説明

薄膜の製造方法及びカラーフィルタ

【課題】 バンクを形成することなく所定の複数領域にインクジェット方式によりカラーフィルタ等の画素領域を形成することができる薄膜の製造方法を提供する。
【解決手段】 パターンを形成する多数の画素領域に、紫外線硬化樹脂を含有するカラーフィルタインク25をインクジェット式記録ヘッド30により吐出する工程と、前記カラーフィルタインク25に紫外線26を照射して前記各画素領域に対応するカラーフィルタインク25の縁部を仮硬化させてピニングPする工程と、前記カラーフィルタインク25が平坦化する際に前記カラーフィルタインク25に再度紫外線26を照射して本硬化させる工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜の製造方法及びカラーフィルタに関し、特にインクジェット方式で液晶等のカラーフィルタを製造する場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に用いられるカラーフィルタを製造する方法として、従来から印刷法、電着法、染色法または顔料分散法等が知られている。ただ、印刷法は、工程が簡単であるものの、平坦性に劣るという問題があり、電着法はモザイクパターンのようなカラー配列を形成することが困難であるという問題があり、染色法は耐候性、耐光性、耐熱性および吸湿性に劣るという問題があり、さらに顔料分散法は使用される感光性樹脂の多くが除去、廃棄されることになり、材料の利用効率が悪いという問題がある。
【0003】
このように、従来のカラーフィルタの製造方法はそれぞれ固有の問題を有している。そこで、これらの問題を解決するため、近年インクジェット方式によるカラーフィルタの製造方法が提案されている。
【0004】
インクジェット方式とは、いわゆるインクジェットプリンタでよく知られているカラー印刷技術であり、インクジェットヘッドから多数のカラーフィルタインクの液滴を透明基板上に吐出させて定着させ、カラーフィルタの着色層である画素領域を形成するものである。インクジェット方式によれば、微細な領域にカラーフィルタインクの液滴を正確に吐出できるので、フォトリソグラフィーを行うことなく、所望の画素領域に直接カラーフィルタインクを定着させることができる。したがって、材料の無駄も発生せず、製造コストの低減も図ることができ、非常に合理的な所望のカラーフィルタを製造することができる。
【0005】
この種のインクジェット方式によるカラーフィルタ形成方法の一種として透明基板上に各種ポリマー等からなるカラーフィルタインク受容層であるバンクを設け、このバンク内にカラーフィルタインクを吐出するとともに固化させる製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2001−100022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、カラーフィルタを製造する場合にインクジェット方式を用いると、多くの利点が得られるが、カラーフィルタインク受容層としてのバンクを別途形成する必要がある。バンクは通常リソグラフィー法により形成する。したがって、リソグラフィー法がカラーフィルタの画素領域を形成する方法としてはコスト的に問題がある点に鑑みて代替案として提案されたインクジェット法の特長を減殺することになる。画素領域はインクジェット法で形成してもバンクはリソグラフィー法により形成する必要があるからである。
【0008】
一方、バンクを形成することなく直接透明基板上にインクジェット方式でカラーフィルタインクを吐出させた場合には周縁部でカラーフィルタインクが広がってしまい、所定の領域内に高精度に画素領域を形成することが困難になる。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、バンクを形成することなく所定の複数領域にインクジェット方式によりカラーフィルタ等の画素領域を形成することができる薄膜の製造方法及びカラーフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の態様は、所定のパターンを形成する多数の領域に、紫外線硬化樹脂を含有するインクを含む溶液をインクジェットプリンタにより吐出する工程と、前記溶液に紫外線を照射して前記各領域に対応する溶液の縁部を仮硬化させてピニングする工程と、前記溶液が平坦化する際に前記溶液に再度紫外線を照射して本硬化させる工程とを有することを特徴とする薄膜の製造方法にある。
【0011】
本態様によれば、溶液を仮硬化させてその縁部をピニング(溶液を仮硬化させて縁部の位置を固定することを言う;以下同じ)させた状態で溶液の溶媒を蒸発させて最終的な薄膜を形成することができるので、バンクがなくても途中で型崩れやにじみ等を生起することなく所定の精度で所定の領域に薄膜を作成することができる。
【0012】
また、溶媒の蒸発は溶液の縁部がピニングされた状態で行われ、最終的に紫外線照射により本硬化させている。この結果、溶媒の蒸発による溶液の平坦化の過程で均一なレベルが維持される。したがって、この状態で本硬化させた溶液は良好なレベリング性を有するものとなり、薄膜の膜厚の均一性の向上、ひいてはこれを適用する液晶装置等の品質の向上に資することができる。
【0013】
ここで、前記溶液をピニングした後、前記溶液を加熱し、その後紫外線の再照射を行っても良い。この場合には、加熱によりその分溶媒の蒸発を促進させることができるので、製造時間の短縮に寄与させることができる。また、前記溶液をピニングした後、前記溶液を加熱して本硬化を行っても良い。この場合も同様の効果を得る。なお、この場合の溶液は構成上、紫外線硬化と熱硬化との機能を兼備するものとする。さらにインクジェットプリンタによる前記溶液の吐出は前記各領域につき複数回行うとともに、前記溶液の吐出完了毎に前記溶液の縁部を仮硬化させてピニングする工程を有するようにしても良い。この場合には、任意の膜厚の薄膜を良好に製造することができる。
【0014】
さらに、前記薄膜はカラーフィルタの画素領域に形成するものであっても良い。このことにより、カラーフィルタの画素領域をインクジェット方式で、且つバンクを必要とすることなく形成することができる。
【0015】
本発明の他の態様は上記薄膜の製造方法により製造したことを特徴とするカラーフィルタにある。かかるカラーフィルタはバンクを必要とせず安価に製造することができる。しかも画素領域の縁部の形状の崩れもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は本形態に係るカラーフィルタの製造方法により製造したカラーフィルタを有する装置の一例である液晶表示装置を示す概略構成図である。同図に示す液晶表示装置1は、画素電極2及びその画素電極2のスイッチング素子である薄膜トランジスタ3(Thin Film Tranistor; 以下、TFTと略記する)がマトリクス状に配置されたTFTアレイ基板4と、R,G,Bの各画素領域に対応する画素領域5が所望の色配置パターンに配置されたカラーフィルタ6及び対向電極7を備えた対向基板8とを有している。
【0017】
ここで、TFTアレイ基板4上の画素電極2で規定される各画素領域9とカラーフィルタ6の各画素領域5とでは、横寸法、縦寸法、隣接する領域間の寸法の全てが同一に設定されており、両領域5,9が対応するように位置合わせされている。
【0018】
対向基板8には、TFTアレイ基板4側と同様の透明基板22の上面にカラーフィルタ6が形成されている。カラーフィルタ6は、R,G,Bの各画素領域5を格子状に区画するとともに各画素領域5間を遮光する遮光層、いわゆるブラックマトリクス23が透明基板22上に形成されており、各画素領域5内にR,G,Bの各色のカラーフィルタインクが定着されることにより各画素が形成される。
【0019】
また、カラーフィルタ6上の全面にはITO等の透明導電膜からなる対向電極7が形成されている。さらに、対向基板8側にもポリイミド等からなる配向膜(図示略)が形成されている。
【0020】
かかる液晶表示装置のカラーフィルタ6の製造方法を図2に基づき詳細に説明する。
【0021】
先ず、図2(a)に示すように、ブラックマトリクス23を形成したガラス製の透明基板22上の画素領域に、紫外線硬化樹脂を含有する液体の一種であるカラーフィルタインク25をインクジェット式記録ヘッド30により吐出する。このカラーフィルタインク25には、硬化開始剤とモノマーとからなる紫外線硬化樹脂を微量含有させてある。ここで、画素領域に吐出された前記カラーフィルタインク25に紫外線26を照射し、その縁部を仮硬化させてピニング(このピニング部分に図中で「P」の符号を付す。;以下同じ。)する。このピニングは紫外線26を照射した状態でカラーフィルタインク25を吐出させるタイミングで行っても良いし、また吐出の直後でも良い。要は、カラーフィルタインク25が濡れて移動し画素領域の縁部でそれを超える領域へのカラーフィルタインク25の流出を阻止することができれば良い。
【0022】
さらに、ピニングは、カラーフィルタインク25の縁部に選択的に紫外線を照射することにより行うこともできる。この場合には必要な部分が選択的にピニングされるので、仮硬化も限定的になされる。
【0023】
図2(b)に示すように、画素領域の形成においてカラーフィルタインク25を複数層に塗り分ける場合には、図2(a)と同様の工程を繰り返す。すなわち、下層のカラーフィルタインク25上に上層のカラーフィルタインク25を吐出させて縁部をピニングする。かかる工程を必要回数繰り返すことで所望の膜厚の画素領域を形成する。
【0024】
図2(a)及び図2(b)の工程で使用するインクジェット式プリンタの形式に特別な限定はないが、その一例を図3に基づき説明しておく。同図に示すように、当該インクジェット式記録ヘッド30は、カラーフィルタインクを噴射するノズル開口32に連通する圧力発生室33と、圧力発生室33と図示しないインクカートリッジとを連通させる流路34と、圧力発生室33に対向して設けられた振動板35と、振動板35を介して圧力発生室33に圧力変化を発生させる圧電素子31とを備えている。圧電素子31は、ケース36に、固定板37を介して固定されている。圧電素子31の基端部近傍には、固定板37とは反対側の面に、各圧電素子31を駆動するための駆動信号を供給する配線38が設けられている。この配線38がヘッド制御部(図示せず)に接続されている。
【0025】
かかるインクジェット式記録ヘッド30では、ヘッド制御部から駆動信号が配線38を介してインクジェット式記録ヘッド30に送出され、圧電素子31に駆動信号が印加される。圧電素子31は、駆動信号に応じて、充電・放電を繰り返して伸縮することで振動板35を変形させて、圧力発生室33の容積を変化させる。この圧力発生室33の容積変化により、所定のノズル開口32からカラーフィルタインク滴が吐出される。
【0026】
図2(b)に示す工程でインクジェット式記録ヘッド30から吐出されたカラーフィルタインク25はその縁部でピニングされ、表面張力により中央部が盛り上がった状態となるが、次工程では透明基板22とともに加熱炉(図示せず)に入れて加熱することによりカラーフィルタインク25の溶剤を蒸発させる。ここで、カラーフィルタインク25ではその縁部の位置がピニングにより規制された状態で溶媒の蒸発が進行する。この結果、溶媒の蒸発によるカラーフィルタインク25の平坦化の過程で均一な膜厚レベルが維持される。
【0027】
なお、かかる加熱工程は必ずしも必要ではない。場合によっては自然乾燥により溶剤を蒸発させて平坦化を進行させても良い。
【0028】
最後に、図2(c)に示すように、各画素領域のカラーフィルタインク25が平坦化された状態でカラーフィルタインク25に再度紫外線を照射して本硬化させる。
【0029】
かくして最終的に本硬化させたカラーフィルタインクは良好なレベリング性を有するものとなり、カラーフィルタの性能の向上、ひいてはこれを適用する液晶装置等の品質の向上に資することができる。
【0030】
なお、カラーフィルタインク等の溶液が紫外線硬化と熱硬化との性質を兼備するものであれば前記溶液をピニングした後、溶液を加熱して本硬化を行うようにしても良い。この場合にも紫外線硬化により本硬化を行った場合と同様の効果を得る。また、溶液としては、カラーフィルタインク25以外に、有機EL発光層を含むインク、銀等の導電性の成分を含むインク等も使用することができる。
【0031】
また、上述の実施の形態はカラーフィルタの製造方法として説明したが、これに限るものではない。所定のパターンを形成する多数の領域をインクジェットプリンティングを用いて製造する場合には一般に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】カラーフィルタを有する液晶表示装置を示す概略構成図である。
【図2】実施の形態に係るカラーフィルタの製造方法の各工程を示す説明図である。
【図3】インクジェット式記録ヘッドの一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1 液晶表示装置
5 画素領域
6 カラーフィルタ
22 透明基板
25 カラーフィルタインク
26 紫外線
30 インクジェット式記録ヘッド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパターンを形成する多数の領域に、紫外線硬化樹脂を含有するインクを含む溶液をインクジェットプリンタにより吐出する工程と、
前記溶液に紫外線を照射して前記各領域に対応する溶液の縁部を仮硬化させてピニングする工程と、
前記溶液が平坦化する際に前記溶液に再度紫外線を照射して本硬化させる工程とを有することを特徴とする薄膜の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載する薄膜の製造方法において、
前記溶液をピニングした後、前記溶液を加熱し、その後紫外線の再照射を行うことを特徴とする薄膜の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載する薄膜の製造方法において、
前記溶液をピニングした後、前記溶液を加熱して本硬化を行うことを特徴とする薄膜の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載する薄膜の製造方法において、
インクジェットプリンタによる前記溶液の吐出は前記各領域につき複数回行うとともに、前記溶液の吐出完了毎に前記溶液の縁部を仮硬化させてピニングする工程を有することを特徴とする薄膜の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載する薄膜の製造方法において、
前記薄膜はカラーフィルタの画素領域に形成するものであることを特徴とする薄膜の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載する薄膜の製造方法により製造したことを特徴とするカラーフィルタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−54777(P2010−54777A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219271(P2008−219271)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】