説明

薬剤容器システムにおいて使用される2つ以上の成分の混合のための容器用充てん済みインサート

本発明は、医薬品の2つ以上の成分(8)を混合するための薬剤容器システム(21)に関し、そのようなシステムにおいて使用される容器用充てん済みインサート(17)に関する。一実施の形態の容器用充てん済みインサート(17)は、壁(2)と、底部(3)と、固体の成分(8)を受け入れるための開いた上部(4)とを有している成型による容器ケーシング(1)、成型による容器ケーシング(1)の開いた上部(4)を封じるための弾性ストッパ(9)、および成型による容器ケーシング(1)の底部の外周の弱体化リム(5)によって形成された底部ディスク(3)を備えている。弾性ストッパ(9)を貫いてスパイク(20)を導入することによって前記底部ディスク(3)に押し込みの力を加え、該力によって弱体化リム(5)を破って容器(17)を開くことで、充てん済みの固体の成分(8)を薬剤容器システム(21)の希釈用流体と混合できるように底部ディスク(3)を開くことができる。さらなる実施の形態の容器用充てん済みインサート(17)は、壁(2)と、底部(3)と、開放型の内側シリンダ(30)および固体の成分(8)を受け入れるための開いた上部(4)とを有している成型による容器ケーシング(1)、成型による容器ケーシング(1)の開いた上部(4)を封じるための弾性ストッパ(9)、および成型による容器ケーシング(1)の底部の外周の弱体化リム(5)によって形成された底部ディスク(3)を備えている。成型による容器の上部へと押し込みの力を加えることで、ケーシング(1)を圧縮するとともに内側シリンダ(30)を底部ディスク(3)に押し付けることにより、該力によって弱体化リム(5)を破って容器用インサート(17)を開くことで、充てん済みの固体の成分(8)を薬剤容器システム(21)の希釈用流体と混合できるように底部ディスク(3)を開くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の2つ以上の成分を混合するための多室の薬剤容器システムに関し、さらに詳しくは、そのようなシステムにおいて使用される容器用充てん済みインサートに関する。
【背景技術】
【0002】
固体の原薬(API)または製剤は、一般に、より良好な保管寿命を有しており、すなわち同じ化合物の溶液(または、分散液/乳濁液)に比べて劣化の速度が遅い。したがって、医薬品の保管寿命を実用的な長さ(典型的には、少なくとも18〜24ヵ月)へと延ばすために、乾燥粉末を使用する(例えば、医薬品を凍結乾燥または吹き付け乾燥させる)ことが一般的である。使用時に、そのような固体の製品を、通常は経口または非経口の経路を介し、あるいは鼻からの送入によって患者へと投与できるようにするために、適切な溶媒に溶解させなければならない。固体の溶媒への溶解は、典型的には、溶媒をシリンジを使用して薬瓶または袋から移すことによって行われる。そのようなプロセスは、病院の職員にとって標準的な行為であるが、針の穿刺による負傷の恐れなく、あるいは製品の無菌状態すなわち患者の安全性を損なう恐れなく、安全かつ効率的なやり方で実行するためには、訓練および技量が必要である。
【0003】
日本国の特許抄録JP2000037441Aが、固体薬剤保管部を液体溶液容器へと接続して有している注入容器システムに関係している。固体薬剤保管部を溶液容器側へと押し、仕切り部材を開いてシール部から移動させることによって、2つの容器の間に流体連通路が確立される。固体薬剤保管容器および溶液容器を自由に通過できるように開いた後で、輸液容器の全体を揺することによって、固体の薬剤が液体の溶液に溶解する。今や溶液を患者へと投与できる状態であり、穿刺針が、固体薬剤保管容器の上部に設けられた輸液取り出し接続部へと導入される。この装置の欠点は、複数の部品からなり、複数の製造工程を伴う複雑な構成の固体薬剤保管部が必要である点にある。さらなる欠点は、溶液が患者へと投与可能になるまでに、2つの段階を実行する必要があり、すなわち最初に2つの成分の混合を可能にし、次いで例えば輸液セットを接続するために針を導入しなければならない点にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、少なくとも好ましい実施の形態において、病院の職員および患者にとっての危険が最小限である簡単、効果的、かつ直感的な手順を使用して医薬品の2つ以上の成分(例えば、固体および溶媒あるいは2つの異なる液体)の混合が行われる容器システムを提供することにある。
【0005】
本発明のさらなる目的は、少なくとも好ましい実施の形態において、必要な部品および製造工程が少ない構成を有する成形同時充てん(BFS:blow-fill-seal)設備に関連して使用されるロバストな考え方を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、少なくとも第1の幅広い態様から、医薬品の2つ以上の成分を混合するための薬剤容器システムにおいて使用される容器用充てん済み(pre-filled)インサートが提供される。この容器用充てん済みインサートは、
・壁と、底部と、固体の成分を受け入れるための開いた上部とを有している成型による(moulded)容器ケーシング、
・成型による容器ケーシングの開いた上部を封じるための弾性ストッパ、および
・成型による容器ケーシングの底部の外周の弱体化リム(weakening rim)によって形成された底部ディスク
を備えており、
弾性ストッパを貫いてスパイクを導入することによって底部ディスクに押し込みの力を加え、該力によって弱体化リムを破って当該容器用インサートを開くことで、充てん済みの固体の成分を薬剤容器システムの希釈用流体と混合できるように底部ディスクを開くことができる。
【0007】
本発明によれば、少なくともさらなる幅広い態様から、医薬品の2つ以上の成分を混合するための薬剤容器システムにおいて使用される容器用充てん済みインサートが提供される。この容器用充てん済みインサートが、
・壁と、底部と、開放型の内側シリンダおよび固体の成分を受け入れるための開いた上部とを有している成型による容器ケーシング、
・成型による容器ケーシングの開いた上部を封じるための弾性ストッパ、および
・成型による容器ケーシングの底部の外周の弱体化リムによって形成された底部ディスク
を備えており、
成型による容器の上部へと押し込みの力を加えることで、ケーシングを圧縮するとともに内側シリンダを底部ディスクに向かって押すことにより、該力によって弱体化リムを破って容器用インサートを開くことで、充てん済みの固体の成分を薬剤容器システムの希釈用流体と混合できるように底部ディスクを開くことができる。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態の利点は、最小限の部品から構成されると同時に、効率的かつロバストな構成を有している容器用充てん済みインサートがもたらされる点にある。本発明の好ましい実施の形態のさらなる利点は、インサートおよび液体容器の中身の混合をもたらすために容易に開くことができる容器用充てん済みインサートがもたらされる点にある。またさらなる利点は、容器用充てん済みインサートを別の装置として製造し、さまざまな種類の成形同時充てん容器へと組み込んで、多室の薬剤容器システムを形成できる点にある。さらに別の利点は、この別の装置を、希釈剤の容器へと実際に取り付ける後続の単位作業に先立って、制御された条件下で、無菌にて充てん、封止、および処理(例えば、最終的な殺菌)できる点にある。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態によれば、底部ディスクの弱体化リムが、容器ケーシングの底部の外周を巡って配置され、弱体化リムが破られて容器が開かれるときに底部ディスクが容器ケーシングにつながったままであるようにヒンジ式のディスクを形成している。
【0010】
このようにして、容器用充てん済みインサートを開いた後の底部ディスクの希釈剤容器への落下が防止される。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態によれば、弾性ストッパが、上部の開口を気密に封じるべくクランプリングによって所定の位置に固定される。
【0012】
クランプリングが、弾性ストッパを容器ケーシングの開いた上部に係止および固定し、成型によるケーシングが気密に封じられる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態によれば、底部ディスクが、水分遮断ホイルによって覆われる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態によれば、弾性ストッパが、水分遮断ホイルによって覆われる。
【0015】
容器用インサートを下側および弾性的な上側の両方において水分遮断ホイルで覆うことによって、充てんされた中身が、外部の環境(すなわち、光、水分、および/または酸素)からの最大限の保護を有する。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態によれば、容器用充てん済みインサートが、BFS容器の上部へと無菌に取り付けられて多室の薬剤容器システムを形成する。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態によれば、成型による容器ケーシングが、ベローズ状の容器用インサートを形成するひだ状の側壁を有している。
【0018】
容器ケーシングをベローズ状の容器として形成することによって、容易に変形させることができるケーシングが、ただ1つの部品にて形成される。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態によれば、容器用充てん済みインサートを、経鼻の送入システムなどの1つ以上の送入システムとともに使用することができる。好ましくは、容器用充てん済みインサートを、例えば標準的な経鼻の送入機構(経鼻スプレーなど)へと接続でき、そのような送入機構の内部に接続でき、あるいは他のやり方でそのような送入機構に取り入れることができる。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態によれば、医薬品の2つ以上の成分を混合するための薬剤容器システムであって、
・希釈用液体を含んでいる第1の容器と、
・第1の容器の上部へと無菌に取り付けられる第2の容器用インサートと
を備えており、
第2の容器が、
・固体の成分を受け入れるための成型による容器ケーシング、
・成型による容器ケーシングの開いた上部を封じるための弾性ストッパ、および
・成型による容器ケーシングの底部の外周の弱体化リムによって形成された底部ディスク
を備えており、
弾性ストッパを貫いてスパイクを導入することによって底部ディスクに押し込みの力を加え、該力によって弱体化リムを破って容器用インサートを開くことで、充てん済みの固体の成分を薬剤容器システムの希釈用流体と混合できるように底部ディスクを開くことができる薬剤容器システムが提供される。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態によれば、医薬品の2つ以上の成分を混合するための薬剤容器システムであって、
・希釈用液体を含んでいる第1の容器と、
・第1の容器の上部へと無菌に取り付けられる第2の容器用インサートと
を備えており、
第2の容器が、
・壁と、底部と、開放型の内側シリンダおよび固体の成分を受け入れるための開いた上部とを有している成型による容器ケーシング、
・成型による容器ケーシングの開いた上部を封じるための弾性ストッパ、および
・成型による容器ケーシングの底部の外周の弱体化リムによって形成された底部ディスク
を備えており、
成型による容器の上部へと押し込みの力を加えることで、ケーシングを圧縮するとともに内側シリンダを底部ディスクに向かって押すことにより、該力によって弱体化リムを破って容器用インサートを開くことで、充てん済みの固体の成分を当該薬剤容器システムの希釈用流体と混合できるように底部ディスクを開くことができる薬剤容器システムが提供される。
【0022】
静脈注射(IV)容器を準備する看護師にとって標準的な手順は、注入の開始に先立ってIV容器を視覚的に検査し、一部の手順においてはスパイクで貫くことである。したがって、本発明の実施の形態による薬剤容器システムを使用しても、標準的な作業手順に変更はない。好ましい実施の形態においては、単に容器の上部を押すことによって混合を可能にし、次いで視覚的な検査によって完全な混合作業を確認することで、簡単かつ直感的な手順が得られる。加えて、皮下注射針を用いる別途の混合工程が不要であり、針の突き刺しによる負傷の恐れが取り除かれる。混合が、固体および液体の室がどちらも気密に封じられた同じ容器の一部であるため、微生物による汚染の恐れなく行われる。他の実施の形態においては、同様の工程が、容器と容器に取り付けられるスプレーまたは他の経鼻の送入機構を典型的には備えている経鼻スプレーなどの経鼻の送入装置を準備するために実行される。
【0023】
医薬品の2つ以上の成分を混合するための多室の薬剤容器システムによる投与に適しており、より詳しくは本発明の容器用インサートへの充てんに適している薬剤として、例えばプロトンポンプ阻害薬、例えばオメプラゾール、抗ガン薬、抗生物質、免疫薬、ワクチン、抗ウイルス薬、ポリペプチドおよびペプチド、例えばペプチドホルモンおよび成長因子、ポリペプチドワクチン、酵素エンドルフィン、リポたんぱく質、および血液凝固カスケードに関与するポリペプチドが挙げられる。
【0024】
次に、本発明を、例示の目的で、実施の形態によって、添付の図面を参照してさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1a】本発明の好ましい実施の形態による容器用充てん済みインサートの製造の各段階を概略的に示している。
【図1b】本発明の好ましい実施の形態による容器用充てん済みインサートの製造の各段階を概略的に示している。
【図1c】本発明の好ましい実施の形態による容器用充てん済みインサートの製造の各段階を概略的に示している。
【図1d】本発明の好ましい実施の形態による容器用充てん済みインサートの製造の各段階を概略的に示している。
【図1e】本発明の好ましい実施の形態による容器用充てん済みインサートの製造の各段階を概略的に示している。
【図1f】本発明の好ましい実施の形態による容器用充てん済みインサートの製造の各段階を概略的に示している。
【図1g】本発明の好ましい実施の形態による容器用充てん済みインサートの製造の各段階を概略的に示している。
【図2a】容器用充てん済みインサートの開放の手順を概略的に示している。
【図2b】容器用充てん済みインサートの開放の手順を概略的に示している。
【図3a】医薬品の2つ以上の成分を混合するための薬剤容器システムであって、希釈用の液体で満たされたBFS容器と該容器へと封じられた充てん済みのインサートとで構成される薬剤容器システムを示している。
【図3b】医薬品の2つ以上の成分を混合するための薬剤容器システムであって、希釈用の液体で満たされたBFS容器と該容器へと封じられた充てん済みのインサートとで構成される薬剤容器システムを示している。
【図3c】医薬品の2つ以上の成分を混合するための薬剤容器システムであって、希釈用の液体で満たされたBFS容器と該容器へと封じられた充てん済みのインサートとで構成される薬剤容器システムを示している。
【図3d】医薬品の2つ以上の成分を混合するための薬剤容器システムであって、希釈用の液体で満たされたBFS容器と該容器へと封じられた充てん済みのインサートとで構成される薬剤容器システムを示している。
【図4a】本発明の好ましい実施の形態によるさらなる容器用充てん済みインサートの製造の各段階を概略的に示している。
【図4b】本発明の好ましい実施の形態によるさらなる容器用充てん済みインサートの製造の各段階を概略的に示している。
【図4c】本発明の好ましい実施の形態によるさらなる容器用充てん済みインサートの製造の各段階を概略的に示している。
【図4d】本発明の好ましい実施の形態によるさらなる容器用充てん済みインサートの製造の各段階を概略的に示している。
【図4e】本発明の好ましい実施の形態によるさらなる容器用充てん済みインサートの製造の各段階を概略的に示している。
【図4f】本発明の好ましい実施の形態によるさらなる容器用充てん済みインサートの製造の各段階を概略的に示している。
【図4g】本発明の好ましい実施の形態によるさらなる容器用充てん済みインサートの製造の各段階を概略的に示している。
【図4h】本発明の好ましい実施の形態によるさらなる容器用充てん済みインサートの製造の各段階を概略的に示している。
【図5a】図4a〜4hの容器用充てん済みインサートの開放の手順を概略的に示している。
【図5b】図4a〜4hの容器用充てん済みインサートの開放の手順を概略的に示している。
【図5c】図4a〜4hの容器用充てん済みインサートの開放の手順を概略的に示している。
【図6a】医薬品の2つ以上の成分を混合するための薬剤容器システムであって、希釈用の液体で満たされたBFS容器と該容器へと封じられた充てん済みインサートとで構成される薬剤容器システムを示している。
【図6b】医薬品の2つ以上の成分を混合するための薬剤容器システムであって、希釈用の液体で満たされたBFS容器と該容器へと封じられた充てん済みインサートとで構成される薬剤容器システムを示している。
【図6c】医薬品の2つ以上の成分を混合するための薬剤容器システムであって、希釈用の液体で満たされたBFS容器と該容器へと封じられた充てん済みインサートとで構成される薬剤容器システムを示している。
【図6d】医薬品の2つ以上の成分を混合するための薬剤容器システムであって、希釈用の液体で満たされたBFS容器と該容器へと封じられた充てん済みインサートとで構成される薬剤容器システムを示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1a〜1gおよび4a〜4hは、容器用充てん済みインサートをどのように製造できるのかを、概略的に示している。例えば射出成型によって別個に製造される容器用インサートは、例えば光、水分、または酸素に影響されやすい化合物において高いバリア性を付与することが必要な場合には高いバリア性のエンジニアリングプラスチックなど、任意の種類の熱可塑性材料を使用することができる。
【0027】
図1aは、壁2と、底部3と、薬剤成分を受け入れるための開いた上部4とを有している成型による容器ケーシング1を示している。例えば射出成型を使用して製作される容器ケーシング1は、好ましくは円筒形の形状を有しており、底部3が、底部の外周に適切な弱体化リム5を有している。弱体化リム5は、充てん済みのインサートと液体容器との間で物質を移動させることができるよう、底部ディスク3を押し開くことを可能にする。好ましくは、弱体化リムのわずかな部分が、より厚いままに保たれ、底部ディスク3が開放時に固体容器から完全に離れてしまうことがないようにするヒンジ6として機能する。
【0028】
容器用インサートの水分または気体の遮断をさらに補って、中身を保護するために、バリアホイル7(例えば、アルミニウム箔)を、図1bに見て取ることができるように、底部ディスク3を覆うように使用することができる。
【0029】
図1cにおいて、成型された容器ケーシングが、明確な清浄環境において中身8、粉末、または他の適切な固体(あるいは、半固体)で満たされる(例えば、アイソレータまたは他の適切な単一方向の気流フード(UDF)における無菌充てん)。図面には示されていない本発明の別の態様によれば、成型された容器ケーシングが、注入に先立って希釈剤と混ぜ合わせられる半固体の中身または液体で満たされる。
【0030】
図1d、1e、および1fが、どのようにして容器用インサートが弾性ストッパ9(例えば、標準的なゴム製ストッパまたは熱可塑性エラストマ(TPE)部品)を使用して気密に封じられるのかを示しており、弾性ストッパ9が、開いた上部を通って取り付けられ、ストッパ9の安全かつ密着した固定を保証すべく、クランプリング10によって固定されている。図1gに示されるとおり、バリアホイル15、すなわちアルミニウム箔を、充てん済みの容器用インサート17の水分または気体の遮断をさらに補うために、弾性ストッパ9およびクランプリング10を覆うように使用することができる。クランプリング10の開いた中央部が、弾性ストッパの円形領域を露わにしており、この円形領域において、スパイク(または、穿刺針)をストッパを貫いて進入させることができる。充てん済みの容器用インサート17を、その場で殺菌することができ、あるいは充てん/閉鎖後の別の工程において、電子ビームまたはガンマ線照射などの標準的な方法を使用して殺菌することができる。次いで、このような無菌の充てん済み容器用インサートを、成形同時充てん容器または他の適切な液体プラスチック容器への取り付けのために、適切な標準の液体充てんラインへと運ぶことができる。容器は、好ましくは適切な液体を収容する経鼻送入装置の構成要素を含むことができる。
【0031】
図2aが、どのようにしてスパイク20が充てん済みの容器用インサートの弾性ストッパ9を貫いて押し込まれるのかを概略的に示しており、図2bには、どのようにしてスパイク20からの押し込みの力が底部の外周の弱体化リム5(および、バリアホイル7)を破り、充てん済みの容器用インサートの中身8が容器から放出されるのかが概略的に示されている。
【0032】
図3aが、本発明による充てん済みの容器用インサート17が成形同時充てん容器22の上部へと取り付けられている薬剤容器システム21の実施の形態を示している。図3a〜3dの実施の形態において、システム21は、薬剤の静脈への送入に適した手段を備えているが、システムは、経鼻の送入機構(例えば、容器へと接続されるスプレーまたはスポイト)とともに使用される容器(例えば、瓶、薬瓶、または管)など、任意の他の適切な薬剤システムを備えることができる。中身8で満たされた図3aの実施の形態の充てん済みの容器用インサート17が、成形同時充てんの液体容器へと入れられ、図3bに示されるように、充てん済みの容器の上部が、成形同時充てん容器22のねじって外す上部23を開くことによってユーザへと露出される。好ましい実施の形態においては、やはり図3bに示されているように、水分遮断シール15が、上部を覆っており、すなわちねじって外す上部23の下方の充てん済み容器の弾性ストッパ9を覆っている。水分遮断シール15を取り除いた後で、今や充てん済みの容器用インサート17の中身8を、成形同時充てん容器22の希釈用流体と混合することができる。図3cが、どのようにしてスパイク20が弾性ストッパ9を穿刺して、充てん済み容器17へと進入するのかを示している。スパイク20からの押し込み力が、底部ディスク3に作用し、ディスクの外周の弱体化リム5が破れる。ディスク3の成形同時充てん容器22の中への落下は、底部ディスクを容器用インサートの壁2へと接続しているヒンジ6によって防止される。今や充てん済みの容器の中身を、容器を穏やかに揺することによって成形同時充てん容器の希釈用流体と混ぜ合わせることができる。図3dにおいて、物質を患者へと投与する際に容器システムを患者の近くにぶら下げることができるよう、底部のフラップ25が引き起こされる。図面には示されていない本発明の別の態様によれば、充てん済みの容器用インサートを、希釈用の液体で満たされた可撓バッグの壁に溶接することができる。
【0033】
図4aが、本発明の別の実施の形態を示している。図1〜3の実施の形態の構成要素と同様の構成要素を指し示すために、同様の参照番号が使用されている。成型による容器ケーシング1が、壁2と、底部3と、薬剤成分を受け入れるための開いた上部4とを有している。例えば射出成型を使用して製作される容器ケーシング1は、好ましくは円筒形の形状を有しており、容器ケーシングがベローズの形態を有するよう、壁2がひだ状である点で、先の実施の形態から相違している。底部3が、底部の外周に適切な弱体化リム5を有している。好ましくは、弱体化リムのわずかな部分が、より厚いままに保たれ、底部ディスク3が開放時に固体容器から完全に離れてしまうことがないようにするヒンジ6として機能する。容器用インサートの水分または気体の遮断をさらに補って、中身を保護するために、バリアホイル7(例えば、アルミニウム箔)を、図4bに見て取ることができるように、底部ディスク3を覆うように使用することができる。
【0034】
図4cにおいて、内側シリンダ30が、成型された容器ケーシングの内側に配置され、次いで、図4dに示されるように、容器の壁の内側に配置された内側シリンダが、明確な清浄環境において中身8、粉末、または他の適切な固体(あるいは、半固体)で満たされる(例えば、アイソレータまたは他の適切な単一方向の気流フード(UDF)における無菌充てん)。図面には示されていない本発明の別の態様によれば、内側シリンダが容器とともに、注入に先立って希釈剤と混ぜ合わせられる半固体の中身または液体で満たされる。弱体化リム5が、充てん済みのインサートと液体容器との間で物質を移動させることができるよう、内側シリンダ30を使用して底部ディスク3を押し開くことを可能にする。内側シリンダ30は、先細りであり、外周に沿った弱体化リムのヒンジ部に直接対向する位置を先細りの端部によって最初に押すように、弱体化リムに対して向けられている。
【0035】
図4eおよび4fが、どのようにして容器用インサートが弾性ストッパ9(例えば、標準的なゴム製ストッパまたは熱可塑性エラストマ(TPE)部品)を使用して気密に封じられるのかを示しており、弾性ストッパ9が、開いた上部を通って取り付けられ、ストッパ9の安全かつ密着した固定を保証すべく、クランプリング10によって固定されている。図4hに示されるとおり、バリアホイル15、すなわちアルミニウム箔を、充てん済みの容器用インサート17の水分または気体の遮断をさらに補うために、弾性ストッパ9およびクランプリング10を覆うように使用することができる。あるいは、アルミニウム箔が、標準的な不正開封防止シールで置き換えられる。クランプリング10の開いた中央部が、弾性ストッパの円形領域を露わにしており、この円形領域において、スパイク(または、穿刺針)をストッパを貫いて進入させることができる。充てん済みの容器用インサート17を、電子ビームまたはガンマ線照射などの標準的な方法を使用して、その場で(充てん時に)殺菌することができ、あるいは充てん/閉鎖後の別の工程において殺菌することができる。次いで、このような無菌の充てん済み容器用インサートを、成形同時充てん容器または他の適切な液体プラスチック容器への取り付けのために、適切な標準の液体充てんラインへと運ぶことができる。
【0036】
図5aが、どのようにして押し込みの力がベローズ状の容器用インサート17の上部へと加えられ、どのように押し込みの力が容器用インサートの壁2を圧縮するのかを、概略的に示している。図5bにおいて、内側シリンダ30が底部3を押し、底部の外周の弱体化リム5(および、バリアホイル7)を破いており、充てん済みの容器用インサートの中身8が容器から放出され、希釈用の流体(図示されていない)と混ざり合う。図5cにおいて、スパイク20がゴム製のストッパ9を貫いて導入され、容器をすぐに患者へと投与できる状態にしている。
【0037】
図6aが、本発明による充てん済みの容器用インサート17が成形同時充てん容器22の上部へと取り付けられている薬剤容器システム21の実施の形態を示している。上述したように、システムは、経鼻の送入機構とともに使用される容器など、任意の他の適切な薬剤システムを備えることができる。中身8で満たされた充てん済みの容器用インサート17が、成形同時充てんの液体容器へと入れられ、図6bに示されるように、充てん済みの容器の上部が、成形同時充てん容器22のねじって外す上部23を開くことによってユーザへと露出される。好ましい実施の形態においては、やはり図6bに示されているように、水分遮断シール15が、上部を覆っており、すなわちねじって外す上部23の下方の充てん済み容器の弾性ストッパ9を覆っている。ねじって外す上部を取り除いた後で、今や充てん済みの容器用インサート17の中身8を、成形同時充てん容器22の希釈用流体と混合することができる。図6cが、どのようにベローズ状のインサートの壁2が圧縮されるのかを示している。押し込みの力によって、内側シリンダ30が底部ディスク3の外周の弱体化リム5を破り、リムが破られる。ディスク3の成形同時充てん容器22の中への落下は、底部ディスクを容器用インサートの壁2へと接続しているヒンジ6によって防止される。今や充てん済みの容器の中身を、容器を穏やかに揺することによって成形同時充てん容器の希釈用流体と混ぜ合わせることができる。中身の完全な混合を保証するための視覚による検査および粒子の非存在の確認の後で、水分遮断シール(または、不正開封防止シール)を取り除くことができる。スパイク20(または、穿刺針)をストッパ9を貫いて導入して、容器を患者への投与に備えて準備することができる。図面には示されていない本発明の別の態様によれば、充てん済みの容器用インサートを、希釈用の液体で満たされた可撓バッグの壁に溶接することができる。
【0038】
上述の静脈注射の実施例において固体容器および液体容器の中身を混合するために、ユーザ(典型的には、看護師)は、静脈注射(すなわち、IV注入)における通常の作業手順を採用する。図1〜3に示したような本発明の実施の形態によるシステムの好ましい使用を、以下で時系列的に説明する。
【0039】
1)看護師が、成形同時充てん容器の上部をねじって外し、存在するのであれば水分遮断シールを引き剥がす(さらに、ゴム製ストッパの上部の殺菌を、それが標準的な手順であれば実行する)。
2)殺菌済みのIV投与セットのバッグが開かれる。
3)投与セットのIVスパイクが、ゴム製ストッパの上部へと挿入され、ゴム製ストッパを貫く。スパイクが完全に挿入されるとき、固体容器の底部ディスクがスパイクによって押し開かれ、今や固体および液体の室が連絡し、混合が可能になる。
4)固体および液体の室の中身が、容器を穏やかに揺らすことによって混合される。
5)看護師が、完全な溶解および粒子状物質の不在を保証するために、容器の中身を視覚的に検査する。
6)針が、パージ後に患者へと取り付けられ、IV注入を開始できる状態となる。
【0040】
図4〜6に示したような本発明の別の実施の形態によるシステムの好ましい使用を、以下で時系列的に説明する。
【0041】
1)看護師が、成形同時充てん容器の上部をねじって外す。
2)看護師が、ベローズ状のインサートを圧縮して、充てん済みの中身を希釈液の容器へと落下させ、今や固体および液体の室が連絡し、混合が可能になる。
3)固体および液体の室の中身が、容器を穏やかに揺らすことによって混合される。
4)看護師が、水分遮断(または、保護用)シールを引き剥がし、ゴム製ストッパの上部の殺菌を、それが標準的な手順であるならば実行する。
4)殺菌済みのIV投与セットのバッグが開かれる。投与セットのIVスパイクが、ゴム製ストッパの上部へと挿入され、ゴム製ストッパが貫かれる。
5)看護師が、完全な溶解および粒子状物質の不在を保証するために、容器の中身を視覚的に検査する。
6)針が、パージ後に患者へと取り付けられ、IV注入を開始できる状態となる。
【0042】
例えば充てん済みのインサートが例えば経鼻の送入装置とともに使用される他の実施の形態においては、上述の工程の一部を、経鼻スプレー瓶などの適切な容器にインサートを収容し、あるいは他のやり方で組み合わせて、実行することができる。
【0043】
さらに、本発明が上述した実施の形態に限られず、添付の特許請求の範囲の技術的範囲から離れることなく、多数のさまざまなやり方で変更が可能であることを、理解できるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品の2つ以上の成分を混合するために薬剤容器システムにおいて使用するための容器用充てん済みインサートであって、
・壁と、底部と、固体の成分を受け入れるための開いた上部とを有している成型による容器ケーシング、
・前記成型による容器ケーシングの開いた上部を封じるための弾性ストッパ、および
・前記成型による容器ケーシングの底部の外周の弱体化リムによって形成された底部ディスク
を備えており、
前記弾性ストッパを貫いてスパイクを導入することによって前記底部ディスクに押し込みの力を加え、該力によって前記弱体化リムを破って当該容器用インサートを開くことで、前記充てん済みの固体の成分を前記薬剤容器システムの希釈用流体と混合できるように前記底部ディスクを開くことができる容器用充てん済みインサート。
【請求項2】
医薬品の2つ以上の成分を混合するために薬剤容器システムにおいて使用するための容器用充てん済みインサートであって、
・壁と、底部と、開放型の内側シリンダおよび固体の成分を受け入れるための開いた上部とを有している成型による容器ケーシング、
・前記成型による容器ケーシングの開いた上部を封じるための弾性ストッパ、および
・前記成型による容器ケーシングの底部の外周の弱体化リムによって形成された底部ディスク
を備えており、
前記成型による容器の上部へと押し込みの力を加えることで、前記ケーシングを圧縮するとともに前記内側シリンダを前記底部ディスクに向かって押すことにより、該力によって前記弱体化リムを破って当該容器用インサートを開くことで、前記充てん済みの固体の成分を前記薬剤容器システムの希釈用流体と混合できるように前記底部ディスクを開くことができる容器用充てん済みインサート。
【請求項3】
前記成型による容器ケーシングが、ベローズ状の容器用インサートを形成するひだ状の側壁を有している請求項2に記載の容器用充てん済みインサート。
【請求項4】
前記底部ディスクの弱体化リムが、前記容器ケーシングの底部の外周を巡って配置され、該弱体化リムが破られて前記容器が開かれるときに前記底部ディスクが前記容器ケーシングにつながったままであるようにヒンジ式のディスクを形成している請求項1〜3のいずれか一項に記載の容器用充てん済みインサート。
【請求項5】
前記弾性ストッパが、前記上部の開口を気密に封じるべくクランプリングによって所定の位置に固定される請求項1〜4のいずれか一項に記載の容器用充てん済みインサート。
【請求項6】
前記底部ディスクが、水分遮断ホイルによって覆われる請求項1〜5のいずれか一項に記載の容器用充てん済みインサート。
【請求項7】
前記弾性ストッパが、水分遮断ホイルによって覆われる請求項1〜6のいずれか一項に記載の容器用充てん済みインサート。
【請求項8】
成形同時充てん(BFS)容器の上部へと無菌に取り付けられて多室の薬剤容器システムを形成する請求項1〜7のいずれか一項に記載の容器用充てん済みインサート。
【請求項9】
多室の薬剤送出システムがもたらされるよう、送出機構を取り付けることができる容器へと無菌に取り付けられる請求項1〜8のいずれか一項に記載の容器用充てん済みインサート。
【請求項10】
前記送出機構が、経鼻の送出用部品、好ましくはスプレーまたはスポイトなどを備えている請求項9に記載の容器用充てん済みインサート。
【請求項11】
医薬品の2つ以上の成分を混合するための薬剤容器システムであって、
・希釈用液体を含んでいる第1の容器と、
・前記第1の容器の上部へと無菌に取り付けられる第2の容器用インサートと
を備えており、
前記第2の容器が、
・固体の成分を受け入れるための成型による容器ケーシング、
・前記成型による容器ケーシングの開いた上部を封じるための弾性ストッパ、および
・前記成型による容器ケーシングの底部の外周の弱体化リムによって形成された底部ディスク
を備えており、
前記弾性ストッパを貫いてスパイクを導入することによって前記底部ディスクに押し込みの力を加え、該力によって前記弱体化リムを破って前記容器を開くことで、前記充てん済みの固体の成分を当該薬剤容器システムの希釈用流体と混合できるように前記底部ディスクを開くことができる薬剤容器システム。
【請求項12】
医薬品の2つ以上の成分を混合するための薬剤容器システムであって、
・希釈用液体を含んでいる第1の容器と、
・前記第1の容器の上部へと無菌に取り付けられる第2の容器用インサートと
を備えており、
前記第2の容器が、
・壁と、底部と、開放型の内側シリンダおよび固体の成分を受け入れるための開いた上部とを有している成型による容器ケーシング、
・前記成型による容器ケーシングの開いた上部を封じるための弾性ストッパ、および
・前記成型による容器ケーシングの底部の外周の弱体化リムによって形成された底部ディスク
を備えており、
前記成型による容器の上部へと押し込みの力を加えることで、前記ケーシングを圧縮するとともに前記内側シリンダを前記底部ディスクに向かって押すことにより、該力によって前記弱体化リムを破って前記容器用インサートを開くことで、前記充てん済みの固体の成分を当該薬剤容器システムの希釈用流体と混合できるように前記底部ディスクを開くことができる薬剤容器システム。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図1c】
image rotate

【図1d】
image rotate

【図1e】
image rotate

【図1f】
image rotate

【図1g】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図3c】
image rotate

【図3d】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図4c】
image rotate

【図4d】
image rotate

【図4e】
image rotate

【図4f】
image rotate

【図4g】
image rotate

【図4h】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図5c】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate

【図6c】
image rotate

【図6d】
image rotate


【公表番号】特表2011−530377(P2011−530377A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522933(P2011−522933)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050922
【国際公開番号】WO2010/019096
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】