説明

薬剤収納容器

【課題】薬剤が収納された薬剤収納凹部の密封操作を、当該薬剤収納凹部の底部の変形を抑制しながら確実、容易に行うことができ、しかも、薬剤収納容器全体の軽量化、小型化、製造コストの低廉化をも図る。
【解決手段】合成樹脂シート又は合成樹脂フイルムの複数箇所に薬剤収納凹部1を下方に張出す状態で一体形成してある容器本体Aと、該容器本体Aの上面2に対して各薬剤収納凹部1の開口を密封する状態で貼り付け可能な合成樹脂シート又は合成樹脂フイルム製のカバー3とが備えられているとともに、前記容器本体Aの周縁には、前記各薬剤収納凹部1の底面と略同一位置又はそれよりも下方に突出する周壁4が一体形成されているとともに、前記カバー3の下面に形成された接着剤層には剥離紙5が貼り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、看者固有の治療処方方針に基づいて投与される薬剤を服用単位で区画収納する場合等に用いられる薬剤収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の薬剤収納容器では、折り畳み可能な上下両側の台紙の各々に、縦横に所定間隔をおいて配置される複数の薬剤収納凹部の開口に対応する貫通孔を形成し、前記下方側台紙の合わせ面側には、合成樹脂製のシート状基材の複数箇所に薬剤収納凹部を下方に張出す状態で一体形成してある透明な容器本体を、各薬剤収納凹部を下方側台紙の各貫通孔に挿通させた状態で接着するとともに、前記上方側台紙の合わせ面側には、当該上方側台紙の貫通孔を密閉する指で破断可能な紙シートを貼付ける。
【0003】
前記紙シートの下面には、前記容器本体の上面に対して各薬剤収納凹部の開口を密封する状態で貼り付けるための接着剤層を形成し、この接着剤層には剥離紙が貼付けられている(特許文献1,2参照)
【0004】
そして、前記下方側台紙に固着されている容器本体の各薬剤収納凹部内に、投与される薬剤を服用単位で区画収納したのち、上方側台紙に接着された紙シートの剥離紙を剥離し、上方側台紙を下方側台紙上に重ね合わせ、紙シートの接着剤層を容器本体の上面に押し付けることにより、各薬剤収納凹部の開口を密封した状態で上下の両台紙を接着する。
【0005】
薬剤を服用する場合には、上方側台紙の貫通孔に臨む紙シートの開口形成部位のうち、服用対象の薬剤が収納されている薬剤収納凹部の対応する開口形成部位を指で破断し、薬剤収納凹部内の薬剤を取り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−030570号公報
【特許文献2】特開2009−000485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記構造の薬剤収納容器においては、各薬剤収納凹部の開口を密封した状態で上下の両台紙を接着する際、薬剤が収納されている下方側台紙上に上方側台紙を重ね合わせ、上方側台紙を介して紙シートの接着剤層を容器本体の上面に押し付けながら接着することになるが、このとき、載置面に載置されている容器本体の柔軟な薬剤収納凹部の底部が変形し易く、その変形で押付け力が緩和されるため、両台紙の接着不良を招来する可能性があり、しかも、薬剤収納凹部の底部の変形による乱反射によって収納された薬剤の目視確認がしずらくなる不都合がある。
【0008】
さらに、折り畳み可能な台紙を用いるため、薬剤収納容器全体が重量化、大型化し、且つ、製造コストも高騰化し易い。
【0009】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その第1の課題は、薬剤が収納された薬剤収納凹部の密封操作を、当該薬剤収納凹部の底部の変形を抑制しながら確実、容易に行うことができ、しかも、薬剤収納容器全体の軽量化、小型化、製造コストの低廉化をも図ることのできる薬剤収納容器を提供する点にあり、第2の課題は、薬剤が収納された薬剤収納凹部の密封操作を、当該薬剤収納凹部の底部の変形を抑制しながら容易に行うことができ、しかも、薬剤収納容器全体の軽量化、小型化、製造コストの低廉化を図ることができるとともに、破断分離された開封操作部位のシート部分を迅速、容易に除去して、薬剤の取り出しの容易化を図ることのできる薬剤収納容器を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による第1の特徴構成は、合成樹脂シート又は合成樹脂フイルムの複数箇所に薬剤収納凹部を下方に張出す状態で一体形成してある容器本体と、該容器本体の上面に対して各薬剤収納凹部の開口を密封する状態で貼り付け可能な合成樹脂シート又は合成樹脂フイルム状製のカバーとが備えられているとともに、前記容器本体の周縁には、前記各薬剤収納凹部の底面と略同一位置又はそれよりも下方に突出する周壁が一体形成されているとともに、前記カバーの下面に形成された接着剤層には剥離紙が貼り付けられている点にある。
【0011】
上記構成によれば、容器本体の薬剤収納対象の薬剤収納凹部内に、例えば、投与される薬剤を服用単位で区画収納したのち、カバーの接着剤層に貼り付けられている剥離紙を剥離し、このカバーの接着剤層を容器本体の上面に重ね合わせて押付け、容器本体の上面に対して各薬剤収納凹部の開口を密封する状態でカバーを貼り付ける。
【0012】
このとき、前記容器本体の周縁には、前記各薬剤収納凹部の底面と略同一位置又はそれよりも下方に突出する周壁が一体形成されているため、カバーに加えられる押付け力を、前記周壁の接地箇所で分散支持することができるので、容器本体の各薬剤収納凹部の底部の変形を抑制することができる。
【0013】
薬剤を服用する場合には、前記カバーにおける前記容器本体の各薬剤収納凹部の開口部に対応する開封操作部位のうち、取り出し対象の薬剤が収納されている薬剤収納凹部の開口部に対応する開封操作部位を破断し、収納されていた薬剤を取り出す。
【0014】
したがって、薬剤が収納された薬剤収納凹部の密封操作を、当該薬剤収納凹部の底部の変形を抑制しながら確実、容易に行うことができ、しかも、合成樹脂シート又は合成樹脂フイルムを成形した容器本体と合成樹脂シート又は合成樹脂フイルム状製のカバーとの組み合わせであるから、薬剤収納容器全体の軽量化、小型化し、製造コストの低廉化を図ることができる。
【0015】
本発明による第2の特徴構成は、前記カバーにおける前記容器本体の各薬剤収納凹部の開口部に対応する部位には、薬剤収納凹部の開口周縁と同一又は略同一形状の輪郭形状で破断誘導用の脆弱部が形成されているとともに、前記カバーの下面のうち、前記脆弱部で囲まれた開封操作部位を除く部位には前記接着剤層が形成されている点にある。
【0016】
上記構成によれば、取り出し対象の薬剤が収納されている薬剤収納凹部の開口部に対応する開封操作部位を破断する際、この開封操作部位に形成されている破断誘導用の脆弱部に沿って薬剤収納凹部の開口周縁の輪郭形状と同一又は略同一形状の大きな開口で簡単に破断することができ、しかも、カバーにおける開封操作部位には接着剤層が形成されていないため、破断分離された開封操作部位のシート部分が薬剤収納凹部の内壁に付着することがなく、薬剤の取り出しを容易に行うことができる。
【0017】
本発明による第3の特徴構成は、前記剥離紙が三つ以上の分割剥離紙体から構成され、前記剥離紙及びカバーにおける周縁部の同一特定部位には夫々位置合わせ用の凹部が形成されているとともに、前記容器本体の上面の周縁部には、前記剥離紙及びカバーの位置合わせ用の凹部に係合する位置決め用の凸部が形成されている点にある。
【0018】
上記構成によれば、容器本体の上面にカバーを貼り付ける際、先ず、前記剥離紙を構成する三つ以上の分割剥離紙体のうち、前記中間の分割剥離紙体を剥離し、カバーを容器本体の上面に重ね合わせる。
【0019】
このとき、中間の分割剥離紙体の剥離によって接着剤層の中間部位が露出するものの、その両側には他の分割剥離紙体が存在するため、露出した中間接着剤層が容器本体の上面に付着することを抑制することができ、容器本体の上面の周縁部に形成した凸部とカバー及び分割剥離紙体の周縁部の同一特定部位に形成されている凹部とを確実、容易に位置合わせすることができる。
【0020】
この位置合わせ状態で露出した中間接着剤層を容器本体の上面に押し付けて仮接着したのち、他の分割剥離紙体を剥離して容器本体の上面にカバーを本接着する。
【0021】
したがって、容器本体の上面に対してカバーを簡単な手順で正確に貼り付けることができ、カバーの開封操作部位の位置ずれに起因して薬剤が取り難くなることを回避することができる。
【0022】
本発明による第4の特徴構成は、前記容器本体及びカバーが、外部から透視可能な合成樹脂材料から製作されている点にある。
【0023】
上記構成によれば、前記剤収納凹部に収納された薬剤の目視確認を容器本体側及びカバー側の両方向から容易に行うことができる。
【0024】
本発明による第5の特徴構成は、前記容器本体の周壁の一部に、下方ほど外方に張り出す傾斜壁部が形成され、この傾斜壁部の外面が、看者情報、処方日等が記載された表示シートを貼付け可能な表示面に形成されている点にある。
【0025】
上記構成によれば、前記容器本体の周壁の一部に形成された傾斜壁部の表示面を利用して、看者情報、処方日等が記載された表示シートを見易い状態で容易に貼付けて表示することができる。
【0026】
本発明による第6の特徴構成は、前記剥離紙及びカバーの周縁部のうち、前記凹部から周縁方向に離間した部位の一箇所又は複数箇所には位置合わせ用の第2凹部が形成され、前記容器本体の上面の周縁部には、前記剥離紙及びカバーの位置合わせ用の第2凹部に係合する位置決め用の第2凸部が形成されている点にある。
【0027】
上記構成によれば、容器本体の上面の周縁部に形成した凸部とカバー及び分割剥離紙体に形成されている凹部との係合による位置合わせに加えて、剥離紙及びカバーの周縁部のうち、前記凹部から周縁方向に離間した部位の一箇所又は複数箇所に形成された第2凹部と容器本体の上面の周縁部に形成された第2凸部との係合による位置合わせにより、容器本体の上面に対してカバーを簡単な手順でより正確に貼り付けることができ、カバーの開封操作部位の位置ずれに起因して薬剤が取り難くなることを良好に回避することができる。
【0028】
本発明による第7の特徴構成は、合成樹脂シート又は合成樹脂フイルムの複数箇所に薬剤収納凹部を一体形成してある容器本体と、該容器本体の上面に対して各薬剤収納凹部の開口を密封する状態で貼り付け可能な合成樹脂シート又は合成樹脂フイルム製のカバーとが備えられ、前記カバーにおける前記容器本体の各薬剤収納凹部の開口部に対応する部位には、薬剤収納凹部の開口周縁に沿う又は略沿う輪郭形状で破断誘導用の脆弱部が形成されているとともに、前記各薬剤収納凹部の周壁部の一部には、薬剤収納空間側に張り出す突起部が形成されている点にある。
【0029】
上記構成によれば、容器本体の薬剤収納対象の薬剤収納凹部内に、例えば、投与される薬剤を服用単位で区画収納したのち、容器本体の上面に対して各薬剤収納凹部の開口を密封する状態でカバーを貼り付ける。
【0030】
このとき、前記各薬剤収納凹部の周壁部の一部に形成された突起部によるリブ効果によって各薬剤収納凹部自体の保形強度が向上するため、カバーに加えられる押付け力による容器本体の各薬剤収納凹部の底部の変形を抑制することができる。
【0031】
しかも、合成樹脂シート又は合成樹脂フイルム製の容器本体の薬剤収納対象の薬剤収納凹部内に、例えば、投与される薬剤を服用単位で区画収納したのち、該容器本体の上面に対して各薬剤収納凹部の開口を密封する状態で合成樹脂シート又は合成樹脂フイルム製のカバーを貼り付けるだけであるから、薬剤収納容器全体の軽量化、小型化し、製造コストの低廉化を図ることができる。
【0032】
さらに、取り出し対象の薬剤が収納されている薬剤収納凹部の開口部に対応する開封操作部位を破断する際、この開封操作部位に形成されている破断誘導用の脆弱部に沿って薬剤収納凹部の開口周縁に沿う又は略沿う輪郭形状で簡単に破断することができ、しかも、各薬剤収納凹部の周壁部の一部には薬剤収納空間側に張り出す前記突起部が形成されているため、破断分離された開封操作部位のシート部分が薬剤収納凹部の内壁に密着することがなく、破断分離された開封操作部位のシート部分を迅速、容易に除去することができるので、薬剤の取り出しを容易に行うことができる。
【0033】
したがって、薬剤が収納された薬剤収納凹部の密封操作を、当該薬剤収納凹部の底部の変形を抑制しながら容易に行うことができ、しかも、薬剤収納容器全体の軽量化、小型化、製造コストの低廉化を図ることができるとともに、破断分離された開封操作部位のシート部分を迅速、容易に除去して、薬剤の取り出しの容易化を図ることができる。
【0034】
本発明による第8の特徴構成は、前記突起部が、薬剤収納凹部の周壁部の複数箇所の上部側に形成されている点にある。
【0035】
上記構成によれば、前記各薬剤収納凹部の周壁部の複数箇所に形成された薬剤収納空間側に張り出す突起部によって、破断分離された開封操作部位のシート部分が薬剤収納凹部の周壁部内面に密着することを防止することができ、しかも、この突起部は薬剤収納凹部の周壁部の上部側に存在するだけであるため、下部側の空間は広くなり、指操作による破断分離されたシート部分の除去を迅速、容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の薬剤収納容器の第1実施形態を示す分解斜視図
【図2】容器本体の上面にカバーを貼り付けたときの平面図
【図3】(a)〜(d)は容器本体の上面にカバーを貼り付ける工程図
【図4】(a),(b)は破断前と破断操作時の要部の拡大断面図
【図5】(a)〜(e)は別の実施形態を示す容器本体の要部の拡大平面図
【発明を実施するための形態】
【0037】
〔第1実施形態〕
図1〜図4は、看者固有の治療処方方針に基づいて投与される薬剤を服用単位で区画収納する場合に用いられる薬剤収納容器を示し、外部から透視可能な合成樹脂材料製のシート又はフイルム(例えばポリプロピレンシート又はポリプロピレンフイルム)の7列4行となる複数箇所に、短辺方向を1日の4回分(朝、昼、夜、寝前)とし、長辺方向を1週間の7日分(月曜日〜日曜日)として薬剤を服用単位で区画収納する薬剤収納凹部1を下方に張出す状態で一体形成してある透明な容器本体Aと、該容器本体Aの格子状の上面2に対して各薬剤収納凹部1の開口を密封する状態で貼り付け可能で、且つ、外部から透視可能な透明な合成樹脂シート又はフイルム(例えばポリプロピレンシート又はポリプロピレンフイルム)で製作されたカバー3とが備えられているとともに、前記容器本体Aの周縁には、前記各薬剤収納凹部1の底面1aよりも下方に突出する周壁4が一体形成されているとともに、前記カバー3の下面に形成された接着剤層11には剥離紙5が貼り付けられている。
【0038】
前記容器本体Aの周壁4における一方の短辺側の側壁部4Aが、下方ほど長辺方向の外方側に張り出す傾斜壁部に形成され、この傾斜壁部4Aの外面が、患者氏名等の看者情報6a、処方日6b、薬剤師の氏名6c、服薬時間帯(朝、昼、夜、寝前)6d、毎食(前・後)6e、注意事項6f等が記載された表示シート6を貼り付けるための表示面に構成されている。
【0039】
前記容器本体Aの周壁4の下端には、外方に突出する環状の接地フランジ4Cが一体形成されているとともに、前記傾斜壁部4Aを除く周壁4の三面の側壁部4Bにおける長手複数箇所(当該実施形態では2箇所であるが、3箇所以上でもよく、条件によっては1箇所でもよい)には、縦方向の帯状で内方側に窪む補強リブ4Dが形成されている。
【0040】
前記剥離紙5には、前記傾斜壁部4A側から二列目と三列目との隣接間、及び、三列目と四列目との隣接間において短辺方向に沿う切断分離誘導用の脆弱部の一例である第1・第2切込み線7が形成され、当該剥離紙5が各別に剥離操作自在な三つの分割剥離紙体5A,5B,5Cから構成されている。
【0041】
前記剥離紙5の周縁部のうち、前記傾斜壁部4A側寄りの一つの分割線を構成する第1切込み線7の両端相当部位と、これに対応するカバー3の周縁部位には夫々位置合わせ用のV字状の凹部5a,3aが形成されているとともに、前記容器本体Aの上面2の周縁部における第1切込み線7の両端相当部位には、前記剥離紙5及びカバー3の位置合わせ用の凹部5a,3aに係合する三角柱状又は五角柱状の位置決め用の凸部8が上方に一体的に張り出し形成されている。
【0042】
さらに、前記剥離紙5の周縁部及びカバー3の周縁部で、一つの分割線を構成する第1切込み線7から周方向、つまり、長辺方向に離間した各角部の四箇所(一〜三箇所又は五箇所以上でもよい)には位置合わせ用の半円状の第2凹部5b,3bが形成され、前記容器本体Aの上面2の周縁部における各角部には、前記剥離紙5及びカバー3の位置合わせ用の第2凹部5b,3bに係合する円柱状の位置決め用の第2凸部9が上方に一体的に張り出し形成されている。
【0043】
前記カバー3における前記容器本体Aの各薬剤収納凹部1の開口部に対応する部位には、薬剤収納凹部1の開口周縁と同一又は略同一形状の輪郭形状で破断誘導用の脆弱部の一例であるミシン目10が形成されているとともに、前記カバー3の下面のうち、前記ミシン目10で囲まれた開封操作部位3Aを除く格子状の部位には前記接着剤層11が形成されている。
【0044】
そして、前記容器本体Aの上面2に接着されたカバー3のうち、取り出し対象の薬剤が収納されている薬剤収納凹部1の開口部に対応する開封操作部位3Aを指の押込み操作で破断する際、この開封操作部位3Aに形成されている破断誘導用のミシン目10に沿って薬剤収納凹部1の開口周縁の輪郭形状と同一又は略同一形状の大きな開口で簡単に破断することができ、しかも、前記カバー3における開封操作部位3Aの下面には接着剤層11が形成されていないため、破断分離された開封操作部位3Aのシート部分が薬剤収納凹部1の周壁部1bの内面に付着することがなく、破断分離された開封操作部位3Aのシート部分の迅速な撤去によって薬剤の取り出しを容易に行うことができる。
【0045】
図1、図2、図4に示すように、前記各薬剤収納凹部1の周壁部1bのうち、当該薬剤収納凹部1の長辺側の両側壁部分の中央位置には、薬剤収納空間側に張り出す横断面形状が三角形で、且つ、下方ほど突出量が少なくなる先窄まり形状の突起部12が一体形成されているとともに、前記両突起部12の上下長さが、薬剤収納凹部1の深さの約半分の長さに構成され、更に、前記両突起部12が容器本体Aの格子状上面2と面一となる状態で両側壁部分の上側部に形成されている。
【0046】
そして、取り出し対象の薬剤が収納されている薬剤収納凹部1の開口部に対応するカバー3の開封操作部位3Aを指の押込み操作で破断する際、薬剤収納凹部1の周壁部1bの一部には薬剤収納空間側に張り出す突起部12が張り出し形成されているため、破断分離された開封操作部位3Aのシート部分が薬剤収納凹部1の周壁部1bの内面に密着することを抑止することができ、しかも、この突起部12は薬剤収納凹部1の周壁部1bの上部側に存在するだけであるため、薬剤収納凹部1内の下部側の空間は広くなり、破断分離された開封操作部位のシート部分を指先で迅速、容易に除去することができる。
【0047】
前記カバー3の上面2における傾斜壁部4Aと一列目の薬剤収納凹部1との間には、4つの薬剤収納凹部1に対応して服薬時間帯を示す朝、昼、夜、寝前が印刷され、この服薬時間帯の「朝」側となる前記上面2の左右一側部には、月曜日〜日曜日までの曜日と各曜日に対応する日付を記入する欄が印刷されている。
【0048】
また、前記カバー3の上面2における各開封操作部位3Aの一つの対角線方向で相対向する角部には、薬剤収納凹部1の開口領域に入り込む状態で破断操作方向を示す矢印13が印刷されている。
【0049】
上述の如く構成された薬剤収納容器において、前記容器本体Aの各薬剤収納凹部1内に看者固有の治療処方方針に基づいて投与される薬剤を服用単位で区画収納したのち、前記容器本体Aの上面2にカバー3を貼り付けるにあたっては、先ず、前記剥離紙5を構成する三つの分割剥離紙体5A,5B,5Cのうち、前記位置合わせ用の凹部5aが形成されている中間の分割剥離紙体5Bをカバー3から剥離し、カバー3を容器本体Aの上面2に重ね合わせる。
【0050】
このとき、中間の分割剥離紙体5Bの剥離によってカバー3の接着剤層11の中間部位が露出するものの、その両側には他の分割剥離紙体5A,5Cが存在するため、露出した中間接着剤層が容器本体Aの上面2に付着することを抑制することができ、容器本体Aの上面2の周縁部における第1切込み線7の両端相当部位に形成されている三角柱状又は五角柱状の凸部8と前記カバー3及び分割剥離紙体5Cの第1切込み線7の両端相当部位に形成されているV字状の凹部3a,5aとの位置合わせ、及び、前記容器本体Aの上面2の周縁部における各角部に形成されている円柱状の第2凸部9と前記剥離紙5及びカバー3の周縁部における各角部に形成されている半円状の第2凹部5b,3bとの位置合わせを確実、容易に行うことができる。
【0051】
この位置合わせ状態で露出した中間接着剤層を容器本体Aの上面2に押し付けて仮接着したのち、カバー3から他の分割剥離紙体5A,5Cを順次剥離して当該カバー3を容器本体Aの上面2に押圧して本接着する。
【0052】
このとき、前記容器本体Aの周縁には、前記各薬剤収納凹部1の底面1aよりも下方に突出する接地フランジ4C付きの周壁4が一体形成されているので、カバー3に接着のために押付け力が加えられたとき、前記周壁4の弾性変形によって各薬剤収納凹部1の底面1aも接地し、前記押付け力を周壁4の接地フランジ4Cと各薬剤収納凹部1の底面1aとで分散支持することができる。
【0053】
しかも、前記各薬剤収納凹部1の周壁部1bの二箇所に一体形成された突起部12によるリブ効果によって当該薬剤収納凹部1自体の保形強度が向上し、さらに、前記周壁4の複数箇所に形成された補強リブ4Dによっても当該周壁4自体の保形強度が向上しているので、これらの作用によって容器本体Aの各薬剤収納凹部1の底部が変形することを抑制することができる。
【0054】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の第1実施形態では、前記容器本体Aの周縁に一体形成される周壁4を、前記各薬剤収納凹部1の底面1aよりも下方に突出形成したが、この周壁4の下端を前記各薬剤収納凹部1の底面1aと同一又は略同一高さ位置に構成してもよい。
要するに、前記周壁4の下端位置は、カバー3に接着のために押付け力が加えられたとき、この押付け力を周壁4の接地フランジ4Cと各薬剤収納凹部1の底面1aとで分散支持することができる高さ位置に構成することが望ましい。
また、前記周壁4自体の保形強度が大きい場合には、カバー3に接着のために加えられる押付け力を周壁4単独で分散支持するように構成してもよい。
この場合、前記周壁4の下端位置を、前記各薬剤収納凹部1の底面1aよりも下方に突出形成することになる。
【0055】
(2)上述の第1実施形態では、前記薬剤収納凹部1の周壁部1bのうち、当該薬剤収納凹部1の長辺側の両側壁部分の中央位置における上側部に、薬剤収納空間側に張り出す横断面形状が三角形で、且つ、下方ほど突出量が少なくなる先窄まり形状の突起部12を一体形成したが、この突起部12の横断面形状を半円形、台形、四角形等に形成してもよく、さらに、前記突起部12の長さを、前記薬剤収納凹部1の深さと同一又は略同一の長さに構成してもよい。
また、前記突起部12を上下方向の全域にわたって同一の断面形状に構成してもよく、さらに、前記突起部12を前記薬剤収納凹部1の周壁部1bの上下方向中間領域又は下側部に形成してもよい。
【0056】
(3)上述の第1実施形態では、前記薬剤収納凹部1の周壁部1bのうち、当該薬剤収納凹部1の長辺側の両側壁部分の中央位置に突起部12を一体形成したが、下記の(a)〜(e)の形態に変更してもよい。
(a)図5(a)に示すように、前記薬剤収納凹部1の長辺側の両側壁部分のうち、一方の側壁部分にのみ前記突起部12を一体形成する。
(b)図5(b)に示すように、前記薬剤収納凹部1の長辺側の両側壁部分において、長辺方向中央位置に対して互いに逆方向に偏倚した部位に前記突起部12を一体形成する。
(c)図5(c)に示すように、前記薬剤収納凹部1の長辺側の両側壁部分において、長辺方向に間隔をおいた二箇所(三箇所以上でもよい)に前記突起部12を一体形成する。
(d)図5(d)に示すように、前記薬剤収納凹部1の長辺側の両側壁部分のうち、一方の側壁部分の中央位置と他方の側壁部分の、長辺方向二箇所に前記突起部12を一体形成する。
(e)図5(e)に示すように、前記薬剤収納凹部1の短辺側の両側壁部分の中央位置に前記突起部12を一体形成する。
(4)上述の第1実施形態では、前記剥離紙5の周縁部のうち、前記傾斜壁部4A側寄りの一つの分割線を構成する第1切込み線7の両端相当部位と、これに対応するカバー3の周縁部位に夫々位置合わせ用の凹部5a,3aを形成し、前記容器本体Aの上面2の周縁部における第1切込み線7の両端相当部位には、前記剥離紙5及びカバー3の位置合わせ用の凹部5a,3aに係合する位置決め用の凸部8を形成したが、前記剥離紙5及びカバー3の凹部5a,3a及び容器本体Aの上面2の凸部8を、前記分割線を構成する第1切込み線7以外の部位に形成して実施してもよい。
【0057】
(5)上述の第1実施形態において、前記剥離紙5及びカバー3の凹部5a,3aと容器本体Aの上面2の凸部8を、分割線を構成する第2切込み線7の両端相当部位にも形成してもよい。
【0058】
(6)上述の第1実施形態において、前記容器本体Aの上面2の周縁部における各角部に形成されている円柱状の第2凸部9と前記剥離紙5及びカバー3の周縁部における各角部に形成されている半円状の第2凹部5b,3bとが無い状態で実施してもよい。
【0059】
(7)上述の第1実施形態において、前記前記剥離紙5及びカバー3の凹部5a,3aと容器本体Aの上面2の凸部8とが無い状態で実施してもよい。
【0060】
(8)上述の第1実施形態では、前記剥離紙5を各別に剥離操作自在な三つの分割剥離紙体5A,5B,5Cから構成したが、二つ又は四つ以上の分割剥離紙体から構成してもよく、さらに、分割しない単一の形態で実施してもよい。
【符号の説明】
【0061】
A 容器本体
1 薬剤収納凹部
1a 底面
2 上面
3 カバー
3a 凹部
3b 第2凹部
4 周壁
4A 傾斜壁部(側壁部)
5 剥離紙
5a 凹部
5b 第2凹部
6 表示シート
8 凸部
9 第2凸部
10 破断誘導用の脆弱部
11 接着剤層
12 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂シート又は合成樹脂フイルムの複数箇所に薬剤収納凹部を下方に張出す状態で一体形成してある容器本体と、該容器本体の上面に対して各薬剤収納凹部の開口を密封する状態で貼り付け可能な合成樹脂シート又は合成樹脂フイルム製のカバーとが備えられているとともに、前記容器本体の周縁には、前記各薬剤収納凹部の底面と略同一位置又はそれよりも下方に突出する周壁が一体形成されているとともに、前記カバーの下面に形成された接着剤層には剥離紙が貼り付けられている薬剤収納容器。
【請求項2】
前記カバーにおける前記容器本体の各薬剤収納凹部の開口部に対応する部位には、薬剤収納凹部の開口周縁と同一又は略同一形状の輪郭形状で破断誘導用の脆弱部が形成されているとともに、前記カバーの下面のうち、前記脆弱部で囲まれた開封操作部位を除く部位には前記接着剤層が形成されている請求項1記載の薬剤収納容器。
【請求項3】
前記剥離紙が三つ以上の分割剥離紙体から構成され、前記剥離紙及びカバーにおける周縁部の同一特定部位には夫々位置合わせ用の凹部が形成されているとともに、前記容器本体の上面の周縁部には、前記剥離紙及びカバーの位置合わせ用の凹部に係合する位置決め用の凸部が形成されている請求項1又は2記載の薬剤収納容器。
【請求項4】
前記容器本体及びカバーが、外部から透視可能な合成樹脂材料から製作されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬剤収納容器。
【請求項5】
前記容器本体の周壁の一部に、下方ほど外方に張り出す傾斜壁部が形成され、この傾斜壁部の外面が、看者情報、処方日等が記載された表示シートを貼付け可能な表示面に形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬剤収納容器。
【請求項6】
前記剥離紙及びカバーの周縁部のうち、前記凹部から周縁方向に離間した部位の一箇所又は複数箇所には位置合わせ用の第2凹部が形成され、前記容器本体の上面の周縁部には、前記剥離紙及びカバーの位置合わせ用の第2凹部に係合する位置決め用の第2凸部が形成されている請求項3記載の薬剤収納容器。
【請求項7】
合成樹脂シート又は合成樹脂フイルムの複数箇所に薬剤収納凹部を一体形成してある容器本体と、該容器本体の上面に対して各薬剤収納凹部の開口を密封する状態で貼り付け可能な合成樹脂シート又は合成樹脂フイルム製のカバーとが備えられ、前記カバーにおける前記容器本体の各薬剤収納凹部の開口部に対応する部位には、薬剤収納凹部の開口周縁に沿う又は略沿う輪郭形状で破断誘導用の脆弱部が形成されているとともに、前記各薬剤収納凹部の周壁部の一部には、薬剤収納空間側に張り出す突起部が形成されている薬剤収納容器。
【請求項8】
前記突起部が、薬剤収納凹部の周壁部の複数箇所の上部側に形成されている請求項7記載の薬剤収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−50697(P2011−50697A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205098(P2009−205098)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(593230109)大同化工株式会社 (5)
【Fターム(参考)】