説明

薄板状部品の梱包体

【課題】梱包時に、収容ケース10内に立て姿勢で収容された薄板状部品1に、締め付けバンドの締め付けによって支持部材40を介して過度の荷重が作用するのを回避する。それにより、締め付けバンドの締め付け作業が容易化するとともに、立て姿勢で収容された薄板状部品1に不用意な挫屈が生じるのを回避する。
【解決手段】梱包体Aでは、裏面側に収容溝41を持つ収容保持部材40が、立て姿勢とされた薄板状部品1の上端部4をその収容溝41内に収容することで、薄板状部品1の上端部が位置決めされている。そして、収容保持部材40はその一部(係着部48,49)が収容ケース10の横梁11,12に当接することで下方側へ移動が阻止されている。さらに収容保持部材40の上を通して締め付けバンドが掛け渡されることで収容保持部材40の上方への移動も阻止されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板状部品を立て姿勢で収容ケース内に収容する梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
機械部品を含む種々の部品の複数個を、発泡樹脂製や紙製の支持部材を用いて部品同士が当接しない状態で収容ケース内に並置して梱包体とし、物流に供することが行われる。部品は、特許文献1に記載のように、平置き姿勢で梱包される場合もあり、特許文献2に記載のように、立て姿勢で梱包される場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−30589号公報
【特許文献2】特開平8−58775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの場合、収容ケース内に収容された部品群には、支持部材を利用することで部品に触れない状態で締め付けバンドが掛け渡され、搬送中の振動によって部品が移動しないようにされている。自動車のフロントフェンダー、ルーフパネル、ボンネットのスキン層等のように薄くかつ座屈しやすい部品を立て姿勢で梱包する場合、部品の上端部を支持し位置決めするために取り付けられている収容保持部材の上を通るようにして締め付けバンドを掛け渡したときに、締め付けバンドによる締め付け荷重が収容保持部材を介して部品に作用して、立て姿勢にある部品に座屈を生じさせる恐れがある。そのために、薄板状部品を立て姿勢で収容ケース内に収容するに際しては、締め付けバンドを掛け渡すときの作業に慎重さが求められている。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、収容保持部材を用いて薄板状部品を立て姿勢で収容ケース内に収容した梱包体において、立て姿勢にある薄板状部品に座屈を生じさせることなく、かつ梱包品に対する締め付けバンドの掛け渡しも容易に行えるようにした梱包体を開示することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による梱包体は、薄板状部品を立て姿勢で収容ケース内に配置された梱包体であって、前記収容ケースの断面略平面視における少なくとも一辺に配置され、薄板状部品を立て姿勢で支持する支持部材、前記収容ケースの断面略平面視における一辺に対向する他辺側に配置され、薄板状部品を位置決めするための収容溝と前記収容ケースに当接される当接部とが形成された収容保持部材、および、前記収容保持部材の一部に沿って架け渡されて収容ケースに固定される締め付けバンドから構成され、前記収容支持部材の一部に沿って架け渡されて収容ケースに固定された締め付けバンドによる薄板状部品に掛かることとなる締め付け荷重の全部または一部が、前記収容保持部の当接部を介して収容ケースに分散されることを特徴とする。
【0007】
本発明による梱包体では、立て姿勢で収容ケース内に収容される薄板状部品は、その一方端部は前記支持部材で支持され、他方端部は前記収容保持部材によって支持されかつ位置決めされる。そして、前記収容保持部材は、一方で一部が収容ケースに当接し、他方で締め付けバンドが架け渡されることで、収容ケースに当接した状態で固定される。そのために、前記収容保持部材を介して薄板状部品に掛かることとなる、締め付けバンドの締め付け荷重の全部または一部は、収容保持部の当接部を介して収容ケースに分散する。それにより、挫屈を生じさせるように過度の荷重が薄板状部品に作用するのを回避することができる。結果として、梱包時に、大きな注意を払うことなく、締め付けバンドの締め付け作業を行うことができる。
【0008】
本発明において、収容保持部材は、薄板状部品を位置決めするための収容溝と収容ケースに当接される当接部とが形成された形状を備えることを条件に、任意の形状であってよいが、好ましくは、収容保持部材は、薄板状部材を位置決めするための収容凹溝が形成された本体部と、前記収容ケースに当接させる当接部を有する前記本体部から張り出た膨出部とを少なくとも備えることを特徴とする。この形状とすることにより、軽量化とコストの低減が可能となる。
【0009】
上記の収容保持部材において、前記膨出部は、本体部から張り出す方向に向かって傾斜するリブ形状を有することが好ましい。それにより、軽量化した膨出部の強度を向上させることができる。
【0010】
また、上記の収容保持部材において、前記当接部は前記膨出部の先端に形成され、前記収容ケースと少なくとも2方向において当接される形状であることが好ましい。それにより、収容保持部材を収容ケースに確実に係着することが可能となる。
【0011】
本発明において、前記支持部材および収容保持部材は、梱包品である薄板状部品に対して適宜の緩衝性を備え、かつ所要の機械的強度を有する任意の材料により作ることができる。好ましくは、成形の容易性や軽量性の観点から、発泡樹脂成形品が好適であり、より好ましくは型内発泡成形品である。樹脂材料としては、熱可塑性樹脂が好適であり、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリ乳酸系樹脂などが挙げられる。なかでも、ポリスチレンとポリエチレンとを含む複合樹脂を用いることが好ましい。発泡体の倍率は、梱包しようとする薄板状部品の重量や形状等を勘案して適宜設定すればよいが、緩衝性がよく、軽量で経済的である点から、好ましくは40〜60倍程度、より好ましくは50倍(0.33g/L)程度である。
【発明の効果】
【0012】
本発明による梱包体では、梱包時に、締め付けバンドの締め付けによって、収容ケース内に立て姿勢で収容された薄板状部品に挫屈を生じさせるような過度の締め付け荷重が作用するのを回避することができる。そのために、大きな注意を払うことなく締め付けバンドの締め付け作業を行うことができるようになり、梱包作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による梱包体の一例を説明する側面図。
【図2】本発明で用いる支持部材の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。図1において、1は梱包品としての薄板状部品であり、この薄板状部品1の複数枚が立て姿勢で収容ケース10内に収容されて、梱包体Aとされている。
【0015】
薄板状部品1は、この例において、下広がりのほぼ三角形状をなしており、左下隅部2と右下隅部3は、図2に示す第1の下支持部材20と第2の下支持部材30によって支持されかつ位置決めされている。
【0016】
収容ケース10は箱型であり、鉄材を縦横に配置して作られている。前記第1の下支持部材20と第2の下支持部材30は、収容ケース10の左右の下隅部に配置されており、第1の下支持部材20の内側角部には薄板状部品1の左下隅部2を収容するための収容溝21が適数形成され、また、背面側には締め付けバンドのための縦溝22が形成されている。第2の下支持部材30も同様であり、その内側角部には薄板状部品1の右下隅部3を収容するための収容溝31が適数形成され、また、背面側には締め付けバンドのための縦溝32が形成されている。
【0017】
そのようにして支持された薄板状部品1の上端部4を支持し位置決めするために収容保持部材40が用いられる。図1に示すように、収容保持部材40は、本体部45と該本体部45の側面から側方に張り出した第1と第2の膨出部46,47とを備える。また、本体部45の裏面側には薄板状部品1の上端部4を収容するための収容溝41が適数形成され、上面側には締め付けバンドのための横溝42が形成されている。なお、前記収容溝41の形状は、梱包しようとする薄板状部品1の上端部4の形状にほぼ一致するようにされている。
【0018】
具体的には、膨出部46,47はそれぞれ、本体部45の側面の下部から本体部45の長手方向にほぼ垂直な方向(水平方向)に突設された腕部46a,47aと、本体部45の側面の上部から腕部の先端に向かって傾斜したリブ部46b,47bとから形成されている。これにより、腕部46a,46bを補強するとともに、軽量化を図り、コスト削減となる。
【0019】
前記本体部45の一方の側面から張り出す第1の膨出部46、46の先端は、収容ケース10の一方の側面側の横梁11に係着することのできる第1の係着部48、48とされており、また、本体部45の他方の側面から張り出す第2の膨出部47、47の先端も、収容ケース10の他方の側面側の横梁12に係着することのできる第2の係着部49、49とされている。
【0020】
具体的には、第1の係着部48,48は、膨出部46,46の腕部46aの先端部が収容ケース10の横梁11に当接する第1当接部48aと、第1当接部48aの先端部から横梁11を他の方向から当接させるような方向(鉛直方向)に突設された第2当接部48bとからなる。同様に第2の係着部49,49は、膨出部47,47の腕部47aの先端部が収容ケース10の横梁12に当接する第1当接部49aと、第1当接部49aの先端部から横梁12を他の方向から当接させるような方向(鉛直方向)に突設された第2当接部49bとからなる。すなわち、係着部48,49はともに、収容ケースの横梁11,12と2方向で当接する。これにより、収容ケースに確実に係着することができる。
【0021】
なお、前記した第1の膨出部46と第2の膨出部47の長さは次のように設定されている。すなわち、収容ケース10内において、下隅部2,3を第1の下支持部材20と第2の下支持部材30によって支持した状態で立て姿勢に保持されている薄板状部品1の上端部4に、本体部45に形成した収容溝41を収容した姿勢で収容保持部材40を配置したときに、第1の膨出部46の第1の係着部48が収容ケース10の一方の側面側の横梁11に係着できる長さに第1の膨出部46の長さが設定され、また、第2の膨出部47の第2の係着部49が収容ケース10の他方の側面側の横梁12に係着できる長さに第2の膨出部47の長さが設定される。従って、第1の膨出部46と第2の膨出部47の長さは一定のものではなく、本体部45の横幅の大きさや収容している薄板状部品1の上端部4の収容ケース10内での位置などに応じて、適宜設定される。
【0022】
梱包に当たっては、収容ケース10の左右の下隅部に第1の下支持部材20と第2の下支持部材30とを配置し、その収容溝21,31内に、下隅部2,3を収容するようにして、所要枚数の薄板状部品1を立て姿勢に保持する。次に、収容保持部材40の本体部45に形成した収容溝41内に立て姿勢にある薄板状部品1の上端部4を収容するようにして、収容保持部材40を配置する。前記したように、その姿勢としたときに、収容保持部材40に形成した第1の膨出部46と第2の膨出部47の先端、すなわち係着部48,49は、収容ケース10の横梁11,12によって下方から受けられた状態となり、それより下方には移動することができない。
【0023】
最後に、本体部45の上面に形成した横溝42を利用して締め付けバンド(図示されない)を掛け渡す。締め付けバンドの下端側を第1の下支持部材20と第2の下支持部材30に形成した縦溝22,32を通過させた後、端部を収容ケース10に止め付けることで、梱包作業は終了する。
【0024】
なお、本実施の形態のように、本体部45から突設された膨出部46,47を形成することにより、一定以上の締め付け荷重が締め付けバンドから本体部45を介して膨出部46,47に係ることで破壊されるように膨出部46,47の強度を設定することもできる。これにより、作業員の締め付け作業が強すぎることを知らせることができる。もちろん、この場合には、薄板状部品1が挫屈しない程度の荷重で膨出部46,47が破壊されるように膨出部の強度が設定される。
【0025】
前記したように、梱包時において、収容保持部材40にそれより下方には移動することができない位置に位置決めされており、締め付けバンドで締め付けたときに、その締め付け力は、収容保持部40の当接部を介して収容ケース10に分散される。そのために、締め付け力による荷重が収容保持部材40を介して薄板状部品1に作用することはなく、締め付け時に、立て姿勢に保持された薄板状部品1に、不用意な挫屈が生じるようなことを確実に回避できる。
【0026】
なお、以上の説明では、第1の下支持部材20と第2の下支持部材30が収容ケース10の下部に位置し、収容保持部材40が上部に位置する梱包体Aを例示したが、第1の下支持部材20と第2の下支持部材30とが収容ケース10の一方の側面側に位置させ、収容保持部材40を他方の側面側に位置させた形態の梱包体としても、所期の目的は達成される。また、薄板状部品1の一方端を支持する支持部材として、第1の下支持部材20と第2の下支持部材30の2つの部材を示したが、1つの部材で薄板状部品1の一方端を支持するようにしてもよい。いずれの場合も、支持部材と収容ケースとの間に適宜のスペーサを介して、収容ケースに対する支持部材の位置決めを行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0027】
A…梱包体、
1…梱包品としての薄板状部品、
4…薄板状部品の上端部、
10…収容ケース、
11,12…収容ケースの横梁、
40…収容保持部材、
41…薄板状部品の上端部を収容するための収容溝、
42…締め付けバンドのための横溝、
45…本体部、
46…第1の膨出部、
47…第2の膨出部、
48…第1の係着部、
49…第2の係着部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状部品を立て姿勢で収容ケース内に配置された梱包体であって、
前記収容ケースの断面略平面視における少なくとも一辺に配置され、薄板状部品を立て姿勢で支持する支持部材、
前記収容ケースの断面略平面視における一辺に対向する他辺側に配置され、薄板状部品を位置決めするための収容溝と前記収容ケースに当接される当接部とが形成された収容保持部材、および、
前記収容保持部材の一部に沿って架け渡されて収容ケースに固定される締め付けバンドから構成され、
前記収容支持部材の一部に沿って架け渡されて収容ケースに固定された締め付けバンドによる薄板状部品に掛かることとなる締め付け荷重の全部または一部が、前記収容保持部の当接部を介して収容ケースに分散されることを特徴とする梱包体。
【請求項2】
前記収容保持部材は薄板状部材を位置決めするための収容凹溝が形成された本体部と、前記収容ケースに当接させる当接部を有する前記本体部から張り出た膨出部とを少なくとも備えることを特徴とする請求項1に記載の梱包体。
【請求項3】
前記膨出部は、本体部から張り出す方向に向かって傾斜するリブ形状を有することを特徴とする請求項2に記載の梱包体。
【請求項4】
前記当接部は前記膨出部の先端に形成され、前記収容ケースと少なくとも2方向において当接されることを特徴とする請求項2または3に記載の梱包体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−76808(P2012−76808A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224714(P2010−224714)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】