説明

薄肉ポリウレタン物品

本発明は、例えば、外科用手袋、クリーンルーム用手袋およびコンドームなどの、ポリウレタンエラストマーを含む低粘着性薄肉物品に関する。より詳しくは、本発明は、特定量のモレキュラーシーブを含有するそのようなエラストマー物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、外科用手袋、クリーンルーム用手袋およびコンドームなどの、ポリウレタンエラストマーを含む低粘着性薄肉物品に関する。より詳しくは、本発明は、特定量のモレキュラーシーブを含有するそのようなエラストマー物品に関する。
【背景技術】
【0002】
エラストマー製手袋は、無菌の、外科の、および化学的な環境で使用されることが知られている。米国特許公報(特許文献1)(ヘス(Hess)ら)、米国特許公報(特許文献2)(コバヤシ(Kobayashi)ら)および米国特許公報(特許文献3)(ポッター(Potter)ら)には、手袋の製造方法として「反応浸漬」法が開示されている。米国特許公報(特許文献4)(ドレイベルビス(Dreibelbis)ら)および米国特許公報(特許文献5)(ドレイベルビス(Dreibelbis)ら)には、例えば低伸び率、裂けや破れに対する高い耐性といった、優れた機械的特性を有するポリウレタン薄肉物品、例えば手袋やコンドームの製造方法が記載されている。
【0003】
手袋のような薄肉エラストマー物品の特性上の1つの問題は、表面の粘着性であり、これにより手袋の製造時における型からの取り外しもしくは包装材からの取出しが困難となり、かつ/または手袋を装着する際の困難をもたらすおそれがある。米国特許公報(特許文献6)(バンデ・ポル(Vande Pol)ら)には、ビニル手袋の粘着性を制御するために、粉末や滑剤の使用、および、間欠スプレーコーティング(液滴サイズを小さくするために、場合によりフィラーを含む)で接触性を低下させた表面構造の使用が開示されている。しかしながら、滑剤はクリーンルームや手術室を汚染するおそれがあり、また、表面構造は手触り感を低下させるおそれがある。ポリマー中に無機粒子を含有させることを開示しているものがある。米国特許公報(特許文献7)(ワン(Wang))および米国特許公報(特許文献8)(ゾーン(Zorn)ら、合成皮革用多孔性凝固コーティングを開示)、米国特許公報(特許文献9)(シュレール(Schreoer)ら、パイプライナーとしてのコーティング布を開示)、米国特許公報(特許文献10)(コシンスキー(Kosinski)ら、繊維およびフィルム中のクレーを開示)、米国特許公報(特許文献11)(ヤコブソン(Jacobson)ら、繊維中の硫酸バリウムを開示)、並びに、欧州特許出願(特許文献12)(ロバーツ(Roberts)、ラテックス中のクレーを開示)である。しかしながら、粘着性が低いポリウレタンエラストマーの薄肉物品が依然として要望されている。
【0004】
【特許文献1】米国特許第2,814,834号明細書
【特許文献2】米国特許第3,553,308号明細書
【特許文献3】米国特許第5,132,129号明細書
【特許文献4】米国特許第5,391,343号明細書
【特許文献5】米国特許第5,728,340号明細書
【特許文献6】米国特許第6,016,570号明細書
【特許文献7】米国特許第3,832,214号明細書
【特許文献8】米国特許第3,622,526号明細書
【特許文献9】米国特許第4,521,465号明細書
【特許文献10】米国特許第6,203,901号明細書
【特許文献11】米国特許第6,027,803号明細書
【特許文献12】EP1125978号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも1つの表面層を含む薄肉物品であって、前記表面層が、
ポリウレタンエラストマーと、その層の重量を基準にして約20〜40重量パーセントのモレキュラーシーブであって、平均粒径が約1〜15ミクロンであり、モレキュラーシーブを基準にして1重量パーセント未満の粒径が約40ミクロンを超えるモレキュラーシーブからなる薄肉物品を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
意外にも、ある量のモレキュラーシーブを含有する薄肉物品が、粘着性が非常に低く、低孔隙率であって、低い伸び率と応力を示し、滑らかな手触りで、肉眼では粒子が認識されず、ほんの僅かに不透明であるという予期せぬ組み合わせを有していることがわかった。粘着性が低いことは、包装材から物品を取り出すにも、また装着するにも有利であり、孔隙率が低いことは、クリーンルームや医療環境における遮断による保護に好適であり、伸び率と応力が低いことは、形の保持や快適性に有利であり、触感や視覚的特性は優れた美感を与える。
【0007】
ここで使用する「薄肉」という用語は、約0.18ミリメートル以下の厚さを意味する。この物品は内側表面と外側表面を有しているということができるが、これはこの物品が使用されるときの形態において確認されるものである。「ポリウレタン」は、主としてポリエステル、ポリエーテルまたはポリカーボネートを含む「ソフトセグメント」と、ジイソシアネートと二官能価の連鎖延長剤との反応から誘導される「ハードセグメント」を交互に有する長鎖の合成ポリマーである。「エラストマー」は、希釈剤を含まない場合において、室温で元の長さの2倍にまで伸ばし、1分間保持して開放したとき、1分以内に元の長さの1.5倍未満まで収縮するポリマーを意味する。「モレキュラーシーブ」は、一様にオングスオロームサイズの細孔、空洞またはその他の裂け目を有する結晶性無機物であり、アルミノシリケートやチタノシリケートなどの、合成および天然のゼオライトが挙げられる。
【0008】
本発明の薄肉物品は、少なくとも1つの表面層を含み、その表面層は、ポリウレタンエラストマーと、その層の重量を基準にして約20〜40wt%(好ましくは約25〜35wt%)のモレキュラーシーブであって、平均粒径が約1〜15ミクロンであり、モレキュラーシーブを基準にして1wt%未満の粒径が約40ミクロンを超えるモレキュラーシーブからなる。この物品は、100%伸び率における応力が約200psi(1.4メガパスカル)以下で、厚さ0.1mmの試料として換算した「計算した水蒸気透過速度」が約50g/時/m未満(好ましくは、約20g/時/m未満)で、伸び率が約25%未満である。
【0009】
本発明に有用なエラストマーポリウレタンは、重合性グリコールとジイソシアネートとを反応させ、イソシアネートを末端とするプレポリマー(「キャップされたグリコール」)を生成することによって調製でき、イソシアネート(NCO)末端基の濃度は、約1.4〜2.0%であることが好ましい。キャップされたグリコールを、適当な溶媒に溶解し、その後、キャップされたグリコールを活性な水素原子を有する二官能価の連鎖延長剤と反応させる。このようなポリマー溶液を調製するための適当な溶剤としては、ジメチルアセトアミド(「DMAc」)、ジメチルホルムアミドおよびN−メチルピロリドンなどのアミド溶媒があるが、ジメチルスルホキシドやテトラメチルウレアなどの他の溶媒も使用可能である。
【0010】
エラストマーポリウレタンの調製に使用される重合性グリコールとしては、ポリエーテルグリコール、ポリエステルグリコール、ポリカーボネートグリコールおよびそれらの共重合体が挙げられる。そのようなグリコールの例としては、ポリ(エチレンエーテル)グリコール、ポリ(トリメチレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレン−コ−2−メチルテトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(エチレン−コ−ブチレンアジペート)グリコール、ポリ(2,2−ジメチル−1,3−プロピレンドデカンジオエート)グリコール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタメチレンドデカンジオエート)グリコール、ポリ(ペンタン−1,5−カーボネート)グリコールおよびポリ(ヘキサン−1,6−カーボネート)グリコールが挙げられる。数平均分子量が約3,000〜6,000のポリエステルグリコール類が好ましい。アジピン酸と、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールの混合物(モル比30:70から75:25)との反応から誘導されるポリエステルグリコール類がより好ましい。
【0011】
有用なジイソシアネートとしては、1−イソシアナト−4−[(4’−イソシアナトフェニル)メチル]ベンゼン(好ましい)、1−イソシアナト−2−[(4’−イソシアナト−フェニル)メチル]ベンゼン、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0012】
連鎖延長剤には、ジオール、アミノアルコールまたはジアミンが使用できる。有用なジオールとしては、エチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオールおよびそれらの混合物が挙げられる。連鎖延長剤がジオールであるとき、ポリウレタンは、前記の2段プレポリマー法または成分を実質的に同時に混合する1段法で調製できる。有用なジアミンとしては、エチレンジアミン(好ましい)、1,2−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,3−ジアミノペンタン、1,4−シクロヘキサン−ジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミンおよびそれらの混合物が挙げられる。連鎖延長剤がジアミンであるとき、一般に、2段のプレポリマー重合法が使用される。ポリマーの分子量を調整するために、ジエチルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミンなどの一官能価のアミン連鎖停止剤を加えることができ、また、溶媒の粘度を調整するために、ジエチレントリアミンなどの三官能価成分を少量加えることができる。
【0013】
ポリウレタンの溶液は、通常、約25〜125ポアズの落球粘度を有し、ポリウレタンの濃度は、溶液の全重量を基準として、約12〜20wt%である。
【0014】
モレキュラーシーブは、ポリウレタン溶液に直接混合してもよく、あるいは、場合により、まず高濃度のスラリーすなわちマスターバッチを調製し、その後、ポリウレタン主溶液に加えてもよい。モレキュラーシーブは、一般に、供給先から受け入れたものをそのまま使用することができるが、水または水蒸気に曝されたなら、浸漬混合液中にゲルの形成が増大する危険性を低減するために、使用前に乾燥させることが好ましい。しかしながら、本発明ではそのような問題は認められなかった。モレキュラーシーブの添加は、ポリウレタン溶液に比べて混合液の粘度を増大させるが、これは、溶媒をより多く加えることによって、ほぼポリウレタン溶液の粘度にまで容易に低減できる。
【0015】
所望であれば、本発明の利益を損なわない限り、UV遮断剤や酸化防止剤などの他の添加物を浸漬混合液に加えてもよい。しかしながら、クリーンルームや医療用には、そうした重要な環境への汚染物質の放出を低減するために、そのような添加物を使用しないことが好ましい。
【0016】
薄肉物品は次のように製造することができる。前記のような方法で調製したポリウレタンとモレキュラーシーブの浸漬混合液を約20〜30℃に保ち、数分間真空引きして脱気し、取り込まれたおよび/または溶解した空気を除去する。その後、所望のサイズおよび形状を有し、場合により加熱や艶消仕上げがなされていてもよい、セラミックまたはアルミニウム製の型を、好ましくは約80°〜ほぼ90°の角度で、手袋の型の場合ならば、手のひらを上に向けて指の方から、脱気した溶液に浸漬する。型を混合液中に約5〜30秒間浸漬し、10〜15秒かけて引き上げ、約1〜5分間液切りを行なう。その後、コーティングした型を逆さにし、十分な温度で十分な時間乾燥して溶媒を除去し、冷却する。次いで、外転させて手袋を型から取り外す。コーティングした型を、場合により界面活性剤を含んでいてもよい水に浸漬すると、型からの取り外しが容易になる。
【0017】
本薄肉物品は、モレキュラーシーブを含有するポリウレタンエラストマーからなる少なくとも1つの表面層を有する。モレキュラーシーブを含有する層を塗布する前または後に、別途浸漬工程を行なうことによって他の層を設けることができる。粘着性の低減のためには、モレキュラーシーブを含有する少なくとも1つの層が物品の表面層となる。しかしながら、本発明の利益を損なわない限り、モレキュラーシーブを含有する表面層上に、例えば殺菌剤や殺精子剤などを含む薄層を設けてもよい。複数回の浸漬工程を行なうときは、薄肉物品中に不均一が生じないように、最初の浸漬の前に型を、例えば約85℃にまで、予備加熱してもよい。場合により、最初の浸漬工程を、モレキュラーシーブを実質的に含有しないポリウレタン溶液で行い、2回目の浸漬処理を、ポリウレタン/モレキュラーシーブ混合液で行なうことによって、物品の1つの層のみがモレキュラーシーブを含有するようにすることもできる。艶消仕上げの型から外転により取り外すと、薄肉物品は、装着が容易となるモレキュラーシーブ含有ポリウレタンエラストマーの内側表面層と、モレキュラーシーブを実質的に含有しないが、包装材からの取出しが容易となる艶消仕上げのポリウレタンエラストマーからなる外側の第2の層とを有することができる。所望であれば、そのような後の浸漬工程を、適当な深さに制限することによって、ポリウレタン/モレキュラーシーブ混合液をコーティングされた型の予め選択した部分にのみ塗布することもでき、例えば手袋の指または指と手のひら部分のみを厚くしたり粘着性を低減させたりすることができる。
【0018】
場合により、パーフルオロポリマーまたはシリコーンオイルなどの離型剤を、混合液への浸漬前の型に塗布したり、あるいは、浸漬混合液に直接加えたりすることができるが、本発明の方法では、このような添加剤の必要性は一般に認められなかった。離型剤は剥がれ易いものであるから、このことはクリーンルームや医療用の使用に有利である。
【0019】
実施例では、粒子状添加物は供給先から受け入れたままで使用した。ポリウレタン溶液の粘度は、一般的方法であるASTM D1343−69に従い、モデルDV−8落球粘度計(Model DV−8 Falling Ball Viscometer)、(デュラテック・コーポレーション、ウェインズボロ、バージニア州(Duratech Corp.,Waynesboro,VA)から販売)を用いて、40℃で測定した。
【0020】
フィルム粘着性の定性的評価は、フィルムを2つ折りにし、この2つ折りのフィルムをプレスし、その後静かに折り重ねた部分を引き剥がすことにより行なった。「表面の触感」と粒子の脱落は、フィルム表面に沿って手を軽く滑らせることにより、また、後者の試験では、指を擦り合わせて残留物が存在するかどうか調べることにより行なった。フィルムの光透過性、粒子状物質の視認性および粒子の凝集によるフィルム厚さの変化に関しては、定性的な目視観察により行なった。
【0021】
孔隙率およびバリヤー性の指標として使用される水蒸気透過速度は、ASTM E96−94、「材料の水蒸気透過性の標準試験方法、水法(Standard Test Method for Water Vapor Transmission of Materials,Water Method)」に従って測定した。この試験では、開口面積31.7cmで、1.5cmの深さまで蒸留水が入ったフランジ付きアルミニウム製試験カップに、1.5ミル(0.038mm)厚のフィルム試料を引き伸ばすことなく固定して行なった。水面は試料の19mm下方にあった。この試験セットを秤量し、その後、24℃、相対湿度55%に保たれ、試料の表面を2.8m/秒の速度で空気が流れるようになっている試験用チャンバーに入れた。24時間後、試験セットを再度秤量し、水の減少分および水蒸気透過速度を算出した。試験は6個の試料について行い、平均値を記録した。便宜上、計算した水蒸気透過速度も報告しているが、ここでは、厚さ0.1mmの物品の水蒸気透過速度として換算した値としている。
【0022】
機械的特性は,一般に、ASTM D412−98A(加硫ゴムおよび熱可塑性エラストマーの標準試験方法−張力(Standard Test Method for Vulcanized Rubber and Thermoplastic Elastomers−Tension))をフィルムのサイクル伸長用に修正した方法により測定した。この試験では、2インチ(5.1cm)長さ、0.5インチ(1.3cm)幅で2.8ミル(0.07mm)厚のフィルム試料について、1分あたり20インチ(51cm)の一定引張速度で5回の0〜300%の伸長サイクルを実施した。5回目の負荷を解除したサイクルにおいて、伸び率100%における応力を測定し、psiおよびメガパスカルの単位で報告し、測定応力が実質的にゼロに戻ったときの伸びとして、次式:
伸び率(%)=100(L−L)/L
式中、LおよびLはそれぞれ、5回の伸縮サイクル前後の張力がかからない状態でのフィルム長さである、
により伸び率を計算した。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
数平均分子量が3400のポリエステルグリコール(エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールのモル比60/40の混合物とアジピン酸の反応生成物)と1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトフェニル)メチル]ベンゼン(1.80%NCO、ジイソシアネートと重合性グリコールのモル比1.83:1)を反応させて、イソシアネートを末端とするプレポリマーを生成することによって、ポリウレタンウレアを調製した。このプレポリマーをDMAcに溶解し、その後、エチレンジアミンおよびシクロヘキシルアミンの混合物により連鎖の延長および停止を行い、DMAc中にポリウレタンを17wt%含む溶液を生成した。溶液の粘度は115ポアズであった。全固形物に対して、最終的な混合物中の二酸化チタンが2wt%で、モレキュラーシーブが30wt%になるよう、二酸化チタン(Ti−ピュア(Pure)(登録商標)R−706、本願特許出願人の登録商標)、および、8ミクロンの平均粒径を有し、1wt%未満の粒径が18ミクロンを超えるモレキュラーシーブ(シロシブ(Syrosiv)(登録商標)A−3、ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー(W.R.Grace and Company))をポリウレタン溶液に混合した。得られた混合物の粘度をDMAcを追加することにより調整した。1.5ミル(0.038mm)厚のフィルム(「試料1」)をポリウレタン/モレキュラーシーブ混合物からドクターナイフを用いてポリエステルフィルム上に成形し、80℃〜100℃で20〜60分間乾燥し、ポリエステルフィルムから注意深く剥がして目視と手により評価した。
【0024】
同じポリウレタンと二酸化チタンの混合物に、他の粒子が加えられていないもの(比較試料1)、カオリンクレー粉末(ブイ・ダブリュウ・アール・カンパニー(VWR Company)、平均粒径5ミクロン、粒径範囲0.8〜26ミクロン)を加えたもの(比較試料2)、シリカゲル(イー・エム・サイエンス(EM Science)、平均粒径48ミクロン、粒径範囲7〜160ミクロン、40〜63ミクロンが90%)を加えたもの(比較試料3)、ゾニール(Zonyl)(登録商標)フルオロアディティブ(Fluoroadditive)MP1000低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末(本願特許出願人の登録商標、平均粒径9ミクロン、粒径範囲1〜36ミクロン)を加えたもの(比較試料4)およびコーンスターチ(アルゴ・ベスト・フーズ(ARGO,Best Foods)、平均粒径13ミクロン、粒径範囲1〜35ミクロン)を加えたもの(比較試料5)で、類似のフィルムを成形した。表1に結果を示す。
【0025】
【表1】

【0026】
表1に示すように、全固形分基準で30wt%のモレキュラーシーブを含有する試料1は、粘着性を示さず、目に見える粒子は存在せず、明らかな粒子の脱落もなく、また、表面の触感は滑らかで、厚みの変化は僅かであり、不透明性の増加も僅かであった。対照的に比較試料ではいずれも、そのような特性の1つもしくはそれ以上が、不十分であった。
【0027】
(実施例2)
ASTM E96−94を適用して、試料1および比較試料1について、バリヤー性を評価した。全フィルム重量基準で30wt%のモレキュラーシーブを含有する試料1は、24時間で638g/mの水蒸気透過速度(0.1mm厚のフィルムとしての換算値10g/時/m)を有することがわかった。これは、モレキュラーシーブを含有しない比較試料1では、24時間で514g/m(0.1mm厚のフィルムとしての換算値8g/時/m)の速度であったのに対し、僅かな増加を示したに過ぎない。このような低い水蒸気透過速度は、良好なバリヤー性を示すものである。
【0028】
(実施例3)
モレキュラーシーブの添加が機械的特性に及ぼす影響を明らかにするために、試料1で用いたものと同じポリウレタン/モレキュラーシーブ組成物から、ポリエステルフィルム上に試料2を成形し、乾燥させた。得られた2.8ミル(0.07mm)厚のポリウレタンフィルムを、ポリエステルフィルムとともに適当なサイズに切断し、ポリウレタンフィルムをポリエステルフィルムから注意深く剥がし、ポリウレタンの特性をインストロン(Instron)(登録商標)引張試験機により測定した。比較試料1と同じポリウレタン溶液組成物から、比較試料6を成形し、試験用に同様の処理を施した。応力の結果は、伸び率100%において、試料2では144psi(0.99メガパスカル)、比較試料6では291psi(2.00メガパスカル)であり、通常の装着時の伸びでは応力が有利に減少していることを示している。試料2は、また、有利なことに、伸び率が比較試料6(27%)に比べて低い値(22%)を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの表面層を含む薄肉物品であって、前記表面層が、
ポリウレタンエラストマーと、
前記層の重量を基準にして約20〜40重量パーセントのモレキュラーシーブであって、平均粒径が約1〜15ミクロンであり、モレキュラーシーブを基準にして1重量パーセント未満の粒径が約40ミクロンを超えるモレキュラーシーブと
からなることを特徴とする薄肉物品。
【請求項2】
水蒸気透過速度が約50g/hr/m未満であり、伸び率100%における応力が約1.4メガパスカル以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄肉物品。
【請求項3】
前記ポリウレタンは、ポリエステルグリコールと、ジイソシアネートと、ジアミン連鎖延長剤との反応生成物を含むことを特徴とする請求項1に記載の薄肉物品。
【請求項4】
前記モレキュラーシーブは物品の重量を基準にして約25〜35重量パーセント存在することを特徴とする請求項2に記載の薄肉物品。
【請求項5】
計算した水蒸気透過速度が約20g/hr/m未満であることを特徴とする請求項1に記載の薄肉物品。
【請求項6】
モレキュラーシーブを実質的に含まないポリウレタンエラストマーからなる第2の層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の薄肉物品。
【請求項7】
モレキュラーシーブを含む前記層が前記物品の内側表面層であり、前記第2の層が前記物品の外側の層であることを特徴とする請求項6に記載の薄肉物品。
【請求項8】
伸び率(percent set)が、約25%未満であることを特徴とする請求項3に記載の薄肉物品。


【公表番号】特表2006−504811(P2006−504811A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−510859(P2004−510859)
【出願日】平成15年6月3日(2003.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/017258
【国際公開番号】WO2003/103741
【国際公開日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【出願人】(304043707)インヴィスタ テクノロジーズ エス.アー.アール.エル (8)
【Fターム(参考)】