説明

薬剤を装填したポリマーナノ粒子及びその製造方法と使用方法

治療薬、第1のポリマー及び任意に第2のポリマーを、有機溶媒と混合して、約5〜約50%の固形分を有する第1の有機相を形成し、該第1の有機相を第1の水溶液と混合して、第2の相を形成し、該第2の相を乳化してエマルション相を形成し、該エマルション相を急冷して急冷相を形成し、薬剤可溶化剤を前記急冷相に添加し、未封入治療薬の可溶化相を形成し、及び該可溶化相を濾過して前記標的特異的ステルス型ナノ粒子を回収し、直径が約80nm〜約150nmの治療用ナノ粒子のスラリーを形成することを含む複数の治療用ナノ粒子を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許出願第61/061760号、出願日2008年6月16日;米国特許出願第61/105916号、出願日2008年10月16日、米国特許出願第61/106777号、出願日2008年10月20日;米国特許出願第61/169514号、出願日2009年4月15日;米国特許出願第61/175209号、出願日2009年5月4日;米国特許出願第61/061704号、出願日2008年6月16日;米国特許出願第61/169519号、出願日2009年4月15日;米国特許出願第61/175219出願日2009年5月4日;米国特許出願61/061697号、出願日2008年6月16日;米国特許出願第61/088159号、出願日2008年8月12日;米国特許出願第61/169541号、出願日2009年4月15日;米国特許出願第61/175226号、出願日2009年5月4日;米国特許出願第61/173784号、出願日2009年4月29日;米国特許出願第61/182300号、出願日2009年5月29日;及び米国特許出願第61/173790号、出願日2009年4月29日の優先権を主張するものであり、それらはすべて、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
ある薬を患者(例えば、特定の組織もしくは細胞型を標的とするか、特定の患部組織を標的とするが、正常組織は標的としない)に送達するシステム、もしくは薬剤の放出をコントロールするシステムは、長らく有益であるとされてきた。
【0003】
例えば、特定の組織もしくは細胞型を標的とするか、特定の患部組織を標的とするが、正常組織は標的としない治療は、標的とされない体の組織中に存在する薬剤の量を減少させる可能性がある。これは、周囲の非癌組織を死滅させることなく、細胞毒性用量の薬剤が癌細胞に送達されることが望ましい、癌等の疾患を治療する場合に特に重要である。効果的な薬剤の標的化は、抗癌治療によく見られる、望ましくない、また時には生命を脅かす副作用を軽減するはずである。また、かかる治療は、かかる治療でなければ到達することができない特定の組織に、薬剤が到達することを可能にすることができる。
【0004】
また徐放及び/または標的治療を提供する治療は、有効量の薬を送達できねばならず、これは他のナノ粒子送達システムにおける既知の制限である。例えば、ナノ粒子の大きさを送達性に有利な程度に小さく保ちつつ、各ナノ粒子に適切な量の薬剤が会合したナノ粒子システムを製造することは挑戦となるかもしれない。しかし、ナノ粒子に多量の治療薬を装填することが望ましい一方で、高すぎる薬剤装填を使用するナノ粒子製剤は、実際の治療での使用には大きすぎるナノ粒子となる。
【0005】
従って、癌等の疾病を治療する治療レベルの薬を送達しながら、患者の副作用をも減少させることができるナノ粒子の治療薬や、かかるナノ粒子を製造する方法が必要である。
【発明の開示】
【0006】
一態様において、本発明は、活性剤もしくは治療薬、例えば、タキサン及び1、2もしくは3種類の生体適合性ポリマーを含む治療用ナノ粒子を提供する。例えば、本明細書中で開示するのは、治療薬を約0.2〜約35重量パーセント;ポリ(乳)酸−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーもしくはポリ(乳)−コ−ポリ(グリコール)酸−ブロックポリ(エチレン)グリコールコポリマーを約10〜約99重量パーセント;及びポリ(乳)酸もしくはポリ(乳)酸−コ−ポリ(グリコール)酸を約0〜約50重量パーセント含む治療用ナノ粒子である。治療薬の例としては、タキサン等の抗悪性腫瘍薬、例えばドセタキセルを含み、例えば、タキサン剤などの治療薬を約10〜約30重量パーセントを含むことができる。
【0007】
本明細書中で提供するのは、一つには、複数の開示の治療用ナノ粒子を製造する方法であって、前記方法は、治療薬、第1のポリマー及び任意に第2のポリマーを、有機溶媒(例えば、以下から選択される溶媒:酢酸エチル、ベンジルアルコール、塩化メチレン、ジメチルホルムアミド、トウィーン80及びスパン80、ならびにそれらの2種以上の組み合わせ)に混合し、約5〜約50%の固形分を有する第1の有機相を形成し;第1の有機相を第1の水溶液(いくつかの実施形態において、コール酸ナトリウム、酢酸エチル、ベンジルアルコール、もしくはそれらの組み合わせより選択される試薬を含むことができる)に混合し第2の相を形成すること;第2の相を乳化してエマルション相を形成すること;エマルション相を急冷して急冷相を形成すること;薬剤可溶化剤を急冷相に加えて未封入治療薬の可溶化相を形成すること;及び可溶化相を濾過して標的特異的ステルス型ナノ粒子を回収し、それによって直径が約80nm〜約150nmの治療用ナノ粒子のスラリーを形成することを含む方法である。
ある実施形態において、第2の相を乳化することは、第2の相を乳化して粗エマルションを形成すること及び粗エマルションを乳化してファインエマルション相を形成することを含むことができる。
第2の相の乳化は、例えば、ロータステータホモジナイザー(rotor stator homogenizer)、プローブソニケータ(probe sonicator)、攪拌バー、もしくは高圧ミキサーを用いて行うことができる。粗エマルションの乳化は、例えば、複数の(例えば、2つ、3つ、4つもしくはそれ以上の)相互作用チャンバ(interaction chamber)を有していてもよい高圧ホモジナイザーを用いて、例えば、各相互作用チャンバあたり、約2000〜約8000、例えば約2000〜約6000のフィード圧で行うことができる。
【0008】
ある実施形態において、急冷は、約5℃以下、例えば、約0℃〜約5℃の温度で少なくとも部分的に行うことができる。急冷液(quench)とエマルションの比率は、約8:1〜約5:1、もしくは約2:1〜約40:1とすることができる。
【0009】
開示された方法において使用する例示的な薬剤可溶化剤は、トウィーン80、トウィーン20、ポリビニルピロリドン、シクロデキストラン、硫酸ドデシルナトリウム、もしくはコール酸ナトリウムを含むことができる。いくつかの実施形態において、薬剤可溶化剤は、ジエチルニトロソアミン、酢酸ナトリウム、尿素、グリセリン、プロピレングリコール、グリコフロール、ポリ(エチレン)グリコール、ブリス(ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル(bris(polyoxyethyleneglycolddodecyl ether)、安息香酸ナトリウム、及びサリチル酸ナトリウムからなる群から選択される。薬剤可溶化剤と治療薬の比率は、約100:1〜約10:1とすることができる。
【0010】
ある実施形態において、方法は、例えば、タンジェンシャルフロー濾過システムを用いたナノ粒子を含む可溶化相を濾過することを含むことができる。濾過は、例えば、第1の温度である約0℃〜約5℃、及びその後第2の温度である約20℃〜約30℃で行うことができる。あるいは、濾過は、例えば、第1の温度である約20℃〜約30℃で行い、その後第2の温度である約0℃〜約5℃で行うことができる。いくつかの実施形態において、濾過は、約1〜約6ダイアボリューム(diavolume)を約0℃〜約5℃で処理すること、及び少なくとも1ダイアボリュームを約20℃〜約30℃で処理することを含み、例えば、濾過は、約1〜約6ダイアボリュームを約0℃〜約5℃で処理すること、及び約1ダイアボリューム〜約15ダイアボリュームを約20℃〜約30℃で処理することを含むことができる。ある実施形態において、濾過は、異なる別の温度で異なるダイアボリュームを処理することを含むことができる。可溶化相は、該濾過前に精製して、実質的に該有機溶媒、封入されていない治療薬、及び/または薬剤可溶化剤を取り除くことができる。
【0011】
開示された方法は、濾過トレイン(filtration train)を用いて制御した速度での治療用ナノ粒子のスラリーの無菌濾過を含むことができる。例えば、デプスフィルター及び細菌濾過器を含む濾過トレインを使用することができる。
【0012】
また、本明細書中で提供する複数の治療用ナノ粒子を製造する方法は、治療薬、第1のポリマー及び任意に第2のポリマーを、有機溶媒に混合して第1の有機相を形成すること;第1の有機相を、第1の水溶液に混合して第2の相を形成すること;第2の相を乳化してエマルション相を形成すること;エマルション相を急冷して急冷相を形成すること;薬剤可溶化剤を急冷相に加えて未封入治療薬の可溶化相を形成すること;及び、1ダイアボリューム(diavolume)を約−5℃〜約10℃に曝露した後、別の1ダイアボリュームを約25℃に曝露する、定容ダイアフィルトレーション(constant volume diafiltration)によるタンジェンシャルフロー濾過を用いて可溶化相を濾過することを含む方法である。例えば、濾過は、約2〜約5ダイアボリュームを約0℃〜約5℃で処理すること及びその後1ダイアボリュームを25℃で少なくとも一定時間処理することを含むことができる。
【0013】
本明細書中で提供する方法は、25℃で少なくとも2日間、約10mg/mlの濃度で安定とすることができる治療用ナノ粒子を形成する方法である。開示された方法を用いて形成した治療用ナノ粒子は、25℃で少なくとも5日間にわたって治療薬の10重量%未満を放出することができる。いくつかの実施形態において、開示された方法を用いて形成した治療用ナノ粒子は、例えば、約2〜約30パーセントの治療薬を封入することができる。
【0014】
いくつかの実施形態において、治療薬、第1のポリマー(例えば、ジブロックPLGA−PEGもしくはジブロックPLA−PEGコポリマー)及び任意の第2のポリマー(例えば、PLAホモポリマー)及び任意に第3のポリマー(例えば、PLA)を混合することを含み、第1のポリマーもしくは第2のポリマーは、任意に分子量が約1000g/mol未満のリガンド、例えば、低分子量リガンド、例えば、PSMAリガンドに結合することができる、複数の開示の治療用ナノ粒子を製造する。この低分子量PSMAリガンドは、化合物I、II、III及びIVならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマーもしくはラセミ体からなる群から選択することができる。


式中
m及びnは各々独立して0、1、2もしくは3であり;
pは0もしくは1であり;
、R、R及びRは各々独立して、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリールならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され;及び
はHもしくはCHであり;
式中、R、R、RもしくはRは、該ナノ粒子との共有結合的な結合点を含む。例えば、R、R、R及びRは、各々独立して、C1‐6−アルキルもしくはフェニル、またはC1‐6−アルキルもしくはフェニルの任意の組み合わせであり、それらはOH、SH、NH、またはCOHで1回もしくは複数回独立して置換されており、該アルキル基はN(H)、SまたはOによって中断されていてもよい。別の実施形態において、例えば、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、CH−Ph、(CH−SH、CH−SH、(CH)2C(H)(NH)COH、CHC(H)(NH)COH、CH(NH)CHCOH、(CH)2C(H)(SH)COH、CH‐N(H)−Ph、O−CH−Ph、またはO−(CH−Phであり、それぞれのPhは、OH、NH、COHまたはSHで1回もしくは複数回独立して置換されていてもよい。低分子量PSMAリガンドとしては

ならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体からなる群から選択することができ;
式中、NH、OH、またはSH基が、前記第1の粒子との共有結合的な結合点としての役割を果たすか、もしくは

ならびに鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体からなる群から選択することができ;
式中、Rが、NH;SH;OH;COH;NH、SH、OH、またはCOHで置換されたC1‐6−アルキル;及びNH、SH、OH、またはCOHで置換されたフェニルからなる群から独立して選択され及び
式中、Rは、前記第1の粒子との共有結合的な結合点としての役割を果たす。
リガンドとしては、

ならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体を含む。これらのうちのいずれもは、NH;SH;OH;COH;NH、SH、OH、もしくはCOHで置換されたC1‐6−アルキル;またはNH、SH、OH、もしくはCOHで置換されたフェニルでさらに置換されていてもよく、これらの官能基が、前記ナノ粒子との共有結合的な結合点としての役割を果たす。例えば、低分子量PSMAリガンドとしては、

ならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマーまたはラセミ体とすることができ、NH基は、第1のポリマーとの共有結合的な結合点としての役割を果たす。
【0015】
いくつかの実施形態において、治療薬、第1のポリマー(例えば、PLGA−PEGもしくはPLA−PEG)、任意に第2のポリマー(例えば、PLA、PLGA、もしくはPEG、もしくはそれらのコポリマー)及び任意の第3のポリマー(例えば、PLAもしくはPLGAに結合していないリガンド)を混合することを含む、複数の開示の治療用ナノ粒子を製造する方法を提供する。ある実施形態において、治療薬はドセタキセルである。別の実施形態において、治療薬は、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ミトキサントロン、ゲムシタビン(ジェムザール)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、5−フルオロウラシル(5−FU)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT−11、10‐ヒドロキシ−7−エチルカンプトテシン(SN38)、ダカルバジン、S−Iカペシタビン、フトラフール、5’−デオキシフルオロウリジン、UFT、エニルウラシル、デオキシシチジン、5−アザシトシン、5‐アザデオキシシトシン、アロプリノール、2−クロロアデノシン、トリメトレキサート、アミノプテリン、メチレン−10−デアザアミノプテリン(MDAM)、オキサリプラチン、ピコプラチン、テトラプラチン、サトラプラチン、白金−DACH、オルマプラチン、CI−973、JM−216及びその類似体、エピルビシン、エトポシドホスフェート、9−アミノカンプトテシン、10、11−メチレンジオキシカンプトテシン、カレニテシン、9−ニトロカンプトテシン、TAS103、ビンデシン、L−フェニルアラニンマスタード、イホスファミドメホスファミド(ifosphamidemefosphamide)、ペルホスファミド、トロホスファミドカルムスチン、セムスチン、エポチロンA−E、トムデックス、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アムサクリン、エトポシドホスフェート、カレニテシン、アシクロビル、バルアシクロビル、ガンシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、ラミブジン、ジドブジン、ベバシズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、ブデソニド、シロリムスビンクリスチンそれらの組み合わせ等の化学治療薬からなる群から選択され、もしくは治療薬はsiRNAとしてもよい。
【0016】
本明細書で提供するのは、開示された方法で製造した有効量のナノ粒子を患者に投与することを含む、前立腺癌の治療を必要とする患者におけるその治療方法を提供する。
【0017】
ある実施形態において、本明細書中で提供するのは、第1のポリマー及び治療薬を含む第1の有機相とエマルション相を形成する第2の相の乳化;ここでエマルション相は、次に、急冷相を形成する約0℃〜約5℃の温度で急冷され;及び第1の温度約−5℃〜約10℃での急冷相の濾過;及び急冷相を第2の温度である約25℃で濾過することによって製造される治療用ナノ粒子であって、それによって25℃で少なくとも5日間、安定な治療用ナノ粒子である。
【0018】
また、ある実施形態において、治療薬を有する治療用ナノ粒子を安定化させる方法であって:ナノ粒子で封入されている治療薬及び薬剤可溶化剤を含むスラリーを供給すること;スラリーを第1の温度約−5℃〜約10℃で濾過すること;スラリーを第2の温度である約25℃で濾過することを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1は、開示されたナノ粒子のある実施形態を図示したものである。
【0020】
図2は、開示されたナノ粒子の例示的な合成スキームを示す。
【0021】
図3は、開示されたナノ粒子を形成する乳化プロセスのフローチャートである。
【0022】
図4は、開示された乳化プロセスの流れ図である。
【0023】
図5は、急冷した粒度における粗エマルションの製造の結果を示す。固形分が30%のプラシーボ有機(Placebo organic)を使用し、W:O=5:1で、標準的な水相(1%コール酸ナトリウム、2%ベンジルアルコール、4%酢酸エチル)を使用して乳化した。
【0024】
図6は、得られた粒度におけるフィード圧の効果を示す。
【0025】
図7は、粒度の規模に対する依存を示す。
【0026】
図8は、粒度に対する固形分濃度の効果を示す。
【0027】
図9は固形分濃度の薬剤装填に対する効果を示す。
【0028】
図10は、PLGA−PEGもしくはPLA−PEGを加えたホモポリマーPLAの、DTXL(ドセタキセル)装填に対する効果を示す。
【0029】
図11は、ナノ粒子の一部としてのホモポリマーPLAの、ナノ粒子の薬剤放出の速度に対する効果を示す。
【0030】
図12は、セチルアルコールの、ナノ粒子の薬剤放出の初速度に対する効果を示す。
【0031】
図13は、従来のドセタキセルと比較した、開示されたナノ粒子からのドセタキセルのインビトロ放出を示す。
【0032】
図14は、固形分濃度及びポリ(乳酸)ホモポリマーの、シロリムス(ラパマイシン)の装填パーセンテージに対する効果を示す。
【0033】
図15は、開示されたナノ粒子に関するシロリムスの経時的なインビトロ放出を示す。
【0034】
図16は、テムシロリムスの装填パーセンテージに対するポリ(乳酸)ホモポリマーの効果を示す。
【0035】
図17は、粒子を含有するテムシロリムスの粒度に対する固形分濃度の効果を示す。
【0036】
図18は、開示されたナノ粒子に関するテムシロリムスの経時的なインビトロ放出を示す。
【0037】
図19は、ビノレルビンを含む例示的に開示されたナノ粒子のインビトロ放出性を示す。
【0038】
図20は、ビンクリスチンもしくはドセタキセルを含む開示されたナノ粒子のインビトロ放出性を示す。
【0039】
図21は、ラットにおけるビンクリスチン及びビンクリスチンPTNPの薬物動態を示す。
【0040】
図22は、乳癌のMX−I異種移植マウスモデルにおけるドセタキセルを含む開示のナノ粒子を投与した後の平均腫瘍容積を示す。
【0041】
図23は、ドセタキセルを含む開示のナノ粒子を静脈内投与した24時間後の、乳癌MX−I異種移植マウスモデルにおけるマウス腫瘍中のドセタキセル濃度を示す。
【0042】
図24は、ヒトLNCaP前立腺癌細胞を接種したマウスへの投与後の、ドセタキセルを有する開示のナノ粒子の前立腺癌の分布を示す。
【0043】
図25は、ヒトLNCP前立腺癌細胞を接種したマウスにおける、ドセタキセルを含む開示のナノ粒子を投与した後腫瘍増殖抑制を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、一般的に、活性薬剤もしくは治療薬もしくは薬を含むポリマーナノ粒子及び治療用ナノ粒子の製造及び使用方法に関する。一般に「ナノ粒子」とは、直径が1000nm未満、例えば、約10nm〜約200nmの粒子を指す。開示の治療用ナノ粒子は、直径が約60〜約120nm、もしくは約70〜約130nm、もしくは約60〜約140nmのナノ粒子を含むことができる。
【0045】
開示のナノ粒子は、抗腫瘍薬等の活性剤、例えばタキサン剤(例えばドセタキセル)を、約0.2〜約35重量パーセント、約3〜約40重量パーセント、約5〜約30重量パーセント、10〜約30重量パーセント、15〜25重量パーセント、もしくは約4〜約25重量パーセントを含むことができる。
【0046】
ここに開示のナノ粒子は、1種、2種、3種もしくはそれ以上の生体適合性ポリマー及び/または生分解性ポリマーを含む。例えば、考えられるナノ粒子は、生分解性ポリマー及びポリエチレングリコールを含む1種以上のブロックコポリマーを約10〜約99重量パーセント及び生分解性ホモポリマーを約0〜約50重量パーセントを含むことができる。
【0047】
ある実施例において、開示の治療用ナノ粒子は、標的化リガンドを含むことができ、例えば、前立腺癌等の、疾病もしくは障害の治療を必要とする患者における、その治療に効果的な低分子量PSMAリガンドを含むことができる。実施形態では、低分子量リガンドはポリマーに結合しており、ナノ粒子は、リガンド結合ポリマー(例えば、PLA−PEG−リガンド)と非官能化ポリマー(例えば、PLA−PEGもしくはPLGA−PEG)の一定の比率を含む。有効量のリガンドが癌等の疾病、疾患の治療のためのナノ粒子に会合されるように、このナノ粒子は、これら2つのポリマーの最適な比率を有することができる。例えば、リガンド密度の増加は、標的結合(細胞の結合/標的の取り込み)を増加させ、このナノ粒子を「標的特異的」にする。あるいは、ナノ粒子中の特定濃度の非官能化ポリマー(例えば、非官能化PLGA‐PEGコポリマー)は、炎症及び/または免疫原性(すなわち、免疫応答を引き起こす能力)を制御し、このナノ粒子が、疾病もしくは疾患(例えば、前立腺癌)の治療のために十分な循環半減期を有することができるようにする。さらに、非官能化ポリマーは、いくつかの実施例において、網内系(RES)による循環器系からのクリアランスの速度を低下させることができる。すなわち、非官能化ポリマーは、投与と同時に粒子が身体内を移動可能になる特性をナノ粒子に提供することができる。
ある実施形態において、非官能化ポリマーは、ともすれば患者によるクリアランスを加速して、標的細胞への送達量を少なくする可能性のある、高濃度なリガンドのバランスを保つ。
【0048】
例えば、本明細書中で開示するのは、ナノ粒子のポリマー組成全体(すなわち、官能化ポリマー+非官能化ポリマー)のうちほぼ0.1〜30、例えば、0.1〜20、例えば、0.1〜10モルパーセントを構成するリガンドに結合した官能化ポリマーを含むことができるナノ粒子である。また本明細書中では、別の実施形態において、1つ以上の低分子量リガンドに複合化(例えば、共有結合的に(つまり、リンカー(例えば、アルキレンリンカー)もしくは結合を介して)したポリマーを含むナノ粒子であって、低分子量リガンドの全ポリマーに対する重量パーセントが、約0.001〜5、例えば、約0.001〜2、例えば、約0.001〜1であるナノ粒子を開示する。
【0049】
また、本明細書中では、活性剤を約2〜約20重量パーセント含むポリマーナノ粒子を提供する。例えば、かかるナノ粒子を含む組成物は、有効量を、例えば、標的である患者の身体領域に送達できる。
【0050】
例えば、開示のナノ粒子は、生物学的部分、例えば、特定の膜成分または細胞表面受容体に、効率的に結合するかまたはそうでなければ会合することができる。治療剤の標的化(例えば、特定の組織の種類または細胞の種類、特異的な患部組織等は標的化するが、正常な組織は標的化しない)は、固形腫瘍癌(例えば、前立腺癌)等の組織特異的な疾患の治療に望ましい。例えば、細胞障害性抗癌剤の全身送達とは対照的に、本明細書中に開示のナノ粒子は、薬剤が健康な細胞を死滅させるのを実質的に防ぐことが可能である。さらに、開示のナノ粒子は、低用量の抗癌剤のコントロールを可能にするものであることができ(開示されたナノ粒子もしくは製剤を用いずに投与される有効量の剤に対して)、従来の化学療法に一般的に付随する望ましくない副作用を減少することができる。
【0051】
ポリマー
いくつかの実施形態において、本発明のナノ粒子は、ポリマー及び治療薬のマトリックスを含む。いくつかの実施形態において、治療薬及び/または標的化部分(すなわち、低分子量PSMAリガンド)は、ポリマーマトリックスの少なくとも一部分と会合したものとすることができる。例えば、いくつかの実施形態において、標的化部分(例えば、リガンド)は、ポリマーマトリックスの表面に共有結合で会合することができる。いくつかの実施形態において、共有結合会合は、リンカーによって媒介される。治療薬は、ポリマーマトリックスの表面と会合するか、ポリマーマトリックスで封入するか、ポリマーマトリックスに包囲されているか、及び/またはその全体に分散したものとすることができる。
【0052】
種々のポリマー及びポリマーからの粒子形成方法が、薬剤送達の分野において知られている。いくつかの実施形態において、本開示は、少なくとも2つの巨大分子を有するナノ粒子を対象とし、ここで第1の巨大分子は、低分子量リガンド(例えば、標的化部分)に結合した第1のポリマー;及び標的化部分に結合していない第2のポリマーを含む第2の巨大分子を含む。ナノ粒子は任意に、1種以上の非官能化ポリマーを追加で含むことができる。
【0053】
本発明によれば、あらゆるポリマーを使用することができる。ポリマーは天然ポリマーであってもよいし、非天然(合成物)ポリマーであってもよい。ポリマーは、ホモポリマーもしくは2つ以上のモノマーを含むコポリマーとすることができる。配列の点では、コポリマーはランダム、ブロック、もしくはランダムとブロック配列の組み合わせを含むことができる。代表的には、本発明に係るポリマーは有機巨大分子である。
【0054】
本明細書で使用される「ポリマー」という用語は、当該技術分野において使用される通常の意味を付与される、すなわち、共有結合的な結合によって接続される、1つもしくは複数の反復ユニット(モノマー)を含む分子構造である。該反復ユニットは、すべて同一であるか、またはいくつかの場合において、ポリマーの中に2つ以上の種類の反復ユニットが存在していてもよい。いくつかの場合において、ポリマーは、生物学的に由来する、すなわち、バイオポリマーである。ポリマーの非限定的な例には、ペプチドもしくはタンパク質が含まれる。いくつかの場合において、例えば、後に記載される生物学的部分のような、追加の部分も該ポリマー中に存在していてもよい。ポリマーの中に2種類以上の反復ユニットが存在する場合、このポリマーは「コポリマー」であると言われる。ポリマーを用いるいずれの実施形態においても、用いられるポリマーは、場合によってはコポリマーである可能性があることを理解されたい。該コポリマーを形成する反復ユニットは、任意の様式で配置させることができる。例えば、反復ユニットは、ランダムな順序で、交互の順序で、またはブロックコポリマーとして配置されていてもよく、すなわち、それぞれが第1の反復ユニット(例えば、第1のブロック)を含む1つもしくは複数の領域と、それぞれが第2の反復ユニット(例えば、第2のブロック)を含む1つもしくは複数の領域とを含む等の配置が可能である。ブロックコポリマーは、2つ(ジブロックコポリマー)、3つ(トリブロックコポリマー)、またはそれより多い数の別個のブロックを有することができる。
【0055】
開示の粒子はコポリマーを含むことができ、いくつかの実施形態において、通常2つ以上のポリマーの共有結合的な結合によって互いに会合された2つ以上のポリマー(本明細書に記載されるような)について記載する。したがって、コポリマーは、共に複合化されてブロックコポリマーを形成する第1のポリマー及び第2のポリマーを含むことができ、第1のポリマーは該ブロックコポリマーの第1のブロックとすることができ、第2のポリマーは該ブロックコポリマーの第2のブロックとすることができる。当業者は、ブロックコポリマーは、いくつかの場合において、複数のポリマーのブロックを含有することができること、また「ブロックコポリマー」は、本明細書で使用される場合、単一の第1のブロック及び単一のブロックのみを有するブロックコポリマーのみに限定されないことを理解する。例えば、ブロックコポリマーは、第1のポリマーを含む第1のブロック、第2のポリマーを含む第2のブロック及び第3のポリマーまたは第1のポリマーを含む第3のブロック等を含むことができる。いくつかの場合において、ブロックコポリマーは、任意の数の第1のポリマーの第1のブロック及び第2のポリマーの第2のブロック(そして特定の場合においては、第3のブロック、第4のブロック等)を含むことができる。また、ブロックコポリマーは、いくつかの場合において、他のブロックコポリマーからも形成されていてもよいことを理解されたい。例えば、第1のブロックコポリマーは、複数の種類のブロックを含有する新しいブロックコポリマーを形成するために別のポリマー(ホモポリマー、バイオポリマー、別のブロックコポリマー等である可能性がある)と複合化することができ及び/または他の部分(例えば、ポリマー以外の部分)と複合化することができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、ポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)は両親媒性であってもよい。すなわち、親水性の部位及び疎水性の部位を有するか、または比較的親水性である部位及び比較的疎水性である部分を有していてもよい。親水性ポリマーは、一般的に水を引き付けるポリマーであってもよく、疎水性ポリマーは、一般的に水をはじくポリマーであってもよい。親水性または疎水性ポリマーは、例えば、ポリマーのサンプルを製造し、水との接触角を測定することによって、識別することができる(典型的には、ポリマーは60°未満の接触角を有し、一方、疎水性ポリマーは約60°を上回る接触角を有する)。いくつかの場合において、2つ以上のポリマーの親水性は、互いに比較して測定することができる。すなわち、第1のポリマーは、第2のポリマーよりも親水性である可能性がある。例えば、第1のポリマーは、第2のポリマーよりも小さい接触角を有する可能性がある。
【0057】
一セットの実施形態において、本明細書中で考えられるポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)は、生体適合性ポリマー、すなわち、生体内に挿入または注入された場合に、例えば、T細胞応答を介した免疫系による有意な炎症及び/またはポリマーの急性拒絶を起こさず、典型的には有害反応を誘発しないポリマー、を含む。従って、本明細書中で考えられる治療用粒子は、非免疫原性とすることができる。本明細書中で用いる非免疫原性という用語は、その自然な状態において、通常、循環抗体、T細胞、もしくは反応性免疫細胞を全く誘発しないか、もしくは最低限のレベルでしか誘発せず、通常個体において個体自身に対する免疫反応を誘発しない、内在性増殖因子を指す。
【0058】
生体適合性は、免疫系の少なくとも一部分による物質の拒絶を指し、すなわち、対象に埋め込まれた非生体適合性の物質は、免疫系による物質の拒絶を適切に抑制することができないほど重度であり、しばしば対象からこの物質を除去しなければならないような程度となり得る免疫応答を対象に引き起こす。生体適合性を判定するための簡単な試験の1つは、ポリマーを生体外で細胞に曝露することであってもよい。生体適合性ポリマーは、典型的には中程度の濃度、例えば、50μg/106細胞の濃度では、有意な細胞死を引き起こさないポリマーである。例えば、生体適合性ポリマーは、線維芽細胞または上皮細胞等の細胞に暴露されると、このような細胞によって貪食されても、または取り込まれても、約20%未満の細胞死を引き起こす可能性がある。本発明の様々な実施形態において有用である可能性がある生体適合性ポリマーの非限定的な例には、ポリジオキサノン(PDO)、ポリヒドロキシアルカン酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(セバシン酸グリセロール)、ポリグリコリド、ポリ乳酸、PLGA、ポリカプロラクトン、あるいはこれらの及び/または他のポリマーを含むコポリマーもしくは誘導体が含まれる。
【0059】
ある実施形態において、考えられる生体適合性ポリマーは生分解性とすることができる。すなわち、ポリマーは、化学的に及び/または生物学的に、身体等の生理的環境内で分解できる。本明細書中で使用する「生分解性」ポリマーは、細胞内に導入された場合、細胞機構(生物学的に分解可能)によって、及び/または、加水分解(化学的に分解可能)等の化学的過程によって、細胞に有意な毒性効果を及ぼすことなく、細胞が再利用できるか、または排出できる成分に分解され得るポリマーである。ある実施形態において、生分解性ポリマーならびにそれらの分解副産物は、生体適合性とすることができる。
【0060】
例えば、考えられるポリマーは、水に曝露されると(例えば、対象内で)、瞬時に加水分解するポリマーであってもよく、このポリマーは、熱に曝露されると(例えば、約37℃の温度で)、分解することができる。ポリマーの分解は、使用されるポリマーまたはコポリマーに依存して、様々な速度で起こりうる。例えば、該ポリマーの半減期(ポリマーの50%が、モノマー及び/または他のポリマー以外の部分に分解され得る時間)は、ポリマーに依存して、数日間、数週間、数ヶ月間、または数年間とすることができる。このポリマーは、いくつかの場合において、例えば、リゾチーム(例えば、比較的低いpHを有する)への曝露を介して、例えば、酵素活性または細胞機構によって、生物学的に分解され得る。いくつかの場合において、該ポリマーは、細胞に有意な毒性効果を及ぼすことなく、細胞が再利用できるか、または排出できるモノマー及び/または他のポリマー以外の部分に分解され得る(例えば、ポリ乳酸は、加水分解されて乳酸を形成することができ、ポリグリコリドは、加水分解されてグリコール酸等を形成することができる)。
【0061】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、本明細書において集合的に「PLGA」と称される、ポリ(乳酸‐コ‐グリコール酸)及びポリ(ラクチド‐コ‐ グリコリド)等の乳酸及びグリコール酸単位を含むコポリマー、本明細書において「PGA」と称されるグリコール酸単位を含むホモポリマー、ならびに、本明細書において集合的に「PLA」と称される、ポリ‐L‐乳酸、ポリ‐D‐乳酸、ポリ‐D、L‐乳酸、ポリ‐L‐ラクチド、ポリ‐D‐ラクチド、及びポリ‐D、L‐ラクチド等の乳酸単位、を含むポリエステルとすることができる。いくつかの実施形態において、例示的なポリエステルは、例えば、ポリヒドロキシ酸、ラクチド及びグリコリドのペグ化ポリマー及びコポリマー(例えば、ペグ化PLA、ペグ化PGA、ペグ化PLGA)、ならびにそれらの誘導体を含む。いくつかの実施形態において、ポリエステルは、例えば、ポリ酸無水物、ポリ(オルトエステル)、ペグ化ポリ(オルトエステル)、ポリ(カプロラクトン)、ペグ化ポリ(カプロラクトン)、ポリリジン、ペグ化ポリリジン、ポリ(エチレンイミン)、ペグ化ポリ(エチレンイミン)、ポリ(L‐ラクチド‐コ‐L‐リジン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4‐ヒドロキシ‐L‐プロリンエステル)、ポリ[a‐(4‐アミノブチル)‐L‐グリコール酸]、及びそれらの誘導体を含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、該ポリマーはPLGAとすることができる。PLGAは、生体適合性及び生分解性の乳酸とグリコール酸とのコポリマーであり、乳酸:グリコール酸の比率によって、様々な形態のPLGAが特徴付けられる。乳酸は、L−乳酸、D−乳酸、またはD,L−乳酸とすることができる。PLGAの分解率は、乳酸−グリコール酸の比率を変更することによって調節することができる。いくつかの実施形態において、本発明にしたがって使用されるPLGAは、約85:15、約75:25、約60:40、約50:50、約40:60、約25:75、または約15:85の乳酸:グリコール酸の比率によって特徴付けられる。いくつか実施形態において、該ナノ粒子のポリマー(例えば、PLGAブロックコポリマーまたはPLGA−PEGブロックコポリマー)内の乳酸対グリコール酸モノマーの比率を最適化することにより、水の取り込み、治療剤の放出(例えば、「徐放」)及びポリマー分解動態等のナノ粒子のパラメータを最適化することができる。
【0063】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、1つもしくは複数のアクリルポリマーとすることができる。特定の実施形態において、アクリルポリマーは、例えば、アクリル酸とメタアクリル酸とのコポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタアクリル酸)、メタアクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタアクリル酸ポリアクリルアミド)、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、グリシジルメタクリレートコポリマー、ポリシアノアクリレート、及び上記ポリマーのうちの1つもしくは複数を含む組み合わせ、を含む。該アクリルポリマーは、アクリル酸エステル及びメタアクリル酸エステルと低含有量の四級アンモニウム基との完全に重合したコポリマーを含むことができる。
【0064】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、カチオン性ポリマーとすることができる。一般的に、カチオン性ポリマーは、負電荷を有する核酸の鎖(例えば、DNA、RNAまたはその誘導体)を縮合及び/または保護することができる。ポリ(リジン)、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、及びポリ(アミドアミン)デンドリマー等のアミン含有ポリマーの使用が、開示の粒子のいくつかの実施形態では考えられる。
【0065】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、カチオン性側鎖を有する分解可能なポリエステルとすることができる。これらのポリエステルの例には、ポリ(L‐ラクチド‐コ‐L‐リジン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4‐ヒドロキシ‐L‐プロリンエステル)を含む。
【0066】
本明細書中で開示する粒子は、PEGを含んでもよく、含まなくてもよい。また、特定の実施形態は、ポリ(エステル‐エーテル)、例えば、エステル結合(例えば、R−C(O)−O−R’結合)及びエーテル結合(例えば、R−O−R’結合)によって連結された反復単位を有するポリマーを含有するコポリマーを対象とする。本発明のいくつかの実施形態において、カルボキシル酸基を含有する、加水分解性ポリマー等の生分解性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)反復単位と複合化させてポリ(エステル−エーテル)を形成することができる。ポリ(エチレングリコール)反復単位を含有するポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)も、「ペグ化」ポリマーと称することができる。
【0067】
例えばPEGがリガンドに結合していない場合、PEGは末端基を含むことができると考えられる。例えば、PEGは末端がヒドロキシル基、メトキシ基もしくはその他のアルコキシル基、メチル基もしくはorアルキル基、アリール基、カルボン酸基、アミン基、アミド基、アセチル基、グアニジノ基、もしくはイミダゾール基とすることができる。その他の考えられる末端基は、アジド基、アルキン基、マレイミド基、アルデヒド基、ヒドラジド基、ヒドロキシルアミン基、アルコキシアミン基もしくはチオール部分を含む。
【0068】
当業者は、例えば、開環重合技術(ROMP)等を用いて、EDC(l‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)及びNHS(N‐ヒドロキシスクシンイミド)を使用して、アミンで終端するPEG基とポリマーを反応させる、ポリマーのペグ化のための方法及び技術を理解するであろう。
【0069】
ある実施形態において、ポリマーの分子量は、本明細書中で開示する効果的な治療のために最適化される。例えば、ポリマーの分子量は、粒子の分解率(特に、生分解性ポリマーの分子量が調節される場合)、溶解度、水の取り込み、及び薬剤放出動態に影響する。さらなる例として、該ポリマーの分子量は、治療される対象において、妥当な期間内(数時間から1〜2週間、3〜4週間、5〜6週間、7〜8週間等の範囲)に該ナノ粒子が生分解するように調節することができる。開示の粒子は、例えば、PEGとPL(GA)とのジブロックコポリマーを含むことができ、ここで、例えば、PEG部分は、1、000〜20、000、例えば、5、000〜20、000、例えば、10、000〜20、000の分子量を有し、PLGAは、約5、000〜約20、000、もしくは約5、000〜100、000、例えば約20、000〜70、000、 例えば約15、000〜50、000の分子量を有することができる。
【0070】
例えば、ここに開示する例示的な治療用ナノ粒子としては、ポリ(乳)酸−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーもしくはポリ(乳)−コ−ポリ(グリコール)酸−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーを約10〜約99重量パーセント、もしくはポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーもしくはポリ(乳)−コ−ポリ(グリコール)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーを約約20〜約80重量パーセント、約40〜約80重量パーセント、もしくは約30〜約50重量パーセント、もしくは約70〜約90重量パーセント含むものを挙げられる。例示的なポリ(乳)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、約15〜約20kDaの数平均分子量、もしくはポリ(乳)酸を約10〜約25kDa及び約4〜約6の数平均分子量、もしくはポリ(エチレン)グリコールを約2kDa〜約10kDa含有することができる。
【0071】
開示のナノ粒子は、ポリ(乳)酸もしくはポリ(乳)酸−コ−ポリ(グリコール)酸(PEGを含まない)を約1〜約50重量パーセントを任意に含むことができ、もしくは、ポリ(乳)酸もしくはポリ(乳)酸−コ−ポリ(グリコール)酸を約1〜約50重量パーセント、もしくは約10〜約50重量パーセントもしくは約30〜約50重量パーセント任意に含むことができる。例えば、ポリ(乳)もしくはポリ(乳)−コ−ポリ(グリコール)酸は、約5〜約15kDa、もしくは約5〜約12kDaの数平均分子重量を有することができる。例示的なPLAは、約5〜約10kDaの数平均分子量を有することができる。例示的なPLGAは、約8〜約12kDaの数平均分子量を有することができる。
【0072】
特定の実施形態において、該ナノ粒子のポリマーは、脂質と複合化されていてもよい。該ポリマーは、例えば、脂質末端PEGとしてもよい。後に記載するように、該ポリマーの脂質部位は、別のポリマーとの自己組織化のために使用することができ、ナノ粒子の形成を促進する。例えば、親水性ポリマーは、疎水性ポリマーとともに自己組織化する脂質と複合化することができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、脂質は油である。一般的に、当該技術分野において既知である任意の油は、本明細書において使用されるポリマーと複合化することができる。いくつかの実施形態において、油は、1つもしくは複数の脂肪酸基またはその塩を含むことができる。いくつかの実施形態において、脂肪酸基は、可消化、長鎖(例えば、C−C50)の、置換または非置換の炭化水素を含むことができる。いくつかの実施形態において、脂肪酸基は、C10−C20脂肪酸またはその塩とすることができる。いくつかの実施形態において、脂肪酸基は、C15−C20脂肪酸またはその塩とすることができる。いくつかの実施形態において、脂肪酸は不飽和とすることができる。いくつかの実施形態において、脂肪酸基は、一価不飽和とすることができる。いくつかの実施形態において、脂肪酸基は、多価不飽和とすることができる。いくつかの実施形態において、不飽和脂肪酸基の二重結合は、シス構造とすることができる。いくつかの実施形態において、不飽和脂肪酸基の二重結合は、トランス構造とすることができる。
【0074】
いくつかの実施形態において、脂肪酸基は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、またはリグノセリン酸のうちの1つもしくは複数とすることができる。いくつかの実施形態において、脂肪酸基は、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、αリノレン酸、γリノレン酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、またはエルカ酸のうちの1つもしくは複数とすることができる。
【0075】
特定の実施形態においては、脂質は式V及びその塩である。

式中、Rはそれぞれ独立してC1‐30アルキルである。
式Vの1つの実施形態において、該脂質は1,2ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)及びその塩、例えば、ナトリウム塩である。
【0076】
1つの実施形態において、任意の小分子標的化部分は、このナノ粒子の脂質成分に結合され、例えば、共有結合的に結合される。例えば、本明細書中で提供するのは、治療薬を含むナノ粒子、官能化及び非官能化ポリマーを含むポリマーマトリックス及び脂質及び低分子量PSMA標的化リガンドである。ここで、標的化リガンドは、このナノ粒子の脂質成分に結合され、例えば、共有結合的に結合される。ある実施形態において、低分子量標的化部分に結合される脂質成分は式Vのものである。別の実施形態において、本発明は、治療薬、ポリマーマトリックス、DSPE及び低分子量PSMA標的化リガンドを含む標的特異的ナノ粒子を提供し、ここで、リガンドはDSPEに結合され、例えば、共有結合的に結合される。例えば、本発明のナノ粒子は、PLGA−DSPE−PEG−リガンドを含むポリマーマトリックスを含むことができる。
【0077】
考えられるナノ粒子は、前立腺癌の治療に効果的なリガンド結合ポリマー対非官能化ポリマーの比率を有し、親水性のリガンド結合ポリマーは、該ナノ粒子を構成する疎水性及び親水性のポリマーが共有結合的に結合しないように、疎水性ポリマーとともに自己組織化する脂質と複合化される。「自己組織化」は、高次構造の構成要素(例えば、分子)が自然に互いを誘引することによる、該高次構造の瞬間的な集合のプロセスを指す。それは、典型的には、分子のランダム運動と、サイズ、形状、組成または化学的特性に基づく結合の形成とによって起こる。例えば、かかる方法は、ポリマー/脂質複合体を形成するように脂質と反応させられる第1のポリマーを提供するステップを含む。その後、リガンド結合ポリマー/脂質複合体を製造するように、ポリマー/脂質複合体を低分子量PSMAリガンドと反応させて、このリガンド結合ポリマー/脂質複合体を第2の非官能化ポリマー及び治療剤と混合させると、ステルス型ナノ粒子が形成される。特定の実施形態において、第1のポリマーはPEGであるため、脂質末端PEGが形成される。1つの実施形態において、脂質は、式Vの脂質であり、例えば、2ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)及びその塩(例えば、ナトリウム塩)である。この脂質末端PEGは、その後、例えば、PLGAと混合してナノ粒子を形成することができる。
【0078】
標的化部分
本明細書中で提供するのは、任意の標的化部分、すなわち、膜成分、細胞表面受容体、前立腺特異的膜抗原等の生物学的部分に結合する、または会合する部分を含むナノ粒子である。該粒子の表面上に存在する標的化部分は、特定の標的サイト、例えば、腫瘍、患部、組織、器官、細胞の型等に、粒子が局在化できるようにする。したがって、該ナノ粒子は「標的特異的」である。該薬剤または他のペイロードは、いくつかの場合において、その後該粒子から放出され得、特定の標的部位と局所的に相互作用することができる。
【0079】
ある実施形態において、開示のナノ粒子は、低分子量リガンド、例えば、低分子量PSMAリガンドである標的化部分を含む。本明細書で使用される「結合」または「結合する」という用語は、典型的には、生化学的、生理的及び/または化学的な相互作用を含む(ただし、これらに限定されない)特異的または非特異的な結合または相互作用による、相互親和性または結合能を示す対応する分子の対またはその一部分の間の相互作用を指す。「生物学的結合」は、タンパク質、核酸、糖タンパク質、炭水化物、ホルモン等を含む分子の対の間に生じる相互作用の種類を定義する。「結合パートナー」という用語は、特定の分子との結合を起こすことができる分子を指す。「特異的結合」は、1つの結合パートナー(または限定された数の結合パートナー)に結合することができる、または結合パートナーを他の類似する生物学的存在の程度よりも実質的に高い程度まで認識することができる、ポリヌクレオチド等の分子を指す。一セットの実施形態において、該標的化部分は、約1マイクロモル未満、少なくとも約10マイクロモル、または少なくとも約100マイクロモルの親和性(解離定数によって測定される)を有する。
【0080】
例えば、標的化部位は、用いられる標的化部分に依存して、対象の身体の腫瘍(例えば固形腫瘍癌)、患部、組織、器官、細胞型等に該粒子を局在化させることができる。例えば、低分子量PSMAリガンドは、乳癌や前立腺癌等の固形腫瘍癌や癌細胞に局在化させることができる。対象はヒトまたは非ヒト動物とすることができる。対象の例には、イヌ、ネコ、ウマ、ロバ、ウサギ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、モルモット、ハムスター、霊長類、ヒト等の動物が含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
考えられる標的化部分は、小分子を含む。特定の実施形態において、「小分子」という用語は、天然に生じるかまたは人工的に作製される(例えば、化学的合成によって)、比較的低い分子量を有する、タンパク質、ポリペプチドまたは核酸以外の有機化合物を指す。小分子は、典型的には複数の炭素−炭素結合を有する。特定の実施形態において、小分子は約2000g/mol未満のサイズである。いくつかの実施形態において、小分子は約1500g/mol未満または約1000g/mol未満である。いくつかの実施形態において、小分子は約800g/mol未満または約500g/mol未満、例えば、約100g/mol〜約600g/mol、または約200g/mol〜約500g/molである。
【0082】
例えば、標的化部分は前立腺癌の腫瘍を標的とし、例えば、標的化部分はPSMAペプチターゼ阻害剤である。これらの部分は、本明細書において「低分子量PSMAリガンド」とも称される。正常組織における発現と比較した場合、前立腺特異的膜抗原(PSMA)の発現は、悪性の前立腺において正常組織の少なくとも10倍は過剰発現され、PSMAの発現レベルは、疾患が転移相へと進行するにつれて、さらに上方制御される(Silver et al. 1997、 Clin. Cancer Res.、 3:81)。
【0083】
ある実施形態において、低分子量PSMAリガンドは
式I、II、IIIもしくはIV及びそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体である。

式中、m及びnは、それぞれ独立して0、1、2、または3であり;pは0もしくは1であり;
、R、R及びRは、置換または非置換のアルキル(例えば、C1−10−アルキル、C1‐6−アルキル、またはC1‐4−アルキル)、置換または非置換のアリール(例えば、フェニルまたはピリジニル)及びこれらの任意の組み合わせからなる群から、それぞれ独立して選択され;及びRはHまたはC1‐6−アルキル(例えば、CH)である。
【0084】
式I、II、III、及びIVの化合物では、R、R、R、及びRは、ナノ粒子との結合点(例えば、開示のナノ粒子を形成するポリマー(例えば、PEG)との結合点を含むポリマー)を含む。結合点は、共有結合、イオン結合、水素結合、化学吸着及び物理吸着を含む吸着によって形成される結合、ファンデルワールス結合によって形成される結合または分散力によって形成することができる。例えば、R、R、RまたはRがアニリンまたはC1−6‐アルキル‐NH基であると定義される場合、これらの官能基のうちの任意の水素(例えば、アミノ水素)が除去することができ、この低分子量PSMAリガンドはこのナノ粒子のポリマーマトリックス(例えば、ポリマーマトリックスのPEGブロック)に共有結合的に結合される。本明細書で使用される「共有結合的な結合」という用語は、少なくとも一対の電子を共有することにより形成される2つの原子間の結合を指す。
【0085】
式I、II、III、またはIVの特定の実施形態において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、C1‐6−アルキルもしくはフェニル、またはC1‐6−アルキルもしくはフェニルの任意の組み合わせであり、それらはOH、SH、NHまたはCOHで1回もしくは複数回独立して置換されており、アルキル基はN(H)、SまたはOによって中断されていてもよい。別の実施形態において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、CH−Ph、(CH−SH、CH−SH、(CH)2C(H)(NH)COH、CHC(H)(NH)COH、CH(NH)CHCOH、(CH)2C(H)(SH)COH、CH−N(H)−Ph、O−CH2−PhまたはO−(CH−Phであり、それぞれのPhは、OH、NH、COHまたはSHで1回もしくは複数回独立して置換されていてもよい。これらの式では、NH、OHまたはSH基は、ナノ粒子との結合点(例えば、−N(H)−PEG、‐O‐PEGまたは−S−PEG)としての役割を果たす。
【0086】
さらに別の実施形態において、該低分子量PSMAリガンドは、

ならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマーまたはラセミ体からなる群から選択される。
式中、NH、OHまたはSH基は、ナノ粒子との共有結合的な結合点(例えば、‐N(H)‐PEG、‐O‐PEG、または‐S‐PEG)としての役割を果たす。
【0087】
別の実施形態において、該低分子量PSMAリガンドは、

それらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマーまたはラセミ体からなる群から選択され、式中、Rは、NH、SH、OH、COH、C1‐6‐アルキル(NH、SH、OH、COHで置換された)及びフェニル(NH、SH、OH、またはCOHで置換された)から群から独立して選択され、Rは、ナノ粒子との共有結合的な結合点(例えば、‐N(H)‐PEG、‐S‐PEG、‐O‐PEGまたはCO‐PEG)としての役割を果たす。
【0088】
別の実施形態において、低分子量PSMAリガンドは、

ならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体からなる群から選択される。式中、NHまたはCOH基は、該ナノ粒子との共有結合的な結合点(例えば、−N(H)−PEG、またはCO−PEG)としての役割を果たす。これらの化合物は、NH、SH、OH、COH、C1‐6−アルキル(NH、SH、OH、もしくはCOHで置換された)またはフェニル(NH、SH、OH、もしくはCOHで置換された)でさらに置換されていてもよく、これらの置換基は、ナノ粒子との共有結合的な結合点としての役割を果たすこともできる。
【0089】
別の実施形態において、該低分子量PSMAリガンドは、

及びその鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマーまたはラセミ体である。
式中、nは、1、2、3、4、5、または6である。このリガンドでは、NH基は、このナノ粒子との共有結合的な結合点(例えば、−N(H)−PEG)としての役割を果たす。
【0090】
さらに別の実施形態において、低分子量PSMAリガンドは、

及びその鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマーまたはラセミ体である。特に、ブチル−アミン化合物は、特に、ベンゼン環を持たないことから、合成がしやすいという利点を有する。さらに、理論に束縛されるものではないが、ブチル−アミン化合物は、天然に生じる分子(すなわち、リジン及びグルタミン酸)に分解する傾向があり、したがって毒性の懸念を最小限に留める。
【0091】
いくつかの実施形態において、前立腺癌の腫瘍に関連する細胞を標的とするために用いることができる小分子標的化部分は、2‐PMPA、GPI5232、VA‐033、フェニルアルキルホスホンアミダート等のPSMAペプチダーゼ阻害剤ならびに/またはそれらの類似体及び誘導体を含む。いくつかの実施形態において、前立腺癌の腫瘍に関連する細胞を標的とするために用いることができる小分子標的化部分は、2−MPPA及び3−(2−メルカプトエチル)−1H−インドール−2−カルボン酸誘導体等のチオール及びインドールチオール誘導体を含む。いくつかの実施形態において、前立腺癌の腫瘍に関連する細胞を標的とするために用いることができる小分子標的化部分は、ヒドロキサマート誘導体を含む。いくつかの実施形態において、前立腺癌の腫瘍に関連する細胞を標的とするために用いることができる小分子標的化部分は、ZJ 43、ZJ 11、ZJ 17、ZJ 38等のPBDA及び尿素系の阻害剤ならびに/またはそれらの類似体及び誘導体、アンドロゲン受容体標的物質(ARTA)、プトレシン、スペルミン、及びスペルミジン等のポリアミン、酵素グルタミン酸カルボキシラーゼII(GCPII)の阻害剤、別名NAAGペプチダーゼもしくはNAALADアーゼを含む。
【0092】
本発明の別の実施形態において、標的化部分は、ΗeR、EGFR、もしくはtoll受容体を標的とするリガンドとすることができる。
【0093】
例えば、考えられる標的化部分は核酸、ポリペプチド、糖タンパク質、炭水化物、もしくは脂質を含むことができる。例えば、標的化部分は、細胞型特異的マーカーに結合する核酸標的化部分(例えば、アプタマー、例えば、A10アプタマー)とすることができる。一般に、アプタマーは特定の標的、例えばポリペプチド、に結合するオリゴヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、もしくは類似体もしくはそれらの誘導体)である。いくつかの実施形態において、標的化部分は、細胞表面受容器に対する自然発生もしくは合成リガンド、例えば、発育因子、ホルモン、LDL、トランスフェリン等とすることができる。標的化部分は抗体とすることができ、この用語は、抗体フラグメント、抗体の特徴的な部、単鎖標的化部分を含むよう意図とされており、これらは、例えば、ファージディスプレイ法等の手順を使用して同定できる。
【0094】
標的化部分は、長さが最長約50残基である標的化ペプチドもしくは標的化ペプチド模倣薬であってもよい。例えば、標的化部分は、アミノ酸配列順序、AKERC、CREKA、アリールQKLNもしくはAXYLZZLNを含むことができ、ここでX及びZは、可変アミノ酸、もしくはそれらの保存的変異体もしくはペプチド模倣薬である。特定の実施形態において、標的化部分は、アミノ酸配列順序AKERC、CREKA、アリールQKLNもしくはAXYLZZLNを含むペプチドであり、ここでX及びZは、可変アミノ酸であり、かつ長さが20、50もしくは100残基未満である。CREKA (Cys Arg GIu Lys Ala)ペプチドもしくはそれらのペプチド模倣薬、もしくはオクタペプチドAXYLZZLNのペプチドもまた、ペプチド、もしくはそれらの保存的変異体もしくはペプチド模倣薬と同様、IV型コラーゲンと結合、もしく複合体を形成する標的化部分として考えられ、もしくは標的組織基底膜(例えば、血管の基底膜)も標的化部分として使用することができる。例示的な標的化部分は、標的ICAM(細胞接着分子、例えば、ICAM−I)ペプチドを含む。
【0095】
本明細書中で開示する標的化部分は、一般に開示のポリマーもしくはコポリマー(例えば、PLA−PEG)に結合しており、かかるポリマー複合体は開示されたナノ粒子の一部を形成することができる。例えば、開示の治療用ナノ粒子は、任意にPLA−PEGもしくはPLGA−PEGを約0.2〜約10重量パーセントを含むことができ、該PEGは標的化リガンド(例えば、PLA−PEG−リガンド)で官能化される。考えられる治療用ナノ粒子は、例えば、PLA−PEG−GL2もしくはポリ(乳)酸−コ ポリ(グリコール)酸−PEG−GL2を約0.2〜約10モルパーセントを含む。例えば、PLA−PEG−GL2は、約10kDa〜約20kDaの数平均分子量、及び約4、000〜約8、000の数平均分子量を含むことができる。
【0096】
このような標的化リガンドは、いくつかの実施形態において、PEGに共有結合で結合することができ、例えば、アルキレンリンカー、例えば、PLA−PEG−アルキレン−GL2を介してPEGに結合することができる。例えば、開示のナノ粒子は、PLA−PEG−GL2もしくはポリ(乳)酸−コ ポリ(グリコール)酸−PEG−GL2を約0.2〜約10モルパーセントを含むことができる。PLA−PEG−GL2もしくはPLGA−PEG−GL2は、PLA−PEGもしくはPLGA−PEGをGL2へ結合させるアルキレンリンカー(例えば、C−C20直線的、例えば、(CH)を含むことができる部分を指すことを理解されたい。
【0097】
ポリマー複合体としては、

が挙げられる。
式中、Rは、H、及びC−C20アルキル基(1つ、2つ、3つもしくはそれ以上のハロゲンで任意に置換することができる)からなる群から選択され;
はエステル結合またはアミド結合であり;
はC−C10アルキレンもしくは結合であり;
xは50〜約1500、もしくは約60〜約1000であり;
yは0〜約50であり;及び
zは約30〜約200、もしくは約50〜約180である。
【0098】
異なる実施形態において、X=0〜1モル分率であり;及びY=0〜0.5モル分率であり。例示的な実施形態において、X+Y=20〜1720とすることができ、ならびに/またはZ=25〜455とすることができる。
【0099】
例えば、開示のナノ粒子は、式VIによって表されるポリマー標的化部分を含むことができる。

式中、nは約200〜約300、例えば、約222であり、mは約80〜約130、例えば、約114である。開示されたナノ粒子は、実施形態では、例えば、式VIのポリマー複合体を約0.1〜約4重量%、もしくは、例えば、式VIのポリマー複合体を約0.1〜約2%もしくは約0.1〜約1%、もしくは約0.2%〜約0.8重量%含むことができる。
【0100】
実施形態としては、開示されたナノ粒子は、PLA−PEG−アルキレン−GL2複合体を有するナノ粒子が挙げられる。ここで、例えば、PLAは数平均分子量が約16、000Daであり、PEGは分子量が約5000Daであり、例えば、アルキレンリンカーはC1−C2Oアルキレン、例えば、(CH)Sである。
【0101】
例えば、開示のナノ粒子は、:

によって表される複合体を含むことができる。
式中、yは約222であり、zは約114である。
【0102】
開示のポリマー複合体は、任意の好適な複合化技術を用いて形成することができる。例えば、標的化部分と生体適合性ポリマー、及び生体適合性ポリマーとポリ(エチレングリコール)等の2つの化合物は、EDC‐NHS化学(塩化1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド及びN‐ヒドロキシスクシンイミド)またはマレイミドもしくはカルボキシル酸が関与する反応等の技術を用いて複合化することができ、チオール、アミン、または同様に官能化されたポリエーテルの一方の末端に複合化することができる。かかるポリマーの複合化、例えば、ポリ(エステル‐エーテル)を形成すためのポリ(エステル)とポリ(エーテル)の複合化は、ジクロロメタン、アセトニトリル、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトン等のこれらに限定されない有機溶媒中で実施することができる。特異的な反応条件は、ほんのルーチンの実験を用いて当業者により決定することができる。適切な接合技術を用いて形成することができる。
【0103】
別のセットの実施形態において、複合化反応は、カルボン酸官能基(例えば、ポリ(エステル‐エーテル)化合物)を含むポリマーを、アミンを有するポリマーまたは他の部分(標的化部分等)と反応させることによって実施することができる。例えば、低分子量PSMAリガンド等の標的化部分は、アミンと反応させてアミン含有部分を形成することができ、その後にこのポリマーのカルボン酸と複合化させることができる。かかる反応は1段階反応として起こるかもしれない。すなわち、複合化はN‐ヒドロキシスクシンイミドまたはマレイミド等の中間体を用いることなく実施される。アミン含有部分とカルボキシル酸末端ポリマー(ポリ(エステル‐エーテル)化合物等)との間の複合化反応は、一セットの実施形態において、ジクロロメタン、アセトニトリル、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ピリジン、ジオキサン、またはジメチルスルホキシド等(これらに限定されないが)の有機溶媒に溶解させたアミン含有部分を、カルボキシル酸末端ポリマーを含有する溶液に添加することによって、達成することができる。カルボキシル酸末端ポリマーは、ジクロロメタン、アセトニトリル、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、またはアセトン等のこれらに限定されない有機溶媒に含有することができる。アミン含有部分とカルボキシル酸末端ポリマーとの間の反応は、場合によっては瞬時に起こるかもしれない。複合化されなかった反応物は、かかる反応後に洗い流すことができ、ポリマーは、例えば、エチルエーテル、ヘキサン、メタノール、またはエタノール等の溶媒中に沈殿させることができる。
【0104】
具体的な例として、低分子量PSMAリガンドは、以下のように粒子の標的化部分として製造することができる。カルボン酸修飾ポリ(ラクチド‐コ‐グリコリド)(PLGA‐COOH)は、アミン修飾したヘテロ二官能性ポリエチレングリコール)(NH‐PEG‐COOH)と複合化させて、PLGA‐PEG‐COOHのコポリマーを形成することができる。アミン修飾した低分子量PSMAリガンド(NH‐Lig)を用いて、PEGのカルボン酸末端をリガンド上のアミン官能基と複合化することにより、PLGA‐PEG‐Ligのトリブロックポリマーを形成することができる。後に、このマルチブロックポリマーは、例えば、後に考察されるように、治療用途に用いることができる。
【0105】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は飽和脂肪族基を含み、それらには直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等)、分岐鎖アルキル基(イソプロピル、第三級ブチル、イソブチル等)、シクロアルキル(脂環式)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロフェニル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル)、アルキル置換シクロアルキル基及びシクロアルキル置換アルキル基を含む。
【0106】
「アリール」という用語は、0〜4個のヘテロ原子を含んでいてもよい5員または6員の単環芳香族基、例えば、フェニル、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、及びピリミジン等を含む基を含む。さらに、「アリール」という用語は、例えば、ナフタレン、ベンゾオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、アントリル、フェナントリル、ナフチリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、またはインドリジン等、例えば、三環式、二環式の、多環アリール基を含む。環構造にヘテロ原子を有するこれらのアリール基は、「アリールへテロ環」、「ヘテロ環」、「ヘテロアリール」、または「ヘテロ芳香族」ともいうことができる。芳香族環は、1つもしくは複数の環の位置で、例えば、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボン酸塩、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボン酸塩、硫酸塩、アルキルスルフィニル、スルホン酸塩、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分等の上記置換基で置換されていてもよい。アリール基は、多環(例えば、テトラリン)を形成するために、芳香族ではない脂環式環またはヘテロ環と、融合または架橋されることもできる。
【0107】
標的化部分は、例えば、標的化部分に複合化されたポリマーを生成するために、本発明のポリマー(例えば、PEG)と反応させることが可能な官能基でさらに置換されていてもよい。官能基は、アミノ基、ヒドロキシ基、及びチオ基等、ポリマー(例えば、PEG)と共有結合を作製するために使用することができる任意の部分を含む。ある具体的な実施形態において、該小分子は、該小分子と直接結合しているか、または、例えば、アルキル基もしくはフェニル基等の追加の基を介して該小分子と結合しているかのいずれか一方である、NH、SH、またはOHで置換することができる。非限定的な例において、本明細書に引用される特許、特許出願及び特許以外の参考文献に開示される小分子は、アニリン、アルキル‐NH(例えば、(CH1‐6NH)、またはアルキル−SH(例えば、(CH1‐6NH)と結合させることができ、NH及びSH基は、ポリマー(例えば、PEG)と反応させて、ポリマーとの共有結合的な結合を形成すること、すなわちポリマー複合体を形成することができる。
【0108】
例えば、本明細書中で開示するのは、治療薬;及び分子量が約100g/mol〜500g/molのリガンドに複合化しているPLGA−PEGコポリマーもしくはPLA−PEGコポリマーを含む第1の巨大分子を含むナノ粒子であり、リガンドに複合化しているここでPLGA−PEGコポリマーもしくはPLA−PEGコポリマーは、全ポリマー含有量の約0.1〜約30モルパーセントであり、もしくはナノ粒子の全ポリマー含有量の約0.1〜約20モルパーセント、もしくは約0.1〜約10モルパーセント、もしくは約1〜約5モルパーセントである。かかるナノ粒子はさらに、PLGA−PEGコポリマーもしくはPLA−PEGコポリマーを含む第2の巨大分子を含むことができ、このコポリマーは標的化部分に結合しておらず;薬学的に許容される賦形剤である。例えば、第1のコポリマーは、リガンドを全ポリマー含有量に対して約0.001及び5重量パーセント有することができる。
【0109】
例示的なナノ粒子は、治療薬及びポリマー組成物を含むことができ、このポリマー組成物は、リガンドに結合した第1のポリマーを含む第1の巨大分子及び標的化部分に結合していない第2のポリマーを含む第2の巨大分子を含み;このポリマー組成は該リガンドを約0.001〜約5.0重量パーセント含む。リガンドは、約100g/mol〜約6000g/mol、もしくは約1000g/mol未満、例えば、約100g/モル〜約500g/molの分子量を有することができる。
別の実施形態において、本明細書中で提供するのは、各々が治療薬及びポリマー組成物を含む、複数の標的特異的ポリマーナノ粒子を含む医薬品組成物であり、ここで該ポリマー組成物は、第1の巨大分子を含むリガンドに結合した第1のポリマーを約0.1〜約30モルパーセントもしくは約0.1〜約20モルパーセント、もしくは約0.1〜約10モルパーセント;及び標的化部分に結合していない第2のポリマーを含む第2の巨大分子;及び薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0110】
ナノ粒子
開示のナノ粒子は、実質的に球状であるか(すなわち、該粒子は概して球状に見える)、または非球状の構造を有していてもよい。例えば、該粒子は、膨張または縮小すると、非球状の構造を採ってもよい。いくつかの場合において、該粒子はポリマーブレンドを含むことができる。例えば、標的化部分(すなわち、低分子量PSMAリガンド)及び生体適合性ポリマーを含む第1のポリマーと、生体適合性ポリマーを含むが標的化部分を含まない第2のポリマーとを含むポリマーブレンドを形成することができる。最終的なポリマーにおける第1のポリマーと第2のポリマーの比率を制御することにより、最終的なポリマーにおける標的化部分の濃度及び位置を、任意の好適な程度まで容易に制御することができる。
【0111】
開示のナノ粒子は、約1μm未満の特徴的寸法を有し得、該粒子の特徴的寸法は、該粒子と同じ体積を有する真球の直径である。例えば、粒子は、約300nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約30nm未満、約10nm未満、約3nm未満、場合によっては約1nm未満とすることができる粒子の特徴的寸法を有していてもよい。具体的な実施形態において、本発明のナノ粒子は、約80nm〜200nm、約60nm〜約150nm、もしくは約70nm〜約200nmの直径を有する。
【0112】
一セットの実施形態において、粒子は内部及び表面を有していてもよいが、表面は内部とは異なる組成物を有する、すなわち、少なくとも1つの化合物が内部に存在するが、表面には存在しない(逆の場合も同様)、及び/または、少なくとも1つの化合物が内部に存在し、表面では異なる濃度で存在する可能性がある。例えば、1つの実施形態において、本発明のポリマー複合体の標的化部分(すなわち、低分子量PSMAリガンド)等の化合物は、該粒子の内部及び表面の両方に存在し、該粒子の表面では内部よりも高い濃度とすることができるが、いくつかの場合において、該粒子の内部の濃度は実質的に非ゼロである、すなわち、該粒子の内部には検出可能な量の化合物が存在する。
【0113】
いくつかの場合において、粒子の内部は粒子の表面よりも疎水性である。例えば、粒子の内部は粒子の表面に対して比較的疎水性であってもよく、薬剤または他のペイロードは疎水性であるかもしれないため、比較的疎水性である粒子の中心と容易に会合する。薬剤または他のペイロードは、こうして粒子の内部に包含されていてもよく、そのため粒子を取り囲む外部環境から保護することができる(逆の場合も同様)。例えば、対象に投与される粒子内に包含される薬剤または他のペイロードは、対象の体から保護され、該体は薬剤から単離される。本発明のさらに別の態様は、2つ以上のポリマーまたは巨大分子が存在するポリマー粒子、及びかかるポリマーまたは巨大分子に関するライブラリを対象とする。例えば、一セットの実施形態において、粒子は、2つ以上の識別可能なポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)を含有することができ、2つ(またはそれ以上)のポリマーの比率は独立して制御することが可能であるため、粒子の特性を制御することが可能となる。例えば、第1のポリマーは、標的化部分及び生体適合性の部位を含むポリマー複合体とすることができ、第2のポリマーは、生体適合性の部位を含むことができるが標的化部分は含まないか、または第2のポリマーは、第1のポリマーと識別可能な生体適合性の部位を含むことができる。よって、ポリマー粒子内におけるこれらのポリマーの量の制限は、例えば、粒子のサイズ(例えば、1つまたは両方のポリマーの分子量を変化させることによる)、表面電荷(例えば、該ポリマーが異なる電荷または末端基を有する場合に、ポリマーの比率を制御することによる)、表面親水性(例えば、ポリマーが異なる分子量及び/または親水性を有する場合)、標的化部分の表面密度(例えば、2つ以上の該ポリマーの比率を制御することによる)等の粒子の様々な物理的、生物学的、または化学的特性を制御するために使用することができる。
【0114】
具体的な例として、粒子は、ポリ(エチレングリコール)及びポリ(エチレングリコール)に複合化された標的化部分を含む第1のジブロックポリマーと、ポリ(エチレングリコール)は含むが標的化部分は含まないまたはポリ(エチレングリコール)及び標的化部分の両方を含む第2のポリマーと、を含むことができ、第2のポリマーのポリ(エチレングリコール)は、第1のポリマーのポリ(エチレングリコール)とは異なる長さ(または反復単位の数)を有する。
別の例として、粒子は、第1の生体適合性の部位及び標的化部分を含む第1のポリマーと、第1の生体適合性の部位とは異なる第2の生体適合性の部位(例えば、異なる組成を有する、実質的に異なる数の反復単位等)及び標的化部分を含む第2のポリマーとを含むことができる。
さらに別の例として、第1のポリマーは、生体適合性の部位及び第1の標的化部分を含むことができ、第2のポリマーは、生体適合性の部位及び第1の標的化部分とは異なる第2の標的化部分を含むことができる。
【0115】
例えば、本明細書中で開示するのは、第1の非官能化ポリマー;任意の第2の非官能化ポリマー;標的化部分を含む官能化ポリマー;及び治療薬を含む治療用ポリマーナノ粒子であって;該ナノ粒子は官能化ポリマーを約15〜約300分子、もしくは官能化ポリマーを約20〜約200分子、もしくは約3〜約100分子含む、治療用ポリマーナノ粒子である。
【0116】
特定の実施形態において、本発明のナノ粒子の第1のもしくは第2の巨大分子のポリマーは、」PLA、PLGA、もしくはPEG、もしくはそれらのコポリマーである。特定の実施形態において、第1の巨大分子のポリマーはPLGA−PEGコポリマーであり、第2の巨大分子はPLGA−PEGコポリマー、もしくはPLA−PEGコポリマーである。例えば、例示的なナノ粒子は、密度が約0.065g/cm、もしくは約0.01〜約0.10g/cmのPEGコロナを有していてもよい。
【0117】
開示のナノ粒子は、例えば、糖類を含むことができる溶液中で、少なくとも約3日間、約4日間もしくは少なくとも約5日間、室温もしくは25℃で、安定となり得る(例えば、全ての活性剤を実質的に保持する)。
【0118】
いくつかの実施形態において、開示のナノ粒子は、薬剤放出の速度を増大させることができる脂肪族アルコールをも含むことができる。例えば、開示のナノ粒子は、Cg−C3Oアルコール等のセチルアルコール、オクタノール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ドコサナール、もしくはオクタソナール(octasonal)を含むことができる。
【0119】
ナノ粒子は徐放性を有することができ、例えば、患者、例えば、患者の特定部位に、長時間にわたり、例えば、1日、1週間又はそれ以上の期間にわたって、ある量の活性剤を送達できる。いくつかの実施形態において、開示のナノ粒子は、例えば室温及び/または37℃のリン酸緩衝液中に入れた場合、活性剤(例えば、タキサン)の約2%未満、約5%未満、もしくは約10%未満を、実質的に直ちに(例えば、約1分間〜約30分間かけて)放出する。
【0120】
例えば、治療薬を含む開示のナノ粒子は、いくつかの実施形態において、例えば、25℃の水溶液中に入れた場合、
a)約1時間後に全治療薬のうち約0.01〜約20%が放出される;
b)約8時間後に治療薬のうち約10〜約60%が放出される;
c)約12時間後に全治療薬のうち約30〜約80%が放出される;及び
d)約24時間後に全量のうち約75%以上が放出される、に実質的に対応する速度で治療薬を放出することができる。
【0121】
いくつかの実施形態において、開示された開示されたナノ粒子もしくはナノ粒子を含む組成物を対象もしくは患者へ投与した後の、患者における治療薬のピーク血漿濃度(Cmax)は、単独で投与した場合(例えば、のナノ粒子の一部としてではなく)の治療薬のCmaxと比較して実質的に高い。
【0122】
別の実施形態において、開示の治療薬を含むナノ粒子は、対象に投与した場合、は、単独で投与した治療薬のtmaxと比較して実質的に長い治療薬のtmaxを有することができる。
【0123】
この粒子のライブラリを形成してもよい。例えば、粒子内の2つ(またはそれ以上)のポリマーの比率を変化させることにより、これらのライブラリは、ハイスループットアッセイ等のスクリーニングテストに有用とすることができる。ライブラリ内の粒子は、上記のような特性によって多様である可能性があり、いくつかの場合において、粒子の2つ以上の特性がライブラリ内で多様であるかもしれない。このように、本発明の1つの実施形態は、異なる特性を持つ異なる比率のポリマーを有するナノ粒子のライブラリを対象とする。該ライブラリは、任意の好適な比率のポリマーを含むことができる。
【0124】
図1は、上述のようなポリマーを用いてライブラリを生成することができることを示す。例えば、図1では、生体適合性の疎水性ポリマー、生体適合性の親水性ポリマー及び低分子量PSMAリガンドを含む第1の巨大分子と、生体適合性の疎水性ポリマー及び生体適合性の親水性ポリマーを含む第2の巨大分子とを含むポリマー粒子は、異なる比率の該第1及び第2の巨大粒子を有する粒子のライブラリを作成するために使用することができる。
【0125】
ライブラリは、任意の数の望ましい特性、例えば、表面機能性、表面電荷、サイズ、ゼータ(ζ)電気、疎水性、免疫原性等を制御する能力等の特性を有する粒子を実現するのに有用となるかもしれない。図2では、異なる比率の第1の巨大分子と第2の巨大分子(巨大分子のうちの1つが欠けている比率を含む)が組み合わされて、ライブラリの基盤を成す粒子が生成される。
【0126】
特定の例として、本発明のいくつかの実施形態において、該ライブラリは、本明細書で考察されるように、生体適合性ポリマーと低分子量リガンドのポリマー複合体を含む粒子を含む。次に図1を参照すると、かかる粒子の1つが非限定的な例として示されている。この図では、本開示のポリマー複合体は、粒子10を形成するために使用される。粒子10を形成するポリマーは、該粒子の表面上に存在する低分子量リガンド15、及び生体適合性の部位17を含む。いくつかの場合において、ここに示すように、標的化部分15は生体適合性の部位17と複合化することができる。しかし、生体適合性の部位17のすべてが標的化部分15と複合化されるように示されているわけではない。例えば、いくつかの場合において、粒子10等の粒子は、生体適合性の部位17及び低分子量リガンド15を含む第1のポリマーと、生体適合性の部位17を含むが、標的化部分15は含まない第2のポリマーとを用いて形成することができる。該第1のポリマーと該第2のポリマーの比率を制御することにより、異なる特性を有する粒子が形成されていてもよく、またいくつかの場合において、かかる粒子のライブラリを形成することができる。また、粒子10の中心に含まれるのは薬剤12である。いくつかの場合において、薬剤12は、疎水性効果のために、該粒子の中に含むことができる。例えば、該粒子の内部は該粒子の表面に対して比較的疎水性であってもよく、該薬剤は、比較的疎水性である該粒子の中心と会合する疎水性薬剤とすることができる。1つの実施形態において、該治療剤は、該ナノ粒子の表面に会合している、該ナノ粒子の中に封入されている、該ナノ粒子に囲まれている、または該ナノ粒子全体に分散している。別の実施形態において、該治療剤は、該ナノ粒子の疎水性コア内に封入されている。
【0127】
具体的な例として、粒子10は、比較的疎水性である生体適合性ポリマー、及び比較的親水性である標的化部分15を含むポリマーを含むことができるため、粒子が形成される間、濃度のより高い親水性標的化部分が表面上で曝露され、濃度のより高い疎水性の生体適合性ポリマーが該粒子の内部に存在する。
【0128】
いくつかの実施形態において、該生体適合性ポリマーは疎水性ポリマーである。生体適合性ポリマーの非限定的な例には、ポリ乳酸、ポリグリコリド及び/またはポリ(ラクチド‐コ‐グリコリド)が含まれる。
【0129】
異なる実施形態において、本開示は、1)ポリマーマトリックス、2)任意に、粒子の連続的または不連続的なシェルを形成するポリマーマトリックスを囲む、または該マトリックスの中に分散される、両親媒性の化合物または層、3)ポリマーマトリックスの一部を形成する非官能化ポリマー、及び4)ポリマーマトリックスの一部を形成することができる、共有結合でポリマーに結合される低分子量PSMAリガンド、を含むナノ粒子を提供する。例えば、両親媒性層は、該ナノ粒子内への水の浸透を減少させることが可能であり、そのため薬剤の封入効率を高め、薬剤の放出を遅延する。
【0130】
本明細書で使用される「両親媒性」という用語は、分子が極性部位及び非極性部位の両方を有する特性を指す。両親媒性化合物は、長い疎水性の尾に結合した極性の頭を有することが多い。いくつかの実施形態において、極性部位は水中で可溶性である一方、非極性部位は水中では不溶性である。また、極性部位は、形式上の正電荷または形式上の負電荷のいずれか一方を有することができる。あるいは、極性部位は、形式上の正電荷及び形式上の負電荷の両方を有することができ、両性イオンつまり内塩とすることができる。本発明の目的のために、両親媒性化合物は、1つまたは複数の、以下のものであってもよいが、これらに限定されない:天然由来の脂質、界面活性剤、または親水性及び疎水性部分の両方を有する合成化合物。
【0131】
両親媒性化合物の具体例には、0.01〜60(脂質の重量/ポリマーの重量)の間、最も好ましくは0.1〜30(脂質の重量/ポリマーの重量)の間の比率で取り込まれる、1、2−ジステアロイル−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジテトラコサノイルホスファチジルコリン(DTPC)及びジリグノセロイルファチジルコリン(DLPC)等のリン脂質が含まれるが、これらに限定されない。使用することができるホスホリン脂質には、ホスファチジン酸、飽和及び不飽和脂質の両方を有するホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジル誘導体、カルジオリピン、及びβ‐アシル‐イ‐アルキルホスホリン脂質が含まれるが、これらに限定されない。ホスホリン脂質の例には、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジトリコサノイルホスファチジルコリン(DTPC)、ジリグノセロイルファチジルコリン(DLPC)等のホスファチジルコリン及びジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、または1‐ヘキサデシル‐2‐パルミトイルグリセロホスホエタノールアミン等のホスファチジルエタノールアミンが含まれるが、これらに限定されない。不斉アシル鎖を有する合成ホスホリン脂質(例えば、6個の炭素からなる1個のアシル鎖及び12個の炭素からなるもう1本のアシル鎖を有する)も使用することができる。
【0132】
ある具体的な実施形態において、両親媒性層を形成するために使用することができる両親媒性成分はレシチンであり、具体的には、ホスファチジルコリンである。レシチンは両親媒性の脂質であり、そのため、水性であることが多いホスホリン脂質の二重層の周囲に面する親水性(極性)の頭と、向かい合う疎水性の尾と、を有するホスホリン脂質の二重層を形成する。レシチンは、例えば、大豆から入手可能な天然の脂質であり、他の送達デバイスにおける使用のためのFDA承認を既に得ているという利点がある。さらに、レシチン等の脂質の混合物は、単一の純粋な脂質よりも有利である。
【0133】
特定の実施形態において、開示のナノ粒子は両親媒性単層を有し、つまり該層は、ホスホリン脂質の二重層ではなく、該ナノ粒子の周りまたはナノ粒子の中の、単一の連続的もしくは不連続的な層として存在するということを意味する。両親媒性層は、本発明のナノ粒子と「会合される」、つまり、例えば、ポリマーのシェルの外側を囲んで、または該ナノ粒子を構成するポリマーの中に分散されて、ポリマーマトリックスにある程度近接して配置されることを意味する。
【0134】
ナノ粒子の製造
本開示の別の態様は、開示のナノ粒子の製造システム及び方法を対象とする。いくつかの実施形態において、2つ以上の異なるポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)を異なる比率で使用し、粒子を該ポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)から作成することで、粒子の特性を制御することができる。例えば、1つのポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)は低分子量PSMAリガンドを含んでいてもよいか、含まなくてもよい一方で、別のポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)は、その生体適合性及び/または結果として生じる粒子の免疫原性を制御するその能力のために選択することができる。
【0135】
一セットの実施形態において、1つもしくは複数のポリマーを含む溶液を提供し、溶液をポリマー非溶媒(polymeroolvet)と接触させて粒子を生成することにより、粒子が形成される。溶液は、ポリマー非溶媒を含み、混和性または非混和性とすることができる。例えば、アセトニトリル等の水混和性の液体は、ポリマーを含有することができ、例えば、アセトニトリルを制御された速度で水に注ぎ入れることにより、アセトニトリルがポリマー非溶媒である水に接触させられると、粒子が形成される。該溶液中に含有される該ポリマーは、ポリマー非溶媒と接触させられると、その後、沈殿してナノ粒子等の粒子を形成することができる。2つの液体は、周囲温度及び圧力下で少なくとも10重量%のレベルまで一方が他方に溶解しない場合、互いに「非混和性」である、または混和性ではないと言われる。
典型的には、有機溶液(例えば、ジクロロメタン、アセトニトリル、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ピリジン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド等)と水性液体(例えば、水または、溶解させた塩もしくは他の種、細胞もしくは生物学的媒体、エタノール等を含有する水)は、互いに非混和性である。例えば、第1の溶液を、第2の溶液に(好適な速度またはスピードで)流し込むことができる。
ある場合において、ナノ粒子等の粒子は、第1の溶液が非混和性の第2の液体に接触させて形成することができ、例えば、第1の溶液が第2の液体中に流れ込む間に、接触時のポリマーの沈殿が該ポリマーにナノ粒子を形成し、またある場合において、例えば、導入の速度が注意深く制御され、比較的緩やかな速度で維持された場合に、ナノ粒子を形成することができる。粒子形成の制御は、当業者により、ルーチンの実験のみを用いて容易に最適化することができる。
【0136】
表面機能性、表面電荷、サイズ、ゼータ(ζ)電位、疎水性、免疫原性を制御する能力等の特性を、開示のプロセスを用いて高度に制御することができる。例えば、粒子のライブラリは、粒子が該粒子表面上に存在する特定の密度の部分(例えば、低分子量PSMAリガンド)を有することができるようにする、ポリマーの特定の比率を有する粒子を識別するために、合成及びスクリーニングすることができる。これにより、例えば、特定のサイズ及び特定の表面密度の部分のような1つもしくは複数の特定の特性を有する粒子を、必要以上の努力をすることなく製造することができる。したがって、本発明の特定の実施形態は、かかるライブラリ、及びかかるライブラリを用いて識別される任意の粒子を用いるスクリーニング技術を対象とする。また、識別は、任意の好適な方法を用いて行うことができ、例えば、識別は、直接的または間接的であってもよく、定量的または定性的に進めることができる。
【0137】
ある実施形態において、すでに形成されたナノ粒子は、リガンド官能化ポリマー複合体の生成について説明したものと類似する手順を用いて、標的化部分で官能化される。例えば、第1のコポリマー(PLGA‐PEG、ポリ(ラクチド‐コ‐グリコリド)とポリ(エチレングリコール))は、治療剤と混合されて粒子を形成する。その後、該粒子は低分子量リガンドと会合され、癌の治療のために使用することができるナノ粒子を形成する。粒子は、ナノ粒子のリガンドの表面密度を制御することにより、ナノ粒子の治療的特徴を変化させるために、種々の量の低分子量リガンドと会合することができる。さらに、例えば、分子量、PEGの分子量及びナノ粒子の表面電荷等のパラメータを制御することにより、非常に精密に制御された粒子を得ることができる。
【0138】
別の実施形態において、図3及び4に示すようなプロセス等のナノエマルションプロセス(nanoemulsion process)を提供する。例えば、治療薬、第1のポリマー(例えば、PLA−PEGもしくはPLGA−PEG等のジブロックコポリマー、いずれも任意にリガンド、例えば、GL2に結合することができる)及び任意の第2のポリマー(例えば、(PL(G)A−PEGもしくはPLA)を、有機溶液と混合して、第1の有機相を形成する。第1の相は、固形分を約5〜約50%重量、例えば、約5〜約40%、もしくは約10〜約30%含むことができる。第1の有機相は、第1の水溶液と混合して第2の相を形成することができる。
有機溶液は、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、ベンジルアルコール、トウィーン80、スパン80等及びそれらの組み合わせを含むことができる。
ある実施形態において、有機相は、ベンジルアルコール、酢酸エチル及びそれらの組み合わせを含むことができる。第2の相は、固形分が約1〜50重量%、例えば、約5〜40重量%とすることができる。水溶液は水であってもよく、任意にコール酸ナトリウム、酢酸エチル、ポリ酢酸ビニル及びベンジルアルコールのうち1つ以上と併用してもよい。
【0139】
例えば、油もしくは有機相は、非溶媒(水)と部分的にしか混和性でない溶媒を使用することができる。従って、十分に低い比率で混合し、及び/または有機溶媒で事前に飽和した水を使用した場合、油相は液状のままである。油相は、液滴として水溶液中に乳化することができ、例えば、ホモジナイザーもしくはソニケータ等の高エネルギー分散システムを用いて剪断しナノ粒子とすることができる。エマルションの水性部分、別名「水相」は、コール酸ナトリウムからなる、酢酸エチル及びベンジルアルコールで予め飽和させた界面活性剤溶液としてもよい。
【0140】
エマルション相を形成するための第2の相の乳化は、1回もしくは2回の乳化工程で行うことができる。例えば、一次エマルションを製造し、次に乳化してファインエマルションを形成することができる。一次エマルションは、例えば、単純な混合、高圧ホモジナイザー、プローブソニケータ、攪拌バーもしくはロータステータホモジナイザーを用いて形成することができる。一次エマルションは、例えば、プローブソニケータもしくは高圧ホモジナイザーに使用によって、例えば、ホモジナイザーを1回、2回、3回もしくはそれ以上の回数通過させ、ファインエマルションに形成することができる。例えば、高圧ホモジナイザーを使用する場合、用いる圧力は、約1000〜約8000psi、約2000〜約4000psi、4000〜約8000psi、もしくは約4000〜約5000psi、例えば、約2000、2500、4000もしくは5000psiであってもよい。
【0141】
溶媒の蒸発もしくは希釈はいずれも、溶媒の抽出を完了させ、粒子を固化させるのに必要かもしれない。抽出の動態をよりよく制御し、より適応性の高いプロセスを行うためには、水での急冷による溶媒の希釈を使用することができる。例えば、エマルションは、有機溶媒を全て溶解して急冷相を形成するのに十分な濃度まで冷水中に希釈することができる。急冷は、少なくとも部分的に約5℃もしくはそれ以下の温度で行うことができる。例えば、急冷するのに使用する水は、室温未満の温度(例えば、約0〜約10℃、もしくは約0〜約5℃)とすることができる。
【0142】
いくつかの実施形態において、この段階では全ての治療薬(例えば、ドセタキセル)を粒子内に封入せず、薬剤可溶化剤を急冷相に加えて、可溶化相を形成する。薬剤可溶化剤としては、例えば、トウィーン80、トウィーン20、ポリビニルピロリドン、シクロデキストラン、硫酸ドデシルナトリウム、もしくはコール酸ナトリウムが挙げられる。例えば、急冷したナノ粒子の懸濁液にトウィーン−80を加えて、遊離薬剤を可溶化し、薬剤の結晶の形成を防止することができる。いくつかの実施形態において、薬剤可溶化剤と治療薬(例えば、ドセタキセル)の比率は、約100:1〜約10:1である。
【0143】
可溶化相は、ナノ粒子を回収するため濾過してもよい。例えば、限外濾過膜は、を使用して、ナノ粒子懸濁液を濃縮し、有機溶媒、遊離薬剤及びその他の加工助剤(界面活性剤)を実質的に除去することができる。例示的な濾過は、タンジェンシャルフロー濾過システムを使用して行うことができる。例えば、ナノ粒子は保持するが、溶質、ミセル、及び有機溶媒は透過させるのに適した細孔径の膜を用いて、ナノ粒子を選択的に分離することができる。分子量カットオフが約300−500kDa(〜5−25nm)の例示的な膜を使用することができる。
【0144】
ダイアフィルトレーションは、定容アプローチを使用して行うことができる。つまり、透析濾過液(diafiltrate、冷脱イオン水、例えば、約0〜約5℃、もしくは0〜約10℃)を、濾液を懸濁液から取り除く速度と同じ速度で供給懸濁液に加えることができる。いくつかの実施形態において、濾過は、第1の温度約0〜約5℃、もしくは0〜約10℃、及び第2の温度である約20〜約30℃、もしくは15〜約35℃を使用する第1の濾過を含むことができる。例えば、濾過は、約1〜約6ダイアボリュームを約0〜約5℃で処理すること及び少なくとも1ダイアボリューム(例えば、約1〜約3もしくは約1−2ダイアボリューム)を約20〜約30℃で処理することを含むことができる。
【0145】
ナノ粒子懸濁液を精製及び濃縮した後、粒子を1つか2つ以上の殺菌フィルター及び/またはデプスフィルターを、例えば、深さ−0.2μmの前置フィルターを使用して通過させることができる。
【0146】
ナノ粒子を製造する別の実施形態において、治療薬、例えば、ドセタキセル、及びポリマー(ホモポリマー、コポリマー及びリガンドを有するコポリマー)の混合物からなる有機相を形成する。有機相は、界面活性剤及び数種類の溶解した溶媒からなる水相と、約1:5の比率(油相:水相)で混合する。単純な混合下に、もしくはロータステータホモジナイザーを使用して二相を混合して、一次エマルションを形成する。次に、高圧ホモジナイザーを使用して一次エマルションをファインエマルションに形成する。その後、混合しながら脱イオン水を加えてファインエマルションを急冷する。急冷液:エマルションの比率は、約8.5:1である。次いで、トウィーンの溶液(例えば、トウィーン80)を急冷液(quench)に加えて、トウィーン全体で約2%とする。これは、遊離した未封入の薬剤を溶解する役割を果たす。遠心分離もしくは限外濾過/ダイアフィルトレーションのいずれかによって次にナノ粒子を単離する。
【0147】
製剤の製造に使用するポリマー及び治療薬もしくは活性剤の量は、最終的な製剤とは異なるかもしれないことを理解されたい。例えば、いくつかの活性剤は、ナノ粒子に完全に導入されない可能性があり、かかる遊離した治療薬は、例えば、濾過によって除去されるかもしれない。例えば、ある実施形態において、活性剤(例えば、ドセタキセル)約20重量パーセント及びポリマー(例えば、PLA−PEG−GL2を約2.5molパーセント及びPLA−PEGを約97.5molパーセント含むかもしれないポリマー)約80重量パーセントを、製剤の製造に使用することができ、これにより、例えば、上記を各々約10重量パーセント活性剤(例えば、ドセタキセル)及び約90重量パーセント含む最終的なナノ粒子が得られるポリマー(ここで、ポリマーはPLA−PEG−GL2を約1.25molパーセント及びPLA−PEGを約98.75molパーセント含むことができる)。かかるプロセスによって、治療薬を約2〜約20重量パーセント、例えば、治療薬を約5、約8、約10、約15重量パーセント含む、患者への投与に適した最終的なナノ粒子を提供することができる。
【0148】
治療薬
本発明によれば、例えば、治療剤(例えば、抗癌剤)、診断薬(例えば、造影剤、放射性核種ならびに蛍光、発光、及び磁性部分)、予防薬(例えば、ワクチン)、及び/または栄養補助剤(例えば、ビタミン、ミネラル等)を含む、任意の薬剤を、開示のナノ粒子によって送達することができる。本発明によって送達される例示的な薬剤には、小分子(例えば、細胞毒性薬)、核酸(例えば、siRNA、RNAi、及びマイクロRNA薬)、タンパク質(例えば、抗体)、ペプチド、脂質、炭水化物、ホルモン、金属、放射性元素及び化合物、薬剤、ワクチン、免疫学的薬剤等、及び/またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、該送達される薬剤は、癌(例えば、前立腺癌)の治療に有用な薬剤である。
【0149】
例えば、標的化部分は、対象の特定の部位を標的化すること、または粒子をこの部位に局在化させることができ、該ペイロードをそれらの部位に送達することができる。ある具体的な実施形態において、薬剤または他のペイロードを使用する場合は、薬剤または他のペイロードを、該粒子から徐放様式で放出することができ、特定の標的部位(例えば、腫瘍)と局所的に相互作用することができる。本明細書で使用される(例えば、「徐放システム」という文脈において)「徐放」という用語(及び該用語の変形)は、一般的に、選択された部位での、または制御可能な速度、間隔及び/もしくは量での物質(例えば、薬剤)の放出を包含することを意味する。徐放は、実質的に持続的な送達、パターン化された送達(例えば、定期的または不定期的な時間の間隔で中断される、一定期間にわたる断続的な送達)及び選択された物質のボーラスの送達(例えば、比較的短時間(例えば、数秒間または数分間)の場合は、所定の個別の量として)を包含するが、必ずしもこれらに限定されない。
【0150】
活性剤もしくは薬剤としては、mTor阻害剤(例えば、シロリムス、テムシロリムス、もしくはエベロリムス)等の抗腫瘍薬、ビンクリスチン等のビンカアルカロイド、ジテルペン誘導体もしくはタキサン等のパクリタキセル(もしくはDHA−パクリタキセルもしくはPG−パクリタキセル等のその誘導体)もしくはドセタキセル等の治療薬が挙げられる。
【0151】
一セットの実施形態において、ペイロードは、薬剤または2つ以上の薬剤の組み合わせである。この粒子は、例えば、標的化部分が、薬剤を含有する粒子を患者の特定の局在的な位置に誘導するため、例えば、薬剤の局所的送達を可能にするために用いることができる実施形態において、有用である可能性がある。例示的な治療剤には、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ゲムシタビン(ジェムザール)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、ベノレルビン、5−フルオロウラシル(5‐FU)、ビンブラスチンもしくはビンクリスチン等のビンカアルカロイド;ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT−11、10−ヒドロキシ−7−エチルカンプトテシン(SN38)、ダカルバジン、S−Iカペシタビン、フトラフール、5’−デオキシフルオロウリジン、UFT、エニルウラシル、デオキシシチジン、5−アザシトシン、5−アザデオキシシトシン、アロプリノール、2−クロロアデノシン、トリメトレキサート、アミノプテリン、メチレン−10−デアザアミノプテリン(MDAM)、オキサリプラチン、ピコプラチン、テトラプラチン、サトラプラチン、白金−DACH、オルマプラチン、CI−973、JM−216及びその類似体、エピルビシン、エトポシドホスフェート、9−アミノカンプトテシン、10、11−メチレンジオキシカンプトテシン、カレニテシン、9−ニトロカンプトテシン、TAS103、ビンデシン、L−フェニルアラニンマスタード、イホスファミドメホスファミド(ifophmidemefophmide)、ペルホスファミド、トロホスファミドカルムスチン、セムスチン、エポチロンA−E、トムデックス、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アムサクリン、エトポシドホスフェート、カレニテシン、アシクロビル、バルアシクロビル、ガンシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、ラミブジン、ジドブジン、ベバシズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、5−フルオロウラシル及びそれらの組み合わせ等の化学療法剤が含まれる。
【0152】
潜在的に好適である薬剤の非限定的な例には、例えば、ドセタキセル、ミトキサントロン、及び塩酸ミトキサントロンを含む抗癌剤を含む。タザロテン、テコガランナトリウム、テガフール、テルラピリリウム、テロメラーゼ阻害剤、塩酸テロキサントロン、テモポルフィン、テモゾロマイド、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、テトラクロロデカオキシド、テトラゾミン、タリブラスチン、サリドマイド、チアミプリン、チオコラリン、チオグアニン、チオテパ、トロンボポエチン、トロンボポエチン模倣体、サイマルファシン、サイモポエチン受容体作用薬、チモトリナン、甲状腺刺激ホルモン、チアゾフリン、スズエチルエチオプルプリン、チラパザミン、チタノセンジクロリド、塩酸トポテカン、トプセンチン、トレミフェン、クエン酸トレミフェン、全能性幹細胞因子、翻訳阻害剤、酢酸トレストロン、トレチノイン、トリアセチルウリジン、トリシリビン、トリシリビンホスフェート、トリメトレキサート、グルクロン酸トリメトレキサート、トリプトレリン、トロピセトロン、塩酸ツブロゾール、ツロステリド、チロシンキナーゼ阻害剤、チルホスチン、UBC阻害剤、ウベニメックス、ウラシルマスタード、ウレデパ、尿生殖洞由来成長阻害剤因子、ウロキナーゼ受容体拮抗薬、バプレオチド、バリオリンB、ベラレソール、ベラミン、ベルジン、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、硫酸ビネピジン、硫酸ビングリシネート、硫酸ビンロイロシン、ビノレルビン、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンロシジン、ビンキサルチン、硫酸ビンゾリジン、ビタキシン、ボロゾール、ザノテロン、ゼニプラチン、ジラスコルブ、ジノスタチン、ジノスタチンスチマラマー、または塩酸ゾルビシン等の抗癌剤が挙げられる。
別の実施形態において、ペイロードは、20−エピ−1,25−ジヒドロキシビタミンD3,4−イポメアノール、5−エチニルウラシル、9−ジヒドロタキソール、アビラテロン、アシビシン、アクラルビシン、塩酸アコダゾール、アクロニン、アシルフルベン、アデシペノール、アドゼレシン、アルデスロイキン、全tk拮抗薬、アルトレタミン、アンバムスチン、アンボマイシン、酢酸アメタントロン、アミドックス、アミフォスチン、アミノグルテチミド、アミノレブリン酸、アンルビシン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アンドログラホリド、血管新生阻害剤、拮抗薬D、拮抗薬G、アントラレリックス、アントラマイシン、抗背側化形態形成タンパク質‐1、抗エストロゲン、抗新生物薬、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アフィディコリングリシン酸塩、アポトーシス遺伝子調節因子、アポトーシス調節因子、アプリン酸、ARA‐CDP‐DL‐PTBA、アルギニンデアミナーゼ、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アスラクリン、アタメスタン、アトリムスチン、アキシナスタチン1、アキシナスタチン2、アキシナスタチン3、アザシチジン、アザステロン、アザトキシン、アザチロシン、アゼテパ、アゾトマイシン、バッカチンIII誘導体、バラノール、バチマスタット、ベンゾクロリン、ベンゾデパ、ベンゾイルスタウロスポリン、βラクタム誘導体、βアレチン、βアクラマイB、ベツリン酸、BFGF阻害剤、ビカルタミド、ビスアントレン、塩酸ビスアントレン、ビスアジリジニルスペルミン、ビスナフィド、ビスナフィドジメシラート、ビストラテンA、ビゼルシン、ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、BRC/ABL拮抗薬、ブレフラート、ブレキナールナトリウム、ブロピリミン、ブドチタン、ブスルファン、ブチオニンスルホキシミン、カクチノマイシン、カルシポトリオール、カルホスチンC、カルステロン、カンプトテシン誘導体、カナリポックスIL‐2、カペシタビン、カラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルボキサミド‐アミノ‐トリアゾール、カルボキシアミドトリアゾール、カレストM3、カルムスチン、CARN700、軟骨由来阻害剤、塩酸カルビシン、カルゼルシン、カゼインキナーゼ阻害剤、カスタノスペルミン、セクロピンB、セデフィンゴール、セトロレリックス、クロラムブシル、クロリン、クロロキノキサリンスルホアミド、シカプロスト、シロレマイシン、シスプラチン、シス‐ポルフィリン、クラドリビン、クロミフェン類似体、クロトリマゾール、コリスマイシンA、コリスマイシンB、コンブレタスタチンA4、コンブレタスタチン類似体、コナゲニン、クランベシジン816、クリスナトール、クリスナトールメシラート、クリプトフィシン8、クリプトフィシンA誘導体、キュラシンA、シクロペントアントラキノン、シクロホスファミド、シクロプラタム、シペマイシン、シタラビン、シタラビンオクホスファート、細胞溶解因子、サイトスタチン、ダカルバジン、ダクリキシマブ、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デシタビン、デヒドロジデムニンB、デスロレリン、デキシホスファミド、デキソルマプラチン、デキスラゾキサン、デキスベラパミル、デザグアニン、デザグアニンメシラート、ジアジコン、ジデムニンB、ジドックス、ジエチルノルスペルミン、ジヒドロ‐5‐アザシチジン、ジオキサマイシン、ジフェニルスピロムスチン、ドセタキセル、ドコサノール、ドラステロン、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドロキシフェン、ドロキシフェンクエン酸、ドロモスタノロンプロピオン酸塩、ドロナビノール、デュアゾマイシン、ズオカルマイシンSA、エブセレン、エコムスチン、エダトレキセート、エデルホシン、エドレコロマブ、エフロミチン(eflomithie)、塩酸エフロミチン、エレメン、エルサミトルシン、エミテフル、エンロプラチン、エンプロメート、エピプロピジン、エピルビシン、塩酸エピルビシン、エプリステリド、エルブロゾール、赤血球遺伝子遺伝子治療ベクター系、塩酸エソルビシン、エストラムスチン、エストラムスチン類似体、エストラムスチンホスフェートナトリウム、エストロゲン作用薬、エストロゲン拮抗薬、エタニダゾール、エトポシド、エトポシドホスフェート、エトプリン、エキセメスタン、ファドロゾール、塩酸ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フィルグラスチン、フィナステリド、フラボピリドール、フレゼラスチン、フロキシウリジン、フルアステロン、フルダラビン、フルダラビンホスフェート、塩酸フルオロダウノルニシン、フルオロウラシル、フルロシタビン、ホルフェニメキス、ホルメスタン、フォスキドン、ホストリエシン、フォストリエシンナトリウム、ホテムスチン、ガドリニウムテキサフィリン、硝酸ガリウム、ガロシタビン、ガニレリックス、ゼラチナーゼ阻害剤、ゲムシタビン、塩酸ゲムシタビン、グルタチオン阻害剤、ヘプスルファム、ヘルグリン、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ヒドロキシウレア、ヒペリシン、イバンドロン酸、イダルビシン、塩酸イダルビシン、イドキシフェン、イドラマントン、イホスファミド、イルモフォシン、イロマスタット、イミダゾアクリドン、イミキモド、免疫賦活ペプチド、インスリン様増殖因子‐1受容体阻害剤、インターフェロン作用薬、インターフェロンα‐2A、インターフェロンα‐2B、インターフェロンα‐Nl、インターフェロンα‐N3、インターフェロンβ‐IA、インターフェロンγ‐IB、インターフェロン、インターロイキン、イオベングアン、ヨードドキソルビシン、イプロプラチン、イリノテカン、塩イリノテカン塩酸塩、イロプラクト、イルソグラジン、イソベンガゾール、イソホモハリコンドリンB、イタセトロン、ジャスプラキノリド、カハラリドF、ラメラリン−N−トリアセテート、ランレオチド、酢酸ランレオチド、レイナマイシン、レノグラスチン、硫酸レンチナン、レプトルスタチン、レトロゾール、白血病阻害因子、白血球αインターフェロン、酢酸ロイプロリド、ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン、ロイプロレリン、レバミソール、リアロゾール、塩酸リアロゾール、直鎖ポリアミン類似体、親油性二糖類ペプチド、親油性白金化合物、リソクリナミド、ロバプラチン、ロンブリシン、ロメトレキソール、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、ロニダミン、ロソキサントロン、塩酸ロソキサントロン、ロバスタチン、ロキソリビン、ルルトテカン、ルテチウムテキサフィリン、リソフィリン、溶解性ペプチド、マイタンシン、マンノスタチンA、マリマスタット、マソプロコール、マスピン、マトリリシン阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、マイタンシン、塩酸メクロレタミン、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルバロン、メルカプトプリン、メテレリン、メチオニナーゼ、メトトレキセート、メトトレキセートナトリウム、メトクロプラミド、メトプリン、メツレデパ、微細藻類プロテインキナーゼC阻害剤、MIF阻害剤、ミフェプリストン、ミルテホシン、ミリモスチム、ミスマッチ二本鎖RNA、ミチンドミド、ミトカルシン、ミトクロミン、ミトギリン、ミトグアゾン、ミトラクトール、マイトマルシン、マイトマイシン、マイトマイシン類似体、ミトナフィド、ミトスペル、ミトタン、ミトトキシン繊維芽細胞増殖因子−サポリン、ミトキサントロン、塩酸ミトキサントロン、モファロテン、モルグラモスチン、モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、モノホスホリルリピドA/マイコバクテリア細胞壁SK、モピダモル、多剤耐性遺伝子阻害剤、多発性腫瘍抑制因子1系治療剤、マスタード抗癌剤、マイカペルオキシドB、マイコバクテリア細胞壁抽出物、ミコフェノール酸、ミリアポロン、n‐アセチルジナリン、ナファレリン、ナグレスチプ、ナロキソン/ペンタゾシン、ナパビン、ナフテルピン、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ネモルビシン、ネリドロン酸、中性エンドペプチダーゼ、ニルタミド、ニサマイシン、酸化窒素調節物質、窒素酸化物酸化防止剤、ニトルリン、ノコダゾール、ノガラマイシン、n‐置換ベンズアミド、O6‐ベンジルグアニン、オクトレチド、オキセノン、オリゴヌクレオチド、オナプリストン、オンダンセトロン、オラシン、経口サイトカイン誘導物質、オルマプラチン、オサテロン、オキサリプラチン、オキサウノマイシン、オキシスラン、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、パクリタキセル誘導体、パラウアミン、パルミトイルリゾキシン、パミドロン酸、パナキシトリオール、パノミフェン、パラバクチン、パゼリプチン、ペガスパルガーゼ、ペルデシン、ペリオマイシン、ペンタムスチン、ペントサンポリ硫酸ナトリウム、ペントスタチン、ペントロゾール、硫酸ペプロマイシン、ペルフルブロン、ペルホスファミド、ぺリリルアルコール、フェナジノマイシン、酢酸フェニル、ホスファターゼ阻害剤、ピシバニル、塩酸ピロカルピン、ピポブロマン、ピポスルファン、ピラルビシン、ピリトレキシム、塩酸ピロキサントロン、プラセチンA、プラセチンB、プラスミノーゲン活性化剤阻害剤、白金錯体、白金化合物、白金‐トリアミン錯体、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、塩酸プロカルバジン、プロピルビス−アクリドン、プロスタグランジンJ2、前立腺癌抗アンドロゲン、プロテアソーム阻害剤、タンパク質Aに基づく免疫調節物質、タンパク質キナーゼC阻害剤、タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤、ピューロマイシン、塩酸ピューロマイシン、
プルプリン、ピラゾフリン、ピラゾロアクリジン、ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレン複合体、RAF拮抗薬、ラルチトレクスド、ラモセトロン、RASファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、RAS阻害剤、RAS‐GAP阻害剤、レテルリプチン脱メチル化、レニウムRE186エチドロネート、リゾキシン、リボプリン、リボザイム、RHレチンアミド、RNAi、ロゲルイミド、ロヒツキン、ロムルチド、ロキニメックス、ルビギノンBl、ルボキシル、サフィンゴール、塩酸サフィンゴール、サイントピン、サルクヌ、サルコフィトールA、サルグラモスチン、SDI1模倣物、セムスチン、セネセンス由来阻害剤1、センスオリゴヌクレオチド、シグナル伝達阻害剤、シグナル伝達調節物質、シムトラゼン、単鎖抗原結合タンパク質、シゾフィラン、ソブゾキサン、ナトリウムボロカプテート、フェニル酢酸ナトリウム、ソルベロール、ソマトメジン結合タンパク質、ソネルミン、スパルフォセートナトリウム、スパルフォシン酸、スパルソマイシン、スピカマイシンD、塩酸スピロゲルマニウム、スピロムスチン、スピロプラチン、スプレノペンチン、スポンジスタン1、スクアラミン、幹細胞阻害剤、幹細胞分裂阻害剤、スチピアミド、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ストロメライシン阻害剤、スルフィノシン、スロフェヌル、超活性血管作用腸管ペプチド拮抗薬、スラディスタ、スラミン、スエインソニン、合成グリコサミノグリカン、タリソマイシン、タリムスチン、タモキシフェンメチオジド、タウロムスチン、タザロテン、テコガランナトリウム、テガフール、テルラピリリウム、テロメラーゼ阻害剤、塩酸テロキサントロン、テモポルフィン、テモゾロマイド、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、テトラクロロデカオキシド、テトラゾミン、タリブラスチン、サリドマイド、チアミプリン、チオコラリン、チオグアニン、チオテパ、トロンボポエチン、トロンボポエチン模倣体、サイマルファシン、サイモポエチン受容体作用薬、チモトリナン、甲状腺刺激ホルモン、チアゾフリン、スズエチルエチオプルプリン、チラパザミン、チタノセンジクロリド、塩酸トポテカン、トプセンチン、トレミフェン、クエン酸トレミフェン、全能性幹細胞因子、翻訳阻害剤、酢酸トレストロン、トレチノイン、トリアセチルウリジン、トリシリビン、トリシリビンホスフェート、トリメトレキサート、グルクロン酸トリメトレキサート、トリプトレリン、トロピセトロン、塩酸ツブロゾール、ツロステリド、チロシンキナーゼ阻害剤、チルホスチン、UBC阻害剤、ウベニメックス、ウラシルマスタード、ウレデパ、尿生殖洞由来成長阻害剤因子、ウロキナーゼ受容体拮抗薬、バプレオチド、バリオリンB、ベラレソール、ベラミン、ベルジン、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、硫酸ビネピジン、硫酸ビングリシネート、硫酸ビンロイロシン、ビノレルビン、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンロシジン、ビンキサルチン、硫酸ビンゾリジン、ビタキシン、ボロゾール、ザノテロン、ゼニプラチン、ジラスコルブ、ジノスタチン、ジノスタチンスチマラマー、または塩酸ゾルビシン等の抗癌剤とすることができる。
【0153】
医薬製剤
ここに開示のナノ粒子は、本発明の別の態様にしたがって、それらを薬学的に許容される担体と化合して医薬組成物を形成することができる。当業者に理解されるように、該担体は、下記に記載する投与経路、標的組織の場所、送達される薬剤、薬剤の送達の時間的経過等に基づいて選択することができる。
【0154】
本発明の医薬組成物は、経口及び非経口経路を含む当該技術分野で既知である任意の手段を用いて患者に投与することができる。本明細書で使用される「患者」という用語は、ヒト及び、例えば、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、及び魚類を含むヒト以外の動物を指す。例えば、ヒト以外の動物は哺乳類(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、霊長類、またはブタ)とすることができる。特定の実施形態において、非経口経路が、消化管中に見出される消化酵素との接触を避けられるので望ましい。かかる実施形態によると、本発明の組成物は、注入によって(例えば、静脈内、皮下または筋肉内、腹腔内への注入)、経直腸的に、経膣的に、局所的に(粉末剤、クリーム剤、軟膏、またはドロップ剤を用いて)、または吸入によって(スプレーを用いて)、投与することができる。
【0155】
ある具体的な実施形態において、本発明のナノ粒子は、それを必要とする対象に、例えば、静脈内点滴または注入によって、全身的に投与される。
【0156】
注射用製剤、例えば、滅菌注射用の水性または油性の懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤及び懸濁化剤を用いて、既知の技術にしたがって処方することができる。滅菌された注射用製剤は、例えば、1、3‐ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射液、懸濁液、またはエマルションであってもよい。使用することができる許容されるビヒクル及び溶媒には、水、リンガー溶液、U.S.P.、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。また、滅菌済みの固定油が、溶媒または懸濁媒体として従来使用されている。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性の固定油を使用することができる。また、オレイン酸等の脂肪酸が、注射液の調製に使用される。1つの実施形態において、本発明の複合体は、1%(w/v)カルボキシメチルセルロースナトリウム及び0.1%(v/v)トウィーン(登録商標)80を含む担体液に懸濁される。注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過によって、または使用前に、滅菌水または他の滅菌注射用媒体に溶解または分散させることができる滅菌固形組成物の形態である滅菌薬剤を組み込むことによって、滅菌することができる。
【0157】
経口投与のための固形剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末剤、及び顆粒剤を含む。かかる固形剤形において、封入されたまたは封入されていない複合体は、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸カルシウム等の、少なくとも1つの不活性な薬学的に許容される賦形剤または担体、及び/または(a)でんぷん、ラクトース、蔗糖、グルコース、マンニトール、及びケイ酸等の充填剤もしくは増量剤、(b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、蔗糖、及びアカシア等の結合剤、(c)グリセロール等の保湿剤、(d)寒天‐寒天、炭酸カルシウム、イモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム等の崩壊剤、(e)パラフィン等の溶液遅延剤、(f)第四級アンモニウム化合物等の吸収促進剤、(g)例えば、セチルアルコール及びグリセロールモノステアリン酸塩等の湿潤剤、(h)カオリン及びベントナイトクレイ等の吸収剤、ならびに(i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑沢剤、またそれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤、及び丸剤の場合は、該剤形は、緩衝剤も含んでいてもよい。
【0158】
PSMA‐標的分子の正確な用量は、個々の医師によって選択され、一般に、用量及び投与は、治療される患者を考慮して、治療される患者に有効量のPSMA‐標的分子を提供するように調節されることを理解されたい。本明細書で使用されるPSMA‐標的分子の「有効量」とは、所望の生物学的応答を起するのに必要な量を指す。当業者には理解されるように、PSMA‐標的分子の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、送達される薬剤、標的組織、投与の経路等の要因に依存して、種々であるかもしれない。例えば、抗癌剤を含有するPSMA−標的分子の有効量は、所望の期間にわたり所望の量だけ腫瘍サイズの縮小をもたらす量である可能性がある。考慮され得る付加的な要因には、病態の重症度、治療される患者の体重及び性別、食生活、投与の時間及び頻度、薬剤の組み合わせ、反応感度、ならびに治療に対する耐性/応答が含まれる。
【0159】
本発明のナノ粒子は、投与の簡便性及び投与量の均一性のために、投与単位形態で処方することができる。本明細書で使用される「投与単位形態」という表現は、治療される患者に適切であるナノ粒子の物理的な個別単位を指す。しかし、本発明の組成物の1日当たりの合計使用量は、適切な医学的判断の範囲において担当医師によって決定されることを理解されたい。いずれのナノ粒子についても、細胞培養アッセイまたは動物モデル(通常、マウス、ウサギ、イヌ、またはブタ)において、治療上有効な用量を始めに予測することが可能である。動物モデルは、望ましい濃度範囲及び投与経路を達成するためにも使用することができる。かかる情報は、その後、ヒトにおいて有用な用量及び投与経路を決定するために使用することができる。ナノ粒子の治療効果及び毒性は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順、例えば、ED50(集団の50%において治療上有効である用量)及びLD50(集団の50%において致死的である用量)を用いて決定することができる。毒性効果と治療効果との用量比は治療係数であり、LD50/ED50として表すことができる。いくつかの実施形態において、高い治療係数を示す医薬組成物が有用である可能性がある。細胞培養アッセイまたは動物試験から得られたデータは、ヒトに使用するための用量の範囲を処方する際に使用することができる。
【0160】
ある実施形態において、本明細書中で開示された組成物は、パラジウムを約10ppm未満、もしくはパラジウムを約8ppm未満、もしくは薬6ppm未満含み得る。例えば、本明細書で提供するのは、ポリマー複合体PLA−PEG−GL2を有するナノ粒子を含む組成物であり、ここで、該組成物は、パラジウム約10ppm未満を有する。
【0161】
例示的な実施形態において、治療薬;分子量が約100g/mol〜500g/molのリガンドに複合化しているPLGA−PEGコポリマーもしくはPLA−PEGコポリマーを含む第1の巨大分子を、ナノ粒子の全ポリマー含有量の約0.1〜約30モルパーセント、もしくは約0.1〜約20モルパーセント、もしくは約0.1〜約10モルパーセント、もしくは約1〜約5モルパーセント;及びPLGA−PEGコポリマーもしくはPLA−PEGコポリマーを含む巨大分子であって、該コポリマーは標的化部分に結合していない第2の巨大分子;及び薬学的に許容される賦形剤を各々含む複数のナノ粒子を含む医薬品組成物を開示する。例えば、第1のコポリマーは、リガンドを全ポリマー含有量に対して、約0.001及び5重量パーセント有していてもよい。
【0162】
いくつかの実施形態において、本明細書中に開示のナノ粒子を含む凍結に適した組成物が考えられ、凍結に適した溶液、例えば、蔗糖溶液、をナノ粒子懸濁液に加える。蔗糖は、例えば、凍結の際に粒子が凝集するのを防ぐ抗凍結剤として使用することができる。例えば、本明細書中で提供するのは、複数の開示されたナノ粒子、蔗糖及び水を含むナノ粒子製剤であって;ここで、該ナノ粒子/蔗糖/水は、約3〜30%/10〜30%/50〜90%(w/w/w)もしくは約5〜10%/10〜15%/80〜90%(w/w/w)である。
【0163】
治療の方法
いくつかの実施形態において、本発明による標的分子は、疾患、疾病及び/または病状の1つもしくは複数の症状もしくは特徴の治療、緩和、寛解、軽減、発症の遅延、進行の阻害、重症度の軽減及び/または発生率を低下させるために使用することができる。いくつかの実施形態において、本発明の標的分子は、固形腫瘍癌、例えば癌及び/または癌細胞を治療するために使用することができる。特定の実施形態において、本発明の標的分子は、癌の治療を必要とする対象の癌細胞表面または腫瘍新生血管にPSMAを発現する前立腺または前立腺以外の固形腫瘍の血管新生を含む、任意の癌の治療のために使用することができる。PSMA関連表示の例には、前立腺癌、乳癌、肺非小細胞癌、結腸直腸癌、及び膠芽腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0164】
「癌」という用語は、前癌性及び悪性の癌を含む。癌には、前立腺、胃癌、結腸大腸癌、皮膚癌(例えば、メラノーマまたは基底細胞癌)、肺癌、乳癌、頭頸部癌、気管支癌、膵臓癌、膀胱癌、脳または中枢神経系癌、末梢神経系癌、食道癌、口腔または咽頭癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸または虫垂癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、血液組織(hemtologicltiue)の癌等が含まれるが、これらに限定されない。「癌細胞」は、腫瘍の形態であるか、対象に単独で存在するか(例えば、白血病細胞)、または癌由来の細胞株であってもよい。
【0165】
癌は、様々な身体的症状を伴う可能性がある。癌の症状は、通常、腫瘍の種類及び位置に依存する。例えば、肺癌は、咳、息切れ、及び胸痛を引き起こし、一方大腸癌は、下痢、便秘、及び血便を引き起こすことが多い。しかし、わずかではあるが例を挙げると、通常、以下の症状が一般に多くの癌に関連している:熱、悪寒、寝汗、咳、呼吸困難、体重減少、食欲減退、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、貧血、黄疸、肝腫大、喀血、疲労、倦怠感、認知障害、うつ状態、ホルモン障害、好中球減少症、疼痛、難治性皮膚潰瘍(o‐heligore)、リンパ節肥大、末梢神経障害、及び性機能障害。
【0166】
本発明の1つの態様において、癌(例えば、前立腺癌、乳癌)の治療のための方法が提供される。いくつかの実施形態において、癌の治療は、本発明の標的分子を必要とする対象に、所望の結果を達成するために必要な量及び時間で、治療上有効な量の本発明の標的分子を投与するステップを含む。本発明の特定の実施形態において、本発明の標的分子の「治療上有効な量」は、癌の1つもしくは複数の症状もしくは特徴の治療、緩和、寛解、軽減、発症の遅延、進行の阻害、重症度の軽減、及び/または発生率を低下させるために効果的な量である。
【0167】
本発明の1つの態様において、癌(例えば、前立腺癌)に罹患する対象に本発明の組成物を投与するための方法が提供される。いくつかの実施形態において、粒子は、所望の結果(すなわち、癌の治療)を達成するために必要な量及び時間で対象に投与される。本発明の特定の実施形態において、本発明の標的分子の「治療上有効な量」は、癌の1つもしくは複数の症状もしくは特徴の治療、緩和、寛解、軽減、発症の遅延、進行の阻害、重症度の軽減、及び/または発生率を低下させるために効果的な量である。
【0168】
本発明の治療プロトコルは、治療上有効な量の本発明の標的分子を、健常な個体(すなわち、いずれの癌の症状も示さない、及び/または癌であると診断されていない対象)に投与するステップを含む。例えば、健常な個体は、癌を発症する及び/または癌の症状を発症する前に、本発明の標的分子で免疫を受けることができ、リスクのある個体(例えば、癌の家族歴を有する患者、癌の発症に関連する1つもしくは複数の遺伝子の突然変異を保持する患者、癌の発症に関連する遺伝子多型を有する患者、癌の発症に関連するウイルスに感染している患者、癌の発症に関連する習慣及び/または生活様式を有する患者等)は、癌の発症と実質的に同時(例えば、48時間以内、24位内、または12時間以内)に治療を受けることができる。当然、癌を有することが分かっている個体は、いつでも本発明の治療を受けることができる。
【0169】
他の実施形態において、本発明のナノ粒子は、癌細胞(例えば、前立腺癌細胞)の増殖を阻害するために使用することができる。本明細書で使用される「癌細胞の増殖を阻害する」という用語は、治療を行っていない対照癌細胞の観察されるまたは予想される増殖の速度と比較して癌細胞の増殖の速度が減少されるような、癌細胞の増殖及び/または遊走速度の任意の遅延、癌細胞の増殖及び/または遊走の停止、または癌細胞の死滅を指す。「増殖を阻害する」という用語は、癌細胞もしくは腫瘍のサイズの縮小または消滅及びその転移可能性の減少を指すものであってもよい。好ましくは、細胞レベルでのかかる阻害は、対象における癌のサイズを縮小させる、増殖を遅延させる、癌の侵襲を減少させる、または転移を予防もしくは阻害することができる。当業者は、様々な好適な指標のいずれかを用いて、癌細胞の増殖が阻害されているかどうかを容易に判定することができる。
【0170】
癌細胞増殖の阻害は、例えば、細胞周期G2/Mでの停止のように、例えば、細胞周期の特定の段階での癌細胞の停止によって証明される。癌細胞増殖の阻害は、癌細胞または腫瘍のサイズの直接的または間接的な測定によっても証明することができる。ヒト癌患者において、かかる測定は、通常、磁気共鳴画像、コンピュータ断層撮影、及びX線等の周知の造影方法を用いて行われる。癌細胞増殖は、循環する癌胎児抗原、前立腺特異的抗原、または他の癌細胞増殖に相関する癌特異的抗原のレベルを判定することにより、間接的にも判定することができる。癌増殖の阻害は、通常、対象の生存期間の延長及び/または健康と福祉の増加にも相関している。
【0171】
また本明細書中で提供するのは、患者に本明細書中で開示する、活性剤を含むナノ粒子を投与する方法であり、この方法では、患者への投与の際に、かかるナノ粒子は、分布容積を実質的に減少させ、及び/または遊離したCmaxを、薬剤の単独での(つまり、開示するナノ粒子としてではない)投与と比較して実質的に減少させる。
【0172】
実施例
ここで本発明を全般的に説明するが、本発明のある態様及び実施形態を説明する目的のみで含まれ、いかなる方法でも本発明を制限することを意図したものではない以下の例を参照することで、より容易に理解し得るであろう。
【0173】
実施例1:低分子量PSMAリガンドの合成(GL2)

原料化合物5g(10.67mmol)を無水DMF150mLに溶解した。この溶液に、臭化アリル(6.3mL、72mmol)及びKCO(1.47g、10.67mmol)を添加した。反応物を2時間撹拌して、溶媒を除去し、粗生成物をAcOEtに溶解してpHが中性になるまでHOで洗浄した。有機相をMgSO(無水)で乾燥させ、蒸発させて5.15g(95%)の物質を得た(CHCl:MeOH=20:1のTLC、Rf=0.9、原料化合物Rf=0.1、ニンヒドリン及び紫外線で検出)。FW508FW286

【0174】
CHCN(50mL)中の化合物(5.15g、10.13mmol)の溶液に、EtNH(20mL、0.19mol)を添加した。反応物を室温で40分間撹拌した。溶媒を除去して化合物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=3:2)で精製し、2.6g(90%)を得た(CHCl:MeOH=10:1のTLC、Rf=0.4、ニンヒドリンで検出(化合物は紫色を有する))。
H−NMR (CDCl, 300 MHz) δ 5.95−5.85 (m, IH, −CHCHCH), 5.36−5.24 (m, 2H, −CHCHCH), 4.62−4.60 (m, 3Η, −CHCHCH, NHBoc), 3.46 (t, 1Η, CH(Lys)), 3.11−3.07 (m, 2Η, CHNHBoc), 1.79 (bs, 2H, NH), 1.79−1.43 (m, 6H, 3CH(LyS)), 1.43 (s, 9Η, Boc).

【0175】
−78℃で撹拌したCHCl(143mL)中のジアリルグルタメート(siallyl glutamate)(3.96g、15mmol)及びトリホスゲン(1.47g、4.95mmol)の溶液に、CHCl(28mL)中のEtN(6.4mL、46mmol)を添加した。反応物を室温まで温めてから、1.5時間撹拌した。次いでCHCl(36mL)溶液中のリジン誘導体(2.6g、9.09mmol)を−78℃で添加し、反応物を室温で12時間撹拌した。この溶液をCHClで希釈し、HOで2回洗浄し、MgSO(無水)上で乾燥させ、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt3:1→2:1→AcOEt)で精製して、4g(82%)を得た(CHCl:MeOH=20:1のTLC、Rf=0.3、ニンヒドリンで検出)。
H−NMR (CDCl, 300 MHz) δ 5.97−5.84 (m, 3H, 3− CHCHCH), 5.50 (bt, 2H, 2NHurea), 5.36−5.20 (m, 6Η, 3−CHCHCH), 4.81 (bs, 1Η, NHBoc), 4.68−4.40 (m, 8Η, 3−CHCHCH, CH(Lys), CH(glu)), 3.09−3.05 (m, 2Η, CHNHBoc), 2.52− 2.39 (m, 2H, CH(glu.)), 2.25−2.14 及び 2.02−1.92 (2m, 2Η, CH(glu.)), 1.87−1.64 (m, 4Η, 2CH(LyS)), 1.51−1.35 (m, 2Η, CH(LyS)), 1.44 (s, 9Η, Boc).

【0176】
乾燥CHCl(40mL)中の化合物(4g、7.42mmol)の溶液に、TFA(9mL)を0℃で添加した。反応物を室温で1時間撹拌した。真空下で完全に乾燥するまで溶媒を除去し、4.1g(定量)を得た(CHCl:MeOH=20:1のTLC、Rf=0.1、ニンヒドリンで検出)。
H−NMR (CDCl, 300 MHz) δ 6.27− 6.16 (2d, 2H, 2NHurea), 5.96−5.82 (m, 3Η, 3−CHCHCH), 5.35−5.20 (m, 6H, 3−CHCHCH), 4.61−4.55 (m, 6Η, 3−CHCHCH), 4.46−4.41 (m, 2H, CH(Lys), CH(glu)), 2.99 (m, 2Η, CHNHBoC), 2.46 (m, 2H, CH(glu.)), 2.23−2.11 及び 2.01−1.88 (2m, 2Η, CH(glu.)), 1.88−1.67 (m, 4Η, 2CH(LyS)), 1.45 (m, 2Η, CH(LyS)).

【0177】
DMF(無水)(62mL)中の化合物(2g、3.6mmol)の溶液に、Pd(PPh(0.7g、0.6mmol)及びモルホリン(5.4mL、60.7mmol)を、アルゴン下にて0℃で添加した。反応物を室温で1時間撹拌した。溶媒を除去した。粗生成物をCHClで2回洗浄し、次いでHOに溶解した。この溶液に、NOH(0.01N)の希釈溶液をpHが強塩基性になるまで添加した。減圧下で溶媒を除去した。固体をCHCl、AcOEt、及び1:1のMeOH‐CHCl混合物で再び洗浄し、HOに溶解してアンバーライトIR‐120H樹脂で中和した。溶媒を蒸発させ、化合物をMeOHで沈殿させて、1g(87%)のGL2を得た。
H−NMR (DO, 300 MHz) δ 4.07 (m, 2H, CH(Lys), CH(glu)), 2.98 (m, 2Η, CHNH), 2.36 (m, 2H, CH(glu.)), 2.08−2.00 (m, 1Η, CH(glu)), 1.93−1.60 (m, 5Η, CH(glu.), 2CH(LyS)), 1.41 (m, 2Η, CH(LyS)).Mass ESI: 320.47 [M + H], 342.42 [M + Na].
【0178】
実施例2:低分子量PSMAリガンド(GLl)の合成

原料化合物130mg(0.258mmol)をDMF(無水)3mLに溶解した。この溶液に、臭化アリル(150μL、1.72mmol)及びKCO(41mg、0.3mmol)を添加した。反応物を1時間撹拌して、溶媒を除去し、粗生成物をAcOEtに溶解して、pHが中性になるまでHOで洗浄した。有機相をMgSO(無水)で乾燥させ、蒸発させて130mg(93%)を得た(CHCl:MeOH=20:1のTLC、Rf=0.9、原料化合物Rf=0.1、ニンヒドリン及び紫外線で検出)。
H−NMR (CDCl, 300 MHz) δ 7.81−7.05 (12H, 芳香族), 6.81 (bs, IH, NHFmoc), 5.93−5.81 (m, 1Η, −CHCHCH), 5.35− 5.24 (m, 2H, −CHCHCH), 5.00 (bd, 1Η, NHboc), 4.61−4.53 (m, 5Η, −CHCHCH, CH(Fmoc), CHφheala.)), 4.28 (t, 1Η, CH(Fmoc)), 3.12−2.98 (m, 2Η, CH(pheala.), 1.44 (s, 9Η, Boc).

【0179】
乾燥CHCl(2mL)中の化合物(120mg、0.221mmol)の溶液に、0℃でTFA(1mL)を添加した。反応物を室温で1時間撹拌した。真空下で溶媒を除去し、水を添加して再び除去し、CHClを添加して再び除去して、完全に乾燥させ、120mg(定量)を得た(CHCl:MeOH=20:1のTLC、Rf=0.1、ニンヒドリン及び紫外線で検出)。
H−NMR (CDCl, 300 MHz) δ 7.80−7.00 (13H, 芳香族, NHFmoc), 5.90−5.75 (m, 1Η, −CHCHCH), 5.35−5.19 (m, 3H, −CHCHCH, NHboc), 4.70−4.40 (2m, 5Η, −CHCHCH, CH(Fmoc), CHφheala.)), 4.20 (t, 1Η, CH(Fmoc)), 3.40−3.05 (m, 2Η, CH(pheala.)).

【0180】
−78℃で撹拌したCHCl(4mL)中のジアリルグルタメート(110mg、0.42mmol)及びトリホスゲン(43mg、0.14mmol)の溶液に、CHCl(0.8mL)中のEtN(180μL、1.3mmol)を添加した。反応混合物を室温まで温めてから、1.5時間撹拌した。次いで、CHCl(1mL)及びEtN(70μL、0.5mmol)の溶液中のフェニルアラニン誘導体(140mg、0.251mmol)を−78℃で添加して、反応物を室温で12時間撹拌した。溶液をCHClで希釈して、HOで2回洗浄し、MgSO(無水)上で乾燥させて、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=3:1)で精製して100mg(57%)を得た(CHCl:MeOH=20:1のTLC、Rf=0.3、ニンヒドリン及び紫外線で検出)。
H−NMR (CDCl, 300 MHz) δ 7.80−6.95 (13H, 芳香族, NHFmoc), 5.98−5.82 (m, 3Η, 3−CHCHCH), 5.54 (bd, IH, NHurea) ,5.43−5.19 (m, 7Η, 3−CHCHCH, NHurea), 4.85−4.78 (m, 1Η, CHφheala.)), 4.67−4.50 (m, 9Η, 3−CHCHCH, CH(Fmoc), CH(glu.)), 4.28 (t, 1Η, CH(Fmoc)), 3.05 (d, 2Η, CH(pheala.)), 2.53−2.33 (m, 2Η, CH(glu.)), 2.25−2.11 及び 1.98−1.80 (2m, 2Η, CH(glu.)).

【0181】
CHCN(1mL)中の原料物質(60mg、0.086mmol)の溶液に、EtNH(1mL、10mmol)を添加した。反応物を室温で40分撹拌した。溶媒を除去して、化合物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=2:1)で精製して35mg(85%)を得た(CHCl:MeOH=10:1のTLC、Rf=0.5、原料化合物Rf=0.75、ニンヒドリン(化合物は紫色を有する)及び紫外線で検出)。
H−NMR (CDCl, 300 MHz) δ 6.85 及び 6.55 (2d, 4H, 芳香族), 5.98−5.82 (m, 3H, 3− CHCHCH), 5.56 (bd, IH, NHurea) ,5.44−5.18 (m, 7Η, 3−CHCHCH, NHurea), 4.79−4.72 (m, 1Η, CHφheala.)), 4.65−4.49 (m, 7Η, 3−CHCHCH, CH(glu.)), 3.64 (bs, 2Η, NH), 3.02−2.89 (m, 2Η, CH(pheala.)), 2.49−2.31 (m, 2Η, CH(glu.)), 2.20−2.09 及び 1.91−1.78 (2m, 2Η, CH(glu.)).

【0182】
DMF(無水、1.5mL)中の化合物(50mg、0.105mmol)の溶液に、Pd(PPh(21mg、0.018mmol)及びモルホリン(154μL、1.77mmol)をアルゴン下にて0℃で添加した。反応物を室温で1時間撹拌した。溶媒を除去した。粗生成物をCHClで2回洗浄してから、HOに溶解した。この溶液に、NOH(0.01N)の希釈溶液をpHが強塩基性になるまで添加した。減圧下で溶媒を除去した。固体をCHCl、AcOEt、及び1:1のMeOH‐CHCl混合物で再び洗浄し、HOに溶解してアンバーライトIR‐120H樹脂で中和した。溶媒を蒸発させ、化合物をMeOHで沈殿させて、25mg(67%)のGL1を得た。
H−NMR (DO, 300 MHz) δ 7.08 及び 6.79 (2d, 4H, 芳香族), 4.21 (m, IH, CH(pheala.)), 3.90 (m, 1Η, CH(glu.)), 2.99 及び 2.82 (2dd, 2Η, CH(pheala.)), 2.22−2.11 (m, 2Η, CH(glu.)), 2.05−1.70 (2m, 2Η, CH(glu.)). 13C−NMR (DO, 75 MHz) δ 176.8, 174.5, 173.9 (3 COO), 153.3 (NHCONH), 138.8 (HN−C(Ph)), 124.5, 122.9, 110.9 (aromatics), 51.3 (CH(pheala.)), 49.8 (CH(glu.)), 31.8 (CH(pheala.)), 28.4 及び 23.6 (2CH−glu.)).Mass ESI: 354.19 [M + H], 376.23 [M + Na].
【0183】
実施例3:PLA−PEGの調製
d、l−ラクチドと、マクロ開始剤としてのα−ヒドロキシ−ω−メトキシポリ(エチレングリコール)との開環重合によって合成し、2−エチルヘキサン酸スズ(II)を触媒として使用して高温で、以下に示すとおり行う(PEG Mn 〜 5,000 Da; PLA Mn 〜 16,000 Da; PEG−PLA Mn 〜 21,000 Da)

【0184】
ポリマーをジクロロメタン中に溶解し、ヘキサンとジエチルエーテルの混合物中で沈殿させることによって、ポリマーを精製する。この工程から回収したポリマーは、オーブンで乾燥させる。
【0185】
実施例4:PLA−PEG−リガンドの調製
図2に示す合成は、先ずFMOC、BOCリジンをジメチルホルムアミド中の臭化アリル及び炭酸カリウムと反応させることでFMOC、BOCリジンをFMOC、BOC、アリルリジンへ変換し、次いでアセトニトリル中のジエチルアミンで処理することで行う。次にBOC、アリルリジンをトリホスゲン及びジアリルグルタメートと反応させ、その後塩化メチレン中のトリフルオロ酢酸で処理して、化合物「GL2P」を形成する。
【0186】
次にGL2P中のリジンの側鎖アミンを、ヒドロキシl−PEG−カルボン酸を加えることによってEDC及びNHSを用いてPEG化する。GL2PのPEGへの複合化は、アミド結合によって行われる。この得られた化合物の構造を「HO−PEG−GL2P」と標識付けする。PEG化の後、開始剤としてのHO−PEG−GL2P中でのd、l−ラクチドの水酸基との開環重合(ROP)を利用して、エステル結合を介してポリラクチドブロックポリマーをHO−PEG−GL2Pに付着させ、「PLA−PEG−GL2P」を得る。2−エチルヘキサン酸スズ(II)を開環重合の触媒として用いる。
【0187】
最後に、PLA−PEG−GL2P上のアリル基を、ジクロロメタン中のモルフォリン及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(触媒として)を使用して除去し、最終的な生成物PLA−PEG−リガンドを得る。最終的な化合物を30/70%(v/v)ジエチルエーテル/ヘキサン中で沈殿によって精製する。
【0188】
実施例5:ナノ粒子の製造−ナノ沈殿
ナノ粒子は、GLlもしくはGL2リガンドを使用して製造することができる。尿素系PSMA阻害剤GL2は、PSMA結合にとって重要な意味をもたない領域に位置する自由アミノ基を有し、スキーム1に示す手順に従って、市販の出発物質Boc‐Phe(4NHFmoc)‐OH及びグルタミン酸ジアリルから合成される。ナノ粒子はナノ沈殿によって形成される:ポリマーリガンド複合体を、薬剤と、粒子の取り込みを追跡するための他の物質と、を含む水混和性有機溶媒に溶解する。リガンドの表面密度を調節するために、追加として非官能化ポリマーを含ませることができる。ポリマー溶液を水性相に分散させ、その結果生じる粒子を濾過によって回収する。該粒子は、乾燥させてもよく、または生体外での細胞取り込みもしくは生体内での前立腺腫瘍に対する抗腫瘍効果を調べることもできる。
スキーム1

【0189】
実施例6:ナノ粒子の製造−乳化プロセス
2%ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)−ポリ(エチレングリコール)ジブロックコポリマー(PLGA−PEG; 45kDa〜5kDa)、2%ポリ(D、L−ラクチド)(PLA;8.5kDa)、及び1%ドセタキセル(DTXL)を含む、固形分(wt%)5%からなる有機相を形成する。ここでドセタキセルは、

の構造を有する。
【0190】
有機溶媒は、酢酸エチル(EA)及びベンジルアルコール(BA)であり、BAは有機相を20%(wt%)含む。BAは、一つにはドセタキセルを可溶化するために使用する。有機相と水相を、約1:5の比率(油相:水相)で混合する。ここで、水相は、水中の0.5%コール酸ナトリウム、2%BA、及び4%EA(wt%)からなる。一次エマルションを、該二相を単純な混合もしくはロータステータホモジナイザーを用いて混合することによって形成する。次に一次エマルションを、プローブソニケータもしくは高圧ホモジナイザーを使用してファインエマルションに形成する。
【0191】
次いでファインエマルションを、脱イオン水の冷却した急冷液(0−5℃)に混合しながら加えることによって急冷する。急冷液:エマルションの比率は、約8.5:1である。次に、トウィーン80の25%溶液(wt%)を急冷液に加えて、全体で約2%のトウィーン80を得る。次に、遠心分離もしくは限外濾過/ダイアフィルトレーションのいずれかによってナノ粒子を単離する。ナノ粒子懸濁液は、10wt%蔗糖等の凍結保護物質で凍結することができる。
【0192】
PLGA−PEGコポリマーの他にPLAを加えることで、薬剤装填が有意に上昇することが判明した。BAを使用すること自体もまた同様に封入効率を高め、DTXLの可溶化にBAが必要でない場合でも封入効率を高めることが考えられる。急冷液の温度が薬剤装填に重要な役割を果たすことが判明した。冷急冷液(一般的に0〜5℃に維持される)を使用することによって、薬剤装填が、室温の急冷液を使用した場合の薬剤装填と比較して、有意に上昇した。
【0193】
DTXLは水溶性が非常に低く、未封入のDTXLは、形成されたナノ粒子から単離することが困難な結晶をしばしば形成することが判明した。ファインエマルションを急冷した後、薬剤可溶化剤 (トウィーン80)を加えた。トウィーン80は、効果的にDTXL結晶を可溶化し、DTXL結晶の形成を防ぐことによって、及び/またはファインエマルションを急冷する場合に形成するあらゆるDTXL結晶を効果的に可溶化することによって、未封入のDTXLからのナノ粒子の単離を可能にすることが出来る。ナノエマルション条件の標準的なセットは、以下の通りであった。
対照:
【表1】

【0194】
添加剤としてホモポリマーを加えることで、以下に示すように、薬剤装填が増大した一方、粒度は低下した。
【表2】

【0195】
急冷温度
ここで、比較のために用いた対照は、それらは既に冷急冷温度で行われているため、上記の対照とは異なる。
【表3】

例示的なパラメータ
【表4】

【0196】
実施例7 乳化プロセス
下記のプロセスでは、固形分が高い油相を使用する。プロセスの全体的フローチャートを図3に示し、プロセスフロー図を図4に示す。乳化油相の溶媒含有量を低下させることで、ナノ粒子を硬化させる際に急冷液に失われる薬剤が減少した。粘稠性が過度に高くなると、−100nmの液滴に乳化する能力を制限する恐れがあるため、これを避けるように固形分及び溶媒系を選択する。相対的に低分子量のコポリマー(〜16kDa〜5kDaのPLA−PEG)及び低分子量のホモポリマー(〜7kDaのPLA)を使用すると、製剤の固形分が多くても粘稠性が十分低くなる。溶媒系は、薬剤を溶液中で高濃度で保持するのに適切な溶媒和力を有するものを選択する。共溶媒系(一般に酢酸エチル:ベンジルアルコール=79:21)の使用によって、ポリマー:ドセタキセル=80:20配合の、固形分が最高50%の連続溶液が可能となる。
【0197】
ドセタキセル(DTXL)とポリマー(ホモポリマー、コポリマー、及びリガンドを有するコポリマー)の混合物からなる有機相を形成する。有機相を水相約1:5の比率(油相:水相)で混合する。ここで、水相は、界面活性剤及び数種類の溶解された溶媒からなる。高い薬剤装填を達成するために、有機相中に約30%の固形分を使用する。
【0198】
ドセタキセル(DTXL)とポリマー(ホモポリマー、コポリマー、及びリガンドを有するコポリマー)の混合物からなる有機相を形成する。組成物及び有機溶媒を表に列記する。有機相と水相を、約1:5の比率(油相:水相)で混合する。ここで、水相は、界面活性剤及び数種類の溶解された溶媒からなる。この二相を単純な混合もしくはロータステータホモジナイザーを用いて混合することによって、一次エマルションを形成する。次に、高圧ホモジナイザーを使用して一次エマルションをファインエマルションに形成する。その後、脱イオン水を加えて混合しながらファインエマルションを所定温度(表に列挙)で急冷する。急冷液:エマルションの比率は、約8.5:1である。次に、トウィーン80の25%(wt%)溶液を急冷液に加えて、全体で約2%のトウィーン80を得る。このことは、遊離した未封入の薬剤を溶解する役割を果たし、ナノ粒子の単離工程を実行可能にする。次に、遠心分離もしくは限外濾過/ダイアフィルトレーションのいずれかによってナノ粒子を単離する。
【0199】
対照
ナノエマルション条件の標準的なセットを、以下のように提供する。リガンド非含有粒子(非標的ナノ粒子)を形成する。
【表5】

固形分10%
【表6】

固形分20%
【表7】

固形分40%
【表8】

粒度の減少のために界面活性剤濃度を高くした固形分30%;標的化ナノ粒子バッチ
【表9】

【0200】
実施例8:ナノ粒子の製造−乳化プロセス2
ドセタキセル(DTXL)とポリマー(ホモポリマー、コポリマー、及びリガンドを有するコポリマー)の混合物からなる有機相を形成する。有機相と水相を、約1:5の比率(油相:水相)で混合する。ここで、水相は、界面活性剤及び数種類の溶解された溶媒からなる。高い薬剤装填を達成するために、有機相中に約30%の固形分を使用する。
【0201】
この二相を単純な混合下に、もしくはロータステータホモジナイザーを使用して混合することによって、一次粗エマルションを形成する。ロータ/ステータは均質な乳白色の溶液を生じたが、攪拌バーは粗い見た目のエマルションを生じた。攪拌バーの方法では、油相の液滴の供給槽側への付着が著しくなることが観察され、粗エマルションのサイズは品質に重要なプロセスパラメータではないが、歩留り損失もしくは相分離を防ぐために適度な細かさが必要であることを示唆している。従って、大規模においては高速ミキサーが適している可能性があるが、ロータステータを粗エマルション形成の標準分析法として使用する。
【0202】
次に、高圧ホモジナイザーを使用して一次エマルションをファインエマルションに形成する。粗エマルションのサイズは、ホモジナイザーを連続して(103回)通過させた後の粒度に有意に影響しない。M−110−EH(図5)。
【0203】
ホモジナイザーのフィード圧は、得られた粒度に有意な影響を有すること判明した。空気圧及び電気式M−110EHホモジナイザーの両方において、フィード圧を低下させると粒度も減少することが判明した(図6)。従ってM−110EHに使用する、標準操作圧は相互作用チャンバあたり4000〜5000psiであり、これは単位あたりの最小加工圧である。またM−1 10EHは、相互作用チャンバの数が1もしくは2で選べる。これには、制限的なYチャンバが標準で付随し、直列でより非制限的な200μmのZチャンバが付随する。Yチャンバを取り外し、代わりにブランクのチャンバ(blank chamber)を使用した場合、粒度が実際に減少したことが判明した。さらに、Yチャンバを取り外すと、加工中のエマルションの流量が有意に増大した。
【0204】
2〜3回通過させた後では粒度は有意に減少せず、連続して通過させると粒度が増加することさえあった。結果を図7にまとめる。ここで、プラシーボの有機相は、25.5%ポリマーストック50:5016.5/5PLA/PEG:8.2PLAで構成した。有機相を標準的な水相で乳化し(O:W=5:1)、ホモジナイザーを別々に複数回通過させ、各通過後少量のエマルションを急冷した。示された規模は、製剤の全固形分を表す。
【0205】
粒度に対する規模の影響は、驚くべき規模依存性を示した。傾向としては、2〜10gのバッチサイズの範囲では、バッチが大きいほど小さい粒子が生成する。この規模依存性は、10g規模より大きなバッチを考慮した場合、なくなることが実証された。油相に使用した固形分の量は約30%であった。図8及び9は、粒度及び薬剤装填に対する固形分濃度の影響を示すが、15−175シリーズは、全バッチがプラシーボであるため例外である。プラシーボバッチについては、固形分%の値は、標準的な20%w/wで存在する薬剤の固形分%を表す。
【0206】
表A:乳化プロセスパラメータの概要
【表10】

【0207】
その後、ファインエマルションを所定温度の脱イオン水に加えて混合しながら急冷する。急冷ユニット操作では、エマルションを冷水性急冷液に攪拌下に加える。これは、油相溶媒の大部分を抽出し、下流の濾過においてナノ粒子を効果的に硬化する役割を果たす。急冷液を冷却することによって、薬剤の封入が有意に改善された。急冷液:エマルションの比率は、約5:1である。
【0208】
トウィーン80の35%(wt%)溶液を急冷液に加えて、全体で約2%のトウィーン80を得る。エマルションを急冷した後、薬剤可溶化剤として作用するトウィーン80の溶液を加え、濾過中に未封入の薬剤を効果的に除去することを可能とする。表Bは、各急冷プロセスパラメータを示す。
表B:急冷プロセスパラメータの概要
【表11】

【0209】
温度は、十分に希薄な懸濁液(溶媒の濃度が十分に低い)で、粒子のTg未満に保つために十分低く維持せねばならない。Q:E(急冷液:エマルション)比率が十分に高くない場合、溶媒の濃度が高いため粒子が可塑化し、薬剤の漏れが起こる可能性がある。逆に、もっと低い温度では、低Q:E比率(〜−3:1)での薬剤の封入を増加することができ、プロセスをより効率的に行う可能にする。
【0210】
次に、タンジェンシャルフロー濾過プロセスによってナノ粒子を単離し、ナノ粒子懸濁液を濃縮、溶媒、遊離薬剤、及び薬剤可溶化剤を急冷液から水中へ緩衝交換する。分画分子量カットオフ(MWCO)が300の再生セルロース膜を使用する。
【0211】
定容ダイアフィルトレーション(DF)を行って、急冷液、遊離薬剤及びトウィーン80を除去する。定容DFを行うには、濾液を除去するのと同じ比率で、緩衝剤を保持液槽に加える。TFF操作のプロセスパラメータの概要を、表Cに示す。クロスフロー速度は、溶液が供給経路を通過する流速や、膜を透過する流速を指す。この流れが、膜を詰まらせ及び濾液の流れを限定する分子を押し流す力を供給する。膜間差圧(transmembrane pressure)は、透過性の分子を膜を通過させる力である。
表C:TFFパラメータ
【表12】

【0212】
次に、濾過したナノ粒子のスラリーを、ワークアップ(workup)中に高温まで熱サイクルにかける。ナノ粒子を25℃の温度へ初めて曝露した後非常に迅速に、少量(一般に5〜10%)の封入された薬剤がナノ粒子から放出される。この現象のため、ワークアップ中を通して低温に保持しているバッチは、薬剤が遊離しやすく、もしくは送達中や凍結せずに保管している間に薬剤が結晶を形成しやすいが。ワークアップ中にナノ粒子のスラリーを高温に曝露することによって、この「緩やかに封入された」薬剤を除去することで、薬剤装填が少し低下する一方、生成物の安定性を改善することができる。表Dは、25℃で処理を行った2例の概要を示す。その他の実験では、2〜4ダイアボリュームを25℃に曝露した後でも、封入された薬剤の大部分を失わず、生成物は十分安定していることが分かった25℃での処理の前の低温処理の量として5ダイアボリュームを使用する。
表D:
【表13】

25℃でのワークアップのサブロットを、少なくとも5ダイアボリュームの後に様々な期間25℃に曝露した。25℃に曝露したサブロットが複数の存在したため、範囲を報告する。
安定性データは、スラリー中で結晶が形成される(顕微鏡で観察可能)前に最終的な生成物が25℃で10〜50mg/mlのナノ粒子の濃度で保持され得る時間を表す。
インビトロバースト(In vitro burst)は、最初の時点(本質的に直ちに)で放出される薬剤を表す。
【0213】
濾過プロセス後に、ナノ粒子懸濁液を滅菌用フィルター(絶対孔径(Absolute)0.2μm)を通過させる。プロセスに対する適切な濾過面積/時間を使用するために、前置フィルターを使用して、滅菌用フィルターを保護する。値は、表Eに概要を示すとおりである。
表E:
【表14】

【0214】
濾過トレインは、Ertel Alsop Micromedia XLデプスフィルターM953P膜(公称孔径(Nominal)0.2μm)であり;Pall SUPRAcap with Seitz EKSPデプスフィルター媒体(公称孔径0.1〜0.3μm);Pall Life Sciences Supor EKV0.65/0.2ミクロン滅菌グレードPESフィルター。
【0215】
デプスフィルターについてはナノ粒子1kgあたり0.2m濾過表面積を、滅菌用フィルターについてはナノ粒子1kgあたり1.3m2の濾過表面積を使用することができる。
【0216】
実施例9
例えば、PEG、本明細書中で説明した化学療法薬に複合化した、及び任意にGLlもしくはGL2に複合化した生体適合性ポリマーを含む標的特異的ナノ粒子を製造することができる。例示的なナノ粒子を、下記の表1に示す。
【表15−1】

【表15−2】

【表15−3】

【0217】
実施例10
表2に示すナノ粒子を、実施例8の手順を使用して製造する。
PLGA−PEGの巨大分子及びPLGA−PEG−小分子リガンド(SML)の巨大分子を含むナノ粒子を、下記の研究1及び2に示すように製造した。研究3及び4において、PLA−PEGの巨大分子、PLGA−PEG−SMLの巨大分子、及びPLAの巨大分子を含むナノ粒子を製造した(DB=ジブロックコポリマー)。
【0218】
小分子標的化部分−官能化巨大分子と非官能化巨大分子との比率は調節することが出来、研究1を使用して、官能化巨大分子が約0.94モル%、4.63モル%及び9.01モル%のポリマー組成を有するナノ粒子を製造することができる(「全ポリのDB−GL2モル%」参照)。さらに、これらの方法を使用して、小分子リガンドを全ポリマーに対して約0.015、0.073及び0.143重量%を含むナノ粒子を製造することができる(「GL2wrtポリWt.%。」を参照)。
【0219】
また、ナノ粒子のポリマー組成全体の約0.1−30、例えば、0.1−20、例えば、0.1−10モルパーセントを構成する官能化ポリマーを有するナノ粒子も、全ポリマーに対して低分子量リガンドを0.001〜5、例えば、0.001〜2、例えば、0.001〜1重量パーセントを有するナノ粒子を同様に製造することができる。
【表16−1】

【表16−2】

【0220】
実施例11
種々のナノ粒子製剤を、表Fに説明、比較するように、実施例8の手順を使用して形成する。
【表17】

【0221】
図10に示すように、最適な粒度を、ホモポリマーPLAを使用せずに、また著しく薬剤装填を損なわずに達成することができる。PLAホモポリマーを有するバッチは、コポリマーのみを使用して製造したバッチより著しく速く薬剤を放出する図11)。様々なポリマーの種類及び分子量は、薬剤装填及び粒度の最適化に付加価値を与えなかった。逆に、「代替ポリマー」タイプの全固形分15%では、粒度は概して標的サイズの100〜120mより大きかった。5wt。%で導入したセチルアルコールは、概してインビトロ放出の速度を上昇させた(図12)。
【0222】
実施例12 抗凍結剤
脱イオン水単独中でナノエマルションナノ粒子の懸濁液を凍結すると、粒子が凝集する。これは、ナノ粒子表面でのPEG鎖の結晶化及びもつれのためであると考えられている(Jaeghere et al; Pharmaceutical Research 16(6), p 859− 852)。糖系の添加剤(蔗糖、トレハロース、もしくはマンニトール)は、凍結解凍条件下で、希薄な(〜10mg/ml)ナノ粒子懸濁液に対して1wt%の低濃度で、これらのナノ粒子を凍結保護するように作用し得る。ある製剤は、蔗糖を10wt%含むが、これは必要量に対して過剰量の蔗糖であり、生理食塩水と同じ浸透圧である。
【0223】
表Gは、16/5PLA−PEGコポリマーが凍結解凍による凝集を起こしにくいことを示す。
【表18】

【0224】
実施例13 パラジウムの除去
ヒトの臨床試験における用量レベル(ug/日)に基づき、PLA−PEG−GL2組成物中の最大許容パラジウム濃度は約10ppmである。ポリマー(PLA−PEG−GL2)のジクロロメタン(DCM)溶液(20もしくは35mg/mL)を、樹脂カラム(DCM10mLで予備溶媒和)5gに装填し、次いで重力下でDCMを30mL用いて溶出した。室温で回転蒸発の後真空乾燥を行って溶媒を除去し、ポリマーを回収した。ポリマーの回収を、重量測定で調べ、残留パラジウム含有量を、ガルブレイスラボラトリーズ社(Galbraith Laboratories Inc.)の誘導結合プラズマ(ICP)分光法によって調べた。
【表19】

【0225】
表Hから分かるように、チオール、TMT、尿素及びチオ尿素の機能性によって、評価される単位樹脂重量当りのポリマー装填におけるパラジウム濃度が50ppm未満となった。しかし、TMT(トリメルカプトトリアジン)樹脂のみは、(>90%)ポリマー回収率が良好であった。また、TMT樹脂はパラジウム含有量が許容閾値の10ppm未満であった。結果には、用いた実験条件に依存するいくつかの可変性があると思われる。特に、パラジウムの回収は、ポリマーを1050mg装填したTMTを5g樹脂カラムに充填した場合により効果的である。これは、これらの実験条件におけるポリマー種及びパラジウム触媒の滞留時間が長いためかもしれない。
【0226】
実施例14 製剤
PLA−PEG−リガンド、PLA、PLA−PEG、及びドセタキセルのナノ粒子を含む製剤を蔗糖/水組成物中で形成する。
【表20】

【0227】
実施例15 インビトロ放出
Aインビトロ放出方法を用いて、周囲条件と37℃の条件の両方でこれらのナノ粒子からの初期バースト相放出を調べた。沈下条件を維持し、ナノ粒子が放出試料に入るのを防ぐために、透析システムを設計した。100nm粒子のペレット化が可能な超遠心分離機を得た後、透析膜を取り除き、遠心分離を用いて放出された薬剤を封入された薬剤から分離した。
【0228】
透析システムは以下の通りである:DI水中のドセタキセルナノ粒子のスラリー3mL(約250μg/mL薬剤/PLGA/PLAナノ粒子、固体濃度2.5mg/mLに対応する)を、ピペットによって300kDaMWCO透析器のインナーチューブ内に入れる。ナノ粒子は、この媒体あの懸濁液である。透析器を、放出された媒体(PBS中2.5%ヒドロキシルベータシクロデキストリン)130mlを含有するガラスびん内に入れ、これを、膜と外側溶液の界面における不攪拌水層の形成を防ぐため、振盪機を使用して連続して150rpmで攪拌する。所定の時点において、試料の一定分量(1mL)をouter溶液(透析物)から抜き取り、そのドセタキセル濃度をHPLCによって分析した。
【0229】
遠心分離器は、同様の条件で、懸濁液分配量を低下させ、透析袋なしで運転した。60,000g/30分間で試料を遠心分離し、上清をアッセイして薬剤の含有量を調べ、放出された薬剤を測定する。
【0230】
実施例16 ドセタキセルナノ粒子のインビトロ放出
実施例8で製造したドセタキセルナノ粒子の懸濁液(ドセタキセル10重量%及びポリマー(PLA−PEG−GL2 1.25wt%及びPLA−PEG 98.75wt%、MPLA=16Da;MPEG=5Da)90重量%)を透析カセット内に入れ、PBSの貯留槽内で37℃で撹拌しながら培養した。透析物の試料を回収し、逆相HPLCを使用してドセタキセルを分析した。比較のため、従来のドセタキセルを同じ手順に供した。図13は、従来のドセタキセルと比較した、ナノ粒子のインビトロ放出特性を示す。封入されたドセタキセルのポリマーマトリックスからの放出は、最初の24時間にわたっては本質的に直線的であり、残りは約96時間にわたって徐々に粒子から放出された。
【0231】
実施例17 シロリムスナノ粒子
ナノ粒子バッチを、実施例8の全般的な手順を使用して、80%(w/w)ポリマー−PEGもしくはホモポリマーPLAを有するポリマー−PEGを40%(w/w)で製造し、各バッチの全固形分%を5%、15%及び30%とした。使用した溶媒は次のとおりであった:ベンジルアルコール21%及び酢酸エチル79%(w/w)。2グラムのバッチサイズ毎に、薬剤を400mg使用し、16−5ポリマー−PEGを1.6gもしくは16−5ポリマー−PEGを0.8g、+10kDaPLA(ホモポリマー)を0.8g使用した。ジブロックポリマー16−5 PLA−PEGもしくはPLGA−PEG(50:50L:G)を使用し、ホモポリマーを使用する場合は、以下のものを使用した:PLA(M=6.5kDa、Mw=10kDa、及びMw/M=1.55)。
【0232】
有機相(薬剤及びポリマー)を2gのバッチで調製する:20mLシンチレーションバイアルに薬剤及びポリマーを加える。固形分濃度%において必要な溶媒の質量を、以下に示す:
i.固形分5%:ベンジルアルコール7.98g+酢酸エチル30.02g
ii.固形分15%:ベンジルアルコール2.38g+酢酸エチル8.95g
iii.固形分30%:ベンジルアルコール0.98g+酢酸エチル3.69g
【0233】
0.5%コール酸ナトリウム、2%ベンジルアルコール、及び水中4%酢酸エチルで水溶液を調製する。2Lのびんに、コール酸ナトリウムを7.5g、DI水を1402.5g、ベンジルアルコールを30g及び酢酸エチルを60g加え、攪拌プレート上で溶解するまで混合する。
【0234】
エマルションの形成については、水相と油相の比率5:1を用いる。有機相を水溶液中に注ぎ、IKAを使用して10秒間室温で均質化して、粗エマルションを形成する。溶液を9Kpsi(ゲージ上で45psi)で2回別々にホモジナイザー(110S)に通し、ナノエマルションを形成する。
【0235】
エマルションを、<5Cで攪拌プレート上で攪拌しながら急冷液(D.I.水)中に注ぐ。急冷液とエマルションの比率は8:1である。水中35%(w/w)トウィーン80を急冷液に25:1=トウィーン80:薬剤の比率で加える。TFFによってナノ粒子を濃縮 し、急冷液を500kDaポールカセット(2膜)を用いて〜100mLにTFFで濃縮する。冷DI水の〜20ダイアボリューム(2リットル)を用いてダイアフィルトレーションを使用し、該容量を最低容量まで下げ、次に、最終的なスラリー、〜100mLを回収する。濾過していない最終的なスラリーの固形分濃度を、風袋を差し引いた20mLシンチレーションバイアルを使用し、最終的なスラリー4mLを加えて調べ、真空で凍結乾燥機/オーブン(lyo/oven)で乾燥させ、乾燥させたスラリー4mL中のナノ粒子の重量を調べる。濃縮蔗糖(0.666g/g)を、最終的なスラリー試料に加えて、10%蔗糖を得た。
【0236】
0.45um濾過の最終的なスラリーの固形分濃度を、蔗糖を加える前に最終的なスラリーサンプル約5mLを0.45μmシリンジフィルターで濾過することによって調べた;風袋を差し引いたシンチレーションバイアル20mLに、濾過した試料4mLを加え、真空下で凍結乾燥機/オーブンで乾燥させる。
【0237】
濾過していない最終的なスラリーの残りの試料を、蔗糖とともに凍結した。
ラパマイシン(シロリムス)製剤:
【表21】

【0238】
固形含有量の影響及びポリ(乳)酸ホモポリマーの含有の効果を、図14に示す。
【0239】
インビトロでの放出実験を、トウィーン20(T20)10%(w/w)を含有するPBS中にナノ粒子を37℃で分散して行った。T20を使用してラパマイシンのPBSへの溶解性を、HPLCによって検出可能なレベルまで増加させ、また沈下条件を維持した。薬剤を付加したナノ粒子3mLを、既知の濃度(約250μg/ml)で広口瓶に入れた放出媒体13OmL中で再分散した。これらの容量は、放出媒体中での薬剤の最大濃度が常に最大溶解性、すなわち、沈下条件の10%未満となるように選択した。媒体及びナノ粒子懸濁液を、150rpmで攪拌する。所定の時点において、一定分量4mlを50、000rpm(236、000g)で1時間遠心分離して、ナノ粒子を溶出媒体から分離した。溶出媒体をHPLCに注入し、ナノ粒子から放出された薬剤を調べる。ラパマイシンの放出は、図15に示すように、緩慢かつ持続性の放出を示した。
【0240】
実施例18−テムシロリムス
乳化前の有機相中の固形含有量が30%のテムシロリムスを使用したことを除いて、ナノ粒子を実施例17及び8のように製造した。
【表22】

【0241】
図16は、テムシロリムスの重量%を示し、図17は、テムシロリムスを有する異なるポリマーナノ粒子用のナノ粒子を示す。実施例17に示すインビトロ放出実験の結果は、図18に示すように、テムシロリムスの緩慢かつ持続性の放出を示す。
【0242】
実施例19 ビノレルビンナノ粒子
ナノ粒子バッチを、実施例8の全般的な手順を使用して、80%(w/w)ポリマー−PEGもしくはホモポリマーPLAを有するポリマー−PEGを40%(w/w)で製造し、各バッチの全固形分%を5%、15%及び30%とした。使用した溶媒は次のとおりであった:21%ベンジルアルコール及び79%酢酸エチル(w/w)。2グラムのバッチサイズ毎に、ビノレルビン400mgを使用し、16−5ポリマー−PEG1.6gもしくは16−5ポリマー−PEG0.8g+10kDa PLA(ホモポリマー)0.8gを使用した。ジブロックポリマー16−5 PLA−PEGもしくはPLGA−PEG(50:50L:G)を使用し、ホモポリマーを使用する場合は、以下のものを使用した:PLA(M=6.5kDa、Mw=10kDa、及びMw/M=1.55)。
【0243】
有機相(薬剤及びポリマー)を2gのバッチで調製する:シンチレーションバイアル20mLに薬剤及びポリマーを加える。固形分濃度%において必要な溶媒の質量を、以下に示す:
i.固形分5%:ベンジルアルコール7.98g+酢酸エチル30.02g
ii.固形分15%:ベンジルアルコール2.38g+酢酸エチル8.95g
iii.固形分30%:ベンジルアルコール0.98g+酢酸エチル3.69g
【0244】
水に、0.5%コール酸ナトリウム、2%ベンジルアルコール及び4%酢酸エチルを加えて水溶液を調製する。瓶に、コール酸ナトリウム7.5g、DI水1402.5g、ベンジルアルコール30g及び酢酸エチル60gを加え、攪拌プレート上で溶解するまで混合する。
【0245】
エマルションの形成については、水相と油相の比率は5:1である。有機相を水溶液中に注ぎ、IKAを使用して10秒間室温で均質化し、粗エマルションを形成する。溶液を9Kpsi(ゲージ上は45psi)で2回別々にホモジナイザー(110S)に通し、ナノエマルションを形成する。
【0246】
エマルションを<5℃の急冷液(D.I.水)中に攪拌プレート上で攪拌しながら注ぐ。急冷液とエマルションの比率は8:1である。水中35%(w/w)トウィーン80を急冷液に25:1=トウィーン80:薬剤の比率で加える。TFFでナノ粒子を濃縮し、500kDa ポールカセット(2膜)を用いたTFFで急冷液を〜100mLに濃縮する。冷DI水の〜20ダイアボリューム(2リットル)を用いてダイアフィルトレーションを使用し、該容量を最低ボリュームまで下げ、次に、最終的なスラリー、〜100mLを回収する。濾過していない最終的なスラリーの固形分濃度を、風袋を差し引いた20mLシンチレーションバイアルを使用し、最終的なスラリー4mLを加えて調べ、真空でlyo/オーブンで乾燥させ、乾燥させたスラリー4mL中のナノ粒子の重量を調べる。濃縮蔗糖(0.666g/g)を、最終的なスラリー試料に加えて、10%蔗糖を得た。
【0247】
0.45um濾過の最終的なスラリーの固形分濃度を、蔗糖を加える前に最終的なスラリーサンプル約5mLを0.45μmシリンジフィルターで濾過することによって調べた;風袋を差し引いたシンチレーションバイアル20mLに、濾過した試料4mLを加え、真空下で凍結乾燥機/オーブンで乾燥させる。
【0248】
濾過していない最終的なスラリーの残りの試料を、蔗糖とともに凍結した。
ビノレルビン製剤:
【表23】

*=試料で行ったインビトロ放出
【0249】
インビトロ放出を、固形分30%の3種類の製剤で行った:16−5 PLA−PEG;16−5 PLA−PEG+PLA;及び16−5 PLGA−PEG+PLA、及び37℃で、気室において尿素10%PBS溶液を放出媒体として使用して、インビトロ放出データを集めた。下記の表及び図19は、その結果を示す。
【表24】

【0250】
実施例20−ビンクリスチン
ビンクリスチンを含むナノ粒子製剤を、実施例8の全般的な手順を使用して製造した。
ビンクリスチン製剤:
【表25】

ビンクリスチン製剤の分析的特徴付け:
【表26】

【0251】
インビトロ放出をビンクリスチン製剤で行い、及び37℃で、気室において尿素10%PBS溶液を放出媒体として使用してインビトロ放出データを集めた。図20は、参照したいくつかのロットに関するインビトロ放出を示す。
【0252】
実施例21 薬物動態
実施例20で製造したようなビンクリスチンを有し、実施例8で製造したようなドセタキセルを有するナノ粒子の薬物動態(PK)を、スピローグ−ドーリー(SD)ラットで調べた。ラット(オスのスピローグドーリー、約300g、頚静脈にカニューレを挿入)に、遊離薬剤もしくは薬剤を封入した受動的標的化ナノ粒子(薬剤10wt%、ポリマー(PLA−PEG、MPLA=16Da;MPEG=5D、PTNP)90wt)を、0.5mg/kgを、薬剤5mg/kg及び0時間目におけるPTNP=0で、単回静脈内投与量0.5mg/kgで与えた。投与後様々な時間に、頚静脈のカニューレからリチウムヘパリンを含有するチューブへ血液試料を採取し、血漿を調製した。血漿から薬剤を抽出し、次いでLCMS分析を行うことによって、血漿中濃度を調べた。
【0253】
図21は、ビンクリスチン及びビンクリスチンPTNP及びドセタキセル及びドセタキセルPTNPのPKプロファイルを示す。
【0254】
実施例22粒径分析
粒度を2種類の技術、動的光散乱(DLS)及びレーザー回折によって分析する。Brookhaven ZetaPals機器を使用して、25℃、希水性懸濁液中で、90°で散乱させた660nmレーザーを使用してDLSを行い、キュムラント法及びNNLS法(TP008)を使用して分析する。Horiba LS950機器を使用し、希水性懸濁液中で、90°で散乱させたHeNeレーザー(633nm)及びLED(405m)の双方を使用してレーザー回折を行い、Mie光学モデル(TP009)を使用して分析する。DLSからの出力は、粒子の流体力学的半径と関連しており、これはPEGの「コロナ」を含むが、一方でレーザー回折装置はPLA粒子の「コア」の幾何学的サイズと更に密接に関連している。
【0255】
実施例23−リガンド密度
全体的な粒子直径がBrookhaven粒度測定器によって測定される流体力学的径と等しいとすると、ナノ粒子は完全な球体であり、全PEGが完全に水和するのと同様、全親水性PEG及びリガンドが表面上に発現し、粒子表面のモデルは、表1に示すように構築することができる。
【表27】

【0256】
実施例24−乳癌腫瘍標的
実施例8のように製造され、静脈投与されるナノ粒子(ドセタキセル10wt%、ポリマー90wt(PLA−PEG−GL2〜1.25wt%;及びPLA−PEG〜98.75%、Mn PLA=16Da;Mn PEG=5Da)(BIND−14と標識)の前立腺以外の腫瘍の増殖を阻害する能力を、従来のドセタキセル及び同じ薬剤/ポリマー組成(PTNP)を有する非標的化対象粒子との比較において、MX−I異種移植片を埋め込んだマウスで評価した。腫瘍が300mmの平均容積に達したとき、マウスに試験物(蔗糖、ドセタキセル、PTNP、BIND−14)を4日毎に3回投与した。各処理群の経時的な平均腫瘍容積を、図22に示す。
【0257】
ドセタキセルを静脈内投与した後に腫瘍への送達を高める標的化ナノ粒子(BIND−14)の能力を、平均腫瘍容積1700mmの、ヒトMX−1乳癌異種移植片を有するマウスで評価した。BIND−14、PTNP、及び従来のドセタキセルを投与した動物から、静脈内投与(IV dose)から24時間後に切除した腫瘍中のドセタキセル濃度(g/mg)を、LC/MS/MSを使用してそのドセタキセル含有量を分析し、図23に示す。
【0258】
実施例25−前立腺癌腫瘍標的
実施例8のように製造したナノ粒子(ドセタキセル10wt%、ポリマー(PLA−PEG−GL2〜1.25wt%;及びPLA−PEG−98.75%、Mn PLA=16Da;Mn PEG=5Da;BIND−14)90wtを使用したドセタキセルのナノ粒子の、静脈内投与後の腫瘍への送達を、ヒトLNCaP前立腺癌の異種移植片を有するオスのSCIDマウスで評価した。雄SCIDマウスに、ヒトLNCP前立腺癌細胞を皮下接種した。接種後3〜4週間後、1回の静脈内投与用量、5mg/kgのドセタキセルを、BIND−014として、もしくは従来のドセタキセルとして投与した。投与から2時間後もしくは12時間後に、マウスを屠殺した。各群からの腫瘍を切除し、そのドセタキセルをLC−MS法によってアッセイした。
【0259】
BIND−1450mg/kgを一回投与した12時間後に、BIND−014を投与された動物における腫瘍中のドセタキセル濃度は、従来のDTXLを投与された動物に比べて約7倍高く、図24に示すように、長期循環性PSMA−標的化ナノ粒子は、より多くのDTXLを腫瘍部位に送達することを示している。
【0260】
また、BIND−014の反復投与の腫瘍増殖を抑制する能力を、図25に示すように、LNCP異種移植腫瘍モデルで評価した。雄のSCIDマウスに、ヒトLNCaP前立腺癌細胞を皮下接種した。接種後3〜4週間後、マウスを1日おきに4回、BIND−014、従来のドセタキセル(DTXL)、非標的化ナノ粒子に封入されたDTXL(PTNP)、及び賦形剤(対照)で処理した。5mg/kgを4回投与した後、腫瘍容積の減少は、従来のドセタキセルもしくは非標的化粒子(PTNP)と比較して、BIND−014を投与された動物においてより大きかった。腫瘍中のドセタキセル濃度の増加は、より顕著な細胞毒性につながる。
【0261】
一実施態様において、本発明は、活性剤又は治療薬、例えば、タキサン及び1、2もしくは3種類の生体適合性ポリマーを含む治療用ナノ粒子を提供する。例えば、本明細書中で開示するのは、治療薬を約0.2〜約35重量パーセント;ポリ(乳)酸を約10〜約99重量パーセント−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーもしくはポリ(乳)−コ−ポリ(グリコール)酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー;及びポリ(乳)酸を約0〜約50重量パーセントもしくはポリ(乳)酸−コ−ポリ(グリコール)酸を含む治療用ナノ粒子である。治療薬の例としては、タキサン等の抗悪性腫瘍薬、例えばドセタキセルを含み、例えば、タキサン剤などの治療薬を約10〜約30重量パーセントを含むことができる。
【0262】
本明細書中で提供するのは、一つには、複数の開示の治療用ナノ粒子を製造する方法であり、治療薬、第1のポリマ、及び第2のポリマーと、有機溶媒(例えば、以下から選択される溶媒:酢酸エチル、ベンジルアルコール、塩化メチレン、ジメチルフォルムアミド、トウィーン80及びスパン80及びそれらの2種以上の組み合わせ)とを混合することによって、約5〜約50%の固形分を有する第1の有機相を形成し;第1の有機相を第1の水溶液(いくつかの実施形態において、コール酸ナトリウム、酢酸エチル、ベンジルアルコールより選択される試薬もしくはそれらの組み合わせを含むことができる)に混合して第2の相を形成すること;第2の相を乳化してエマルション相を形成すること;エマルション相を急冷して急冷相を形成すること;薬剤可溶化剤を急冷相に加えて未封入治療薬の可溶化相を形成すること;及び可溶化相を濾過して標的特異的ステルス型ナノ粒子を回収し、それによって直径が約80nm〜約150nmの治療用ナノ粒子のスラリーを形成することを含む方法である。
ある実施形態において、第2の相を乳化することは、第2の相を乳化して粗エマルションを形成すること、及び粗エマルションを乳化してファインエマルション相を形成することを含むことができる。第2の相の乳化は、例えば、ロータステータホモジナイザー、プローブソニケータ、攪拌バー、もしくは高圧ミキサーを用いて行うことができる。粗エマルションの乳化は、例えば、複数の(例えば、2つ、3つ、4つ、もしくはそれ以上の)相互作用チャンバを有することができる高圧ホモジナイザーを用いて、例えば、1相互作用チャンバあたり約4000〜約8000psiのフィード圧で行うことができる。
【0263】
ある実施形態において、急冷は、約5℃以下、例えば、約0℃〜約5℃の温度で少なくとも部分的に行うことができる。急冷液:エマルションの比率は、約8:1〜約5:1、もしくは約2:1〜約40:1とすることができる。
【0264】
開示された方法において使用する薬剤可溶化剤の例としては、トウィーン80、トウィーン20、ポリビニルピロリドン、シクロデキストラン、硫酸ドデシルナトリウム、もしくはコール酸ナトリウムを含むことができる。いくつかの実施形態において、薬剤可溶化剤は、ジエチルニトロソアミン、酢酸ナトリウム、尿素、グリセリン、プロピレングリコール、グリコフロール、ポリ(エチレン)グリコール、ブリス(ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル(bris(polyoxyethyleneglycolddodecyl ether)、安息香酸ナトリウム、及びサリチル酸ナトリウムからなる群から選択される。薬剤可溶化剤と治療薬の比率は、約100:1〜約10:1とすることができる。
【0265】
ある実施形態において、方法は、例えば、タンジェンシャルフロー濾過システムを用いて、ナノ粒子を含む可溶化相を濾過することを含むことができる。濾過は、例えば、第1の温度である約0℃〜約5℃、及びその後第2の温度である約20℃〜約30℃で行うことができる。あるいは濾過は、例えば、第1の温度である約20℃〜約30℃で行い、その後第2の温度である約0℃〜約5℃で行うことができる。いくつかの実施形態において、濾過は、約1〜約6ダイアボリュームを約0℃〜約5℃で処理すること、及び少なくとも1ダイアボリュームを約20℃〜約30℃で処理することを含み、例えば、濾過は約1〜約6ダイアボリュームを約0℃〜約5℃で処理すること、及び約1ダイアボリューム〜約15ダイアボリュームを約20℃〜約30℃で処理することを含むことができる。ある実施形態において、濾過は異なる別の温度で別の1ダイアボリュームを処理することを含むことができる。可溶化相は、該濾過前に精製して該有機溶媒、未封入の治療薬、及び/または薬剤可溶化剤を実質的に取り除くことができる。
【0266】
開示された方法は、濾過トレインを用いた制御した速度での治療用ナノ粒子のスラリーの無菌濾過を含むことができる。例えば、デプスフィルター及び細菌濾過器を含む濾過トレインを使用することができる。
【0267】
また、本明細書中で提供する複数の治療用ナノ粒子を製造する方法は、治療薬、第1のポリマー及び第2のポリマーを有機溶媒に混合して第1の有機相を形成すること;第1の有機相を、第1の水溶液に混合して第2の相を形成すること;第2の相を乳化してエマルション相を形成すること;エマルション相を急冷して急冷相を形成すること;薬剤可溶化剤を急冷相に加えて封入されていない治療薬の可溶化相を形成すること;及び定容ダイアフィルトレーションでタンジェンシャルフロー濾過を用いて可溶化相を濾過することを含み、少なくとも1ダイアボリュームを、別の1ダイアボリュームを約−5℃〜約10℃に曝露した後、約25℃に曝露する。例えば、濾過は、約2〜約5ダイアボリュームを約0℃〜約5℃で処理すること、及び次に、少なくとも1ダイアボリュームを25℃で少なくとも一定期間処理することを含むことができる。
【0268】
本明細書中で提供する方法は、25℃で少なくとも2日間約10mg/mlの濃度で安定化することができる治療用ナノ粒子を形成する方法である。開示された方法を用いて形成した治療用ナノ粒子は、少なくとも5日にわたり25℃で治療薬の10重量%未満を放出させることができる。いくつかの実施形態において、開示された方法を用いて形成した治療用ナノ粒子は、例えば、約2〜約30パーセントの治療薬を封入するものとすることができる。
【0269】
ある実施形態において、治療薬、第1のポリマー(例えば、PLGA−PLAコポリマーもしくはPLA)及び第2のポリマー(例えば、PLA、PLGA、もしくはPEG、もしくはそれらのコポリマー)及び任意に第3のポリマー(例えば、リガンドに結合していないPLAもしくはPLGA)を混合することを含み、第1のポリマーは、分子量が約1000g/mol未満のリガンド、例えば、低分子量リガンド、例えば、PSMAリガンドに結合している、複数の開示の治療用ナノ粒子を製造する方法を提供する。かかる低分子量PSMAリガンドは、化合物I、II、III及びIV:


ならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、もしくはラセミ体からなる群から選択することができる。
式中、
m及びnは各々独立して0、1、2もしくは3であり;
pは0もしくは1であり;
、R、R及びRは各々独立して、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され;及び
はHもしくはCHであり;
式中、R、R、RもしくはRは、該ナノ粒子との共有結合的な結合点を含む。
例えば、R、R、R及びRは、各々独立して、C1‐6−アルキルもしくはフェニル、またはC1‐6−アルキルもしくはフェニルの任意の組み合わせであり、それらはOH、SH、NH、またはCOHで1回もしくは複数回独立して置換されており、該アルキル基はN(H)、SまたはOによって中断されていてもよい。別の実施形態において、例えば、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、CH−Ph、(CH−SH、CH−SH、(CH)2C(H)(NH)COH、CHC(H)(NH)COH、CH(NH)CHCOH、(CH)2C(H)(SH)COH、CH−N(H)−Ph、O−CH−Ph、またはO−(CH‐Phであり、それぞれのPhは、OH、NH、COHまたはSHで1回もしくは複数回独立して置換されていてもよい。低分子量PSMAリガンドの例としては、


ならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体からなる群から選択することができる。
式中、NH、OH、またはSH基が、前記第1の粒子との共有結合的な結合点としての役割を果たすか、もしくは


ならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体からなる群から選択することができる。
式中、Rは、NH、SH、OH、COH、C1‐6−アルキル(NH、SH、OH、COHで置換された)、及びフェニル(NH、SH、OH、またはCOHで置換された)からなる群から独立して選択され、
式中、Rは、前記第1の粒子との共有結合的な結合点としての役割を果たす。
例示的なリガンドは


ならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体を含み、これらのうちのいずれもが、NH;SH;OH;COH;NH、SH、OH、もしくはCOHで置換されたC1‐6‐アルキル;またはNH、SH、OH、もしくはCOHで置換されたフェニルでさらに置換されていてもよく、これらの官能基が、前記ナノ粒子との共有結合的な結合点としての役割を果たし、例えば、低分子量PSMAリガンドとしては


ならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体が挙げられる。NH基は、第1のポリマーとの共有結合的な結合点としての役割を果たす。
【0270】
ある実施形態において、治療薬、第1のポリマー(例えば、PLGA−PLAコポリマーもしくはPLA)、及び第2のポリマー(例えば、PLA、PLGA、もしくはPEG、もしくはそれらのコポリマー)及び任意に第3のポリマー(例えば、Aリガンドに結合していないPLAもしくはPLGA)を混合することを含む、複数の開示の治療用ナノ粒子を製造する方法を提供する。
ある実施形態において、治療薬はドセタキセルである。別の実施形態において、治療薬は、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ミトキサントロン、ゲムシタビン(ジェムザール)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、5−フルオロウラシル(5−FU)、ビンブラスチン、ビンクリスチン;ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT−11,10−ヒドロキシ−7−エチルカンプトテシン(SN38)、ダカルバジン、S−Iカペシタビン、フトラフール、5’−デオキシフルオロウリジン、UFT、エニルウラシル、デオキシシチジン、5−アザシトシン、5−アザデオキシシトシン、アロプリノール、2−クロロアデノシン、トリメトレキサート、アミノプテリン、メチレン−10−デアザアミノプテリン(MDAM)、オキサリプラチン、ピコプラチン、テトラプラチン、サトラプラチン、白金‐DACH、オルマプラチン、CI−973、JM−216及びその類似体、エピルビシン、エトポシドホスフェート、9−アミノカンプトテシン、10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、カレニテシン、9−ニトロカンプトテシン、TAS103、ビンデシン、L−フェニルアラニンマスタード、イホスファミドメホスファミド(ifophmidemefophmide)、ペルホスファミド、トロホスファミドカルムスチン、セムスチン、エポチロンA−E、トムデックス、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アムサクリン、エトポシドホスフェート、カレニテシン、アシクロビル、バルアシクロビル、ガンシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、ラミブジン、ジドブジン、ベバシズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、ブデソニド、シロリムス、ビンクリスチン及びそれらの組み合わせ等の化学療法剤が含まれ、もしくは治療薬はsiRNAが挙げられる。
【0271】
本明細書中では提供するのは、開示された方法で製造した有効量のナノ粒子を、前立腺癌の治療を必要とする対象に投与することを含む、前立腺癌の治療方法である。
【0272】
また、ある実施形態において、本明細書中で提供するのは:第1のポリマー及び治療薬を含む第1の有機相とエマルション相を形成する第2の相の乳化;ここでエマルション相は次に、急冷相を形成する約0℃〜約5℃の温度で急冷され;及び第1の温度約−5℃〜約10℃での急冷相の濾過;及び急冷相を第2の温度である約25℃で濾過すること;によって製造される治療用ナノ粒子であって、それによって少なくとも5日間25℃で安定な治療用ナノ粒子を形成する。
【0273】
ある実施形態において、治療薬を有する治療用ナノ粒子を安定化させる方法であって:ナノ粒子で封入されている治療薬及び薬剤可溶化剤を含むスラリーを供給すること;スラリーを第1の温度約−5℃〜約10℃で濾過すること;スラリーを第2の温度である約25℃で濾過することを含む方法を提供する。
【0274】
均等物
当業者は、本明細書に記載される、本発明の特定の実施形態の多くの均等物を、通常のルーチン実験を用いて理解するか、または確認することができる。かかる均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【0275】
参照による援用
本明細書に引用されるすべての特許、公開特許出願、ウェブサイト、及び他の参考文献の内容全体は、参照によりそれらの全体がここに明示的に援用される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療薬、第1のポリマー及び任意に第2のポリマーを、有機溶媒と混合して、約5〜約50%の固形分を有する第1の有機相を形成し、
該第1の有機相を第1の水溶液と混合して、第2の相を形成し、
該第2の相を乳化してエマルション相を形成し、
該エマルション相を急冷して急冷相を形成し、
薬剤可溶化剤を前記急冷相に添加し、未封入治療薬の可溶化相を形成し、及び
該可溶化相を濾過して前記標的特異的ステルス型ナノ粒子を回収し、直径が約80nm〜約150nmの治療用ナノ粒子のスラリーを形成することを含む 複数の治療用ナノ粒子を製造する方法。
【請求項2】
前記第2の相の乳化は、
前記第2の相を乳化して粗エマルションを形成し、
該粗エマルションを乳化してファインエマルション相を形成することを含む請求項1の方法。
【請求項3】
前記有機溶媒は、酢酸エチル、ベンジルアルコール、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、酢酸、トウィーン80及びスパン80及びそれらの2種以上の組み合わせから選択される溶媒を含む請求項1の方法。
【請求項4】
前記水溶液は、コール酸ナトリウム、酢酸エチル、ベンジルアルコール又はそれらの組み合わせから選択される試薬を含む請求項1の方法。
【請求項5】
前記第2の相の乳化は、ロータステータホモジナイザー、プローブソニケータ、攪拌バー又は高圧ホモジナイザーを使用することを含む請求項2の方法。
【請求項6】
前記粗エマルションの乳化は、高圧ホモジナイザーを使用することを含む請求項2又は5の方法。
【請求項7】
前記一次エマルションの乳化は、ホモジナイザーに約2〜約3回通すことを含む請求項6の方法。
【請求項8】
前記ホモジナイザーのフィード圧は、相互作用チャンバ1室あたり約2000〜約8000psiである請求項6又は7の方法。
【請求項9】
前記ホモジナイザーは複数の相互作用チャンバを含む請求項6〜8のいずれか1つの方法。
【請求項10】
急冷は、少なくとも部分的に約5℃もしくはそれ以下の温度で行う請求項1〜9のいずれか1つの方法。
【請求項11】
急冷は約0℃〜約5℃で行う請求項1〜10のいずれか1つの方法。
【請求項12】
前記急冷液:エマルションの比率は約8:1〜約5:1である請求項1〜11のいずれか1つの方法。
【請求項13】
前記急冷液:エマルションの比率は約2:1〜約40:1である請求項1〜11のいずれか1つの方法。
【請求項14】
前記薬剤可溶化剤は、トウィーン80、トウィーン20、ポリビニルピロリドン、シクロデキストラン、硫酸ドデシルナトリウム及びコール酸ナトリウムからなる群から選択される請求項1〜13のいずれか1つの方法。
【請求項15】
前記薬剤可溶化剤は、ジエチルニトロソアミン、酢酸ナトリウム、尿素、グリセリン、プロピレングリコール、グリコフロール、ポリ(エチレン)グリコール、ブリスポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル、安息香酸ナトリウム及びサリチル酸ナトリウムからなる群から選択される請求項1〜13のいずれか1つの方法。
【請求項16】
薬剤可溶化剤と治療薬の前記比率が約100:1〜約10:1である請求項1〜15のいずれか1つの方法。
【請求項17】
濾過はタンジェンシャルフロー濾過システムを使用することを含む請求項1〜16のいずれか1つの方法。
【請求項18】
濾過は、第1の温度である約0℃〜約5℃で濾過することを含む請求項1〜17のいずれか1つ方の法。
【請求項19】
さらに第2の温度である約20℃〜約30℃で濾過することを含む請求項18の方法。
【請求項20】
濾過は、約1〜約6ダイアボリュームを約0℃〜約5℃で処理し、少なくとも1ダイアボリュームを約20℃〜約30℃で処理することを含む請求項19の方法。
【請求項21】
濾過は約1〜約6ダイアボリュームを約0℃〜約5℃で処理し、約1ダイアボリューム〜約15ダイアボリュームを約20℃〜約30℃で処理することを含む請求項19の方法。
【請求項22】
濾過は、異なる別の温度で別の1ダイアボリュームを処理することを含む請求項17の方法。
【請求項23】
さらに前記濾過の前に前記可溶化相を精製して、前記有機溶媒、未封入の治療薬及び/または薬剤可溶化剤を実質的に取り除くことを含む請求項1〜22のいずれか1つの方法。
【請求項24】
さらに治療用ナノ粒子の前記スラリーを、濾過トレインを使用して一定速度で無菌濾過することを含む請求項1〜23のいずれか1つの方法。
【請求項25】
前記濾過トレインは、デプスフィルター及び細菌濾過器を含む請求項24の方法。
【請求項26】
治療薬、第1のポリマー及び任意に第2のポリマーを、有機溶媒と混合して、第1の有機相を形成し、
該第1の有機相を第1の水溶液と混合して、第2の相を形成し、
該第2の相を乳化してエマルション相を形成し、
該エマルション相を急冷して急冷相を形成し、
薬剤可溶化剤を前記急冷相に添加して未封入治療薬の可溶化相を形成し、及び
定容ダイアフィルトレーションでタンジェンシャルフロー濾過を用いて前記可溶化相を濾過し、ここで、少なくとも1ダイアボリュームを、別の1ダイアボリュームを約−5℃〜約10℃に曝露した後、約25℃に曝露することを含む複数の治療用ナノ粒子を製造する方法。
【請求項27】
前記濾過は、約2〜約5ダイアボリュームを約0℃〜約5℃で処理し、次いで、少なくとも1ダイアボリュームを25℃で少なくとも一定時間処理することを含む請求項26の方法。
【請求項28】
前記形成された治療用ナノ粒子は、少なくとも2日間25℃で濃度約10mg/ml又は濃度約50mg/mlで安定である請求項1〜27のいずれか1つの方法。
【請求項29】
前記形成された治療用ナノ粒子は、25℃で、少なくとも5日間にわたって治療薬の10重量%未満を放出する請求項1〜28のいずれか1つの方法。
【請求項30】
前記形成された治療用ナノ粒子は、約2〜約30パーセントの治療薬を封入する請求項1〜29のいずれか1つの方法。
【請求項31】
前記第1のポリマーは分子量が約1000g/mol未満のリガンドに結合している請求項1〜30のいずれか1つの方法。
【請求項32】
前記低分子量リガンドは低分子量PSMAリガンドである請求項31の方法。
【請求項33】
前記低分子量PSMAリガンドは、化合物I、II、III及びIVならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマーまたはラセミ体からなる群から選択される請求項32の方法。


式中、
m及びnは、各々独立して0、1、2又は3であり;
pは0又は1であり;
、R、R及びRは、各々独立して、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリール及びそれらの組み合わせからなる群から選択され;
は、H又はCHであり;
、R、R又はRは、前記ナノ粒子との共有結合的な結合点を含む。
【請求項34】
、R、R及びRは、各々独立して、C1‐6−アルキル又はフェニル、あるいはC1‐6−アルキル又はフェニルのいずれかの組み合わせであり、それらはOH、SH、NH又はCOHで1回もしくは複数回独立して置換されており、前記アルキル基は、N(H)、S又はOによって中断されていてもよい請求項33の方法。
【請求項35】
、R、R及びRは、それぞれ独立して、CH−Ph、(CH−SH、CH−SH、(CHC(H)(NH)COH、CHC(H)(NH)COH、CH(NH)CHCOH、(CHC(H)(SH)COH、CH−N(H)−Ph、O−CH−Ph又はO−(CH−Phであり、各Phは、OH、NH、COH又はSHで1回又は複数回、独立して置換されていてもよい請求項33又は34の方法。
【請求項36】
前記低分子量PSMAリガンドは、

ならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー又はラセミ体からなる群から選択され、
式中、前記NH、OH又はSH基は、前記第1の粒子との共有結合的な結合点としての役割を果たす請求項32〜35のいずれか1つの方法。
【請求項37】
前記低分子量PSMAリガンドは、


ならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー又はラセミ体からなる群から選択され;
式中、Rは、NH、SH、OH、COH、C1‐6−アルキル(NH、SH、OH、COHで置換された)及びフェニル(NH、SH、OH又はCOHで置換された)からなる群から独立して選択され、Rは、前記第1の粒子との共有結合的な結合点としての役割を果たす請求項32〜35のいずれか1つの方法。
【請求項38】
前記低分子量PSMAリガンドは、


ならびにそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー又はラセミ体からなる群から選択され;
式中、これらのうちのいずれかが、NH、SH、OH、COHであるか、NH、SH、OH又はCOHで置換されたC1‐6−アルキルであるか、NH、SH、OH又はCOHで置換されたフェニルでさらに置換されていてもよく、これらの官能基は、前記第1の粒子との共有結合的な結合点としての役割を果たす
請求項32〜35のいずれか1つの方法。
【請求項39】
前記低分子量PSMAリガンドは

及びそれらの鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマーあるいはラセミ体であり、
式中、NH基は、第1のポリマーとの共有結合的な結合点としての役割を果たす請求項32〜35のいずれか1つの方法。
【請求項40】
前記第1又は第2のポリマーは、PLA、PLGA又はPEGあるいはそれらのコポリマーである請求項1〜39のいずれか1つの方法。
【請求項41】
前記第1のポリマーは、PLGA−PLA又はPLAであり、前記第2のポリマーは、PLGA−PLA−PEGコポリマー、PLGA−ブロック−PEGコポリマー又はPLA−ブロック−PEGコポリマーである請求項1〜40のいずれか1つの方法。
【請求項42】
前記第1の有機相は、標的化部分に結合していない第3のポリマーをさらに含む請求項1〜41のいずれか1つの方法。
【請求項43】
前記第3のポリマーがPLAである請求項42の方法。
【請求項44】
前記第1のポリマーがポリ(乳)酸−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールもしくはポリ(乳)酸−コ−グリコール酸−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールである請求項1〜30のいずれか1つの方法。
【請求項45】
前記第1のポリマーがリガンドに結合していない請求項44の方法。
【請求項46】
前記第2のポリマーが存在し、PLA又はPLGAから選択される請求項44又は45の方法。
【請求項47】
前記治療薬はドセタキセルである請求項1〜46のいずれか1つの方法。
【請求項48】
前記治療剤が、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ゲムシタビン(ジェムザール)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、5−フルオロウラシル(5−FU)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT−11,10−ヒドロキシ−7−エチルカンプトテシン(SN38)、ダカルバジン、S−Iカペシタビン、フトラフール、5’ −デオキシフルオロウリジン、UFT、エニルウラシル、デオキシシチジン、5−アザシトシン、5‐アザデオキシシトシン、アロプリノール、2−クロロアデノシン、トリメトレキサート、アミノプテリン、メチレン−10−デアザアミノプテリン(MDAM)、オキサリプラチン、ピコプラチン、テトラプラチン、サトラプラチン、白金‐DACH、オルマプラチン、CI‐973、JM‐216及びその類似体、エピルビシン、エトポシドホスフェート、9−アミノカンプトテシン、10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、カレニテシン、9−ニトロカンプトテシン、TAS103、ビンデシン、L−フェニルアラニンマスタード、イホスファミデメホスファミド、ペルホスファミド、トロホスファミドカルムスチン、セムスチン、エポチロンA〜E、トムデックス、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アムサクリン、エトポシドホスフェート、カレニテシン、アシクロビル、バルアシクロビル、ガンシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、ラミブジン、ジドブジン、ベバシズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブ及び5−フルオロウラシル、メトトレキサート、ブデソニド、シロリムス、ビンクリスチンならびにそれらの組み合わせ等の化学療法剤からなる群から選択される請求項1〜46のいずれか1つの方法。
【請求項49】
前記治療薬がsiRNAである請求項1〜46のいずれか1つの方法。
【請求項50】
前記可溶化相の濾過は、前記可溶化相を濃縮し、ダイアフィルトレーションし及び終末濾過(terminal filtering)すること含む請求項1〜49のいずれか1つの方法。
【請求項51】
請求項1〜50のいずれかに記載の方法によって製造された有効量の前記ナノ粒子を患者に投与することを含む前立腺癌の治療を必要とする患者における前立腺癌の治療方法。
【請求項52】
第1のポリマー及び治療薬を含む第1の有機相と、第2の相との乳化によりエマルション層が形成され、前記エマルション相は、次いで約0℃〜約5℃の温度で急冷されて、急冷相が形成され、
第1の温度である約−5℃〜約10℃での前記急冷相の濾過、及び
前記急冷相の、第2の温度である約25℃での濾過によって製造され、
25℃で少なくとも5日間、安定な治療用ナノ粒子が形成されてなる、治療用ナノ粒子。
【請求項53】
ナノ粒子で封入した治療薬及び薬剤可溶化剤を含むスラリーを供給し、
前記スラリーを第1の温度である約−5℃〜約10℃で濾過し、
前記スラリーを第2の温度である約25℃で濾過することを含む、治療薬含有治療用ナノ粒子を安定化させる方法。

【公表番号】特表2012−501965(P2012−501965A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514754(P2011−514754)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/047515
【国際公開番号】WO2010/005723
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(510083773)バインド バイオサイエンシズ インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】