薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置
【課題】バッキングコイルを備えることなくWATEの改善効果が高められるようにする。
【解決手段】薄膜磁気ヘッド300は主磁極層26と、ライトシールド層60と、ギャップ層29と、薄膜コイル51とが基板1上に積層された構成を有している。また、薄膜磁気ヘッド300はリターン磁極層47と、接続磁性層40とを有している。リターン磁極層47は、ABS30から離れた位置に形成されている。接続磁性層40は、リターン磁極層47をライトシールド層60に接続するように、磁性材を用いて形成されている。薄膜コイル51の平面渦巻き状に巻回されている部分が主磁極層26よりも基板1から離れた位置にだけ配置されている。
【解決手段】薄膜磁気ヘッド300は主磁極層26と、ライトシールド層60と、ギャップ層29と、薄膜コイル51とが基板1上に積層された構成を有している。また、薄膜磁気ヘッド300はリターン磁極層47と、接続磁性層40とを有している。リターン磁極層47は、ABS30から離れた位置に形成されている。接続磁性層40は、リターン磁極層47をライトシールド層60に接続するように、磁性材を用いて形成されている。薄膜コイル51の平面渦巻き状に巻回されている部分が主磁極層26よりも基板1から離れた位置にだけ配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録方式で磁気記録動作を行う薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置は、大容量の記録容量を備え、ストレージ装置の中心として広く用いられている。ハードディスク装置は、薄膜磁気ヘッドによってハードディスク(記録媒体)に対するデータの記録再生を行う。
【0003】
薄膜磁気ヘッドは、記録方式により大別すると、長手磁気記録方式と垂直磁気記録方式とに分けることができる。長手磁気記録方式はハードディスク(記録媒体)の記録面内(長手)方向にデータを記録する方式であり、垂直磁気記録方式はハードディスクに形成する記録磁化の向きを記録面の垂直方向に形成してデータを記録する方式である。このうち、垂直磁気記録方式の薄膜磁気ヘッドは長手磁気記録方式に比べて格段に高い記録密度を実現できる上に、記録済のハードディスクが熱揺らぎの影響を受けにくいので、長手磁気記録方式よりも有望視されている。
【0004】
ところで、従来、垂直磁気記録方式の磁気ヘッド(perpendicular
magnetic recording head:以下「PMR」ともいう)は、磁極層と薄膜コイルとを有し、磁極層に薄膜コイルを巻き回した電磁石の構造を有している。
【0005】
従来のPMRは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、主磁極層の内部を通る磁界を発生する薄膜コイルと、連結部を介して主磁極層に連結されているリターン磁極層とを有している。
【0006】
ところで、従来のPMRには、隣接トラック消去(ATE)および広域トラック消去(WATE,Wide Area Track Erasure)とよばれる課題があった。PMRでは、記録媒体の半径方向の位置に応じ、トラックの接線に対してPMRが傾きを生じる。この傾きはスキューと呼ばれる。スキューが発生する場合、データが記録されるトラックに隣接しているトラックに記録されているデータが記録磁界に起因した磁束によって消去されることがあり、この現象を隣接トラック消去(ATE)という。
【0007】
また、データの書き込みを行うトラックから数μm〜数十μm程度離れた位置に配置されているトラックに記録されているデータを消去してしまう現象がWATEである。WATEは、主磁極層から放出された後、リターン磁極層に還流してきた磁束の一部が再生ヘッドに形成されているシールド層を通って媒体対向面から放出されることに起因している。
【0008】
そして、ATEを改善する技術として、従来例えば、主磁極層の媒体対向面側の形状を、下側よりも上側の幅が大きくなるような逆テーパ状にして、ATEが起きないようにしたことが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、WATEを改善する技術として、記録磁界を発生する薄膜コイルに加えてバッキングコイルを設けることが知られていた(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。バッキングコイルを設けたPMRでは、バッキングコイルを流れる電流によって、シールド層を通る磁束の磁気的な作用を弱め得る磁束が生成される。この磁束が生成されることによって、WATEが改善される。
【0010】
そして、バッキングコイルを備えたPMRとして、従来の例えば図26に示すPMR600があった。PMR600は、記録磁界を発生する主磁極層601と、主磁極層601に接合されているヨーク層602と、媒体対向面(以下「ABS」ともいう)603内において主磁極層601に接合されている第1のライトシールド層604と、ABS603において第1のライトシールド層604に接合されている第2のライトシールド層605と、第2のライトシールド層605の周りに巻回された薄膜コイル606と、バックギャップ連結部607を介して主磁極層601に接合されているシールド磁極層608と、バックギャップ連結部607の回りに巻回されているバッキングコイル609とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−171762号公報
【特許文献2】特開2006−323932号公報
【特許文献3】特開2007−12108号公報
【特許文献4】特開2009−252343号公報
【特許文献5】特開2010−282717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述した従来のPMR600では、ABS603内において第1のライトシールド層604が主磁極層601の近傍に配置されている。そのため、主磁極層601から放出された磁束は記録媒体を磁化した後、第1のライトシールド層604に取り込まれる。その磁束は第1のライトシールド層604から第2のライトシールド層605に流れるが、その一部がバックギャップ連結部607を通り、磁束h605となってシールド磁極層608をABS603に向かって通る。PMR600では、この磁束h605の磁気的な作用を弱め得る磁束h609がバッキングコイル609を流れる電流により生成されることによってWATEの改善効果が得られる。
【0013】
しかしながら、PMR600には、バッキングコイル609に起因した次のような課題があった。
一般に、磁束に関しては、磁束の保存則が成立することが知られている。すなわち、磁束密度を表わす磁束線は、連続的な輪になり、途中で途切れたり、湧いたりすることがないことが知られている。すると、シールド磁極層608の内部では、磁束h605の磁気的な作用と、磁束h609の磁気的な作用とが互いに打ち消し合うが、その後も磁束h609は消滅せずに主磁極層601に向かい、主磁極層601の内部をABS603に向かって通る。そのため、薄膜コイル606に起因した磁束のほかに磁束h609が主磁極層601を通ってABS603に放出されるおそれがあり、このことで記録媒体に影響が及ぶおそれがあった。
【0014】
また、PMR600では、バッキングコイル609を有するため、バッキングコイル609を形成するための工程が必要であり、その分、製造工程を簡略化することが困難であった。
【0015】
さらに、バッキングコイル609を流れる電流により、バッキングコイル609が発熱するため、バッキングコイル609の周囲にある部材が膨張するおそれがあった。バッキングコイル609の周囲にある部材が膨張すると、ABS603の一部が突出するおそれがある。そうすると、PMR600が記録媒体に接触し、破損しやすくなる。
【0016】
このように、PMR600のような、バッキングコイルを備えることによってWATEの改善効果を得ている従来のPMRには、上述したような未解決の課題があった。
【0017】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、垂直磁気記録方式で磁気記録動作を行う薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置において、バッキングコイルを備えることなくWATEの改善効果が高められるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明は記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、主磁極層とライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドであって、ライトシールド層の主磁極層を挟んだ反対側において媒体対向面から離れた位置に形成されているリターン磁極層と、薄膜コイルよりも媒体対向面側においてリターン磁極層をライトシールド層に接続するようにして、磁性材を用いて形成された接続磁性層とを有し、薄膜コイルは、ライトシールド層の回りに平面渦巻き状に巻回され、かつその平面渦巻き状に巻回された部分が主磁極層よりも基板から離れた位置にだけ形成されている単層構造を有する薄膜磁気ヘッドを特徴とする。
【0019】
上記薄膜磁気ヘッドの場合、接続磁性層を有するから、主磁極層から放出され、記録媒体に対して垂直な方向とは異なる方向に進む磁束がライトシールド層と接続磁性層とに分流して取り込まれる。そのため、薄膜コイルが単層構造でも、その接続磁性層に取り込まれる磁束によって、リターン磁極層を媒体対向面に向かって通る磁束の磁気的な作用が弱められる。
【0020】
上記薄膜磁気ヘッドの場合、接続磁性層は、媒体対向面内においてライトシールド端面に接続されたシールド端面を有する前端シールド部を有し、ライトシールド端面およびシールド端面が磁極端面の全体を取り囲み、かつその磁極端面の近傍に配置されていることが好ましい。
【0021】
上記薄膜磁気ヘッドでは、記録媒体に対して垂直な方向とは異なる方向の磁束が磁極端面から放出されたあと、記録媒体に対して影響を及ぼす前にライトシールド端面またはシールド端面を通りやすくなっている。
【0022】
また、薄膜磁気ヘッドの場合、媒体対向面から離れた位置においてリターン磁極層と主磁極層とを連結する連結磁性層を更に有し、接続磁性層から、リターン磁極層および連結磁性層を通って主磁極層に達し、コイルが巻き回されていない磁気回路が形成されていることが好ましい。
【0023】
この薄膜磁気ヘッドでは、接続磁性層に取り込まれる磁束がリターン磁極層および連結磁性層を通って主磁極層に戻りやすくなっている。
【0024】
さらに、薄膜磁気ヘッドの場合、接続磁性層は、媒体対向面から離れた位置に配置され、かつリターン磁極層の主磁極層側の上面に接続されている後退接続部と、前端シールド部と後退接続部とを接続する中間接続部とを有することが好ましい。
【0025】
また、中間接続部は、媒体対向面内においてシールド端面に接続されている中間シールド端面を有し、かつ後退接続部の主磁極層側の上面に接続されていることが好ましい。
【0026】
さらに、中間接続部は、媒体対向面から後退接続部の媒体対向面から最も離れた後端部に達する奥行きを備えていることが好ましい。
【0027】
また、上記薄膜磁気ヘッドでは、後退接続部の媒体対向面側に配置されている対向絶縁層を更に有するようにすることができる。
【0028】
さらに、上記薄膜磁気ヘッドでは、前端シールド部は、媒体対向面に沿った方向の断面がV字状に形成されたV溝部を有し、そのV溝部の内側表面上に形成された非磁性薄膜を更に有し、その非磁性薄膜上に主磁極層が形成されていることが好ましい。
【0029】
そして、本発明は、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、主磁極層とライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、以下の(1)から(5)までの各工程を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法を提供する。
(1)媒体対向面から離れた位置に配置されるようにリターン磁極層を形成するリターン磁極層形成工程
(2)リターン磁極層にそれぞれ接続される接続磁性層および連結磁性層を、その接続磁性層がその連結磁性層よりも媒体対向面側に配置され、かつ接続磁性層が媒体対向面内に配置されるシールド端面を有するように形成する磁性層形成工程
(3)接続磁性層および連結磁性層上に主磁極層を形成する主磁極層形成工程
(4)ライトシールド層の回りに平面渦巻き状に巻回され、かつその平面渦巻き状に巻回された部分が主磁極層よりも基板から離れた位置にだけ配置されている単層構造を有するようにして薄膜コイルを形成する薄膜コイル形成工程
(5)媒体対向面内においてシールド端面に接続されるライトシールド端面を有するように、ライトシールド層を形成するライトシールド層形成工程
【0030】
上記製造方法の場合、接続磁性層が薄膜コイルよりも媒体対向面側に配置されるようにして磁性層形成工程を実行することが好ましい。
【0031】
また、上記製造方法の場合、磁性層形成工程は、媒体対向面から離れた位置に配置され、かつリターン磁極層の主磁極層側の上面に接続される後退接続部と、シールド端面を有する前端シールド部と、その前端シールド部と後退接続部とを接続する中間接続部とを、後退接続部、中間接続部、前端シールド部の順にそれぞれ形成することによって接続磁性層を形成することが好ましい。
【0032】
さらに、接続磁性層から、コイルを跨ぐことなくリターン磁極層および連結磁性層を通って主磁極層に達する磁気回路が形成されるようにして磁性層形成工程を実行することが好ましい。
【0033】
また、磁性層形成工程において、媒体対向面から、媒体対向面から最も離れた後端部に達する奥行きを備えるようにして、中間接続部を形成することが好ましい。
【0034】
そして、本発明は、基台上に形成された薄膜磁気ヘッドと、基台を固定するジンバルとを備え、薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、主磁極層とライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有し、ライトシールド層の主磁極層を挟んだ反対側において媒体対向面から離れた位置に形成されているリターン磁極層と、薄膜コイルよりも媒体対向面側においてリターン磁極層をライトシールド層に接続するようにして、磁性材を用いて形成された接続磁性層とを有し、薄膜コイルは、ライトシールド層の回りに平面渦巻き状に巻回され、かつその平面渦巻き状に巻回された部分が主磁極層よりも基板から離れた位置にだけ配置されている単層構造を有するヘッドジンバルアセンブリを提供する。
【0035】
また、本発明は、薄膜磁気ヘッドを有するヘッドジンバルアセンブリと、薄膜磁気ヘッドに対向する記録媒体とを備え、薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、主磁極層とライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有し、ライトシールド層の主磁極層を挟んだ反対側において媒体対向面から離れた位置に形成されているリターン磁極層と、薄膜コイルよりも媒体対向面側においてリターン磁極層をライトシールド層に接続するようにして、磁性材を用いて形成された接続磁性層とを有し、薄膜コイルは、ライトシールド層の回りに平面渦巻き状に巻回され、かつその平面渦巻き状に巻回された部分が主磁極層よりも基板から離れた位置にだけ配置されている単層構造を有するハードディスク装置を提供する。
【発明の効果】
【0036】
以上詳述したように、本発明によれば、垂直磁気記録方式で磁気記録動作を行う薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置において、バッキングコイルを備えることなくWATEの改善効果が高められるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面と交差する方向に沿った図2の1-1線断面図である。
【図2】薄膜磁気ヘッドのABSを示す正面図である。
【図3】主磁極層と前端シールド部を示す平面図である。
【図4】薄膜コイルを示す平面図である。
【図5】主磁極層、接続磁性層およびリターン磁極層を示す一部省略した斜視図である。
【図6】前端シールド部および対向シールド部の要部を示す正面図である。
【図7】主磁極層のABS付近を示す一部省略した斜視図である。
【図8】図1の要部を示す断面図である。
【図9】図1に示した薄膜磁気ヘッドの製造工程を示す図1に対応した断面図である。
【図10】図9の後続の工程を示す図1に対応した断面図である。
【図11】図10の後続の工程を示す図1に対応した断面図である。
【図12】図11の後続の工程を示す図1に対応した断面図である。
【図13】図12の後続の工程を示す図1に対応した断面図である。
【図14】図13の後続の工程を示す図1に対応した断面図である。
【図15】図14の後続の工程を示す図1に対応した断面図である。
【図16】図15の後続の工程を示す図1に対応した断面図である。
【図17】図16の後続の工程を示す図1に対応した断面図である。
【図18】図1に示した薄膜磁気ヘッドの磁束の流れを模式的に示す図である。
【図19】変形例に係る薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面と交差する方向に沿った図1に対応した断面図である。
【図20】別の変形例に係る薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面と交差する方向に沿った図1に対応した断面図である。
【図21】本発明に関連する薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面と交差する方向に沿った図1に対応した断面図である。
【図22】記録対象となるセクタからのずれごとの符号誤り率の分布を示したグラフで、(a)は図1に示した薄膜磁気ヘッド、(b)は図20に示した薄膜磁気ヘッドのグラフである。
【図23】記録対象となるセクタからのずれごとの符号誤り率の分布を示したグラフで、(a)は図19に示した薄膜磁気ヘッド、(b)は図21に示した薄膜磁気ヘッドのグラフである。
【図24】本発明の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドを備えたハードディスク装置を示す斜視図である。
【図25】HGAの裏面側を示す斜視図である。
【図26】従来の薄膜磁気ヘッドの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
第1の実施の形態
(薄膜磁気ヘッドの構造)
まず、図1〜図8を参照して本発明の第1の実施の形態に係る垂直磁気記録方式の薄膜磁気ヘッドの構造について説明する。ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド300のエアベアリング面(以下「ABS」という)と交差する方向に沿った図2の1-1線断面図、図2は薄膜磁気ヘッド300のABS30を示す正面図である。図3は主磁極層26と前端シールド部43を示す平面図、図4は薄膜コイル51を示す平面図である。図5は主磁極層26、接続磁性層40およびリターン磁極層47を示す一部省略した斜視図である。図6は前端シールド部43および対向シールド部61の要部を示す正面図である。図7は主磁極層26のABS付近を示す一部省略した斜視図、図8は図1の要部を示す断面図である。
【0039】
薄膜磁気ヘッド300は、基板1と、基板1に積層された再生ヘッドおよび記録ヘッドを有し、記録媒体に対向する媒体対向面としてのABS30を有している。なお、以下では、薄膜磁気ヘッド300の主要部の構造について説明し、主要部以外の部分の構造は後述する製造工程の中で説明する。
【0040】
再生ヘッドは、ABS30の近傍に配置された磁気的信号検出用のMR素子5を有している。また、再生ヘッドは、基板1上に形成されている絶縁層2と、磁性材料からなる下部シールド層3と、MR素子5をシールドしているシールドギャップ膜4とを有している。さらに、再生ヘッドは、シールドギャップ膜4の上に形成されている磁性材料からなる上部シールド層6と、上部シールド層6の上に形成されている絶縁層7とを有している。再生ヘッドは、記録ヘッドよりも基板1に近い位置に配置されている。
【0041】
MR素子5は、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子、TMR(トンネル磁気抵抗効果)素子などの磁気抵抗効果を示す感磁膜によって構成されている。
【0042】
上部シールド層6は中間に絶縁部6bを有している。また、絶縁部6bよりも下側に第1のシールド部6aが形成され、上側に第2のシールド部6cが形成されている。
【0043】
薄膜磁気ヘッド300では、加熱部8が絶縁層2に形成されている。加熱部8はDFH(Dynamic
fly heater)とも呼ばれ、電流が流されることによって発熱し、その熱を上部シールド層6などに伝達させる機能を有している。また、感熱部9が絶縁層7に形成されている。感熱部9はHDI(Head Disk Interlayer)センサとも呼ばれる。感熱部9は上部シールド層6付近の熱(温度)を感知し、その感知した熱に応じて抵抗値が変化する素子を用いて形成されている。
【0044】
そして、薄膜磁気ヘッド300では、加熱部8によって上部シールド層6や下部シールド層3を加熱する。上部シールド層6や下部シールド層3は加熱部8から受けた熱によって体積が膨張する。その結果、上部シールド層6や下部シールド層3が図1には図示しない記録媒体に接触したとすると、上部シールド層6や下部シールド層3のABS30付近が摩擦によって熱を帯びる。薄膜磁気ヘッド300ではこの摩擦熱に伴う感熱部9の抵抗値の変化を検出することによって、上部シールド層6や下部シールド層3が記録媒体に接触したかどうかの判定が行われる。また、その判定結果に応じて加熱部8に流れる電流値を制御しながらフライングハイトを制御している。スライダを記録媒体から浮上させる高さがフライングハイトである。
【0045】
記録ヘッドは主磁極層26と、ギャップ層29と、接続磁性層40と、リターン磁極層47と、連結磁性層49と、薄膜コイル51と、ライトシールド層60と、上部ヨーク層65および保護絶縁層90を有し、これらが基板1上に積層された構成を有している。
【0046】
主磁極層26は、NiFe、CoNiFe、CoFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて形成されている。NiFe、CoNiFe、CoFe等の強磁性体は透磁率(magnetic permeability)が高い。したがって、主磁極層26は、磁束が透過しやすく、より多くの磁束が通る。そのため、記録磁界に応じたより強い磁束が主磁極層26からABS30に向かって放出される。
【0047】
主磁極層26は、図2、図5、図7に示すように、ABS30側に磁極端面26aを有している。磁極端面26aは基板1側よりも薄膜コイル51側の幅が広く、その幅が基板1に近づくにつれて漸次狭まるベベル形状に形成されている。磁極端面26aの薄膜コイル51側の幅がトラック幅を規定している。トラック幅は例えば0.06〜0.12μm程度である。磁極端面26aはABS30内に配置されている。
【0048】
主磁極層26は図5に示すように磁極端面26aを有するトラック幅規定部と、幅広部と、拡幅部とを有している。トラック幅規定部はABS30からの距離に応じて変化しない一定の幅を有している。また、幅広部はトラック幅規定部よりもABS30から離れた位置に配置され、トラック幅規定部よりも幅広に形成されている。また、幅広部はトラック幅規定部との境界部分でトラック幅規定部と同じ大きさの幅を有するとともに、その幅がABS30から離れるにしたがい漸次広がっている。拡幅部は幅広部よりも大きい一定の幅を有している。本実施の形態では、磁極端面26aから、幅が大きくなり始めるまでの部分をトラック幅規定部としている。
【0049】
また、図7、図8に示すように、主磁極層26では、トラック幅規定部に、第1の上傾斜面26bおよび第2の上傾斜面26cと、第1の下傾斜面26hおよび第2の下傾斜面26eとが形成されている。
【0050】
第1の上傾斜面26bおよび第2の上傾斜面26cはいずれもABS30から離れるにしたがい基板1から離れるような上り傾斜状に形成されている。ただし、ABS30の交差方向からみた第1の上傾斜面26bの傾斜角度よりも第2の上傾斜面26cの傾斜角度が大きくなっている。そのため、トラック幅規定部の上面が2段傾斜構造に形成されている。第1の上傾斜面26bは磁極端面26aと、第2の上傾斜面26cとに接続されている。第2の上傾斜面26cは第1の上傾斜面26bと、幅広部の上面26dとに接続されている。
【0051】
第1の下傾斜面26hおよび第2の下傾斜面26eはいずれもABS30から離れるにしたがい基板1に近づくような下り傾斜状に形成されている。ただし、ABS30の交差方向からみた第1の下傾斜面26hの傾斜角度よりも第2の下傾斜面26eの傾斜角度が大きくなっている。そのため、トラック幅規定部の下面も2段傾斜構造に形成されている。第1の下傾斜面26hは磁極端面26aと、第2の下傾斜面26eとに接続されている。第2の下傾斜面26eは第1の下傾斜面26hと、幅広部の下面26fとに接続されている。
【0052】
主磁極層26には、上面26d上の、後述する対向シールド部61と上部ヨーク層65との間の部分に非磁性層27,28が積層されている。
【0053】
なお、前述のトラック幅規定部におけるABS30からの長さをネックハイトという。ネックハイトは例えば0.05〜0.3μm程度である。
【0054】
ギャップ層29は主磁極層26の第1の上傾斜面26b、第2の上傾斜面26cおよび上面26dに沿って、対向シールド部61および絶縁層31と、主磁極層26および非磁性層27,28との間に形成されている。ギャップ層29は、第1の上傾斜面26b、第2の上傾斜面26cおよび上面26dを被覆するようにして形成されている。ギャップ層29は、アルミナ(Al2O3)等の非磁性の絶縁材やRu,NiCu、Ta等の非磁性導電材料を用いて形成されている。
【0055】
続いて、接続磁性層40について説明する。図1に示すように、接続磁性層40は薄膜コイル51よりもABS30側において、リターン磁極層47をライトシールド層60に接続するように形成されている。接続磁性層40はNiFe、CoNiFe、CoFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて形成されている。接続磁性層40は後退接続部41と、中間接続部42と、前端シールド部43とを有している。
【0056】
後退接続部41は薄膜コイル51よりもABS30側のABS30から離れた位置に配置されている。また、後退接続部41の下面がリターン磁極層47の主磁極層26側の上面47bに接続され、主磁極層26側の上面41bが中間接続部42に接続されている(図5参照)。さらに、後退接続部41のABS30側に対向絶縁層19が形成されている。図11に示すように、対向絶縁層19の上面は後退接続部41の上面41bと段差なく平坦に形成されている(上面41bは図5参照)。
【0057】
中間接続部42は後退接続部41と前端シールド部43とを接続し、その両者の中間に配置されている。中間接続部42は、後退接続部41の上面41bに接続され、その反対側が前端シールド部43に接続されている。また、中間接続部42はABS30から後退接続部41の後端部41rに達する奥行きを有している。後端部41rは後退接続部41のABS30から最も離れた部分である。そして、中間接続部42は中間シールド端面42aを有している。中間シールド端面42aはABS30内に配置されている。中間シールド端面42aは後述するシールド端面43aに接続され、シールド端面43aと段差なく平坦に形成されている。
【0058】
前端シールド部43は、中間接続部42の上面42bに接続され、その反対側上面に非磁性薄膜25が形成されている。前端シールド部43は、シールド端面43aを有している。シールド端面43aはABS30内に配置されている。図6にも示すように、シールド端面43aの上側に後述するライトシールド端面61aが接続され、その反対側に中間シールド端面42aが接続されている。
【0059】
また、前端シールド部43は幅方向中間部分にV溝部43cが形成されている。V溝部43cはABS30に沿った方向の断面が概ねV字状に形成されている。その底部は主磁極層26のトラック幅規定部の下面に応じた2段傾斜構造を有している。図6にも示すように、V溝部43cの内側に後述する非磁性薄膜25と、主磁極層26のトラック幅規定部とが納められている。非磁性薄膜25はV溝部43cの内側表面上に形成されている。V溝部43cの上側に、V溝部43cを覆うようにしてギャップ層29が形成されている。
【0060】
さらに、前端シールド部43は切欠部43dを有している。切欠部43dはV溝部43cの後側に形成されている。切欠部43dの内側に主磁極層26の幅広部の一部が納められている。
【0061】
リターン磁極層47はライトシールド層60の主磁極層26を挟んだ反対側に配置されている。また、リターン磁極層47はABS30から離れた位置に形成されている。そして、リターン磁極層47の上面47bの後述するターン部51g、51e、51cよりもABS30側に後退接続部41が接続され、ターン部51g、51e、51cよりもABS30から離れた位置に後述する第1の連結磁性部44が接続されている。
【0062】
次に、連結磁性層49について説明する。連結磁性層49は、ターン部51g、51e、51cよりもABS30から離れた位置において、リターン磁極層47と主磁極層26とを連結している。連結磁性層49は、第1の連結磁性部44と、第2の連結磁性部45と、第3の連結磁性部46とを有している。第1の連結磁性部44では、上面が後退接続部41の上面41bと段差なく平坦に形成されている。第2の連結磁性部45は、第1の連結磁性部44の上面に接続され、第3の連結磁性部46は、第2の連結磁性部45の上面に接続されている。
【0063】
そして、薄膜磁気ヘッド300では、薄膜コイル51が後述する単層構造を有していることにより、次のような磁気回路MC(図18参照)が形成されている。すなわち、薄膜磁気ヘッド300には、接続磁性層40からコイルを跨ぐことなくリターン磁極層47および連結磁性層49を通って主磁極層26に達し、さらに主磁極層26の磁極端面26aからシールド端面43aに至るまでの空隙を有する磁気回路MCが形成されている。この回路のように磁束が通る閉じた回路を磁気回路という。磁気回路MCにはコイルが巻き回されていない。
【0064】
続いて、薄膜コイル51について説明する。図4に示すように、薄膜コイル51は3つのターン部51g、51e、51cを有している。薄膜コイル51は、記録媒体に記録されるデータに応じた電流が流される。その電流によって薄膜コイル51の回りに記録磁界が発生する。薄膜コイル51はライトシールド層60の回りに平面渦巻き状に巻回され、しかも単層構造を有している。
【0065】
ここで、単層構造とは、平面渦巻き状に巻回されている部分(平面渦巻き部分)が主磁極層26よりも基板1から離れた位置にだけ形成されている構造を意味している。平面渦巻き部分が主磁極層の両側に形成されている場合、その場合のコイルは単層構造を有していない。例えば、従来のPMR600のように、薄膜コイル606に加え、主磁極層601よりも基板側にバッキングコイル609が形成されている場合、PMR600におけるコイルは単層構造を有していない。
【0066】
3つのターン部51g、51e、51cはそれぞれABS30からの距離が異なる位置に配置されている。薄膜コイル51はターン部51g、51e、51cがフォトレジスト層55を介して並んだ構造を有している。ターン部51g、51e、51cのうち、ターン部51gがABS30に最も近い位置に配置されているのでターン部51gが前側ターン部に対応している。ターン部51cが後側ターン部に対応している。
【0067】
薄膜コイル51は、接続部51aからターン部51cにつながるループ部51bと、ターン部51cからターン部51eにつながるワンループ部51dと、ターン部51eからターン部51gにつながるワンループ部51fと、ターン部51gからリード部14Aまでのハーフループ部51hを有している。
【0068】
薄膜コイル51は、接続部51aからリード部14Aまでが一本につながり、全体で3ターンループを形成している。すなわち、接続部51aから、ループ部51b、ワンループ部51d、ワンループ部51f、ハーフループ部51hを通ってリード部14Aにつながることにより、3ターンループが形成されている。
【0069】
ターン部51g、51e、51cは、横幅よりも厚さ(ABS30に沿った方向(上下方向)の高さ)の大きい縦長の構造を有している。そして、ワンループ部51f、ワンループ部51d、ループ部51bのうち、最も幅の狭い部分がそれぞれターン部51g、51e、51cとなっている。なお、本実施の形態において、横幅とはABS30と交差する方向(交差方向)の幅を意味している。
【0070】
続いて、ライトシールド層60について説明する。ライトシールド層60は、対向シールド部61と、カバーシールド部62とを有している。
【0071】
対向シールド部61はギャップ層29を挟んでABS30側から順に主磁極層26、非磁性層27、非磁性層28に対向するようにして形成されている。また、対向シールド部61は上端面が平坦になっていて、その上端面にカバーシールド部62が接続されている。
【0072】
対向シールド部61は図6に示すようなライトシールド端面61aを有している。ライトシールド端面61aはABS30内に配置されている。対向シールド部61はABS30内において前端シールド部43に対峙している。また、ライトシールド端面61aはABS30内においてシールド端面43aに接続されている。そして、図6に示すように、ライトシールド端面61aおよびシールド端面43aが磁極端面26aの全体を取り囲んでいる。しかも、ライトシールド端面61aおよびシールド端面43aが磁極端面26aの、ギャップ層29または非磁性薄膜25だけを介したごく近傍に配置されている。ライトシールド端面61aおよびシールド端面43aは、ABS30内において、ギャップ層29または非磁性薄膜25を介して磁極端面26aの周囲に配置されている。
【0073】
ライトシールド端面61aには、ギャップ層29が配置される微小スペースが形成されている。その微小スペースにギャップ層29のABS30側部分が形成されている。
【0074】
カバーシールド部62はABS30から奥行き方向に延び、薄膜コイル51を跨いで上部ヨーク層65につながる湾曲構造を有している。
【0075】
上部ヨーク層65は主磁極層26の上面26dのうちの非磁性層27,28よりもABS30から離れた後側に接続されている。上部ヨーク層65の上面は対向シールド部61の上面と段差なく形成されている。上部ヨーク層65の上面は対向シールド部61の上面とともに共通平坦面59A(図16参照)を形成している。
【0076】
さらに、薄膜磁気ヘッド300は保護絶縁層90を有している。保護絶縁層90はアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いて形成されている。保護絶縁層90はライトシールド層60を覆うように形成されている。
【0077】
(薄膜磁気ヘッドの製造方法)
次に、前述した図1、図2とともに図9〜図17を参照して、前述の構造を有する薄膜磁気ヘッド300の製造方法について説明する。
【0078】
ここで、図9〜図17は、薄膜磁気ヘッド300の各製造工程における図1に対応した断面図である。
【0079】
まず、アルミニウムオキサイド・チタニウムカーバイド(Al2O3・TiC)等のセラミック材料からなる基板1を準備する。そして、図9に示すように、その基板1の上に、アルミナ(Al2O3)等の絶縁材料からなる絶縁層2と、磁性材料からなる下部シールド層3を順に形成する。絶縁層2を形成するときに加熱部8が形成される。
【0080】
次に、MR素子5をシールドするように絶縁材料を用いてシールドギャップ膜4を形成する。このとき、MR素子5に接続される図示しないリードを形成し、MR素子5およびリードをシールドギャップ膜4で覆う。それから、磁性材料と絶縁材料とを用いてシールドギャップ膜4の上に上部シールド層6(第1のシールド部6a、絶縁部6b、第2のシールド部6c)を形成する。
【0081】
次に、上部シールド層6の上にアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いて、上部シールド層6と、後に形成される記録ヘッドとを分離するための絶縁層7を形成する。絶縁層7を形成するときに感熱部9が形成される。これまでの工程で記録ヘッドを形成するための積層体が得られる。
【0082】
その後、リターン磁極層形成工程を実行する。この工程では、まず、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いてリターン磁極層47を形成するための磁性層(厚さは0.6μm程度)を形成する。この磁性層は、ABS30から離れた位置に形成する。
【0083】
続いて、積層体表面に絶縁層を形成し、化学機械研摩(以下「CMP」という)によって積層体表面の平坦化を行う。すると、前端絶縁層17とリターン磁極層47が形成される。こうして、リターン磁極層47がABS30から0.3μm〜1μm(本実施の形態では、0.5μm程度)離れた位置に配置されるように形成される。その後退したリターン磁極層47のABS30側端部と、ABS30との間に前端絶縁層17が形成される。
【0084】
次に、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)からなる絶縁層18(膜厚は0.1μm〜0.3μm程度)を形成する。それから、積層体の表面全体にフォトレジストを塗布した上で、所定のフォトマスクを用いたパターニングを行い、レジストパターン(図示せず)を形成する。このレジストパターンをマスクに用いて例えばRIE等のエッチングを行い、絶縁層18を選択的に開口する。
【0085】
それから、磁性層形成工程を実行する。磁性層形成工程は、接続磁性層40と連結磁性層49とを形成する工程である。本実施の形態では、この磁性層形成工程の実行中にコイルを形成していない。こうすることで、前述した磁気回路MCが形成されるように磁性層形成工程を実行することができる。
【0086】
磁性層形成工程では、後退接続部41および第1の連結磁性部44の他、中間接続部42および前端シールド部43と、第2の連結磁性部45および第3の連結磁性部46を次のようにして形成する。詳しくは後述するが、磁性層形成工程では、接続磁性層40については後退接続部41、中間接続部42および前端シールド部43を、後退接続部41、中間接続部42、前端シールド部43の順にそれぞれ形成する。また、接続磁性層40は、薄膜コイル51よりもABS30側に配置するように形成する。さらに、連結磁性層49については、第1の連結磁性部44、第2の連結磁性部45および第3の連結磁性部46を第1の連結磁性部44、第2の連結磁性部45、第3の連結磁性部46の順にそれぞれ形成する。
【0087】
まず、フレームめっき法により、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて、後退接続部41と、第1の連結磁性部44を厚さ1〜1.5μm程度で形成する。ただし、後退接続部41は第1の連結磁性部44よりもABS30側に配置される。
【0088】
次に、図10に示すように、アルミナ(Al2O3)からなる絶縁層19(膜厚は2μm〜3.5μm程度)をアトミックレイヤー法によるCVD(Chemical Vapor Deposition)法で積層体の表面全体に形成する。絶縁層19は、後退接続部41、第1の連結磁性部44を被覆するように形成される。
【0089】
続いて、後退接続部41と第1の連結磁性部44が現われるまで積層体の表面をCMPにより研摩して積層体表面の平坦化を行う。すると、図11に示すように、後退接続部41と第1の連結磁性部44が形成される。
【0090】
また、平坦化が行われたことによって、後退接続部41よりもABS30側に対向絶縁層19が形成される。さらに、同じ平坦化によって、後退接続部41の上面41b、対向絶縁層19の上面および第1の連結磁性部44の上面が段差なく平坦に形成される。
【0091】
続いて、図12に示すように、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて、例えばフレームめっき法によって、後退接続部41の上面41bと、第1の連結磁性部44の上面にそれぞれ中間接続部42、第2の連結磁性部45を形成する。このとき、中間接続部42はABS30から後端部41rに達する奥行きを備えるようにして形成する(後端部41rについては図5参照)。
【0092】
それから、アルミナ(Al2O3)からなる絶縁層21をアトミックレイヤー法によるCVD法で積層体の表面全体に形成する。その後、中間接続部42と第2の連結磁性部45が出現するまで積層体の表面をCMPにより研摩して積層体表面の平坦化を行う。すると、図13に示すように、中間接続部42と第2の連結磁性部45が形成される。
【0093】
それから、図14に示すように、アルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いてベース絶縁層24を形成する。その後、ベース絶縁層24を選択的に開口する。続いて、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて、フレームめっき法によって、開口した部分に前端シールド部43となるべき磁性層と、第3の連結磁性部46とをそれぞれ厚さ0.5μm〜1.0μm程度で形成する。第3の連結磁性部46が形成されることによって、連結磁性層49が形成される。
【0094】
そして、積層体の表面にフォトレジストを塗布した上で、所定のフォトマスクを用いたパターニングを行い、積層体の表面にレジストパターンを形成する。このレジストパターンは、前端シールド部43となるべき磁性層の表面を、V溝部43cおよび切欠部43dに応じた形状に露出させる形状に形成する。そのレジストパターンをマスクにして反応性イオンエッチング(以下「RIE」という)を行い、積層体の表面のレジストパターンで被覆されない部分を除去する。すると、前端シールド部43となるべき磁性層にV溝部43cおよび切欠部43dが形成され、これによって、前端シールド部43が形成される。前端シールド部43が形成されることによって、接続磁性層40が形成される。前端シールド部43がシールド端面43aを有するので、シールド端面43aを有するように接続磁性層40が形成される。
【0095】
それから、図15に示すように、ベース絶縁層24および前端シールド部43を被覆するようにして非磁性薄膜25を形成する。非磁性薄膜25はRu,NiCr,NiCu等の非磁性金属材料や、アルミナ等の絶縁材料を用いてスパッタリングによって形成する。非磁性薄膜25は前端シールド部43のV溝部43cにも形成される。
【0096】
続いて、主磁極層形成工程を実行する。この工程では、接続磁性層40および連結磁性層49上に、次のようにして主磁極層26を形成する。
【0097】
まず、磁性層75を0.4〜0.8μm程度の厚さで積層体の表面全体にスパッタリングによって形成する。磁性層75はCoNiFe、CoFe、NiFeなどの強磁性体からなる磁性材を用いて形成する。磁性層75によって後に主磁極層26が形成される。そして、積層体の表面全体をCMPで研磨して、積層体表面の平坦化を行う。
【0098】
その後、スパッタリングにより積層体の表面全体に、Ru,NiCr,NiCu等の金属材料を用いて非磁性層77(厚さは約0.04〜0.1μm程度)を形成する。非磁性層77は後に一部がエッチングされることによって、前述の非磁性層27となる。さらに、積層体の表面全体に、アルミナ(Al2O3)、シリコン酸化物等の無機絶縁材料を用いて非磁性層78(厚さは約0.1〜0.3μm程度)を形成する。非磁性層78は、後に一部がエッチングされることによって、前述の非磁性層28となる。
【0099】
続いて、積層体の表面全体にフォトレジストを塗布した上で、所定のフォトマスクを用いたパターニングを行い、レジストパターン81をABS30の近傍に形成する。
【0100】
次に、レジストパターン81をマスクに用いて例えばRIE等のエッチングを行い、非磁性層78の一部を除去する。この場合のエッチングは、エッチングによって形成された溝の底部が非磁性層77の上面に到達した時点で停止するようにして行われる。そのため、非磁性層78には、非磁性層77と比べて非磁性層78をエッチングする際のエッチングレートの小さい材料を用いる。
【0101】
それからレジストパターン81を除去する。続いて、残された非磁性層78をマスクに用いて例えばイオンビームエッチング(IBEともいう)によって、非磁性層77の一部をエッチングして除去する。さらに、残された非磁性層77をマスクに用いて例えばIBEにより、磁性層75の一部をエッチングして除去する。この工程を経ることによって、磁性層75のABS側の上面が前述した2段傾斜構造で形成される。
【0102】
続いて、図16に示すように、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料や、Ru,NiCu、Ta等の非磁性導電材料を用いてスパッタ法またはCVDによってギャップ層29(厚さは約250Å〜350Å程度)を形成する。
【0103】
さらに、例えばスパッタ法により図示しないストッパ膜を形成し、その上に非磁性膜を形成する。その上で、積層体の表面全体に図示しないフォトレジストを塗布する。そして、所定のフォトマスクを用いたパターニングを行い、図示しないレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクに用いて、例えばRIE等のエッチングを行い、非磁性膜をエッチングする。このエッチングはエッチングによって形成された溝の底部がストッパ膜の上面に到達した時点で停止するようにして行われる。
【0104】
それから、図示しないレジストパターンを除去した後、残された非磁性膜をマスクに用いてRIE等のエッチングを行い、ギャップ層29、非磁性層77および非磁性層78の一部を除去する。ここで、ギャップ層29、非磁性層77および非磁性層78の一部を除去することによって、上部ヨーク層65を形成するためのスペースを確保している。
【0105】
続いて、ライトシールド層形成工程を実行する。この工程では、ライトシールド層60を次のようにして形成する。まず、対向シールド部61を形成する。次に、薄膜コイル51を形成した後でカバーシールド部62を形成することによってライトシールド層60を形成する。
【0106】
そして、対向シールド部61を形成するときは、積層体の表面全体に磁性層を形成する。この磁性層は、めっき法により、CoNiFe、CoFe、CoFeN,NiFeなどの強磁性体からなる磁性材を用いて、0.5〜1.2μm程度の厚さで形成する。この磁性層によって、後に対向シールド部61および上部ヨーク層65が形成される。
【0107】
次に、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いて絶縁層(厚さは1〜3μm程度)を形成する。さらに、磁性層の表面が露出するまで積層体の表面全体をCMPにより研磨して積層体表面の平坦化を行う。すると、対向シールド部61、上部ヨーク層65および絶縁層31が形成される。このとき、対向シールド部61の厚さが0.5〜1.0μm程度になるようにして積層体の表面を研磨する。また、対向シールド部61は、ライトシールド端面61aを有するようにして形成される。
【0108】
次に、図17に示すように、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いて絶縁層32を形成する。続いて、絶縁層32のうち、対向シールド部61の上面に応じた位置と、上部ヨーク層65の上面に応じた位置とにそれぞれ開口を形成する。
【0109】
その後、薄膜コイル形成工程を実行する。この工程では、単層構造を有するようにして、薄膜コイル51を形成する。薄膜コイル形成工程を実行する前、すでに主磁極層形成工程が実行されている。しかも、これまでの工程でコイルは形成されていない。したがって、絶縁層32上に薄膜コイル51を例えばフレームめっき法により形成することによって、単層構造を有するようにして薄膜コイル51を形成することができる。続いて、薄膜コイル51を構成するターン部51g、51e,51c等の隙間を埋めるようにしてフォトレジスト層55を形成する。
【0110】
その後、フォトレジスト層55のABS30側部分を跨ぐようにしてカバーシールド部62を形成する。それから、アルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いて積層体の全体をカバーするようにして保護絶縁層90を形成すると、薄膜磁気ヘッド300が完成する。
【0111】
(薄膜磁気ヘッド300の作用効果)
以上のように、薄膜磁気ヘッド300は中間接続部42を有している。中間接続部42は、ABS30から、後退接続部41の後端部41rに到達する横幅を有している。そのため、接続磁性層40が異距離構造を有しているにもかかわらず、中間接続部42は、前端シールド部43と後退接続部41の双方に確実に接続されている。また、接続磁性層40、リターン磁極層47、連結磁性層49および主磁極層26によって、コイルが巻き回されていない磁気回路MCが形成されている。なお、異距離構造とは、対向シールド部61がABS30内に配置され、かつ連結シールド部63がABS30から後退していることによって対向シールド部61、連結シールド部63それぞれのABS30からの距離が異なっている構造を意味している。
【0112】
ここで、薄膜コイル51に記録電流が流された場合を考える。この場合、記録電流に応じた磁界(記録磁界)が主磁極層26に形成される。この記録磁界から主磁極層26の各点における磁束密度が求められ、その磁束密度を主磁極層26の断面全体について積分することによって主磁極層26を通る磁束が求められる。
【0113】
一般に、電流が形成する磁界は右ねじの法則にしたがった向きに形成される。そのため、図18に示すように、薄膜コイル51を流れる記録電流の紙面の表側から裏側に向かう方向の成分(正方向成分ともいう)は、主磁極層26から記録媒体に向かう方向の記録磁界を形成する。そして、その記録磁界に応じた、磁極端面26aから記録媒体の垂直な方向に進む磁束WHにより記録媒体の垂直記録層を磁化することによって、記録媒体にデータが記録される。
【0114】
一方、薄膜コイル51はライトシールド層60の回りに平面渦巻き状に巻き回されている。その薄膜コイル51を流れる記録電流には、正方向成分とは異なる方向の成分も含まれている。したがって、主磁極層26の磁極端面26aから外側に進む磁束には、磁束WHとは異なる方向の磁束も含まれている。このような磁束のうち、ライトシールド層60に近づく方向に進む磁束H1は、対向シールド部61からカバーシールド部62および上部ヨーク層65を通り主磁極層26に還流する。ライトシールド層60は強磁性体からなる磁性材を用いて形成されているため、透磁率が高くて磁束が格段に通りやすい。そのようなライトシールド層60の対向シールド部61が磁極端面26aの近傍に配置されているため、磁束H1は対向シールド部61を通る。
【0115】
しかしながら、主磁極層26には連結磁性層49が接続されているため、磁束H1が主磁極層26に還流すると、磁束H1の一部が主磁極層26から連結磁性層49を通ってリターン磁極層47に流れる。この磁束H1はリターン磁極層47をABS30に向かう方向に進む。
【0116】
ところで、従来のPMR600では、リターン磁極層に相当するシールド磁極層608がABSに露出していた。そのため、ABS内のシールド磁極層608から磁束がABS内に放出されやすかった。
【0117】
しかしながら、薄膜磁気ヘッド300では、リターン磁極層47がABS30から離れた位置に形成され、そのABS30側に前端絶縁層17が形成されているため、リターン磁極層47から磁束が放出され難くなっている。この点でも、WATEの改善効果は高められる。この点に加え、薄膜磁気ヘッド300では、接続磁性層40が形成されているため、WATEの高い改善効果が得られる。薄膜磁気ヘッド300はバッキングコイルを備えることなくWATEの改善効果が得られるが、その理由について述べれば次のとおりである。
【0118】
図18に示すように、主磁極層26から放出される磁束のうちの磁束WHと異なる方向の磁束は、前述した磁束H1と、接続磁性層40に近づく方向に進む磁束H2の2つに分流される。
【0119】
そして、薄膜磁気ヘッド300では、接続磁性層40によりライトシールド層60とリターン磁極層47とをつないだことによって、磁束H2が接続磁性層40を通ってリターン磁極層47に戻りやすくなっている。そのうえ、前述した磁気回路MCが主磁極層26よりも基板1側に形成されている。磁気回路MCを構成する接続磁性層40やリターン磁極層47は、強磁性体からなる磁性材を用いて形成されている。そのため、磁束H1がライトシールド層60を通るのと同様、磁束H2が磁気回路MCを接続磁性層40からリターン磁極層47に向かい、そこから連結磁性層49を通って主磁極層26に向かう。磁束H2は、リターン磁極層47をABS30から離れる方向に向かって通るため、リターン磁極層47をとおる磁束H1と逆流することになる。
【0120】
磁束H2は、リターン磁極層47の内部では磁束H1の磁気的な作用を弱めるように作用するため、バッキングコイルによる逆流磁束の代わりになる。そのため、薄膜磁気ヘッド300では、バッキングコイルがなくても、リターン磁極層47からABS30に向かって余分な磁束が放出され難くなる。こうして、薄膜磁気ヘッド300では、バッキングコイルがなくても、従来技術より高いWATEの改善効果が得られるようになっている。
【0121】
薄膜コイル51は前述した単層構造を有する平面渦巻き状に形成され、磁気回路MCはコイルが巻き回されていない。そうすると、接続磁性層40から主磁極層26に向かって磁気回路MCを通る磁束は記録磁界に応じた磁束と同様に薄膜コイル51を流れる記録電流によってもたらされることになる。そのため、バッキングコイルに起因する磁束とは異なり、磁束H2によって記録媒体に影響が及ぶおそれは少ないと考えられる。
【0122】
さらに、接続磁性層40は前端シールド部43を有し、その前端シールド部43はシールド端面43aを有している。シールド端面43aは、ABS30内においてライトシールド端面61aに接続されている。ライトシールド端面61aおよびシールド端面43aがギャップ層29または非磁性薄膜25を介して磁極端面26aを取り囲み、かつ磁極端面26aの近傍に配置されている。そのため、磁極端面26aから磁束が放出されると、磁束WHと異なる方向の磁束が記録媒体に対して影響を及ぼす前に、ライトシールド端面61aまたはシールド端面43aを通りやすく、磁束WHと異なる方向の磁束がライトシールド端面61aまたはシールド端面43aによって取り込まれやすくなっている。したがって、薄膜磁気ヘッド300では、磁束WHと異なる方向の磁束が記録媒体に達することを効果的に阻止できるようになっている。
【0123】
また、ライトシールド端面61aおよびシールド端面43aがギャップ層29または非磁性薄膜25を介して磁極端面26aを取り囲んでおり、主磁極層26と、ライトシールド60および接続磁性層40との間には、ギャップ層29または非磁性薄膜25が配置されている。そのため、ライトシールド60や接続磁性層40に主磁極層26から磁束が漏れることはない。したがって、主磁極層26の磁極端面26aから放出される磁束を強くすることができ、薄膜磁気ヘッド300の記録特性を高めることもできる。
【0124】
ところで、ABS30に配置される前端シールド部43と、ABS30から離れたリターン磁極層47とを確実に接続するためには、後退接続部41および中間接続部42の代わりに次のような磁性層を含む接続磁性層40を形成してもよい。この磁性層は、ABS30内に配置される端面を有し、しかも、前端シールド部43に接しつつ、後端部41rに接し得る大きさを有している。
【0125】
しかし、このような磁性層を備えた接続磁性層40を形成した場合、その磁性層がABS30に大きく露出してしまう。かかる磁性層もCoNiFe、CoFe、CoFeN、NiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて形成される。磁性層がABS30に大きく露出していると、薄膜コイル51の発熱の影響を磁性層がより強く受けてしまう。
【0126】
フライングハイトは極めて微小なので、接続磁性層40の限られた微小部分が突出しただけでも、薄膜磁気ヘッド300と記録媒体との衝突が発生してしまう可能性がある。磁性層がABS30に大きく露出しているということは、突出の対象となりえるそのような微小部分がABS30内にたくさん存在しているということを意味し、それだけ、記録媒体に衝突し得る突出の態様が多く、薄膜磁気ヘッド300と記録媒体との衝突が発生しやすいということを意味している。
【0127】
そこで、薄膜磁気ヘッド300では、後退接続部41と中間接続部42を有する接続磁性層40を形成している。ABS30から離れた後退接続部41と、ABS30に配置される中間接続部42を形成し、両者が接続されるようにしている。こうして、ABS30に露出する部分が前端シールド部43のほか、中間接続部42だけになるようにしている。
【0128】
主磁極層26から放出される磁束のうち、磁束WHと異なる方向の磁束が磁束H1と磁束H2の2つに分流した後、記録媒体に影響が及ぶ前にそれぞれを取り込むには、薄膜コイル51よりもABS30側の磁性層によってライトシールド層60とリターン磁極層47とを接続することが望ましい。しかし、この磁性層は薄膜コイル51よりもABS30側に配置されるため、ABS30に露出する大きさが大きいと、薄膜コイル51の発熱の影響を受けやすくなる。
【0129】
そこで、薄膜磁気ヘッド300では、接続磁性層40を形成している。接続磁性層40は後退接続部41と中間接続部42を有している。そのため、前述の磁性層を形成した場合よりもABS30に露出する磁性層の大きさが小さくなる。したがって、薄膜コイル51の発熱に伴う磁性層突出のおそれが少なくなる。よって、薄膜磁気ヘッド300は、記録媒体と衝突する事態が抑制されている。
【0130】
よって、薄膜磁気ヘッド300では、記録ヘッドの突出に伴う破損のおそれが極めて少なくなるから、記録メディアに接近させることができる。
【0131】
したがって、薄膜磁気ヘッド300は、記録ヘッドおよび再生ヘッドの解像度(resolution)を高め、信号対雑音比を向上させることができる。また、薄膜磁気ヘッド300は、記録密度を高めることができる。
【0132】
(変形例1)
次に、図19を参照して薄膜磁気ヘッド301について説明する。薄膜磁気ヘッド301は、薄膜磁気ヘッド300と比べて、接続磁性層40の代わりに接続磁性層140を有する点で相違している。
【0133】
接続磁性層140は接続磁性層40と比べて、後退接続部41および中間接続部42の代わりに対向接続部141および中間接続部142を有している点で相違している。
【0134】
対向接続部141は、ABS30内に配置される端面を有し、その端面の反対側がリターン磁極層47のABS30側の端部に接続されている。また、対向接続部141は、中間接続部142に接続される上面を有し、その上面が第1の連結磁性部44の上面と段差なく平坦に形成されている。中間接続部142は、対向接続部141と前端シールド部43とに接続されている。また、中間接続部142は、中間接続部42よりも幅が狭くなっている。
【0135】
このような薄膜磁気ヘッド301では、接続磁性層140が前端シールド部43を有しているからライトシールド層60に接続されている。また、接続磁性層140はリターン磁極層47にも接続されている。そのため、薄膜磁気ヘッド300と同様、主磁極層26から放出される磁束のうち、磁束WHと異なる方向の磁束が磁束H1と磁束H2の2つに分流した後、ライトシールド層60と接続磁性層140とによって取り込まれる。磁束H2は、リターン磁極層47の内部では磁束H1の磁気的な作用を弱めるように作用するため、バッキングコイルによる逆流磁束の代わりになる。そのため、薄膜磁気ヘッド301も薄膜磁気ヘッド300と同様にバッキングコイルがなくても、リターン磁極層47からABS30に向かって余分な磁束が放出され難くなり、従来技術よりも高いWATEの改善効果が得られる。
【0136】
(変形例2)
次に、図20を参照して薄膜磁気ヘッド302について説明する。この薄膜磁気ヘッド302は、前述した薄膜磁気ヘッド300と比べて、連結磁性層49を有しない点で相違している。
【0137】
薄膜磁気ヘッド302も薄膜磁気ヘッド300と同様に、リターン磁極層47がABS30から離れた位置に形成され、リターン磁極層47のABS30側に前端絶縁層17が形成されているので、磁束がリターン磁極層47からABS30に放出され難くなっている。
【0138】
また、薄膜磁気ヘッド302は、接続磁性層40を有しているから、薄膜磁気ヘッド302でも、薄膜磁気ヘッド300と同様、主磁極層26から放出される磁束のうち、磁束WHと異なる方向の磁束が磁束H1と磁束H2の2つに分流した後、ライトシールド層60と接続磁性層40とによって取り込まれる。
【0139】
そのため、薄膜磁気ヘッド302も、薄膜磁気ヘッド300と同様、リターン磁極層47からABS30に向かって余分な磁束が放出され難くなるため、バッキングコイルがなくても、従来技術より高いWATEの改善効果が得られる。
【0140】
(実施例)
前述した薄膜磁気ヘッド300,301,302それぞれにおけるWATEの改善効果に関する実施例について図22〜図23を参照して説明する。本件発明者は薄膜磁気ヘッド300,301,302それぞれについて、WATEの改善効果を確認するための実験を行った。また、比較のため、図21に示す薄膜磁気ヘッド400についても、薄膜磁気ヘッド300,301,302と同様の実験を行った。薄膜磁気ヘッド400は図21に示すように、薄膜磁気ヘッド300と比較して、リターン磁極層47および連結磁性層49を有しない点で相違している。
【0141】
図22、図23は、記録対象となるセクタからのずれ(Write Offset)ごとの符号誤り率(Bit error rate)の分布を示したグラフである。符号誤り率は、薄膜磁気ヘッド300,301,302それぞれによって記録したデータをそれぞれの再生ヘッドで再生したときに誤って再生される符号の割合を示している。
【0142】
図22のうち(a)、(b)はそれぞれ薄膜磁気ヘッド300,302における符号誤り率の分布を示している。図23のうち(a)、(b)はそれぞれ薄膜磁気ヘッド301、400における符号誤り率の分布を示している。また、各図において上段はWrite Offsetの0〜2μmまでの0.5μm単位の分布を示している。下段はWrite
Offsetの0〜0.5μmまでの0.1μm単位の分布を示している。
【0143】
図22、図23それぞれの下段に示すように、薄膜磁気ヘッド300,301,302,400は、いずれもWrite Offsetが0〜0.5μmまでの間では、符号誤り率の分布がほぼ同様になっている。しかし、図23(b)の上段に示すように薄膜磁気ヘッド400では、Write Offsetが0.5μmを越えて1μm、2μm程度になると、符号誤り率の発生頻度が多くなる。
【0144】
これに対して、図22(a)、(b)の上段および図23(a)の上段に示すように、薄膜磁気ヘッド300,301,302では、Write Offsetが0.5μmを越えて1μm、2μm程度になっても、符号誤り率の発生頻度は低いままで多くなってはいない。この結果から、薄膜磁気ヘッド300,301,302のような構造にすることによって、従来技術よりも高いWATEの改善効果が得られるという点が明らかになる。
【0145】
(ヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置の実施の形態)
次に、ヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置の実施の形態について、図24〜図25を参照して説明する。
【0146】
図24は、上述の薄膜磁気ヘッド300を備えたハードディスク装置201を示す斜視図である。また、図25はHGA210の裏面側を示す斜視図である。図24に示すように、ハードディスク装置201は、高速回転するハードディスク(磁気記録媒体)202と、ヘッドジンバルアセンブリ(HGA:Head Gimbals Assembly)210とを有している。ハードディスク装置201は、HGA210を作動させて、ハードディスク202の記録面に、データの記録および再生を行う装置である。ハードディスク202は、複数枚(図では4枚)のディスクを有している。各ディスクは、それぞれの記録面が薄膜磁気ヘッド300に対向している。
【0147】
ハードディスク装置201は、アセンブリキャリッジ装置203によって、図25に示すスライダ208をトラック上に位置決めする。このスライダ208に薄膜磁気ヘッド300が形成されている。また、ハードディスク装置201は、複数の駆動アーム209を有している。各駆動アームは、ボイスコイルモータ(VCM)205によってピボットベアリング軸206を中心に回動し、ピボットベアリング軸206に沿った方向にスタックされている。そして、各駆動アームの先端にHGA210が取りつけられている。
【0148】
さらに、ハードディスク装置201は、記録再生を制御する制御回路(control circuit)204を有している。
【0149】
次に、HGA210について図25を参照して説明する。HGA210は、サスペンション220の先端部分にスライダ208が固着されている。また、HGA210では、配線部材224の一端部がスライダ208の端子電極に電気的に接続されている。
【0150】
そして、サスペンション220は、ロードビーム222と、ロードビーム222の基部に設けられているベースプレート221と、ロードビーム222上の先端側からベースプレート221の手前側にかけて固着して支持され、弾性を備えたフレクシャ223と、配線部材224とを有している。配線部材224はリード導体およびその両端に電気的に接続された接続パッドを有している。
【0151】
ハードディスク装置201は、HGA210を回転させると、スライダ208がハードディスク202の半径方向、すなわち、トラックラインを横切る方向に移動する。
【0152】
このようなHGA210およびハードディスク装置201は薄膜磁気ヘッド300を有しているから、バッキングコイルを有していなくても従来技術よりも高いWATEの改善効果が得られる。
【0153】
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明を適用することにより、バッキングコイルを備えることなくWATEの改善効果が高められるようにすることができる。本発明は垂直磁気記録方式で磁気記録動作を行う薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0155】
1…基板、25…非磁性薄膜、26…主磁極層、26a…磁極端面、26d…上面、29…ギャップ層、30…ABS、40…接続磁性層、41…後退接続部、41b…上面、41r…後端部、42…中間接続部、42a…中間シールド端面、43…前端シールド部、43a…シールド端面、43c…V溝部、47…リターン磁極層、49…連結磁性層、51…薄膜コイル、60…ライトシールド層、61…対向シールド部、61a…ライトシールド端面、62…カバーシールド部、65…上部ヨーク層、90…保護絶縁層、MC…磁気回路、201…ハードディスク装置、202…ハードディスク、210…HGA、300,301,302…薄膜磁気ヘッド。
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録方式で磁気記録動作を行う薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置は、大容量の記録容量を備え、ストレージ装置の中心として広く用いられている。ハードディスク装置は、薄膜磁気ヘッドによってハードディスク(記録媒体)に対するデータの記録再生を行う。
【0003】
薄膜磁気ヘッドは、記録方式により大別すると、長手磁気記録方式と垂直磁気記録方式とに分けることができる。長手磁気記録方式はハードディスク(記録媒体)の記録面内(長手)方向にデータを記録する方式であり、垂直磁気記録方式はハードディスクに形成する記録磁化の向きを記録面の垂直方向に形成してデータを記録する方式である。このうち、垂直磁気記録方式の薄膜磁気ヘッドは長手磁気記録方式に比べて格段に高い記録密度を実現できる上に、記録済のハードディスクが熱揺らぎの影響を受けにくいので、長手磁気記録方式よりも有望視されている。
【0004】
ところで、従来、垂直磁気記録方式の磁気ヘッド(perpendicular
magnetic recording head:以下「PMR」ともいう)は、磁極層と薄膜コイルとを有し、磁極層に薄膜コイルを巻き回した電磁石の構造を有している。
【0005】
従来のPMRは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、主磁極層の内部を通る磁界を発生する薄膜コイルと、連結部を介して主磁極層に連結されているリターン磁極層とを有している。
【0006】
ところで、従来のPMRには、隣接トラック消去(ATE)および広域トラック消去(WATE,Wide Area Track Erasure)とよばれる課題があった。PMRでは、記録媒体の半径方向の位置に応じ、トラックの接線に対してPMRが傾きを生じる。この傾きはスキューと呼ばれる。スキューが発生する場合、データが記録されるトラックに隣接しているトラックに記録されているデータが記録磁界に起因した磁束によって消去されることがあり、この現象を隣接トラック消去(ATE)という。
【0007】
また、データの書き込みを行うトラックから数μm〜数十μm程度離れた位置に配置されているトラックに記録されているデータを消去してしまう現象がWATEである。WATEは、主磁極層から放出された後、リターン磁極層に還流してきた磁束の一部が再生ヘッドに形成されているシールド層を通って媒体対向面から放出されることに起因している。
【0008】
そして、ATEを改善する技術として、従来例えば、主磁極層の媒体対向面側の形状を、下側よりも上側の幅が大きくなるような逆テーパ状にして、ATEが起きないようにしたことが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、WATEを改善する技術として、記録磁界を発生する薄膜コイルに加えてバッキングコイルを設けることが知られていた(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。バッキングコイルを設けたPMRでは、バッキングコイルを流れる電流によって、シールド層を通る磁束の磁気的な作用を弱め得る磁束が生成される。この磁束が生成されることによって、WATEが改善される。
【0010】
そして、バッキングコイルを備えたPMRとして、従来の例えば図26に示すPMR600があった。PMR600は、記録磁界を発生する主磁極層601と、主磁極層601に接合されているヨーク層602と、媒体対向面(以下「ABS」ともいう)603内において主磁極層601に接合されている第1のライトシールド層604と、ABS603において第1のライトシールド層604に接合されている第2のライトシールド層605と、第2のライトシールド層605の周りに巻回された薄膜コイル606と、バックギャップ連結部607を介して主磁極層601に接合されているシールド磁極層608と、バックギャップ連結部607の回りに巻回されているバッキングコイル609とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−171762号公報
【特許文献2】特開2006−323932号公報
【特許文献3】特開2007−12108号公報
【特許文献4】特開2009−252343号公報
【特許文献5】特開2010−282717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述した従来のPMR600では、ABS603内において第1のライトシールド層604が主磁極層601の近傍に配置されている。そのため、主磁極層601から放出された磁束は記録媒体を磁化した後、第1のライトシールド層604に取り込まれる。その磁束は第1のライトシールド層604から第2のライトシールド層605に流れるが、その一部がバックギャップ連結部607を通り、磁束h605となってシールド磁極層608をABS603に向かって通る。PMR600では、この磁束h605の磁気的な作用を弱め得る磁束h609がバッキングコイル609を流れる電流により生成されることによってWATEの改善効果が得られる。
【0013】
しかしながら、PMR600には、バッキングコイル609に起因した次のような課題があった。
一般に、磁束に関しては、磁束の保存則が成立することが知られている。すなわち、磁束密度を表わす磁束線は、連続的な輪になり、途中で途切れたり、湧いたりすることがないことが知られている。すると、シールド磁極層608の内部では、磁束h605の磁気的な作用と、磁束h609の磁気的な作用とが互いに打ち消し合うが、その後も磁束h609は消滅せずに主磁極層601に向かい、主磁極層601の内部をABS603に向かって通る。そのため、薄膜コイル606に起因した磁束のほかに磁束h609が主磁極層601を通ってABS603に放出されるおそれがあり、このことで記録媒体に影響が及ぶおそれがあった。
【0014】
また、PMR600では、バッキングコイル609を有するため、バッキングコイル609を形成するための工程が必要であり、その分、製造工程を簡略化することが困難であった。
【0015】
さらに、バッキングコイル609を流れる電流により、バッキングコイル609が発熱するため、バッキングコイル609の周囲にある部材が膨張するおそれがあった。バッキングコイル609の周囲にある部材が膨張すると、ABS603の一部が突出するおそれがある。そうすると、PMR600が記録媒体に接触し、破損しやすくなる。
【0016】
このように、PMR600のような、バッキングコイルを備えることによってWATEの改善効果を得ている従来のPMRには、上述したような未解決の課題があった。
【0017】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、垂直磁気記録方式で磁気記録動作を行う薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置において、バッキングコイルを備えることなくWATEの改善効果が高められるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明は記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、主磁極層とライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドであって、ライトシールド層の主磁極層を挟んだ反対側において媒体対向面から離れた位置に形成されているリターン磁極層と、薄膜コイルよりも媒体対向面側においてリターン磁極層をライトシールド層に接続するようにして、磁性材を用いて形成された接続磁性層とを有し、薄膜コイルは、ライトシールド層の回りに平面渦巻き状に巻回され、かつその平面渦巻き状に巻回された部分が主磁極層よりも基板から離れた位置にだけ形成されている単層構造を有する薄膜磁気ヘッドを特徴とする。
【0019】
上記薄膜磁気ヘッドの場合、接続磁性層を有するから、主磁極層から放出され、記録媒体に対して垂直な方向とは異なる方向に進む磁束がライトシールド層と接続磁性層とに分流して取り込まれる。そのため、薄膜コイルが単層構造でも、その接続磁性層に取り込まれる磁束によって、リターン磁極層を媒体対向面に向かって通る磁束の磁気的な作用が弱められる。
【0020】
上記薄膜磁気ヘッドの場合、接続磁性層は、媒体対向面内においてライトシールド端面に接続されたシールド端面を有する前端シールド部を有し、ライトシールド端面およびシールド端面が磁極端面の全体を取り囲み、かつその磁極端面の近傍に配置されていることが好ましい。
【0021】
上記薄膜磁気ヘッドでは、記録媒体に対して垂直な方向とは異なる方向の磁束が磁極端面から放出されたあと、記録媒体に対して影響を及ぼす前にライトシールド端面またはシールド端面を通りやすくなっている。
【0022】
また、薄膜磁気ヘッドの場合、媒体対向面から離れた位置においてリターン磁極層と主磁極層とを連結する連結磁性層を更に有し、接続磁性層から、リターン磁極層および連結磁性層を通って主磁極層に達し、コイルが巻き回されていない磁気回路が形成されていることが好ましい。
【0023】
この薄膜磁気ヘッドでは、接続磁性層に取り込まれる磁束がリターン磁極層および連結磁性層を通って主磁極層に戻りやすくなっている。
【0024】
さらに、薄膜磁気ヘッドの場合、接続磁性層は、媒体対向面から離れた位置に配置され、かつリターン磁極層の主磁極層側の上面に接続されている後退接続部と、前端シールド部と後退接続部とを接続する中間接続部とを有することが好ましい。
【0025】
また、中間接続部は、媒体対向面内においてシールド端面に接続されている中間シールド端面を有し、かつ後退接続部の主磁極層側の上面に接続されていることが好ましい。
【0026】
さらに、中間接続部は、媒体対向面から後退接続部の媒体対向面から最も離れた後端部に達する奥行きを備えていることが好ましい。
【0027】
また、上記薄膜磁気ヘッドでは、後退接続部の媒体対向面側に配置されている対向絶縁層を更に有するようにすることができる。
【0028】
さらに、上記薄膜磁気ヘッドでは、前端シールド部は、媒体対向面に沿った方向の断面がV字状に形成されたV溝部を有し、そのV溝部の内側表面上に形成された非磁性薄膜を更に有し、その非磁性薄膜上に主磁極層が形成されていることが好ましい。
【0029】
そして、本発明は、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、主磁極層とライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、以下の(1)から(5)までの各工程を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法を提供する。
(1)媒体対向面から離れた位置に配置されるようにリターン磁極層を形成するリターン磁極層形成工程
(2)リターン磁極層にそれぞれ接続される接続磁性層および連結磁性層を、その接続磁性層がその連結磁性層よりも媒体対向面側に配置され、かつ接続磁性層が媒体対向面内に配置されるシールド端面を有するように形成する磁性層形成工程
(3)接続磁性層および連結磁性層上に主磁極層を形成する主磁極層形成工程
(4)ライトシールド層の回りに平面渦巻き状に巻回され、かつその平面渦巻き状に巻回された部分が主磁極層よりも基板から離れた位置にだけ配置されている単層構造を有するようにして薄膜コイルを形成する薄膜コイル形成工程
(5)媒体対向面内においてシールド端面に接続されるライトシールド端面を有するように、ライトシールド層を形成するライトシールド層形成工程
【0030】
上記製造方法の場合、接続磁性層が薄膜コイルよりも媒体対向面側に配置されるようにして磁性層形成工程を実行することが好ましい。
【0031】
また、上記製造方法の場合、磁性層形成工程は、媒体対向面から離れた位置に配置され、かつリターン磁極層の主磁極層側の上面に接続される後退接続部と、シールド端面を有する前端シールド部と、その前端シールド部と後退接続部とを接続する中間接続部とを、後退接続部、中間接続部、前端シールド部の順にそれぞれ形成することによって接続磁性層を形成することが好ましい。
【0032】
さらに、接続磁性層から、コイルを跨ぐことなくリターン磁極層および連結磁性層を通って主磁極層に達する磁気回路が形成されるようにして磁性層形成工程を実行することが好ましい。
【0033】
また、磁性層形成工程において、媒体対向面から、媒体対向面から最も離れた後端部に達する奥行きを備えるようにして、中間接続部を形成することが好ましい。
【0034】
そして、本発明は、基台上に形成された薄膜磁気ヘッドと、基台を固定するジンバルとを備え、薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、主磁極層とライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有し、ライトシールド層の主磁極層を挟んだ反対側において媒体対向面から離れた位置に形成されているリターン磁極層と、薄膜コイルよりも媒体対向面側においてリターン磁極層をライトシールド層に接続するようにして、磁性材を用いて形成された接続磁性層とを有し、薄膜コイルは、ライトシールド層の回りに平面渦巻き状に巻回され、かつその平面渦巻き状に巻回された部分が主磁極層よりも基板から離れた位置にだけ配置されている単層構造を有するヘッドジンバルアセンブリを提供する。
【0035】
また、本発明は、薄膜磁気ヘッドを有するヘッドジンバルアセンブリと、薄膜磁気ヘッドに対向する記録媒体とを備え、薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、主磁極層とライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有し、ライトシールド層の主磁極層を挟んだ反対側において媒体対向面から離れた位置に形成されているリターン磁極層と、薄膜コイルよりも媒体対向面側においてリターン磁極層をライトシールド層に接続するようにして、磁性材を用いて形成された接続磁性層とを有し、薄膜コイルは、ライトシールド層の回りに平面渦巻き状に巻回され、かつその平面渦巻き状に巻回された部分が主磁極層よりも基板から離れた位置にだけ配置されている単層構造を有するハードディスク装置を提供する。
【発明の効果】
【0036】
以上詳述したように、本発明によれば、垂直磁気記録方式で磁気記録動作を行う薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置において、バッキングコイルを備えることなくWATEの改善効果が高められるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面と交差する方向に沿った図2の1-1線断面図である。
【図2】薄膜磁気ヘッドのABSを示す正面図である。
【図3】主磁極層と前端シールド部を示す平面図である。
【図4】薄膜コイルを示す平面図である。
【図5】主磁極層、接続磁性層およびリターン磁極層を示す一部省略した斜視図である。
【図6】前端シールド部および対向シールド部の要部を示す正面図である。
【図7】主磁極層のABS付近を示す一部省略した斜視図である。
【図8】図1の要部を示す断面図である。
【図9】図1に示した薄膜磁気ヘッドの製造工程を示す図1に対応した断面図である。
【図10】図9の後続の工程を示す図1に対応した断面図である。
【図11】図10の後続の工程を示す図1に対応した断面図である。
【図12】図11の後続の工程を示す図1に対応した断面図である。
【図13】図12の後続の工程を示す図1に対応した断面図である。
【図14】図13の後続の工程を示す図1に対応した断面図である。
【図15】図14の後続の工程を示す図1に対応した断面図である。
【図16】図15の後続の工程を示す図1に対応した断面図である。
【図17】図16の後続の工程を示す図1に対応した断面図である。
【図18】図1に示した薄膜磁気ヘッドの磁束の流れを模式的に示す図である。
【図19】変形例に係る薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面と交差する方向に沿った図1に対応した断面図である。
【図20】別の変形例に係る薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面と交差する方向に沿った図1に対応した断面図である。
【図21】本発明に関連する薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面と交差する方向に沿った図1に対応した断面図である。
【図22】記録対象となるセクタからのずれごとの符号誤り率の分布を示したグラフで、(a)は図1に示した薄膜磁気ヘッド、(b)は図20に示した薄膜磁気ヘッドのグラフである。
【図23】記録対象となるセクタからのずれごとの符号誤り率の分布を示したグラフで、(a)は図19に示した薄膜磁気ヘッド、(b)は図21に示した薄膜磁気ヘッドのグラフである。
【図24】本発明の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドを備えたハードディスク装置を示す斜視図である。
【図25】HGAの裏面側を示す斜視図である。
【図26】従来の薄膜磁気ヘッドの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
第1の実施の形態
(薄膜磁気ヘッドの構造)
まず、図1〜図8を参照して本発明の第1の実施の形態に係る垂直磁気記録方式の薄膜磁気ヘッドの構造について説明する。ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド300のエアベアリング面(以下「ABS」という)と交差する方向に沿った図2の1-1線断面図、図2は薄膜磁気ヘッド300のABS30を示す正面図である。図3は主磁極層26と前端シールド部43を示す平面図、図4は薄膜コイル51を示す平面図である。図5は主磁極層26、接続磁性層40およびリターン磁極層47を示す一部省略した斜視図である。図6は前端シールド部43および対向シールド部61の要部を示す正面図である。図7は主磁極層26のABS付近を示す一部省略した斜視図、図8は図1の要部を示す断面図である。
【0039】
薄膜磁気ヘッド300は、基板1と、基板1に積層された再生ヘッドおよび記録ヘッドを有し、記録媒体に対向する媒体対向面としてのABS30を有している。なお、以下では、薄膜磁気ヘッド300の主要部の構造について説明し、主要部以外の部分の構造は後述する製造工程の中で説明する。
【0040】
再生ヘッドは、ABS30の近傍に配置された磁気的信号検出用のMR素子5を有している。また、再生ヘッドは、基板1上に形成されている絶縁層2と、磁性材料からなる下部シールド層3と、MR素子5をシールドしているシールドギャップ膜4とを有している。さらに、再生ヘッドは、シールドギャップ膜4の上に形成されている磁性材料からなる上部シールド層6と、上部シールド層6の上に形成されている絶縁層7とを有している。再生ヘッドは、記録ヘッドよりも基板1に近い位置に配置されている。
【0041】
MR素子5は、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子、TMR(トンネル磁気抵抗効果)素子などの磁気抵抗効果を示す感磁膜によって構成されている。
【0042】
上部シールド層6は中間に絶縁部6bを有している。また、絶縁部6bよりも下側に第1のシールド部6aが形成され、上側に第2のシールド部6cが形成されている。
【0043】
薄膜磁気ヘッド300では、加熱部8が絶縁層2に形成されている。加熱部8はDFH(Dynamic
fly heater)とも呼ばれ、電流が流されることによって発熱し、その熱を上部シールド層6などに伝達させる機能を有している。また、感熱部9が絶縁層7に形成されている。感熱部9はHDI(Head Disk Interlayer)センサとも呼ばれる。感熱部9は上部シールド層6付近の熱(温度)を感知し、その感知した熱に応じて抵抗値が変化する素子を用いて形成されている。
【0044】
そして、薄膜磁気ヘッド300では、加熱部8によって上部シールド層6や下部シールド層3を加熱する。上部シールド層6や下部シールド層3は加熱部8から受けた熱によって体積が膨張する。その結果、上部シールド層6や下部シールド層3が図1には図示しない記録媒体に接触したとすると、上部シールド層6や下部シールド層3のABS30付近が摩擦によって熱を帯びる。薄膜磁気ヘッド300ではこの摩擦熱に伴う感熱部9の抵抗値の変化を検出することによって、上部シールド層6や下部シールド層3が記録媒体に接触したかどうかの判定が行われる。また、その判定結果に応じて加熱部8に流れる電流値を制御しながらフライングハイトを制御している。スライダを記録媒体から浮上させる高さがフライングハイトである。
【0045】
記録ヘッドは主磁極層26と、ギャップ層29と、接続磁性層40と、リターン磁極層47と、連結磁性層49と、薄膜コイル51と、ライトシールド層60と、上部ヨーク層65および保護絶縁層90を有し、これらが基板1上に積層された構成を有している。
【0046】
主磁極層26は、NiFe、CoNiFe、CoFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて形成されている。NiFe、CoNiFe、CoFe等の強磁性体は透磁率(magnetic permeability)が高い。したがって、主磁極層26は、磁束が透過しやすく、より多くの磁束が通る。そのため、記録磁界に応じたより強い磁束が主磁極層26からABS30に向かって放出される。
【0047】
主磁極層26は、図2、図5、図7に示すように、ABS30側に磁極端面26aを有している。磁極端面26aは基板1側よりも薄膜コイル51側の幅が広く、その幅が基板1に近づくにつれて漸次狭まるベベル形状に形成されている。磁極端面26aの薄膜コイル51側の幅がトラック幅を規定している。トラック幅は例えば0.06〜0.12μm程度である。磁極端面26aはABS30内に配置されている。
【0048】
主磁極層26は図5に示すように磁極端面26aを有するトラック幅規定部と、幅広部と、拡幅部とを有している。トラック幅規定部はABS30からの距離に応じて変化しない一定の幅を有している。また、幅広部はトラック幅規定部よりもABS30から離れた位置に配置され、トラック幅規定部よりも幅広に形成されている。また、幅広部はトラック幅規定部との境界部分でトラック幅規定部と同じ大きさの幅を有するとともに、その幅がABS30から離れるにしたがい漸次広がっている。拡幅部は幅広部よりも大きい一定の幅を有している。本実施の形態では、磁極端面26aから、幅が大きくなり始めるまでの部分をトラック幅規定部としている。
【0049】
また、図7、図8に示すように、主磁極層26では、トラック幅規定部に、第1の上傾斜面26bおよび第2の上傾斜面26cと、第1の下傾斜面26hおよび第2の下傾斜面26eとが形成されている。
【0050】
第1の上傾斜面26bおよび第2の上傾斜面26cはいずれもABS30から離れるにしたがい基板1から離れるような上り傾斜状に形成されている。ただし、ABS30の交差方向からみた第1の上傾斜面26bの傾斜角度よりも第2の上傾斜面26cの傾斜角度が大きくなっている。そのため、トラック幅規定部の上面が2段傾斜構造に形成されている。第1の上傾斜面26bは磁極端面26aと、第2の上傾斜面26cとに接続されている。第2の上傾斜面26cは第1の上傾斜面26bと、幅広部の上面26dとに接続されている。
【0051】
第1の下傾斜面26hおよび第2の下傾斜面26eはいずれもABS30から離れるにしたがい基板1に近づくような下り傾斜状に形成されている。ただし、ABS30の交差方向からみた第1の下傾斜面26hの傾斜角度よりも第2の下傾斜面26eの傾斜角度が大きくなっている。そのため、トラック幅規定部の下面も2段傾斜構造に形成されている。第1の下傾斜面26hは磁極端面26aと、第2の下傾斜面26eとに接続されている。第2の下傾斜面26eは第1の下傾斜面26hと、幅広部の下面26fとに接続されている。
【0052】
主磁極層26には、上面26d上の、後述する対向シールド部61と上部ヨーク層65との間の部分に非磁性層27,28が積層されている。
【0053】
なお、前述のトラック幅規定部におけるABS30からの長さをネックハイトという。ネックハイトは例えば0.05〜0.3μm程度である。
【0054】
ギャップ層29は主磁極層26の第1の上傾斜面26b、第2の上傾斜面26cおよび上面26dに沿って、対向シールド部61および絶縁層31と、主磁極層26および非磁性層27,28との間に形成されている。ギャップ層29は、第1の上傾斜面26b、第2の上傾斜面26cおよび上面26dを被覆するようにして形成されている。ギャップ層29は、アルミナ(Al2O3)等の非磁性の絶縁材やRu,NiCu、Ta等の非磁性導電材料を用いて形成されている。
【0055】
続いて、接続磁性層40について説明する。図1に示すように、接続磁性層40は薄膜コイル51よりもABS30側において、リターン磁極層47をライトシールド層60に接続するように形成されている。接続磁性層40はNiFe、CoNiFe、CoFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて形成されている。接続磁性層40は後退接続部41と、中間接続部42と、前端シールド部43とを有している。
【0056】
後退接続部41は薄膜コイル51よりもABS30側のABS30から離れた位置に配置されている。また、後退接続部41の下面がリターン磁極層47の主磁極層26側の上面47bに接続され、主磁極層26側の上面41bが中間接続部42に接続されている(図5参照)。さらに、後退接続部41のABS30側に対向絶縁層19が形成されている。図11に示すように、対向絶縁層19の上面は後退接続部41の上面41bと段差なく平坦に形成されている(上面41bは図5参照)。
【0057】
中間接続部42は後退接続部41と前端シールド部43とを接続し、その両者の中間に配置されている。中間接続部42は、後退接続部41の上面41bに接続され、その反対側が前端シールド部43に接続されている。また、中間接続部42はABS30から後退接続部41の後端部41rに達する奥行きを有している。後端部41rは後退接続部41のABS30から最も離れた部分である。そして、中間接続部42は中間シールド端面42aを有している。中間シールド端面42aはABS30内に配置されている。中間シールド端面42aは後述するシールド端面43aに接続され、シールド端面43aと段差なく平坦に形成されている。
【0058】
前端シールド部43は、中間接続部42の上面42bに接続され、その反対側上面に非磁性薄膜25が形成されている。前端シールド部43は、シールド端面43aを有している。シールド端面43aはABS30内に配置されている。図6にも示すように、シールド端面43aの上側に後述するライトシールド端面61aが接続され、その反対側に中間シールド端面42aが接続されている。
【0059】
また、前端シールド部43は幅方向中間部分にV溝部43cが形成されている。V溝部43cはABS30に沿った方向の断面が概ねV字状に形成されている。その底部は主磁極層26のトラック幅規定部の下面に応じた2段傾斜構造を有している。図6にも示すように、V溝部43cの内側に後述する非磁性薄膜25と、主磁極層26のトラック幅規定部とが納められている。非磁性薄膜25はV溝部43cの内側表面上に形成されている。V溝部43cの上側に、V溝部43cを覆うようにしてギャップ層29が形成されている。
【0060】
さらに、前端シールド部43は切欠部43dを有している。切欠部43dはV溝部43cの後側に形成されている。切欠部43dの内側に主磁極層26の幅広部の一部が納められている。
【0061】
リターン磁極層47はライトシールド層60の主磁極層26を挟んだ反対側に配置されている。また、リターン磁極層47はABS30から離れた位置に形成されている。そして、リターン磁極層47の上面47bの後述するターン部51g、51e、51cよりもABS30側に後退接続部41が接続され、ターン部51g、51e、51cよりもABS30から離れた位置に後述する第1の連結磁性部44が接続されている。
【0062】
次に、連結磁性層49について説明する。連結磁性層49は、ターン部51g、51e、51cよりもABS30から離れた位置において、リターン磁極層47と主磁極層26とを連結している。連結磁性層49は、第1の連結磁性部44と、第2の連結磁性部45と、第3の連結磁性部46とを有している。第1の連結磁性部44では、上面が後退接続部41の上面41bと段差なく平坦に形成されている。第2の連結磁性部45は、第1の連結磁性部44の上面に接続され、第3の連結磁性部46は、第2の連結磁性部45の上面に接続されている。
【0063】
そして、薄膜磁気ヘッド300では、薄膜コイル51が後述する単層構造を有していることにより、次のような磁気回路MC(図18参照)が形成されている。すなわち、薄膜磁気ヘッド300には、接続磁性層40からコイルを跨ぐことなくリターン磁極層47および連結磁性層49を通って主磁極層26に達し、さらに主磁極層26の磁極端面26aからシールド端面43aに至るまでの空隙を有する磁気回路MCが形成されている。この回路のように磁束が通る閉じた回路を磁気回路という。磁気回路MCにはコイルが巻き回されていない。
【0064】
続いて、薄膜コイル51について説明する。図4に示すように、薄膜コイル51は3つのターン部51g、51e、51cを有している。薄膜コイル51は、記録媒体に記録されるデータに応じた電流が流される。その電流によって薄膜コイル51の回りに記録磁界が発生する。薄膜コイル51はライトシールド層60の回りに平面渦巻き状に巻回され、しかも単層構造を有している。
【0065】
ここで、単層構造とは、平面渦巻き状に巻回されている部分(平面渦巻き部分)が主磁極層26よりも基板1から離れた位置にだけ形成されている構造を意味している。平面渦巻き部分が主磁極層の両側に形成されている場合、その場合のコイルは単層構造を有していない。例えば、従来のPMR600のように、薄膜コイル606に加え、主磁極層601よりも基板側にバッキングコイル609が形成されている場合、PMR600におけるコイルは単層構造を有していない。
【0066】
3つのターン部51g、51e、51cはそれぞれABS30からの距離が異なる位置に配置されている。薄膜コイル51はターン部51g、51e、51cがフォトレジスト層55を介して並んだ構造を有している。ターン部51g、51e、51cのうち、ターン部51gがABS30に最も近い位置に配置されているのでターン部51gが前側ターン部に対応している。ターン部51cが後側ターン部に対応している。
【0067】
薄膜コイル51は、接続部51aからターン部51cにつながるループ部51bと、ターン部51cからターン部51eにつながるワンループ部51dと、ターン部51eからターン部51gにつながるワンループ部51fと、ターン部51gからリード部14Aまでのハーフループ部51hを有している。
【0068】
薄膜コイル51は、接続部51aからリード部14Aまでが一本につながり、全体で3ターンループを形成している。すなわち、接続部51aから、ループ部51b、ワンループ部51d、ワンループ部51f、ハーフループ部51hを通ってリード部14Aにつながることにより、3ターンループが形成されている。
【0069】
ターン部51g、51e、51cは、横幅よりも厚さ(ABS30に沿った方向(上下方向)の高さ)の大きい縦長の構造を有している。そして、ワンループ部51f、ワンループ部51d、ループ部51bのうち、最も幅の狭い部分がそれぞれターン部51g、51e、51cとなっている。なお、本実施の形態において、横幅とはABS30と交差する方向(交差方向)の幅を意味している。
【0070】
続いて、ライトシールド層60について説明する。ライトシールド層60は、対向シールド部61と、カバーシールド部62とを有している。
【0071】
対向シールド部61はギャップ層29を挟んでABS30側から順に主磁極層26、非磁性層27、非磁性層28に対向するようにして形成されている。また、対向シールド部61は上端面が平坦になっていて、その上端面にカバーシールド部62が接続されている。
【0072】
対向シールド部61は図6に示すようなライトシールド端面61aを有している。ライトシールド端面61aはABS30内に配置されている。対向シールド部61はABS30内において前端シールド部43に対峙している。また、ライトシールド端面61aはABS30内においてシールド端面43aに接続されている。そして、図6に示すように、ライトシールド端面61aおよびシールド端面43aが磁極端面26aの全体を取り囲んでいる。しかも、ライトシールド端面61aおよびシールド端面43aが磁極端面26aの、ギャップ層29または非磁性薄膜25だけを介したごく近傍に配置されている。ライトシールド端面61aおよびシールド端面43aは、ABS30内において、ギャップ層29または非磁性薄膜25を介して磁極端面26aの周囲に配置されている。
【0073】
ライトシールド端面61aには、ギャップ層29が配置される微小スペースが形成されている。その微小スペースにギャップ層29のABS30側部分が形成されている。
【0074】
カバーシールド部62はABS30から奥行き方向に延び、薄膜コイル51を跨いで上部ヨーク層65につながる湾曲構造を有している。
【0075】
上部ヨーク層65は主磁極層26の上面26dのうちの非磁性層27,28よりもABS30から離れた後側に接続されている。上部ヨーク層65の上面は対向シールド部61の上面と段差なく形成されている。上部ヨーク層65の上面は対向シールド部61の上面とともに共通平坦面59A(図16参照)を形成している。
【0076】
さらに、薄膜磁気ヘッド300は保護絶縁層90を有している。保護絶縁層90はアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いて形成されている。保護絶縁層90はライトシールド層60を覆うように形成されている。
【0077】
(薄膜磁気ヘッドの製造方法)
次に、前述した図1、図2とともに図9〜図17を参照して、前述の構造を有する薄膜磁気ヘッド300の製造方法について説明する。
【0078】
ここで、図9〜図17は、薄膜磁気ヘッド300の各製造工程における図1に対応した断面図である。
【0079】
まず、アルミニウムオキサイド・チタニウムカーバイド(Al2O3・TiC)等のセラミック材料からなる基板1を準備する。そして、図9に示すように、その基板1の上に、アルミナ(Al2O3)等の絶縁材料からなる絶縁層2と、磁性材料からなる下部シールド層3を順に形成する。絶縁層2を形成するときに加熱部8が形成される。
【0080】
次に、MR素子5をシールドするように絶縁材料を用いてシールドギャップ膜4を形成する。このとき、MR素子5に接続される図示しないリードを形成し、MR素子5およびリードをシールドギャップ膜4で覆う。それから、磁性材料と絶縁材料とを用いてシールドギャップ膜4の上に上部シールド層6(第1のシールド部6a、絶縁部6b、第2のシールド部6c)を形成する。
【0081】
次に、上部シールド層6の上にアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いて、上部シールド層6と、後に形成される記録ヘッドとを分離するための絶縁層7を形成する。絶縁層7を形成するときに感熱部9が形成される。これまでの工程で記録ヘッドを形成するための積層体が得られる。
【0082】
その後、リターン磁極層形成工程を実行する。この工程では、まず、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いてリターン磁極層47を形成するための磁性層(厚さは0.6μm程度)を形成する。この磁性層は、ABS30から離れた位置に形成する。
【0083】
続いて、積層体表面に絶縁層を形成し、化学機械研摩(以下「CMP」という)によって積層体表面の平坦化を行う。すると、前端絶縁層17とリターン磁極層47が形成される。こうして、リターン磁極層47がABS30から0.3μm〜1μm(本実施の形態では、0.5μm程度)離れた位置に配置されるように形成される。その後退したリターン磁極層47のABS30側端部と、ABS30との間に前端絶縁層17が形成される。
【0084】
次に、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)からなる絶縁層18(膜厚は0.1μm〜0.3μm程度)を形成する。それから、積層体の表面全体にフォトレジストを塗布した上で、所定のフォトマスクを用いたパターニングを行い、レジストパターン(図示せず)を形成する。このレジストパターンをマスクに用いて例えばRIE等のエッチングを行い、絶縁層18を選択的に開口する。
【0085】
それから、磁性層形成工程を実行する。磁性層形成工程は、接続磁性層40と連結磁性層49とを形成する工程である。本実施の形態では、この磁性層形成工程の実行中にコイルを形成していない。こうすることで、前述した磁気回路MCが形成されるように磁性層形成工程を実行することができる。
【0086】
磁性層形成工程では、後退接続部41および第1の連結磁性部44の他、中間接続部42および前端シールド部43と、第2の連結磁性部45および第3の連結磁性部46を次のようにして形成する。詳しくは後述するが、磁性層形成工程では、接続磁性層40については後退接続部41、中間接続部42および前端シールド部43を、後退接続部41、中間接続部42、前端シールド部43の順にそれぞれ形成する。また、接続磁性層40は、薄膜コイル51よりもABS30側に配置するように形成する。さらに、連結磁性層49については、第1の連結磁性部44、第2の連結磁性部45および第3の連結磁性部46を第1の連結磁性部44、第2の連結磁性部45、第3の連結磁性部46の順にそれぞれ形成する。
【0087】
まず、フレームめっき法により、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて、後退接続部41と、第1の連結磁性部44を厚さ1〜1.5μm程度で形成する。ただし、後退接続部41は第1の連結磁性部44よりもABS30側に配置される。
【0088】
次に、図10に示すように、アルミナ(Al2O3)からなる絶縁層19(膜厚は2μm〜3.5μm程度)をアトミックレイヤー法によるCVD(Chemical Vapor Deposition)法で積層体の表面全体に形成する。絶縁層19は、後退接続部41、第1の連結磁性部44を被覆するように形成される。
【0089】
続いて、後退接続部41と第1の連結磁性部44が現われるまで積層体の表面をCMPにより研摩して積層体表面の平坦化を行う。すると、図11に示すように、後退接続部41と第1の連結磁性部44が形成される。
【0090】
また、平坦化が行われたことによって、後退接続部41よりもABS30側に対向絶縁層19が形成される。さらに、同じ平坦化によって、後退接続部41の上面41b、対向絶縁層19の上面および第1の連結磁性部44の上面が段差なく平坦に形成される。
【0091】
続いて、図12に示すように、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて、例えばフレームめっき法によって、後退接続部41の上面41bと、第1の連結磁性部44の上面にそれぞれ中間接続部42、第2の連結磁性部45を形成する。このとき、中間接続部42はABS30から後端部41rに達する奥行きを備えるようにして形成する(後端部41rについては図5参照)。
【0092】
それから、アルミナ(Al2O3)からなる絶縁層21をアトミックレイヤー法によるCVD法で積層体の表面全体に形成する。その後、中間接続部42と第2の連結磁性部45が出現するまで積層体の表面をCMPにより研摩して積層体表面の平坦化を行う。すると、図13に示すように、中間接続部42と第2の連結磁性部45が形成される。
【0093】
それから、図14に示すように、アルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いてベース絶縁層24を形成する。その後、ベース絶縁層24を選択的に開口する。続いて、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて、フレームめっき法によって、開口した部分に前端シールド部43となるべき磁性層と、第3の連結磁性部46とをそれぞれ厚さ0.5μm〜1.0μm程度で形成する。第3の連結磁性部46が形成されることによって、連結磁性層49が形成される。
【0094】
そして、積層体の表面にフォトレジストを塗布した上で、所定のフォトマスクを用いたパターニングを行い、積層体の表面にレジストパターンを形成する。このレジストパターンは、前端シールド部43となるべき磁性層の表面を、V溝部43cおよび切欠部43dに応じた形状に露出させる形状に形成する。そのレジストパターンをマスクにして反応性イオンエッチング(以下「RIE」という)を行い、積層体の表面のレジストパターンで被覆されない部分を除去する。すると、前端シールド部43となるべき磁性層にV溝部43cおよび切欠部43dが形成され、これによって、前端シールド部43が形成される。前端シールド部43が形成されることによって、接続磁性層40が形成される。前端シールド部43がシールド端面43aを有するので、シールド端面43aを有するように接続磁性層40が形成される。
【0095】
それから、図15に示すように、ベース絶縁層24および前端シールド部43を被覆するようにして非磁性薄膜25を形成する。非磁性薄膜25はRu,NiCr,NiCu等の非磁性金属材料や、アルミナ等の絶縁材料を用いてスパッタリングによって形成する。非磁性薄膜25は前端シールド部43のV溝部43cにも形成される。
【0096】
続いて、主磁極層形成工程を実行する。この工程では、接続磁性層40および連結磁性層49上に、次のようにして主磁極層26を形成する。
【0097】
まず、磁性層75を0.4〜0.8μm程度の厚さで積層体の表面全体にスパッタリングによって形成する。磁性層75はCoNiFe、CoFe、NiFeなどの強磁性体からなる磁性材を用いて形成する。磁性層75によって後に主磁極層26が形成される。そして、積層体の表面全体をCMPで研磨して、積層体表面の平坦化を行う。
【0098】
その後、スパッタリングにより積層体の表面全体に、Ru,NiCr,NiCu等の金属材料を用いて非磁性層77(厚さは約0.04〜0.1μm程度)を形成する。非磁性層77は後に一部がエッチングされることによって、前述の非磁性層27となる。さらに、積層体の表面全体に、アルミナ(Al2O3)、シリコン酸化物等の無機絶縁材料を用いて非磁性層78(厚さは約0.1〜0.3μm程度)を形成する。非磁性層78は、後に一部がエッチングされることによって、前述の非磁性層28となる。
【0099】
続いて、積層体の表面全体にフォトレジストを塗布した上で、所定のフォトマスクを用いたパターニングを行い、レジストパターン81をABS30の近傍に形成する。
【0100】
次に、レジストパターン81をマスクに用いて例えばRIE等のエッチングを行い、非磁性層78の一部を除去する。この場合のエッチングは、エッチングによって形成された溝の底部が非磁性層77の上面に到達した時点で停止するようにして行われる。そのため、非磁性層78には、非磁性層77と比べて非磁性層78をエッチングする際のエッチングレートの小さい材料を用いる。
【0101】
それからレジストパターン81を除去する。続いて、残された非磁性層78をマスクに用いて例えばイオンビームエッチング(IBEともいう)によって、非磁性層77の一部をエッチングして除去する。さらに、残された非磁性層77をマスクに用いて例えばIBEにより、磁性層75の一部をエッチングして除去する。この工程を経ることによって、磁性層75のABS側の上面が前述した2段傾斜構造で形成される。
【0102】
続いて、図16に示すように、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料や、Ru,NiCu、Ta等の非磁性導電材料を用いてスパッタ法またはCVDによってギャップ層29(厚さは約250Å〜350Å程度)を形成する。
【0103】
さらに、例えばスパッタ法により図示しないストッパ膜を形成し、その上に非磁性膜を形成する。その上で、積層体の表面全体に図示しないフォトレジストを塗布する。そして、所定のフォトマスクを用いたパターニングを行い、図示しないレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクに用いて、例えばRIE等のエッチングを行い、非磁性膜をエッチングする。このエッチングはエッチングによって形成された溝の底部がストッパ膜の上面に到達した時点で停止するようにして行われる。
【0104】
それから、図示しないレジストパターンを除去した後、残された非磁性膜をマスクに用いてRIE等のエッチングを行い、ギャップ層29、非磁性層77および非磁性層78の一部を除去する。ここで、ギャップ層29、非磁性層77および非磁性層78の一部を除去することによって、上部ヨーク層65を形成するためのスペースを確保している。
【0105】
続いて、ライトシールド層形成工程を実行する。この工程では、ライトシールド層60を次のようにして形成する。まず、対向シールド部61を形成する。次に、薄膜コイル51を形成した後でカバーシールド部62を形成することによってライトシールド層60を形成する。
【0106】
そして、対向シールド部61を形成するときは、積層体の表面全体に磁性層を形成する。この磁性層は、めっき法により、CoNiFe、CoFe、CoFeN,NiFeなどの強磁性体からなる磁性材を用いて、0.5〜1.2μm程度の厚さで形成する。この磁性層によって、後に対向シールド部61および上部ヨーク層65が形成される。
【0107】
次に、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いて絶縁層(厚さは1〜3μm程度)を形成する。さらに、磁性層の表面が露出するまで積層体の表面全体をCMPにより研磨して積層体表面の平坦化を行う。すると、対向シールド部61、上部ヨーク層65および絶縁層31が形成される。このとき、対向シールド部61の厚さが0.5〜1.0μm程度になるようにして積層体の表面を研磨する。また、対向シールド部61は、ライトシールド端面61aを有するようにして形成される。
【0108】
次に、図17に示すように、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いて絶縁層32を形成する。続いて、絶縁層32のうち、対向シールド部61の上面に応じた位置と、上部ヨーク層65の上面に応じた位置とにそれぞれ開口を形成する。
【0109】
その後、薄膜コイル形成工程を実行する。この工程では、単層構造を有するようにして、薄膜コイル51を形成する。薄膜コイル形成工程を実行する前、すでに主磁極層形成工程が実行されている。しかも、これまでの工程でコイルは形成されていない。したがって、絶縁層32上に薄膜コイル51を例えばフレームめっき法により形成することによって、単層構造を有するようにして薄膜コイル51を形成することができる。続いて、薄膜コイル51を構成するターン部51g、51e,51c等の隙間を埋めるようにしてフォトレジスト層55を形成する。
【0110】
その後、フォトレジスト層55のABS30側部分を跨ぐようにしてカバーシールド部62を形成する。それから、アルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いて積層体の全体をカバーするようにして保護絶縁層90を形成すると、薄膜磁気ヘッド300が完成する。
【0111】
(薄膜磁気ヘッド300の作用効果)
以上のように、薄膜磁気ヘッド300は中間接続部42を有している。中間接続部42は、ABS30から、後退接続部41の後端部41rに到達する横幅を有している。そのため、接続磁性層40が異距離構造を有しているにもかかわらず、中間接続部42は、前端シールド部43と後退接続部41の双方に確実に接続されている。また、接続磁性層40、リターン磁極層47、連結磁性層49および主磁極層26によって、コイルが巻き回されていない磁気回路MCが形成されている。なお、異距離構造とは、対向シールド部61がABS30内に配置され、かつ連結シールド部63がABS30から後退していることによって対向シールド部61、連結シールド部63それぞれのABS30からの距離が異なっている構造を意味している。
【0112】
ここで、薄膜コイル51に記録電流が流された場合を考える。この場合、記録電流に応じた磁界(記録磁界)が主磁極層26に形成される。この記録磁界から主磁極層26の各点における磁束密度が求められ、その磁束密度を主磁極層26の断面全体について積分することによって主磁極層26を通る磁束が求められる。
【0113】
一般に、電流が形成する磁界は右ねじの法則にしたがった向きに形成される。そのため、図18に示すように、薄膜コイル51を流れる記録電流の紙面の表側から裏側に向かう方向の成分(正方向成分ともいう)は、主磁極層26から記録媒体に向かう方向の記録磁界を形成する。そして、その記録磁界に応じた、磁極端面26aから記録媒体の垂直な方向に進む磁束WHにより記録媒体の垂直記録層を磁化することによって、記録媒体にデータが記録される。
【0114】
一方、薄膜コイル51はライトシールド層60の回りに平面渦巻き状に巻き回されている。その薄膜コイル51を流れる記録電流には、正方向成分とは異なる方向の成分も含まれている。したがって、主磁極層26の磁極端面26aから外側に進む磁束には、磁束WHとは異なる方向の磁束も含まれている。このような磁束のうち、ライトシールド層60に近づく方向に進む磁束H1は、対向シールド部61からカバーシールド部62および上部ヨーク層65を通り主磁極層26に還流する。ライトシールド層60は強磁性体からなる磁性材を用いて形成されているため、透磁率が高くて磁束が格段に通りやすい。そのようなライトシールド層60の対向シールド部61が磁極端面26aの近傍に配置されているため、磁束H1は対向シールド部61を通る。
【0115】
しかしながら、主磁極層26には連結磁性層49が接続されているため、磁束H1が主磁極層26に還流すると、磁束H1の一部が主磁極層26から連結磁性層49を通ってリターン磁極層47に流れる。この磁束H1はリターン磁極層47をABS30に向かう方向に進む。
【0116】
ところで、従来のPMR600では、リターン磁極層に相当するシールド磁極層608がABSに露出していた。そのため、ABS内のシールド磁極層608から磁束がABS内に放出されやすかった。
【0117】
しかしながら、薄膜磁気ヘッド300では、リターン磁極層47がABS30から離れた位置に形成され、そのABS30側に前端絶縁層17が形成されているため、リターン磁極層47から磁束が放出され難くなっている。この点でも、WATEの改善効果は高められる。この点に加え、薄膜磁気ヘッド300では、接続磁性層40が形成されているため、WATEの高い改善効果が得られる。薄膜磁気ヘッド300はバッキングコイルを備えることなくWATEの改善効果が得られるが、その理由について述べれば次のとおりである。
【0118】
図18に示すように、主磁極層26から放出される磁束のうちの磁束WHと異なる方向の磁束は、前述した磁束H1と、接続磁性層40に近づく方向に進む磁束H2の2つに分流される。
【0119】
そして、薄膜磁気ヘッド300では、接続磁性層40によりライトシールド層60とリターン磁極層47とをつないだことによって、磁束H2が接続磁性層40を通ってリターン磁極層47に戻りやすくなっている。そのうえ、前述した磁気回路MCが主磁極層26よりも基板1側に形成されている。磁気回路MCを構成する接続磁性層40やリターン磁極層47は、強磁性体からなる磁性材を用いて形成されている。そのため、磁束H1がライトシールド層60を通るのと同様、磁束H2が磁気回路MCを接続磁性層40からリターン磁極層47に向かい、そこから連結磁性層49を通って主磁極層26に向かう。磁束H2は、リターン磁極層47をABS30から離れる方向に向かって通るため、リターン磁極層47をとおる磁束H1と逆流することになる。
【0120】
磁束H2は、リターン磁極層47の内部では磁束H1の磁気的な作用を弱めるように作用するため、バッキングコイルによる逆流磁束の代わりになる。そのため、薄膜磁気ヘッド300では、バッキングコイルがなくても、リターン磁極層47からABS30に向かって余分な磁束が放出され難くなる。こうして、薄膜磁気ヘッド300では、バッキングコイルがなくても、従来技術より高いWATEの改善効果が得られるようになっている。
【0121】
薄膜コイル51は前述した単層構造を有する平面渦巻き状に形成され、磁気回路MCはコイルが巻き回されていない。そうすると、接続磁性層40から主磁極層26に向かって磁気回路MCを通る磁束は記録磁界に応じた磁束と同様に薄膜コイル51を流れる記録電流によってもたらされることになる。そのため、バッキングコイルに起因する磁束とは異なり、磁束H2によって記録媒体に影響が及ぶおそれは少ないと考えられる。
【0122】
さらに、接続磁性層40は前端シールド部43を有し、その前端シールド部43はシールド端面43aを有している。シールド端面43aは、ABS30内においてライトシールド端面61aに接続されている。ライトシールド端面61aおよびシールド端面43aがギャップ層29または非磁性薄膜25を介して磁極端面26aを取り囲み、かつ磁極端面26aの近傍に配置されている。そのため、磁極端面26aから磁束が放出されると、磁束WHと異なる方向の磁束が記録媒体に対して影響を及ぼす前に、ライトシールド端面61aまたはシールド端面43aを通りやすく、磁束WHと異なる方向の磁束がライトシールド端面61aまたはシールド端面43aによって取り込まれやすくなっている。したがって、薄膜磁気ヘッド300では、磁束WHと異なる方向の磁束が記録媒体に達することを効果的に阻止できるようになっている。
【0123】
また、ライトシールド端面61aおよびシールド端面43aがギャップ層29または非磁性薄膜25を介して磁極端面26aを取り囲んでおり、主磁極層26と、ライトシールド60および接続磁性層40との間には、ギャップ層29または非磁性薄膜25が配置されている。そのため、ライトシールド60や接続磁性層40に主磁極層26から磁束が漏れることはない。したがって、主磁極層26の磁極端面26aから放出される磁束を強くすることができ、薄膜磁気ヘッド300の記録特性を高めることもできる。
【0124】
ところで、ABS30に配置される前端シールド部43と、ABS30から離れたリターン磁極層47とを確実に接続するためには、後退接続部41および中間接続部42の代わりに次のような磁性層を含む接続磁性層40を形成してもよい。この磁性層は、ABS30内に配置される端面を有し、しかも、前端シールド部43に接しつつ、後端部41rに接し得る大きさを有している。
【0125】
しかし、このような磁性層を備えた接続磁性層40を形成した場合、その磁性層がABS30に大きく露出してしまう。かかる磁性層もCoNiFe、CoFe、CoFeN、NiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて形成される。磁性層がABS30に大きく露出していると、薄膜コイル51の発熱の影響を磁性層がより強く受けてしまう。
【0126】
フライングハイトは極めて微小なので、接続磁性層40の限られた微小部分が突出しただけでも、薄膜磁気ヘッド300と記録媒体との衝突が発生してしまう可能性がある。磁性層がABS30に大きく露出しているということは、突出の対象となりえるそのような微小部分がABS30内にたくさん存在しているということを意味し、それだけ、記録媒体に衝突し得る突出の態様が多く、薄膜磁気ヘッド300と記録媒体との衝突が発生しやすいということを意味している。
【0127】
そこで、薄膜磁気ヘッド300では、後退接続部41と中間接続部42を有する接続磁性層40を形成している。ABS30から離れた後退接続部41と、ABS30に配置される中間接続部42を形成し、両者が接続されるようにしている。こうして、ABS30に露出する部分が前端シールド部43のほか、中間接続部42だけになるようにしている。
【0128】
主磁極層26から放出される磁束のうち、磁束WHと異なる方向の磁束が磁束H1と磁束H2の2つに分流した後、記録媒体に影響が及ぶ前にそれぞれを取り込むには、薄膜コイル51よりもABS30側の磁性層によってライトシールド層60とリターン磁極層47とを接続することが望ましい。しかし、この磁性層は薄膜コイル51よりもABS30側に配置されるため、ABS30に露出する大きさが大きいと、薄膜コイル51の発熱の影響を受けやすくなる。
【0129】
そこで、薄膜磁気ヘッド300では、接続磁性層40を形成している。接続磁性層40は後退接続部41と中間接続部42を有している。そのため、前述の磁性層を形成した場合よりもABS30に露出する磁性層の大きさが小さくなる。したがって、薄膜コイル51の発熱に伴う磁性層突出のおそれが少なくなる。よって、薄膜磁気ヘッド300は、記録媒体と衝突する事態が抑制されている。
【0130】
よって、薄膜磁気ヘッド300では、記録ヘッドの突出に伴う破損のおそれが極めて少なくなるから、記録メディアに接近させることができる。
【0131】
したがって、薄膜磁気ヘッド300は、記録ヘッドおよび再生ヘッドの解像度(resolution)を高め、信号対雑音比を向上させることができる。また、薄膜磁気ヘッド300は、記録密度を高めることができる。
【0132】
(変形例1)
次に、図19を参照して薄膜磁気ヘッド301について説明する。薄膜磁気ヘッド301は、薄膜磁気ヘッド300と比べて、接続磁性層40の代わりに接続磁性層140を有する点で相違している。
【0133】
接続磁性層140は接続磁性層40と比べて、後退接続部41および中間接続部42の代わりに対向接続部141および中間接続部142を有している点で相違している。
【0134】
対向接続部141は、ABS30内に配置される端面を有し、その端面の反対側がリターン磁極層47のABS30側の端部に接続されている。また、対向接続部141は、中間接続部142に接続される上面を有し、その上面が第1の連結磁性部44の上面と段差なく平坦に形成されている。中間接続部142は、対向接続部141と前端シールド部43とに接続されている。また、中間接続部142は、中間接続部42よりも幅が狭くなっている。
【0135】
このような薄膜磁気ヘッド301では、接続磁性層140が前端シールド部43を有しているからライトシールド層60に接続されている。また、接続磁性層140はリターン磁極層47にも接続されている。そのため、薄膜磁気ヘッド300と同様、主磁極層26から放出される磁束のうち、磁束WHと異なる方向の磁束が磁束H1と磁束H2の2つに分流した後、ライトシールド層60と接続磁性層140とによって取り込まれる。磁束H2は、リターン磁極層47の内部では磁束H1の磁気的な作用を弱めるように作用するため、バッキングコイルによる逆流磁束の代わりになる。そのため、薄膜磁気ヘッド301も薄膜磁気ヘッド300と同様にバッキングコイルがなくても、リターン磁極層47からABS30に向かって余分な磁束が放出され難くなり、従来技術よりも高いWATEの改善効果が得られる。
【0136】
(変形例2)
次に、図20を参照して薄膜磁気ヘッド302について説明する。この薄膜磁気ヘッド302は、前述した薄膜磁気ヘッド300と比べて、連結磁性層49を有しない点で相違している。
【0137】
薄膜磁気ヘッド302も薄膜磁気ヘッド300と同様に、リターン磁極層47がABS30から離れた位置に形成され、リターン磁極層47のABS30側に前端絶縁層17が形成されているので、磁束がリターン磁極層47からABS30に放出され難くなっている。
【0138】
また、薄膜磁気ヘッド302は、接続磁性層40を有しているから、薄膜磁気ヘッド302でも、薄膜磁気ヘッド300と同様、主磁極層26から放出される磁束のうち、磁束WHと異なる方向の磁束が磁束H1と磁束H2の2つに分流した後、ライトシールド層60と接続磁性層40とによって取り込まれる。
【0139】
そのため、薄膜磁気ヘッド302も、薄膜磁気ヘッド300と同様、リターン磁極層47からABS30に向かって余分な磁束が放出され難くなるため、バッキングコイルがなくても、従来技術より高いWATEの改善効果が得られる。
【0140】
(実施例)
前述した薄膜磁気ヘッド300,301,302それぞれにおけるWATEの改善効果に関する実施例について図22〜図23を参照して説明する。本件発明者は薄膜磁気ヘッド300,301,302それぞれについて、WATEの改善効果を確認するための実験を行った。また、比較のため、図21に示す薄膜磁気ヘッド400についても、薄膜磁気ヘッド300,301,302と同様の実験を行った。薄膜磁気ヘッド400は図21に示すように、薄膜磁気ヘッド300と比較して、リターン磁極層47および連結磁性層49を有しない点で相違している。
【0141】
図22、図23は、記録対象となるセクタからのずれ(Write Offset)ごとの符号誤り率(Bit error rate)の分布を示したグラフである。符号誤り率は、薄膜磁気ヘッド300,301,302それぞれによって記録したデータをそれぞれの再生ヘッドで再生したときに誤って再生される符号の割合を示している。
【0142】
図22のうち(a)、(b)はそれぞれ薄膜磁気ヘッド300,302における符号誤り率の分布を示している。図23のうち(a)、(b)はそれぞれ薄膜磁気ヘッド301、400における符号誤り率の分布を示している。また、各図において上段はWrite Offsetの0〜2μmまでの0.5μm単位の分布を示している。下段はWrite
Offsetの0〜0.5μmまでの0.1μm単位の分布を示している。
【0143】
図22、図23それぞれの下段に示すように、薄膜磁気ヘッド300,301,302,400は、いずれもWrite Offsetが0〜0.5μmまでの間では、符号誤り率の分布がほぼ同様になっている。しかし、図23(b)の上段に示すように薄膜磁気ヘッド400では、Write Offsetが0.5μmを越えて1μm、2μm程度になると、符号誤り率の発生頻度が多くなる。
【0144】
これに対して、図22(a)、(b)の上段および図23(a)の上段に示すように、薄膜磁気ヘッド300,301,302では、Write Offsetが0.5μmを越えて1μm、2μm程度になっても、符号誤り率の発生頻度は低いままで多くなってはいない。この結果から、薄膜磁気ヘッド300,301,302のような構造にすることによって、従来技術よりも高いWATEの改善効果が得られるという点が明らかになる。
【0145】
(ヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置の実施の形態)
次に、ヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置の実施の形態について、図24〜図25を参照して説明する。
【0146】
図24は、上述の薄膜磁気ヘッド300を備えたハードディスク装置201を示す斜視図である。また、図25はHGA210の裏面側を示す斜視図である。図24に示すように、ハードディスク装置201は、高速回転するハードディスク(磁気記録媒体)202と、ヘッドジンバルアセンブリ(HGA:Head Gimbals Assembly)210とを有している。ハードディスク装置201は、HGA210を作動させて、ハードディスク202の記録面に、データの記録および再生を行う装置である。ハードディスク202は、複数枚(図では4枚)のディスクを有している。各ディスクは、それぞれの記録面が薄膜磁気ヘッド300に対向している。
【0147】
ハードディスク装置201は、アセンブリキャリッジ装置203によって、図25に示すスライダ208をトラック上に位置決めする。このスライダ208に薄膜磁気ヘッド300が形成されている。また、ハードディスク装置201は、複数の駆動アーム209を有している。各駆動アームは、ボイスコイルモータ(VCM)205によってピボットベアリング軸206を中心に回動し、ピボットベアリング軸206に沿った方向にスタックされている。そして、各駆動アームの先端にHGA210が取りつけられている。
【0148】
さらに、ハードディスク装置201は、記録再生を制御する制御回路(control circuit)204を有している。
【0149】
次に、HGA210について図25を参照して説明する。HGA210は、サスペンション220の先端部分にスライダ208が固着されている。また、HGA210では、配線部材224の一端部がスライダ208の端子電極に電気的に接続されている。
【0150】
そして、サスペンション220は、ロードビーム222と、ロードビーム222の基部に設けられているベースプレート221と、ロードビーム222上の先端側からベースプレート221の手前側にかけて固着して支持され、弾性を備えたフレクシャ223と、配線部材224とを有している。配線部材224はリード導体およびその両端に電気的に接続された接続パッドを有している。
【0151】
ハードディスク装置201は、HGA210を回転させると、スライダ208がハードディスク202の半径方向、すなわち、トラックラインを横切る方向に移動する。
【0152】
このようなHGA210およびハードディスク装置201は薄膜磁気ヘッド300を有しているから、バッキングコイルを有していなくても従来技術よりも高いWATEの改善効果が得られる。
【0153】
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明を適用することにより、バッキングコイルを備えることなくWATEの改善効果が高められるようにすることができる。本発明は垂直磁気記録方式で磁気記録動作を行う薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0155】
1…基板、25…非磁性薄膜、26…主磁極層、26a…磁極端面、26d…上面、29…ギャップ層、30…ABS、40…接続磁性層、41…後退接続部、41b…上面、41r…後端部、42…中間接続部、42a…中間シールド端面、43…前端シールド部、43a…シールド端面、43c…V溝部、47…リターン磁極層、49…連結磁性層、51…薄膜コイル、60…ライトシールド層、61…対向シールド部、61a…ライトシールド端面、62…カバーシールド部、65…上部ヨーク層、90…保護絶縁層、MC…磁気回路、201…ハードディスク装置、202…ハードディスク、210…HGA、300,301,302…薄膜磁気ヘッド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、前記主磁極層と前記ライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドであって、
前記ライトシールド層の前記主磁極層を挟んだ反対側において前記媒体対向面から離れた位置に形成されているリターン磁極層と、
前記薄膜コイルよりも前記媒体対向面側において前記リターン磁極層を前記ライトシールド層に接続するようにして、磁性材を用いて形成された接続磁性層とを有し、
前記薄膜コイルは、前記ライトシールド層の回りに平面渦巻き状に巻回され、かつ該平面渦巻き状に巻回された部分が前記主磁極層よりも前記基板から離れた位置にだけ形成されている単層構造を有する薄膜磁気ヘッド。
【請求項2】
前記接続磁性層は、前記媒体対向面内において前記ライトシールド端面に接続されたシールド端面を有する前端シールド部を有し、
前記ライトシールド端面および前記シールド端面が前記磁極端面の全体を取り囲み、かつ該磁極端面の近傍に配置されている請求項1記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項3】
前記媒体対向面から離れた位置において前記リターン磁極層と前記主磁極層とを連結する連結磁性層を更に有し、
前記接続磁性層から、前記リターン磁極層および前記連結磁性層を通って前記主磁極層に達し、コイルが巻き回されていない磁気回路が形成されている請求項1または2記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項4】
前記接続磁性層は、前記媒体対向面から離れた位置に配置され、かつ前記リターン磁極層の前記主磁極層側の上面に接続されている後退接続部と、
前記前端シールド部と前記後退接続部とを接続する中間接続部とを有する請求項2または3記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項5】
前記中間接続部は、前記媒体対向面内において前記シールド端面に接続されている中間シールド端面を有し、かつ前記後退接続部の前記主磁極層側の上面に接続されている請求項4記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項6】
前記中間接続部は、前記媒体対向面から前記後退接続部の前記媒体対向面から最も離れた後端部に達する奥行きを備えている請求項4記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項7】
前記後退接続部の前記媒体対向面側に配置されている対向絶縁層を更に有する請求項4〜6のいずれか一項記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項8】
前記前端シールド部は、前記媒体対向面に沿った方向の断面がV字状に形成されたV溝部を有し、
該V溝部の内側表面上に形成された非磁性薄膜を更に有し、該非磁性薄膜上に前記主磁極層が形成されている請求項2〜7のいずれか一項記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項9】
記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、前記主磁極層と前記ライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、
前記媒体対向面から離れた位置に配置されるようにリターン磁極層を形成するリターン磁極層形成工程と、
前記リターン磁極層にそれぞれ接続される接続磁性層および連結磁性層を、該接続磁性層が該連結磁性層よりも前記媒体対向面側に配置され、かつ前記接続磁性層が前記媒体対向面内に配置されるシールド端面を有するように形成する磁性層形成工程と、
前記接続磁性層および前記連結磁性層上に前記主磁極層を形成する主磁極層形成工程と、
前記ライトシールド層の回りに平面渦巻き状に巻回され、かつ該平面渦巻き状に巻回された部分が前記主磁極層よりも前記基板から離れた位置にだけ配置されている単層構造を有するようにして前記薄膜コイルを形成する薄膜コイル形成工程と、
前記媒体対向面内において前記シールド端面に接続されるライトシールド端面を有するように、前記ライトシールド層を形成するライトシールド層形成工程とを有する薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記接続磁性層が前記薄膜コイルよりも前記媒体対向面側に配置されるようにして前記磁性層形成工程を実行する請求項9記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項11】
前記磁性層形成工程は、前記媒体対向面から離れた位置に配置され、かつ前記リターン磁極層の前記主磁極層側の上面に接続される後退接続部と、前記シールド端面を有する前端シールド部と、該前端シールド部と前記後退接続部とを接続する中間接続部とを、前記後退接続部、前記中間接続部、前記前端シールド部の順にそれぞれ形成することによって前記接続磁性層を形成する請求項9または10記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記接続磁性層から、コイルを跨ぐことなく前記リターン磁極層および前記連結磁性層を通って前記主磁極層に達する磁気回路が形成されるようにして前記磁性層形成工程を実行する請求項9〜11のいずれか一項記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項13】
前記磁性層形成工程において、前記媒体対向面から、前記媒体対向面から最も離れた後端部に達する奥行きを備えるようにして、前記中間接続部を形成する請求項11または12記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項14】
基台上に形成された薄膜磁気ヘッドと、前記基台を固定するジンバルとを備え、
前記薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、前記主磁極層と前記ライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有し、
前記ライトシールド層の前記主磁極層を挟んだ反対側において前記媒体対向面から離れた位置に形成されているリターン磁極層と、
前記薄膜コイルよりも前記媒体対向面側において前記リターン磁極層を前記ライトシールド層に接続するようにして、磁性材を用いて形成された接続磁性層とを有し、
前記薄膜コイルは、前記ライトシールド層の回りに平面渦巻き状に巻回され、かつ該平面渦巻き状に巻回された部分が前記主磁極層よりも前記基板から離れた位置にだけ配置されている単層構造を有するヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項15】
薄膜磁気ヘッドを有するヘッドジンバルアセンブリと、前記薄膜磁気ヘッドに対向する記録媒体とを備え、
前記薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、前記主磁極層と前記ライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有し、
前記ライトシールド層の前記主磁極層を挟んだ反対側において前記媒体対向面から離れた位置に形成されているリターン磁極層と、
前記薄膜コイルよりも前記媒体対向面側において前記リターン磁極層を前記ライトシールド層に接続するようにして、磁性材を用いて形成された接続磁性層とを有し、
前記薄膜コイルは、前記ライトシールド層の回りに平面渦巻き状に巻回され、かつ該平面渦巻き状に巻回された部分が前記主磁極層よりも前記基板から離れた位置にだけ配置されている単層構造を有するハードディスク装置。
【請求項1】
記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、前記主磁極層と前記ライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドであって、
前記ライトシールド層の前記主磁極層を挟んだ反対側において前記媒体対向面から離れた位置に形成されているリターン磁極層と、
前記薄膜コイルよりも前記媒体対向面側において前記リターン磁極層を前記ライトシールド層に接続するようにして、磁性材を用いて形成された接続磁性層とを有し、
前記薄膜コイルは、前記ライトシールド層の回りに平面渦巻き状に巻回され、かつ該平面渦巻き状に巻回された部分が前記主磁極層よりも前記基板から離れた位置にだけ形成されている単層構造を有する薄膜磁気ヘッド。
【請求項2】
前記接続磁性層は、前記媒体対向面内において前記ライトシールド端面に接続されたシールド端面を有する前端シールド部を有し、
前記ライトシールド端面および前記シールド端面が前記磁極端面の全体を取り囲み、かつ該磁極端面の近傍に配置されている請求項1記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項3】
前記媒体対向面から離れた位置において前記リターン磁極層と前記主磁極層とを連結する連結磁性層を更に有し、
前記接続磁性層から、前記リターン磁極層および前記連結磁性層を通って前記主磁極層に達し、コイルが巻き回されていない磁気回路が形成されている請求項1または2記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項4】
前記接続磁性層は、前記媒体対向面から離れた位置に配置され、かつ前記リターン磁極層の前記主磁極層側の上面に接続されている後退接続部と、
前記前端シールド部と前記後退接続部とを接続する中間接続部とを有する請求項2または3記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項5】
前記中間接続部は、前記媒体対向面内において前記シールド端面に接続されている中間シールド端面を有し、かつ前記後退接続部の前記主磁極層側の上面に接続されている請求項4記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項6】
前記中間接続部は、前記媒体対向面から前記後退接続部の前記媒体対向面から最も離れた後端部に達する奥行きを備えている請求項4記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項7】
前記後退接続部の前記媒体対向面側に配置されている対向絶縁層を更に有する請求項4〜6のいずれか一項記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項8】
前記前端シールド部は、前記媒体対向面に沿った方向の断面がV字状に形成されたV溝部を有し、
該V溝部の内側表面上に形成された非磁性薄膜を更に有し、該非磁性薄膜上に前記主磁極層が形成されている請求項2〜7のいずれか一項記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項9】
記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、前記主磁極層と前記ライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、
前記媒体対向面から離れた位置に配置されるようにリターン磁極層を形成するリターン磁極層形成工程と、
前記リターン磁極層にそれぞれ接続される接続磁性層および連結磁性層を、該接続磁性層が該連結磁性層よりも前記媒体対向面側に配置され、かつ前記接続磁性層が前記媒体対向面内に配置されるシールド端面を有するように形成する磁性層形成工程と、
前記接続磁性層および前記連結磁性層上に前記主磁極層を形成する主磁極層形成工程と、
前記ライトシールド層の回りに平面渦巻き状に巻回され、かつ該平面渦巻き状に巻回された部分が前記主磁極層よりも前記基板から離れた位置にだけ配置されている単層構造を有するようにして前記薄膜コイルを形成する薄膜コイル形成工程と、
前記媒体対向面内において前記シールド端面に接続されるライトシールド端面を有するように、前記ライトシールド層を形成するライトシールド層形成工程とを有する薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記接続磁性層が前記薄膜コイルよりも前記媒体対向面側に配置されるようにして前記磁性層形成工程を実行する請求項9記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項11】
前記磁性層形成工程は、前記媒体対向面から離れた位置に配置され、かつ前記リターン磁極層の前記主磁極層側の上面に接続される後退接続部と、前記シールド端面を有する前端シールド部と、該前端シールド部と前記後退接続部とを接続する中間接続部とを、前記後退接続部、前記中間接続部、前記前端シールド部の順にそれぞれ形成することによって前記接続磁性層を形成する請求項9または10記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記接続磁性層から、コイルを跨ぐことなく前記リターン磁極層および前記連結磁性層を通って前記主磁極層に達する磁気回路が形成されるようにして前記磁性層形成工程を実行する請求項9〜11のいずれか一項記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項13】
前記磁性層形成工程において、前記媒体対向面から、前記媒体対向面から最も離れた後端部に達する奥行きを備えるようにして、前記中間接続部を形成する請求項11または12記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項14】
基台上に形成された薄膜磁気ヘッドと、前記基台を固定するジンバルとを備え、
前記薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、前記主磁極層と前記ライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有し、
前記ライトシールド層の前記主磁極層を挟んだ反対側において前記媒体対向面から離れた位置に形成されているリターン磁極層と、
前記薄膜コイルよりも前記媒体対向面側において前記リターン磁極層を前記ライトシールド層に接続するようにして、磁性材を用いて形成された接続磁性層とを有し、
前記薄膜コイルは、前記ライトシールド層の回りに平面渦巻き状に巻回され、かつ該平面渦巻き状に巻回された部分が前記主磁極層よりも前記基板から離れた位置にだけ配置されている単層構造を有するヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項15】
薄膜磁気ヘッドを有するヘッドジンバルアセンブリと、前記薄膜磁気ヘッドに対向する記録媒体とを備え、
前記薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、前記主磁極層と前記ライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有し、
前記ライトシールド層の前記主磁極層を挟んだ反対側において前記媒体対向面から離れた位置に形成されているリターン磁極層と、
前記薄膜コイルよりも前記媒体対向面側において前記リターン磁極層を前記ライトシールド層に接続するようにして、磁性材を用いて形成された接続磁性層とを有し、
前記薄膜コイルは、前記ライトシールド層の回りに平面渦巻き状に巻回され、かつ該平面渦巻き状に巻回された部分が前記主磁極層よりも前記基板から離れた位置にだけ配置されている単層構造を有するハードディスク装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2012−234613(P2012−234613A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−279759(P2011−279759)
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【出願人】(500475649)ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド (251)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【出願人】(500475649)ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド (251)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】
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