説明

薄膜創傷被覆体、薄膜創傷被覆体を使用する吸引利用創傷治療システム、薄膜創傷被覆体の使用方法、および薄膜創傷被覆体の製造方法

複合構造、複合構造を含む吸引利用創傷治療システム、およびその製造方法を開示する。複合構造は、被覆体と、補強材と、剥離可能ライナとを含む。被覆体は、上面と、下面と、主部と、一対の辺縁部と、下面上の接着剤とを有する薄可撓性膜である。補強材は被覆体の主部の上面に剥離可能に固定され、補強材の主部よりも堅い持ち手を含む。持ち手は補強材の下面の一部を形成し、持ち手とその下方に配置される被覆体の一部との間に指の入る空間を画定する。ライナは、被覆体の接着剤に剥離可能に固定される少なくとも一つのセクションを含む。補強材と持ち手は、被覆体から一つのユニットとして取外し可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して医療用被覆体、特に、吸引利用創傷治療またはその他の医療用途のため患者に容易に貼付可能な接着ポリマ包帯材または被覆体に関する。
【背景技術】
【0002】
形状適合ポリマ包帯材は、大気環境から隔離される湿潤環境を確立することによって治癒させる、あるいはそれ以外の方法で治癒を促進するための創傷上の保護層としての使用が広く認められている。このような包帯材は通常、患者の身体、たとえば傷に隣接する患者の肌に装着させるため、下面に自己粘着接着剤の付いた透明な極薄ポリマ膜で形成される。このような包帯材は、治癒の速さ、壊死組織の自己溶解の促進、患者の不快感の軽減など、従来の吸収性包帯材を超える様々な利点を有するが、極めて薄く、自己粘着接着剤を有するため、取り扱い及び貼付がやや困難である。さらに、このような薄い接着性被覆体は、自身を支えることができない。よって、取扱いの際、これらの被覆体は皺になり始める。接着剤のため、いったん貼付の前に皺になり始めたら、使用不能になる可能性がある。さらに、接着剤は非常に粘着性が高いため、被覆されていない限り、手袋に容易にくっつきかねない。そのため、多くの接着薄膜包帯材には、接着剤を保護し、取扱いを容易にするために接着剤を覆う剥離可能な保護ライナが設けられている。しかしながら、いったんライナが取り外されれば、接着被膜はまだ皺になって自身にくっつき、そのような望ましくない作用を防ぐその他の手段が設けられていない限り、患者の肌への包帯材の円滑で無菌的な貼付を阻害する。よって、様々な送達システムが特許文献で提案されており、こうした課題に対処するよう市販されている物もいくつかある。
【0003】
たとえば、特許文献1(Dellas)では、包帯材に装着される剥離シートを有する薄膜包帯材が開示されている。ミシン線によって画定される薄膜の中央領域が患者に貼付される。包帯材のミシン目に平行だが、ミシン目の外側に間隔をあけて剥離シートに切り込み線が設けられているため、剥離シートを取り外し、薄膜の接着部分を患者に貼付して、剥離シートと薄膜の両方の外側を取り外すことができる。
【0004】
特許文献2(McCrackenら)では、創傷部位の傷に包帯材を貼付しやすいように、接着剤面が、三つの横方向に配置される部位に形成される剥離紙ライナによって覆われるポリマ薄膜包帯材が開示されている。中央部が取り外されるように構成されており、二つの側部で包帯材を握って所望の位置に置いた後、その側部を取り除いて、包帯材を創傷に固定させる。
【0005】
特許文献3(Gilman)では、隣接する同一平面層の形状の創傷包帯材と送達積層材との複合物が開示されている。中央に配置されるポリウレタン製の創傷包帯材層は、剥離ライナ層と剥離可能に接着接触している。創傷包帯材層の反対側は、エチレンビニルアセテート(EVA)製の送達層に剥離可能に熱積層される非接着面の形態である。一対のテープストリップが対向縁部で包帯材層の上面に固定され、包帯材層のミシン線によって境界を付けられている。使用の際、剥離ライナ層は、剥がすことによって包帯材層の接着面から分離させられる。その後、複合物の残りの粘着性包帯材層と送達層が創傷の上に配置され、接触接着によって創傷に貼付される。次に、送達層がその隅にて創傷包帯材層の隣接接着面から剥がされる。最後に、ミシン線に沿って破ることによって、テープストリップが包帯材層から取り外される。
【0006】
特許文献4(Gilman)では、創傷包帯材の送達システムが開示されている。包帯材は、前面と、後面と、前面上の接着剤と、第1の縁部と、第2の対向縁部とを有するポリウレタンなどの弾性薄膜である。該システムは、膜上の接着剤に剥離可能に装着され、接着剤を覆う剥離シートと、第1の縁部に隣接する膜の後面に固定されるタブ部材を含む。支持シートは膜の後面に剥離可能に装着され、該支持シートはタブ部材に隣接して配置され、タブ部材に自由に装着される第1の縁部と、膜の第2の縁部に隣接して配置される第2の縁部とを有する。
【0007】
特許文献5(Carion)では、補強された開始切込み付きの合成材料製の透明な接着包帯材が開示されている。包帯材は三層、すなわち、接着面を有するポリウレタン製の可撓性膜製シート、接着面を覆う支持用保護シート、ポリエチレン製の低可撓性材料からなるシートを含む。開始切込みは三層のうちの少なくとも二層を貫通する。開始切込みは、低可撓性膜シート上に配置される補強ストリップによって保護される。
【0008】
特許文献6(Heineckeら)では、下面に感圧性接着剤を被覆させ、上面に低接着被覆を有する形状適合支持体を備えた担体送達包帯材が開示されている。支持体は、接着剤に装着されるライナと支持体の上面に装着される取外し可能な熱封止担体とによって、配送および取扱中に支持される。
【0009】
特許文献7(Heinecke)では、支持体の下面に感圧性接着剤を被覆させ、上面に取外し可能な担体を装着した形状適合支持体を備えた担体送達包帯材が開示されている。支持体と担体との間には接合ブロック材が配置される。切込み線は、担体と接合ブロック材の両方を横断し、タブを形成する。
【0010】
特許文献8では、感圧性接着剤が被覆された、かなり薄い形状適合ポリマ膜が開示されており、該膜は、接着剤を含む膜表面と反対側の膜表面に剥離可能層を有し、剥離可能層は膜の接着剤を覆う剥離ライナよりも強い粘着力で装着される。
【0011】
創傷への貼付用に市販されている各種ポリマ膜材料としては、たとえば、マサチューセッツ州マンスフィールドのTyco Healthcare Group社製のPOLYSKIN II(商標)、ミネソタ州セントポールの3M Company社製のTEGADERM(商標)、ニュージャージー州ニューブランズウィックのJohnson&Johnson Company社製のBIOCLUSIVE(商標)、英国ハルのT.J.Smith&Nephew社製のOP−SITE(商標)、テキサス州サンアントニオのKCI,Inc.社製のVACUUM ASSISTED CLOSURE(登録商標)ドレープなどがある。
【0012】
Tyco Healthcare Group社製のPOLYSKIN II(商標)被覆帯は、特許文献4(Gilman)により構成されており、特許文献3(Gilman)にやや類似している。そのために、この製品は基本的に、下面に接着剤を有するポリウレタン膜形状の包帯材層を含む複合構造を備える。EVAで形成される担体層は、包帯材層の上面に剥離可能に固定される。担体層は、一方の辺縁部に第1の持ち手ストリップと、対向する辺縁部に第2の持ち手ストリップとを含む。共通のライナシートが、包帯材層の下面上の接着剤に剥離可能に固着される。ライナシートは、担体層の第1の持ち手ストリップの辺縁部を超えて延在する。紙テープストリップが、第2の持ち手ストリップの真下の包帯材層の上面に固定される。包帯材層は紙テープストリップに沿ってミシン目を入れられる。使用の際、被覆体は、第1の持ち手ストリップによって担体層を保持しながらライナシートを取り外すことによって貼付される。その後、結合された包帯材と担体層とは担体層の二つの持ち手ストリップによって保持され、包帯材層の下面上の接着剤が傷層と係合するように傷に貼付することができる。次に、第2の持ち手ストリップをその下に配置したテープストリップから分離し、テープストリップを指で適所に持つことによって、担体を取り外すことができる。その後、第2の持ち手ストリップを握り、持ち手ストリップ上で引くことによって、担体シートをポリウレタン層から剥がすことができる。最後に、ミシン線に沿って破ることにより、テープストリップをポリウレタン包帯材層から除去することができる。
【0013】
KCI,Inc.社製のVACUUM ASSISTED CLOSURE(登録商標)ドレープは基本的に、ポリエチレン担体層に固着されるポリウレタン膜の形状の包帯材層を含む複合構造を備え、担体は複合構造の最上層を形成する。ポリウレタン層の下面は、特許文献2(McCrackenら)に開示される構造とやや類似した構造の三つの取外し可能なライナシートによって覆われる接着剤を含む。一対の持ち手ストリップは、ウレタン膜の対向辺縁部に沿って固定される、すなわち、ストリップは、ポリウレタン層の下面の接着剤によってポリウレタン層に接着して固定される。ポリウレタン層には持ち手ストリップに沿ってミシン目が入れられる。使用の際、ライナシートは除去されて、ポリウレタン膜を創傷に固定する。その後、ポリエチレン担体層が取り外される。最後に、ミシン線に沿って破ることによって、持ち手ストリップをポリウレタン層から除去する。
【0014】
上記の特許の装置および市販品は概して意図される目的に適するが、被覆体の貼付中の創傷への妨害、有効性、使い易さ、構造の簡潔性、コスト、および製造し易さなどの一つ以上の観点から、まだ望まれるべきことが多い。
【0015】
本文書で引用および/または特定されるすべての参考文献は、引用により本文書に組み込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第4,485,809号明細書
【特許文献2】米国特許第4,614,183号明細書
【特許文献3】米国特許第4,600,001号明細書
【特許文献4】米国特許第5,018,516号明細書
【特許文献5】米国特許第5,437,622号明細書
【特許文献6】米国特許第6,685,682号明細書
【特許文献7】米国出願公開第2007/0156075号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第0051935号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様によると、被覆体と、補強材と、剥離可能ライナとを備える複合構造が提供される。被覆体は、患者の創傷上に使用されるように構成され、極薄可撓性膜、たとえば、上面と、下面と、主部と、一対の対向辺縁部と、該膜の下面上の接着剤とを有するポリウレタンから成る。補強材は、上面と、下面と、主部と、一対の対向辺縁部と、少なくとも一つの持ち手とを有するEVAシートなどのシートを備える。少なくとも一つの持ち手は補強材の主部よりも更に剛性であり、補強材の辺縁部と隣接する補強材の下面の一部を形成する。補強材は被覆体上に配置され、補強材の主部における補強材の下面は、被覆体の主部における被覆体の上面に剥離可能に固定される。少なくとも一つの持ち手は、補強材を被覆体から隔離するために、持ち手とその下に配置される被覆体の辺縁部との間に使用者が指を挿入可能な指空間を画定する。剥離可能ライナは、接着剤を保護するために接着剤に剥離可能に固定されるとともに接着剤を露出させることが所望される場合に取外し可能な少なくとも一つのセクションを備え、その後、被覆材は接着剤によって創傷を覆うように接着して固定させることができる。補強材と少なくとも一つの持ち手とは、一つのユニットとして被覆体から取り外すことができる。
【0019】
本発明の別の態様によると、被覆体と補強材とを備える複合構造が提供される。被覆体は患者の創傷上で使用されるように構成され、極薄可撓性膜、たとえば、上面と、下面と、少なくとも一つの辺縁部と、主部と、膜の下面上の接着剤とを有するポリウレタンから成る。被覆体の少なくとも一つの辺縁部と被覆体の主部は、互いに略同一の可撓性を有する。補強材は、上面と、下面と、少なくとも一つの辺縁部と、主部と、を有するEVAシートなどのシートを備える。補強材が被覆体上に配置され、補強材の主部における補強材の下面が被覆体の主部における被覆体の上面に剥離可能に固定される。補強材の少なくとも一つの辺縁部は、その下に配置される被覆体の少なくとも一つの辺縁部と指空間によって隔離される。
【0020】
本発明の別の態様によると、吸引源と、結合部材と、複合構造とを備える吸引利用創傷治療システムが提供される。複合構造は、真空を印加可能な密閉空間を生成するために患者の創傷上に接着して固定されるように適合された被覆体と、補強材と、剥離性固定可能ライナと、を備える。結合部材、たとえば、吸引管装着装置は、密閉空間へ吸引力を付与するための携帯型真空ポンプなどの吸引源に結合されるように構成される。被覆体は、たとえば、上面と、下面と、主部と、少なくとも一つの辺縁部と、患者に被覆体を固定するように構成される膜の下面上の接着剤と、を有するポリウレタンなどの極薄可撓性膜から成る。補強材は、上面と、下面と、主部と、少なくとも一つの辺縁部と、少なくとも一つの持ち手と、を有するEVAなどのシート材を備える。少なくとも一つの持ち手は、補強材の少なくとも一つの辺縁部と隣接する被覆体の下面の一部を形成する。補強材は被覆体上に配置され、補強材の主部における補強材の下面は被覆体の主部における被覆体の上面に剥離可能に固定される。少なくとも一つの持ち手は、持ち手とその下に配置される被覆体の少なくとも一つの辺縁部との間に、使用者が指を挿入可能な指空間を画定する。剥離可能ライナは、接着剤を保護するために接着剤に剥離可能に固定された少なくとも一つのセクションを備え、接着剤を露出させることが所望される場合に取外し可能であり、その際に、被覆体が創傷を覆うように接着剤にて接着して固定させることができる。補強材と少なくとも一つの持ち手とは、一つのユニットとして被覆体から取り外し可能である。
【0021】
本発明の複合構造と本発明の吸引利用創傷治療システムの例示の実施形態によると、複合構造の少なくとも一つの持ち手が接着剤テープのストリップを備える。
本発明の吸引利用創傷治療システムは、密閉空間内に配置されるように被覆体の下で使用される創傷接触面を有する創傷パッキングを利用することができ、創傷接触面は創傷と係合する。
【0022】
本発明の別の態様によると、患者の創傷に吸引利用創傷治療を提供する方法が提供される。該方法は、上述するような複合構造を提供することと、接着剤を露出させるために剥離可能ライナを被覆体から取り外すことと、吸引力を付与可能な密閉空間を生成するために創傷上に被覆体を貼付することと、補強材と少なくとも一つの持ち手とを一つのユニットとして被覆体から取り外すために指空間を介して複合構造の少なくとも一つの持ち手を把持することとを備える。吸引源から密閉空間に吸引力を付与することができる。所望であれば、創傷と係合する創傷接触面を有する創傷パッキングを、密閉空間内に配置することができる。
【0023】
本発明の別の態様によると、患者の創傷の一般的な治療方法が提供される。該方法は、上述するような複合構造を提供することと、接着剤を露出させるために被覆体から剥離可能ライナを取り外すことと、創傷上に被覆体を貼付することと、補強材と少なくとも一つの持ち手とを一つのユニットとして被覆体から取り外すために指空間を介して複合構造の少なくとも一つの持ち手を把持することとを備える。所望であれば、創傷と係合する創傷接触面を有する創傷パッキングを、密閉空間内に配置することができる。
【0024】
本発明の別の態様によると、患者の体への接着貼付用の被覆体を含む複合構造の製造方法が提供される。該方法は、上面と、下面と、主部と、少なくとも一つの辺縁部と、患者の体に被覆体を固定するように構成される被覆体の下面上の接着剤と、を有する極薄可撓性膜から成る被覆体を提供することを備える。補強材も提供される。補強材は、上面と、下面と、主部と、少なくとも一つの辺縁部と、を有するシートを備える。ストリップが、補強材の少なくとも一つの辺縁部で補強材の下面に提供されて、そこで持ち手を形成する。少なくとも一つの持ち手は補強材の主部よりも堅い。補強材と被覆体とは、補強材の主部における補強材の下面と被覆体の主部における被覆体の上面とを剥離可能に固定するように並置される。
【0025】
複合構造の製造方法の一好適な態様によると、補強材の主部における補強材の下面は、被覆体の主部における被覆体の上面に熱的に剥離可能に固定される。
複合構造の製造方法の別の好適な態様によると、被覆体は、廃ライナ上に連続ウェブとして提供される。ライナシートは、材料の連続ウェブ、たとえば、三つの連続ウェブ状で、被覆体の下面上の接着剤に貼付される。さらに、補強材が、シート材の連続ウェブとして提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明により構成される膜被覆体を含む複合構造の一例示実施形態を組み込んだ吸引利用創傷治療システムの展開等角図である。
【図2】創傷接触面を示すため、図1に示す構成要素のうちの一つの下面、すなわち、創傷パッキングの下面を示す等角図である。
【図3】図1に示す複合構造の断面図である。
【図4】図1および3の複合構造の拡大等角図である。
【図5】図3と類似するが、本発明の複合構造の別の例示実施形態を示す断面図である。
【図6】図3および5と類似するが、本発明の複合構造のさらに別の例示実施形態を示す断面図である。
【図7】図3、5および6と類似するが、本発明の複合構造のさらに別の例示実施形態を示す断面図である。
【図8】図3及び5乃至7と類似するが、本発明の複合構造のさらに別の例示実施形態を示す断面図である。
【図9】本発明の複合構造を製造する例示の一方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
同様の参照符号が類似の部品を指す各種図面を参照すると、図1には、本発明の一態様により構成され、本発明により構成される創傷被覆体を含む複合構造20(後で簡単に説明する)を利用した吸引利用(負圧)創傷治療システム10が示されている。システム10と複合構造を説明する前に、本発明の態様はその他の吸引利用または負圧創傷治療システムまたは装置と共に使用することができ、複合構造20は、一般的な創傷被覆材や外科用ドレープなどの、吸引利用創傷治療以外の用途にも使用可能であることに留意すべきである。
【0028】
図1に示されるように、システム10は、上述の複合構造20、創傷パッキング22、吸引管取付装置24、および携帯型ポンプおよび創傷監視ユニット26を基本的に備える。複合構造は、後で重要な詳細を簡潔に説明する。ここでは、図3および4に最も良く示されるように、複合構造20は、患者の創傷への固定用に下面に接着剤30を含む形状適合被覆体28と、剥離性固定可能ライナ32と、剥離性固定可能補強材34とを基本的に備えると述べるだけで十分であろう。後で詳述するように、剥離性固定可能ライナ32と補強材34は協働して、被覆体の創傷への接着固定を促進する。
【0029】
いったん被覆体28が患者の創傷に接着して固定されれば、創傷に隣接する被覆体の下に密閉空間が生成され、そこに創傷を治療する、あるいはそれ以外の方法で創傷の治癒を促進させるために負圧または吸引力を付与することができる。さらに、多くの創傷医療用途にとっては、創傷と接触する被覆体下に創傷パッキングを利用することが望ましい。図1に示す創傷パッキング22は、その目的に適した特に好適で有効なパッキングの一例であるが、その他の物を使用することもできる。よって、本発明のシステム10の好適な一実施形態によると、創傷パッキング22は好ましくは、2004年11月4日に提出され、2005年9月22日に第2005/0209574号として公開された、米国特許出願第10/981,119号の「吸引と共に使用される創傷パッキング材(Wound Packing Material For Use With Suction)」の教示により構成され、該出願は本発明と同じ譲受人に譲渡されており、引用によりその開示を本文書に組み込む。簡略化のため、創傷パッキング22の構成と動作の全詳細はここでは繰り返さない。ここでは、創傷パッキング22が、介在する略平面状シート38によって共に固定され、図1および2に示す透過性波形構造を形成する少なくとも一つ、好ましくはそれ以上の波状シート36を基本的に備えることを述べれば十分であろう。シート36および38は透過性かつ非吸収性であり、たとえば、好ましくは、ポリオレフィン、ポリイミド、およびポリエステルなどの不織合成生体適合性ポリマ製である。同じく同様の透過性かつ非吸収性材料からなる略平面状シート40が、パッキング22の遠位側を形成する。シート40の外表面は、創傷接触面、すなわち、パッキングが被覆体28下の適所に配置されたとき、創傷と係合する表面を形成する。
【0030】
本発明のシステム10の好適な一実施形態によると、創傷接触シート40とその外表面は、2004年11月5日に提出され、2005年10月13日に第2005/0228329号として公開された米国特許出願第10/982,346号の「創傷接触装置(Wound Contact Device)」と、2007年7月6日に提出され、2008年7月24日に第2008/0177253号として公開された米国特許出願第11/825,397号の「接触面の向上した成長刺激創傷包帯材(Growth Stimulating Wound Dressing With Improved Contact Surface)」との教示に従い構成され、両出願は本発明と同じ譲受人に譲渡されており、引用によりその開示を本文書に組み込む。簡略化のため、創傷接触面の構成と動作の全詳細はここでは繰り返さない。シート40は、薄膜状の外表面を有する、上述したような透過性かつ非吸収性材料、たとえば、ポリエステル膜、セルロースアセテート膜、およびビニル膜から成る群から選択された材料から形成されると述べれば十分であろう。創傷接触面は、シート40内にわずかに延在する多数の小さく窪んだ凹部または間隙42を有する。上述の同時係属出願で詳細に説明されるように、パッキングが吸引されたとき、これらの間隙は収縮に強い。
【0031】
ポンプおよび創傷監視ユニット26は、2005年11月7日に提出され、2007年1月18日に第2007/0016152号として公開された米国特許出願第11/268,212号の「吸引で創傷を治療するシステムおよび吸引の損失を検出する方法(System For Treating A Wound With Suction and Method of Detecting Loss of Suction)」と、2007年4月12日に提出され、2007年9月20日に第2007/0219532号として公開された米国特許出願第11/786,475号の「負圧創傷治療用ポンプシステム(Pump System For Negative Pressure Wound Therapy)」との教示に従い構成され、両出願は本発明と同じ譲受人に譲渡されており、引用によりその開示を本文書に組み込む。簡略化のため、ポンプおよび創傷監視ユニット26の構成と動作の全詳細はここでは繰り返さない。ユニット26は、負圧または吸引力を生成し、被覆体が創傷上の適所に配置されたとき、管取付装置24によって被覆体28下の密閉空間に運ばれるように構成されるポンプを含むことを述べれば十分であろう。
【0032】
ユニット26は、ハウジング44内に携帯型吸引ポンプ(図示せず)を基本的に備える。制御回路(図示せず)もハウジング44内に配置される。リザーバ、容器、または廃棄物回収缶46がハウジングに剥離可能に固定できる、すなわち、ハウジングは缶46を収容する凹部または空洞を有する。該ポンプは、創傷に対して制御された吸引レベルを提供するように構成され、異常な動作状況を表示する流速モニタを有する。該ポンプは、適切な電力変換装置48を介して壁電力で運転する。制御回路はポンプの動作を制御し、たとえば、所望に応じて負圧が付与されるように確保し、システムの誤動作が生じたときの警告などのその他の機能を提供することもできる。容器46は、血液やその他の創傷滲出液などの創傷から生じる流体を収容するように構成される。そのため、容器46は、導管50を介して吸引管取付装置24と流体連通している。
【0033】
吸引管取付装置24は、2005年7月14日に提出され、2006年5月11日に第2006/0100586号として公開された米国特許出願第11/181,128号の「創傷治療用管取付装置(Tube Attachment Device for Wound Treatment)」の教示に従い構成され、同出願は本発明と同じ譲受人に譲渡されており、引用によりその開示を本文書に組み込む。簡略化のため、装置24の構成と動作の全詳細はここでは繰り返さない。ここでは、装置24は、上述の導管50と、下面に接着剤を有するパッチ部材52とを基本的に備えると述べれば十分であろう。導管50は、パッチ部材52の内部通路または孔(図示せず)と流体連通する。被覆体が創傷上に適所に固定された後、パッチ部材は、被覆体28の上面に接着剤層によって固定されるように配置される。パッチ部材52の孔は導管48と流体連通し、被覆体28に形成された孔(図示せず)とも流体連通するため、被覆体が創傷に固定されると、パッチ部材の孔は、被覆体28下に確立される密閉空間と流体連通する。被覆体の孔は予め形成しておく、あるいは管取付装置の被覆体への固定の際に使用者によって作製することができる。導管50は缶46に接続され、その内部と流体連通する。缶の内部は、結合器(図示せず)を介してポンプ入口と流体連通する。よって、作動されると、ポンプは缶46内と被覆体28下の密閉空間内に負圧を生成し、その後、創傷滲出液を、密閉空間を出て吸引管装置24を通り缶46内へと流れ出させ、後の廃棄のために回収させることができる。
【0034】
この局面で、本発明の複合構造は、2003年9月16日に提出され、2004年4月1日に第2004/0064132号として公開された米国特許出願第10/663,226号の「創傷治療装置(Device For Treating A Wound)」と、2005年9月14日に提出され、2006年2月2日に第2006/0025727号として公開された米国特許出願第11/226,505号の「吸引利用創傷治療の装置および方法(Apparatus and Method For Suction−Assisted Wound Healing)」とで開示および請求されるようなその他の吸引利用創傷治療システムと共に使用可能であることを指摘しておくべきであり、両出願は本発明と同じ譲受人に譲渡されており、引用によりその開示を本文書に組み込む。さらに、本発明の複合構造は、2007年11月27日に提出され、2008年6月5日に第2008/0132819号として公開された米国特許出願第11/986,941号の「負圧創傷治療に使用されるトンネル包帯材(Tunnel Dressing For Use In Negative Pressure Wound Therapy)」に従い構成される創傷用トンネル包帯材と共に使用することができ、同出願は本発明と同じ譲受人に譲渡されており、引用によりその開示を本文書に組み込む。
【0035】
被覆体28および複合構造20のその他の部分の構造の詳細を、図3〜5を参照して説明する。複合構造のその他の部分、すなわち、剥離性固定可能ライナ32と補強材34は、被覆体28の創傷上の所望の位置への移送と、創傷の容易かつ効率的でトラブルのない固定とを簡易化するように適合された送達システムとして考えることができる。
【0036】
被覆体28は形状適合シートであり、たとえば、一対の側辺縁部28Aおよび28Bと、中央部または主部28Cと、上面と、接着剤30を有する底面または下面とを有するポリマ膜が全域に配置されている。接着剤30付きの被覆体28は、全体にわたって同じ可撓性を有する。接着性下面を有する被覆体は、吸引利用創傷治療のために創傷に貼付する使用に適した任意の材料で形成することができる。具体的に適した材料の一つが、0.013mm〜0.508mm(0.0005インチ〜0.002インチ)の厚さ範囲、好ましくは約0.020mm(0.0008インチ)の厚さのポリウレタン膜である。この薄膜は、水蒸気を透過させ、基本的には液体を透過させない。9841の名称で3Mによって販売されている下面に接着剤を有するポリウレタン膜が特に適する。下面に接着剤を有する膜に使用可能なもう一つの材料が、E.I.DuPont de Nemours Company製のポリエステルエラストマHytrelである。被覆体28の下面上の接着剤30は、肌接触に適したアクリレート感圧接着剤である。厚さは、好ましくは0.010mm〜0.102mm(0.0004インチ〜0.004インチ)の範囲、最も好ましくは0.018mm〜0.033mm(0.0007インチ〜0.0013インチ)の範囲である。
【0037】
接着剤30付きの被覆体28は透湿性である。特に、好ましくは、1日に1平方メートル当たり300グラム超の速度で蒸気を透過させる(すなわち、湿分透過速度MVTRが300以上である)。被覆体28は、真空ポンプから真空を創傷に付与できるよう創傷上に固定されて配置される。そのため、接着剤30が創傷周辺の皮膚に被覆体28を封止することによって、被覆体の下に創傷に隣接する密閉空間を形成する。被覆体は好ましくは漏れないが、わずかな漏れは許容可能である。具体的に言うと、理想的には、漏れ量がポンプの流容量の20%を超えるべきではない。ポンプの流容量の最大50%の漏れ量が許容可能であるが、理想的ではない。
【0038】
被覆体28は好ましくは、典型的な吸引利用創傷治療用途のために通常3日間以上封止状態を維持するように構成される。被覆体28の透湿性により、肌からの湿分が被覆体を透過することができる。このような湿分が透過されないと、堆積した湿分のせいで接着剤が湿りすぎて、被覆体が十分な封止を維持できない可能性がある。さらに、肌が浸軟する可能性もある。
【0039】
被覆体の別の重要な特性は、解剖学的表面に形状が非常によく適合することである。接着剤を有し、極薄で可撓性の形状適合被覆体は、創傷を封止するのに理想的である。被覆体を創傷に貼付すると、凹凸面に置かれるために、被覆体に皺が生じる場合が多い。極薄の被覆体は、皺が(接着剤で)自身を封止するために望ましい。また、薄い被覆体は、皮膚体の縁が肌面を超えて外に接着しないために望ましい。厚い縁は剥がれ落ちやすい。さらに、薄い被覆体は透湿性に優れる。
【0040】
剥離性固定可能ライナ32を以下簡単に説明する。ここでは、接着剤30が創傷に貼付する準備が整うまで被覆体28の接着剤30を保護するように提供されると述べれば十分であろう。上述したように、剥離性固定可能ライナは補強材34と協働して、被覆体の創傷上への配置を簡易化する。
【0041】
補強材34は、いったん剥離性固定可能ライナ32が複合構造20から取り外された後に、高可撓性被覆体28にいくらかの剛性を提供する役割を果たす。補強材34は、単独で、あるいは被覆体28と組み合わせて可撓性シートまたは層の形態を成し、ライナシート32が取り外された後に被覆体に十分な剛性を提供して、被覆体を有効に創傷に固定させる、たとえば、貼付中に被覆体が皺になるのを防止する。その目的で、補強材の主部を構成する補強材の中央部は、複合構造20の被覆体28の主部に剥離可能に固定される。補強材は、中央部または主部34Cの各側面である上面と下面にそれぞれ配置される対向対の辺縁部34Aおよび34Bを有する。図3に示す実施形態では、補強材の幅、すなわち、辺縁部34Aおよび34Bを隔離させる距離は、被覆体28の幅、すなわち、辺縁部28Aおよび28Bを隔離させる距離と同一である。後述する図5に示す複合構造の実施形態では、補強材の辺縁部は被覆材の辺縁部を超えて延在する。いずれの場合にも、辺縁部34Aおよび34Bと隣接する補強材34の部分は、一対の対応する持ち手54Aおよび54Bを形成する。これらの持ち手はいくつかの形状を取ることができる。たとえば、図3〜5に示す実施形態では、各持ち手は、接着テープストリップによって確立される。具体的には、一方の接着テープストリップ56Aは、側辺縁部34Aに隣接する補強材34の下面に沿って固定され、中央部34Cの一方の側とともに持ち手54Aを形成する。同様に、他方の接着テープストリップ56Bは、側辺縁部34Bに隣接する補強材の下面に沿って固定され、中央部34Cの対向する側と共に持ち手54Bを形成する。持ち手54Aおよび54Bの形成に加えて、テープストリップ56Aおよび56Bはそれぞれ、被覆体28の辺縁部との間に指の入る空間を生成する。各指空間は、後述するように、補強材を除去するために持ち手を握りやすくするように一本またはそれ以上の使用者の指を収容するべく適合されている。上述したように、持ち手54Aと54Bとの間に配置される補強材の部分は上述の中央部または主部34Cを画定し、その下にある被覆体28の対応する中央部または主部に剥離可能に固定される補強材の部分である。
【0042】
補強材34は、患者への貼付中に被覆体28が皺になり自身にくっつくのを防ぐ役割を果たすが、十分に薄いので複雑な患者の解剖学的構造にも容易に適合する。いったん被覆体が患者に接着して固定されれば、補強材を被覆体から取り外し、創傷周囲で形状適合が非常に高く封止可能なポリウレタン膜および接着剤をその後に残すことができる。
【0043】
補強材34は、任意の適切な材料で形成することができる。具体的な適切な材料の一つが、ビニルアセテートの含有量が5%のエチレンビニルアセテート(EVA)膜である。その他考えられる補強材の材料は、ポリエステル膜、ポリエチレン膜、EVA被膜付きの紙などである。例示のEVA補強材の厚さは0.013mm〜0.254mm(0.0005インチ〜0.010インチ)、好ましくは0.038mm〜0.114mm(0.0015インチ〜0.0045インチ)、最も好ましくは約0.057mm(0.00225インチ)とすることができる。さらに、好適なEVA薄膜は異方性である、すなわち、下面は非常に滑らかな仕上げを有し(たとえば、HommelテスタT500を用いて測定した算術平均粗さ値(R)が約1.016μm(40マイクロインチ)である)、上面がやや粗いまたは艶消しの仕上げを有する(たとえば、HommelテスタT500を用いて測定した算術平均粗さ値(R)が約3.556μm(140マイクロインチ)である)。この構造によって、EVA補強材の滑らかな下面が被覆体を構成するポリウレタン膜に剥離可能に熱接合されるように修正可能であり、補強材の艶消しの上面がこのような接合に強いことが確保される。具体的には、上述したように、共に熱的に積層することによって、補強材34の下面の中央部または主部が、被覆体の上面の対応する主部に剥離可能に固定される。その動作は、上述パラメータのポリウレタン膜の連続ウェブと上述パラメータのEVAの連続ウェブとを提供し、摂氏約71.1〜85.0度(華氏約160〜185度)の温度範囲、約142.9〜232.2kg/m(8〜13PLI)(ポンド/線インチ)の圧力、および約1.22m〜3.66m(4〜12フィート)/分の積層速度で積層することによって、図9に示されるように(および後述されるように)達成することができる。他の組み合わせでも利用可能である。ポリウレタン被覆体28とEVA補強材34との結果として生じる剥離可能な接合強度は、0.254m(10インチ)/分の引張速度の180度剥離試験で測定した場合、1.12kg/m(1オンス/インチ)幅未満である。上述の引張速度剥離試験で測定した場合の接合強度は、好ましくは0.558kg/m(0.5オンス/インチ)未満、最も好ましくは0.011〜0.335kg/m(0.01〜0.3オンス/インチ)である。
【0044】
テープストリップ56Aおよび56Bは、補強材34の辺縁部がその下のポリウレタン膜被覆体28の対応辺縁部に接合するのを防ぐセパレータとしての役割を果たす。さらに、上述したように、それぞれが、いったん被覆体が患者に貼付されると、把持することのできる持ち手またはタブとしての役割も果たす。次に、補強材は、持ち手を使用して被覆体から取り外すことができる。各テープストリップはテープストリップの接着剤によって補強材の下面に固定されて、補強材の各持ち手を、補強材の主部よりもわずかに硬直した剛性の補強材とする。各テープストリップの紙層は、持ち手またはタブを使用者によって持ちやすくするわずかな厚みを提供する。テープは任意の適切な材料で形成することができる。使用可能な紙テープの一例が、Shurtape Technologies社で入手可能な0.163mm(0.0064インチ)厚のShurtape CP64である。多数のその他のテープや紙なども利用可能である。
【0045】
図5は、本発明により構成される複合構造120の別の実施形態を示す。補強材134の辺縁部、すなわち、持ち手を形成する辺縁部が被覆体28の辺縁部を超えて外方に延在することを除き、構造120は複合構造20と構造が同じである。簡略化のため、複合構造120の共通の構成要素には、図3に示す複合構造20の実施形態の構成要素と同じ参照符号を付し、それらの構成要素の構造および動作の詳細は繰り返さない。よって、図示されるように、複合構造120は上述の被覆体28と上述のライナ32とを基本的に備える。複合構造120の補強材は参照符号134で表す。補強材134の辺縁部34Aおよび34Bは、それぞれ被覆体28の辺縁部28Aおよび28Bを超えてわずかに延在する。テープストリップ56Aおよび56Bは補強材の辺縁部の下に固定されるので、各自のテープストリップの部分も被覆体の辺縁部を超えて延在する。したがって、(後述するように)補強材を被覆体から取り外す際、図3の複合構造20と比べて、図5の複合構造120の補強材の持ち手54Aおよび54Bの方がやや把持し易い。
【0046】
図8は、本発明により構成される複合構造220の別の実施形態を示す。(簡単に後述する)補強材234を除き、複合構造220は構造20の構造と同一である。簡略化のため、複合構造220の共通の構成要素には、図3の複合構造20の実施形態と同じ参照符号を付し、それらの構成要素の構造および動作の詳細は繰り返さない。よって、図示するように、複合構造220は上述の被覆体28と上述のライナ32とを基本的に備える。補強材232の各辺縁部234Aおよび234Bは自身の下に折り曲げられて、複合構造20の補強材34の場合のように、補強材の下面にテープストリップを使用する代わりに、それぞれの持ち手254Aおよび254Bを形成する。補強材234Aの上面は艶消しの仕上げであるため、持ち手254Aを形成する表面の部分は被覆体の辺縁部28Aの上面に並置される。同様にして、持ち手254Bを形成する艶消し表面の部分は、被覆体の辺縁部28Bの上面上に並置される。したがって、補強材232と被覆体28を形成する材料のウェブが上述の同様な方法で積層される際、補強材234の中央部または主部は被覆体の上面の対応する主部と剥離可能に熱接合され、持ち手/タブ254Aおよび254Bは被覆体の対応する基部から分離されたままになる。特に、タブ/持ち手のそれぞれの下面の艶消し表面は被覆体の上面に接合されないことによって、補強材と被覆体との間に位置する辺縁の指収容空間を生成する。
【0047】
被覆体の周縁部から補強材の周縁部を隔離するもう一つの方法は、補強材の中央部または主部のみを被覆体の中央部または主部に熱接合することである。これはセパレータ(たとえば、テープストリップまたは補強材の折畳み部分)を使用せずに達成することができる。図6に示される複合構造320の実施形態は複合構造120の変形を構成し、そのような構造の一例である。複合構造120と複合構造320の共通する構成要素は同じ参照符号を付し、簡略化のため、その構造および動作の詳細は繰り返さない。よって、図示するように、補強材134は、辺縁部で下面にテープストリップ56Aおよび56Bを含まない。その代わりに、補強材134の中央部または主部のみが、被覆体28の中央部または主部に剥離可能に熱接合される。被覆体の主部は被覆体の辺縁部まで延在しない、すなわち、被覆体の一対の帯状領域が、補強材に接合されない被覆体の辺縁部と隣接すると理解すべきである。
【0048】
図7は、本発明により構成される複合構造420の別の実施形態を示す。複合構造420は、テープストリップ56Aおよび56Bの代わりに補強材の下面にシリコン塗布した二つの帯を使用したことを除き、図6の複合構造と構造が同一である。簡略化のため、複合構造420と複合構造120の共通構成要素には同じ参照符号を付し、その構造および動作の詳細は繰り返さない。よって、図示するように、シリコン薄帯456Aが辺縁部34Aに隣接する補強材134の下面に塗布され、同様のシリコン薄帯456Bが辺縁部34Bに隣接する補強材134の下面に塗布される。補強材の中央部または主部、すなわち、シリコン帯間の部分は、その下に配置される被覆体28の対応する主部に剥離可能に熱接合される。
【0049】
剥離ライナ32の詳細を以下説明する。本発明の好適な態様によると、剥離ライナ32には三つの別々の部分32A、32B、および32Cが設けられ、そのそれぞれが被覆体の使用に先立ち、被覆体28の接着剤30の対応部分を保護する役割を果たす。剥離ライナ32A〜32Cは、創傷層上に貼付する際に被覆体の安全な取扱および操作も可能とする。剥離ライナセクション32A〜32Cは、上記特許文献2(McCrackenら)に開示されるものに類似しており、それらのセクションは当業界において十分既知な材料、たとえばシリコン処理された紙で形成される。セクション32A〜32Cのそれぞれを形成する紙上のシリコンコーティングは、該セクションが被覆体の接着剤30に永久的に粘着するのを防止する。紙は、剥離ライナセクションとして使用可能な単なる一材料である。イリノイ州ウィローブルックのLoparex、Inc.社製のPoly Slikと称される材料などのシリコン処理されたポリエチレンも、剥離ライナセクションを構成する材料として使用可能である。図示される実施形態では、剥離ライナセクション32Aは、辺縁部28Aと隣接する接着剤30の部分に配置される。剥離ライナセクション32Bは、辺縁部28Bと隣接する接着剤30の部分に配置され、剥離ライナセクション32Cは、被覆体の中央部と隣接する接着剤30の部分に配置される。セクション32Aの内側辺縁部はフランジ58の形状である。中央セクション32Cの隣接辺縁部は、セクション32Aのフランジ58に接するフランジ60の形状である。同様に、セクション32Bの内側辺縁部はフランジ62の形状である。中央セクション32Cの隣接辺縁部は、セクション32Bのフランジ62と接するフランジ64の形状である。フランジは、後述するように被覆体が創傷上に置かれると、使用者の指の間で把持して被覆体の下面から取り除くことのできるライナセクションの一部としての役割を果たす。この局面で、フランジに接する部分は、本願の図面では複合構造の平面に実質上鋭角で突出するように示されていることを指摘しておくべきである。実際には、それらのフランジは、複合構造が今後の使用のために空間を節約する、すなわち、複数の構造20を積み重ねることができるように、保管する際は通常は折り畳まれる、あるいは平たくされている。使用の際、折り畳まれた、あるいは平たくされたフランジは開かれて図示されるのと同様の配向を取ることができ、その後、各フランジは後で略述するように、関連のライナセクションの除去を実行するために個々に把持することができる。
【0050】
本発明の複合構造の創傷への貼付は、以下のようにして実行される。貼付の直前に、フランジ60または64のいずれかを把持し、被覆体28の下面の接着剤30から引きはがして接着剤の中央部を露出させることによって、剥離ライナの中央セクション32Cを複合構造から取り外す。次に、各辺縁部、すなわち、持ち手とライナセクション32Aまたは32Bのその下の辺縁部とから成る部分で、使用者の指の間で複合構造を把持することができる。次に、創傷上の所望位置に複合構造を配置する。その後、複合構造の接着剤30の露出部分を創傷と係合させ、補強材の上面を手で均して、皺を作らずに被覆体の中央部を創傷に固定することができる。補強材の存在によって、ライナセクション32Cの除去の結果として接着剤が露出している薄可撓性被覆体の中央部が皺になったり、自身にくっついたりすることがない。次に、フランジ58および62を把持し、被覆体28の下からライナセクションをはぎ取ることによって、剥離ライナセクション32Aおよび32Bを除去することができる。いったん剥離ライナセクション32Aおよび32Bが被覆体の対応部分からはぎ取られたら、その被覆体の領域上の補強材の上面を使用者の手で均して、皺を作らずにその被覆体の部分を創傷に固定することができる。その被覆体領域上の補強材の存在によって、ライナセクション32Aおよび32Bの除去の結果として接着剤が露出している薄可撓性被覆体の側部が皺になったり、自身にくっついたりすることがない。次に、持ち手のいずれかを介して被覆体28からはぎ取ることによって、補強材34を取り外すことができる。その後、管取付装置24を被覆体28に固定して、被覆体を吸引利用創傷治療システム10へ接続することで、被覆体28の下の創傷に吸引を付与することができる。
【0051】
本発明の一好適な実施形態によると、被覆体28を構成するポリウレタン膜の下面の接着剤30とシリコン処理されたライナシート32A〜32Cとの間の剥離可能な接合強度は、0.254m(10インチ)/分の引張速度の180度剥離試験で測定した場合、約0.392〜0.728kg/m(0.35〜0.65オンス/インチ)幅の範囲である。
【0052】
図3に示すような複合構造20の製造を、ここに示す装置またはシステムを用いて図9を参照して以下説明する。その目的で、接着剤を下面に有するポリウレタン膜の層(被覆体28および接着剤30を形成するために上述したようなもの)と、剥離可能な廃ライナ502の形状の層(たとえば、シリコン処理された紙のウェブ)とから成る連続ウェブ500が、ロール504から提供される。ウェブ500が一対のニップローラ506、507とドラム508との間に供給され、その後、廃ライナ502のウェブがはぎ取られ、巻取りリール510に巻き取られる。次に、接着剤付きポリウレタン膜のウェブはドラム508の周囲の一部辺りを通過し、膜のウェブの接着剤側が露出される。剥離ライナ材料、たとえば、シリコン処理された紙の一対の細い連続ウェブ512および514が、供給ロール516および518からそれぞれ供給される。ウェブ512および514は、複合構造20の上述の剥離ライナセクション32Aおよび32Bを形成する。そのため、ウェブ512および514のそれぞれの内側辺縁部が折り畳まれる。折り畳み部分は、剥離ライナ32Aおよび32Bのフランジ58および62を形成する。下向きのシリコン処理面と上向きの折畳み部分とを有するウェブ512および514は、ガイドまたは加圧ローラ520の下を通過し、各ウェブ内で鋭い折畳みを形成する。そこから、ウェブ512および514はドラム508上のポリウレタン膜ウェブの露出した接着剤と係合させられ、その後、二つのウェブ512および514は、二つの辺縁部に沿ってポリウレタン膜のウェブに剥離可能に固定される。この動作で、ポリウレタン膜の中央部または主部の接着剤30は露出されたままで残る。剥離ライナ材、たとえば、シリコン処理された紙製のより広い連続ウェブ52が、供給ロール524から供給される。ウェブ522は上述の中央剥離ライナセクション32Cを形成する。そのため、下向きのシリコン処理面を有する中央ウェブ522はガイドローラ526の下を通過し、該ローラは該ウェブを加圧してドラム508上のポリウレタンウェブの露出した接着剤30と係合させる。中央ウェブ522の各辺縁部は、予め配置された剥離ライナウェブ512および514のそれぞれの隣接する折り畳まれた辺縁部上に重なり、その後、それらの重なった部分が中央剥離ライナセクション32Cの上述のフランジ60および64を形成する。この局面で、ウェブ512および514は予め折り畳まれたウェブとして供給ロール516および518から供給することができる、あるいは、図9に示す装置による製造中に形成装置(図示せず)によって折り畳まれる(形成される)平坦なウェブとして供給することができることを指摘しておくべきである。
【0053】
この時点では接着剤30に固定されている三つの剥離ライナウェブを有するポリウレタン膜のウェブは、その後、加圧ローラ528および530の対向対の間を通過させられる。これらのローラにおいて、連続材料、たとえば、補強材を形成するEVAなどの連続材料のウェブは、ポリウレタン膜のウェブに剥離可能に固定される。特に、上述されるようなEVA材料の連続ウェブ532は、供給ロール534から供給され、ウェブ532の艶消し面536は上向きで、滑らかな面は下向きである。接着剤テープの一対の細い連続ウェブ538が、供給ロール540および542からそれぞれ供給される。ウェブ538は、複合構造20の上述のセパレータストリップ56Aおよび56Bを形成する。そのため、下向きの接着剤面を有するテープストリップ56Aおよび56Bが、ガイドローラ544の表面辺りに、ウェブ532の下側の滑らかな面と係合して搬送され、テープストリップをウェブ532に接着して固定する。テープストリップ538をウェブ532の滑らかな面に固定するための圧力が対向加圧ローラ546によって提供される。現時点では滑らかな面に固定されている接着テープセパレータストリップ538を有する補強材を形成するウェブ532(「補強材形成ウェブ」)がローラ530に運ばれ、テープストリップ538は上を向いている。次に、そのウェブはポリウレタンウェブの下で、接着剤30に剥離可能に固定されるライナウェブ512、522、および514と並置される(「被覆体形成ウェブ」)。二つの並置されたウェブは、加熱ローラ547と加圧または支持ローラ548との間に運ばれ、その後、補強材形成ウェブの中央部または主部は、剥離可能な接合で被覆体形成ウェブの中央部または主部に熱的に積層される。補強材形成ウェブの下面のセパレータストリップ538は、補強材形成ウェブの主部と被覆体形成ウェブの主部間の剥離可能な接合が生成される際、その下の補強材形成ウェブの辺縁部が被覆体形成ウェブに固定されるのを防止する。その後で、結果として生じる複合ウェブ550を横切断線552に沿って切断ステーション(図示せず)で連続的なシートに切断し、一連の複合構造20を形成することができる。
【0054】
この局面で、上述したような方法と、複合構造を製造する装置とは、本発明に係るその他の複合構造を製造するために変更可能であることを指摘しておくべきである。たとえば、図8に示す複合構造220を製造するために、接着剤テープセパレータストリップ538を提供する代わりに、補強材形成ウェブ532の辺縁部を自身の下へ折り畳むことができる。よって、ローラ530上を通過するウェブ532は、上向きの折り畳まれた辺縁部の艶消し面を有する。そうすることによって、艶消し面は、ポリウレタン膜ウェブを形成する被覆体と接触させられる。ウェブ532の艶消し面は熱接合に強いため、共に熱的に積層される隣接ウェブの部分は、中央部または主部のみであって、補強材の辺縁部は被覆体の対応する辺縁部から遊離されたままで、それによって上記の持ち手を形成する。
【0055】
また、本発明に従い構成される複合構造は任意のサイズとすることができると指摘しておくべきである。さらに、該複合構造は、ドレープなどの他の目的で特定の創傷に使用するために所望のサイズに調整するためのハサミまたはその他の切断機器によって切断することができる。さらに、単独の持ち手(たとえば、補強材の一方の辺縁部の下面の単独のテープ)と、互いに隣り合って配置される二つのみの剥離ライナセクションとを備える複合構造を、本発明に従い作製することができる。その実施形態は、上述の実施形態の複合構造のいずれかを該構造の対向辺縁部間の縦中央線に沿って切断することによって作製することができる。
【0056】
本発明の複合構造は様々な有利な特徴を提供する。たとえば、補強材は使用者によって、たとえば、(先行技術のいくつかを特徴づけているように)ミシン線に沿って引きちぎるなどして除去しなければならないポリウレタン膜上の厚い縁部を残さずに一つの工程で取り除くことができる。当業者に認識されるように、ポリウレタン膜の厚い縁部を引きちぎることは、接着剤の封止を阻害する可能性がある。さらに、ポリウレタン膜の厚い縁部が取り除かれない場合、薄膜自体よりも厚いために、その縁部は偶発的にはがれやすくなる可能性がある。
【0057】
複合構造の辺縁部における補強材と被覆体間の指空間の使用も、創傷に接着して固定されてはいるが補強材が取り除かれる前に、被覆体を妨害する機会を最小限にとどめるのに役立つ。これに関連し、指空間は被覆体の辺縁部を補強材から隔離する。よって、被覆体から補強材を引きはがす際、剥離力は(肌に接着する)被覆体の辺縁部には付与されないため、補強材が取り除かれる際に被覆体が偶発的に剥がされる可能性を低減する。
【0058】
補強材の下面に固定される持ち手/セパレータストリップを有する補強材と組み合わせて3セクション剥離ライナを使用することで、創傷上に被覆体を容易かつ有効に配置できる。具体的には、外側に配置された(側)剥離ライナ32Aおよび32Bが、使用者が被覆体を貼付するまで被覆体28のポリウレタン膜を適所に保持する。このため、(補強材の対応する辺縁部から遊離している、すなわち、上述の指空間が間にある)被覆体の辺縁部が、貼付の前に皺になるのが防止される。
【0059】
ポリウレタン被覆体28上の接着剤30とシリコン処理された剥離ライナとの接合は、補強材と被覆体のポリウレタン膜との剥離可能な接合よりも強くすることができるため、接着剤の創傷への固定またはその他の用途にとって、使い易くかつ有効な複合構造が得られる。
【0060】
さらに詳述しなくとも、上記記載は、他の者が現在または将来の知識を適用することによって、様々な実用条件下での使用のために本発明を採用することができるように本発明を十分に説明していよう。
【0061】
関連出願の相互参照
本PCT出願は、2007年10月23日に提出された米国仮出願第61/000,055号である「薄膜創傷被覆体(Thin Film Wound Cover)」に優先権を主張し、該出願は本願と同じ譲受人に譲渡されており、引用により本文書に前開示を組み込む。
【0062】
連邦政府後援の研究および開発に関する陳述
「適用せず」
コンパクトディスクで提出される資料の引用による組み込み
「適用せず」

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆体と、補強材と、剥離可能ライナとを備える複合構造であって、前記被覆体は患者の創傷に使用するように構成されるとともに極薄可撓性膜であって、上面と、下面と、主部と、一対の対向辺縁部と、膜の前記下面上の接着剤と、を有する極薄可撓性膜から形成され、前記補強材は上面と、下面と、主部と、一対の対向辺縁部と、少なくとも一つの持ち手とを有するシートを備え、前記少なくとも一つの持ち手は、前記補強材の前記主部よりも堅く、かつ前記補強材の辺縁部と隣接する前記補強材の前記下面の一部を形成し、前記補強材は前記被覆体全面に配置され、前記補強材の前記主部における前記補強材の前記下面は、前記被覆体の前記主部における前記被覆体の前記上面に剥離可能に固定され、前記少なくとも一つの持ち手は、前記補強材を前記被覆体から隔離するために、前記持ち手とその下に配置される前記被覆体の前記辺縁部との間に使用者が指を挿入可能な指空間を画定し、前記剥離可能ライナは、前記接着剤を保護するために前記接着剤に剥離可能に固定されるとともに前記接着剤を露出させることを望む場合に取外し可能である少なくとも一つのセクションを備え、その際に前記被覆体は前記創傷を覆うように前記接着剤にて接着して固定することができ、前記補強材と前記少なくとも一つの持ち手とは一つのユニットとして前記被覆体から取り外し可能である、複合構造。
【請求項2】
前記剥離可能ライナが少なくとも二つのセクションを備え、前記セクションのそれぞれが、同セクションを前記接着剤から取り外し可能とすべく把持可能に構成されたフランジ部を含む、請求項1に記載の複合構造。
【請求項3】
前記剥離可能ライナが、中央セクションと二つの側部セクションの形状の横方向に配置された三つのセクションを備え、前記中央セクションが一対の側部を有し、前記側部セクションのそれぞれが、前記中央セクションの前記側部のうちの対応する側部に近接して配置される、請求項2に記載の複合構造。
【請求項4】
前記補強材の前記下面が、前記被覆体の前記上面に熱的に剥離可能に固定される、請求項1に記載の複合構造。
【請求項5】
前記持ち手がストリップ材を備える、請求項1に記載の複合構造。
【請求項6】
前記ストリップ材が、前記補強材の前記辺縁部と隣接する前記被覆体の下面に接着して固定されるテープストリップを備える、請求項4に記載の複合構造。
【請求項7】
一対の持ち手を備え、前記持ち手のそれぞれが、前記補強材の対応する辺縁部で前記補強材の前記下面の対応する部分を形成し、前記補強材の前記下面が、前記持ち手の間で前記被覆体の前記上面に剥離可能に固定される、請求項1に記載の複合構造。
【請求項8】
前記補強材の前記下面が、前記持ち手の間で前記被覆体の前記上面に剥離可能に熱的に固定される、請求項7に記載の複合構造。
【請求項9】
被覆体と補強材とを備える複合構造であって、前記被覆体は、患者の創傷に使用するために構成されるとともに極薄可撓性膜であって、上面と、下面と、主部と、少なくとも一つの辺縁部と、前記膜の前記下面上の接着剤と、を有する極薄可撓性膜から形成され、前記被覆体の前記少なくとも一つの辺縁部と前記被覆体の前記主部とは互いに略同一の可撓性を有し、前記補強材は、上面と、下面と、主部と、少なくとも一つの辺縁部とを有するシートを備え、前記補強材は前記被覆体一面に配置され、前記補強材の前記主部における前記補強材の前記下面は、前記被覆体の前記主部における前記被覆体の前記上面に剥離可能に固定され、前記補強材の前記少なくとも一つの辺縁部は、その下に配置される前記被覆体の前記少なくとも一つの辺縁部から指空間によって隔離される、複合構造。
【請求項10】
前記補強材の前記主部における前記補強材の前記下面が、前記被覆体の前記主部における前記被覆体の前記上面に熱的に剥離可能に固定される、請求項9に記載の複合構造。
【請求項11】
前記補強材の前記少なくとも一つの辺縁部の前記下面が、前記補強材の持ち手を形成するストリップを備える、請求項9に記載の複合構造。
【請求項12】
前記ストリップが、前記補強材の前記少なくとも一つの辺縁部の前記下面に接着して固定されるテープストリップを備える、請求項11に記載の複合構造。
【請求項13】
剥離可能ライナをさらに備える、請求項9に記載の複合構造。
【請求項14】
前記剥離可能ライナが少なくとも二つのセクションを備え、前記セクションのそれぞれが、同セクションを前記接着剤から取り外し可能とすべく把持可能に構成されたフランジ部を含む、請求項13に記載の複合構造。
【請求項15】
前記剥離可能ライナが、中央セクションと二つの側部セクションの形状の横方向に配置された三つのセクションを備え、前記中央セクションが一対の側部を有し、前記側部セクションのそれぞれが、前記中央セクションの前記側部のうちの対応する側部に近接して配置される、請求項14に記載の複合構造。
【請求項16】
前記指空間を下方に有する前記補強材の前記少なくとも一つの辺縁部が持ち手を形成し、前記持ち手が前記補強材の前記主部よりも堅い、請求項11に記載の複合構造。
【請求項17】
吸引源と、結合部材と、複合構造とを備える吸引利用創傷治療システムであって、前記複合構造は、真空を付与可能な密閉空間を生成するために、患者の創傷を覆うように接着して固定されるように適合された被覆体と、補強材と、剥離性固定可能ライナとを備え、前記結合部材は、前記密閉空間に吸引力を付与するために前記吸引源に結合されるよう構成され、前記被覆体は極薄可撓性膜であって、上面と、下面と、主部と、少なくとも一つの辺縁部と、前記被覆体を前記創傷に固定するように構成された前記膜の前記下面上の接着剤と、を有する極薄可撓性膜から形成され、前記補強材は、上面と下面と主部と少なくとも一つの辺縁部と少なくとも一つの持ち手とを有するシートを備え、前記少なくとも一つの持ち手は、前記補強材の前記少なくとも一つの辺縁部と隣接する前記補強材の前記下面の一部を形成し、前記補強材は前記被覆体一面に配置され、前記補強材の前記主部における前記補強材の前記下面は、前記被覆体の前記主部における前記被覆体の前記上面に剥離可能に固定され、前記少なくとも一つの持ち手は、持ち手とその下に配置される前記被覆体の前記少なくとも一つの辺縁部との間に使用者が指を挿入可能な指空間を画定し、前記剥離可能ライナは、前記接着剤を保護するために前記接着剤に剥離可能に固定されるとともに前記接着剤を露出させることを望む場合に取外し可能である少なくとも一つのセクションを備え、その際に前記被覆体は前記創傷を覆うように前記接着剤にて接着して固定することができ、前記補強材と前記少なくとも一つの持ち手とは一つのユニットとして前記被覆体から取り外し可能である、吸引利用創傷治療システム。
【請求項18】
前記システムは患者の創傷に係合するように適合された創傷接触面を有する創傷パッキングをさらに備え、前記創傷パッキングが、前記創傷と係合する前記創傷接触面とともに前記密閉空間内に配置される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記システムは前記吸引源に結合され、前記創傷から流体を収容するように適合された容器をさらに備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記被覆体の前記主部と前記少なくとも一つの辺縁部と隣接する前記被覆体の一部とが、互いに略同一の可撓性を有する、請求項17に記載のシステム
【請求項21】
前記少なくとも一つの持ち手が前記補強材の前記主部よりも堅い、請求項17に記載のシステム。
【請求項22】
患者の創傷に吸引利用創傷治療を提供する方法であって、
被覆体と、補強材と、剥離性固定可能ライナとを備える複合構造を提供する工程であって、前記被覆体は極薄可撓性膜であって、上面と、下面と、主部と、少なくとも一つの辺縁部と、前記被覆体を前記患者に固定するように構成された前記膜の前記下面上の接着剤と、を有する極薄可撓性膜から形成され、前記補強材は、上面と、下面と、主部と、少なくとも一つの辺縁部と、少なくとも一つの持ち手とを有するシートを備え、前記少なくとも一つの持ち手は、前記補強材の前記少なくとも一つの辺縁部と隣接する前記補強材の前記下面の一部を形成し、前記補強材は前記被覆体一面に配置され、前記補強材の前記主部における前記補強材の前記下面は、前記被覆体の前記主部における前記被覆体の前記上面に剥離可能に固定され、前記少なくとも一つの持ち手は、持ち手とその下に配置される前記被覆体の前記少なくとも一つの辺縁部との間に使用者が指を挿入可能な指空間を画定し、前記剥離可能ライナは、前記接着剤を保護するために前記接着剤に剥離可能に固定されるとともに前記接着剤を露出させることを望む場合に取外し可能である少なくとも一つのセクションを備えることと、からなる工程と、
前記接着剤を露出させるために前記被覆体から前記剥離可能ライナの前記少なくとも一つのセクションを取り外して、吸引力を適用可能な密閉空間を生成するために前記創傷を覆うように前記被覆体を貼付する工程と、
前記補強材と前記少なくとも一つの持ち手とを一つのユニットとして前記被覆体から取り外すために前記指空間を介して、前記複合構造の前記少なくとも一つの持ち手を把持する工程と、
吸引源を前記密閉空間に結合する工程と、
を備える方法。
【請求項23】
前記創傷に係合する創傷接触面を有する創傷パッキングを、同創傷パッキングが前記密閉空間内に配置されるように前記創傷に貼付する工程をさらに備える、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
患者の創傷を治療する方法であって、
被覆体と、補強材と、剥離性固定可能ライナとを備える複合構造を提供する工程であって、前記被覆体は極薄可撓性膜であって、上面と、下面と、主部と、少なくとも一つの辺縁部と、前記被覆体を前記創傷に固定するように構成された前記膜の前記下面上の接着剤と、を有する極薄可撓性膜から形成され、前記被覆体の前記少なくとも一つの辺縁部と前記被覆体の前記主部とは互いに略同一の可撓性を有し、前記補強材は、上面と、下面と、主部と、少なくとも一つの辺縁部と、少なくとも一つの持ち手とを有するシートを備え、前記少なくとも一つの持ち手は、前記補強材の前記少なくとも一つの辺縁部にて前記補強材の前記下面の一部を形成し、前記補強材の前記主部における前記補強材の前記下面は、前記被覆体の前記主部における前記被覆体の前記上面に剥離可能に固定され、前記少なくとも一つの持ち手は、持ち手とその下に配置される前記被覆体の前記少なくとも一つの辺縁部との間に使用者が指を挿入可能な指空間を画定し、前記剥離可能ライナは、前記接着剤を保護するために前記接着剤に剥離可能に固定されるとともに前記接着剤を露出させることを望む場合に取外し可能である少なくとも一つのセクションを備えることと、からなる工程と、
前記接着剤を露出させるために前記被覆体から前記剥離可能ライナの前記少なくとも一つのセクションを取り外して、前記創傷を覆うように前記被覆体を貼付する工程と、
前記補強材と前記少なくとも一つの持ち手とを一つのユニットとして前記被覆体から取り外すために前記指空間を介して、前記複合構造の前記少なくとも一つの持ち手を把持する工程と、
を備える方法
【請求項25】
前記創傷と接触する創傷接触面を有する創傷パッキングを、同創傷パッキングが前記被覆体と前記創傷との間に配置されるように前記創傷に貼付する工程をさらに備える、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
患者の身体への接着貼付用の被覆体を含む複合構造を製造する方法であって、
極薄可撓性膜であって、上面と、下面と、主部と、一対の対向辺縁部と、前記膜の前記下面上の接着剤と、を有する極薄可撓性膜から形成される被覆体を提供する工程と、
上面と、下面と、主部と、一対の対向辺縁部とを有するシートを備える補強材を提供する工程と、
少なくとも一つの持ち手を形成するために前記補強材の前記辺縁部のうちの一つに隣接して前記補強材の前記下面にストリップを提供する工程であって、前記少なくとも一つの持ち手が前記補強材の前記主部よりも堅いこと、を含む工程と、
前記補強材の前記主部における前記補強材の前記下面を前記被覆体の前記主部における前記被覆体の前記上面に剥離可能に固定するために前記補強材と前記被覆体とを並置する工程と、
を備える方法。
【請求項27】
前記方法は、前記補強材の前記主部における前記補強材の前記下面を、前記被覆体の前記主部における前記被覆体の前記上面に剥離可能に熱的に固定する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ライナシートを前記接着剤に貼付する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記ライナシートが、中央セクションと二つの側部セクションの形状の横方向に配置された三つのセクションを備え、前記中央セクションが一対の側部を有し、前記側部セクションのそれぞれが、前記中央セクションの前記側部のうちの対応する側部に近接して配置される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記被覆シートが連続被覆シート形成ウェブの形状であり、前記ライナシートが連続ライナシート形成ウェブの形状であり、前記被覆シート形成ウェブがその下面上の前記接着剤を露出させるために支持されており、前記ライナシート形成ウェブが、前記ライナシート形成ウェブを前記被覆シート形成ウェブに剥離可能に固定するため、前記被覆シート形成ウェブ上の前記接着剤と係合させられる、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記ライナシート形成ウェブは、三つの個々の連続ウェブを備え、前記三つの連続ウェブのそれぞれが前記ライナシートの各セクションを形成する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
患者の身体への接着貼付用の被覆体を含む複合構造を製造する方法であって、
上面と下面とを有する薄可撓性膜から成る被覆体を提供する工程であって、前記被覆体の前記下面がその上に接着剤を有すること、を含む工程と、
支持面の上に直接前記被覆体を配置する工程であって、前記被覆体の前記上面が前記支持面と直接係合し、前記被覆体の前記下面上の前記接着剤が露出させられること、を含む工程と、
剥離ライナを前記被覆体の前記下面上の前記接着剤に剥離可能に固定するために、前記剥離ライナを前記接着剤に直接貼付する工程と、
上面と下面とを有するシートを備える補強材を提供する工程と、
前記補強材の前記下面を前記被覆体の前記上面に剥離可能に積層する工程と、
を備える方法。
【請求項33】
前記支持面がドラムの前記外表面を備え、前記被覆体が、前記上面と前記接着剤をその上に有する前記下面とを有する連続被覆体形成ウェブの形状であり、前記方法は、前記ドラムの前記外表面の上に直接前記被覆体形成ウェブを配置し、前記被覆体形成ウェブの前記上面を前記ドラムの前記外表面に直接係合する工程を含む、請求項32に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−500272(P2011−500272A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531121(P2010−531121)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/079379
【国際公開番号】WO2009/055251
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(508248003)ボリンジャー・テクノロジーズ・エル・ピー (7)
【Fターム(参考)】