説明

薬剤蒸散装置

【課題】誘眠作用を効果的に高めることができる薬剤蒸散装置を提供する。
【解決手段】芳香成分を有する薬剤を含浸させた担持体4と、担持体4を収容する装置本体2と、装置本体2の内部に配置された光源6とを備え、装置本体2は、芳香成分を外部に蒸散させるための蒸散口22と、光源6による誘眠光を外部に放出する光透過部とを有し、前記光透過部を透過した誘眠光は、照度が11〜36ルクスであり、且つ、色相がPCCS色相環で色相番号7〜15であり、前記芳香成分は、ウッディー系の香料成分を主成分として含む薬剤蒸散装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香成分を蒸散させる薬剤蒸散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤蒸散装置は、殺虫、殺菌、芳香、消臭など種々の目的のために従来から使用されている。蒸散させる薬剤として、誘眠作用を生じさせるものが公知であり、例えば、特許文献1には、オリス系香料、サンダルウッド系香料及びローズ系香料を含む誘眠香料組成物が開示されている。
【特許文献1】特開平7−316582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、誘眠作用を有する芳香成分は、蒸散量に比例して誘眠効果が高まるものではないため、芳香成分の蒸散のみによる誘眠作用の改善には限界があった。
【0004】
そこで、本発明は、誘眠作用を効果的に高めることができる薬剤蒸散装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の前記目的は、芳香成分を含有する薬剤を含浸させた担持体と、前記担持体を収容する装置本体と、前記装置本体の内部に配置された光源とを備え、前記装置本体は、前記芳香成分を外部に蒸散させるための蒸散口と、前記光源から放出された誘眠光を外部に透過する光透過部とを有し、前記光透過部を透過した誘眠光は、照度が11〜36ルクスであり、且つ、色相がPCCS色相環で色相番号7〜15であり、前記芳香成分は、ウッディー系の香料成分を主成分として含む薬剤蒸散装置により達成される。
【0006】
誘眠光の照度は、環境照度が6ルクス以下の場合に、光透過部の表面における光源から最も近い位置から光源の放出方向に5cm離れた測定位置において、照度計を用いて測定した値である。
【0007】
また、PCCS(Practical Color Co-ordinate System)とは、財団法人日本色彩研究所が開発した表色系で、色相及びトーンによって色を分類するものであり、実用的な観点から広く利用されている。PCCS色相環は、心理四原色(赤、黄、緑、青)を色相分割の基本として、色相番号1〜24からなる24種類の色相を環状に配置したものである。
【0008】
また、芳香成分については、ウッディー系の香料成分を主成分として含むものが好適であるが、ここでの主成分とは、ウッディー系の香りを臭覚により判別可能である限り、他の芳香成分を含むことを許容する趣旨である。
【0009】
上記の薬剤蒸散装置は、前記装置本体に収容された前記担持体を加熱して前記芳香成分の蒸散を促す発熱体を更に備えることが好ましい。
【0010】
また、液状である前記薬剤を貯留する薬剤容器を更に備えることも可能であり、この場合、前記担持体は、その一部が前記薬剤容器内の薬剤に浸漬されている構成にすることができる。
【0011】
また、前記光透過部は、前記誘眠光を散乱させる散乱部を備えることが好ましい。この場合、前記散乱部は、前記光透過部において光半透過性材料により形成された部分を含むことができる。
【0012】
また、前記装置本体が電源プラグを備える構成においては、前記光透過部が、少なくとも前記光源を挟んで前記電源プラグと反対側に形成されていることが好ましい。
【0013】
また、前記装置本体は、光反射性材料からなる基体と、前記光透過部を有するカバー部とを備えることができる。この構成においては、前記カバー部は、前記基体全体を覆うように、前記基体との間に隙間をあけて配置され、 前記光源は、前記基体とカバー部との隙間に照明光を放出するように配置されることが好ましい。
【0014】
また、前記光透過部は、曲板状に形成されており、前記光源側からみて内側に湾曲していることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の薬剤蒸散装置によれば、誘眠作用を効果的に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実態形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る薬剤蒸散装置の平面図であり、図2は、一部を図1のA−A断面で示す側面図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、薬剤蒸散装置1は、基体10及びカバー部20から構成される装置本体2と、装置本体2の内部に着脱自在に収容される担持体4と、装置本体2の内部に配置された光源6とを備えている。
【0018】
基体10は、光反射性材料により容器状に形成されており、上部開口が蓋部材11により覆われている。光反射性材料としては、可視光反射性を有する材料であれば特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂などの種々の樹脂に、白色の顔料や染料などを分散させたものや、ステンレス、アルミなどの金属材料を挙げることができる。
【0019】
蓋部材11は、耐熱性及び電気絶縁性に優れた樹脂などから形成することができ、一部を凹ませることにより、担持体4を収容可能な収容部12を備えている。収容部12の外周面には、金属製の有底筒状の伝熱体13が嵌合されており、伝熱体13の底部下面側には、PTCヒータなどの電熱ヒータからなる面状の発熱体14が密着状態で設けられている。
【0020】
また、基体10は、底部に放出口10aが形成されており、光源6は、放出口10aを介して下方に向けて誘眠光を放出するように配置されている。誘眠光とは、誘眠作用を生じさせる光をいい、通常の照明を目的とする光に比べて照度が低い光である。誘眠光の具体的な照度については、後述する。
【0021】
誘眠光を放出する光源6として、本実施形態においては緑色発光ダイオードを使用しているが、蛍光灯、ネオン管、白熱球など他の照明器具を用いてもよい。
【0022】
基体10の側面には、電源プラグ16及びスイッチ17が設けられており、電源プラグ16を介して発熱体14及び光源6に通電可能に構成されている。本実施形態においては、スイッチ17の操作により、発熱体14及び光源6への通電が一体的に行われるように構成しているが、発熱体14及び光源6への通電を個別に行えるように構成してもよい。
【0023】
カバー部20は、光透過性材料からなり、基体10の全体を覆うように配置され、開口部20a,20bを介して、電源プラグ16及びスイッチ17をそれぞれ突出させている。光透過性材料としては、少なくとも誘眠光を外部において視認可能な程度の可視光透過性を有する材料であれば特に限定されないが、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの光透過性樹脂や、セラミックス、ガラスなどを例示することができ、更に、これらの樹脂に顔料や染料を適量分散させた樹脂や、磨りガラスなど、光半透過性材料も含まれる。
【0024】
カバー部20に対する基体10の位置決めは、電源プラグ16が開口部20aに嵌合することにより行われ、この状態で基体10とカバー部20との間には、全体にわたって隙間が形成される。カバー部20は、基体10の上部を着脱自在に覆うキャップ21を備えており、キャップ21を外した状態で、収容部12に担持体4を収容することができる。キャップ21における収容部12の直上には、担持体4の薬剤を外部に蒸散させる蒸散口22が形成されている。カバー部20の側面には、複数の通気口23が形成されており、蒸散口22からの薬剤の蒸散に伴い、基体10とカバー部20との間に外気が導入される。
【0025】
担持体4は、フェルトやパルプなどからなる棒状の部材であり、先端部が僅かに突出するように収容部12に収容される。担持体4には、殺虫剤、殺菌剤、芳香剤、消臭剤などの液状の各種薬剤に適宜添加剤を含むものを含浸させることが可能であるが、本実施形態においては、誘眠作用を生じる芳香成分を少なくとも含む薬剤を含浸させたものを使用する。このような芳香成分としては、「サンダルウッド」、「パイン」などのウッディー系香料が特に好適である。
【0026】
担持体4の材料は、フェルトやパルプ以外に、木綿、レーヨン、アセテート、合成樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン+ポリプロピレン混合物、ポリエチレンテレフタレート、メラミン等)、不織布、石綿、無機質成型物等を例示することができるが、特に、フェルト芯、素焼芯、パルプ芯、合成樹脂芯または無機質成型芯が好ましい。また、担持体4の形状は、本実施形態のような棒状のものに限られず、平板状、リング状など種々の形状とすることが可能である。
【0027】
以上の構成を備える薬剤蒸散装置1によれば、装置本体2の収容部12に担持体4を収容した状態で、家庭やオフィスなどの壁面に設置されたコンセントに電源プラグ16を差し込むことにより、発熱体14及び光源6に通電可能となる。
【0028】
発熱体14は、伝熱体13及び収容部12を介して担持体4を加熱する。これにより、担持体4に含浸された芳香成分の蒸発が促され、蒸発した芳香成分は、蒸散口22を介して外部に蒸散する。
【0029】
また、光源6からは、基体10の底部から下方に向けて、誘眠光が基体10とカバー部20との間に放出される。この誘眠光は、基体10とカバー部20との隙間において、光反射性材料からなる基体10の表面で反射を繰り返しながら光透過性材料からなるカバー部20を透過することにより、カバー部20の全体から外部に放出される。
【0030】
このように、本実施形態の薬剤蒸散装置1は、芳香成分の蒸散による誘眠作用と、誘眠光の放出による誘眠作用との相乗効果により、誘眠作用を効果的に高めることが可能である。
【0031】
後述する本発明者らの実験結果によれば、特定の色相及び照度を有する誘眠光と、特定の芳香成分との組み合わせにより、顕著な誘眠効果が得られることが明らかになった。すなわち、カバー部20を透過した誘眠光の色相は、PCCS色相環で色相番号7〜15(黄〜深緑)であることが好ましく、色相番号11〜13(緑)がより好ましい。また、誘眠光の照度については、大きすぎると誘眠効果を妨げるおそれがある一方、小さすぎると芳香に誘眠光を組み合わせることの効果が得にくくなることから、11から36ルクスであることが好ましく、11から23ルクスであることがより好ましい。ここで、誘眠光の照度とは、環境照度が6ルクス以下の場合に、薬剤蒸散装置1のカバー部20表面における光源6から最も近い位置Pから、誘眠光の放出方向に5cm離れた位置で、照度計(品番「ANA−F9」、TOKYO PHOTO-ELECTRIC CO.LTD.製)により測定した値である。誘眠光の照度は、通電する光源6の数や、光源6への通電量を制御可能なスイッチなどの光度調整手段を設けることにより、調整可能に構成してもよく、これによって、環境照度や個人差に応じて照度を最適な値に設定することができる。
【0032】
このような色相及び照度を有する誘眠光の下で、ウッディー系香料成分を蒸散させることにより、特に大きな誘眠効果を奏することができる。ウッディー系の香料としては、サンダルウッド、セダーウッド、パイン、グアイアック、ベンゾイン、アビエス、ひば、ひのき、クロモジなどを例示することができる。これらに例示される植物由来の精油の抽出部位は、樹木の幹及び根である。
【0033】
このような香料の種類と誘眠光の色相及び強度との最適な組み合わせは、それぞれを個別に最適化したもの同士を単に組み合わせて得られるものではない。特に、PCCS色相環で色相番号が7〜15の光は、黄〜深緑の色にほぼ対応するものであり、従来においては入眠を阻害するものとして知られていたが、光の照度を従来よりも大幅に低く設定すると共にウッディー系の香料と組み合わせることにより、顕著な誘眠効果が得られるという知見は、本発明者らが多種多様な組み合わせによる実験を行うことによって初めて得られたものである。
【0034】
また、本実施形態においては、カバー部20の全体が、誘眠光を外部に放出する光透過部を構成しているが、一部のみに光透過部を構成してもよい。いずれの場合においても、光透過部には、光源6からの誘眠光を散乱させる散乱部を設けてもよく、これによって、散乱部の全体から柔らかな光を略均一に放出することが可能になり、誘眠効果を高めることができる。ここで「散乱」とは、誘眠光が散乱部において屈折または反射して種々の方向に拡散する現象をいう。散乱部の具体例としては、光透過部において光半透過性材料により形成された部分を含む構成、光透過部の内面側及び外面側の一方又は双方に施された凹凸部を含む構成、光透過部を構成する光透過性樹脂やガラスなどの内部に散在させた微細な粒子を含む構成などを挙げることができ、これらの2つ以上を組み合わせた構成であってもよい。微細な粒子には、顔料、染料、気泡などが含まれる。
【0035】
また、光透過部の可視光透過率は、高すぎると装置本体2の内部で可視光がほとんど反射せずに外部に放出されるため、光透過部全体からの放出が困難になる一方、小さすぎると照度が低下するおそれがあることから、40〜80%が好ましく、50〜70%がより好ましい。
【0036】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、本実施形態においては、発熱体14に通電して担持体4を加熱することにより、担持体4に含浸された薬剤の蒸散を促すように構成しているが、発熱体14を設けずに、担持体4に含浸された薬剤の芳香成分を自然蒸散させるように構成することも可能である。
【0037】
また、本実施形態においては、光反射性材料からなる基体10と、光透過性材料からなるカバー部20との間に隙間を形成し、基体10の底部から下方に向けて誘眠光を放出することにより、カバー部20全体からの放出を促して、芳香と誘眠光との組み合わせによる誘眠効果を確実に得られるように構成しているが、誘眠光を放出する光源6の配置は必ずしも本実施形態のものに限定されず、例えば、基体10の側部から基体10とカバー部20との隙間に誘眠光を放出するように、光源6を配置してもよい。更に、カバー部20は必ずしも必要ではなく、これを設けない構成とすることも可能である。
【0038】
また、本実施形態においては、光源6を一つ配置しているが、光源6を複数配置してもよい。この場合でも、上記のような散乱部を備える構成とすることにより、ほんのりと全体を優しく光らせることができる。
【0039】
また、本発明の他の実施形態として、図3に示す構成を挙げることができる。図3において、図1及び図2と同様の構成部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0040】
薬剤蒸散装置100は、棒状の担持体4を保持する薬剤容器40を、本体部201及びカバー部202からなる装置本体200の内部に収容することにより構成されている。装置本体200は、本体部201が光反射性材料からなる一方、カバー部202が光透過性材料からなり、カバー部202が、装置本体200の光透過部を構成する。また、薬剤容器40は、例えばガラスにより構成することができ、内部に芳香成分を有する液状の薬剤Lが貯留されている。
【0041】
本体部201は、担持体4及び薬剤容器40の上部を所定の位置に保持する保持部201aを備えており、更に、加熱ヒータ201b及びファン201cを備えている。また、カバー部202は、ファン201cと対向する位置に蒸散口22が形成されており、本体部201に嵌合されている。カバー部202の内面側には、光源6及び突片202aとが設けられており、突片202aは、薬剤容器40の側壁外面に形成された係合部と係合する。薬剤容器40は、本体部201とカバー部202との間に下方から挿入可能であり、突片202aとの係合によって着脱自在に支持される。
【0042】
光透過部を構成するカバー部202は、光源6側からみて内側に湾曲するように形成されており、光源6の誘眠光がカバー部202の全体から放出し易いように構成されている。
【0043】
カバー部202の外面には、意匠シート50が装着されている。意匠シート50は、光透過性樹脂やガラスなどの光透過性材料からなるシートに、図柄や写真などを印刷や貼着などの手段で施すことにより形成され、側縁に設けられた差込片(図示せず)をカバー部202の差込スリット(図示せず)に挿入することにより、カバー部202に密着するように保持される。カバー部202への意匠シート50の装着は、取り外し可能であってもよく、或いは、一体化されていてもよい。
【0044】
加熱ヒータ201b、ファン201c及び光源6は、電源プラグ16を壁面のコンセントに装着することで、スイッチ17の操作により通電される。
【0045】
以上の構成を有する薬剤蒸散装置100によれば、担持体4が、薬剤容器40の薬剤Lに浸漬された状態で装置本体200に収容されており、蒸散させる薬剤を薬剤容器40から吸い上げて補充することができる。したがって、光源6による誘眠光の放出と薬剤の蒸散との組み合わせによる誘眠効果を長時間維持することができる。
【0046】
また、光透過部には意匠シート50が配置されているので、所望の図柄や写真を誘眠光により浮き上がらせて、意匠的な効果からも誘眠作用を促すことができる。
【0047】
また、薬剤蒸散装置100における透過部は、装置本体200の一部に形成されたものであり、光源15を挟んで電源プラグ16と反対側に形成されているので、電源プラグ16を壁面のコンセントに装着した際に、睡眠姿勢の使用者に対して誘眠光を確実に放出することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
香料の種類と誘眠光の色相との種々の組み合わせに対する誘眠効果の違いを調べるため、以下の実験を行った。
【0050】
被験者が恒温恒湿室の中央に設置した椅子に着席した状態で、本願の図1及び図2に示す薬剤蒸散装置を用いて、PCCS色相環での色相番号に基づく7種類の誘眠光、及び、6種類の香りの組み合わせを被験者に提示し、5分後におけるリラックスの程度を、被験者の自己申告により数値化した。
【0051】
恒温恒湿室は、温度を23.5〜24.2℃、湿度を43〜46%にそれぞれ維持し、環境照度を0〜6ルクスとした。また、誘眠光の照度は、図2のP点から鉛直下方に5cmの位置で23ルクスに設定し、薬剤蒸散装置から被験者までの距離は、0.5〜1.0mの範囲に設定した。
【0052】
誘眠光は、赤色に対応する色相番号1〜3、橙色に対応する色相番号4〜6、黄色に対応する色相番号7〜10、緑色に対応する色相番号11〜13、深緑色に対応する色相番号14〜15、青色に対応する色相番号16〜19、紫色に対応する色相番号20〜24の合計7種類とし、香料は、ウッディー系の香料として「サンダルウッド」及び「パイン」、ハーブ系の香料として「ラベンダー」及び「ゼラニウム」、フローラル系の香料として「ローズ」及び「リンデン」の合計6種類とした。誘眠光の色相番号の特定は、図2のP点に白色紙(Askul社 マルチペーパースーパーエコノミー(秤量:約64g/m2 紙厚:約90μm 白色度:約87%))を貼り合わせ、この白色紙に対して光源6と反対側の位置から、白色紙に写る色を5名のパネラーが目視評価することで行った。
【0053】
リラックスの程度は7段階で評価し、とてもリラックスできた場合を「6点」、リラックスできた場合を「5点」、どちらかといえばリラックスできた場合を「4点」、リラックスできたか否かどちらとも言えない場合を「3点」、あまりリラックスできなかった場合を「2点」、リラックスできなかった場合を「1点」、全くリラックスできなかった場合を「0点」とした。
尚、本発明者らは、このようにして測定したリラックスの程度が誘眠効果の程度と相関関係を有することを、事前に確認している。
【0054】
この実験結果を図4に示す。図4から明らかなように、香料が「サンダルウッド」及び「パイン」のウッディー系香料であり、且つ、誘眠光が黄色光、緑色光または深緑色光である場合(すなわち、色相番号が7〜15)に、他の香料及び誘眠光の組み合わせと比較して大きなリラックス効果(誘眠効果)が得られており、特にウッディー系香料と緑色光(すなわち、色相番号が11〜13)との組み合わせにおいて、より顕著なリラックス効果(誘眠効果)が得られている。この結果から、同じくウッディー系の香料であるセダーウッド、グアイアック、ベンゾイン、アビエス、ひば、ひのき、クロモジなどについても、色相番号が7〜15の誘眠光との組み合わせにより、顕著な誘眠効果を奏するものと推測される。
【0055】
(実施例2)
実施例1と同様の薬剤蒸散装置を用いて、誘眠光の照度が誘眠効果にどのような影響を与えるかを調べるため、サンダルウッド香料と色相番号が11〜13の誘眠光との組み合わせに基づき、以下の実験を行った。
【0056】
実験は5名の被験者の各寝室で行い、環境照度を0〜6ルクスとした。また、薬剤蒸散装置から睡眠姿勢の被験者までの距離は、0.5〜1.0mの範囲に設定した。誘眠光の照度は、図2のP点から鉛直下方に5cmの位置で測定し、異なる照度で被験者が実際に睡眠をとった後、被験者には、「中高年・高齢者を対象としたOSA睡眠調査票(MA版)の開発と標準化 脳と精神の医学 第10巻第4号1999年」に従って、起床直後に「OSA睡眠調査票MA版」への記入を依頼した。
【0057】
「OSA睡眠調査票MA版」は、「疲れが残っている」、「集中力がある」など20の質問項目から構成されており、それぞれ4つの選択肢から選択して記入する。この結果から、睡眠に関する5つの因子(起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、疲労回復、睡眠時間)のそれぞれについて得点を算出することができる。各因子について、被験者5名の平均得点を照度毎に算出した結果を図5に示す。
【0058】
実験に際しては、食事と入浴の時刻を指定し、食事についてはコーヒーや紅茶などカフェインを含有する食品、バナナやチーズなどのカテコールアミンを含有する食品、およびアルコールを含有する食品の摂取は控えるよう 指示した。また日中において昼寝および過度の激しい運動は行わないことを指示し、自宅以外では就寝しないこと、就寝時刻を22時から0時の間とすること、起床時刻を6時から8時の間とするように指示した。こうして、被験者の眠気が実験日によってばらつきを生じないようにした。
【0059】
図5において、条件2〜6は、誘眠光の照度がそれぞれ0ルクス、11ルクス、23ルクス、36ルクス、45ルクスの場合を示している。また、条件1は、これらに対する比較例であり、誘眠光及び香料をいずれも使用しない場合である。図5から明らかなように、誘眠効果と関連性が高い第2因子(入眠と睡眠維持)については、照度が11〜36ルクスの範囲で良好な誘眠効果が得られており、特に照度が11〜23ルクスの範囲で顕著である。照度が11〜23ルクスの場合は、他の照度の場合と比較して、第1因子(起床時眠気)や第4因子(疲労)に関しても、改善効果を確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態に係る薬剤蒸散装置の平面図である。
【図2】一部を図1のA−A断面で示す側面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る薬剤蒸散装置を一部断面で示す側面図である。
【図4】本発明による誘眠効果を示す実験データである。
【図5】本発明による誘眠効果を示す他の実験データである。
【符号の説明】
【0061】
1 薬剤蒸散装置
2 装置本体
4 担持体
6 光源
10 基体
12 収容部
14 発熱体
16 電源プラグ
20 カバー部
22 蒸散口
40 薬剤容器
50 意匠シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香成分を含有する薬剤を含浸させた担持体と、
前記担持体を収容する装置本体と、
前記装置本体の内部に配置された光源とを備え、
前記装置本体は、前記芳香成分を外部に蒸散させるための蒸散口と、前記光源から放出された誘眠光を外部に透過する光透過部とを有し、
前記光透過部を透過した誘眠光は、照度が11〜36ルクスであり、且つ、色相がPCCS色相環で色相番号7〜15であり、
前記芳香成分は、ウッディー系の香料成分を主成分として含む薬剤蒸散装置。
【請求項2】
前記装置本体に収容された前記担持体を加熱して前記芳香成分の蒸散を促す発熱体を更に備える請求項1に記載の薬剤蒸散装置。
【請求項3】
液状である前記薬剤を貯留する薬剤容器を更に備え、
前記担持体は、その一部が前記薬剤容器内の薬剤に浸漬されている請求項1または2に記載の薬剤蒸散装置。
【請求項4】
前記光透過部は、前記誘眠光を散乱させる散乱部を備える請求項1から3のいずれかに記載の薬剤蒸散装置。
【請求項5】
前記散乱部は、前記光透過部において光半透過性材料により形成された部分を含む請求項4に記載の薬剤蒸散装置。
【請求項6】
前記装置本体は、電源プラグを備えており、前記光透過部が、少なくとも前記光源を挟んで前記電源プラグと反対側に形成されている請求項1から5のいずれかに記載の薬剤蒸散装置。
【請求項7】
前記装置本体は、光反射性材料からなる基体と、前記光透過部を有するカバー部とを備えており、
前記カバー部は、前記基体全体を覆うように、前記基体との間に隙間をあけて配置され、
前記光源は、前記基体とカバー部との隙間に照明光を放出するように配置される請求項1から6のいずれかに記載の薬剤蒸散装置。
【請求項8】
前記光透過部は、曲板状に形成されており、前記光源側からみて内側に湾曲していることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の薬剤蒸散装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−325912(P2007−325912A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21969(P2007−21969)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】