説明

薬剤散布装置

【課題】1台で苗載台上の複数条分の苗マットに薬剤を散布することができる薬剤散布装置を提供し、田植機の部品点数や製造コストを低減する。
【解決手段】繰出部42を、下開口部47cが形成された繰出ケース47と、該繰出ケース47に内包されて枢支される繰出ロール45と、から構成し、該下開口部47cを左右に分割する第1の仕切り部材72と、分割されたそれぞれの開口部を更に分割する第2の仕切り部材73L・73Rと、を固設して、該開口部に4つの繰出口73c・73c・74c・74cを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機等の苗載台上に載置された苗マット上に肥料や農薬等の薬剤を供給する薬剤散布装置の技術に関し、詳しくは1台で複数条分の苗マットに薬剤を供給することができる薬剤散布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、田植え直前の育苗箱に浸透移行性のある粒剤を散布し、移植後まもなく発生する害虫を駆除する箱施用剤が知られている。該箱施用剤は出穂以前に発生する主要病原虫のほとんどを一回だけの薬剤処理で防除できるものである。また、最近では稲作中期以降に発生する害虫や葉イモチ、紋枯病などの発生を抑制することができる長期残効性の箱施用剤も登場してきている。
そして、多忙な田植え直前の時期に手散布により育苗箱に所定量の薬剤を丁寧に散布する作業は非常に煩わしい作業であるため、動力散布機等を用いて大量の薬剤散布作業を施していた。
【0003】
しかし、そのような動力散布機を用いる薬剤散布では薬剤を均一に散布することは難しく、近年では、田植機の苗載台上方に薬剤散布装置を搭載して、該薬剤散布装置によって苗マット上に薬剤を散布し、田植えと同時に施薬も行うことのできる作業機が用いられるようになった(例えば、特許文献1参照。)。また、一台の薬剤散布装置によって2条分の薬剤を散布することができる薬剤散布装置も公知となっている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2002−027895号公報
【特許文献2】特開2006−158380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献に記載の薬剤散布装置は、その繰出装置が円形の繰出板の周囲に繰出孔を有する繰出装置であり、左右二つの繰出板を回転させて薬剤ホッパ内の薬剤を繰出し、落下してくる薬剤をその下方に配置した散布カバー内に沿って両側方へ散布するようにしているものである。そのため、2条分の薬剤しか散布することができず、1台の田植機に植付け条数の半分の薬剤散布装置を配設する必要があり、田植機の部品点数が多くなり、製造コストが高いものになっていた。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、1台で苗載台上の複数条分の苗マットに薬剤を散布することができる薬剤散布装置を提供し、田植機の部品点数や製造コストを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、薬剤ホッパと、該薬剤ホッパの薬剤を散布部へ繰り出す繰出部と、該繰出部によって繰り出された薬剤を散布する散布部と、を具備する薬剤散布装置において、該繰出部の繰出ケース内下部に繰出軸と直角方向に複数の仕切り板を平行に配置し、繰出口を複数形成したものである。
【0007】
請求項2においては、前記繰出部を、開口部が形成された繰出ケースと、該繰出ケースに内包されて枢支される繰出ロールと、から構成し、該開口部を左右に分割する第1の仕切り部材と、分割されたそれぞれの開口部を更に分割する第2の仕切り部材と、を固設して、該開口部に4つの繰出口を形成したものである。
【0008】
請求項3においては、前記仕切り部材をそれぞれ平行に左右方向に並べて配設し、該仕切り部材等によって形成される前記繰出口を前後方向にずらして形成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、1台の薬剤散布装置によって苗載台上の複数条分の苗マットに薬剤を散布することができるので、田植機の部品点数や製造コストを低減することが可能になる。
【0011】
請求項2においては、簡単な構成で繰出部の開口部に4つの繰出口を設けることができるため、田植機の部品点数や製造コストを低減することが可能になる。
【0012】
請求項3においては、繰出部に連結する散布部の部材同士を干渉させることなく、薬剤散布装置を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係わる乗用田植機100の全体構成を示した側面図、図2は乗用田植機100後部を示した側面図、図3は同じく背面図、図4は薬剤繰出部42を示す一部側面断面図、図5は同じく平面図、図6は同じく背面図である。
【0014】
以下では、図1及び図2を用いて本発明の薬剤散布装置の実施の一形態である薬剤散布装置10を具備する乗用田植機100の全体構成について説明する。
尚、本発明に係る薬剤散布装置10は田植機に広く適用可能であって、その適用範囲は本実施例の乗用田植機100に限定されるものではない。ここで、「田植機」とは、水田に稲の苗を植え付ける機械を指し、作業者が乗って操作する乗用田植機及び作業者が手で押して操作する歩行式田植機の両方を含む。
以下の説明では、便宜上図1中の矢印Aの方向を「前方」と定義する。
【0015】
乗用田植機100は田植機の実施の一形態であり、走行部1の後部に昇降リンク機構27を介して植付部4を配置する。
走行部1は車体フレーム3前部上方にエンジン2を搭載し、前下部にてフロントアクスルケースを介して前輪6を支持し、後下部にてリヤアクスルケース7を介して後輪8を支持する。エンジン2はボンネット9に覆われている。
【0016】
乗用田植機100はボンネット9の後部に設けられたダッシュボード5の上に操向ハンドル14を配置し、ボンネット9の左右両側およびボンネット9の後部の車体フレーム3の上面を車体カバー12で覆っている。該操向ハンドル14の後方には座席13を配置し、ボンネット9の左右両側と座席13の前方と座席13の左右両側と座席13の後方を作業者が足を載せるステップとしている。
乗用田植機100には、座席13の側部に走行変速レバー30や植付昇降および作業走行変速用の副変速レバー31や植付感度調節レバー等が配設され、ダッシュボード5の下部のステップ上には主クラッチペダル32や左右ブレーキペダルが配設されて、座席13の後方に施肥機33が配設されている。
【0017】
植付部4は、苗載台16・植付爪17・フロート34・薬剤散布装置10等から構成される。苗載台16は前高後低に配設されて、その下部が下ガイドレール18に、前面上部が上ガイドレール19に左右往復摺動自在に支持されている。該下ガイドレール18および該上ガイドレール19は、フレーム等を介して植付センターケース20によって支持されている。植付センターケース20には、連結パイプを介して後方へと植付ケース21が突設されており、該植付ケース21の後部には一方向に回動するロータリケース22が設けられ、該ロータリケース22の両側に一対の植付爪17・17が設けられる。
【0018】
このようにして、乗用田植機100は、前進走行とともに苗載台16を横送り機構により左右に往復運動(摺動)し、この往復運動に同期させて植付爪17・17・・・を駆動して各条ごとに一株分の苗を切り出しながら、連続的に植付作業を行うものである。
尚、植付センターケース20の前部には、図示しないローリング支点軸を介して昇降リンク機構27が連結されており、詳しくは、該昇降リンク機構27がトップリンク25やロワーリンク26等から構成されて、座席13下方に配置した昇降シリンダ28によって植付部4を昇降する構成になっている。
【0019】
図1乃至図3に示す如く、苗載台16の上面には各条の左右両側にリブ85・85・・・が前後方向に立設され、該リブ85・85・・・間に苗マット載置部86・86・・・が形成されている。つまり、隣り合うリブ85・85間に形成された苗マット載置部86とその上に載置された苗マットとが、乗用田植機100が植付作業を行なう一条分に対応している。
該苗マットの縦送り機構は、従動ローラ37・駆動ローラ38・苗送りベルト35等から構成される。苗マット載置部86の下部から上下中間位置にかけて開口部が設けられ、該開口部の上下に従動ローラ37と駆動ローラ38とが配設され、従動ローラ37と駆動ローラ38の間に苗送りベルト35が巻回される。該苗送りベルト35・35・・・の表面には多数の突起が設けられ、苗マット載置部86の下部から上下中間位置にかけて設けられた開口部から該ベルト表面が露出する。
【0020】
このような構成にして、苗マットの縦送り機構の上方に設けられた苗マット押え機構36と苗送りベルト35とによって苗マットを保持しつつ、苗マットを正確に下方へ縦送りしながら、安定した苗の植付けを行う。
詳しくは、苗載台16の左右往復運動と、該往復運動に同期して植付爪17・17・・・が行う苗の切り出し作業によって、苗マットの下端が一定幅ずつ切断され、切断された苗マットが下方へと搬送されて、苗が水田に植え付けられていく。また、苗マットは苗載台16の左右端での折り返し時に縦送り機構の苗送りベルト35によって下方へと運ばれる。
そして、この植付作業の際、苗載台16上方に配設された薬剤散布装置10によって、苗の植付と同時に苗マット上に散布ムラのない確実な施薬を行われる。
【0021】
以下では、図1乃至図3を用いて、本発明の要部である薬剤散布装置10の詳細構成を説明する。
図1乃至図3に示すように、薬剤散布装置10は乗用田植機100の苗載台16の後上方に設けられ、苗の移植と同時に苗マットに肥料や農薬等の薬剤を施薬するものである。つまり、薬剤散布装置10は苗載台16の苗マット載置部86に対向して配置される。薬剤散布装置10が取り扱う薬剤は、主に粉体の原料を粒状に成形したものであるが、他の粒状の薬剤(例えば、表面にコーティングを施した粒状の薬剤)に適用することも可能である。
【0022】
本実施例の乗用田植機100は8条植えの田植機であるため、薬剤散布装置10が4つの苗マット載置部86・86・86・86の左右中央上方に1台ずつ配置される。即ち、苗載台16上方左右両側に2つの薬剤散布装置10・10が配設される。
これは、一台の薬剤散布装置10によって4つの苗マット載置部86・86・86・86に施薬可能な構成としているためである。つまり、本発明の薬剤散布装置10は、適用される田植機が植付作業を行う条数の4分の1の台数で、該条数全ての苗マット載置台86・86・・・上の苗マットに同時に施薬可能なものである。
【0023】
本実施例における薬剤散布装置10は主に薬剤ホッパ41・繰出部42・散布部43等から構成される。
まず、薬剤ホッパ41は苗マットに施薬される薬剤を貯溜する容器であって、該薬剤ホッパ41の上部には蓋41aが着脱自在に設けられている。作業者等は、該蓋41aを開けて薬剤ホッパ41の内部に薬剤を補充する。薬剤ホッパ41の下半部47Bは漏斗状になっており、下端部には後述する下開口部47cが設けられている。つまり、薬剤ホッパ41に貯溜された薬剤が、自重で薬剤ホッパ41の下端部に設けられた開口部47cより下方の繰出部42に落下する構成になっている。
【0024】
次に、繰出部42について、図4乃至図6を用いて詳述する。
繰出部42は、前記薬剤ホッパ41に貯溜された薬剤を所定量ずつ後述する散布部43へと繰り出すものであって、図4乃至図6に示すように、主に繰出ケース47・繰出ロール45・ロール軸49等から構成されるものである。
繰出ケース47は上下面が開口した箱状の部材であり、その内部には後述する繰出ロール45が一方向クラッチを介して回動可能に収容されている。また、繰出ケース47はその上開口部47bが薬剤ホッパ41の下端部に連結されており、その下開口部47cが後述する分岐部材61の上開口部61bに連結されている。そして、該繰出ケース47の内部空間は繰出ロール45を挟んで上半部47Uと下半部47Bとに区画されている。
【0025】
詳しくは、繰出ケース47の内周には、後述する繰出ロール45に向けて仕切りブロック46や図示しないブラシが設けられており、繰出ロール45外周の溝45b・45b・・・に溜まった薬剤のみを繰出ロール45の下方へと繰り出す構成になっている。つまり、繰出ケース47の内部空間は、該仕切りブロック46やブラシより上方の上半部47Uと、該仕切りブロック46やブラシより下方の下半部47Bとに分割されているのである。
従って、薬剤ホッパ41から落下してきた薬剤は、まず繰出ケース47の上開口部47bを通って上半部47Uの空間に充填されるのである。
【0026】
繰出ロール45は略円柱形状の部材であり、その外周面には複数の溝45b・45b・・・が形成されている。該溝45b・45b・・・の長手方向は、繰出ロール45の両端面を貫通するロール軸49の長手方向(軸心方向)と略一致している。即ち、軸心方向と平行に溝45b・45b・・・が外周面に形成されている。
該ロール軸49は繰出ロール45を繰出ケース47の内部にて回動可能に軸支するための軸であって、該ロール軸49が繰出ロール45の軸心部に貫設されて、該ロール軸49の両端が繰出ケース47の左右側面から突出している。つまり、該ロール軸49を回動駆動することにより、繰出ケース47に収容された繰出ロール45を回動させることが可能である。
【0027】
詳しくは、図2に示すように、植付ケース21の後部上にロッド駆動ケース67を設け、該ロッド駆動ケース67より出力軸を突出し、該出力軸に植付爪17・17・・・を駆動する動力を分岐して伝える。該出力軸からは、下繰出用ロッド68・伝動プレート69・70・上繰出用ロッド71等を介して、図示しない繰出アームへと動力が伝達され、該繰出アームと前記ロール軸49の間に配置した一方向クラッチを介して該繰出ロール45が間欠的に一方向へ回動する構成となっている。
【0028】
繰出ケース47の上半部47Uの空間に充填された薬剤の一部は、繰出ロール45の外周面上に貯溜されており、さらにその一部が繰出ロール45の外周面に設けられた溝45bに入る。つまり、該繰出ロール45を回動させると、該繰出ロール45の溝45bに収容された薬剤のみが繰出ケース47の下半部47Bの空間に移動し、該溝45bから下方へと落下する。即ち、前記薬剤ホッパ41に貯溜された薬剤は、繰出部42によって間欠的に繰出ケース47の下半部47B及び下開口部47cへと繰り出されていく。
尚、繰出ロール45に設けられる溝45bの本数・長さ・深さ・幅等を変更することにより、繰り出される薬剤のタイミングや量を適宜変更することが可能である。
【0029】
該繰出ケース47の下半部47B及び下開口部47cには、該繰出ケース47左右略中央部に前後方向に左右仕切り板72が固設されている。該左右仕切り板72は、図4に示すように側面視において上部の半円と下部の略台形形状を有した板状部材であって、繰出ケース47内面に溶接されている。
詳しくは、前記繰出ロール45は、該左右仕切り板72によって左右の繰出ロール45L・45Rに分割されて、それぞれが同一の前記ロール軸49に固設されている。即ち、左右仕切り板72に前記ロール軸49が貫通しており、左右の繰出ロール45L・45Rが該左右仕切り板72を挟んで該ロール軸49に固設されているのである。
【0030】
以上をまとめると、該繰出ケース47内部には、繰出ロール45の上半部47Uの空間と下半部47Bの空間が設けられており、該下半部47Bの空間は前記左右仕切り板72によって左半部の空間と右半部の空間とに分割されている。つまり、繰出ロール45を回動させると、該繰出ロール45の溝45bに収容された薬剤が繰出ケース47の下半部47Bの空間へと移動し、該溝45bの左部に収容されていた薬剤は左半部の空間に落下し、該溝45bの右部に収容されていた薬剤は右半部の空間に落下する。
但し、本発明では、左右仕切り板72の上端位置を制限するものではなく、繰出ケース47の下部(下半部47B)が左右方向に仕切られていれば良いものである。
【0031】
そして、該繰出ケース47の下半部47B及び下開口部47cには、該左右仕切り板72の左右両側に前記繰出ロール45外周に沿って、該左右仕切り板72と平行に前後仕切り板73L・73Rが固設されている。該前後仕切り板73L・73Rは、その周囲に前記左右仕切り板72に向けて側壁73b・73bが形成されており、該側壁73b・73bによって該左右仕切り板72と該前後仕切り板73L・73Rとの間の空間を覆うように構成されている。そして、前後仕切り板73L・73Rの後下部には繰出口73c・73cが形成されており、前記繰出ロール45から該左右仕切り板72と前後仕切り板73L・73Rとの間の空間に落下してきた薬剤が、該繰出口73c・73cを通って後述する分岐部材61の上開口部61bの後部側へと落下する構成となっている。
【0032】
詳しくは、左側の前後仕切り板73Lは、図4に示すように側面視において略V字形状に形成された板状部材であって、図5に示すように該板状部材の周辺には前記左右仕切り板72方向へ(右方向へ)と側壁73bが立設されている。そして、該前後仕切り板73Lの最下端には、該側壁73bを切り欠いて繰出口73cが形成されている。該前後仕切り板73L・73Rは、その側壁73b・73bが左右仕切り板72に溶接されることによって、繰出ケース47内に固設されている。
尚、本発明では、前後仕切り板73L・73Rの上端位置を制限するものではなく、繰出ケース47の下部(下半部47B)が左右方向に仕切られていれば良いものであって、即ち、前後仕切り板73L・73Rが上半部47Uにまで達していても良い。
【0033】
そして、該繰出ケース47の下半部47B及び下開口部47cには、それぞれの前記前後仕切り板73L・73Rの外側に前記繰出ロール45外周に沿って、前記左右仕切り板72及び該前後仕切り板73L・73Rと平行に外仕切り板74L・74Rが固設されている。該外仕切り板74L・74Rは、その周囲に前記前後仕切り板73L・73Rに向けて側壁74b・74bが形成されており、該側壁74b・74bによって前後仕切り板73L・73Rと外仕切り板74L・74Rの間の空間を覆うように構成されている。換言すれば、左側の前後仕切り板73Lの左側に左側の外仕切り板74Lを固設し、前後仕切り板73Lと外仕切り板74Lとの間の空間を側壁74bによって囲っているのである。
【0034】
そして、外仕切り板74L・74Rの前下部には繰出口74c・74cが形成されており、前記繰出ロール45から前後仕切り板73L・73Rと該外仕切り板74L・74Rとの間の空間に落下してきた薬剤が、該繰出口74c・74cを通って後述する分岐部材61の上開口部61bの前部側へと落下する構成となっている。
尚、本発明では、外仕切り板74L・74Rの上端位置を制限するものではなく、繰出ケース47の下部(下半部47B)が左右方向に仕切られていれば良いものであって、即ち、外仕切り板74L・74Rが上半部47Uにまで達していても良い。
【0035】
詳しくは、左側の外仕切り板74Lは、図4に示すように側面視において略V字形状に形成された板状部材であって、該板状部材の周辺には前記左右仕切り板72方向へ(右方向へ)と側壁74bが立設されている。そして、該外仕切り板74Lの最下端には、該側壁74bを切り欠いて繰出口74cが形成されている。該外仕切り板74L・74Rは、それぞれの側壁74b・74bが前後仕切り板73L・73R側面に溶接されることによって、繰出ケース47内に固設されている。
尚、前述したように、前後仕切り板73L・73Rとその側壁73b・73bと外仕切り板74L・74Rとその側壁74b・74bの上部は繰出ロール45の下外周部の形状に沿って延設されており、落下する薬剤が漏れないように構成されている。
【0036】
以上のようにして繰出部42を構成したので、左右の繰出ロール45L・45Rが回動して薬剤が貯溜された溝45b・45b・・・が前後仕切り板73L・73R及び外仕切り板74L・74Rの上端に到達すると、溝45b・45bに貯溜されていた薬剤が左右仕切り板72と前後仕切り板73L・73Rと外仕切り板74L・74Rとの間に略均等に分散して落下していく。即ち、図4乃至図6に示すように、左側の繰出ロール45Lの溝45bに貯溜された薬剤が、左側の外仕切り板74Lと前後仕切り板73Lとの間、及び、左側の前後仕切り板73Lと左右仕切り板72との間に分散して落下し、右側の繰出ロール45Rの溝45bに貯溜された薬剤が、左右仕切り板72と右側の前後仕切り板73Rとの間、及び、該前後仕切り板73Rと右側の外仕切り板74Rとの間に分散して落下する構成となっている。
【0037】
つまり、薬剤ホッパ41から落下してきた薬剤は、左右仕切り板72によって左右方向に分割され、前後仕切り板73L・73Rによって前後方向に分割されてから、分岐部材61の上開口部61bへと落下していくのである。
本実施例における繰出口73c・73c・74c・74cは上記のような構成によって形成されるものであるが、本発明はこのような形態に限定されるものではなく、例えば繰出ケース47の上開口部47b自体を外仕切り部材として、構成してもよいものである。この場合は、左右仕切り板72と前後仕切り板73L・73Rと繰出ケース47とによって4つの繰出口が形成される。つまり、繰出ケース47の上開口部47bを左右方向に4分割できれば良いのである。また、更に仕切り板を追加して左右方向に均等に分割して配置することにより、6分割等に分割することも可能である。
【0038】
このように、薬剤ホッパ41と、該薬剤ホッパ41の薬剤を散布部43へ繰り出す繰出部42と、該繰出部42によって繰り出された薬剤を散布する散布部43と、を具備する薬剤散布装置10において、該繰出部42の繰出ケース47内下部に繰出軸49と直角方向に複数の仕切り部材72・73L・73Rを平行に配置し、繰出口73c・・・を複数形成したので、1台の薬剤散布装置10によって苗載台16上の複数条分の苗マットに薬剤を散布することができるので、田植機100の部品点数や製造コストを低減することが可能になる。
【0039】
また、前記繰出部42を、下開口部47cが形成された繰出ケース47と、該繰出ケース47に内包されて枢支される繰出ロール45と、から構成し、該下開口部47cを左右に分割する第1の仕切り部材72と、分割されたそれぞれの開口部を更に分割する第2の仕切り部材73L・73Rと、を固設して、該開口部に4つの繰出口73c・73c・74c・74cを形成したので、簡単な構成で繰出部42の下開口部47cに4つの繰出口73c・73c・74c・74cを設けることができるため、田植機100の部品点数や製造コストを低減することが可能になる。
【0040】
図2乃至図4に示す如く、散布部43は繰出部42に連結され、繰出部42により繰り出された薬剤を搬送し、苗マットへと施薬するものである。散布部43は主に分岐部材61、ガイドホース64・64・64・64、散布ノズル65・65・65・65、回転体66・66・66・66等から構成される。
分岐部材61は繰出ケース47の下部の下開口部47cに設けられる略漏斗状の部材であって、該分岐部材61の上面には上開口部61bが設けられるとともに、下端部には4箇所の開口部が設けられる。即ち、該分岐部材61の下部には、左前開口部61LF・左後開口部61LB・右前開口部61RF・右後開口部61RBが形成されており、前記繰出部42により繰り出され分岐部材61の内部へと落下してきた薬剤が、該4箇所の開口部61LF・61LB・61RF・61RBへと略均等に配分される。
【0041】
詳しくは、左側の前記前後仕切り板73Lの繰出口73cから落下した薬剤が前記左後開口部61LBへと、左側の前記外仕切り板74Lの繰出口74cから落下した薬剤が前記左前開口部61LFへと、右側の前記前後仕切り板73Rの繰出口73cから落下した薬剤が前記右後開口部61RBへと、右側の前記外仕切り板74Rの繰出口74cから落下した薬剤が前記右前開口部61RFへと落下していく構成となっている。
そして、分岐部材61の下端部に設けられた前記4箇所の開口部には、ガイドホース64・64・64・64の上端部が連結され、前述したように繰出部42及び分岐部材61によって4箇所の開口部61LF・61LB・61RF・61RBに略均等に配分された薬剤は、それぞれが対応するガイドホース64・64・64・64の中を滑落していく。
【0042】
このように、前記仕切り部材72・73L・73Rをそれぞれ平行に左右方向に並べて配設し、仕切り部材72・73L・73Rによって形成される前記繰出口73c・73c・74c・74cを前後方向に互いにずらして形成したので、繰出部42に連結する散布部43の搬送部材64・64・・・同士を干渉させることなく、薬剤散布装置10を小型化することができる。
【0043】
図2及び図3に示す如く、ガイドホース64・64・64・64は筒状の部材であり、その上端部が分岐部材61の下端部に連結され、その下部は後述する下前後フレーム58に各条ごとに連結固定されているホース支持部材60によって支持されている。該ガイドホース64・64・64・64の下端には散布ノズル65が配設されている。
下前後フレーム58に支持されたときのガイドホース64・64・64・64の姿勢は、ガイドホース64・64・64・64の上端部が機体後方かつ上方を向き、ガイドホース64・64・64・64の下端部が機体前方かつ下方を向く、つまり、苗載台16下部方向に向くように定められている。
図3に示すように、本発明の薬剤散布装置10は、4条分の苗マット載置部86・86・86・86の略中央部に配設されており、本実施例における8条乗用田植機100の場合には、苗載台16の上方に2台の薬剤散布装置10・10が配設される。
【0044】
次に、図2及び図3を用いて、支持フレーム53の詳細構成について説明する。
支持フレーム53は薬剤散布装置10・10を乗用田植機100の苗載台16の後上方に固定するための部材である。支持フレーム53は主に基部フレーム54・下支持柱55・上支持柱56・上横フレーム57・下前後フレーム58等から構成されている。
基部フレーム54は支持フレーム53の下部を成す部材であり、植付ケース21の後部に固定される。下支持柱55及び上支持柱56は略角柱形状の部材であり、該下支持柱55の下端部が基部フレーム54に固設され、上端部には上支持柱56下端部が回動可能に連結されている。該上支持柱56は、その上端部が植付ケース21から略上方となる姿勢に保持される。
【0045】
上横フレーム57は上支持柱56の上端に左右方向に横設される略角柱形状の部材である。尚、隣り合う薬剤散布装置10・10にそれぞれ対応する上横フレーム57・57を図示しない連結フレーム等で連結し、支持フレーム53の剛性を更に向上させることが可能である。下前後フレーム58は、下支持柱55と上支持柱56との連結部において前方へ向けて横設される棒状の部材であって、その前端部には左右方向にホース用横フレーム59が横設されている。該ホース用横フレーム59には、苗載台16の各条ごとにホース支持部材60・60・・・が固設されており、それぞれのホース支持部材60・60・・・によって前記ガイドホース64・64・・・の下部が支持されている。
ステー50・50は上横フレーム57から前方かつ上方に突設される部材であり、該ステー50・50に薬剤散布装置10・10の薬剤ホッパ41及び繰出ケース47・47が固設される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施例に係わる乗用田植機の全体構成を示した側面図。
【図2】同じく乗用田植機後部を示した側面図。
【図3】同じく背面図。
【図4】薬剤繰出部42を示す一部側面断面図。
【図5】同じく平面図。
【図6】同じく背面図。
【符号の説明】
【0047】
10 薬剤散布装置
16 苗載台
41 薬剤ホッパ
42 薬剤繰出部
43 薬剤散布部
45 繰出ロール
47 繰出ケース
47c 開口部(下開口部)
49 繰出軸(ロール軸)
64 搬送部材(ガイドホース)
72 第1の仕切り部材(左右仕切り板)
73L・73R 第2の仕切り部材(前後仕切り板)
73c 繰出口
74L・74R 外仕切り板
74c 繰出口
100 田植機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤ホッパと、
該薬剤ホッパの薬剤を散布部へ繰り出す繰出部と、
該繰出部によって繰り出された薬剤を散布する散布部と、を具備する薬剤散布装置において、
該繰出部の繰出ケース内下部に繰出軸と直角方向に複数の仕切り板を平行に配置し、繰出口を複数形成したことを特徴とする薬剤散布装置。
【請求項2】
前記繰出部を、
開口部が形成された繰出ケースと、
該繰出ケースに内包されて枢支される繰出ロールと、から構成し、
該開口部を左右に分割する第1の仕切り部材と、
分割されたそれぞれの開口部を更に分割する第2の仕切り部材と、を固設して、該開口部に4つの繰出口を形成したことを特徴とする請求項1に記載の薬剤散布装置。
【請求項3】
前記仕切り部材をそれぞれ平行に左右方向に並べて配設し、
該仕切り部材等によって形成される前記繰出口を前後方向にずらして形成したことを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の薬剤散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−48667(P2008−48667A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228401(P2006−228401)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】