説明

薬剤投与具

【課題】 プレフィルドシリンジ内と薬剤容器内とを連通した後に、投与可能状態となり、薬剤が添加されない状態での投与を防止できる薬剤投与具を提供する。
【解決手段】薬剤投与具1は、先端部がシール部16により封止されたプレフィルドシリンジ2と、封止部材42を有する薬剤容器4と、シール部を刺通可能な外筒側穿刺部53と封止部材42を刺通可能な薬剤容器側穿刺部54とを有する連通部材3とからなる。封止部材42は、容器本体41内に延び、かつ、薬剤投与部材を装着可能な薬剤投与部材装着部44を備える。薬剤投与具1は、外筒側穿刺部53がシール部16を刺通し、薬剤容器側穿刺部54が封止部材42を刺通した状態にて、封止部材と容器本体との固定を解除することにより、注射針が装着可能な薬剤投与部材装着部44が露出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレフィルドシリンジを利用した薬剤投与具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉末状等の薬剤はバイアルに密封され、必要に応じて注射器により薬剤溶解液を混合して溶解し薬液を作り、粉末状の薬剤を投与可能にして使用している。このような薬液を作る方法としては、外筒内に薬剤溶解液を充填した注射器を用い注射器の外筒のノズルに取付けた注射針を、粉末状の薬剤が収納されているバイアルの封止部材に刺通し、注射器のプランジャを外筒先端のノズル方向に押し込み薬剤溶解液をバイアル内に送り込み、バイアル内にて粉末状の薬剤を溶解し混合し薬液を作り、再び注射器のプランジャを注射器の基端方向に引く操作を行って注射器の外筒内に作成した薬液を吸入し、薬液の投与を行うことができるようにしている。
しかし、これらの薬液を作る操作は手数を要するものであり、異物の混入、細菌による汚染、手・指への負傷事故等の危険性がある。
【0003】
そこで、このような問題点を解決するものとして、特開平5−146510号公報(特許文献1)では、溶解用薬剤を収容して口部を栓で密閉された薬剤容器と、薬剤容器の頸部に外嵌された連結外筒と、連結外筒の他端に外嵌された保護筒と、保護筒の内側に収容された溶解液が充填された筒状の溶解液容器と、連結外筒に内嵌された連結内筒の薬剤容器側端壁を貫いて装着された両頭穿刺針とから構成された用時溶解可能な押圧注入型容器が提案されている。
【0004】
また、特開平10−323389号公報(特許文献2)では、溶解液の充填された注射器外筒と、一端にバイアル装着部を備えた両端の開放した筒状のアダプタと、注射器外筒とバイアル装着部に装着されたバイアルを連通する両頭針から構成され、アダプタにはバイアル装着部に近接して両頭針が収容支持され、他端から注射器外筒がスライド可能に挿着され、注射器外筒の先端部はゴムキャップで閉鎖され、基端部はガスケットで密封されて、また、両頭針とアダプタの間には連通順序制御手段が構成された2成分混合用溶解液充填注射器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−146510号公報
【特許文献2】特開平10−323389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、注射器の外筒内に医療用液体(例えば、溶解液)を充填したものは、投与可能な薬液と看過し、薬剤が溶解されていない状態のまま投与される可能性がある。また、穿刺具が注射器の外筒内と薬剤容器内を連通したか否かを容易に認識することが困難であり、両者が連通されていない状態で、注射器のプランジャを操作し、外筒内の薬剤溶解液を漏出させる危険性もある。
そこで、本発明の目的は、医療用液体を充填したプレフィルドシリンジ内と、薬剤を収納した薬剤容器内とを連通した後に、投与可能状態となり、薬剤が添加されない状態での医療用液体のみの誤投与を防止できる薬剤投与具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 薬剤投与部材の装着が不能であり、かつ穿刺可能なシール部により封止された先端部を有する外筒と、前記外筒内に摺動可能に収納されたガスケットと、前記ガスケットに装着されたもしくは装着可能なプランジャと、前記外筒内に充填された医療用液体とからなるプレフィルドシリンジと、開口部を有する容器本体と、前記開口部を封止するとともに前記容器本体に固定された封止部材と、前記容器本体内に収納された薬剤とからなる薬剤容器と、前記外筒の前記先端部に装着されたもしくは装着可能であり、前記外筒内と前記薬剤容器内とを連通させるための連通部材とからなる薬剤投与具であって、
前記連通部材は、前記外筒の前記先端部に装着するための外筒装着部と、前記外筒の前記シール部を刺通可能な外筒側穿刺部と前記薬剤容器の前記封止部材を刺通可能な薬剤容器側穿刺部と前記外筒側穿刺部と前記薬剤容器側穿刺部とを連通する連通路とを備える中空針状部と、該中空針状部を保持し、かつ前記薬剤容器の前記封止部材の表面に当接可能な中空針状部保持部とを備え、前記薬剤容器の前記封止部材は、前記容器本体内に延び、かつ、前記薬剤投与部材を装着可能な薬剤投与部材装着部を備え、前記薬剤投与具は、前記連通部材の前記外筒側穿刺部が前記外筒の前記シール部を刺通し、前記薬剤容器側穿刺部が前記薬剤容器の前記封止部材を刺通した状態にて、前記封止部材と前記容器本体との固定を解除することにより、前記プレフィルドシリンジの前記外筒に、前記連通部材および前記薬剤容器の前記封止部材が装着され、かつ前記薬剤投与部材装着部が露出する状態とすることが可能である薬剤投与具。
【0008】
(2) 前記中空針状部の前記薬剤容器側穿刺部は、前記薬剤投与部材装着部内に進入するように、前記薬剤容器の前記封止部材を刺通可能であり、かつ、前記中空針状部保持部が前記薬剤容器の前記封止部材の表面に当接した状態にて、前記薬剤容器側穿刺部の先端は、前記薬剤投与部材装着部より突出しないものとなっている上記(1)に記載の薬剤投与具。
(3) 前記連通部材の前記外筒装着部は、前記中空針状部保持部より前記外筒側穿刺部を被包するように延びる筒状部である上記(1)または(2)に記載の薬剤投与具。
(4) 前記外筒は、前記先端部に設けられ、かつ前記薬剤投与部材の装着が不能であるノズルを備え、前記シール部は、前記ノズルを封止するものであり、さらに、前記連通部材の前記外筒装着部は、前記ノズルに装着するためのノズル装着部である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の薬剤投与具。
(5) 前記ノズル装着部の内面には、ノズル装着部側係合部を備え、前記外筒のノズルの外面には、前記ノズル装着部側係合部と係合するノズル側係合部を備えている上記(4)に記載の薬剤投与具。
(6) 前記連通部材は、前記ノズル装着部を有する筒状本体部材を備え、前記筒状本体部材は、前記中空針状部を保持する前記中空針状部保持部を前記外筒側穿刺部の前記ノズル装着部内への移動を可能とした状態にて収納している上記(4)または(5)に記載の薬剤投与具。
【0009】
(7) 前記筒状本体部材は、前記中空針状部保持部の移動を規制し、かつ、前記中空針状部保持部が乗り越え可能かつ乗り越え後の移動を規制する係止部を備える上記(6)に記載の薬剤投与具。
(8) 前記筒状本体部材は、前記薬剤容器の前記封止部材と係合可能であり、かつ、係合することにより、前記封止部材を保持する封止部材保持機能を備えている上記(6)または(7)に記載の薬剤投与具。
(9) 前記連通部材は、前記外筒の前記ノズルに装着され、かつ、前記中空針状部の前記外筒側穿刺部は、前記シール部に到達しないものとなっている上記(6)ないし(8)のいずれかに記載の薬剤投与具。
(10)前記薬剤容器は、前記封止部材を前記容器本体に固定する固定部材を備え、かつ、該固定部材は、前記中空針状部の前記薬剤容器側穿刺部が前記薬剤容器の前記封止部材を刺通し、前記薬剤投与部材装着部内に到達し、前記中空針状部保持部が前記薬剤容器の前記封止部材の表面に当接した状態での前記容器本体からの離脱が可能である上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の薬剤投与具。
(11) 前記薬剤投与部材は、注射針または医療用活栓であり、前記薬剤投与部材装着部は、前記注射針のハブもしくは前記医療用活栓のポートに装着可能である上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の薬剤投与具。
【発明の効果】
【0010】
本発明の薬剤投与具は、薬剤投与部材の装着が不能であり、かつ穿刺可能なシール部により封止された先端部を有する外筒と、外筒内に摺動可能に収納されたガスケットと、ガスケットに装着されたもしくは装着可能なプランジャと、外筒内に充填された医療用液体とからなるプレフィルドシリンジと、開口部を有する容器本体と、開口部を封止する封止部材と、容器本体内に収納された薬剤とからなる薬剤容器と、外筒の先端部に装着されたもしくは装着可能であり、外筒内と薬剤容器内とを連通させるための連通部材とからなる。さらに、連通部材は、外筒の先端部に装着するための外筒装着部と、外筒のシール部を刺通可能な外筒側穿刺部と薬剤容器の封止部材を刺通可能かつ外筒側穿刺部と連通する薬剤容器側穿刺部とを有する中空針状部と、中空針状部を保持し、薬剤容器の封止部材の表面に当接可能な中空針状部保持部とを備える。薬剤容器の封止部材は、容器本体内に延び、かつ、薬剤投与部材を装着可能な薬剤投与部材装着部を備える。そして、薬剤投与具は、連通部材の外筒側穿刺部が外筒のシール部を刺通し、薬剤容器側穿刺部が薬剤容器の封止部材を刺通した状態にて、封止部材と容器本体との固定を解除することにより、プレフィルドシリンジの外筒の先端部に連通部材および薬剤容器の封止部材が装着された状態かつ薬剤投与部材装着部が露出する状態とすることが可能となっている。
このため、本発明の薬剤投与具では、プレフィルドシリンジは、薬剤投与部材の装着が不能であるノズルを備えるため、プレフィルドシリンジのみでの投与が不能であり、また、プレフィルドシリンジ内と、薬剤を収納した薬剤容器内とを連通させ、かつ、薬剤容器より封止部材を離脱させた後でなければ、薬剤投与部材装着部が露出しないため、薬剤が添加されない医療用液体のみの誤投与を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の薬剤投与具の実施例を示す正面図である。
【図2】図2は、図1に示した薬剤投与具における連通部材装着済みプレフィルドシリンジの拡大縦断面図である。
【図3】図3は、図1に示した薬剤投与具における薬剤容器の拡大縦断面図である。
【図4】図4は、図2に示した連通部材装着済みプレフィルドシリンジの先端部の拡大図である。
【図5】図5は、図1ないし図4に示した薬剤投与具の作用を説明するための説明図である。
【図6】図6は、図1ないし図4に示した薬剤投与具の作用を説明するための説明図である。
【図7】図7は、図1ないし図4に示した薬剤投与具の作用を説明するための説明図である。
【図8】図8は、図1ないし図4に示した薬剤投与具の作用を説明するための説明図である。
【図9】図9は、図1ないし図4に示した薬剤投与具の作用を説明するための説明図である。
【図10】図10は、本発明の薬剤投与具に用いられる連通部材の他の例を説明するための説明図である。
【図11】図11は、本発明の薬剤投与具に用いられる連通部材の他の例を説明するための説明図である。
【図12】図12は、本発明の薬剤投与具に用いられる連通部材の他の例を説明するための説明図である。
【図13】図13は、本発明の薬剤投与具の他の実施例を示す正面図である。
【図14】図14は、図13に示した薬剤投与具における連通部材の拡大縦断面図である。
【図15】図15は、図13に示した薬剤投与具における薬剤容器の拡大縦断面図である。
【図16】図16は、図13ないし図15に示した薬剤投与具の作用を説明するための説明図である。
【図17】図17は、図13ないし図15に示した薬剤投与具の作用を説明するための説明図である。
【図18】図18は、図13ないし図15に示した薬剤投与具の作用を説明するための説明図である。
【図19】図19は、図13ないし図15に示した薬剤投与具の作用を説明するための説明図である。
【図20】図20は、図13ないし図15に示した薬剤投与具の作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の薬剤投与具を図面に示す実施例に基づいて説明する。
本発明の薬剤投与具1は、薬剤投与部材の装着が不能であり、かつ穿刺可能なシール部(具体的には、ノズルシール部材)16により封止された先端部(具体的には、ノズル22)を有する外筒12と、外筒12内に摺動可能に収納されたガスケット17と、ガスケット17に装着されたもしくは装着可能なプランジャ18と、外筒12内に充填された医療用液体27とからなるプレフィルドシリンジ2と、開口部を有する容器本体41と、開口部を封止する封止部材42と、容器本体41内に収納された薬剤45とからなる薬剤容器4と、外筒12の先端部(ノズル)22に装着されたもしくは装着可能であり、外筒12内と薬剤容器4内とを連通させるための連通部材3とからなる。連通部材3は、先端部(ノズル)22に装着するための外筒装着部(言い換えれば、ノズル装着部)32と、外筒12のシール部(ノズルシール部材)16を刺通可能な外筒側穿刺部53と薬剤容器4の封止部材42を刺通可能かつ外筒側穿刺部53と連通する薬剤容器側穿刺部54とを有する中空針状部52と、中空針状部52を保持し、薬剤容器4の封止部材42の表面に当接可能な中空針状部保持部51とを備える。薬剤容器4の封止部材42は、容器本体41内に延び、かつ、薬剤投与部材を装着可能な薬剤投与部材装着部44を備える。そして、薬剤投与具1は、連通部材3の外筒側穿刺部53が外筒12のシール部(ノズルシール部材)16を刺通し、薬剤容器側穿刺部54が薬剤容器4の封止部材42を刺通した状態にて、封止部材42と容器本体41との固定を解除することにより、プレフィルドシリンジ2の外筒12の先端部(ノズル)22に連通部材3および薬剤容器4の封止部材42が装着された状態かつ薬剤投与部材装着部44が露出する状態とすることが可能となっている。
そして、図1に示す実施例の薬剤投与具1では、プレフィルドシリンジ2に連通部材3が装着された状態となっている。なお、図13に示す実施例の薬剤投与具10では、連通部材30は、使用時にプレフィルドシリンジ2に装着されるものとなっている。
【0013】
本発明の薬剤投与具1は、図1および図2に示すように、先端部(ノズル)がシール部16(ノズルシール部材)にて封止されたプレフィルドシリンジ2と、連通部材3と、薬剤容器4とからなる。そして、連通部材3は、図1、図2および図4に示すように、プレフィルドシリンジ2の先端部(具体的には、ノズル)22に装着されている。
プレフィルドシリンジ2は、外筒12と、外筒12のノズル(先端部)22を封止するシール部(ノズルシール部材)16と、外筒12内に収納されたガスケット17と、シール部(ノズルシール部材)16とガスケット17により密封された外筒12内に収納(充填)された医療用液体27とからなる。
【0014】
ノズル22は、外筒12の本体部21の先端に設けられており、先端開口部を備え、かつ、薬剤投与部材(例えば、注射針)の装着が不能なものとなっている。この実施例では、ノズル22は、ほぼ同一外径を有する短い筒状部となっている。さらに、この実施例でシリンジでは、ノズル22の先端部(具体的には、先端)の外面には、リブ25が設けられている。リブ25としては、環状リブが好適であるが、非連続の複数(例えば、3〜12)のリブを環状に設けたものであってもよい。また、この実施例のシリンジ2では、ノズル22は、上述したリブ部分を除き、ほぼ同一外径のものとなっている。
【0015】
外筒12は、図1、図2に示すように、フランジ24を有する。フランジ24は、外筒12の後端全周より垂直方向に突出するように形成された楕円ドーナツ状の円盤部である。フランジ24は、図1、図2に示すように向かい合う2つの把持部を備え、さらに、把持部の先端面側には、複数のリブが形成されている。
外筒12は、透明もしくは半透明材料により、必要に応じて、酸素透過性、水蒸気透過性の少ない材料により形成された筒状体である。
外筒12の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような樹脂が好ましい。
また、外筒12のノズル22は、後述するノズルシール部材16によりシールされている。
【0016】
ガスケット17は、図1、図2および図7に示すようにほぼ同一外径にて延びる本体部と、この本体部に設けられた複数の環状リブ(この実施例では2つ、2つ以上であれば、液密性と摺動性を満足できれば適宜数としてもよい)を備え、これらリブが、外筒12の内面に液密に接触する。また、ガスケット17の先端面は、外筒12の先端内面に当接した時に、両者間に極力隙間を形成しないように、外筒12の先端内面形状に対応した形状となっている。
ガスケット17の形成材料としては、弾性を有するゴム(例えば、ブチルゴム、ラテックスゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンゴムなど)、熱可塑性エラストマー(例えば、SBSエラストマー、SEBSエラストマー、SEPSエラストマー等のスチレン系エラストマー、エチレン−αオレフィン共重合体エラストマー等のオレフィン系エラストマーなど)等を使用することが好ましい。
そして、ガスケット17には、その後端部より内部に延びる凹部が設けられ、この凹部が、プランジャ装着部となっている。具体的には、プランジャ装着部は、雌ねじ状となっており、プランジャ18の先端部に形成された突出部の外面に形成された雄ねじ部と螺合可能となっている。両者が螺合することにより、プランジャ18は、ガスケット17に装着される。
プレフィルドシリンジ2内に充填される医療用液体27としては、注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液などの薬剤溶解液、さらには、薬剤(例えば、ビタミン剤、ミネラル類)を含有するとともに、薬剤容器内の粉末製剤の溶解が可能な薬液でもあってもよい。
【0017】
シール部は、連通部材3の外筒側穿刺部53が刺通可能に形成されている。シール部はプレフィルドシリンジの使用時に薬剤溶解後の薬液が液漏れせず、薬剤投与部材装着部から投与可能とされていることが好ましく、外筒先端部と一体であっても、外筒先端の開口にシール部材として固着するものであっても良い。
シール部を形成するノズルシール部材16は、フィルム状部材、弾性部材などが用いられ、ノズルの先端部に気密に固着されている。フィルム状部材からなるシール部材としては、例えば、気密維持性部材とその上に設けられたシール性部材と、気密維持性部材の下面に設けられた接着性を有する樹脂薄膜とを有するものが使用可能である。気密維持性部材は、ノズルの開口部を密封するとともに、外筒12内への気体の侵入を防止するものであり、ガスバリヤー性の高い物質により形成されたガスバリヤー性フィルム、例えば、アルミ箔等の金属箔、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂フィルム材等により形成される。さらに、このガスバリヤー性フィルムの下面にノズル22の開口部との固着のために、接着性フィルムを形成する樹脂薄膜を有することが好ましい。樹脂薄膜としては、例えば、外筒形成材料との熱融着性を有するものが用いられる。また、ノズルシール部材16は、弾性部材により形成してもよく、形成材料としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等の合成ゴム、オレフィン系エラストマーやスチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー等を使用することが好ましい。また、弾性部材形成材料が、外筒形成材料との熱融着性を有する場合には、熱融着により固着してもよい。
【0018】
次に、連通部材3について、図1、図2および図4を参照して説明する。
また、この実施例では、連通部材3は、外筒12の先端部(ノズル)22に装着され、かつ、中空針状部52の外筒側穿刺部53は、シール部(ノズルシール部材)16に到達しないもの(若干、離間したもの)となっている。そして、この実施例では、連通部材3は、外筒装着部(具体的には、ノズル装着部)32を有する筒状本体部材31と、中空針状部52を保持する中空針状部保持部51とを備える。そして、筒状本体部材31は、中空針状部保持部51を摺動可能に収納している。具体的には、筒状本体部材31は、中空針状部保持部51を外筒側穿刺部53が、外筒装着部32内に移動可能に収納している。また、薬剤容器側穿刺部54は、筒状本体部材31より、突出した状態となっている。このため、この実施例では、中空針状部保持部51がノズル収納部32方向に移動することにより、中空針状部52の外筒側穿刺部53が、外筒装着部32内に侵入するとともに、ノズルシール部材16を刺通するものとなっている。
【0019】
筒状本体部材31は、薬剤容器4の封止部材42を収納可能な中空部を有する短い円筒状(所定の厚さと内部空間を有する円盤状)のものとなっており、その中心より上方に延びる小径の筒状延出部を備えており、その小径の筒状延出部が、外筒装着部32を形成している。
また、この実施例では、外筒装着部であるノズル装着部32の内面には、シリンジのノズル22の先端部(具体的には、先端)に形成されたリブ25と係合するための、凹部が設けられている。凹部としては、環状凹部が好適である。さらに、筒状本体部材31は、中空針状部保持部51の移動を規制し、かつ、中空針状部保持部51が乗り越え可能かつ乗り越え後の移動を規制する係止部34を備えている。具体的には、筒状本体部材31の内面であり、筒状本体部材31の下端より若干上端側となる位置に係止部34を構成するリブが設けられている。係止部34を構成するリブとしては、環状リブが好適であるが、非連続の複数(例えば、3〜12)のリブを環状に設けたものであってもよい。
【0020】
さらに、この実施例では、筒状本体部材31は、薬剤容器4の封止部材42と係合可能であり、かつ、係合することにより、封止部材42を保持する封止部材保持機能を備えている。具体的には、筒状本体部材31の内面の下端には、環状リブ33が形成されており、さらに、環状リブ33の下面は、筒状本体部材31の中央側に向かって縮径するテーパー面となっている。さらに、環状リブ33の上面は、筒状本体部材31の中心軸とほぼ直交する起立面となっている。そして、
環状リブ33の下面の縮径テーパー面は、薬剤容器4の封止部材42の誘導部を構成し、環状リブ33の上面の起立面は、筒状本体部材31内に収納後の薬剤容器4の封止部材42の下面周縁部と係合する係合部を形成している。このため、
筒状本体部材31と薬剤容器4の封止部材42とが係合することにより、封止部材42が筒状本体部材31に装着された状態となり、封止部材42を容器本体41より、容易に離脱できるものとなっている。
中空針状部保持部51は、円盤状の部材により形成されており、中央部に中空針状部52が固定されている。また、中空針状部保持部51と中空針状部52とにより、穿刺具5を構成している。中空針状部保持部51は、図4に示すように、筒状本体部材31の係止部34と当接し、係止されている。中空針状部52は、中空針状部保持部51の上面より上方(外筒装着部32方向)に延び、ノズルシール部材16を穿刺可能な外筒側穿刺部53と、中空針状部保持部51の下面より下方に延び、薬剤容器4の封止部材42を刺通可能な薬剤容器側穿刺部54とを有する。そして、外筒側穿刺部53と薬剤容器側穿刺部54とは内部が連通している。外筒側穿刺部53は、ノズルシール部材16を刺通可能な刃先を備え、薬剤容器側穿刺部54は、薬剤容器4の封止部材42を刺通可能な刃先を有する。また、中空針状部(外筒側穿刺部53および薬剤容器側穿刺部54)は、 筒状本体部材31および中空針状部保持部51の中心軸上を延びるものとなっている。
【0021】
本発明の薬剤投与具に用いられる薬剤容器4は、図3に示すように、開口部を有する容器本体41と、容器本体41の開口部を封止する封止部材42と、容器本体41内に収納された薬剤45とからなる。
そして、薬剤容器4の封止部材42は、容器本体41内に延び、かつ、薬剤投与部材を装着可能な薬剤投与部材装着部44を備えている。
そして、本発明の薬剤投与具1は、連通部材3の外筒側穿刺部53が外筒12のノズルシール部材16を刺通し、薬剤容器側穿刺部54が薬剤容器4の封止部材42を刺通し、中空針状部保持部51が薬剤容器4の封止部材42の表面に当接した状態とし、さらに、容器本体との固定を解除することにより、プレフィルドシリンジ2のノズル22に連通部材3および薬剤容器4の封止部材42が装着された状態とすることが可能となっている。このため、プレフィルドシリンジのみでは、シリンジ内の液剤の投与が不能であるが、プレフィルドシリンジ2に連通部材3および薬剤容器4の封止部材42が装着された状態となり、かつ、薬剤容器より離脱することにより、封止部材42の薬剤投与部材装着部44が露出し、これに注射針などを装着することにより、シリンジ内の薬剤の投与が可能となる。
容器本体41としては、開口部を有し、内部に薬剤45を収納可能なものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、硬質もしくは半硬質合成樹脂製容器、ガラス容器などが使用される。また、薬剤容器は、内部が減圧されたものであることが好ましい。開口部をシールする封止部材42としては、穿刺具5の中空針状部の薬剤容器側穿刺部54による穿刺(刺通)が可能なものであればどのようなものでもよい。
【0022】
封止部材42としては、少なくとも中央部分43が、上述した中空針状部52の薬剤容器側穿刺部54により刺通可能なものとなっている。そして、封止部材42は、筒状の薬剤投与部材装着部44を備えている。薬剤投与部材装着部44は、注射針(具体的には、注射針ハブ)または医療用活栓(三方活栓などの活栓のポート)などの薬剤投与部材の接続部への装着が可能である。具体的には、薬剤投与部材装着部44は、ルアーテーパ状に縮径するノズル状のものとなっている。
さらに、中空針状部51の薬剤容器側穿刺部54は、薬剤投与部材装着部44内に進入するように、薬剤容器4の封止部材42を刺通可能なものとなっている。そして、中空針状部保持部51が薬剤容器4の封止部材42の表面に当接した状態にて、薬剤容器側穿刺部54の先端(刃先)は、薬剤投与部材装着部44より突出しないものであることが好ましい。このようにすることにより、薬剤容器側穿刺部54が、露出しないものとなり、薬剤投与部材装着部44への薬剤投与具(例えば、注射針)装着作業時における誤穿刺を防止できる。
また、この実施例のものでは、封止部材42は、底面の周縁より若干内側となる位置に設けられた環状溝42aを備えており、容器本体41の開口端41aを液密に収納するものとなっている。さらに、封止部材42の底面の周縁部、具体的には、環状溝42aと周縁間の環状部分は、筒状本体部材31の装着時に、筒状本体部材31の環状リブ33の上面により形成された起立面と当接するものとなっている。
【0023】
封止部材42の形成材料としては、例えば、弾性材料、例えば、ブチルゴム、ラテックスゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどのゴム、SBSエラストマー、SEBSエラストマー、SEPSエラストマー等のスチレン系エラストマー、エチレン−αオレフィン共重合体エラストマー等のオレフィン系エラストマーなどのエラストマー等が好ましい。
薬剤としては、外筒12内に充填される医療用液体27(具体的には、溶解液)に溶解するものであれば、粉末状薬剤、凍結乾燥薬剤、固形状薬剤、液状薬剤などどのようなものであってもよい。薬剤としては、例えば、ビタミン剤(総合ビタミン剤)、各種アミノ酸、ヘパリンのような抗血栓剤、インシュリン、抗生物質、抗腫瘍剤、鎮痛剤、強心剤、静注麻酔剤、抗パーキンソン剤、潰瘍治療剤、副腎皮質ホルモン剤、不整脈用剤、ホルモン製剤、インターフェロン製剤、ヒト免疫グロブリン製剤、血液凝固因子製剤、ワクチン製剤などのタンパク製剤等が挙げられる。
【0024】
次に、上述した実施例の薬剤投与具1の作用を図1ないし図6を用いて説明する。
本発明の薬剤投与具は、図1に示すように、プレフィルドシリンジ2に連通部材3が装着された状態となっている。なお、薬剤容器4は、連通部材3に装着されていない。
そして、初期状態では、図2および図4に示すように、連通部材3の穿刺具5の中空針状部保持部51が、筒状本体部材31の係止部34により係止された状態となっており、また、中空針状部52の外筒側穿刺部53は、外筒装着部32内に進入していない。
そして、図5および図6に示すように、連通部材3に薬剤容器4の封止部材42部分を装着することにより、穿刺具5の中空針状部保持部51の薬剤容器側穿刺部54が、薬剤容器4の封止部材42を刺通し、薬剤投与部材装着部44内に進入する。また、連通部材3の穿刺具5の中空針状部保持部51が、筒状本体部材31の係止部34を乗り越え、中空針状部52の外筒側穿刺部53が、外筒装着部32内に進入するとともに、プレフィルドシリンジのノズルシール部材16を刺通する。これにより、プレフィルドシリンジ2内と薬剤容器4内とが中空針状部52内の通路を介して連通する。また、薬剤容器4の封止部材42は、図6に示すように、連通部材3の筒状本体部材31内に収納される。具体的には、薬剤容器4の封止部材42は、筒状本体部材31の環状リブ33を乗り越えて、筒状本体部材31内に進入し、封止部材42の底面周縁部は、連通部材3の環状リブ33(具体的には、環状リブ33の上面の起立面)と係合する。これにより、薬剤容器4の封止部材42は、連通部材3に装着された状態となる。
そして、薬剤容器4の内部が減圧されている場合には、薬剤容器内の減圧による吸引力により、プレフィルドシリンジ2内の医療用液体は、薬剤容器4内に流入する。また、薬剤容器4の内部が減圧されていない場合には、プレフィルドシリンジ2のプランジャ18を押圧することにより、プレフィルドシリンジ2内の医療用液体を薬剤容器内に流入させる。このようにして、図7に示すように、プレフィルドシリンジ2内の医療用液体は、薬剤容器4内に流入し、薬剤45と医療用液体27が混合されて薬液が調製される。
【0025】
そして、図8に示すように、薬剤容器4側が上方となるようにした後、プランジャ18を引き、薬剤容器4内の調製された薬液28を外筒12に吸引する。そして、連通部材3を保持し、容器本体41のみを離脱させる。これにより、図9に示すように、調製された薬液28が外筒12内に充填され、連通部材3に装着された薬剤容器4の封止部材42の薬剤投与部材装着部44が露出した状態となる。これにより、投与準備が完了する。そして、薬剤投与部材装着部44に注射針などの薬剤投与部材が接続される。
次に、本発明の他の実施例の薬剤投与具10について、図13ないし図20を用いて説明する。この実施例の薬剤投与具10では、プレフィルドシリンジ2、連通部材30および薬剤容器4aは、それぞれ使用時に接続されるタイプのものとなっている。なお、プレフィルドシリンジ2としては、上述したものと同じであるので、上述の説明を参照するものとする。
【0026】
次に、連通部材30について、図14を参照して説明する。
連通部材30は、外筒装着部(具体的には、ノズル装着部)61を有するとともに中空針状部52を保持する中空針状部保持部60を備える。中空針状部52は、中空針状部保持部60の上面より上方(外筒装着部61内)に延び、シール部(シール部材)16を穿刺可能な外筒側穿刺部53と、中空針状部保持部60の下面より下方に延び、薬剤容器4aの封止部材47を刺通可能な薬剤容器側穿刺部54とを有する。そして、外筒側穿刺部53と薬剤容器側穿刺部54とは内部が連通している。外筒側穿刺部53は、シール部16を刺通可能な刃先を備え、薬剤容器側穿刺部54は、薬剤容器4aの封止部材47を刺通可能な刃先を有する。また、中空針状部(外筒側穿刺部53および薬剤容器側穿刺部54)は、中空針状部保持部60の中心軸上を延びるものとなっている。
中空針状部保持部60は、円盤状の部材により形成されており、中央部に中空針状部52が固定されている。外筒装着部(ノズル装着部)61は、中空針状部保持部60より外筒側穿刺部53を被包するように延びる筒状部である。具体的には、外筒装着部61は、中空針状部保持部60の中心より上方に延びる小径の筒状延出部により形成されており、その内部に、外筒側穿刺部53が位置するものとなっており、外筒側穿刺部53の刃先は、外筒装着部61内に位置し、露出しないものとなっている。また、外筒装着部を形成するノズル装着部61の内面には、シリンジのノズル22の先端部(具体的には、先端)に形成されたリブ25と係合するための、凹部62が設けられている。凹部62としては、環状凹部が好適である。
【0027】
本発明の薬剤投与具に用いられる薬剤容器4aは、図13および図15に示すように、開口部を有する容器本体41と、容器本体41の開口部を封止する封止部材47と、容器本体41内に収納された薬剤45とを備える。薬剤容器4aの封止部材47は、容器本体41内に延び、かつ、薬剤投与部材を装着可能な薬剤投与部材装着部44を備えている。さらに、この実施例では、薬剤容器4aは、封止部材47を容器本体41に固定する固定部材48を備える。さらに、固定部材48は、中空針状部52の薬剤容器側穿刺部54が薬剤容器4aの封止部材47を刺通し、薬剤投与部材装着部44内に到達し、中空針状部保持部60が薬剤容器4aの封止部材47の表面に当接した状態での容器本体41からの離脱が可能なものとなっている。
そして、この実施例の薬剤投与具10においても、連通部材30の外筒側穿刺部53が外筒12のノズルシール部材16を刺通し、薬剤容器側穿刺部54が薬剤容器4aの封止部材47を刺通し、中空針状部保持部60が薬剤容器4aの封止部材47の表面に当接した状態とし、さらに、容器本体との固定を解除することにより、プレフィルドシリンジ2のノズル22に連通部材30および薬剤容器4aの封止部材47が装着された状態とすることが可能となっている。このため、プレフィルドシリンジのみでは、シリンジ内の液剤の投与が不能であるが、プレフィルドシリンジ2に連通部材30および薬剤容器4aの封止部材47が装着された状態となり、かつ、容器本体41より離脱することにより、封止部材47の薬剤投与部材装着部44が露出し、これに注射針などを装着することにより、シリンジ内の薬剤の投与が可能となる。
【0028】
容器本体41としては、開口部を有し、内部に薬剤45を収納可能なものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、硬質もしくは半硬質合成樹脂製容器、ガラス容器などが使用される。また、薬剤容器は、内部が減圧されたものであることが好ましい。開口部をシールする封止部材47としては、中空針状部52の薬剤容器側穿刺部54による穿刺(刺通)が可能なものであればどのようなものでもよい。また、この容器本体41では、開口部に固定部材取付用のフランジを備えている。フランジは、所定の幅を有する環状突出部となっている。
封止部材47としては、少なくとも中央部分43が、上述した中空針状部52の薬剤容器側穿刺部54により刺通可能なものとなっている。そして、封止部材47は、筒状の薬剤投与部材装着部44を備えている。薬剤投与部材装着部44は、注射針(具体的には、注射針ハブ)または医療用活栓(三方活栓などの活栓のポート)などの薬剤投与部材の接続部への装着が可能である。具体的には、薬剤投与部材装着部44は、ルアーテーパ状に縮径するノズル状のものとなっている。
さらに、中空針状部51の薬剤容器側穿刺部54は、薬剤投与部材装着部44内に進入するように、薬剤容器4aの封止部材47を刺通可能なものとなっている。そして、中空針状部保持部60が薬剤容器4aの封止部材47の表面に当接した状態にて、薬剤容器側穿刺部54の先端(刃先)は、薬剤投与部材装着部44より突出しないものであることが好ましい。このようにすることにより、薬剤容器側穿刺部54が、露出しないものとなり、薬剤投与部材装着部44への薬剤投与具(例えば、注射針)装着作業時における誤穿刺を防止できる。
封止部材47の形成材料としては、例えば、弾性材料、例えば、ブチルゴム、ラテックスゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどのゴム、SBSエラストマー、SEBSエラストマー、SEPSエラストマー等のスチレン系エラストマー、エチレン−αオレフィン共重合体エラストマー等のオレフィン系エラストマーなどのエラストマー等が好ましい。
【0029】
封止部材47を容器本体41に固定する固定部材48は、図13および図14に示すように、リング状のものであり、封止部材47の周縁部を上述した容器本体41の開口部のフランジとともに保持し、封止部材47を容器本体41に液密に固定している。また、固定部材48は、離脱用把持部49を備えている。そして、固定部材48は、離脱用把持部49を把持し、容器本体41の開口部の周方向に引いていくことにより、容器本体41より離脱(剥離)可能となっている。固定部材48の形成材料としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼などの金属材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの合成樹脂などが好適に使用可能である。また、薬剤容器4a内に収納される薬剤45としては、上述した通りである。
【0030】
次に、上述した実施例の薬剤投与具10の作用を図13ないし図20を用いて説明する。
本発明の薬剤投与具は、図13に示すプレフィルドシリンジ2に、連通部材30を装着する。これにより、連通部材30の中空針状部52の外筒側穿刺部53が、プレフィルドシリンジのノズルシール部材16を刺通する。そして、連通部材30に薬剤容器4aの封止部材47部分を装着する。これにより、中空針状部保持部60の薬剤容器側穿刺部54が、薬剤容器4aの封止部材47を刺通し、薬剤投与部材装着部44内に進入し、図16に示すように、プレフィルドシリンジ2内と薬剤容器4a内とが中空針状部52内の通路を介して連通する。
そして、薬剤容器4aの内部が減圧されている場合には、薬剤容器内の減圧による吸引力により、プレフィルドシリンジ2内の医療用液体は、薬剤容器4a内に流入する。また、薬剤容器4aの内部が減圧されていない場合には、プレフィルドシリンジ2のプランジャ18を押圧することにより、プレフィルドシリンジ2内の医療用液体を薬剤容器内に流入させる。このようにして、図17に示すように、プレフィルドシリンジ2内の医療用液体は、薬剤容器4a内に流入し、薬剤45と医療用液体27が混合されて薬液が調製される。
【0031】
そして、図18に示すように、薬剤容器4a側が上方となるようにした後、プランジャ18を引き、薬剤容器4a内の調製された薬液28を外筒12に吸引する。そして、図19に示すように、固定部材48の離脱用把持部49を把持し、容器本体41の開口部の周方向に引き、容器本体41より、固定部材48を離脱させる。これにより、連通部材30および封止部材47を装着し、調製された薬液28が充填されたプレフィルドシリンジは、薬剤容器より離脱し、図20に示すように、封止部材47の薬剤投与部材装着部44が露出した状態となる。これにより、投与準備が完了する。そして、薬剤投与部材装着部44に注射針などの薬剤投与部材が接続される。
【0032】
そして、上述したすべての実施例において、連通部材は、中空針状部52の薬剤容器側穿刺部54を被包するように設けられた一端が閉塞した筒状シース56を有するものであってもよい。具体的には、図10に示す穿刺具5aのように、開口する一端が、中空針状部保持部51に保持され、中空針状部52の薬剤容器側穿刺部54を被包し、薬剤容器側穿刺部54の刃先より、所定長下方に位置する閉塞端を有する筒状シース56を有するものであってもよい。そして、シース56は、薬剤容器側穿刺部54による刺通が可能であり、さらに、中空針状部保持部51と薬剤容器4の封止部材間により圧縮が可能なものとなっている。封止部材の形成材料としては、上述した封止部材42にて説明した弾性材料が好適に使用できる。
【0033】
また、上述したすべての実施例において、連通部材は、プレフィルドシリンジ内の医療用液体を薬剤容器内への注入時に、薬剤容器内の空気を排出するための空気流通用通路を有するものであってもよい。具体的には、図11に示す連結具3aにおいて用いる穿刺具5bは、中空針状部52aの薬剤容器側穿刺部54を被包するように設けられた外管57を備え、薬剤容器側穿刺部54と外管57間により、空気流通用通路58aを備え、さらに、中空針状部保持部51にも、上記空気流通用通路58aと連通する空気流通用通路58bを備えている。また、通路58bの他端には、菌不透過性通気性フィルタ59が設けられている。さらに、
筒状本体部材31には、菌不透過性通気性フィルタ59を流出する空気を筒状本体部材31より放出するための開口35が設けられている。よって、この実施例の穿刺具5bは、外管57と薬剤容器側穿刺部54の間により形成された通路58aおよび中空針状部保持部51の通路58bを通り、菌不透過性通気性フィルタ59に至る空気流通路を備えている。このような空気流通路を備えることにより、プレフィルドシリンジ内の医療用液体の薬剤容器内への注入操作、薬剤容器内からのシリンジへの薬剤溶解済医療用液体の再吸引操作が容易となる。
また、上述したすべての実施例において、連結部材は、中空針状部52の薬剤容器側穿刺部54側を被包するキャップ26を有するものであってもよい。具体的には、図12に示す穿刺具のように筒状本体部材31の下端開口部に着脱自在に装着されたキャップ26を有していてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1、10 薬剤投与具
2 プレフィルドシリンジ
3、30 連通部材
4、4a 薬剤容器
5 穿刺具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤投与部材の装着が不能であり、かつ穿刺可能なシール部により封止された先端部を有する外筒と、前記外筒内に摺動可能に収納されたガスケットと、前記ガスケットに装着されたもしくは装着可能なプランジャと、前記外筒内に充填された医療用液体とからなるプレフィルドシリンジと、開口部を有する容器本体と、前記開口部を封止するとともに前記容器本体に固定された封止部材と、前記容器本体内に収納された薬剤とからなる薬剤容器と、前記外筒の前記先端部に装着されたもしくは装着可能であり、前記外筒内と前記薬剤容器内とを連通させるための連通部材とからなる薬剤投与具であって、
前記連通部材は、前記外筒の前記先端部に装着するための外筒装着部と、前記外筒の前記シール部を刺通可能な外筒側穿刺部と前記薬剤容器の前記封止部材を刺通可能な薬剤容器側穿刺部と前記外筒側穿刺部と前記薬剤容器側穿刺部とを連通する連通路とを備える中空針状部と、該中空針状部を保持し、かつ前記薬剤容器の前記封止部材の表面に当接可能な中空針状部保持部とを備え、前記薬剤容器の前記封止部材は、前記容器本体内に延び、かつ、前記薬剤投与部材を装着可能な薬剤投与部材装着部を備え、前記薬剤投与具は、前記連通部材の前記外筒側穿刺部が前記外筒の前記シール部を刺通し、前記薬剤容器側穿刺部が前記薬剤容器の前記封止部材を刺通した状態にて、前記封止部材と前記容器本体との固定を解除することにより、前記プレフィルドシリンジの前記外筒に、前記連通部材および前記薬剤容器の前記封止部材が装着され、かつ前記薬剤投与部材装着部が露出する状態とすることが可能であることを特徴とする薬剤投与具。
【請求項2】
前記中空針状部の前記薬剤容器側穿刺部は、前記薬剤投与部材装着部内に進入するように、前記薬剤容器の前記封止部材を刺通可能であり、かつ、前記中空針状部保持部が前記薬剤容器の前記封止部材の表面に当接した状態にて、前記薬剤容器側穿刺部の先端は、前記薬剤投与部材装着部より突出しないものとなっている請求項1に記載の薬剤投与具。
【請求項3】
前記連通部材の前記外筒装着部は、前記中空針状部保持部より前記外筒側穿刺部を被包するように延びる筒状部である請求項1または2に記載の薬剤投与具。
【請求項4】
前記外筒は、前記先端部に設けられ、かつ前記薬剤投与部材の装着が不能であるノズルを備え、前記シール部は、前記ノズルを封止するものであり、さらに、前記連通部材の前記外筒装着部は、前記ノズルに装着するためのノズル装着部である請求項1ないし3のいずれかに記載の薬剤投与具。
【請求項5】
前記ノズル装着部の内面には、ノズル装着部側係合部を備え、前記外筒のノズルの外面には、前記ノズル装着部側係合部と係合するノズル側係合部を備えている請求項4に記載の薬剤投与具。
【請求項6】
前記連通部材は、前記ノズル装着部を有する筒状本体部材を備え、前記筒状本体部材は、前記中空針状部を保持する前記中空針状部保持部を前記外筒側穿刺部の前記ノズル装着部内への移動を可能とした状態にて収納している請求項4または5に記載の薬剤投与具。
【請求項7】
前記筒状本体部材は、前記中空針状部保持部の移動を規制し、かつ、前記中空針状部保持部が乗り越え可能かつ乗り越え後の移動を規制する係止部を備える請求項6に記載の薬剤投与具。
【請求項8】
前記筒状本体部材は、前記薬剤容器の前記封止部材と係合可能であり、かつ、係合することにより、前記封止部材を保持する封止部材保持機能を備えている請求項6または7に記載の薬剤投与具。
【請求項9】
前記連通部材は、前記外筒の前記ノズルに装着され、かつ、前記中空針状部の前記外筒側穿刺部は、前記シール部に到達しないものとなっている請求項6ないし8のいずれかに記載の薬剤投与具。
【請求項10】
前記薬剤容器は、前記封止部材を前記容器本体に固定する固定部材を備え、かつ、該固定部材は、前記中空針状部の前記薬剤容器側穿刺部が前記薬剤容器の前記封止部材を刺通し、前記薬剤投与部材装着部内に到達し、前記中空針状部保持部が前記薬剤容器の前記封止部材の表面に当接した状態での前記容器本体からの離脱が可能である請求項1ないし9のいずれかに記載の薬剤投与具。
【請求項11】
前記薬剤投与部材は、注射針または医療用活栓であり、前記薬剤投与部材装着部は、前記注射針のハブもしくは前記医療用活栓のポートに装着可能である請求項1ないし10のいずれかに記載の薬剤投与具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2012−10930(P2012−10930A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149910(P2010−149910)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】