説明

薄畳

【課題】本発明は、衛生上の機能が優れ、薄く軽量で施工性の優れ且つ滑りにくい薄畳を提供する。
【解決手段】木質繊維板又は独立気泡性合成樹脂発泡体よりなる芯材の一面に畳表が積層され、他面に抗アレルゲン剤、抗菌剤、防腐剤又は防黴剤である機能化剤含有クッションシートが積層され、更に、該クッションシートに滑り止めシートが部分的に積層されていることを特徴とする薄畳。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄畳に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅設計分野において、和洋折衷住宅として洋間と和室の間に段差のない住宅がバリアフリー住宅として注目されているが、従来の厚さが55mm前後の畳を用いた場合、和室と洋室との段差を無くすためには、和室の大引きを下げたり、洋室床下地のかさ上げをしたり等の施工が必要となる。そこで、洋室と和室の変更も容易に施工しうる厚さ7〜25mm程度の薄畳が種々提案されている。
【0003】
例えば、厚みが5〜15mmのファイバーボードの少なくとも表側にクッションシートを設け、更にその上に畳表を固着した薄畳であって、該ファイバーボードの密度が、0.35〜0.6g/cmである薄畳及び該ファイバーボードの表裏に、金属箔、又はプラスチックフィルムを貼付した薄畳(例えば、特許文献1参照。)や全厚7〜25mmの畳に用いられる畳床構成材において、該畳床構成材は、密度0.02〜0.5g/cmの板状体(但し、合成樹脂発泡体を除く。)と繊維強化樹脂シートとを接着一体化してなる厚さ4〜20mmのものであり、且つ曲げ弾性率が6000kgf/cm以上である畳床構成材(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
【0004】
上記薄畳は薄く軽量であり施工は容易であり、上記の用途等に広く使用されている。又、持ち運びも容易なので薄畳単体を床の上の所定位置において使用することもなされている。しかし、上記薄畳は軽量であり、容易に移動してしまう、人が踏んだ際に滑って危険である等の欠点があったので、薄畳の裏面に滑り止めコーティングした畳(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。
【0005】
又、畳は長期間試用するので、畳表やクッションシート等にダニ類や黴が住み着くという欠点があったので、クッションシートに抗アレルゲン剤を固着した畳(例えば、特許文献4参照。)が提案されている。抗アレルゲン剤等の機能化剤を含有する畳は衛生上好ましいが、クッションシートが最下層になると木質フローリングの床に設置した場合は滑りやすく危険であるという欠点があった。滑り止め効果を付与するためには、上記のようにクッションシートに滑り止めコーティングしてもよいが、クッションシートは多孔性なので滑り止め剤を均一にコーティングしにくく、好適な滑り止め効果を付与することは困難であった。又、全面に分厚くコーティングすると抗アレルゲン剤がコーティグ層で遮断され機能化剤の効果が発揮されないという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−84340号公報
【特許文献2】特開平11−336307号公報
【特許文献3】特開2004−162279号公報
【特許文献4】特開2005−126982号公報
【特許文献5】特開2003−81727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、衛生上の機能が優れ、薄く軽量で施工性の優れ且つ滑りにくい薄畳を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、
[1]木質繊維板又は独立気泡性合成樹脂発泡体よりなる芯材の一面に畳表が積層され、他面に機能化剤含有クッションシートが積層され、更に、該クッションシートに滑り止め層が部分的に積層されていることを特徴とする薄畳、
[2]滑り止め層が、基材シートの一面にシリコン系樹脂、アクリル系樹脂又はアクリルシリコン系樹脂よりなる滑り止め材層が積層され、他面に粘接着剤層が積層されている滑り止めシートであることを特徴とする前記[1]記載の薄畳、
[3]滑り止めシートの厚さが、クッションシートの厚さより薄く、大きな荷重が負荷された際に滑り止めシートがクッションシートに埋め込まれるようになされてなることを特徴とする前記[2]記載の薄畳、
[4]滑り止めシートが帯状であり、複数の滑り止めシートが略平行に積層されていることを特徴とする前記[2]又は[3]記載の薄畳、
[5]滑り止めシートが格子状であり、クッションシートの全面に積層されていることを特徴とする前記[2]又は[3]記載の薄畳、及び、
[6]機能化剤が、抗アレルゲン剤、抗菌剤、防腐剤又は防黴剤であることを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれか1項記載の薄畳
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の薄畳の構成は上述の通りであり、衛生上の機能が優れ、薄く軽量で施工性の優れ且つ滑りにくい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の薄畳の一例を示す断面図である。
【図2】滑り止めシートの一例を示す断面図である。
【図3】実施例1におけるクッションシートに滑り止めシートが積層された状態の一例を示す平面図である。
【図4】実施例2で作製した格子状の滑り止めシートを示す平面図である。
【図5】実施例3におけるクッションシートに滑り止めシートが積層された状態の異なる例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明を図面を参照して説明する。図1は本発明の薄畳の一例を示す断面図である。
図中1は芯材であり、芯材1の一面にはクッションシート31及び畳表2が順次積層され、他面にはクッションシート3が積層されている。
【0012】
上記芯材は、木質繊維板又は独立気泡性合成樹脂発泡体からなる。木質繊維板は、木材その他の植物繊維をパルプ化し、バインダー樹脂により結合し、熱圧成板した建材であって、従来から薄畳の芯材として使用されている木質繊維板であれば特に限定されず、例えば、パーティクルボード、合板、インシュレーションファイバーボード(インシュレーションボード)、ミディアムデンシティファイバーボード(MDF)、ハードファイバーボード(ハードボード)等が挙げられる。
【0013】
上記独立気泡性合成樹脂発泡体は、従来から薄畳の芯材として使用されている独立気泡性合成樹脂発泡体であれば特に限定されず、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂発泡体が挙げられる。芯材1の厚さは特に限定されないが、一般に5〜15mmである。
【0014】
上記クッションシート3、31は薄畳にクッション性を付与するものであり、従来から薄畳のクッションシートとして使用されているものであれば特に限定されず、例えば、麻繊維、綿繊維、ポリエステル繊維などの繊維の不織布、織布、マット、フェルト;ポリスチレン樹脂発泡シート、ポリエチレン樹脂発泡シート、ポリプロピレン樹脂発泡シート、ウレタン発泡シート、ゴム発泡シートなどの発泡シート;クラフト紙、板紙、厚紙、ダンボール等が挙げられる。クッションシート3、31の厚さは特に限定されないが、一般に1〜5mmである。
【0015】
クッションシート3は機能化剤を含有している。機能化剤とは、アレルゲンを低減化する抗アレルゲン剤、細菌の増殖を抑制したり殺したりする働きのある抗菌剤、防腐剤、防黴剤等である。上記抗アレルゲン剤としては、例えば、芳香族ヒドロキシ化合物、アルカリ金属の炭酸塩、明礬、ラウリルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、リン酸塩、硫酸亜鉛、酢酸鉛等のアレルゲン低減化剤(例えば、特許文献5参照。)が挙げられる。尚、クッションシート31も機能化剤を含有していてもよい。
【0016】
機能化剤をクッションシート3に含有させる方法は特に限定されず、例えば、粉状の機能化剤をクッションシートに散布する方法、機能化剤を水、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等)、炭化水素類(トルエン、キシレン、メチルナフタレン等)等の溶剤に溶解した溶液をクッションシートに散布した後溶剤を蒸発する方法等が挙げられる。機能化剤の含有量は機能化剤の種類、目的により適宜決定されればよいが、一般に1m当り0.01〜1.0gである。
【0017】
上記芯材とクッションシートと畳表を積層する方法は、特に限定されず、例えば、ゴム系、アクリル系、ウレタン系、シリコン系等の粘接着剤で接着する方法、エチレンー酢酸ビニル共重合体、線状低密度ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン系ホットメルト型接着剤で接着する方法、糸で縫合する方法、タッカーで打ち付ける方法等が挙げられる。
【0018】
クッションシート3には滑り止め層4が部分的に積層されている。クッションシート3の全面に滑り止め層4が積層されていると、クッションシート3に含有されている機能化剤が表面に拡散されず機能化効果が発揮できなくなるので、滑り止め層4はクッションシート3に部分的に積層されている。滑り止め層4のクッションシート3に対する面積は小さくなると滑り止め効果が低下し、大きくなると機能化剤が表面に拡散されず機能化効果が小さくなるので、5〜40%が好ましい。
【0019】
滑り止め層4の積層方法は、特に限定されず、例えば、滑り止め材の溶液を塗布乾燥する方法が挙げられるが、クッションシートは多孔性のものが多く、クッションシートの表面に均一に形成することは困難なので、基材シートの一面にシリコン系樹脂、アクリル系樹脂又はアクリルシリコン系樹脂よりなる滑り止め材層が積層され、他面に粘接着剤層が積層されている滑り止めシートを積層するのが好ましい。
【0020】
図2は滑り止めシートの一例を示す断面図である。図中41はクラフト紙、布、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン等からなる基材シートであり、基材シート41の一面にはゴム系、アクリル系、ウレタン系等の粘接着剤、エチレンー酢酸ビニル共重合体、線状低密度ポリエチレン等のホットメルト型接着剤等の粘接着層42が積層されている。
【0021】
又、基材シート41の一面には、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂又はアクリルシリコン系樹脂よりなる半楕円状の2条の滑り止め材層43が積層されている。滑り止め材層43は基材シート41の全面に略均一厚さに積層されていてもよいが、滑り止め効果を高くするために、半円形、ピラミッド状等の点状、断面形状が半円状、半楕円状、三角状、四角状等の線状、波状、格子状であってもよい。
【0022】
クッションシート3は柔軟なので踏みつけると、滑り止めシート4がクッションシート3の中にめり込むが、滑り止めシート4の厚さがクッションシート3の厚さより厚いと、踏みつけた際に滑り止め材層43がクッションシート3より突出した状態になり、薄畳が浮いたり変形することがある。従って、滑り止めシート4の厚さはクッションシート3の厚さより薄く、大きな荷重が負荷された際に滑り止めシート4がクッションシート3に埋め込まれるようになされているのが好ましい。
【0023】
滑り止めシート4の形状は、特に限定されず、例えば、円形、三角形、四角形、帯状、格子状等が挙げられる。帯状の滑り止めシートは複数のシートが略平行になるようにクッションシート積層されるのが好ましい。格子状の帯状の滑り止めシートはクッションシートの全面に積層されるのが好ましい。
【実施例】
【0024】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
図1に示したように、厚さ7mm、密度0.48g/cm、曲げ強度9N/mmのミディアムデンシティファイバーボードよりなる芯材(830×830mm)1の両面に厚さ2mmの不織布よりなるクッションシート3、31を積層し、クッションシート31に厚さ2mmの畳表2を積層し、その両端部を芯材1及びクッションシート3の端部に逢合して薄畳を得た。
【0026】
得られた薄畳を塩化ビニル樹脂製フロアタイルの上に載置し、薄畳の上に10kgの錘を載せ、プッシュプルスケールで9m/分の速度で水平方向に引張って動き出し荷重を測定したところ120Nであった。
【0027】
厚さ0.05mmの布基材シートの一面にゴム系粘着剤を厚さ0.05mmに塗布して粘着剤層を積層し、他面にシリコン系樹脂よりなる滑り止め材を高さ1.5mmの凸条に複数条積層して滑り止めシートを得た。得られた滑り止めシートを幅3cmに切断し、図2に示したように布基材シート41の一面にゴム系粘着剤層42が積層され、他面に凸条の滑り止め材層43が2条積層してなる帯状の滑り止めシート44を得た。
【0028】
図3に示したように、得られた5枚の帯状の滑り止めシート44のゴム系粘着剤層42を、得られた薄畳のクッションシート3に、端部から20mmの位置及びそれから180mm間隔に略平行に積層して本発明の薄畳を得た。尚、滑り止め材層43の凸条は平行になるように積層した。
【0029】
得られた本発明の薄畳を塩化ビニル樹脂製フロアタイルの上に載置し、薄畳の上に10kgの錘を載せ、プッシュプルスケールで凸条と直角方向に9m/分の速度で水平方向に引張って動き出し荷重を測定したところ140N以上であった。尚、10kgの錘を載せた際の滑り止め材層43の塩化ビニル樹脂製フロアタイルへの接触面積は薄畳の約6%であった(滑り止め材層43は基材シート41に凸条に形成されており、塩化ビニル樹脂製フロアタイルに対する接触面積は滑り止めシート44の面積の約65%である。)。又、得られた薄畳を木質フローリグの床上に置き、足で踏んだところ、何処を踏んでも薄畳の端部が浮くことはなかった。
【0030】
(実施例2)
実施例1で得られた滑り止めシートを、図4に示したように、830×830mmの正方形に切断すると共に18.25×18.25mmの正方形に規則的に16箇所打ち抜いき、格子の幅が2mmの格子状滑り止めシート45を得た。
【0031】
得られた格子状滑り止めシート45のゴム系粘着剤層42を、実施例1で得られた薄畳のクッションシート3に積層して本発明の薄畳を得た。実施例1で行ったと同様にして得られた薄畳の動き出し荷重を測定したところ140N以上であった。尚、10kgの錘を載せた際の滑り止め材層の塩化ビニル樹脂製フロアタイルへの接触面積は薄畳の約15%であった。又、得られた薄畳を木質フローリグの床上に置き、足で踏んだところ、何処を踏んでも薄畳の端部が浮くことはなかった。
【0032】
(実施例3)
実施例1で得られた滑り止めシートを切断して、200×200mmの正方形の滑り止めシート46を1枚及び100×100mmの正方形の滑り止めシート47を4枚作製した。図5に示したように、滑り止めシート46が薄畳の略中央に位置し、4枚の滑り止めシート47が薄畳の各隅に位置するように実施例1で得られた薄畳のクッションシート3にゴム系粘着剤層42を積層して本発明の薄畳を得た。尚、滑り止め材層の凸条は平行になるように積層した。
【0033】
実施例1で行ったと同様にして得られた薄畳の動き出し荷重を測定したところ140N以上であった。尚、10kgの錘を載せた際の滑り止め材層の塩化ビニル樹脂製フロアタイルへの接触面積は薄畳の約12%であった。又、得られた薄畳を木質フローリグの床上に置き、足で踏んだところ、何処を踏んでも薄畳の端部が浮くことはなかった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の薄畳は衛生上の機能が優れ、薄く軽量で施工性の優れ且つ滑りにくいので従来の畳の代わりに建材分野において好適に使用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 芯材
2 畳表
3 クッションシート
4 滑り止めシート
41 基材シート
42 粘接着剤層
43 滑り止め材層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質繊維板又は独立気泡性合成樹脂発泡体よりなる芯材の一面に畳表が積層され、他面に機能化剤含有クッションシートが積層され、更に、該クッションシートに滑り止め層が部分的に積層されていることを特徴とする薄畳。
【請求項2】
滑り止め層が、基材シートの一面にシリコン系樹脂、アクリル系樹脂又はアクリルシリコン系樹脂よりなる滑り止め材層が積層され、他面に粘接着剤層が積層されている滑り止めシートであることを特徴とする請求項1記載の薄畳。
【請求項3】
滑り止めシートの厚さが、クッションシートの厚さより薄く、大きな荷重が負荷された際に滑り止めシートがクッションシートに埋め込まれるようになされてなることを特徴とする請求項2記載の薄畳。
【請求項4】
滑り止めシートが帯状であり、複数の滑り止めシートが略平行に積層されていることを特徴とする請求項2又は3記載の薄畳。
【請求項5】
滑り止めシートが格子状であり、クッションシートの全面に積層されていることを特徴とする請求項2又は3記載の薄畳。
【請求項6】
機能化剤が、抗アレルゲン剤、抗菌剤、防腐剤又は防黴剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の薄畳。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−236220(P2010−236220A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84042(P2009−84042)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000198802)積水成型工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】