層70を形成する各樹脂材料としては、同一或いは同種の樹脂材料が採用されている。これは、芯ロープ部材Rcと側ロープ部材Rdとの間の滑りを不能にして、側ロープ部材Rdの芯ロープ部材Rcに対する巻装位置のずれ(螺旋状ロープR3のピッチずれ)を防ぐためである。
【0107】
このようにピッチずれが防止され得るのは、上述のように同一或いは同種の樹脂材料を用いることで、芯ロープ部材Rcの芯被覆層60と芯ロープ部材Rcに上述のように巻装された側ロープ部材Rdの側被覆層70との間に凝着現象が発生し、その結果、芯ロープ部材Rcと側ロープ部材Rdとの間の滑りを不能にするためと推測される。
【0108】
本実施形態において、上述の同一の樹脂材料を例示すれば、芯被覆層60及び側被覆層70の双方に用いられる形成材料として、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン或いはポリプロピレンが挙げられる。
【0109】
また、上述の同種の樹脂材料を例示すれば、第1には、芯被覆層60及び側被覆層70の一方の形成材料をポリアミドとしたとき、他方の形成材料として、ポリアミドエラストマー材が挙げられる。
【0110】
ここで、ポリアミドエラストマー材としては、ポリアミドとポリエーテルとのブロック共重合体が挙げられる。
【0111】
第2には、芯被覆層60及び側被覆層70の一方の形成材料をポリアミドとしたとき、他方の形成材料として、柔軟性を付与するための可塑剤を添加してなるポリアミドが挙げられる。
【0112】
さらには、芯被覆層60及び側被覆層70の一方の形成材料を、ポリアミドに代えて、ポリプロピレンとしたとき、他方の形成材料として、ポリプロピレンエラストマー材が挙げられる。このポリプロピレンエラストマー材としては、EPT或いはEPRが挙げられる。
【0113】
なお、ポリアミドに代わるポリ塩化ビニルに対しては、可塑剤添加のポリ塩化ビニルが挙げられ、また、ポリウレタンに対しては、ポリウレタンエラストマー材が挙げられる。さらに補足すれば、芯被覆層60及び側被覆層70の一方を形成する樹脂材料の主成分が、同一或いは同種の材料であればよい。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0114】
このように構成した本第5実施形態においては、芯ロープ部材Raの芯被覆層60及び側ロープ部材Rbの側被覆層70が、互いに、上述のごとく同一或いは同種の樹脂材料でもって形成されている。
【0115】
このため、芯ロープ部材Rcの芯被覆層60と当該芯ロープ部材Rcに巻装された側ロープ部材Rdの側被覆層70との間に凝着現象が発生して、芯ロープ部材Rc及び側ロープ部材Rdの間の滑りを不能にする。その結果、螺旋状ロープR3のピッチずれ、即ち、側ロープ部材Rdの芯ロープ部材Rcに対する巻装位置のずれが確実に防止され得る。
【0116】
また、芯被覆層60及び側被覆層70は、共に、樹脂材料からなるため、当該芯被覆層60及び側被覆層70の各熱伝導率は、芯材10や側材20を構成する鋼線のような金属線に比べて、極めて低い。
【0117】
ここで、芯材10及び側材20は、上述のことから分かるように、オーステナイト系ステンレス鋼線の撚り線でもって構成されている。また、当該撚り線の外周面は、凸状の螺旋形状となっているため、芯材10及び側材20の各外表面が増大している。
【0118】
従って、このような増大した外表面を有する芯材10及び側材20を、上述のように、芯被覆層60及び側被覆層70でもって被覆することで、蔓科植物への熱伝導率が大幅に低下され得る。その結果、本第5実施形態の螺旋状ロープR3によれば、夏の日照等における蔓科植物Bの熱焼けが大きく低減され得る。なお、補足すれば、上述のように増大した芯材10及び側材20の各外表面により、芯材10と芯被覆層60との間の係着力及び側材20と側被覆層70との間の係着力を向上させることができる。
【0119】
また、後述するように、上述の同一或いは同種の樹脂材料に着色顔料を添加することで、芯被覆層60及び側被覆層70において多彩な色調を得ることができる。
【0120】
さらに、付言すれば、芯ロープ部材Rc及び側ロープ部材Rdの間の固着強度を向上させるため、芯ロープ部材Rcを、大気圧以上の加圧窒素ガスを充填した接着剤を収納してなる接着剤塗布室の内部を通過させるようにして、芯被覆層60の外周面に接着剤を付着させ、その後、芯ロープ部材Rcに対し側ロープ部材Rdを上述のごとく螺旋状に巻装した上で、乾燥室を通過させるようにしてもよい。
【0121】
これにより、側ロープ部材Rdは、その側被覆層70にて、芯ロープ部材Rcの芯被覆層60に強固に接着され得る。なお、上記接着剤としては、「イソシアネート基を末端にもつ、例えば、坂井化学工業株式会社製の商品記号GF−100A・Bの接着剤」を用いる。
【0122】
また、本第5実施形態において、上記第2実施形態と実質的に同様に、側材20の撚り線としての各側素線の撚り方向が、芯材20の撚り線としての各側素線の撚り方向に対し上記交叉角α(=90°±10°の範囲以内の角度)をなしていれば、上述の芯被覆層60及び側被覆層70の間の凝着現象と相俟って、側ロープ部材Rdの芯ロープ部材Rcに対する巻装位置のずれが、より一層、確実に防止され得る。その他の作用効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。この第6実施形態は、上記第5実施形態に適用する例として、以下のようなことを前提に提案されている。
【0123】
一般的に、本発明にいう壁面緑化システムの螺旋状ロープの外表面の色調に限ることなく、従来の壁面緑化システムのロープの外表面の色調が、壁面緑化システムに沿い成長する蔓科植物の蔓、葉や花の色調、或いは壁面緑化システムの背景となる壁面の色調に適合する条件(以下、適合条件という)を満たさないと、ロープが、目立ってしまい、壁面緑化システムとしての見映えの低下を招くという不具合がある。従って、本発明においても、螺旋状ロープの外表面の色調が、上述の適合条件を満たしていることが望ましい。
【0124】
これに対しては、樹脂材料の着色容易性を利用すれば、上述の第5実施形態にて述べた芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を、蔓科植物の蔓、葉や花の色調、或いは当該壁面緑化システムの背景である壁面の色調に同化させることが可能である。ここで、当該同化とは、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を蔓科植物の蔓、葉や花の色調、或いは当該壁面緑化システムの背景である壁面の色調に適合させることをいう。なお、当該同化は、上記適合条件を満たす一例である。
【0125】
そこで、本第6実施形態では、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を蔓科植物の蔓、葉や花の色調、或いは背景である壁面の色調に同化させて、当該壁面緑化システムとしての見映えを良好に維持することを解決課題としている。
【0126】
そして、本第6実施形態では、このような解決課題を前提に、上記第5実施形態にて述べた芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を蔓科植物の蔓や葉の色調、或いは背景である壁面の色調に同化させた。
【0127】
具体的には、蔓科植物Bの蔓B1や葉B2(図2参照)の色調、或いは背景である壁面Wの色調を考慮して、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を、斑点模様、木目調模様或いは石目調模様とすることで、上述の同化を実現させた。
【0128】
例えば、蔓科植物Bの蔓B1の色調が淡緑色のときには、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を、白色の素地に緑の斑点を多数形成した斑点模様とする。
【0129】
これにより、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調が、蔓科植物Bの蔓B1及び葉B2の各緑の双方の色調を兼備して、蔓科植物Bの色調と同化し得る。さらに、補足すれば、例えば、蔓科植物の葉の色調は、緑色であっても、全ての葉が同一の明度や彩度を有する色調ではなく、これらが複合して濃い緑の部分とそうでない部分とがあり、このような場合において、上記斑点模様により、同化させることができる。
【0130】
また、蔓科植物Bの蔓B1の色調が茶褐色のときには、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を、茶色の木目調模様とする。これにより、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調が、蔓科植物Bの蔓B1の色調と同化し得る。
【0131】
また、蔓科植物Bが成長した際には、蔓科植物Bの葉B2が大きく育つため、螺旋状ロープR3が葉B2の陰となる。しかし、蔓科植物Bを植えた初期には、当該壁面緑化システムのダイヤクロスパターンに張設した螺旋状ロープR3が露出している。このため、当該螺旋状ロープR3が背景である壁面Wと比較して目立つ。
【0132】
このときには、壁面Wが、例えば、大理石調であれば、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を石目調模様とする。これにより、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調である石目調模様が、壁面Wの色調である大理石調と同化し得る。特に、蔓科植物の種類によっては、高層階へ達するのに1〜2年以上かかるものがある。従って、成長に時間がかかる蔓科植物にあっては、高層階の壁面緑化等の際には好適である。
【0133】
次に、上記第5実施形態にて述べた螺旋状ロープR3において、上述のように同化させる色調を芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方に発現させるにあたっては、当該螺旋状ロープR3を次のようにして製造する。
(1)第1の製造方法
芯材10及び各側材20を上記第5実施形態にて述べたように形成する。また、分子構造の異なる樹脂材料を着色して、この着色樹脂材料を、上記第5実施形態にて述べた樹脂材料(上記同一或いは同種の樹脂材料)に混合して、第1の同化用着色樹脂材料を作製し、この第1の同化用着色樹脂材料でもって、芯材10及び側材20のうち少なくとも一方を被覆するように芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方を成形して、芯ロープ部材Rc及び側ロープ部材Rdを製造する。なお、芯材10及び側材20のうち上記第1の同化用着色樹脂材料を用いて被覆されないものは、上記第5実施形態にて述べた樹脂材料(上記同一或いは同種の樹脂材料)でもって、被覆される。
【0134】
ついで、側ロープ部材Rdを、上記第5実施形態にて述べたと同様に、芯ロープ部材Rcにその長手方向に沿い間隔をおいて螺旋状に巻装する。この際、側ロープ部材Rdの芯ロープ部材Rcに対する巻装方向が、地球の北半球で成長する蔓科植物(B)の蔓(B1)の巻回方向に沿う方向となるように、側ロープ部材Rdを芯ロープ部材Rcに巻装する。
【0135】
以上のように、上記第5実施形態にて述べた螺旋状ロープR3において、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方を上記第1の同化用着色樹脂材料でもって被覆することで、本第6実施形態における螺旋状ロープが製造される。
【0136】
このように製造した螺旋状ロープを壁面緑化システムに張設すれば、上記第5実施形態にて述べた作用効果が達成され得るのは勿論のこと、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を蔓科植物の色調と同化させた色調が達成され得る。その結果、本第6実施形態で製造した螺旋状ロープが、蔓科植物に対して、目立つことがない。
(2)第2の製造方法
芯材10及び各側材20を上述と同様に形成する。また、メルトインデックス(MI)の相違する着色樹脂材料を、上記第5実施形態にて述べた樹脂材料(上記同一或いは同種の樹脂材料)に混合して、第2の同化用着色樹脂材料を作製し、この第2の同化用着色樹脂材料でもって、芯材10及び各側材20のうち少なくとも一方を被覆するようにして芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方を成形して、芯ロープ部材Rc及び側ロープ部材Rdを製造する。なお、芯材10及び側材20のうち上記第2の同化用着色樹脂材料を用いて被覆されないものは、上記第5実施形態にて述べた樹脂材料(上記同一或いは同種の樹脂材料)でもって、被覆される。上述の工程以外の各工程及び作用効果は、上述の第1の製造方法と同様である。
(3)より具体的には、以下の製造方法がある。
(a)斑点模様を発現する方法
有機酸化物と架橋反応する可塑性樹脂材料或いはエラストマーに、染色顔料及び有機過酸化物を配合したものでもって、芯材10及び側材20のうち少なくとも一方を被覆成形して、芯ロープ部材Rc及び側ロープ部材Rdの少なくとも一方を製造する。これにより、芯ロープ部材Rcの芯被覆層60及び側ロープ部材Rdの側被覆層70の少なくとも一方は、その外表面にて、斑点模様を発現し得る。
(b)木目調模様を発現する方法
メルトインデックスが5以下である高密度ポリエチレンに無機粉体及び着色剤を混合してなる着色剤組成物を、オレフィン系樹脂材料に添加したものを用いて、芯材10及び側材20のうち少なくとも一方を被覆成形して、芯ロープ部材Rc及び側ロープ部材Rdの少なくとも一方を製造する。これにより、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方は、その外表面にて、木目調模様を発現し得る。
(c)石目調模様を発現する方法
メルトインデックスが小さくて融点の高い着色剤、または上述の斑点模様を発現する方法で採用した配合剤に架橋反応性のない通常の熱可塑性樹脂を適量添加した上でこの添加量を調節したものを用いて、芯材10及び側材20のうち少なくとも一方を被覆成形して、芯ロープ部材Rc及び側ロープ部材Rdの少なくとも一方を製造する。これにより、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方は、その外表面にて、流れ模様の石目調模様を発現させ得る。なお、その他の構成及び作用効果は、上記第5実施形態と同様である。
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。この第7実施形態は、上記第5実施形態に適用する例として、以下のようなことを前提に提案されている。
【0137】
この第7実施形態では、上述の第6実施形態で述べた樹脂材料の着色容易性を利用して、第6実施形態で述べた同化とは異なり、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を、蔓科植物の蔓、葉や花の色調、或いは当該壁面緑化システムの背景である壁面の色調と補色対比の色調にして、当該壁面緑化システムとしての見映えを良好に維持することを解決課題としている。なお、上記補色対比は、上記第6実施形態にて述べた適合条件を満たす他の例である。
【0138】
しかして、本第7実施形態では、上述のような解決課題を前提に、上記第5実施形態にて述べた芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を、蔓科植物Bの色調、或いは当該壁面緑化システムの背景である壁面Wの色調と補色対比の色調にした。
【0139】
具体的には、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を、蔓科植物Bの花の色調と補色対比の色調とする。
【0140】
例えば、蔓科植物Bの花の色が「赤色」であれば、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調は「緑色」とする。これにより、より鮮やかな「赤色」を演出させることができる。これは、「赤色」と「緑色」とは、色相環では、互いに反対色で補色対比の関係にあるからである。
【0141】
また、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調は、上記第6実施形態と同様に、斑点模様、木目調模様或いは石目調模様としてもよく、その際、明度及び彩度のいずれか一方又は明度・彩度の双方の高い彩色と補色対比の関係にあればよい。
【0142】
次に、上記第5実施形態にて述べた螺旋状ロープR3において、上述のように補色対比の色調を芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方に発現させるにあたっては、当該螺旋状ロープR3を次のようにして製造する。
(1)第1の製造方法
この第1の製造方法は、上記第6実施形態にて述べた第1の製造方法とは、第1の同化用着色樹脂材料ではなく、組成の異なる樹脂材料を着色してなる着色樹脂材料を上記第5実施形態にて述べた樹脂材料(上記同一或いは同種の樹脂材料)に混合して作製した第1の補色対比用着色樹脂材料でもって、芯材10及び側材20のうち少なくとも一方を被覆成形する点において異なる。
【0143】
これによれば、上述した同化による色調とは異なり、蔓科植物Bの花の色調と補色対比の色調が、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方において達成され得る。その結果、本第7実施形態で製造した螺旋状ロープが、蔓科植物Bに対して、目立つことがない。なお、その他の構成及び作用効果は、上記第5実施形態と同様である。
(2)第2の製造方法
この第2の製造方法は、本第7実施形態の上記第1の製造方法とは、上記第1の同化用着色樹脂材料ではなく、メルトインデックス(MI)の相違する補色対比用着色樹脂材料を上記第5実施形態にて述べた樹脂材料に混合して作製してなる第2の補色対比用着色樹脂材料でもって、芯材10及び側材20のうち少なくとも一方を被覆成形する点において異なる。これにより、上述の第1の製造方法による作用効果と同様の作用効果が達成され得る。
(第8実施形態)
図16は、本発明の第8実施形態を示している。この第8実施形態では、図16にて示すような壁面緑化システムが、上記第1実施形態にて述べた壁面緑化システムに代えて、採用されている。
【0144】
本第8実施形態の壁面緑化システムは、上記第1実施形態にて述べた複数の蔓科植物育成用螺旋状ロープRが、チェックパターンにて壁面Wに傾斜状に対向するように、複数の締結金具T及び両締結バーT1、T2でもって張設されて、壁面Wの上部と地面との間に支持されている。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0145】
このように構成した本第8実施形態によれば、上記第1実施形態にて述べた作用効果が、上記分流作用による作用効果を除き、達成され得る。
【0146】
なお、本第8実施形態にいう壁面緑化システムは、上記第1実施形態にて述べた壁面緑化システムに限ることなく、上記第2〜第7の実施形態のいずれかにて述べた壁面緑化システムに代えて、採用してもよい。
【0147】
これによれば、上記第2〜第7の実施形態のいずれかにて述べた作用効果が、上記分流作用による作用効果を除き、達成され得る。
(第9実施形態)
図17は、本発明の第9実施形態を示している。この第9実施形態では、図17にて示すような壁面緑化システムが、上記第1実施形態にて述べた壁面緑化システムに代えて、採用されている。
【0148】
本第9実施形態の壁面緑化システムは、上記第1実施形態にて述べた複数の蔓科植物育成用螺旋状ロープRが、ストレートパターンにて壁面Wに傾斜状に対向するように、複数の締結金具T及び両締結バーT1、T2でもって張設されて、当該壁面Wの上部と地面との間に支持されている。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0149】
このように構成した本第9実施形態によれば、上記第1実施形態にて述べた作用効果が、上記分流作用による作用効果を除き、達成され得る。
【0150】
なお、本第9実施形態にいう壁面緑化システムは、上記第1実施形態にて述べた壁面緑化システムに限ることなく、上記第2〜第7の実施形態のいずれかにて述べた壁面緑化システムに代えて、採用してもよい。
【0151】
これによれば、上記第2〜第7の実施形態のいずれかにて述べた作用効果が、上記分流作用による作用効果を除き、達成され得る。
【0152】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記各実施形態では、蔓科植物が地球の北半球で成長することを前提とする例について説明したが、これに代えて、地球の南半球で成長する蔓科植物に対しては、側材(側材20、側ロープ部材Rb或いは側ロープ部材Rd)の芯材(芯材10、芯ロープ部材Ra或いは芯ロープ部材Rc)に対する巻装方向を、地球の南半球で成長する蔓科植物の蔓の巻回方向に沿わせるように、蔓の生長端部側からみて、時計方向とする(図5参照)。これによっても、上記各実施形態にて述べたと実質的に同様の作用効果が達成され得る。このようなことは、側材(側ストランド20A)の芯材(芯ストランド10A)に対する撚り方向に対しても、同様に成立する。
(2)上記第1実施形態において、側材20の撚り線としての各側素線の撚り方向が、芯材10の撚り線としての各側素線の撚り方向に対し、交叉角αをなすように構成してもよい。これによっても、上記第2実施形態にて述べたと同様の作用効果が達成され得る。
(3)上記第7実施形態にいう補色対比の色調としては、赤色と緑色に限ることなく、例えば、紫と黄色であってもよく、一般には、色相環において、正反対に位置する関係の色同士であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】図1は、本発明を適用してなる壁面緑化システムの第1実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の壁面緑化システムの蔓科植物育成用螺旋状ロープ及びこの螺旋状ロープに沿い成長する蔓科植物を部分的に示す部分拡大側面図である。
【図3】図2の螺旋状ロープを示す部分側面図である。
【図4】地球の北半球で成長する蔓科植物の蔓の巻回方向に沿うように構成される螺旋状ロープの説明図である。
【図5】地球の南半球で成長する蔓科植物の蔓の巻回方向に沿うように構成される螺旋状ロープの説明図である。
【図6】風が丸棒に吹き付けたときのカルマン渦列の発生状態を説明するための模式的斜視図である。
【図7】図3の螺旋状ロープの整流作用を説明する説明図である。
【図8】図1の壁面緑化システムにおける螺旋状ロープの分流作用を説明するための模式図である。
【図9】本発明の第2実施形態の要部を示す部分側面図である。
【図10】図9で示す螺旋状ロープの部分拡大側面図である。
【図11】本発明の第3実施形態の要部を示す部分側面図である。
【図12】本発明の第4実施形態の要部を示す部分側面図である。
【図13】本発明の第5実施形態の要部を示す部分側面図である。
【図14】上記第5実施形態における芯ロープ部材の拡大断面図である。
【図15】上記第5実施形態における側ロープ部材の拡大断面図である。
【図16】本発明の第8実施形態の正面図である。
【図17】本発明の第9実施形態の正面図である。
【符号の説明】
【0154】
10…芯材、10A、30…芯ストランド、11、21、51…芯素線、
12、22、52…側素線、20…側材、20A、40…側ストランド、
60…芯被覆層、70…側被覆層、α…所定の交叉角、B…蔓科植物、B1…蔓、
Ra、Rc…芯ロープ部材、Rb、Rd…側ロープ部材、W…壁面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、蔓科植物育成用螺旋状ロープ及びその製造方法並びに当該螺旋状ロープを用いる壁面緑化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の螺旋状ロープとしては、下記特許文献1に開示された壁面緑化工法とワイヤ張設装置において採用されているロープがある。このロープは、鋼線を撚り合わせたワイヤ主体に樹脂をコーティングしたものに、金属製芯材に樹脂のコーティングを施した線材を螺旋状に巻きつけた構成となっている。
【特許文献1】特開2006−36号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した壁面緑化工法とワイヤ張設装置において採用されているロープは、上述のような螺旋状に巻きつけた構成を有するにすぎない。
【0004】
従って、当該ワイヤ張設装置を蔓科植物に適用するにあたり、上述の線材のワイヤ主体に対する巻き付け方向が、蔓科植物の成長に伴う蔓の巻き特性に合わないと、蔓が、ロープに円滑に巻き付きにくく、脱落したりするという不具合を招く。
【0005】
また、ロープの外表面の色調が、蔓科植物等の当該ロープの周囲の色調に合わないと、見映えが低下するという不具合を招く。
【0006】
そこで、本発明は、以上述べたことに対処するために、蔓科植物の成長特性等に適するように構成に工夫を凝らしてなる蔓科植物育成用螺旋状ロープ及びその製造方法並びに当該螺旋状ロープを用いてなる壁面緑化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決にあたり、本発明に係る蔓科植物育成用螺旋状ロープは、請求項1の記載によれば、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる芯材(10、10A、Ra、Rc)と、
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる側材(20、20A、Rb、Rd)とを備えて、
側材は、芯材に対し、蔓科植物(B)の蔓(B1)の巻回方向に沿う方向に間隔をおいて螺旋状に巻装されている。
【0008】
このように、側材の芯材に対する巻装方向が蔓科植物の蔓の巻回方向に沿う方向である。従って、蔓科植物の蔓の巻回方向が、当該蔓の成長端部側からみて、反時計方向であれば、側材の芯材に対する巻装方向は、当該反時計方向に沿う方向である。このため、この方向に沿うように、螺旋状溝が螺旋状ロープの外周に形成される。
【0009】
一方、蔓科植物の蔓の巻回方向が、当該蔓の成長端部側からみて、時計方向であれば、側材の芯材に対する巻装方向は、当該時計方向に沿う方向である。このため、この方向に沿うように、螺旋状溝が螺旋状ロープの外周に形成される。
【0010】
その結果、蔓科植物の蔓の巻回方向が反時計方向及び時計方向のいずれであっても、当該蔓科植物は、蔓を、ロープの螺旋状溝に沿わせて、芯材に対し円滑に巻回させながら成長し得る。
【0011】
また、上述のごとく、芯材及び側材を構成する材料は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線である。これによれば、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線の熱伝導率が、一般の炭素鋼の約2分の1程度と低いことから、当該撚り線は、温まりにくく、冷めにくい性質を有する。しかも、芯材及び側材は、上述のように撚り線とすることで、芯材及び側材の各表面積を増大させる構造となっている。このため、夏の日照りのときには、オーステナイト系ステンレス鋼からなる撚り線が、螺旋状ロープの熱放射を助長する。その結果、蔓科植物の熱焼けが良好に防止され得る。
【0012】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープにおいて、芯材を被覆してなる芯被覆体(60)と、側材を被覆してなる側被覆体(70)とを備えており、
芯被覆体及び側被覆体は、互いに、同一或いは同種の樹脂材料でもって形成されていることを特徴とする。
【0013】
このように、芯材及び側材を被覆する芯被覆体及び側被覆体が、互いに、同一或いは同種の樹脂材料でもって形成されている。このため、芯被覆体とこの芯被覆体に巻装されている側被覆体との間に凝着現象が発生して、芯被覆体と側被覆体との間の滑りを不能にし得る。
【0014】
その結果、側被覆体で被覆された側材が、芯被覆体で被覆された芯材に巻装された状態において、請求項1に記載の発明の作用効果を達成しつつ、当該側材の芯材に対する巻装位置のずれが確実に防止され得る。
【0015】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項2に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープにおいて、上記同一或いは同種の樹脂材料には、芯被覆体及び側被覆体のうち少なくとも一方において、蔓科植物の色調と同化の可能な色調を発現する材料が付加されていることを特徴とする。
【0016】
これによれば、芯被覆体及び側被覆体のうち少なくとも一方が、同一或いは同種の樹脂材料に蔓科植物の色調と同化の可能な色調を発現する材料を付加してなる樹脂材料でもって形成されている。
【0017】
従って、芯被覆体及び側被覆体のうち少なくとも一方が、蔓科植物の色調に同化している。その結果、請求項2に記載の発明の作用効果を達成し得るのは勿論のこと、芯被覆体及び側被覆体のうち少なくとも一方が、蔓科植物に比べて、目立つことがないという特有の作用効果を達成し得る。このような特有の作用効果を達成する当該螺旋状ロープを壁面緑化システムに用いれば、この壁面緑化システムの見映えが良好に維持され得る。
【0018】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項2に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープにおいて、上記同一或いは同種の樹脂材料には、芯被覆体及び側被覆体のうち少なくとも一方において、蔓科植物の色調と補色対比の可能な色調を発現する材料が付加されていることを特徴とする。
【0019】
これによれば、芯被覆体及び側被覆体のうち少なくとも一方が、同一或いは同種の樹脂材料に蔓科植物の色調と補色対比の可能な色調を発現する材料を付加してなる材料でもって形成されている。
【0020】
従って、芯被覆体及び側被覆体のうち少なくとも一方の色調が、蔓科植物の色調と補色対比の色調となっている。その結果、請求項2に記載の発明の作用効果を達成し得るのは勿論のこと、芯被覆体及び側被覆体のうち少なくとも一方が、蔓科植物に比べて、目立つことがないという特有の作用効果を達成し得る。このような特有の作用効果を達成する当該螺旋状ロープを壁面緑化システムに用いれば、この壁面緑化システムの見映えが良好に維持され得る。
【0021】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項1に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープにおいて、
芯材は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線(11、12)からなる芯ストランド(10、10A)であり、
側材は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線(21、22)からなる1束または複数束の側ストランド(20、20A)であり、
上記1束または複数束の側ストランドの撚り線としての各素線の撚り方向は、芯ストランドの撚り線としての各素線の撚り方向に対し、所定の交叉角(α)をなしていることを特徴とする。
【0022】
これによれば、側ストランドの撚り線としての各素線の撚り方向は、芯ストランドの撚り線としての各素線の撚り方向に対し、上記所定の交叉角をなしているから、いわゆるアンカー効果が、側ストランドと芯ストランドとの間に発生する。
【0023】
このため、側ストランドの芯ストランドに対する係合力が強固に発生する。これにより、請求項1に記載の発明の作用効果が達成され得るのは勿論のこと、側ストランドの芯ストランドに対する巻装位置のずれが確実に防止され得る。
【0024】
また、本発明は、請求項6の記載によれば、請求項2〜4のいずれか1つに記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープにおいて、
芯材は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線(11、12)からなる芯ストランド(10、10A)であり、
側材は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線(21、22)からなる1束または複数束の側ストランド(20、20A)であり、
上記1束または複数束の側ストランドの撚り線としての各素線の撚り方向は、芯ストランドの撚り線としての各素線の撚り方向に対し、所定の交叉角(α)をなしており、
芯被覆体は、芯材を被覆してなる芯被覆層(60)であり、
側被覆体は、上記1束または複数束の側ストランドをそれぞれ被覆してなる側被覆層(70)であり、
芯被覆層は、上記側被覆層と上記同一或いは同種の樹脂材料でもって形成されていることを特徴とする。
【0025】
これによれば、1束または複数束の側ストランドの撚り線としての各素線の撚り方向は、芯ストランドの撚り線としての各素線の撚り方向に対し、上記所定の交叉角をなしているから、いわゆるアンカー効果が、上記1束または複数束の側ストランドと芯ストランドとの間に発生する。
【0026】
このため、上記1束または複数束の側ストランドの芯ストランドに対する係合力が強固に発生する。これにより、請求項2〜4のいずれか1つに記載の発明の作用効果が達成され得るのは勿論のこと、上記1束または複数束の側ストランドの芯ストランドに対する巻装位置のずれが確実に防止され得る。
【0027】
また、本発明は、請求項7の記載によれば、請求項1〜4のいずれか1つに記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープにおいて、
芯材は、芯ロープ部材(Ra)でもって構成されており、
側材は、側ロープ部材(Rb)でもって構成されており、
芯ロープ部材は、
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線(11、12)からなる複数束のストランド(10、10A)を撚って形成した芯ストランド(30)と、
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線(11、12)からなる複数束のストランド(10、10A)を撚って形成されて芯ストランドに螺旋状に連続的に巻装してなる複数束の側ストランド(40)とを備えており、
側ロープ部材は、芯ロープ部材に対し、蔓科植物の蔓の巻回方向に沿う方向に間隔をおいて螺旋状に巻装されたオーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなるストランドであることを特徴とする。
【0028】
これによれば、芯ロープ部材は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる複数束のストランドで構成した芯ストランドと、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる複数束のストランドをそれぞれ撚ってなる複数束の側ストランドとでもって構成されている。また、側ロープ部材は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなるストランドである。
【0029】
ここで、このように芯ロープ部材及び側ロープ部材が構成されていても、側ロープ部材の芯ロープ部材に対する巻装方向は蔓科植物の蔓の巻回方向に沿う方向である。
【0030】
その結果、本請求項7に記載の発明によっても、請求項1〜4のいずれか1つに記載の発明と同様の作用効果が達成され得る。
【0031】
また、本発明は、請求項8の記載によれば、請求項7に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープにおいて、
側ロープ部材であるストランドの撚り線としての各素線の撚り方向は、芯ロープ部材の複数束の側ストランドの撚り線としての各素線の撚り方向に対し、所定の交叉角(α)をなしていることを特徴とする。
【0032】
これによれば、側ロープ部材であるストランドの撚り線としての各素線の撚り方向が、芯ロープ部材の複数束の側ストランドの撚り線としての各素線の撚り方向に対し、上記所定の交叉角(α)をなしている。従って、いわゆるアンカー効果が、側ロープ部材と芯ロープ部材との間に発生する。このため、側ロープ部材の芯ロープ部材に対する係合力が強固に発生する。これにより、請求項7に記載の発明の作用効果が達成され得るのは勿論のこと、側ロープ部材の芯ロープ部材に対する巻装位置のずれが確実に防止され得る。
【0033】
また、本発明は、請求項9の記載によれば、請求項6または8に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープにおいて、上記所定の交叉角は、90°±10°の範囲以内の角度、好ましくは90°であることを特徴とする。
【0034】
これにより、請求項6または8に記載の発明の作用効果がより一層確実に達成され得る。
【0035】
また、本発明に係る壁面緑化システムは、請求項10の記載によれば、
請求項1〜9のいずれか1つに記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープを、複数、備えて、
当該複数の螺旋状ロープを、所定の張設パターンにて壁面(W)に対向するように、当該壁面に支持されてなるものである。
【0036】
これによれば、上記所定の張設パターンが、例えば、ダイヤクロスパターン、チェッククロスパターン或いはストライプパターンであっても、請求項1〜9のいずれか1つに記載の発明の作用効果を達成し得る壁面緑化システムの提供が可能となる。
【0037】
また、本発明は、請求項11の記載によれば、
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる芯材(10、10A、Ra)及びオーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる側材(20、20A、Rb)を被覆するように同一或いは同種の樹脂材料でもって芯被覆層(60)及び側被覆層(70)を形成し、
側材を、芯材に対し、蔓科植物(B)の蔓(B1)の巻回方向に沿う方向に間隔をおいて螺旋状に巻装するようにした蔓科植物育成用螺旋状ロープの製造方法であって、
芯被覆層及び側被覆層の少なくとも一方が、分子構造の異なる着色樹脂材料を上記同一或いは同種の樹脂材料に混合してなる第1の同化用着色樹脂材料、或いはメルトインデックスの相違する着色樹脂材料を上記同一或いは同種の樹脂材料に混合してなる第2の同化用着色樹脂材料でもって、芯材及び側材の少なくとも一方を被覆するように形成される。
【0038】
これによれば、芯被覆層及び側被覆層のうち少なくとも一方が、蔓科植物の色調に同化することで、請求項3に記載の発明の作用効果を達成し得る螺旋状ロープの提供が可能となる。
【0039】
また、本発明は、請求項12の記載によれば、
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる芯材(10、10A、Ra)及びオーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる側材(20、20A、Rb)を被覆するように同一或いは同種の樹脂材料でもって芯被覆層(60)及び側被覆層(70)を形成し、
側材を、芯材に対し、蔓科植物(B)の蔓(B1)の巻回方向に沿う方向に間隔をおいて螺旋状に巻装するようにした蔓科植物育成用螺旋状ロープの製造方法であって、
芯被覆層及び側被覆層の少なくとも一方が、組成の異なる着色樹脂材料を上記同一或いは同種の樹脂材料に混合してなる第1の補色対比用着色樹脂材料、或いはメルトインデックスの相違する着色樹脂材料を上記同一或いは同種の樹脂材料に混合してなる第2の補色対比用着色樹脂材料でもって、芯材及び側材の少なくとも一方を被覆するように形成される。
【0040】
これによれば、芯被覆層及び側被覆層のうち少なくとも一方の色調が、蔓科植物の色調と補色対比の色調となることで、請求項4に記載の発明の作用効果を達成し得る蔓科植物育成用螺旋状ロープの提供が可能となる。
【0041】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の各実施形態を図面により説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明を適用してなる壁面緑化システムの第1実施形態を示している。この壁面緑化システムは複数の蔓科植物育成用螺旋状ロープRを備えており、これら各螺旋状ロープRは、図1にて示すごとく、所定の張設パターンの1つであるダイヤクロスパターンにて壁面Wに傾斜状に対向するように、当該壁面Wの上部と地面との間に、複数の締結金具Tでもって支持されている。本第1実施形態では、蔓科植物Bが、図1及び図2にて示すごとく、当該壁面緑化システムに沿い成長する例として示されている。
【0043】
螺旋状ロープRは、図2及び図3にて示すごとく、芯材10及び側材20を備えている。芯材10は、1本の芯素線11に、6本の側素線12をZ撚りに撚り合わせて撚り線として形成されている(図3参照)。
【0044】
側材20は、1本の芯素線21に、6本の側素線22をS撚りに撚り合わせて撚り線として形成されており、この側材20は、芯材10に、その長手方向に沿い、所定の巻回ピッチP(図3参照)にて、反時計方向(Z撚りの方向)に螺旋状に巻装されている。これに伴い、溝10aが、図2及び図3にて示すごとく、図示上方に向けて芯材10の外周に沿い反時計方向に、螺旋状に巻回するように形成されている。
【0045】
なお、上述した「Z撚り」とは、芯材10を図3にて図示上方からみたとき、芯素線11に対し各側素線12を図示上方に向けて反時計方向に撚ることをいい、また、「S撚り」とは、Z撚りとは逆方向の撚り、即ち、時計方向に撚ることをいう。また、側材20の芯素線21及び各側素線22は、上述した芯材10の芯素線11及び各側素線12と共に、オーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)でもって形成されている。
【0046】
ここで、側材20を芯材10に対し反時計方向に巻装する根拠について説明する。蔓科植物Bを当該壁面緑化システムの各螺旋状ロープRに沿い円滑に成長させるためには、側材20の芯材10に対する巻装方向を蔓科植物Bの蔓B1の成長特性に合わせることが必要であり、一般的に、当該蔓科植物の蔓の巻回方向は、地球の北半球と南半球とで相違する。このような相違は、地球の自転による遠心力に起因すると考えられている。
【0047】
具体的には、地球の北半球で成長する蔓科植物の蔓は、その成長先端部側から見て、反時計方向(左巻き方向)に巻回しながら成長する。一方、地球の南半球で成長する蔓科植物の蔓は、その成長先端部側から見て、時計方向(右巻き方向)に巻回しながら成長する。
【0048】
従って、螺旋状ロープRにおいて、北半球では、側材20の芯材10に対する巻装方向を、図4にて矢印で示すごとく、芯材10の図示上方から見て、北半球で成長する蔓科植物の蔓の巻回方向(上記反時計方向)に合わせる必要がある。一方、南半球でも同様に、図5にて矢印で示すごとく、南半球で成長する蔓科植物の蔓の巻回方向(上記時計方向)に合わせる必要がある。
【0049】
以上のことから、本第1実施形態では、蔓科植物Bが地球の北半球で成長することを前提に、側材20の芯材10に対する巻装方向は、図2〜図4にて示すごとく、蔓科植物Bの蔓B1(図2参照)の巻回方向(上記反時計方向)に沿うように、芯材10の上方から見て、反時計方向に設定されている。
【0050】
また、本第1実施形態では、螺旋状ロープRの形成にあたり、専用の撚り線機を用いることなく、適宜な機械を用いて、側材20を芯材10に巻装することで、上述の所定の巻回ピッチPは、任意に設定できる。
【0051】
なお、専用の撚り線機を用いて、側材20を芯材10にそれぞれストランドとして撚り合わせる場合には、上述の所定の巻回ピッチPは、撚り線機の仕様で決まる撚りピッチに規制される。例えば、当該撚り線機が1束の芯ストランドの周りに6束の側ストランドを同時に撚り合わせる仕様を有すれば、本第1実施形態にいう螺旋状ロープRは、側ストランドを5束欠落させた状態で、側材20を芯材10に撚り合わせることで形成される。
【0052】
以上のように構成した本第1実施形態では、上述したごとく、螺旋状ロープRにおいて、側材20が、地球の北半球で成長する蔓科植物Bの蔓B1の巻回方向に沿うように、上述のごとく、芯材10に対し反時計方向(Z撚りの方向)に巻装されている。しかも、螺旋状溝10aが、上述のごとく、芯材10の外周に沿い形成されている。
【0053】
従って、蔓科植物Bは、図2にて示すごとく、蔓B1を、側材20の螺旋状溝10aに沿わせて、芯材10に対し時計方向に円滑に巻回させながら成長し得る。
【0054】
また、上述のように側材20の芯材10に対する巻装方向が蔓科植物Bの蔓B1の巻回方向に沿うことで、蔓科植物Bの螺旋状ロープRに対する係着力を強固に維持し得る。その結果、当該蔓科植物Bは、螺旋状ロープRから脱落したりすることがなく、当該蔓科植物Bの上方への伸長が円滑に助長され得る。
【0055】
また、上述のように蔓科植物Bの螺旋状ロープRに対する係着力を強固に維持し得ることから、例えば、強風、降雨や地震等が生じても、蔓科植物Bの螺旋状ロープRからの脱落や地上への落下を未然に防止することができ、その結果、当該蔓科植物Bの成長を阻害することがない。
【0056】
また、本第1実施形態によれば、側材20の芯材10に対する巻装構造が、上述のことから明らかなように、螺旋状構造であることから、さらに、次のような作用効果が達成され得る。
【0057】
即ち、ロープRが螺旋状構造であるため、従来の螺旋状構造を有しないロープにおいて発生しがちであった耳障りな風切り音の発生が抑制され得る。このことは、上述の従来のロープに発生しがちな風騒音が、螺旋状ロープRによって、大幅に低減され得ることを意味する。
【0058】
この点につき詳細に述べれば、一般に、風が、図6にて矢印1でもって示すごとく、丸棒2にその左側から吹き付けると、風下側である丸棒2の右側には、カルマン渦列3が、図6にて示すごとく発生して、風騒音を発生させる原因となっている。
【0059】
これに対し、図6において、本第1実施形態の螺旋状ロープRが丸棒2に代えて位置すると仮定したとき、このロープRは、上述のごとく、螺旋状構造を有するため、当該螺旋状ロープRの風下側におけるカルマン渦列の発生が抑制される。その結果、上述した風騒音の発生が螺旋状ロープRによって良好に低減され得る。
【0060】
また、上述のように耳障りな風切り音の発生が抑制されるということは、螺旋状ロープRの風切り特性が良好であることを意味する。従って、当該螺旋状ロープRが風圧により受ける力が良好に低減され得る。その結果、次のような作用効果がさらに達成され得る。
【0061】
従来の多数のロープを用いた壁面緑化システムでは、風圧に耐え得るように、ロープの締結金具に対する引張強度が増大されていた。また、風圧のために、ロープの張設バランスの崩れが発生することから、壁面緑化システムとしての見映えが低下するおそれがあった。従って、ロープの張設状態に対する再調整作業が必要であった。また、強風時、特に台風時においては、過大な引張力が、風圧のために、ロープに作用し、その結果、ロープが締結金具から離脱するおそれがあった。
【0062】
これに対し、本第1実施形態のように、螺旋状ロープRを複数用いて壁面緑化システムを構成する場合、この螺旋状ロープRが上述のように風切り特性の良好な螺旋状構造を有する。このため、この螺旋状ロープRの締結金具Tに対する引張強度を増大させる必要がなく、従って、螺旋状ロープRの張設状態に対する再調整作業が不要となり、また、張設バランスも適正に確保されて、当該壁面緑化システムの見映えが良好に維持され得る。また、台風の時等においては、上述のように螺旋状ロープRの締結金具Tに対する引張強度を増大させなくても、螺旋状ロープRが締結金具Tから離脱することもない。
【0063】
また、当該壁面緑化システムは、以下に述べるように、悪天候による降雨で生ずる雨水や、蔓科植物Bへの放水に対し、整流作用を発揮するとともに、放水等による水を均一に分散させる作用(分散作用)を発揮する。
【0064】
以下、このような当該壁面緑化システムの作用について詳細に述べる。当該壁面緑化システムにおいては、複数の螺旋状ロープRが、上述のごとく、ダイヤクロスパターンを構成するように張設されている。しかも、各螺旋状ロープRは、上述のごとく、螺旋状溝10aを有する。
【0065】
このため、雨水が螺旋状ロープRに当たると、当該雨水が、図7にて符号fで示すごとく、螺旋状溝10aに溜まり、雨水の流れとなる。そして、この雨水の流れは、重力により、図7にて各矢印で示すごとく、螺旋状溝10aに沿い流下していく。このことは、螺旋状溝10aが、連続する排水溝としての役目を果たし、雨水の流れに対し、整流作用を発揮することを意味する。その結果、上述の雨水の流れは、螺旋状溝10aにより整流されて、当該螺旋状溝10aから流れ出ることなく、流下し得る。
【0066】
また、当該壁面緑化システムでは、複数の螺旋状ロープRが、上述のごとく、ダイヤクロスパターンを構成するように張設されている。このため、隣り合う両螺旋状ロープRが、そのクロス部C(図8参照)において、上述のように整流されながら当該両螺旋状ロープRの各螺旋状溝10aを流下する雨水の流れ(図8の各符号g、h参照)に対し、分流作用を発揮する。このため、当該雨水の流れは、上述のように整流されつつ、隣り合う各両螺旋状ロープRに沿い、そのクロス部Cでもって、各矢印i、j(図8参照)にて示すごとく、分流されながら流下していく。
【0067】
ここで、上述の雨水が蔓科植物への放水であるとすれば、蔓科植物の全体への放水が、その特定部分を地上へ落下させることなく、上述のような整流作用及び分流作用の相乗作用でもって、効率よく、均一に分散するようになされ得る。
【0068】
なお、雨水が一箇所に集中すると、水はけが悪いために蔓科植物の根腐れを生じ易いが、このような根腐れの発生が、上述のような整流作用と分流作用との相乗作用でもって、適正に低減され得る。
【0069】
また、本第1実施形態においては、上述のごとく、芯素線11と側素線12とからなる撚り線及び芯素線21と側素線22とからなる撚り線が、オーステナイト系ステンレス鋼線でもって形成されている。また、芯材10及び側材20は、オーステナイト系ステンレス鋼線を所定のダイスでもって伸線加工し、このように伸線加工したオーステナイト系ステンレス鋼線を、複数本、撚り線加工することで形成される。
【0070】
ここで、オーステナイト系ステンレス鋼線の熱伝導率は、14(kcal/m.hr.℃)であって、一般の炭素鋼の約2分の1である。従って、オーステナイト系ステンレス鋼線は、温まりにくく、冷めにくい性質を有する。しかも、上述のように撚り線とすることで、芯材10及び側材20の各表面積を増大させる構造となっている。
【0071】
これにより、夏の日照りのときには、芯材10及び側材20の熱放射が助長される。その結果、蔓科植物の熱焼け等が良好に防止され得る。
【0072】
さらには、本第1実施形態の螺旋状ロープRの外周面は、撚り線構造のため、凸状かつ螺旋状となっているから、当該螺旋状ロープRの外周面の面積が増大されている。このため、螺旋状ロープRとしての熱放射が促進されて、上述した蔓科植物の熱焼けの防止がより一層向上され得る。
【0073】
なお、上述の撚り線の各オーステナイト系ステンレス鋼線は、上述のごとく、ダイスでもって、伸線加工されているから、当該撚り線の表面は、概ね、鏡面状となっている。このため、当該撚り線、即ち芯材10や側材20の表面の水滴との接触角が小さく、雨水の地面への排水作用が高いといえる。
(第2実施形態)
図9及び図10は、本発明の第2実施形態の要部を示している。この第2実施形態では、蔓科植物育成用螺旋状ロープR1が、上記第1実施形態にて述べた螺旋状ロープRに代えて、図9にて示すごとく、採用されている。なお、この螺旋状ロープR1は、複数、上記第1実施形態にて述べたと同様に、ダイヤクロスパターンにて壁面Wに対向するように、複数の締結金具Tでもって支持されて、当該壁面緑化システムを構成している。
【0074】
螺旋状ロープR1は、芯ロープ部材Ra及び側ロープ部材Rbを備えており、側ロープ部材Rbは、芯ロープ部材Raにその長手方向に沿い所定の巻回ピッチ(13.8(mm))にて反時計方向(Z撚りの方向)(図9及び図10参照)に巻装されている。これに伴い、芯ロープ部材Raの外周には、螺旋状溝10bが形成されている。
【0075】
芯ロープ部材Raは、図10にて示すごとく、7×7の複撚り構成にて、1束の芯ストランド30及び6束の側ストランド40を備えている。芯ストランド30は、上記第1実施形態にて述べた芯材10である撚り線を7本用い、Z撚りの撚り線として形成されている。なお、ここでいう7×7の複撚り構成とは、1束7本の撚り線を7束撚り合わせたロープ構造のことをいう。
【0076】
6束の側ストランド40は、当該側ストランド毎に、上記第1実施形態にて述べた芯材10である撚り線を7本用い、S撚りの撚り線として形成されている。
【0077】
本第2実施形態において、芯ロープ部材Raにおいて、芯ストランド30の外径は、0.77(mm)であり、芯ストランド30の芯を構成する素線外径は、0.27(mm)であり、側を構成する側ストランドの素線外径は0.25(mm)である。また、側ストランド40の外径は、0.66(mm)であり、側ストランド40の芯を構成する素線外径及び側を構成する側ストランドの素線外径は、共に、0.22(mm)である。
【0078】
側ロープ部材Rbは、図10にて示すごとく、1本の芯素線51に対し、撚りピッチ(6.40(mm))にて、6本の側素線52をZ撚りに撚り合わせて撚り線として構成されている。本実施形態では、芯素線51及び各側素線52は、上述のオーステナイト系ステンレス鋼線でもって形成されている。なお、側ロープ部材Rbの外径は、0.6(mm)である。また、当該側ロープ部材Rbの芯素線51及び側素線52の各外径は、0.22(mm)及び0.20(mm)である。
【0079】
このように構成した螺旋状ロープR1によれば、側ロープ部材Rbは、その撚り線としての各側素線52の撚り方向にて、芯ロープ部材Raの各側ストランド40の撚り線としての各側素線の撚り方向に対し、所定の交叉角(以下、交叉角αという)をなすように、巻装されている。
【0080】
本第2実施形態において、上述した交叉角αは、90°±10°の範囲以内の角度に設定されている。このように設定した根拠は、次の通りである。
【0081】
芯ロープ部材Raにおける各側ストランド40の撚り線としての各側素線の撚り方向が、当該芯ロープ部材Raに巻装した側ロープ部材Rbの撚り線としての各側素線の撚り方向に対し、概ね、直交することで、側ロープ部材Rbの芯ロープ部材Raに対する巻装位置のずれが防止され得る。従って、交叉角αは90°であることが最も好ましいといえる。
【0082】
これに対し、交叉角αにつきさらに検討したところ、当該交叉角αは、好ましくは、90°±10°の範囲以内の角度であれば、上述の側ロープ部材Rbの芯ロープ部材Raに対する巻装位置のずれを防止し得ることが確認できた。このため、本第2実施形態では、上述のように交叉角が設定されている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0083】
このように構成した本第2実施形態では、螺旋状ロープR1において、側ロープ部材Rbが、地球の北半球で成長する蔓科植物Bの蔓B1の巻回方向に沿うように、芯ロープ部材Raに対し反時計方向(Z撚りの方向)に巻装されている。しかも、螺旋状溝10bが、上述のごとく、芯ロープ部材Raの外周に形成されている。
【0084】
その結果、上記第1実施形態にて述べた螺旋状ロープR及び当該壁面緑化システムによる作用効果と同様の作用効果が、本第2実施形態における螺旋状ロープR1及び壁面緑化システムにおいても、達成され得る。
【0085】
また、螺旋状ロープR1においては、側ロープ部材Rbが、上述したごとく、その撚り線としての各側素線52にて、芯ロープ部材Raの各側ストランド40の撚り線としての各側素線の撚り方向に対し、90°±10°の範囲以内の角度をなすように、即ち、ほぼ直交するように、芯ロープ部材Raに巻装されている。
【0086】
本実施形態では、芯ロープ部材Raの外表面に現れる側ストランド40の側素線の方向が、芯ロープ部材Raの長手方向とほぼ平行となり、当該長手方向と側ロープ部材Rbの側素線52の方向とがほぼ直交する。
【0087】
このため、いわゆるアンカー効果が、螺旋状ロープR1において、側ロープ部材Rbと芯ロープ部材Raとの間に発生し、側ロープ部材Rbの芯ロープ部材Raに対する係合力を強固に発生させる。これにより、側ロープ部材Rbの芯ロープ部材Raに対する巻装位置のずれが確実に防止され得る。
【0088】
その結果、螺旋状ロープR1を張設するにあたっては、当該螺旋状ロープR1を、一定張力でもって、均一に張設することが可能となるのは勿論のこと、風圧又は蔓科植物Bの手入れや伐採時等に螺旋状ロープR1に作用する外的引張力が発生しても、螺旋状ロープR1の側ロープ部材Rbが芯ロープ部材Raに対し位置ずれを生じることもない。
(第3実施形態)
図11は、本発明の第3実施形態の要部を示している。この第3実施形態において、蔓科植物育成用螺旋状ロープR2が、上記第1実施形態にて述べた螺旋状ロープR(図3参照)に代えて、採用されている。なお、この螺旋状ロープR2は、複数、上記第1実施形態にて述べたと同様に、ダイヤクロスパターンにて壁面Wに対向するように、複数の締結金具Tでもって支持されて、当該壁面緑化システムを構成している。
【0089】
当該螺旋状ロープR2は、側ストランドを欠落構成とする複撚りのロープからなるもので、当該螺旋状ロープR2は、上記第1実施形態にて述べた芯材10である撚り線を、本第3実施形態の芯ストランド(以下、芯ストランド10Aという)として採用するとともに、上記第1実施形態にて述べた側材20である撚り線を、4本、本第3実施形態の4束の側ストランド(以下、4束の側ストランド20Aという)として採用して構成されている。
【0090】
ここで、螺旋状ロープR2は、1束の芯ストランド及び6束の側ストランドを同時に撚る仕様を有する専用の撚り線機を用いて形成されるため、側ストランド20Aを4束とすることは、螺旋状ロープR2が、2束の側ストランド(図11にて二点鎖線で示す円参照)を欠落したロープとして、形成されることを意味する。
【0091】
即ち、4束の側ストランド20Aは、上記専用の撚り線機でもって、その固有の撚りピッチにて、芯ストランド10Aに対し、同時に、Z撚りに撚られている。これに伴い、芯ストランド10Aの外周には、螺旋状溝10cが、欠落した2束の側ストランドに対応して形成されている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0092】
このように構成した本第3実施形態においては、上述したごとく、螺旋状ロープR2において、4束の側ストランド20Aが、地球の北半球で成長する蔓科植物Bの蔓B1の巻回方向(反時計方向)に沿うように、芯ストランド10Aに対し反時計方向(Z撚りの方向)に巻装されている。しかも、芯ストランド10Aの外周には、螺旋状溝10cが、上述したごとく、形成されている(図11参照)。
【0093】
従って、蔓科植物Bは、上記第1実施形態にて述べたと同様に、蔓B1を、螺旋状溝10cに沿わせて、芯ストランド10Aに対し時計方向に円滑に巻回させながら成長する。その結果、本第3実施形態によっても、上記第1実施形態にて述べたと同様の作用効果が達成され得る。
【0094】
また、上述のように、螺旋状ロープR2は、2束の側ストランドを欠落させた構成とすることで、通常のロープと同様に製造することができ、その結果、大量生産に適している。
【0095】
また、上述のように、螺旋状ロープR2は、複撚り構造で、2束の側ストランドを欠落させた構成であることから、螺旋状ロープR2の表面が、より凹凸形状の螺旋状となっている。このため、螺旋状ロープR2は、その外表面積を増大させた構造となっている。その結果、螺旋状ロープR2の熱放射が促進されて蔓科植物の熱焼けが防止され得る。
【0096】
なお、上記第3実施形態においては、螺旋状ロープR2を、上述のごとく、2束の側ストランドを欠落させた構成とした例について説明したが、これに限らず、当該螺旋状ロープR2を、1束及び3束〜5束のいずれかを欠落させた構成としても、上記第3実施形態にて述べたと実質的に同様の作用効果が達成され得る。
【0097】
ちなみに、一般的には、例えば、外径2(mm)の撚り構成の7束×7本の側ストランドに対して、側ストランドの束数を2束或いは3束少なくした5束×7本或いは4束×7本の撚り構成を用いて、芯ストランドと各側ストランドとを同時に撚り合わせて形成する。
(第4実施形態)
図12は、本発明の第4実施形態の要部を示している。この第4実施形態では、上述した第3実施形態にて述べた各側ストランド20Aの撚り線としての各側素線22の撚り方向が、共に、芯ストランド10Aの撚り線としての各側素線12の撚り方向に対し、上述の交叉角α(=90°±10°の範囲以内の角度)をなすように、各側ストランド20Aが芯ストランド10Aに撚り合わされている。その他の構成は、上記第3実施形態と同様である。
【0098】
このように構成した本第4実施形態においては、4束の側ストランド20Aが、上述したごとく、その撚り線としての各側素線22の撚り方向にて、芯ストランド10Aの撚り線としての各側素線12の撚り方向に対し、90°±10°の範囲以内の角度をなすように、即ち、ほぼ直交するように撚られて、芯ストランド10Aに撚り合わされている。
【0099】
このため、上述したアンカー効果が、螺旋状ロープR2において、各側ストランド20Aと芯ストランド10Aとの間に発生し、各側ストランド20Aの芯ストランド10Aに対する係合力を強固に発生させる。これにより、各側ストランド20Aの芯ストランド10Aに対する巻装位置のずれが確実に防止され得る。
【0100】
その結果、螺旋状ロープR2を張設するにあたっては、当該螺旋状ロープR2を、一定張力でもって、均一に張設することが可能となるのは勿論のこと、風圧又は蔓科植物Bの手入れや伐採時等に各螺旋状ロープR2に作用する外的引張力が発生しても、螺旋状ロープR2の各側ストランド20Aが芯ストランド10Aに対し位置ずれを生じることもない。その他の作用効果は上記第3実施形態と同様である。
【0101】
ちなみに、螺旋状ロープR2、芯ストランド10A及び各側ストランド20Aの仕様を次の表1にて示すように選定したとき、上記交叉角は、α=95.2°として得られた。但し、芯ストランド10Aの芯素線の外径及び側素線の外径は、それぞれ、0.27(mm)及び0.25(mm)とする。また、側ストランド20Aの芯素線の外径及び側素線の外径は、共に、0.22(mm)とする。
【表1】
この表1において、螺旋状ロープR2の撚りピッチとは、芯ストランド10Aに対する4束の側ストランド20Aの撚りピッチをいう。芯ストランド10Aの撚りピッチとは、芯素線11に対する6本の側素線12の撚りピッチをいう。また、側ストランド20Aの撚りピッチとは、芯素線21に対する6本の側素線22の撚りピッチをいう。
【0102】
上述のように交叉角αが95.2°であることから、当該交叉角は、90°±10°の範囲以内の角度を満たす。従って、各側ストランド20Aの芯ストランド10Aに対する位置ずれが確実に防止され得ることが分かる。
(第5実施形態)
図13〜図15は、本発明の第5実施形態の要部を示している。この第5実施形態では、蔓科植物育成用螺旋状ロープR3が、上記第1実施形態にて述べた螺旋状ロープRに代えて、採用されている。なお、この螺旋状ロープR3は、複数、上記第1実施形態にて述べたと同様に、ダイヤクロスパターンにて壁面Wに対向するように、複数の締結金具Tでもって支持されて、当該壁面緑化システムを構成している。
【0103】
螺旋状ロープR3は、図13にて示すごとく、芯ロープ部材Rc及び側ロープ部材Rdを備えている。芯ロープ部材Rcは、図14にて示すごとく、上記第1実施形態にて述べた芯材10と、芯被覆層60とでもって構成されており、芯被覆層60は、樹脂材料でもって芯材10を被覆するように形成されている。
【0104】
一方、側ロープ部材Rdは、図15にて示すごとく、上記第1実施形態にて述べた側材20と、側被覆層70とでもって構成されており、側被覆層70は、樹脂材料でもって側材20を被覆するように形成されている。
【0105】
しかして、螺旋状ロープR3においては、側ロープ部材Rdが、芯ロープ部材Rcの芯被覆層60の外周に沿い、当該芯ロープ部材Rcに対し反時計方向(Z撚りの方向)に所定の巻回ピッチにて巻装されている。なお、芯ロープ部材Rc(或いは芯被覆層60)の外径は、2.4(mm)である。側ロープ部材Rd(或いは側被覆層70)の外径及び巻回ピッチは、1.8及び8.4(mm)である。また、側ロープ部材Rdの巻装後の螺旋外径は、5.7(mm)である。
【0106】
本第5実施形態においては、上述した芯被覆層60及び側被覆層70を形成する各樹脂材料としては、同一或いは同種の樹脂材料が採用されている。これは、芯ロープ部材Rcと側ロープ部材Rdとの間の滑りを不能にして、側ロープ部材Rdの芯ロープ部材Rcに対する巻装位置のずれ(螺旋状ロープR3のピッチずれ)を防ぐためである。
【0107】
このようにピッチずれが防止され得るのは、上述のように同一或いは同種の樹脂材料を用いることで、芯ロープ部材Rcの芯被覆層60と芯ロープ部材Rcに上述のように巻装された側ロープ部材Rdの側被覆層70との間に凝着現象が発生し、その結果、芯ロープ部材Rcと側ロープ部材Rdとの間の滑りを不能にするためと推測される。
【0108】
本実施形態において、上述の同一の樹脂材料を例示すれば、芯被覆層60及び側被覆層70の双方に用いられる形成材料として、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン或いはポリプロピレンが挙げられる。
【0109】
また、上述の同種の樹脂材料を例示すれば、第1には、芯被覆層60及び側被覆層70の一方の形成材料をポリアミドとしたとき、他方の形成材料として、ポリアミドエラストマー材が挙げられる。
【0110】
ここで、ポリアミドエラストマー材としては、ポリアミドとポリエーテルとのブロック共重合体が挙げられる。
【0111】
第2には、芯被覆層60及び側被覆層70の一方の形成材料をポリアミドとしたとき、他方の形成材料として、柔軟性を付与するための可塑剤を添加してなるポリアミドが挙げられる。
【0112】
さらには、芯被覆層60及び側被覆層70の一方の形成材料を、ポリアミドに代えて、ポリプロピレンとしたとき、他方の形成材料として、ポリプロピレンエラストマー材が挙げられる。このポリプロピレンエラストマー材としては、EPT或いはEPRが挙げられる。
【0113】
なお、ポリアミドに代わるポリ塩化ビニルに対しては、可塑剤添加のポリ塩化ビニルが挙げられ、また、ポリウレタンに対しては、ポリウレタンエラストマー材が挙げられる。さらに補足すれば、芯被覆層60及び側被覆層70の一方を形成する樹脂材料の主成分が、同一或いは同種の材料であればよい。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0114】
このように構成した本第5実施形態においては、芯ロープ部材Raの芯被覆層60及び側ロープ部材Rbの側被覆層70が、互いに、上述のごとく同一或いは同種の樹脂材料でもって形成されている。
【0115】
このため、芯ロープ部材Rcの芯被覆層60と当該芯ロープ部材Rcに巻装された側ロープ部材Rdの側被覆層70との間に凝着現象が発生して、芯ロープ部材Rc及び側ロープ部材Rdの間の滑りを不能にする。その結果、螺旋状ロープR3のピッチずれ、即ち、側ロープ部材Rdの芯ロープ部材Rcに対する巻装位置のずれが確実に防止され得る。
【0116】
また、芯被覆層60及び側被覆層70は、共に、樹脂材料からなるため、当該芯被覆層60及び側被覆層70の各熱伝導率は、芯材10や側材20を構成する鋼線のような金属線に比べて、極めて低い。
【0117】
ここで、芯材10及び側材20は、上述のことから分かるように、オーステナイト系ステンレス鋼線の撚り線でもって構成されている。また、当該撚り線の外周面は、凸状の螺旋形状となっているため、芯材10及び側材20の各外表面が増大している。
【0118】
従って、このような増大した外表面を有する芯材10及び側材20を、上述のように、芯被覆層60及び側被覆層70でもって被覆することで、蔓科植物への熱伝導率が大幅に低下され得る。その結果、本第5実施形態の螺旋状ロープR3によれば、夏の日照等における蔓科植物Bの熱焼けが大きく低減され得る。なお、補足すれば、上述のように増大した芯材10及び側材20の各外表面により、芯材10と芯被覆層60との間の係着力及び側材20と側被覆層70との間の係着力を向上させることができる。
【0119】
また、後述するように、上述の同一或いは同種の樹脂材料に着色顔料を添加することで、芯被覆層60及び側被覆層70において多彩な色調を得ることができる。
【0120】
さらに、付言すれば、芯ロープ部材Rc及び側ロープ部材Rdの間の固着強度を向上させるため、芯ロープ部材Rcを、大気圧以上の加圧窒素ガスを充填した接着剤を収納してなる接着剤塗布室の内部を通過させるようにして、芯被覆層60の外周面に接着剤を付着させ、その後、芯ロープ部材Rcに対し側ロープ部材Rdを上述のごとく螺旋状に巻装した上で、乾燥室を通過させるようにしてもよい。
【0121】
これにより、側ロープ部材Rdは、その側被覆層70にて、芯ロープ部材Rcの芯被覆層60に強固に接着され得る。なお、上記接着剤としては、「イソシアネート基を末端にもつ、例えば、坂井化学工業株式会社製の商品記号GF−100A・Bの接着剤」を用いる。
【0122】
また、本第5実施形態において、上記第2実施形態と実質的に同様に、側材20の撚り線としての各側素線の撚り方向が、芯材20の撚り線としての各側素線の撚り方向に対し上記交叉角α(=90°±10°の範囲以内の角度)をなしていれば、上述の芯被覆層60及び側被覆層70の間の凝着現象と相俟って、側ロープ部材Rdの芯ロープ部材Rcに対する巻装位置のずれが、より一層、確実に防止され得る。その他の作用効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。この第6実施形態は、上記第5実施形態に適用する例として、以下のようなことを前提に提案されている。
【0123】
一般的に、本発明にいう壁面緑化システムの螺旋状ロープの外表面の色調に限ることなく、従来の壁面緑化システムのロープの外表面の色調が、壁面緑化システムに沿い成長する蔓科植物の蔓、葉や花の色調、或いは壁面緑化システムの背景となる壁面の色調に適合する条件(以下、適合条件という)を満たさないと、ロープが、目立ってしまい、壁面緑化システムとしての見映えの低下を招くという不具合がある。従って、本発明においても、螺旋状ロープの外表面の色調が、上述の適合条件を満たしていることが望ましい。
【0124】
これに対しては、樹脂材料の着色容易性を利用すれば、上述の第5実施形態にて述べた芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を、蔓科植物の蔓、葉や花の色調、或いは当該壁面緑化システムの背景である壁面の色調に同化させることが可能である。ここで、当該同化とは、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を蔓科植物の蔓、葉や花の色調、或いは当該壁面緑化システムの背景である壁面の色調に適合させることをいう。なお、当該同化は、上記適合条件を満たす一例である。
【0125】
そこで、本第6実施形態では、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を蔓科植物の蔓、葉や花の色調、或いは背景である壁面の色調に同化させて、当該壁面緑化システムとしての見映えを良好に維持することを解決課題としている。
【0126】
そして、本第6実施形態では、このような解決課題を前提に、上記第5実施形態にて述べた芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を蔓科植物の蔓や葉の色調、或いは背景である壁面の色調に同化させた。
【0127】
具体的には、蔓科植物Bの蔓B1や葉B2(図2参照)の色調、或いは背景である壁面Wの色調を考慮して、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を、斑点模様、木目調模様或いは石目調模様とすることで、上述の同化を実現させた。
【0128】
例えば、蔓科植物Bの蔓B1の色調が淡緑色のときには、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を、白色の素地に緑の斑点を多数形成した斑点模様とする。
【0129】
これにより、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調が、蔓科植物Bの蔓B1及び葉B2の各緑の双方の色調を兼備して、蔓科植物Bの色調と同化し得る。さらに、補足すれば、例えば、蔓科植物の葉の色調は、緑色であっても、全ての葉が同一の明度や彩度を有する色調ではなく、これらが複合して濃い緑の部分とそうでない部分とがあり、このような場合において、上記斑点模様により、同化させることができる。
【0130】
また、蔓科植物Bの蔓B1の色調が茶褐色のときには、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を、茶色の木目調模様とする。これにより、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調が、蔓科植物Bの蔓B1の色調と同化し得る。
【0131】
また、蔓科植物Bが成長した際には、蔓科植物Bの葉B2が大きく育つため、螺旋状ロープR3が葉B2の陰となる。しかし、蔓科植物Bを植えた初期には、当該壁面緑化システムのダイヤクロスパターンに張設した螺旋状ロープR3が露出している。このため、当該螺旋状ロープR3が背景である壁面Wと比較して目立つ。
【0132】
このときには、壁面Wが、例えば、大理石調であれば、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を石目調模様とする。これにより、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調である石目調模様が、壁面Wの色調である大理石調と同化し得る。特に、蔓科植物の種類によっては、高層階へ達するのに1〜2年以上かかるものがある。従って、成長に時間がかかる蔓科植物にあっては、高層階の壁面緑化等の際には好適である。
【0133】
次に、上記第5実施形態にて述べた螺旋状ロープR3において、上述のように同化させる色調を芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方に発現させるにあたっては、当該螺旋状ロープR3を次のようにして製造する。
(1)第1の製造方法
芯材10及び各側材20を上記第5実施形態にて述べたように形成する。また、分子構造の異なる樹脂材料を着色して、この着色樹脂材料を、上記第5実施形態にて述べた樹脂材料(上記同一或いは同種の樹脂材料)に混合して、第1の同化用着色樹脂材料を作製し、この第1の同化用着色樹脂材料でもって、芯材10及び側材20のうち少なくとも一方を被覆するように芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方を成形して、芯ロープ部材Rc及び側ロープ部材Rdを製造する。なお、芯材10及び側材20のうち上記第1の同化用着色樹脂材料を用いて被覆されないものは、上記第5実施形態にて述べた樹脂材料(上記同一或いは同種の樹脂材料)でもって、被覆される。
【0134】
ついで、側ロープ部材Rdを、上記第5実施形態にて述べたと同様に、芯ロープ部材Rcにその長手方向に沿い間隔をおいて螺旋状に巻装する。この際、側ロープ部材Rdの芯ロープ部材Rcに対する巻装方向が、地球の北半球で成長する蔓科植物(B)の蔓(B1)の巻回方向に沿う方向となるように、側ロープ部材Rdを芯ロープ部材Rcに巻装する。
【0135】
以上のように、上記第5実施形態にて述べた螺旋状ロープR3において、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方を上記第1の同化用着色樹脂材料でもって被覆することで、本第6実施形態における螺旋状ロープが製造される。
【0136】
このように製造した螺旋状ロープを壁面緑化システムに張設すれば、上記第5実施形態にて述べた作用効果が達成され得るのは勿論のこと、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を蔓科植物の色調と同化させた色調が達成され得る。その結果、本第6実施形態で製造した螺旋状ロープが、蔓科植物に対して、目立つことがない。
(2)第2の製造方法
芯材10及び各側材20を上述と同様に形成する。また、メルトインデックス(MI)の相違する着色樹脂材料を、上記第5実施形態にて述べた樹脂材料(上記同一或いは同種の樹脂材料)に混合して、第2の同化用着色樹脂材料を作製し、この第2の同化用着色樹脂材料でもって、芯材10及び各側材20のうち少なくとも一方を被覆するようにして芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方を成形して、芯ロープ部材Rc及び側ロープ部材Rdを製造する。なお、芯材10及び側材20のうち上記第2の同化用着色樹脂材料を用いて被覆されないものは、上記第5実施形態にて述べた樹脂材料(上記同一或いは同種の樹脂材料)でもって、被覆される。上述の工程以外の各工程及び作用効果は、上述の第1の製造方法と同様である。
(3)より具体的には、以下の製造方法がある。
(a)斑点模様を発現する方法
有機酸化物と架橋反応する可塑性樹脂材料或いはエラストマーに、染色顔料及び有機過酸化物を配合したものでもって、芯材10及び側材20のうち少なくとも一方を被覆成形して、芯ロープ部材Rc及び側ロープ部材Rdの少なくとも一方を製造する。これにより、芯ロープ部材Rcの芯被覆層60及び側ロープ部材Rdの側被覆層70の少なくとも一方は、その外表面にて、斑点模様を発現し得る。
(b)木目調模様を発現する方法
メルトインデックスが5以下である高密度ポリエチレンに無機粉体及び着色剤を混合してなる着色剤組成物を、オレフィン系樹脂材料に添加したものを用いて、芯材10及び側材20のうち少なくとも一方を被覆成形して、芯ロープ部材Rc及び側ロープ部材Rdの少なくとも一方を製造する。これにより、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方は、その外表面にて、木目調模様を発現し得る。
(c)石目調模様を発現する方法
メルトインデックスが小さくて融点の高い着色剤、または上述の斑点模様を発現する方法で採用した配合剤に架橋反応性のない通常の熱可塑性樹脂を適量添加した上でこの添加量を調節したものを用いて、芯材10及び側材20のうち少なくとも一方を被覆成形して、芯ロープ部材Rc及び側ロープ部材Rdの少なくとも一方を製造する。これにより、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方は、その外表面にて、流れ模様の石目調模様を発現させ得る。なお、その他の構成及び作用効果は、上記第5実施形態と同様である。
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。この第7実施形態は、上記第5実施形態に適用する例として、以下のようなことを前提に提案されている。
【0137】
この第7実施形態では、上述の第6実施形態で述べた樹脂材料の着色容易性を利用して、第6実施形態で述べた同化とは異なり、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を、蔓科植物の蔓、葉や花の色調、或いは当該壁面緑化システムの背景である壁面の色調と補色対比の色調にして、当該壁面緑化システムとしての見映えを良好に維持することを解決課題としている。なお、上記補色対比は、上記第6実施形態にて述べた適合条件を満たす他の例である。
【0138】
しかして、本第7実施形態では、上述のような解決課題を前提に、上記第5実施形態にて述べた芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を、蔓科植物Bの色調、或いは当該壁面緑化システムの背景である壁面Wの色調と補色対比の色調にした。
【0139】
具体的には、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調を、蔓科植物Bの花の色調と補色対比の色調とする。
【0140】
例えば、蔓科植物Bの花の色が「赤色」であれば、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調は「緑色」とする。これにより、より鮮やかな「赤色」を演出させることができる。これは、「赤色」と「緑色」とは、色相環では、互いに反対色で補色対比の関係にあるからである。
【0141】
また、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方の色調は、上記第6実施形態と同様に、斑点模様、木目調模様或いは石目調模様としてもよく、その際、明度及び彩度のいずれか一方又は明度・彩度の双方の高い彩色と補色対比の関係にあればよい。
【0142】
次に、上記第5実施形態にて述べた螺旋状ロープR3において、上述のように補色対比の色調を芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方に発現させるにあたっては、当該螺旋状ロープR3を次のようにして製造する。
(1)第1の製造方法
この第1の製造方法は、上記第6実施形態にて述べた第1の製造方法とは、第1の同化用着色樹脂材料ではなく、組成の異なる樹脂材料を着色してなる着色樹脂材料を上記第5実施形態にて述べた樹脂材料(上記同一或いは同種の樹脂材料)に混合して作製した第1の補色対比用着色樹脂材料でもって、芯材10及び側材20のうち少なくとも一方を被覆成形する点において異なる。
【0143】
これによれば、上述した同化による色調とは異なり、蔓科植物Bの花の色調と補色対比の色調が、芯被覆層60及び側被覆層70の少なくとも一方において達成され得る。その結果、本第7実施形態で製造した螺旋状ロープが、蔓科植物Bに対して、目立つことがない。なお、その他の構成及び作用効果は、上記第5実施形態と同様である。
(2)第2の製造方法
この第2の製造方法は、本第7実施形態の上記第1の製造方法とは、上記第1の同化用着色樹脂材料ではなく、メルトインデックス(MI)の相違する補色対比用着色樹脂材料を上記第5実施形態にて述べた樹脂材料に混合して作製してなる第2の補色対比用着色樹脂材料でもって、芯材10及び側材20のうち少なくとも一方を被覆成形する点において異なる。これにより、上述の第1の製造方法による作用効果と同様の作用効果が達成され得る。
(第8実施形態)
図16は、本発明の第8実施形態を示している。この第8実施形態では、図16にて示すような壁面緑化システムが、上記第1実施形態にて述べた壁面緑化システムに代えて、採用されている。
【0144】
本第8実施形態の壁面緑化システムは、上記第1実施形態にて述べた複数の蔓科植物育成用螺旋状ロープRが、チェックパターンにて壁面Wに傾斜状に対向するように、複数の締結金具T及び両締結バーT1、T2でもって張設されて、壁面Wの上部と地面との間に支持されている。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0145】
このように構成した本第8実施形態によれば、上記第1実施形態にて述べた作用効果が、上記分流作用による作用効果を除き、達成され得る。
【0146】
なお、本第8実施形態にいう壁面緑化システムは、上記第1実施形態にて述べた壁面緑化システムに限ることなく、上記第2〜第7の実施形態のいずれかにて述べた壁面緑化システムに代えて、採用してもよい。
【0147】
これによれば、上記第2〜第7の実施形態のいずれかにて述べた作用効果が、上記分流作用による作用効果を除き、達成され得る。
(第9実施形態)
図17は、本発明の第9実施形態を示している。この第9実施形態では、図17にて示すような壁面緑化システムが、上記第1実施形態にて述べた壁面緑化システムに代えて、採用されている。
【0148】
本第9実施形態の壁面緑化システムは、上記第1実施形態にて述べた複数の蔓科植物育成用螺旋状ロープRが、ストレートパターンにて壁面Wに傾斜状に対向するように、複数の締結金具T及び両締結バーT1、T2でもって張設されて、当該壁面Wの上部と地面との間に支持されている。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0149】
このように構成した本第9実施形態によれば、上記第1実施形態にて述べた作用効果が、上記分流作用による作用効果を除き、達成され得る。
【0150】
なお、本第9実施形態にいう壁面緑化システムは、上記第1実施形態にて述べた壁面緑化システムに限ることなく、上記第2〜第7の実施形態のいずれかにて述べた壁面緑化システムに代えて、採用してもよい。
【0151】
これによれば、上記第2〜第7の実施形態のいずれかにて述べた作用効果が、上記分流作用による作用効果を除き、達成され得る。
【0152】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記各実施形態では、蔓科植物が地球の北半球で成長することを前提とする例について説明したが、これに代えて、地球の南半球で成長する蔓科植物に対しては、側材(側材20、側ロープ部材Rb或いは側ロープ部材Rd)の芯材(芯材10、芯ロープ部材Ra或いは芯ロープ部材Rc)に対する巻装方向を、地球の南半球で成長する蔓科植物の蔓の巻回方向に沿わせるように、蔓の生長端部側からみて、時計方向とする(図5参照)。これによっても、上記各実施形態にて述べたと実質的に同様の作用効果が達成され得る。このようなことは、側材(側ストランド20A)の芯材(芯ストランド10A)に対する撚り方向に対しても、同様に成立する。
(2)上記第1実施形態において、側材20の撚り線としての各側素線の撚り方向が、芯材10の撚り線としての各側素線の撚り方向に対し、交叉角αをなすように構成してもよい。これによっても、上記第2実施形態にて述べたと同様の作用効果が達成され得る。
(3)上記第7実施形態にいう補色対比の色調としては、赤色と緑色に限ることなく、例えば、紫と黄色であってもよく、一般には、色相環において、正反対に位置する関係の色同士であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】図1は、本発明を適用してなる壁面緑化システムの第1実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の壁面緑化システムの蔓科植物育成用螺旋状ロープ及びこの螺旋状ロープに沿い成長する蔓科植物を部分的に示す部分拡大側面図である。
【図3】図2の螺旋状ロープを示す部分側面図である。
【図4】地球の北半球で成長する蔓科植物の蔓の巻回方向に沿うように構成される螺旋状ロープの説明図である。
【図5】地球の南半球で成長する蔓科植物の蔓の巻回方向に沿うように構成される螺旋状ロープの説明図である。
【図6】風が丸棒に吹き付けたときのカルマン渦列の発生状態を説明するための模式的斜視図である。
【図7】図3の螺旋状ロープの整流作用を説明する説明図である。
【図8】図1の壁面緑化システムにおける螺旋状ロープの分流作用を説明するための模式図である。
【図9】本発明の第2実施形態の要部を示す部分側面図である。
【図10】図9で示す螺旋状ロープの部分拡大側面図である。
【図11】本発明の第3実施形態の要部を示す部分側面図である。
【図12】本発明の第4実施形態の要部を示す部分側面図である。
【図13】本発明の第5実施形態の要部を示す部分側面図である。
【図14】上記第5実施形態における芯ロープ部材の拡大断面図である。
【図15】上記第5実施形態における側ロープ部材の拡大断面図である。
【図16】本発明の第8実施形態の正面図である。
【図17】本発明の第9実施形態の正面図である。
【符号の説明】
【0154】
10…芯材、10A、30…芯ストランド、11、21、51…芯素線、
12、22、52…側素線、20…側材、20A、40…側ストランド、
60…芯被覆層、70…側被覆層、α…所定の交叉角、B…蔓科植物、B1…蔓、
Ra、Rc…芯ロープ部材、Rb、Rd…側ロープ部材、W…壁面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる芯材と、
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる側材とを備えて、
前記側材は、前記芯材に対し、蔓科植物の蔓の巻回方向に沿う方向に間隔をおいて螺旋状に巻装されてなる蔓科植物育成用螺旋状ロープ。
【請求項2】
前記芯材を被覆してなる芯被覆体と、
前記側材を被覆してなる側被覆体とを備えており、
前記芯被覆体及び前記側被覆体は、互いに、同一或いは同種の樹脂材料でもって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープ。
【請求項3】
前記同一或いは同種の樹脂材料には、前記芯被覆体及び前記側被覆体のうち少なくとも一方において、前記蔓科植物の色調と同化の可能な色調を発現する材料が付加されていることを特徴とする請求項2に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープ。
【請求項4】
前記同一或いは同種の樹脂材料には、前記芯被覆体及び前記側被覆体のうち少なくとも一方において、蔓科植物の色調と補色対比の可能な色調を発現する材料が付加されていることを特徴とする請求項2に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープ。
【請求項5】
前記芯材は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる芯ストランドであり、
前記側材は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる1束または複数束の側ストランドであり、
前記1束または複数束の側ストランドの前記撚り線としての各素線の撚り方向は、前記芯ストランドの前記撚り線としての各素線の撚り方向に対し、所定の交叉角をなしていることを特徴とする請求項1に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープ。
【請求項6】
前記芯材は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる芯ストランドであり、
前記側材は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる1束または複数束の側ストランドであり、
前記1束または複数束の側ストランドの前記撚り線としての各素線の撚り方向は、前記芯ストランドの前記撚り線としての各素線の撚り方向に対し、所定の交叉角をなしており、
前記芯被覆体は、前記芯材を被覆してなる芯被覆層であり、
前記側被覆体は、前記1束または複数束の側ストランドをそれぞれ被覆してなる側被覆層であり、
前記芯被覆層は、前記側被覆層と前記同一或いは同種の樹脂材料でもって形成されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープ。
【請求項7】
前記芯材は、芯ロープ部材でもって構成されており、
前記側材は、側ロープ部材でもって構成されており、
前記芯ロープ部材は、
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる複数束のストランドを撚って形成した芯ストランドと、
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる複数束のストランドを撚って形成されて前記芯ストランドに螺旋状に連続的に巻装してなる複数束の側ストランドとを備えており、
前記側ロープ部材は、前記芯ロープ部材に対し、前記蔓科植物の蔓の巻回方向に沿う方向に間隔をおいて螺旋状に巻装されたオーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなるストランドであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープ。
【請求項8】
前記側ロープ部材である前記ストランドの前記撚り線としての各素線の撚り方向は、前記芯ロープ部材の前記複数束の側ストランドの前記撚り線としての各素線の撚り方向に対し、所定の交叉角をなしていることを特徴とする請求項7に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープ。
【請求項9】
前記所定の交叉角は、90°±10°の範囲以内の角度、好ましくは90°であることを特徴とする請求項6または8に記載の螺旋状ロープ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープを、複数、備えて、
前記複数の螺旋状ロープは、所定の張設パターンにて壁面に対向するように、当該壁面に支持されてなる壁面緑化システム。
【請求項11】
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる芯材及びオーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる側材を被覆するように同一或いは同種の樹脂材料でもって芯被覆層及び側被覆層を形成し、
前記側材を、前記芯材に対し、蔓科植物の蔓の巻回方向に沿う方向に間隔をおいて螺旋状に巻装するようにした蔓科植物育成用螺旋状ロープの製造方法であって、
前記芯被覆層及び前記側被覆層の少なくとも一方が、分子構造の異なる着色樹脂材料を前記同一或いは同種の樹脂材料に混合してなる第1の同化用着色樹脂材料、或いはメルトインデックスの相違する着色樹脂材料を前記同一或いは同種の樹脂材料に混合してなる第2の同化用着色樹脂材料でもって、前記芯材及び前記側材の少なくとも一方を被覆するように形成される蔓科植物育成用螺旋状ロープの製造方法。
【請求項12】
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる芯材及びオーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる側材を被覆するように同一或いは同種の樹脂材料でもって芯被覆層及び側被覆層を形成し、
前記側材を、前記芯材に対し、蔓科植物の蔓の巻回方向に沿う方向に間隔をおいて螺旋状に巻装するようにした蔓科植物育成用螺旋状ロープの製造方法であって、
前記芯被覆層及び前記側被覆層の少なくとも一方が、組成の異なる着色樹脂材料を前記同一或いは同種の樹脂材料に混合してなる第1の補色対比用着色樹脂材料、或いはメルトインデックスの相違する着色樹脂材料を前記同一或いは同種の樹脂材料に混合してなる第2の補色対比用着色樹脂材料でもって、前記芯材及び前記側材の少なくとも一方を被覆するように形成される蔓科植物育成用螺旋状ロープの製造方法。
【請求項1】
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる芯材と、
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる側材とを備えて、
前記側材は、前記芯材に対し、蔓科植物の蔓の巻回方向に沿う方向に間隔をおいて螺旋状に巻装されてなる蔓科植物育成用螺旋状ロープ。
【請求項2】
前記芯材を被覆してなる芯被覆体と、
前記側材を被覆してなる側被覆体とを備えており、
前記芯被覆体及び前記側被覆体は、互いに、同一或いは同種の樹脂材料でもって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープ。
【請求項3】
前記同一或いは同種の樹脂材料には、前記芯被覆体及び前記側被覆体のうち少なくとも一方において、前記蔓科植物の色調と同化の可能な色調を発現する材料が付加されていることを特徴とする請求項2に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープ。
【請求項4】
前記同一或いは同種の樹脂材料には、前記芯被覆体及び前記側被覆体のうち少なくとも一方において、蔓科植物の色調と補色対比の可能な色調を発現する材料が付加されていることを特徴とする請求項2に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープ。
【請求項5】
前記芯材は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる芯ストランドであり、
前記側材は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる1束または複数束の側ストランドであり、
前記1束または複数束の側ストランドの前記撚り線としての各素線の撚り方向は、前記芯ストランドの前記撚り線としての各素線の撚り方向に対し、所定の交叉角をなしていることを特徴とする請求項1に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープ。
【請求項6】
前記芯材は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる芯ストランドであり、
前記側材は、オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる1束または複数束の側ストランドであり、
前記1束または複数束の側ストランドの前記撚り線としての各素線の撚り方向は、前記芯ストランドの前記撚り線としての各素線の撚り方向に対し、所定の交叉角をなしており、
前記芯被覆体は、前記芯材を被覆してなる芯被覆層であり、
前記側被覆体は、前記1束または複数束の側ストランドをそれぞれ被覆してなる側被覆層であり、
前記芯被覆層は、前記側被覆層と前記同一或いは同種の樹脂材料でもって形成されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープ。
【請求項7】
前記芯材は、芯ロープ部材でもって構成されており、
前記側材は、側ロープ部材でもって構成されており、
前記芯ロープ部材は、
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる複数束のストランドを撚って形成した芯ストランドと、
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる複数束のストランドを撚って形成されて前記芯ストランドに螺旋状に連続的に巻装してなる複数束の側ストランドとを備えており、
前記側ロープ部材は、前記芯ロープ部材に対し、前記蔓科植物の蔓の巻回方向に沿う方向に間隔をおいて螺旋状に巻装されたオーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなるストランドであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープ。
【請求項8】
前記側ロープ部材である前記ストランドの前記撚り線としての各素線の撚り方向は、前記芯ロープ部材の前記複数束の側ストランドの前記撚り線としての各素線の撚り方向に対し、所定の交叉角をなしていることを特徴とする請求項7に記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープ。
【請求項9】
前記所定の交叉角は、90°±10°の範囲以内の角度、好ましくは90°であることを特徴とする請求項6または8に記載の螺旋状ロープ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載の蔓科植物育成用螺旋状ロープを、複数、備えて、
前記複数の螺旋状ロープは、所定の張設パターンにて壁面に対向するように、当該壁面に支持されてなる壁面緑化システム。
【請求項11】
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる芯材及びオーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる側材を被覆するように同一或いは同種の樹脂材料でもって芯被覆層及び側被覆層を形成し、
前記側材を、前記芯材に対し、蔓科植物の蔓の巻回方向に沿う方向に間隔をおいて螺旋状に巻装するようにした蔓科植物育成用螺旋状ロープの製造方法であって、
前記芯被覆層及び前記側被覆層の少なくとも一方が、分子構造の異なる着色樹脂材料を前記同一或いは同種の樹脂材料に混合してなる第1の同化用着色樹脂材料、或いはメルトインデックスの相違する着色樹脂材料を前記同一或いは同種の樹脂材料に混合してなる第2の同化用着色樹脂材料でもって、前記芯材及び前記側材の少なくとも一方を被覆するように形成される蔓科植物育成用螺旋状ロープの製造方法。
【請求項12】
オーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる芯材及びオーステナイト系ステンレス鋼製撚り線からなる側材を被覆するように同一或いは同種の樹脂材料でもって芯被覆層及び側被覆層を形成し、
前記側材を、前記芯材に対し、蔓科植物の蔓の巻回方向に沿う方向に間隔をおいて螺旋状に巻装するようにした蔓科植物育成用螺旋状ロープの製造方法であって、
前記芯被覆層及び前記側被覆層の少なくとも一方が、組成の異なる着色樹脂材料を前記同一或いは同種の樹脂材料に混合してなる第1の補色対比用着色樹脂材料、或いはメルトインデックスの相違する着色樹脂材料を前記同一或いは同種の樹脂材料に混合してなる第2の補色対比用着色樹脂材料でもって、前記芯材及び前記側材の少なくとも一方を被覆するように形成される蔓科植物育成用螺旋状ロープの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−306858(P2007−306858A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139791(P2006−139791)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(390030731)朝日インテック株式会社 (140)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(390030731)朝日インテック株式会社 (140)
【Fターム(参考)】
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