説明

薄い金属ストリップの連続生産のための工程及び装置

本発明は、薄い金属ストリップの、具体的には、金属溶融物から直接、ロールキャスティング装置を使用するロールキャスティング工程の後に<10mmの鋳造ストリップの厚みを有する鋼のホットストリップを連続生産するための工程及び装置に関する。連続鋳造された40〜300mmの鋳造厚みの薄いスラブから、従来技術に従った圧延装置を使用して熱間圧延された金属ストリップの生産において現在達成することができるものに匹敵する、望ましい平坦度の許容誤差を有する熱間圧延された、高品質の金属ストリップを、金属溶融物から直接開始し、記載された薄い鋳造されたストリップ厚みで、連続生産工程における本発明によって生産するために、平坦度測定が移動する金属ストリップ上で行われ、この平坦度測定の測定結果が、目的とされた方法で金属ストリップの平坦度に影響を与えるために使用されることが提案されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄い金属ストリップの、具体的には、金属溶融物から直接、ロールキャスティング装置を使用するロールキャスティング工程の後に<10mmの鋳造ストリップの厚みを有する鋼のホットストリップの、連続生産のための工程及び装置に関する。
【0002】
特に、本発明は、<6mmの鋳造ストリップ厚みを有する、熱間圧延された鋼ストリップを生産するための工程及び装置に関する。ホットストリップが圧延変形に引き続いて保管されたときのホットストリップの厚みは0.3mmと4mmとの間にある。
【0003】
本発明が基づく、提案されているロールキャスティング工程は、金属溶融物がキャスティングロールの側面において凝固し、よって金属ストリップを連続的に形成する、すべてのタイプの鋳造工程を包含している。単ロールキャスティング装置を使用する単ロールキャスティング工程と、双ロールキャスティング装置を使用する垂直又は水平型双ロールキャスティング工程との両方が、本発明を実施するのに適している。本発明による工程を実施するために、2つの相互作用するキャスティングロールの軸を、水平に対して斜めに傾斜している平面内に配置することもまた適切である。
【0004】
垂直型双ロールキャスティング工程において、溶融金属は、回転する2つのキャスティングロール及び関連する側板によって横方向に区切られた、一つの水平面内に実質的に位置するキャスティングロールの回転軸を有する溶融物空間の中に導入される。関連した側面を有し、必要な駆動装置及び制御装置を含んだ2つのキャスティングロールは、この場合、双ロールキャスティング装置の主部品を形成している。金属溶融物は、内部で冷却された回転するキャスティングロールの側面において連続的に凝固し、側面とともに移動するストランドシェルを形成する。2つのキャスティングロールの間の最も狭い断面では、2つのストランドシェルが合わさり、少なくとも実質的に完全に凝固された金属ストリップを形成する。鋳造された金属ストリップは、キャスティングロールの間における鋳造速度で送り出され、次いで圧延設備におけるインラインの厚み削減に供される。次いで、圧延されたホットストリップは、保管装置に供給され、そこで保管される。この工程は鋼のストリップの生産に好適であるが、また、アルミニウム又はアルミニウム合金から作られた金属ストリップをこのように生産することも可能である。このタイプの工程及び設備の基本原理は、例えば特許文献1又は特許文献2からすでによく知られている。
【0005】
いかなる問題も無い、さらなる処理を確実とするため、標準に規定される場合があり、意図されたさらなる処理に従って客によって要求される場合もある平坦度の許容範囲は、圧延されたホットストリップによって維持される必要がある。熱間圧延された鋼のストリップの生産において得られた経験は、対応する鋳造設備で双ロールキャスティング工程を使用する場合に、これらの要求を満足することが非常に難しいということを示している。
【0006】
薄いホットストリップの平坦度に対する標準値は、標準(例えばDIN10051)に規定されており、圧延されたホットストリップに対する標準値は、この明細書の導入部に記載された厚みの範囲に対して20〜30I単位の値を有している。
【0007】
標準の平坦度の値を達成することの難しさの主な原因は、鋳造された中間製品に対して選択された生産工程の高い生産速度に起因している。金属ストリップは、極端な幅/厚みの比を有する形式で、非常に速い凝固速度を有する工程において直接生産されており、望ましいホットストリップの最終的な厚みを達成するという点で多数回の圧延の必要をなくしているが、幅に依存しない、均一な滞留熱伝導、又は(ストランドシェルを形成する際の)凝固の先端での液体金属の均一な温度は、金属浴中の高度な乱流条件のために限られた程度にしか可能ではない。これは結果的に、金属ストリップがキャスティングロールの間の鋳造ニップから出現するときの、鋳造された金属ストリップ上の温度/幅プロファイルに帰結し、平衡固相線温度に対する過冷却に基づき100%及びそれ以上までの変動を受け、このことにより、鋳造ストリップ内の不均一さを引き起こす内部応力状態及びクリープ特性が存在することとなる。ホットストリップの標準の外側に存在する不均一さは、変動が30〜40%の範囲内にしかない場合であってさえも生じる。
【0008】
また、鋳造された金属ストリップのインライン圧延は、ストリップの入り口温度が金属ストリップの幅全体に亘って相対的に不均一であるか、又は入り口でのストリップのプロファイルが不明であるか又は変動する場合に、更なる不均一さの形成を助長する場合がある。これは、異なるばね特性、若しくは圧延方向に対して横方向の圧延ニッププロファイルの結果として、圧延ニップ内の様々な変形特性に帰結する。
【0009】
鋳造された金属ストリップは、最初に圧延スタンドに入るときに、鋳造された状態の構造を有する進入時微細構造を有し、1パスあたりの圧延比が低い場合には、より微細な結晶粒を有する圧延された状態の微細構造に変換され、さらなる処理ステップのそれぞれに対して好ましい材料特性を達成する。同時に、圧延スタンドの上流における開始厚みは10mm以下、好ましくは6mmである。好ましい薄い開始厚みでは、平坦度に関する欠陥を有することなく相対的なストリッププロファイルに影響を与えることは不可能である。さらに、鋳造工程によって、及びスケールによって生じる金属ストリップの大きな粗さは、ワークロールに高レベルの消耗を引き起こす。ワークロールのこれら消耗現象は、ストリップの端部領域において大きな程度で生じ、ストリッププロファイルにおける欠陥を引き起こす。これに関して、ストリップの厚み及び温度レベルは別として、消耗現象はストリップ材料、ストリッププロファイル及び熱プロファイルによってもまた大きな程度で影響を受ける。
【特許文献1】国際公開第01/94049号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/035291号パンフレット
【特許文献3】独国特許公開第3721746号明細書
【特許文献4】米国特許第6606919号明細書
【特許文献5】米国特許公開第2002/0178840号明細書
【特許文献6】米港特許公開第2002/0080851号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、記載されてきたこれら欠点を回避し、連続鋳造された40〜300mmの鋳造厚みの薄いスラブから、従来技術に従った圧延装置を使用して熱間圧延された金属ストリップの、特に鋼ストリップの生産において現在達成することができるものに匹敵する、特性プロファイル、特に、望ましい平坦度の許容誤差に関するプロファイルを有する熱間圧延された、高品質の金属ストリップを、金属溶融物から直接開始する、10mm以下の鋳造されたストリップ厚みの連続生産工程における本発明によって、生産することのできる工程及び装置を提案することである。
【0011】
高品質の熱間圧延された金属ストリップの特性の比較可能なプロファイルは、特に以下を包含している。
・ 生産された金属ストリップの均一性、特に、横方向及び長さ方向、及び生産全体に亘る金属ストリップの機械的特性
・ 現在規定され、必要に応じて冷間ストリップ製造ラインを通過した後、実際の熱間圧延において達成することができる値と同等の平坦度、既存の生産工程において達成することのできる値に近い表面状態及び荒さの値の達成
・ さらなる表面処理又は成形処理ステップに関する寸法的要求への追従
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書の導入部に記載されたタイプの工程において、この目的は、平坦度測定が移動する金属ストリップに対して行われ、この平坦度測定からの平坦度測定値が、目的とされた方法で金属ストリップの平坦度に影響を与えるという事実によって達成される。金属ストリップの平坦度への影響はこの場合、2つのキャスティングロールの側面間での金属ストリップの形成の間、又は制御回路による又は代替的に手動の介在によるインラインの厚み削減の間に行われる。平坦度測定は、少なくとも1つのキャスティングロールによって形成されたロールキャスティング装置と、ストリップが流れる方向に対して横方向の平面内にある保管装置との間の距離に亘って行われる。
【0013】
金属ストリップのインラインの厚み削減は、少なくとも単一スタンドの圧延設備における少なくとも1つの変形段階において行われ、平坦度測定はこれら変形段階の少なくとも1つの前又は後に、好ましくは第1の変形段階の前に行われる。
【0014】
好ましい実施形態によれば、平坦度測定は搬送方向に対して横方向の平面内の金属ストリップにおける応力の分布を決定することによって行われる。
【0015】
平坦度測定からの測定値が、圧延設備の少なくとも1つの圧延スタンド中の圧延ニップに影響を与えるために使用されることは好都合である。中央処理装置において処理することができる、測定された平坦度の値は、クローズドループの平坦度制御に使用され、圧延スタンドの部品、又は圧延スタンドの上流に実質的に直接取り付けられた装置は、圧延ニップに影響を与えるため、及び/又は金属ストリップの状態変数に影響を与えるために使用される。
【0016】
圧延スタンド中の圧延ニップは、下記の量の内の少なくとも1つによって影響を受ける。
− ワークロールの曲がり量
− ワークロールの位置ずれ量
− 少なくともロールバレル又はワークロールの帯状の熱影響
【0017】
同様に、平坦度測定からの測定値は少なくとも金属ストリップの帯状熱影響に使用することができる。
【0018】
平坦度測定値からの平坦度制御回路のための制御信号を生成する別の方法は、平坦度測定からの測定値を、少なくとも1つのキャスティングロールの表面プロファイルに影響を与えるように使用することである。
【0019】
平坦度測定に加えて、生産されたホットストリップの平坦度の許容誤差のさらなる改善は、金属ストリップの温度プロファイルが、圧延ステーションの少なくとも前若しくは後ろにおいて、金属ストリップの搬送方向に対して横方向の平面内において決定され、この温度プロファイルが、目標とする方法でホットストリップの平坦度に影響を与えるという事実によって達成される。
【0020】
長さ方向に方向付けられた帯域において生じるホットストリップ中の局所的な温度の偏差は、金属ストリップ中の温度分布が金属ストリップの搬送方向に対して横方向の平面内の区画内で測定された温度プロファイルの関数として影響される場合に特に影響されるときがある。制御可能な冷却若しくは加熱帯状がストリップの移動方向に対して横方向に、より独立して配置されるほど、温度プロファイルは鋳造された金属ストリップにおいて、より良く制御することができる。
【0021】
金属ストリップの平坦度をより均一にする別の方法は、金属ストリップの搬送方向に対して横方向の平面内のストリップ厚みプロファイルを追加的に測定し、測定されたストリップの厚みプロファイルを使用して目標とした方法でホットストリップの平坦度に影響を与える、ということで成っている。
【0022】
本発明は、好ましくは双ロールキャスティング工程、特に垂直型双ロールキャスティング工程を使用する金属ストリップの生産に採用され、その場合、金属ストリップの平坦度測定値を記録するための平坦度測定装置は、ロールキャスティング装置と保管装置との間に配置され、この平坦度測定装置は、決定された平坦度測定値を記録し、変換する評価装置を割り当てられている。
【0023】
また、本発明による目的は、金属ストリップの平坦度測定値を記録するための平坦度測定装置が、ロールキャスティング装置と保管装置との間に配置されている場合、及び平坦度測定装置が、平坦度測定値を記録し、変換するための評価装置を割り当てられている場合には、金属溶融物から直接、<10mmのストリップ厚みを有する薄い金属ストリップ、特に鋼のホットストリップを連続生産するためのロールキャスティング装置を有するとともに、下流に配置された少なくとも1スタンドの圧延設備と圧延された金属ストリップのための保管装置とを有する装置によって達成することができる。
【0024】
便宜的に、平坦度測定値を記録するための平坦度測定装置は、金属ストリップの搬送方向に対して横方向の平面内に配置されている。
【0025】
好ましくは、平坦度測定装置は少なくとも1スタンドの圧延設備の圧延スタンドの上流又は下流に配置されている。多スタンドの圧延ミルトレインの場合には、平坦度測定装置は、第1の圧延スタンドの上流、若しくは好ましくは下流に配置される。
【0026】
平坦度測定は、市場で入手可能な様々な平坦度測定装置を使用して行うことができる。このタイプの測定装置は、ほとんどがコールドストリップから平坦度の値を決定するためのものであり、よって高温での熱的安定性及び測定精度が、圧延温度におけるホットストリップという特定の用途に対して要求される。高温領域における平坦度測定のために、平坦度測定装置は好ましくは、光学的に形状を記録するための装置、又は他のストリップ表面特性の中の不均一性を記録する装置である、平坦度測定用ローラによって形成される。平坦度測定用ローラを使用する平坦度測定の場合には、金属ストリップは通常ストリップに引っ張り応力がかかった状態にあり、このことが評価装置内での測定結果の評価の間に考慮される。金属ストリップの形状を光学的に記録する場合には、金属ストリップは、良好な測定結果が達成されるのであればストリップを引っ張り応力下におく必要は無い。既存の冷間圧延及び熱間圧延の装置に採用される平坦度測定装置は、特許文献3、特許文献4、特許文献5、及び特許文献6から既に既知とされており、これら文献にはそれらの構造が詳細に記載されている。
【0027】
好ましくは中央処理装置である評価装置は、制御変数を伝達するための信号線を介して、圧延スタンドの中の圧延ニップに影響を与えるための以下の駆動装置のうちの少なくとも1つに接続されている。
− ワークロールの曲げのための曲げブロック
− ワークロールの変移装置
− 圧延バレルの直接又は間接の帯状熱影響のための加熱/冷却装置
− 金属ストリップの少なくとも区画された帯状熱影響のための加熱/冷却装置
【0028】
代替案として、又は付加的に、評価装置は信号線を介して、少なくとも1つのキャスティングロールの表面プロファイルに影響するための以下の駆動装置のうちの少なくとも1つに接続されている。
− キャスティングロールバレルの直接又は間接の帯状熱影響のための加熱/冷却装置
− 半径方向に作用する変形力を与えるための、キャスティングロールにおける好ましくは水圧式で駆動可能な変形装置
− キャスティングロールバレルにおけるストランドシェルの凝固の条件の帯状の影響のためのガスパージ
− ストランドシェルの凝固の条件に影響を与えるために、熱伝導又は核形成密度に影響するコーティング剤によるキャスティングロールバレルの帯状のコーティングのためのコーティング装置
− キャスティングロールバレルにおけるストランドシェルの凝固の条件の帯状の影響のための、キャスティングロールバレルの帯状の洗浄のための洗浄装置
【0029】
非常に狭い許容誤差範囲内に平坦度の値を入れるため、金属ストリップの温度プロファイルを記録するための温度測定装置が、圧延設備の少なくとも1つの圧延スタンドの直前若しくは直後であって、金属ストリップの搬送方向に対して横方向に存在する平面内に付加的に配置され、この温度測定装置は測定された値を記録し変換するための評価装置を割り当てられている。この温度測定は、第1の圧延スタンドの短い距離だけ上流で、好ましくはすぐ上流で行われなければならず、そうすることによって、圧延ニップの条件をできる限り正確に再現することができる。
【0030】
便宜的に、温度プロファイルをより一様にするために、温度測定装置は圧延設備の上流に配置され、評価装置は、制御変数を伝送するための信号線を介してストリップ加熱装置又はストリップ冷却装置に接続される。
【0031】
ホットストリップの平坦度の変動を最小化する可能な別の方法は、ストリップの厚みのプロファイルを決定するためのストリップ厚みプロファイル測定装置を金属ストリップの搬送方向に対して横方向の平面内に配置するという事実からなり、このストリップ厚み測定装置は測定された値を記録し、変換するための評価装置を割り当てられている。
【0032】
評価装置は、制御変数を伝送するための信号線を介して、圧延スタンドのストリップ厚みプロファイルに影響を与えるための以下の駆動装置のうちの少なくとも1つに接続されている。
− ワークロール調節装置
− ワークロールの曲がりのための曲げブロック
− ワークロール変移装置
− ロールバレルの直接又は間接的な帯状の熱影響のための加熱/冷却装置
【0033】
さらに、評価装置は、信号線を介して別々に、少なくとも1つのキャスティングロールによってストリップの厚みプロファイルに影響を与えるための以下の駆動装置のうちの1つに接続することができる。
− キャスティングロール調節装置
− キャスティングロールバレルの帯状の熱的影響のための加熱/冷却装置
− 半径方向に作用する変形力を与えるための、キャスティングロールにおける好ましくは水圧式で駆動可能な変形装置
− キャスティングロールバレルにおけるストランドシェルの凝固の条件の帯状の影響のためのガスパージ
− ストランドシェルの凝固の条件に影響を与えるために、熱伝導又は核形成密度に影響するコーティング剤によるキャスティングロールバレルの帯状のコーティングのためのコーティング装置
− キャスティングロールバレルにおけるストランドシェルの凝固の条件の帯状の影響のためのキャスティングロールバレルの帯状の洗浄のための洗浄装置
【0034】
平坦度測定の、又は代替的に生産工程に沿った多くの平坦度測定の測定結果は、少なくとも1つの圧延スタンド中で独占的に、又はロールキャスティング装置中で独占的に、又は代替的にこれら装置の両方の組み合わせの中で、目的とした方法で金属ストリップの平坦度に影響を与えるために使用することができる。また、例えばストリップ加熱装置のような関連装置によって金属ストリップの平坦度に影響を与えることも可能である。
【0035】
ロールキャスティング装置は、好ましくは本発明による双ロールキャスティング工程を実施するように設計され、回転するように駆動される2つのキャスティングロールと、2つの側板とを備え、これらが一緒になって金属溶融物を保持するための溶融物空間、及び鋳造された金属ストリップの断面形状を形成するための鋳造間隙を形成している。
【0036】
半工業的な試験設備における上述したような本発明による工程の実施は、数回のテストの後でさえ、なんとか50%まで平坦度のばらつきを削減した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明のさらなる利点と特徴は、それに限定されるわけではない最良の実施形態を示す図面についての後述の記載から明らかになり、この実施形態は添付の図面に参照されている。
【0038】
図1及び図2は、設備の主な構成要素と、薄いホットストリップに対して通例の平坦度の許容誤差範囲内で薄いホットストリップを生産するための測定及び制御装置を備える、略長手方向の部分の形で鋼のホットストリップを生産するための設備の2つの実施形態を図示している。設備の基本的な構造は、非鉄金属ストリップを生産する場合と同様である。
【0039】
双ロールキャスティング装置1において、鋼溶融物は溶融物空間4の中に導入され、溶融物空間は2つの内的に冷却された対向して回転するロール2及びキャスティングロールの側端部に配置された2つの側板3によって形成されており、所定の断面形状を有する鋳造された鋼のストリップ5はキャスティングロール2と側板3とによって形成された鋳造間隙から垂直に下方に取り出される。鋼のストリップが水平な搬送方向に偏向された後に、鋳造された鋼のストリップは圧延設備6の中で厚みを減じられるとともに微細構造を変化させ、次いで保管装置7へ供給される。鋼の等級、鋳造厚み、及びホットストリップの最終的な厚みによって、圧延設備6は、例えば低い品質要求を有する鋼ストリップのための単連スタンド圧延設備(図1)として、又は、例えば大幅に薄くされた厚みと表面品質及び変形特性に対して課された特定の要求を有する高品質等級の鋼の生産に対する多連スタンドの圧延ミルトレイン〈図2〉として設計されている。保存装置7はホットストリップをコイルに巻くためのコイル装置を備え、また、冷却炉に一体化することもできる。コイルに巻く間のストリップの張力を設定するためのストリップ駆動部10及びストリップせん断機は、保存装置の上流に取り付けられている。
【0040】
第1の圧延スタンドの上流で圧延温度を一定に設定するために、鋼ストリップは、第1の圧延スタンド11の上流に取り付けられた、冷却装置を備えることができるストリップ加熱装置12を通過する。ストリップ加熱装置12によって、例えば過冷却がすでにストリップの端部において生じた場合に、この端部領域の加熱を増加するように、ストリップが移動する方向に対して横方向の鋼ストリップの帯状の温度の影響を与えることが可能となる。温度測定装置13は、ストリップの移動する方向に対して横方向に位置する平面内の複数の帯域におけるストリップの温度を連続的に記録し、ストリップの加熱装置12を制御するために使用されるものであり、第1の圧延スタンド11の上流に直接取り付けられる。ストリップ駆動装置14は鋼のストリップをストリップに張力をかけた状態に維持し、適切な場合にはストリップを、ストリップ加熱装置12の中で第1の圧延スタンドまでセンタリングする。ストリップの厚みプロファイルの測定装置15は、双ロールキャスティング設備に残されている鋳造された鋼のストリップのストリップ厚みを測定し、このストリップ厚みはキャスティングロール制御装置16を使用して予備設定されるか、又は測定結果に従って補整される。
【0041】
平坦度測定装置18は、ストリップの移動方向に対して横方向の平面内の鋼ストリップの平坦度プロファイルを記録するために使用されるものであり、図1に示す実施形態における第1の唯一の圧延スタンド11、及び図2に示す実施形態における第1の圧延スタンド11の短い距離だけ下流に配置される。平坦度の偏差は、ストリップの幅に亘る厚みの偏差又はストリップの波うちから結果として生じる。平坦度測定装置18は、高温で使用するために設けられた平坦度測定ローラ19を備える。本発明に従って使用されるような平坦度測定ローラは、特許文献4に詳細に記載されている。平坦度の偏差を決定するための対応する測定方法は、特許文献5に記載されており、ここに採用することができる。決定された、測定値は評価装置20に供給され、評価装置20は、測定信号が評価され、平坦度の偏差に反作用する制御信号が、第1の圧延スタンド11の駆動装置21及び/又は双ロールの鋳造装置1の駆動装置22に伝達される、中央演算装置〈CPU〉によって形成されている。
【0042】
第1の圧延スタンドの可能な作動装置21は、既存の圧延スタンドを有する標準的な装置として入手可能な装置である。作動装置21は、例えば円筒状のワークロール又は支持ロール、又はワークロール又は支持ロールの外形に合せた軸変移のためのワークロール変移装置等の、ワークロールの曲げのための曲げブロックを備えることができる。さらに、ワークローラのロールバレルの帯状の熱影響に対する加熱及び冷却装置もまた可能な駆動装置を構成する。
【0043】
小区域においては、平坦度の偏差又は厚みプロファイルの偏差は、双ロールキャスティング装置の鋼ストリップの形成中の早い段階で生じる。薄いストリップの鋳造厚みでは、これらの偏差はもはや除去することはできないか、又はそれらの少しの部分だけが後続の圧延パスによって除去することができる。特に、鋼のストリップの形成中に生成される厚みプロファイルの偏差は、圧延パス中の平坦度のばらつきにつながる。したがって、平坦度測定値に基づいたクローズループの制御による双ロールキャスティング装置1において、作動装置22によってストリッププロファイルの形成に直接介入することは好都合である。双ロールキャスティング装置におけるキャスティングロールの表面プロファイルに影響を与えるための可能な作動装置22は、キャスティングロールバレルの外形に直接又は間接的に帯状の熱的な影響を与えるための加熱及び/又は冷却装置、キャスティングロールの側面に半径方向に作用する変形力を加えるための、好ましくは水圧式に駆動可能なキャスティングロールにおける変形装置、キャスティングロールバレルにおけるストランドシェルの凝固の条件に帯状の影響を与えるためのガスパージ装置、ストランドシェルの凝固の条件に影響を与えるために、熱伝導に影響を与えるコーティング剤でキャスティングロールバレルの帯状コーティングをするためのコーティング装置、又は代替的にキャスティングロールバレルにおけるストランドシェルの凝固の条件に帯状の影響を与えるためのキャスティングロールバレルの帯状の洗浄のための洗浄装置を含んでいる。
【0044】
平坦度のばらつきを最小化するための好都合な制御は、双ロールキャスティング装置の鋳造工程中のプロファイル形成と、第1の圧延スタンドにおける1回目の圧延パスにおけるプロファイルの形成又は変更との両方のモニタリングおよび影響から構成することができる。これは、評価装置における好適な評価、又は第1の圧延スタンドの上流のさらなる平坦度測定装置を含むことによってのみ行うことができる。
【0045】
温度測定装置13、13a、13bによって記録された、ストリップの幅全体に亘る温度プロファイル、及びストリップ厚みプロファイル測定装置15、15aを使用して記録されたストリップ厚みプロファイルは、平坦度の値に加えて評価装置の数学的モデルの中にインプットすることができ、数学的モデルは最適な制御方針を立て、対応する制御信号を生成する。
【0046】
鋳造された金属ストリップの温度プロファイルは、ストリップが形成された直後に、温度測定装置13bを使用して記録することができ、温度測定装置13bは2つのキャスティングロール2の下に離間して配置される。この温度プロファイルによって、キャスティングロールのロールバレルでのストランドシェルの形成及びその時に優勢な凝固の条件又は温度条件に関する結論が導かれる。この温度プロファイルを考慮することによって、評価装置において平坦度の値を評価する場合に、ストリップ形成の条件に、より正確に合致する、特に双ロールキャスティング装置における駆動装置22を制御するための、制御変数を生成することが可能となる。
【0047】
垂直型の双ロールキャスティング装置に関連して記載されてきた測定は、単ロールキャスティング装置にも同様に適応することができる。ストリップの自由表面を条件出しするための平坦化ロールが単ロールキャスティング装置のキャスティングロールに割り当てられることが好ましく、平坦度に影響を与えるための駆動装置は、キャスティングロールと平坦化ロールとの両方に割り当てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明による、薄いホットストリップを生産するための、平坦度測定装置を含む双ロールキャスティング装置及び単連スタンドの圧延設備を有する生産設備を示す図である。
【図2】本発明による、薄いホットストリップを生産するための、平坦度測定装置を含む双ロールキャスティング装置及び多連スタンドの圧延設備を有する生産設備を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1・・・双ロールキャスティング装置
2・・・キャスティングロール
3・・・側板
4・・・溶融物空間
5・・・金属ストリップ
6・・・圧延設備
7・・・保管装置
8、9・・・圧延スタンド
11・・・圧延スタンド
12・・・ストリップ加熱装置
13、13a、13b・・・温度測定装置
15、15a・・・ストリップ厚みプロファイル測定装置
18・・・平坦度測定
19・・・平坦度測定ローラ
20・・・評価装置
21、22・・・作動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−金属溶融物は、少なくとも1つの回転するキャスティングロールの側面に供給されて金属ストリップが形成され、
−前記金属ストリップは、インラインの厚み削減のための鋳造速度で供給され、
−前記金属ストリップは次いで保管装置に供給されて保管される、
ロール鋳造工程後に<10mmの鋳造されたストリップ厚みを有する、薄い金属ストリップ、特に鋼のホットストリップを金属溶融物から直接に連続生産するための工程であって、
−平坦度測定が移動する前記金属ストリップ上で行われ、
−前記平坦度測定からの平坦度測定値が、前記金属ストリップの平坦度に、目的とされた方法で影響を与える、
ことを特徴とする工程。
【請求項2】
前記金属ストリップのインラインの厚み削減は、少なくとも単連の圧延設備における少なくとも1つの変形段階において行われ、前記平坦度測定は、前記少なくとも1つの変形段階の前若しくは後に行われることを特徴とする請求項1に記載の工程。
【請求項3】
前記平坦度測定は、第1の、若しくは唯一の変形段階の直後に行われることを特徴とする請求項2に記載の工程。
【請求項4】
前記平坦度測定は、搬送方向に対して横方向の平面内の前記金属ストリップ中の応力分布を決定することによって行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の工程。
【請求項5】
前記平坦度測定からの平坦度測定値は、前記圧延設備の少なくとも1つの圧延スタンド中の圧延ニップに影響を与えるために使用されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の工程。
【請求項6】
前記圧延スタンド中の前記圧延ニップは、
−ワークロールの曲がり量
−ワークロールの変位量
−ロールバレルの少なくとも帯状の熱影響度
−ワークロールの少なくとも帯状の熱影響度
−前記金属ストリップの少なくとも帯状の熱影響度
の量の内の少なくとも1つによって影響を与えられることを特徴とする請求項4に記載の工程。
【請求項7】
前記平坦度測定からの前記平坦度測定値は、前記鋳造ロールの前記表面プロファイルに影響を与えるために使用されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の工程。
【請求項8】
前記金属ストリップの温度プロファイルは、前記圧延設備の直前若しくは直後の前記金属ストリップの搬送方向に対して横方向となる面内において決定され、前記測定された温度プロファイルは前記ホットストリップの平坦度に目的とされた方法で影響を与えるために使用されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の工程。
【請求項9】
前記金属ストリップ内の温度分布は、前記測定された温度プロファイルの関数として、前記金属ストリップの搬送方向に対して横方向となる平面内の区画において影響を与えられることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の工程。
【請求項10】
前記ストリップの厚みプロファイルは、前記金属ストリップの搬送方向に対して横方向となる平面内において測定され、前記測定されたストリップの厚みプロファイルは前記ホットストリップの平坦度に目的とされた方法で影響を与えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の工程。
【請求項11】
ロールキャスティング工程は垂直型双ロールキャスティング工程として実施され、
−金属溶融物は回転するキャスティングロールと側板とによって仕切られた溶融物空間の中に導入され、
−金属溶融物は前記キャスティングロールの前記側面において凝固し、ストランドシェルの形態でロールとともに移動し、
−これらストランドシェルは、前記キャスティングロールの間の最も狭い断面で合流し、少なくとも実質的に完全に凝固した金属ストリップを形成し、
−前記金属ストリップは、前記キャスティングロール間の鋳造速度で取り出される、
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の工程。
【請求項12】
ロールキャスティング装置と、下流に配置された少なくとも単連の圧延設備と、圧延された金属ストリップを保管するための保管装置とを有する、ロール鋳造工程後に<10mmの鋳造されたストリップ厚みを有する、薄い金属ストリップ、特に鋼のホットストリップを金属溶融物から直接に連続生産するための工程であって、
前記金属ストリップの平坦度測定値を記録するための平坦度測定装置(18)が前記ロールキャスティング装置と前記保管装置(7)との間に配置され、前記平坦度測定装置は平坦度測定値を記録し変換するための評価装置(20)を割り当てられていることを特徴とする装置。
【請求項13】
平坦度測定値を記録するための前記平坦度測定装置(18)は、前記金属ストリップの搬送方向に対して横方向の平面内に配置されていることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記平坦度測定装置(18)は、少なくとも単連圧延設備(8、9)の圧延スタンド(11)の上流若しくは下流に配置されていることを特徴とする請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
前記平坦度測定装置(18)は、平坦度測定ローラ(19)、形状を光学的に記録するための装置、又はストリップの表面特性における他の不均一性を記録するための装置によって形成されていることを特徴とする請求項12〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記評価装置(20)は、制御変数を伝送するための信号線を介して、前記圧延スタンド中の圧延ニップに影響を与えるための、
−ワークロールの曲げのための曲げブロック
−ワークロールの変移装置
−ロールバレルの帯状の熱影響のための加熱/冷却装置
−前記金属ストリップの少なくとも帯状の熱影響のための加熱/冷却装置
のうちの少なくとも1つの作動装置(21)に接続されていることを特徴とする請求項12〜15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記評価装置(20)は、信号線を介して、前記キャスティングロール(2)の前記表面プロファイルに影響を与えるための
−前記キャスティングロールバレルの帯状の熱影響のための加熱/冷却装置
−前記キャスティングロールにおいて、半径方向に変形力を与えるための、好ましくは水圧式に駆動可能な変形装置
−前記キャスティングロールバレルにおけるストランドシェルの凝固条件の帯状の影響のためのガスパージ装置
−前記ストランドシェルの凝固条件に影響を与えるための、熱移動又は核生成密度に影響を与えるコーティング剤による前記キャスティングロールバレルの帯状のコーティングのためのコーティング装置
−前記キャスティングロールバレルにおけるストランドシェルの凝固条件の帯状の影響のための前記キャスティングロールバレルの帯状の洗浄のための洗浄装置
のうちの少なくとも1つの作動装置(22)に接続されていることを特徴とする請求項12〜16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記金属ストリップの前記温度プロファイルを記録するための温度測定装置(13、13a、13b)は、前記金属ストリップの搬送方向に対して横方向となる平面内において、前記圧延設備(8、9)の少なくとも1つの圧延スタンドの少なくとも前若しくは後ろに配置されており、該温度測定装置は、前記測定値を記録し変換するための評価装置(20)を割り当てられていることを特徴とする請求項12〜17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記温度測定装置(13、13b)は、前記圧延設備の上流に配置され、前記評価装置(20)は、制御変数を伝送するための信号線を介して、前記ストリップ加熱装置(12)又はストリップ冷却装置に接続され、前記温度プロファイルをより均一にすることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記ストリップ厚みプロファイルを決定するためのストリップ厚みプロファイル測定装置(15、15a)は、前記金属ストリップの搬送方向に対して横方向となる平面内に配置され、該ストリップ厚み測定装置は、測定値を記録し変換するための評価装置(20)を割り当てられていることを特徴とする請求項12〜19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記評価装置(20)は、制御変数を伝送するための信号線を介して、前記圧延スタンド中の前記ストリップの厚みプロファイルに影響を与えるための
−ワークロール調整装置
−ワークロールの曲げのための曲げブロック
−ワークロール変移装置
−ロールバレルの帯状の熱影響のための過熱/冷却装置
の作動装置(21)のうちの少なくとも1つに接続されていることを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記評価装置(20)は信号線を介して、前記キャスティングロールによって前記ストリップの厚みプロファイルに影響を与えるための、
−キャスティングロール調整装置
−前記キャスティングロールバレルの帯状の熱影響のための過熱/冷却装置
−前記キャスティングロールにおいて、半径方向に作用する変形力を与えるための、好ましくは水圧式に駆動可能な変形装置
−前記キャスティングロールバレルの帯状の影響のためのガスパージ装置
−前記ストランドシェルの凝固条件に影響を与えるための、熱移動又は核生成密度に影響を与えるコーティング剤による前記キャスティングロールバレルの帯状のコーティングのためのコーティング装置
−前記キャスティングロールバレルにおける前記ストランドシェルの凝固条件の帯状の影響のための前記キャスティングロールバレルの帯状の洗浄のための洗浄装置
の作動装置(21)のうちの少なくとも1つに接続されていることを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項23】
前記ロールキャスティング装置は、回転駆動される2つのキャスティングロールと、2つの側板とを備え、これら2つのキャスティングロールと2つの側板とは一緒になって、金属溶融物を保持するための溶融物空間と、鋳造された金属ストリップの断面形状を形成するための鋳造間隙とを形成していることを特徴とする請求項12〜22のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−515647(P2008−515647A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536019(P2007−536019)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010129
【国際公開番号】WO2006/042606
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(301041586)シーメンス・ファオアーイー・メタルズ・テクノロジーズ・ゲーエムベーハー・ウント・コ (41)
【Fターム(参考)】