説明

薄膜トランスおよびその製造方法

【目的】占有面積を拡張することなく、エネルギー変換効率を容易に向上でき、さらに低コストの薄膜トランスとその製造方法を提供すること。
【解決手段】シリコン基板1上に形成したシリコン酸化膜2、6、7である絶縁膜内に渦巻き状(平面スパイラル状)の1次コイルを構成する第1コイル導体4、2次コイルを構成する第2コイル導体5が互いに横方向に対向するように形成する。コイル導体4、5の幅を垂直方向にとれるので占有面積を拡張することなく、エネルギー変換効率を容易に向上できる。また、1次コイルと2次コイルを1層の金属膜で同時に形成できるので低コスト化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、渦巻き状の薄膜コイルが互いに対向してなる薄膜トランスとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンなどの半導体基板上に形成される薄膜トランスは、そのコイルが薄膜形成技術をもって形成されるため、小型化が可能なトランスとして知られ、半導体集積デバイスなどを構成する素子のひとつである。ここで、コイルには導電性配線(導体または半導体)が用いられ、コイルの形状は、コイルの長さ(または面積)当たりのインダクタンスを大きく、すなわち、大きなQ値(Q=ωL/R、ω:角周波数、L:相互インダクタンス、R:コイル抵抗)を確保するために、渦巻き状(平面コイル状)に形成される。このようにして形成された薄膜トランスの一例を図5に示す。
図9は、従来の薄膜トランスの構成図であり、同図(a)は斜視図、同図(b)は要部断面図である。同図(a)ではシリコン酸化膜12は省略されている。またコイル導体13、14の厚みは省略して描いている。
薄膜トランスはシリコン基板11上に厚さが0.1〜2μmのシリコン酸化膜12aが形成され、その表面側にアルミや銅などからなる導電性の金属材料がスパッタリング法または真空蒸着法などにより、厚さが1〜5μmの金属膜として形成されている。この後、金属膜は、リソグラフィーで第1コイル導体13の渦巻きパターンを転写し、エッチングの工程を経て、幅が10〜100μm、配線間隔(コイル導体間の距離)が10〜100μmの第1コイル導体13が形成され、この第1コイル導体13を渦巻き状にして1次コイルを形成する。第1コイル導体13のピッチWはコイル導体の幅と配線間隔を合わせたもので第2コイル導体14のピッチも同じである。
【0003】
次に、その表面側に厚さが0.1〜3μmのシリコン酸化膜12bを形成した後に、第1コイル導体13と同様な方法によって第2コイル導体14を厚さ1〜5μmで第1コイル導体13の直上に同一パターンで形成して2次コイルとし、この2次コイルの表面側に厚さが1〜2μmのシリコン酸化膜12cを形成する。このようにして、シリコン酸化膜12に埋め込まれた第1コイル導体13、第2コイル導体14で構成される薄膜トランスが形成される。
次に、第1コイル導体13の両端および第2コイル導体14の両端を電気的に接続が可能とする端子を形成するために、第1、第2コイル導体13、14の上部のシリコン酸化膜12cをリソグラフィーおよびエッチングの工程により除去し、薄膜トランスを形成する。図9の薄膜トランスにおいて、1次、2次コイルのコイル巻数は共に4ターンであり、また、2次コイルを1次コイルに対して上下方向に対向させて同一パターンで形成する。
このような構成の薄膜トランスは、例えば、1次コイルの両端に電流を流し、この電流に変化を与えると、1次コイルの周囲に発生している磁界が変化するため、2次コイルの両端に電位差が生じ、2次コイルに起電力が生じる。ここで、2次コイルに発生する誘導起電力(誘導電流)は、2次コイルの巻数に比例する。
【0004】
また、1次コイルの巻数が多ければその周囲に発生する磁界が強調されるため、大きな起電力を誘導させることができる。
このように、相互インダクタンスの効果により起電力を得る薄膜トランスにおいては、1次、2次コイル相互のコイル巻数が増大すれば、各コイル線による磁界が強調されるため、インダクタンス量が増加し、結合係数としても大きくなるので、1次コイルから2次コイルへのエネルギー変換の効率が向上する。
また、特許文献1によると、平面インダクタなどに代表される磁気素子内の平面コイルを作成する際に、あらかじめ作製すべきコイル導体幅と等しい幅のスペースをとるようなパターンを作製しておき、それに基づいて下地表面にコイル導体を形成し、その後にコイル導体部分の表面全体を覆うように薄い絶縁層を形成し、最後に残りのスペース部分を金属材料で埋めて、コイルを製作することで、隣接するコイル導体間の絶縁膜の厚さを非常に薄くすることができて、高いQ値を有する平面インダクタを製作できることことが開示されている。
また、特許文献2によると、磁性膜上にコイル導体間スペースを構成する絶縁膜を形成する工程と、この絶縁膜をコイル導体間スペースの形状にパターニングする工程と、この絶縁膜のパターンを導体膜が選択的に成長できるように表面改質する工程と、この絶縁膜のパターンの隙間に選択的に導体膜を充填してコイル導体を形成する工程と、全面に絶縁膜を形成する工程と、この絶縁膜上に磁性膜を形成する工程で平面型磁気素子を製造することで、コイル導体間スペースの幅を小さくでき、かつ十分な厚さのコイル導体を有する高性能の平面型磁気素子を非常に簡単なプロセスで製造できる方法が開示されている。
【特許文献1】特開平5−6832号公報
【特許文献2】特開平6−77072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の図9の構造の薄膜トランスにおいては、1次コイルおよび2次コイルの巻数を増大させると薄膜トランス自体の面積が大きくなり、トランスの小型化を図る上で支障となるという問題がある。また、コイル巻数の増大はコイル線の長大化につながり、特に薄膜コイルにおいては、その抵抗値が一般的な導線の抵抗値に比して非常に大きいため、コイル線の長大化による抵抗値の増大がエネルギー損失の増大、すなわち、エネルギー変換効率の目安となるQ値の低下を招来する可能性があるという問題がある。
このように、従来の薄膜トランスにおいては、そのエネルギー変換効率の向上を目的としたコイル巻数の増大とトランスの小型化とがトレードオフの関係にあり、また、コイル巻数の増大がエネルギー変換効率の低下を招く可能性が指摘されている。
さらに、1次コイルと2次コイルを形成するために、2層の金属膜(第1コイル導体13となる金属膜と第2コイル導体14となる金属膜の2層)を形成する工程が必要となり、工程数が多く製造コストが高くなる。
また、前記の特許文献1、2では薄膜インダクタについての開示はあるが、薄膜トランスに関する具体的な記述はされていない。
この発明の目的は、前記の課題を解決して、占有面積を拡張することなく、エネルギー変換効率を容易に向上できて、さらに低コストの薄膜トランスとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために、支持基板と、該支持基板上に形成された第1絶縁膜と、該第1絶縁膜に形成された1条の溝と、該溝の一方の側壁に形成された第1コイル導体と、該溝の他方の側壁に形成された第2コイル導体と、前記第1コイル導体と前記第2コイル導体に挟まれて形成された第2絶縁膜とを備える構成とする。
また、支持基板と、該支持基板上に形成された第1絶縁膜と、該第1絶縁膜に形成された平行に配置される2条の溝と、該溝の一方に形成された第1コイル導体と、該溝の他方に形成された第2コイル導体と、前記第1コイル導体と前記第2コイル導体に挟まれて形成された第2絶縁膜とを備える構成とする。
また、前記支持基板が半導体基板もしくは絶縁基板であるとよい。
また、絶縁性磁性基板と、該絶縁磁性基板に形成された1条の溝と、該溝の一方の側壁に形成された第1コイル導体と、該溝の他方の側壁に形成された第2コイル導体と、前記第1コいる導体と前記第2コイル導体に挟まれて形成された絶縁膜とを備える構成とする。
また、絶縁性磁性基板と、該絶縁性磁性基板に形成された平行に配置される2条の溝と、該溝の一方に形成された第1コイル導体と、該溝の他方に形成された第2コイル導体と、前記第1コイル導体と前記第2コイル導体に挟まれて形成された第2絶縁膜とを備える構成とする。
【0007】
また、前記溝の平面形状が渦巻き状であるとよい
また、前記絶縁膜が、シリコン酸化膜、ポリイミド膜もしくはレジスト膜のいずれかであるとよい。
また、前記第1コイル導体および前記第2コイル導体のそれぞれの端部にパッド電極が接続するとよい。
また、支持基板上に第1絶縁膜を形成し、該第1絶縁膜に1条の溝を形成する工程と、前記溝内を含む前記第1絶縁膜上に金属膜を形成する工程と、該金属膜を異方性エッチングで除去し、前記溝内の前記金属膜を残す工程と、該金属膜を第1コイル導体と第2コイル導体に分離する工程と、前記第1コイル導体と第2コイル導体の隙間を第2絶縁膜で充填する工程とを備える製造方法とする。
また、支持基板上に第1絶縁膜を形成し、該第1絶縁膜に平行に配置される2条の溝を形成する工程と、前記2条の溝内を含む前記第1絶縁膜上に金属膜を形成する工程と、該金属膜を異方性エッチングで除去し、前記2条の溝内の前記金属膜を残第1のコイル導体と第2のコイル導体を形成する工程とを備える製造方法とする。
また、絶縁性磁性基板上に2条の溝を形成する工程と、前記溝内を含む前記絶縁性磁性基板上に金属膜を形成する工程と、該金属膜を異方性エッチングで除去し、前記溝内の前記金属膜を残す工程と、該金属膜を第1コイル導体と第2コイル導体に分離する工程とを備える製造方法とする。
【0008】
また、絶縁性磁性基板上に平行に配置される2条の溝を形成する工程と、前記2条の溝内を含む前記絶縁性磁性基板上に金属膜を形成する工程と、該金属膜を異方性エッチングで除去し、前記2条の溝内の前記金属膜を残して第1のコイル導体と第2のコイル導体を形成する工程とを備える製造方法とする。
また、前記支持基板が半導体基板であり、前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜がシリコン酸化膜であるとよい。
また、前記第1、第2コイル導体を形成した後、表面を第3絶縁膜で被覆し、該第3絶縁膜にコンタクトホールを形成し、前記第1コイル導体の端部および第2コイル導体の端部とコンタクトホールを介して接続するパッド電極を形成する工程を備えるとよい。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、渦巻き状の薄膜トランスにおいて、支持基板上の絶縁膜に溝を形成するか絶縁性磁性基板に溝を形成して、その溝内に1次コイルおよび2次コイルを形成することによって、占有面積を増加することなく、エネルギー変換効率の向上ができる。
また、1次コイルと2次コイルを同時に形成できるために、従来に比べると工程数が小さくなり、製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態を以下の実施例で説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、この発明の第1実施例の薄膜トランスの構成図であり、同図(a)は要部平面図、同図(b)は同図(a)のX1−X1線で切断した要部断面図である。同図(a)は、同図(b)のX2−X2線で切断した要部平面図である。
半導体基板であるシリコン基板1上に形成したシリコン酸化膜によりなる絶縁膜2、6これらの番号はシリコン酸化膜にも付す)内に渦巻き状(平面スパイラル状)の1次コイルを構成する第1コイル導体4、2次コイルを構成する第2コイル導体5互いに横方向に対向するように形成されている。これは絶縁膜2に形成した渦巻き状からなる1条の溝3の一方の側壁に第1コイル導体4を形成し、他方の側壁に第2コイル導体5形成することで得られる。第1コイル導体4と第2コイル導体5との間および表面には保護膜であるシリコン酸化膜6を形成し、その上にシリコン窒化膜7が被覆される。第1コイル導体4および第2コイル導体5の幅は2.5μmで厚さは1.0μmである。第1コイル導体4と第2コイル導体5の間隔(縦方向の間隔)は0.5μmで、渦巻きの間隔(横方向の間隔)は0.5μmである。第1コイル導体4、第2コイル導体5は例えば銅で形成する。また、本実施例では、絶縁膜2はシリコン酸化膜であるがポリイミド膜やレジスト膜などであってもよい。本発明品では第1コイル導体4、第2コイル導体5の幅は垂直方向となり、占有面積に影響するのは第1コイル導体4、第2コイル導体5の厚さである。
【0012】
図9に示す従来の薄膜トランスを上記のコイル諸元で製作した場合は、従来品では、コイル導体のピッチWは、コイル導体の幅+コイル導体同士の間隔(渦巻き間隔)=2.5μm+0.5μm=3.0μmである。
一方、本発明品の場合は、第1コイル導体4(又は第2コイル導体5)のピッチTは、第1コイル導体4の厚さ(1μm)+第2コイル導体5の厚さ(1μm)+第1コイル導体4と第2コイル導体5の間隔(0.5μm)+渦巻き間隔(0.5μm)=1μm+1μm+0.5μm+0.5μm=3.0μmとなり従来品と占有面積が同じになる。従って、本発明の薄膜トレンスの占有面積が、従来の薄膜トランスより占有面積が小さくなるのは、コイル導体の幅が3.0μmを超えた場合である。
例えば、エネルギー変換効率を大幅に高めるために、従来の薄膜トランスのコイル導体の幅を10μm、厚みを1μmとし、コイル導体同士の間隔(渦巻き間隔)を0.5μmとした場合は、コイル導体のピッチWは10.5μmとなる。一方、本発明品のピッチTは、コイル導体の幅に依存せず、前記したように3.0μmで形成できるため、従来品より占有面積を1/3.5にできる。
また、従来品と同じ占有面積とした場合、巻数を従来品より3.5倍に増やすことができる。つまり、占有面積を大幅に低減できたり、エネルギー変換効率を大幅に高めることができる。
【0013】
また、絶縁膜2の膜厚を厚くして溝3を深くすることで第1コイル導体4および第2コイル導体5の幅を広くして、エネルギー変換効率を容易に高めることができる。但し、そのときの絶縁膜2としてはシリコン酸化膜より膜厚を大きくできるポリイミド膜やレジスト膜などを用いるとよい。
また、前記シリコン基板1は支持基板の役割をしているので、絶縁膜2にポリイミド膜やレジスト膜を用いる場合などは、シリコン基板以外に、例えば、フェライトなどの絶縁性磁性基板やプラスチックスなどの絶縁基板を用いても構わない。絶縁性磁性基板を用いると磁束密度が高まりエネルギー変換効率をシリコン基板などより高めることができる。
しかし、導電性基板は磁界による渦電流の発生がありエネルギー変換効率の悪化を招くので好ましくない。
図2は、図1の薄膜トランスの製造方法を示す工程図であり、同図(a)〜同図(c)は工程順に示した要部製造工程断面図である。
シリコン基板1表面側にCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって厚さが3μmのシリコン酸化膜2を形成し、リソグラフィーおよびエッチングによって、幅2.5μm、間隔0.5μm、深さ2.5μmの渦巻き状からなる1条の溝3を形成する。続いて、スパッタリング法によって、厚さが1μmの銅8をシリコン酸化膜2上に形成する。尚、銅8の代わりに電気抵抗の小さな金属膜を形成しても構わない(同図(a))。
【0014】
次に、異方性のドライエッチングによって、銅8をエッチングして、溝3内の側壁の銅を残し底部の銅と溝以外の箇所の銅を除去し、1次コイルと2次コイルを構成する第1コイル導体4と第2コイル導体5を形成する。この時点では第1コイル導体4と第2コイル導体5は溝3内で繋がっている。続いて、溝3端部の側壁の銅8を除去するため、全面にレジストを被覆し、パターニングで溝3の端部のみレジストを開口して、ウェットエッチングで溝3の端部側壁の銅8を除去する。このようにして溝3の銅8は第1コイル導体4と第2コイル導体5に分離される(同図(b))。
次に、CVD法によって、厚さが、例えば、0.25μmのシリコン酸化膜6を被覆し、リソグラフィーおよびエッチングによって図示しない箇所の1次コイル、2次コイルのコンタクトホールを形成し、スパッタリング法によって、銅上にチタンを形成しその上に、例えば、厚さ1μmのアルミニウム膜を形成する。続いて、リソグラフィーおよびエッチングによって、1次コイルおよび2次コイルの図示しないパッド電極を形成し、CVD法によって、例えば、厚さが1μmのシリコン窒化膜7を形成する。このシリコン窒化膜7は薄膜トランスの表面保護膜となる。続いて、リソグラフィーおよびエッチングによって、図示しないパッド電極部を開口する(同図(c))。
【0015】
このようにして形成された渦巻き状の1次コイル、2次コイルである第1コイル導体4、第2コイル導体5は溝3内で互いに横方向に対向するように形成されるので、1次コイルと2次コイルの重なりが大きくなり伝達効率が向上し、相互インダクタンスが高くなり、Q値が向上して前記したようにエネルギー変換効率を高めることができる。
この構造においては、第1コイル導体4、第2コイル導体5の基板垂直方向(図面の上下方向)の長さ(第1コイル導体4、第2コイル導体5の幅に相当する)を長くすることで、1次コイルと2次コイルの重なりが大きくなり、面積を増加することなくQ値を向上することが可能となる。また、コイル導体の基板垂直方向の長さを長くすることで、1次コイルおよび2次コイルの断面積が増加し、コイル抵抗が減少する効果もある。
また、1次コイルと2次コイルを1層の金属膜(銅8)で同時に形成できるために、従来に比べると工程数が小さくなり、製造コストを低減することができる。
【実施例2】
【0016】
図3は、この発明の第2実施例の薄膜トランスの構成図であり、同図(a)は要部平面図、同図(b)は同図(a)のX1−X1線で切断した要部断面図である。同図(a)は、同図(b)のX2−X2線で切断した要部平面図である。
図1との違いは、図1の支持基板に相当する部分に絶縁性磁性基板1aを用い、この絶縁性磁性基板1aに溝3を形成した点である。この場合も図1と同様に占有面積を大幅に低減できたり、エネルギー変換効率を大幅に高める効果がある。また、図1に比べて、絶縁性磁性基板1aを用いているため、磁束密度が高まり、エネルギー変換効率を図1の場合より高めることができる。
図4は、図3の薄膜トランスの製造方法を示す工程図であり、同図(a)〜同図(c)は工程順に示した要部製造工程断面図である。
絶縁性磁性基板1a表面側に、リソグラフィーおよびエッチングによって、例えば、幅2.5μm、間隔0.5μm、深さ2.5μmの渦巻き状からなる1条の溝3を形成する。続いて、スパッタリング法によって、厚さが1μmの銅を形成する(同図(a))。
次に、異方性のドライエッチングによって、銅8をエッチングして、溝3内の側壁の銅を残し底部の銅と溝以外の箇所の銅を除去し、1次コイルと2次コイルを構成する第1コイル導体4と第2コイル導体5を形成する。この時点では第1コいる導体4と第2コイル導体5は溝3内で繋がっている。続いて、溝3端部の側壁の銅8を除去するため、全面にレジストを被覆し、パターニングで溝3の端部のみレジストを開口して、ウェットエッチングで溝3の端部側壁の銅8を除去する。このようにして溝3の銅8は第1コイル導体4と第2コイル導体5に分離される(同図(b))。
【0017】
次に、CVD法によって、例えば、厚さが0.25μmのシリコン酸化膜5で表面を被覆し、リソグラフィーおよびエッチングによって図示しない箇所の1次コイル、2次コイルのコンタクトホールを形成し、スパッタリング法によって、銅上にチタンを形成しその上に、例えば、厚さ1μmのアルミニウム膜を形成する。続いて、リソグラフィーおよびエッチングによって、1次コイルおよび2次コイルの図示しないパッド電極を形成し、CVD法によって、例えば、厚さが1μmのシリコン窒化膜7を形成する。このシリコン窒化膜7は薄膜トランスの表面保護膜となる。続いて、リソグラフィーおよびエッチングによって、図示しないパッド電極部を開口する(同図(c))。
この構造によって、コイル導体4,5間距離が近くなり、また絶縁性磁性基板1aを用いることで磁束密度が高められエネルギー変換効率を高めることができる。
また、この製造方法によって、従来、アルミニウムや銅などの金属膜を上下に2回成膜していたものを、溝内に1回の成膜で1次コイルと2次コイルを同時に形成できるようになり、製造工数を削減できる。
また、この構造においては、第1コイル導体4、第2コイル導体5の基板垂直方向(図面の上下方向)の長さ(第1コイル導体4、第2コイル導体5の幅に相当する)を長くすることで、1次コイルと2次コイルの重なりが大きくなり、面積を増加することなくQ値を向上することが可能となる。また、コイル導体の基板垂直方向の長さを長くすることで、1次コイルおよび2次コイルの断面積が増加し、コイル抵抗が減少する効果もある。
【0018】
また、1次コイルと2次コイルを1層の金属膜(銅8)で同時に形成できるために、従来に比べると工程数が小さくなり、製造コストを低減することができる。
【実施例3】
【0019】
図5は、この発明の第3実施例の薄膜トランスの構成図であり、同図(a)は要部平面図、同図(b)は同図(a)のX1−X1線で切断した要部断面図である。同図(a)は、同図(b)のX2−X2線で切断した要部平面図である。
図1との違いは、絶縁膜2に2条の線が平行して走る渦巻き状の溝を形成し、一方の溝に第1コイル導体を形成し、他方の溝に第2コイル導体を形成して、2本のコイル導体間を後から絶縁膜を充填して分離する必要をなくした点である。後から絶縁膜を充填する必要がなく溝を形成する絶縁膜で第1コイル導体と第2コイル導体が分離されるので気泡の導入などによる信頼性の低下がない。また絶縁膜を充填する工程が簡略化される。
図6は、図5の薄膜トランスの製造方法を示す工程図であり、同図(a)〜同図(c)は工程順に示した要部製造工程断面図である。
シリコン基板1表面側にCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、例えば、厚さが3μmのシリコン酸化膜2を形成し、リソグラフィーおよびエッチングによって、例えば、幅1μm、間隔0.5μm、深さ2.5μmの2条の平行して走る渦巻き状の溝3を間隔0.5μmで形成する。続いて、スパッタリング法によって、例えば、厚さが1μmの銅8をシリコン酸化膜3上に形成する(同図(a))。
【0020】
次に、異方性のドライエッチングによって、銅8をエッチングして、溝3内の側壁の銅を残し底部の銅と溝以外の箇所の銅を除去し、1次コイルと2次コイルを構成する第1コイル導体4と第2コイル導体5を形成する(同図(b))。
次に、CVD法によって、例えば、厚さが0.25μmのシリコン酸化膜5で表面を被覆し、リソグラフィーおよびエッチングによって図示しない箇所の1次コイル、2次コイルのコンタクトホールを形成し、スパッタリング法によって、銅上にチタンを形成しその上に、例えば、厚さ1μmのアルミニウム膜を形成する。続いて、リソグラフィーおよびエッチングによって、1次コイルおよび2次コイルの図示しないパッド電極を形成し、CVD法によって、例えば、厚さが1μmのシリコン窒化膜7を形成する。このシリコン窒化膜7は薄膜トランスの表面保護膜となる。続いて、リソグラフィーおよびエッチングによって、図示しないパッド電極部を開口する(同図(c))。
第1コイル導体4と第2コイル導体5の間を絶縁膜6で充填する必要がなく工程が簡略化される。
また、1次コイルと2次コイルを1層の金属膜(銅8)で同時に形成できるために、従来に比べると工程数が小さくなり、製造コストを低減することができる。
【実施例4】
【0021】
図7は、この発明の第4実施例の薄膜トランスの構成図であり、同図(a)は要部平面図、同図(b)は同図(a)のX1−X1線で切断した要部断面図である。同図(a)は、同図(b)のX2−X2線で切断した要部平面図である。
図3との違いは、絶縁性磁性基板1aに2条の線が平行して走る渦巻き状の溝を形成し、一方の溝に第1コイル導体を形成し、他方の溝に第2コイル導体を形成して、2本のコイル導体4,5間を後から絶縁膜6を充填して分離する必要をなくした点である。後から絶縁膜6を充填する必要がなく溝3を形成する絶縁膜2で第1コイル導体4と第2コイル導体5が分離されるので気泡の導入などによる信頼性の低下がない。また絶縁膜6を充填する工程が簡略化される。
図8は、図7の薄膜トランスの製造方法を示す工程図であり、同図(a)〜同図(c)は工程順に示した要部製造工程断面図である。
絶縁性磁性基板1a表面側に、リソグラフィーおよびエッチングによって、例えば、幅1μm、間隔0.5μm、深さ2.5μmの2条の平行して走る渦巻き状の溝3を0.5μmの間隔で形成する。続いて、スパッタリング法によって、例えば、厚さが1μmの銅を形成する(同図(a))。
【0022】
次に、異方性のドライエッチングによって、銅8をエッチングして、溝3内の側壁の銅を残し底部の銅と溝以外の箇所の銅を除去し、1次コイルと2次コイルを構成する第1コイル導体4と第2コイル導体5を形成する(同図(b))。
次に、CVD法によって、例えば、厚さが0.25μmのシリコン酸化膜5で表面を被覆し、リソグラフィーおよびエッチングによって図示しない箇所の1次コイル、2次コイルのコンタクトホールを形成し、スパッタリング法によって、銅上にチタンを形成しその上に、例えば、厚さ1μmのアルミニウム膜を形成する。続いて、リソグラフィーおよびエッチングによって、1次コイルおよび2次コイルの図示しないパッド電極を形成し、CVD法によって、例えば、厚さが1μmのシリコン窒化膜7を形成する。このシリコン窒化膜7は薄膜トランスの表面保護膜となる。続いて、リソグラフィーおよびエッチングによって、図示しないパッド電極部を開口する(同図(c))。
第1コイル導体4と第2コイル導体5の間を絶縁膜6で充填する必要がなく工程が簡略化される。
また、1次コイルと2次コイルを1層の金属膜(銅8)で同時に形成できるために、従来に比べると工程数が小さくなり、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、この発明の第1実施例の薄膜トランスの構成図であり、(a)は要部平面図、(b)は(a)のX1−X1線で切断した要部断面図
【図2】図1の薄膜トランスの製造方法を示す工程図であり、(a)〜(c)は工程順に示した要部製造工程断面図
【図3】この発明の第2実施例の薄膜トランスの構成図であり、(a)は要部平面図、(b)は(a)のX1−X1線で切断した要部断面図
【図4】図3の薄膜トランスの製造方法を示す工程図であり、(a)〜(c)は工程順に示した要部製造工程断面図
【図5】この発明の第5実施例の薄膜トランスの構成図であり、(a)は要部平面図、(b)は(a)のX1−X1線で切断した要部断面図
【図6】図5の薄膜トランスの製造方法を示す工程図であり、(a)〜(c)は工程順に示した要部製造工程断面図
【図7】この発明の第2実施例の薄膜トランスの構成図であり、(a)は要部平面図、(b)は(a)のX1−X1線で切断した要部断面図
【図8】図7の薄膜トランスの製造方法を示す工程図であり、(a)〜(c)は工程順に示した要部製造工程断面図
【図9】従来の薄膜トランスの構成図であり、(a)は斜視図、(b)は要部断面図
【符号の説明】
【0024】
1 シリコン基板
1a 絶縁性磁性基板
2、6 絶縁膜(シリコン酸化膜にも同一番号を付す)
3 溝
4 第1コイル導体
5 第2コイル導体
7 シリコン窒化膜
T ピッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、該支持基板上に形成された第1絶縁膜と、該第1絶縁膜に形成された1条の溝と、該溝の一方の側壁に形成された第1コイル導体と、該溝の他方の側壁に形成された第2コイル導体と、前記第1コイル導体と前記第2コイル導体に挟まれて形成された第2絶縁膜と、を備えることを特徴とする薄膜トランス。
【請求項2】
支持基板と、該支持基板上に形成された第1絶縁膜と、該第1絶縁膜に形成された平行に配置される2条の溝と、該溝の一方に形成された第1コイル導体と、該溝の他方に形成された第2コイル導体と、前記第1コイル導体と前記第2コイル導体に挟まれて形成された第2絶縁膜と、を備えることを特徴とする薄膜トランス。
【請求項3】
前記支持基板が半導体基板もしくは絶縁基板であることを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜トランス。
【請求項4】
絶縁性磁性基板と、該絶縁磁性基板に形成された1条の溝と、該溝の一方の側壁に形成された第1コイル導体と、該溝の他方の側壁に形成された第2コイル導体と、前記第1コいる導体と前記第2コイル導体に挟まれて形成された絶縁膜と、を備えることを特徴とする薄膜トランス。
【請求項5】
絶縁性磁性基板と、該絶縁性磁性基板に形成された平行に配置される2条の溝と、該溝の一方に形成された第1コイル導体と、該溝の他方に形成された第2コイル導体と、前記第1コイル導体と前記第2コイル導体に挟まれて形成された第2絶縁膜と、を備えることを特徴とする薄膜トランス。
【請求項6】
前記溝の平面形状が、渦巻き状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の薄膜トランス。
【請求項7】
前記絶縁膜が、シリコン酸化膜、ポリイミド膜もしくはレジスト膜のいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の薄膜トランス。
【請求項8】
前記第1コイル導体および前記第2コイル導体のそれぞれの端部にパッド電極が接続することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の薄膜トランス。
【請求項9】
支持基板上に第1絶縁膜を形成し、該第1絶縁膜に1条の溝を形成する工程と、
前記溝内を含む前記第1絶縁膜上に金属膜を形成する工程と、
該金属膜を異方性エッチングで除去し、前記溝内の前記金属膜を残す工程と、
該金属膜を第1コイル導体と第2コイル導体に分離する工程と、
を備えることを特徴とする薄膜トランスの製造方法。
【請求項10】
支持基板上に第1絶縁膜を形成し、該第1絶縁膜に平行に配置される2条の溝を形成する工程と、
前記2本の溝内を含む前記第1絶縁膜上に金属膜を形成する工程と、
該金属膜を異方性エッチングで除去し、前記2条の溝内の前記金属膜を残して第1のコイル導体と第2のコイル導体を形成する工程と、
を備えることを特徴とする薄膜トランスの製造方法。
【請求項11】
絶縁性磁性基板上に1条の溝を形成する工程と、
前記溝内を含む前記絶縁性磁性基板上に金属膜を形成する工程と、
該金属膜を異方性エッチングで除去し、前記溝内の前記金属膜を残す工程と、
該金属膜を第1コイル導体と第2コイル導体に分離する工程と、
を備えることを特徴とする薄膜トランスの製造方法。
【請求項12】
絶縁性磁性基板上に平行に配置される2条の溝を形成する工程と、
前記2本の溝内を含む前記絶縁性磁性基板上に金属膜を形成する工程と、
該金属膜を異方性エッチングで除去し、前記2条の溝内の前記金属膜を残して第1のコイル導体と第2のコイル導体を形成する工程と、
を備えることを特徴とする薄膜トランスの製造方法。
【請求項13】
前記支持基板が半導体基板であり、前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜がシリコン酸化膜であることを特徴とする請求項9または10に記載の薄膜トランスの製造方法。
【請求項14】
前記第1、第2コイル導体を形成した後、表面を第3絶縁膜で被覆し、該第3絶縁膜にコンタクトホールを形成し、前記第1コイル導体の端部および第2コイル導体の端部とコンタクトホールを介して接続するパッド電極を形成する工程を備えることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項に記載の薄膜トランスの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−111036(P2009−111036A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279762(P2007−279762)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】