説明

薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケース

【課題】所定の温度範囲に保管することが要求される薬剤入り注射器の温度を検出する機能を有する、薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースを提供する。
【解決手段】薬剤の入った注射器を収納する第一収納空間と、蓄熱部材を収納する第二収納空間と、第一収納空間と第二収納空間との間を隔てる間仕切り部材と、を備える薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースであって、間仕切り部材は、第一収納空間と第二収納空間との間を連通する通気部を有し、第一収納空間は、その内部の温度を検出し且つ表示することのできる温度検出表示体を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤入り注射器の保冷ケースに関し、詳細には、薬剤の入ったカートリッジを装填し、注射針を交換することで連続使用できるペン型注射器を保冷・保温するためのケースに関する。
【背景技術】
【0002】
患者に注射剤を投与できるのは、原則的に医師と看護師に限られているが、最近は、インスリン製剤、成長ホルモン剤、ヒト血液凝固因子製剤等のように、患者への毎日の投与が必要とされるものについては、皮下注射に限って、患者自身が注射できる注射剤がある。
【0003】
従来は、普通の注射器を用いてバイアルから一回ごとに薬剤を取り出していたが、現在では、薬剤の入ったカートリッジを注射器本体に装填して注射針を交換することで連続的に使用できるペン型注射器(ダイヤル式携帯用インスリン注入器)が普及している。患者自身による注射が可能である上記製剤のうちインスリン製剤の注射器について、以下に説明する。
【0004】
インスリンは、アミノ酸が連なったペプチドホルモンの一種であり、血糖値の恒常性維持に重要なホルモンであり、血糖値を低下させるために、糖尿病の治療にも用いられている。インスリン製剤は、高温や凍結や光等に弱いために、正しく保存をしないと品質が劣化する可能性がある。すなわち、インスリン製剤を誤って凍結させた場合、インスリン自体の変化が少ないものの、懸濁製剤(中間型、混合型、持続型)のインスリンを持続して効かせる成分が壊れるために、インスリンの効く時間帯がずれてしまい、いつもの時間に血糖値が低下しなかったり、逆に、予期しない時間帯に効き出してそのまま低血糖を誘発したりする恐れがある。
【0005】
他方、ペン型注射器は、ゴム栓等のゴム材料からなる部材を含んでおり、ペン型注射器を冷却し過ぎて冷凍状態にしてしまうと、注射器の破損や注射針取り付け部のゴム栓の劣化や破裂を招いてしまうので、ペン型注射器を冷凍状態にすることは好ましくない。
【0006】
したがって、インスリン製剤を含むペン型注射器は、高温や低温にし過ぎることなく適温に、少なくとも室温程度に、好適には冷蔵庫の野菜室等のような2乃至8℃の適切な温度範囲で保管することが求められている。
【0007】
ところで、インスリン製剤入りのバイアルを冷却保管するための携帯デバイスが種々提案されている。例えば、インスリン製剤入りのバイアルを保持するための第一室と、シリンジを保持するための第二室と、冷凍剤を保持するためのポケット部と、を有するインスリン用携帯袋が特許文献1に開示されている。また、インスリン等の薬剤入りバイアルを囲繞するように配置された保冷剤を収納する真空断熱収納部と、注射器や注射針等を収納する予備収納空間部と、を有する薬剤用保冷温容器が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表昭59−500797号公報
【特許文献2】特開2003−180797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示されているインスリン用携帯袋では、第一室と第二室との間に形成されたポケット部に配置された冷凍剤によってバイアル及びシリンジを冷却している。冷凍剤による冷却効果は、冷凍剤の使用量、冷却対象物であるバイアル及びシリンジの熱容量、テープファスナーによる密閉度合い等に依存する。しかしながら、特許文献1のインスリン用携帯袋は、冷却対象物であるインスリン入りのバイアルが何度くらいの温度になっているかを検出する温度検出機能や、検出された温度に応じて冷却度合いを調節する温度調節機能が存在しないので、インスリン入りのバイアルを適切な温度範囲に保管することができない。
【0010】
また、特許文献2に開示されている薬剤用保冷温容器では、保冷剤を収納した真空断熱収納部によって薬剤入りバイアルが比較的長時間にわたって冷却されるものの、真空断熱収納部における密閉構造には温度調節機能を備えていない。また、保冷剤がインスリン等の薬剤入りバイアルを囲繞して、保冷剤の冷熱がインスリン等の薬剤に直接に接触する構成となっているために、インスリン等の薬剤を冷やしすぎて、インスリンを持続して効かせる成分が壊される恐れがある。
【0011】
このように、特許文献1及び2に開示された冷却保管方法では、冷却対象物の温度を積極的に検出する機能や、保冷剤による冷却度合いを積極的に調節する機能を備えていないために、インスリン製剤入りバイアルを言わば成り行き任せに冷却保管している。その結果、周囲温度が高温又は低温である環境下では、インスリン製剤入り注射器を適切な温度範囲に保管できないという問題がある。
【0012】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、所定の温度範囲に保管することが要求される薬剤入り注射器の温度を検出する機能を有する、薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースを提供することである。そして、必要に応じて、検出された温度に基づいて冷却度合いを調節する機能をさらに有する、薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記技術的課題を解決するために、本発明によれば、以下の薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースが提供される。
【0014】
すなわち、本発明の請求項1に係る薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースでは、
薬剤の入った注射器を収納する第一収納空間と、蓄熱部材を収納する第二収納空間と、前記第一収納空間と前記第二収納空間との間を隔てる間仕切り部材と、を備える薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースであって、
前記間仕切り部材は、前記第一収納空間と前記第二収納空間との間を連通する通気部を有し、
前記第一収納空間は、その内部の温度を検出し且つ表示することのできる温度検出表示体を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項2に係る薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースでは、
前記通気部は、通気量を調節することができるように構成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項3に係る薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースでは、
前記通気部は、複数個の通気開口から構成されていて、閉塞体によって覆われる前記通気開口の数量及び/又は開口面積に応じて、通気量を調節することを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項4に係る薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースでは、
前記通気部は、前記保冷・保温用携帯ケースの内側壁部と前記間仕切り部材との間に形成された通気隙間であることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項5に係る薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースでは、
前記通気隙間は、その隙間面積の大小により通気量を調節することを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項6に係る薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースでは、
前記通気隙間は、前記間仕切り部材の周縁に設けられた切欠部であり、閉塞体によって覆われる前記切欠部の被覆面積に応じて、通気量を調節することを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項7に係る薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースでは、
前記第一収納空間を構成する外壁部の少なくとも一部分が透光部を有し、当該透光部を介して前記温度検出表示体の温度を表示することができるように構成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項8に係る薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースでは、
前記間仕切り部材は、断熱性を有する部材から構成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明の請求項9に係る薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースでは、
前記温度検出表示体は、可逆性のサーモラベルであることを特徴とする。
【0023】
本発明の請求項10に係る薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースでは、
前記蓄熱部材は、前記第二収納空間に対して着脱自在に構成された、ゲル状蓄熱剤をラミネートフィルム内に封入した蓄熱剤パックであることを特徴とする。
【0024】
本発明の請求項11に係る薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースでは、
前記保冷・保温用携帯ケースは、全体として断熱構造をしていることを特徴とする。
【0025】
本発明の請求項12に係る薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースでは、
前記保冷・保温用携帯ケースが、全体として剛性を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1に係る本発明では、通気部を通じて、第二収納空間から保冷又は保温用の空気が第一収納空間に流入し、保冷又は保温用の空気により、第一収納空間に収納された薬剤入り注射器を保冷又は保温する。外気温に従って、蓄熱部材による薬剤入り注射器に対する保冷又は保温の度合いが変動した場合でも、保冷又は保温された薬剤入り注射器が何度になっていて所定の温度範囲に保管されているか否かを温度検出表示体によって確認することができる。すなわち、温度検出表示体は、薬剤入り注射器の保冷又は保温の温度を検出・表示する温度検出・表示機能を提供するという効果を奏する。そして、必要とならば、蓄熱部材の使用量、携帯ケースの密閉度合い等の調節により、保冷又は保温の度合いを調節することができる。したがって、保冷・保温用携帯ケースに保管されている薬剤入り注射器の温度が分かるので、患者は、所定の温度範囲に保持するための迅速且つ適切な対応策を講ずることができるという効果を奏する。
【0027】
請求項2に係る本発明では、必要に応じて、温度検出表示体に表示された温度に基づいて保冷又は保温の度合いをケース内部で積極的に調節する温度調節機能を提供するという効果を奏する。
【0028】
請求項3に係る本発明では、複数個の通気開口の開閉操作により、通気量を調節することができるという簡単な通気量調節機能を提供するという効果を奏する。
【0029】
請求項4に係る本発明では、通気部として通気隙間を用いて、通気量を調節することができるという簡単な通気量調節機能を提供するという効果を奏する。
【0030】
請求項5に係る本発明では、通気隙間面積の大小により、通気量を調節することができるという簡単な通気量調節機能を提供するという効果を奏する。
【0031】
請求項6に係る本発明では、間仕切り部材に設けられた切欠部と閉塞体との組合せで被覆されたところの被覆面積の大小により、通気量を調節することができるという簡単な通気量調節機能を提供するという効果を奏する。
【0032】
請求項7に係る本発明では、保冷・保温用携帯ケースを開けることなく、透光部を介して温度検出表示体の表示温度を見ることができ、ケース内部での温度変化を抑制することができるという効果を奏する。
【0033】
請求項8に係る本発明では、蓄熱部材による保冷又は保温の効果を長持ちさせるという効果を奏する。
【0034】
温度検出表示体として第一収納空間に収まる小型温度計を用いることも可能であるが、請求項9に係る本発明では、省スペース化を図ることができるという効果を奏する。
【0035】
請求項10に係る本発明では、蓄熱部材による保冷又は保温の効果を長持ちさせるという効果を奏する。
【0036】
請求項11に係る本発明では、蓄熱部材による保冷又は保温の効果を長持ちさせるという効果を奏する。
【0037】
請求項12に係る本発明では、うっかりとして保冷・保温用携帯ケースに荷重が負荷された場合であっても、その中に収納されている薬剤入り注射器を保護することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第一実施形態に係る薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースの斜視図である。
【図2】図1に示した薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースの上面図である。
【図3】図1に示した薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースの模式的断面図である。
【図4】図1に示した薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースを開いて広げた状態の斜視図である。
【図5】図1に示した薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースの間仕切り部材の上面図である。(A)は、通気開口を閉塞体で覆っていない状態である。(B)は、幾つかの通気開口を閉塞体で覆った状態である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースの間仕切り部材の上面図である。(A)は、通気開口を閉塞体で覆っていない状態である。(B)は、通気開口の一部分を閉塞体で覆った状態である。
【図7】本発明の第三実施形態に係る薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースの間仕切り部材の上面図である。(A)は、切欠部を閉塞体で覆っていない状態である。(B)は、切欠部の一部分を閉塞体で覆った状態である。
【図8】本発明の第四実施形態に係る薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースの間仕切り部材の上面図である。(A)は、通気隙間を閉塞体で覆っていない状態である。(B)は、通気隙間の大部分を閉塞体で覆った状態である。
【図9】本発明の第五実施形態に係る薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースであり、予備ケースを取着した状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の第六実施形態に係る薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースであり、予備ケースを取着した状態を示す斜視図である。
【図11】本発明の変形例に係る薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースの斜視図である。
【図12】図11に示した薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、本発明の第一実施形態に係る薬剤入りペン型注射器12の保冷・保温用携帯ケース1(以下、単に保冷・保温用携帯ケース1という。)を、図1乃至5を参照しながら詳細に説明する。
【0040】
図1は、本発明の第一実施形態に係る保冷・保温用携帯ケース1の斜視図である。図1において、保冷・保温用携帯ケース1は、全体として直方体の各角部を丸くした箱形状をしており、蓋部に相当する第一ケース部3と、本体部に相当する第二ケース部5と、を備えている。第一ケース部3及び第二ケース部5は、図4に示すように、後方面部において連結部9を介してつながっており、連結部9を除く側面部に連続的に設けられた開閉用のファスナー7によって開閉自在となっている。なお、ファスナー7は、保冷・保温用携帯ケース1の内部を略密閉構造とすることのできるタイプのものが使用されている。
【0041】
保冷・保温用携帯ケース1の第一ケース部3及び第二ケース部5は、それぞれ、合成繊維、例えば、ポリエステル系樹脂繊維、ナイロン系樹脂繊維、塩化ビニル系樹脂繊維などを素材としたものが挙げられ、通常は、当該素材を使用した織布で構成されている。第一ケース部3及び第二ケース部5は、不織布又は発泡シートからなる保温断熱構造体をさらに備えてもよい。第一ケース部3及び第二ケース部5の内面には、熱反射層としてのアルミ蒸着層を備えることができる。第一ケース部3及び第二ケース部5の保温構造として、厚手の織物や編み物も使用することができる。
【0042】
図3に示すように、保冷・保温用携帯ケース1の内部は、間仕切り部材30によって、第一ケース部3の側の第一収納空間10と、第二ケース部5の側の第二収納空間20とに隔てられている。間仕切り部材30は、第一ケース部3及び第二ケース部5と同様に断熱構造をしており、第一収納空間10と第二収納空間20との間を、空間的に隔てるとともに熱的に隔てる機能を有している。間仕切り部材30は、第一ケース部3又は第二ケース部5の内壁面に対して固着する構成であってもよいが、取着部36と第一ケース部3又は第二ケース部5の内壁面との双方に設けられた面ファスナー等の係着部材により、第一ケース部3又は第二ケース部5の内壁面に対して着脱自在に構成されている。図3に示した場合、第二ケース部5には2層の蓄熱材パック40が収納されており、第二ケース部5に収納される蓄熱材パック40の収納量に合わせて、間仕切り部材30の位置を自在に決めすることができる。
【0043】
蓄熱剤パック40は、ナイロンフィルムとポリエチレンフィルムとを積層した上下のラミネートフィルムを重ね合わせて三辺を熱圧着(熱融着)して袋状体を形成し、形成された袋状空間に蓄熱剤を封入したあと開口部を熱圧着して閉止したものである。蓄熱剤パック40は、薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケース1の第二収納空間20に装着可能なように寸法構成されている。
【0044】
ラミネートフィルムとしては、エチレン・酢酸ビニル共重合体やエチレン・メチルメタクリレート共重合体等も使用可能である。後述するゲル状の蓄熱剤の成分が透過して漏出しないように、すなわち高いバリア性を得るために、ナイロンフィルムの厚みを厚くしたり、ナイロンフィルムの上にアルミニウムをコーティングしたりすることもできる。
【0045】
ゲル状の蓄熱剤としては、保冷剤として公知である様々な材料が使用可能であるが、ポリアクリル酸ナトリウムに多量の水を含んだゲル状物質や、硫酸ナトリウム10水塩(Na2SO4・10H2O)と水(H2O)とを適量調合した硫酸ナトリウム10水塩が例示される。
【0046】
蓄熱剤パック40は、複数の小分けされた蓄熱剤パック要素が、境界部分を介して連結されている複数個連結形態をしている。各蓄熱剤パック要素には、上述したゲル状の蓄熱剤が密封される。したがって、蓄熱剤パック40は、全体として、捻れや折り曲げに抗する柔軟性を備えている。
【0047】
図4に示すように、第一ケース部3の内面側には、2つの注射器用固定部材14と、3つの注射針用固定部材18とが固着されている。薬剤入りペン型注射器12が、2つの注射器用固定部材14の間に装着固定されている。注射針用固定部材18のそれぞれに対して、注射針16が装着固定されている。図1乃至4に示すように、第一ケース部3の上壁部の左側には、第一収納空間10の内部を局所的に見ることができる透光窓(透光部)44が部分的に設けられている。保冷・保温用携帯ケース1の全体を透光性にすることも可能であるが、注射器12の中に装填されている薬剤にとっては、外光照射が好ましくない場合が多いので、ケース1の大部分を遮光して必要な部分だけを透光性にすることが好ましい。
【0048】
薬剤入りペン型注射器12のカートリッジ内には、例えば、インスリン製剤、成長ホルモン剤、ヒト血液凝固因子製剤等のように、患者への毎日の投与が必要とされるものであって、皮下注射により、患者が自己注射できる薬剤が充填されている。従来技術のところで説明したように、インスリン製剤は、血糖値を低下させるために、糖尿病の治療にも用いられている。インスリン製剤は、高温や凍結や光等に弱いために、正しく保存をしないと品質が劣化する可能性がある。したがって、例えば、インスリン製剤、及び薬剤入りペン型注射器12(以下、製剤入りペン型注射器12という。)は、高温や低温過ぎずに適温に、少なくとも室温程度に、好適には冷蔵庫の野菜室等のような2乃至8℃の適切な温度範囲で保管することが求められている。したがって、薬剤入りペン型注射器12が、保冷・保温用携帯ケース1内で何℃の温度で保管されているかを検出・表示することは非常に重要である。
【0049】
そこで、第一収納空間10の内部には、薄いシート状のサーモラベル(温度検出表示体)46が配設されている。例えば、サーモラベル(温度検出表示体)46が透光窓(透光部)44の内面に貼着されている。サーモラベル(温度検出表示体)46は、第一収納空間10の内部温度と、実質的に薬剤入りペン型注射器12の温度とを検出するとともに、透光窓(透光部)44を通じて当該温度を使用者に告知することができる。サーモラベル46として、例えば、アセイ工業株式会社製の可逆性の液晶シール(品番:NV-M2-20D、変色温度帯:−2〜20℃(−2℃、0℃、2℃、4℃、8℃、10℃、・・・、20℃のように離散した温度数値をデジタル的に表示)、変色色調:緑色)を用いることができる。また、温度検出表示体としては、コンパクトさや良好な視認性の面でサーモラベルが好適であるが、第一収納空間10の内部に収まる小型サイズの赤液棒状温度計も使用可能である。すなわち、サーモラベル(温度検出表示体)46によって、薬剤入りペン型注射器12の保冷又は保温の温度を検出・表示する温度検出・表示機能が提供される。保冷・保温用携帯ケース1の置かれる様々な環境(例えば、真夏の車中、真冬のスキー場、スポーツやレジャーを行う野外、空調の効いた室内等)に応じてケース1の周囲温度及び内部温度が変動するものの、サーモラベル(温度検出表示体)46によって、保冷・保温用携帯ケース1内に保管されている薬剤入りペン型注射器12の温度が分かるので、インスリン製剤等を自己注射する患者は、薬剤入りペン型注射器12を所定の温度範囲に保持するための迅速且つ適切な対応策を取ることができる。
【0050】
なお、第一ケース部3に設けられた透光窓(透光部)44を通じて、サーモラベル(温度検出表示体)46で表示された温度(実質的に薬剤入りペン型注射器12の温度)を視認することは、保冷・保温用携帯ケース1内の温度変動をできるだけ少なくする上で好適である。
【0051】
しかしながら、第一ケース部3に透光窓(透光部)44が設けられていない、あるいは透光窓(透光部)44が設けられていても非常に小さくて見づらい場合には、保冷・保温用携帯ケース1内での若干の温度変動を伴うものの、ファスナー7を開いてケース内でのサーモラベル(温度検出表示体)46での表示温度を素早く視認したあと直ぐにファスナー7を閉じるという一連の開閉・視認動作を短時間で素早く行うことも可能である。
【0052】
間仕切り部材30は、図5の(A)に示すように、第一収納空間10と第二収納空間20とを連通する略円形の通気開口(通気部)32を6個有するが、図示された通気開口(通気部)32の個数や形状に限定されるものではない。間仕切り部材30の上面は、通気開口(通気部)32よりも大きな寸法の閉塞体34を取着することができるように構成されており、方形形状の閉塞体34によって適宜の通気開口(通気部)32を塞ぐことができる。例えば、間仕切り部材30と閉塞体34との双方に面ファスナー等の係着部材を設けて、閉塞体34を間仕切り部材30に対して着脱自在にして、閉塞体34によって適宜の通気開口(通気部)32を塞ぐことができる。図5の(B)に示した例では、6個の通気開口(通気部)32のうち、3個の通気開口(通気部)32が閉塞体34によって覆われている。サーモラベル(温度検出表示体)46によって、保冷・保温用携帯ケース1に保管されている薬剤入りペン型注射器12の温度に応じて、適宜数の通気開口(通気部)32を塞ぐことにより、第二収納空間20から保冷又は保温用の空気が第一収納空間10に流入する通気量を調節する通気量調節機能が提供される。また、通気開口(通気部)32を塞ぐ数量によって、及び/又は、開閉用のファスナー7の開閉度合いによって、第二収納空間20から第一収納空間10に流入する保冷又は保温用の空気の通気量を調節することも可能である。なお、間仕切り部材30は、第二ケース部5の内側壁部に対して、ほとんど隙間が無いように寸法構成されていて、第二収納空間20からの保冷又は保温用の空気が、実質的に通気開口(通気部)32のみを通じて第一収納空間10に流入するように構成されている。
【0053】
したがって、第一実施形態に係る保冷・保温用携帯ケース1は、サーモラベル等の温度検出表示体46により薬剤入りペン型注射器12の保冷又は保温の温度を検出・表示することができるとともに、検出・表示された温度に応じて、ケース1内部での温度調節を適宜に行うことができるという効果を奏する。
【0054】
次に、本発明の第二実施形態に係る保冷・保温用携帯ケース1について、図6を参照しながら説明する。
【0055】
当該第二実施形態では、間仕切り部材30が長手方向に延在する長穴形状の通気開口(通気部)32を備えることを特徴としている。したがって、当該第二実施形態における保冷・保温用携帯ケース1の基本構造は、上記実施形態における保冷・保温用携帯ケース1と類似しているので、相違点を中心に以下に説明する。
【0056】
本発明の第二実施形態に係る保冷・保温用携帯ケース1では、図6に示すように、間仕切り部材30が、長手方向に延在する長穴形状の通気開口(通気部)32を2つ備えている。図6の(A)のように、長穴形状の通気開口(通気部)32が左上と右下に配置され、方形形状の閉塞体34が左下と右上に配置されている。
【0057】
間仕切り部材30の上面は、長穴形状の通気開口(通気部)32よりも大きな寸法の閉塞体34を取着できるように構成されており、図6の(B)のように、閉塞体34によって通気開口(通気部)32を適宜に覆って適宜の被覆面積で塞ぐことができる。例えば、間仕切り部材30と閉塞体34との双方に面ファスナー等の係着部材を設けて、閉塞体34を間仕切り部材30に対して着脱自在にして、閉塞体34によって適宜の被覆面積で通気開口(通気部)32を覆うことができる。サーモラベル(温度検出表示体)46によって、保冷・保温用携帯ケース1に保管されている薬剤入りペン型注射器12の温度に応じて、適宜の被覆面積で通気開口(通気部)32を覆うことにより、第二収納空間20から保冷又は保温用の空気が第一収納空間10に流入する通気量を調節する通気量調節機能が提供される。また、通気開口(通気部)32を覆う被覆面積によって、及び/又は、開閉用のファスナー7の開閉度合いによって、第一収納空間10に流入する通気量を調節することも可能である。
【0058】
したがって、第二実施形態に係る保冷・保温用携帯ケース1は、サーモラベル等の温度検出表示体46により薬剤入りペン型注射器12の保冷又は保温の温度を検出・表示することができるとともに、検出・表示された温度に応じて、ケース1内部での温度調節を適宜に行うことができるという効果を奏する。
【0059】
次に、本発明の第三実施形態に係る保冷・保温用携帯ケース1について、図7を参照しながら説明する。
【0060】
当該第三実施形態では、間仕切り部材30が、その周縁において、長手方向に延在する切欠部(通気部)37を備えることを特徴としている。したがって、当該第三実施形態における保冷・保温用携帯ケース1の基本構造は、上記実施形態における保冷・保温用携帯ケース1と類似しているので、相違点を中心に以下に説明する。
【0061】
本発明の第三実施形態に係る保冷・保温用携帯ケース1では、図7の(A)に示すように、間仕切り部材30が、その下側周縁において、長手方向に延在する切欠部(通気部)37を1つ備えている。図7の(A)のように、切欠部(通気部)37は、細長い略直角三角形形状をしており、1つの方形形状の閉塞体34が切欠部(通気部)37の上側に配置されている。切欠部(通気部)37が、細長い方形形状であってもよいことは言うまでもない。
【0062】
間仕切り部材30の上面は、長手方向に細長く延在する切欠部(通気部)37よりも大きな寸法の閉塞体34を取着することができるように構成されており、図7の(B)のように、閉塞体34によって切欠部(通気部)37を適宜に覆って適宜の被覆面積で塞ぐことができる。例えば、間仕切り部材30と閉塞体34との双方に面ファスナー等の係着部材を設けて、閉塞体34を間仕切り部材30に対して着脱自在にして、閉塞体34によって適宜の被覆面積で切欠部(通気部)37を覆うことができる。サーモラベル(温度検出表示体)46によって、保冷・保温用携帯ケース1に保管されている薬剤入りペン型注射器12の温度に応じて、適宜の被覆面積で切欠部(通気部)37を覆うことにより、第二収納空間20から保冷又は保温用の空気が第一収納空間10に流入する通気量を調節する通気量調節機能が提供される。また、切欠部(通気部)37を覆う被覆面積によって、及び/又は、開閉用のファスナー7の開閉度合いによって、第一収納空間10に流入する通気量を調節することも可能である。
【0063】
したがって、第三実施形態に係る保冷・保温用携帯ケース1は、サーモラベル等の温度検出表示体46により薬剤入りペン型注射器12の保冷又は保温の温度を検出・表示することができるとともに、検出・表示された温度に応じて、ケース1内部での温度調節を適宜に行うことができるという効果を奏する。
【0064】
次に、本発明の第四実施形態に係る保冷・保温用携帯ケース1について、図8を参照しながら説明する。
【0065】
当該第四実施形態では、間仕切り部材30が、上述した第一乃至第三実施形態で説明したものよりも一回り小さく寸法構成されていて、保冷・保温用携帯ケース1の内側壁部と間仕切り部材30との間に通気隙間(通気部)38が形成されていることを特徴としている。したがって、当該第四実施形態における保冷・保温用携帯ケース1の基本構造は、上記実施形態における保冷・保温用携帯ケース1と類似しているので、相違点を中心に以下に説明する。
【0066】
本発明の第四実施形態に係る保冷・保温用携帯ケース1では、図8の(A)に示すように、間仕切り部材30が、第二ケース部5の内側壁部(不図示)よりも僅かに小さく寸法構成されている。その結果、第二ケース部5の内側壁部との関係で、間仕切り部材30は、左側縁と下側縁と右側縁のそれぞれにおいて、通気隙間(通気部)38を備えている。左側縁及び右側縁では縦長の通気隙間(通気部)38を備え、下側縁では横長の通気隙間(通気部)38を備える。
【0067】
間仕切り部材30の上面及び第二ケース部5の内側壁部は、左側縁と下側縁と右側縁のそれぞれに形成される各通気隙間(通気部)38よりも大きな寸法の閉塞体34を取着することができるように構成されている。図8の(B)のように、閉塞体34で通気隙間(通気部)38を適宜に覆うことによって、適宜の被覆面積で塞ぐことができる。例えば、間仕切り部材30と第二ケース部5の内側壁部と閉塞体34との三者に面ファスナー等の係着部材を設けて、閉塞体34を間仕切り部材30及び第二ケース部5の内側壁部に対して着脱自在にして、閉塞体34によって適宜の被覆面積で通気隙間(通気部)38を覆うことができる。サーモラベル(温度検出表示体)46によって、保冷・保温用携帯ケース1に保管されている薬剤入りペン型注射器12の温度に応じて、適宜の被覆面積で通気隙間(通気部)38を覆うことにより、第二収納空間20から保冷又は保温用の空気が第一収納空間10に流入する通気量を調節する通気量調節機能が提供される。また、通気隙間(通気部)38を覆う被覆面積によって、及び/又は、開閉用のファスナー7の開閉度合いによって、第一収納空間10に流入する通気量を調節することも可能である。
【0068】
したがって、第四実施形態に係る保冷・保温用携帯ケース1は、サーモラベル等の温度検出表示体46により薬剤入りペン型注射器12の保冷又は保温の温度を検出・表示することができるとともに、検出・表示された温度に応じて、ケース1内部での温度調節を適宜に行うことができるという効果を奏する。
【0069】
次に、本発明の第五実施形態に係る保冷・保温用携帯ケース1について、図9を参照しながら説明する。
【0070】
当該第五実施形態では、保冷・保温用携帯ケース1の外側に予備ケース50を取着可能にしたことを特徴としている。したがって、当該第五実施形態における保冷・保温用携帯ケース1の基本構造は、上記実施形態における保冷・保温用携帯ケース1と類似しているので、相違点を中心に以下に説明する。
【0071】
本発明の第五実施形態に係る保冷・保温用携帯ケース1では、図9に示すように、保冷・保温用携帯ケース1の側面(手前側の側面及び向こう側の側面)又は下面(手前側の下面及び向こう側の下面)において、一対の固定バンド52が左右に設けられている。一対の固定バンド52は、面ファスナーやホックやプラスチック磁石・ゴム磁石のような着脱可能に係着する係着部をそれぞれ有し、予備ケース50を保冷・保温用携帯ケース1の下面に対して着脱可能に係着する。予備ケース50の中には、薬剤入りペン型注射器12のように所定の温度範囲に保存することが必要されるもの以外のもの、例えば、予備の注射針や、血糖測定器及び採血針や、低血糖用グルコース等が収納されている。
【0072】
したがって、第五実施形態に係る保冷・保温用携帯ケース1は、所定の温度範囲に保存することが要求されるものを保冷・保温用携帯ケース1の第一収納空間10に保管して、それ以外のものを予備ケース50に保管することにより、第一収納空間10の保温スペースを有効活用することができ、第一収納空間10での保温時間を長くすることができるという効果を奏する。
【0073】
次に、本発明の第六実施形態に係る保冷・保温用携帯ケース1について、図10を参照しながら説明する。
【0074】
当該第六実施形態では、保冷・保温用携帯ケース1の外側に予備ケース50を取着可能にしたことを特徴としている。したがって、当該第六実施形態における保冷・保温用携帯ケース1の基本構造は、上記実施形態における保冷・保温用携帯ケース1と類似しているので、相違点を中心に以下に説明する。
【0075】
本発明の第六実施形態に係る保冷・保温用携帯ケース1では、図10に示すように、保冷・保温用携帯ケース1の下面において、巾着袋のような収納袋54が取着されている。収納袋54の取り出し開口58には、巾着式に閉じることができるように、引締紐56が取り付けられており、取り出し開口58を通じて予備ケース50を入れたあと、引締紐56を引き絞って取り出し開口58を閉じる。面ファスナーやホックやファスナーやプラスチック磁石・ゴム磁石等によって、収納袋54の取り出し開口58を開閉する構成としてもよい。予備ケース50の中には、薬剤入りペン型注射器12のように所定の温度範囲に保存することが必要されるもの以外のもの、例えば、予備の注射針や、血糖測定器及び採血針や、低血糖用グルコース等が収納されている。
【0076】
したがって、第六実施形態に係る保冷・保温用携帯ケース1は、所定の温度範囲に保存することが要求されるものを保冷・保温用携帯ケース1の第一収納空間10に保管して、それ以外のものを予備ケース50に保管することにより、第一収納空間10の保温スペースを有効活用することができ、第一収納空間10での保温時間を長くすることができるという効果を奏する。
【0077】
なお、上述した第一実施形態乃至第六実施形態において、例えば、第一ケース部3及び第二ケース部5のそれぞれを、ポリエチレンやポリエステル等の内ケースと、発泡ポリウレタン樹脂や発泡ポリエチレン等の断熱材と、布地やレザー地や合成樹脂シート等の素材からなり断熱材の全体を外側から覆う外層を構成する外装部と、からなる3層構造にして、全体として断熱性及び剛性を備えるように構成することもできる。
【0078】
さらに、図11及び12に示すように、保冷・保温用携帯ケース101は、全体として直方体の各角部を丸くした箱形状をしたトレー103,105を二段に重ねて積層した変形例も可能である。すなわち、変形例に係る保冷・保温用携帯ケース101は、蓋体102と、第一の収納凹部110を有する第一のトレー103と、第二の収納凹部120を有する第二のトレー105とが重ねて積層されて、入れ子のように組み合わさって密閉状態で嵌合するように構成されている。保冷・保温用携帯ケース101における入れ子のように組み合わさって密閉状態で嵌合する構成が、上述した第一実施形態等でのファスナー7による略密閉で開閉自在な構造と同等の機能を発揮する。
【0079】
図12に示すように、蓋体102の外周突出部が第一のトレー103の上端部に係合し、第一のトレー103の外周縁が第二のトレー105の上端部に係合して、蓋体102及び第一のトレー103が第二のトレー105の上端部で嵌合・支持されている。そして、第一のトレー103が第二のトレー105の上部を占有して、第一のトレー103の底面部130を挟んで、第二のトレー105の上部が第一の収納凹部110に対応し、第二のトレー105の下部が第二の収納凹部120に対応する。そして、第一の収納凹部110、第二の収納凹部120及び第一のトレー103の底面部130が、それぞれ、上述した第一実施形態等の第一収納空間10、第二収納空間20及び間仕切り部材18に対応している。
【0080】
蓋体102と第一のトレー103と第二のトレー105とは、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂等からなり、全体として剛性を有している。蓋体102と第一のトレー103と第二のトレー105とは、不織布又は発泡シート等からなる保温断熱構造体をさらに備えることができる。
【0081】
第一の収納凹部110には薬剤入りペン型注射器112や複数の注射針116を着脱可能に配設し、第二の収納凹部120には少なくとも1つの蓄熱剤パック140を配設する。第一のトレー103の底面部130の上面にはサーモラベル等の温度検出表示体146を固設している。
【0082】
好適には、蓋体102は、少なくともその一部分が透光性を有する透光部144を備え、当該透光部144を通じて、第一の収納凹部110の中に配設されたサーモラベル等の温度検出表示体146を視認して、薬剤入りペン型注射器112の温度を知ることができる。第一のトレー103の底面部130には、複数の通気開口132が形成されており、適宜の通気開口132を閉塞体134で覆うことによって、第二の収納凹部120から第一の収納凹部110に流入する通気量を調節することができる。
【0083】
したがって、上述した第一実施形態等と同様に、変形例に係る保冷・保温用携帯ケース101も、サーモラベル等の温度検出表示体146により薬剤入りペン型注射器112の保冷又は保温の温度を検出・表示することができるとともに、検出・表示された温度に応じて、ケース101内部での温度調節を適宜に行うことができるという効果を奏する。
【0084】
なお、閉塞体34,134による通気部(通気開口32,132や通気隙間38)と間仕切り部材30や底面部130との係着は、閉塞体34,134の上に粘着層を形成して、閉塞体34,134を間仕切り部材30や底面部130に対して着脱可能に貼着する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0085】
1:保冷・保温用携帯ケース
3:第一ケース部
5:第二ケース部
7:ファスナー
9:連結部
10:第一収納空間
12:薬剤入りペン型注射器
14:注射器用固定部材
16:注射針
18:注射針用固定部材
20:第二収納空間
30:間仕切り部材
32:通気開口(通気部)
34:閉塞体
36:取着部
37:切欠部(通気部)
38:通気隙間(通気部)
40:蓄熱剤パック
44:透光窓(透光部)
46:サーモラベル(温度検出表示体)
50:予備ケース
52:固定バンド
54:収納袋
56:引締紐
58:取り出し開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤の入った注射器を収納する第一収納空間と、蓄熱部材を収納する第二収納空間と、前記第一収納空間と前記第二収納空間との間を隔てる間仕切り部材と、を備える薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケースであって、
前記間仕切り部材は、前記第一収納空間と前記第二収納空間との間を連通する通気部を有し、
前記第一収納空間は、その内部の温度を検出し且つ表示することのできる温度検出表示体を有することを特徴とする薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケース。
【請求項2】
前記通気部は、通気量を調節することができるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケース。
【請求項3】
前記通気部は、複数個の通気開口から構成されていて、閉塞体によって覆われる前記通気開口の数量及び/又は開口面積に応じて、通気量を調節することを特徴とする、請求項1又は2に記載の薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケース。
【請求項4】
前記通気部は、前記保冷・保温用携帯ケースの内側壁部と前記間仕切り部材との間に形成された通気隙間であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケース。
【請求項5】
前記通気隙間は、その隙間面積の大小により通気量を調節することを特徴とする、請求項4に記載の薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケース。
【請求項6】
前記通気隙間は、前記間仕切り部材の周縁に設けられた切欠部であり、閉塞体によって覆われる前記切欠部の被覆面積に応じて、通気量を調節することを特徴とする、請求項4又は5に記載の薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケース。
【請求項7】
前記第一収納空間を構成する外壁部の少なくとも一部分が透光部を有し、当該透光部を介して前記温度検出表示体の温度を表示することができるように構成されていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケース。
【請求項8】
前記間仕切り部材は、断熱性を有する部材から構成されていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一つに記載の薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケース。
【請求項9】
前記温度検出表示体は、可逆性のサーモラベルであることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一つに記載の薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケース。
【請求項10】
前記蓄熱部材は、前記第二収納空間に対して着脱自在に構成された、ゲル状蓄熱剤をラミネートフィルム内に封入した蓄熱剤パックであることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一つに記載の薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケース。
【請求項11】
前記保冷・保温用携帯ケースは、全体として断熱構造をしていることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一つに記載の薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケース。
【請求項12】
前記保冷・保温用携帯ケースが、全体として剛性を備えていることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一つに記載の薬剤入り注射器の保冷・保温用携帯ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−223281(P2012−223281A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92139(P2011−92139)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(506229741)株式会社タカラ (13)
【Fターム(参考)】