説明

薬剤調製用具

【課題】プレフィルドシリンジ内の医療用液体のみが投与されることがなく、調製済み薬剤を吸引したシリンジの準備作業が容易である薬剤調製用具を提案する。
【解決手段】薬剤調製用具1は、外筒10、キャップ30を備えるプレフィルドシリンジ3と、薬剤容器4と、アダプタ2とを備える。アダプタは、アダプタ本体20と、アダプタ本体内を移動可能な穿刺具7を備える。穿刺具は、シリンジのキャップを装着可能な装着部と穿刺具側係合部73aと、中空針71を備える。アダプタ本体は、穿刺具の突出部を誘導する誘導路を備え、誘導路は、周方向誘導路86a、周方向誘導路と連続する軸方向誘導路85a、周方向誘導路に設けられた穿刺具回転規制用突起88a、軸方向誘導路に設けたれた穿刺具移動規制用突起89aを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレフィルドシリンジおよび薬剤容器を備えた薬剤調製用具に関する。
【背景技術】
【0002】
プレフィルドシリンジとしては、薬液、薬剤溶解液などの医療用液体が充填された状態にて提供される。薬剤溶解液充填プレフィルドシリンジは、凍結乾燥製剤などの用時溶解が必要な粉末製剤を投与する際に用いられる。粉末製剤が収納された薬剤容器(バイアル)に、薬剤溶解液充填プレフィルドシリンジを接続し、シリンジ内の溶解液を薬剤容器に注入し、容器内の粉末製剤を溶解液に溶解させた後、シリンジ内に吸引することにより、投与可能となる。薬剤溶解液充填プレフィルドシリンジの粉末製剤収納薬剤容器への接続は、金属針を用いるのが一般的であるが、最近では、専用のコネクターを用いる製品も提案されている。また、投与準備作業は、医療従事者だけでなく自己注射を必要とする患者自身によって行われる場合がある。特に患者による投与準備は、汚染が危惧される環境、不安定な場所で行われる可能性が少なくない。また、粉末製剤の溶解作業を失念し、プレフィルドシリンジ内の溶解液のみの投与、液漏れや接続部の外れなどを引き起こすおそれがある。
【0003】
特許第4216466号公報(特許文献1)には、以下のものが開示されている。
特許文献1の移転セット20は、特許文献1の図1に示されているように、チューブ状移転部材46と、該チューブ状移転部材に往復動可能に支持されている中央突き刺し部材48と、このアセンブリを覆って密閉するカップ状のキャップ50と、この移転セットを薬剤容器に固定するカラー部材52とを含む四つの構成部品からなっている。特許文献1の図1及び2に示されているように、チューブ状部材46の基端は、好ましくは図2に示されているような、鋭い先端縁56を具えた円形又は環状のシールリップ54を具えている。このチューブ状移転部材46の基端は、以下に述べるキャップ50の同心シールリップ86等の複数のシールリップを具えていることが判るであろう。開示されている実施例においては、チューブ状移転部材46は、更に、以下に詳述する図2に示されている半径方向のコネクター部分58を具えている。ルアーロック (Luer lock)60のようなコネクターが、チューブ状移転部材の開放末端62に隣接して設けられている。
【0004】
なお、特許文献1の薬剤容器移転セットすなわち流体移転アセンブリは、注射器や静脈注射用(IV)装置等と密閉された薬剤容器との間に流体的連通を確立するように構成されている。注射器と薬剤容器とは従来型のものであり、ISO標準によって製造されている。このため、チューブ状本体部分112のカラー部分すなわちチューブ状延長部129はノズル114の末端部分を越えて延び、その内面は針を注射器に接続するのに通常使用されている雌型のルアーロック又は雌型のねじ山を具えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4216466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のものでは、注射器は、ISO標準によって製造され、ノズルは、針を注射器に接続するのに通常使用されている雌型のルアーロック又は雌型のねじ山を具えているため、注射器内に薬剤溶解液が充填されている場合、溶解液のみの誤投与を起こす可能性がある。
本発明の目的は、プレフィルドシリンジ内に充填された医療用液体のみが投与されることを防止し、薬剤が収納された薬剤容器(バイアル)へのプレフィルドシリンジの接続、プレフィルドシリンジ内の医療用液体の薬剤容器への移行、薬剤が溶解された医療用液体のプレフィルドシリンジへの再収納が容易であるプレフィルドシリンジおよび薬剤容器を備えた薬剤調製用具を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 開口した先端部を有する外筒と、該外筒の前記先端部に装着され、中空針により刺通可能なシール部材により、前記先端部の開口をシールするとともに、ISO規格に適合したノズル部への接続部を有する医療用具への接続が不能であるキャップと、前記外筒内に収納された摺動可能なガスケットと、該ガスケットの後端に取り付け可能な押子と、前記外筒内に充填された医療用液体とからなるプレフィルドシリンジと、開口部を有する容器本体と該容器本体の前記開口部を封止するとともに中空針により刺通可能な封止部材と前記容器本体内に収納された薬剤とからなる薬剤容器と、前記封止部材にて封止された前記開口部に接続されたアダプタとを備えるプレフィルドシリンジおよび薬剤容器を備えた薬剤調製用具であって、
前記アダプタは、一端より他端まで貫通した筒状体であり、他端部に薬剤容器接続部を有するアダプタ本体と、前記アダプタ本体内に収納されかつ前記アダプタ本体内を前記一端側より前記他端方向に移動可能な穿刺具とを備え、
前記穿刺具は、前記プレフィルドシリンジの前記キャップが装着可能なキャップ装着部と穿刺具側係合部とを有する穿刺具本体と、該穿刺具本体に固定され、一端が前記キャップ装着部内に突出し、装着される前記キャップの前記シール部材を刺通可能である第1の針部と、他端が前記薬剤容器の前記封止部材を刺通可能である第2の針部とを有する中空針とを備え、
前記アダプタ本体は、前記穿刺具の前記穿刺具側係合部を一端側より他端側に誘導する誘導部を備えており、前記誘導部は、前記アダプタ本体の周方向に延びる周方向誘導部と、該周方向誘導部より前記アダプタ本体の軸方向に延び、かつ終端する軸方向誘導部と、前記周方向誘導部に設けられ、前記穿刺具側係合部と係合可能かつ前記穿刺具側係合部が強制通過可能な穿刺具回転規制部と、前記軸方向誘導路の前記終端より所定長一端側に設けられ、前記穿刺具側係合部と係合可能かつ前記穿刺具側係合部が強制通過可能であり通過後の前記穿刺具の移動を規制する穿刺具移動規制部とを備える薬剤調製用具。
【0008】
(2) 前記軸方向誘導部は、前記周方向誘導部と連続する部分に設けられた前記アダプタ本体の軸方向かつ斜めに延びる傾斜誘導部を備えている上記(1)に記載の薬剤調製用具。
(3) 前記穿刺具側係合部は、前記穿刺具本体の外面に設けられた突出部であり、 前記アダプタ本体の前記誘導部は、前記穿刺具の前記突出部を収納するとともに、前記突出部を一端側より他端側に誘導する誘導路である上記(1)または(2)に記載の薬剤調製用具。
(4) 前記誘導路は、前記アダプタ本体の一端より他端側に延びる穿刺具導入路と、前記穿刺具導入路より前記アダプタ本体の周方向に延びる前記周方向誘導部を形成する周方向誘導路と、該周方向誘導路より前記アダプタ本体の軸方向に延び、かつ終端する前記軸方向誘導部を形成する軸方向誘導路とを備える上記(3)に記載の薬剤調製用具。
(5) 前記穿刺具側係合部は、前記穿刺具本体の外面に設けられた突出部であり、前記アダプタ本体の前記穿刺具導入路は、前記穿刺具の前記突出部を収納するとともに、前記突出部を前記周方向誘導部に導入するための穿刺具誘導路であり、かつ、前記穿刺具導入路は、前記穿刺具導入路の壁面より内方に突出し、前記穿刺具の前記突出部が乗り越え可能な穿刺具離脱規制用突起を備えている上記(4)に記載の薬剤調製用具。
(6) 前記穿刺具は、前記穿刺具の前記突出部が前記穿刺具導入路の終端部に位置するように前記アダプタ本体内に収納されており、前記穿刺具の他端方向への移動が前記穿刺具導入路の底部により規制され、一端方向への移動が前記穿刺具離脱規制用突起により規制され、周方向への移動が、前記周方向誘導路の前記穿刺具回転規制部により規制され、実質的に動かない状態となっている上記(5)に記載の薬剤調製用具。
【0009】
(7) 前記アダプタ本体は、一端より他端まで貫通した筒状体であり、他端部に薬剤容器接続部を有するアダプタ外筒と、一端より他端まで貫通した筒状体であり、前記アダプタ外筒内に収納されたアダプタ内筒とからなり、前記誘導部は、前記アダプタ内筒が備えるものとなっている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の薬剤調製用具。
(8) 前記穿刺具は、前記穿刺具の前記穿刺具側係合部が、前記アダプタの前記軸方向誘導部を他端方向に移動する時に、前記穿刺具の前記第2の針部が、前記薬剤容器の前記封止部材を刺通するものである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の薬剤調製用具。
(9) 前記キャップは、前記外筒に離脱不能に取り付けられている上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の薬剤調製用具。
(10) 前記外筒の前記先端部は、ISO規格に適合したノズル部への接続部を有する医療用具への接続が不能となっている上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の薬剤調製用具。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプレフィルドシリンジおよび薬剤容器を備えた薬剤調製用具によれば、プレフィルドシリンジのキャップは、ISO規格に適合したノズル部への接続部を有する医療用具(例えば、注射針、三方活栓、輸液回路等のポート)への接続が不能となっているため、プレフィルドシリンジ内に充填された医療用液体のみが投与されることを防止する。そして、薬剤容器に装着されたアダプタの穿刺具に、プレフィルドシリンジをキャップ側より装着することにより、アダプタの穿刺具の中空針の第1の針部が、キャップのシール部材を刺通した状態となり、プレフィルドシリンジの若干の回転、その後の押し込みにより、プレフィルドシリンジを装着した穿刺具は、アダプタの他端側、言い換えれば、薬剤容器側に移動し、穿刺具の中空針の第2の針部が、薬剤容器の封止部材を刺通する。これにより、プレフィルドシリンジ内と薬剤容器内が連通する。そして、プレフィルドシリンジにプランジャを装着し、プランジャを押し込むことにより、プレフィルドシリンジ内の医療用液体(溶解液)が薬剤容器内に充填され、充填された医療用液体(溶解液)に薬剤容器の薬剤(粉末状薬剤)を溶解させることにより薬剤が調製される。そして、プランジャを引くことにより、調製された薬剤は、外筒内に収納され、その後、シリンジを回転させることにより、シリンジは、穿刺具より離脱し、調製済み薬剤を収納したシリンジを準備することができる。よって、本発明の薬剤調製具では、薬剤が収納された薬剤容器(バイアル)へのプレフィルドシリンジの接続、プレフィルドシリンジ内の医療用液体の薬剤容器への移行、薬剤が溶解された医療用液体のプレフィルドシリンジへの再収納の一連の操作を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明のプレフィルドシリンジおよび薬剤容器を備えた薬剤調製用具の外観図である。
【図2】図2は、本発明の薬剤調製用具に使用されるプレフィルドシリンジの拡大縦断面図である。
【図3】図3は、本発明の薬剤調製用具に使用されるアダプタ装着薬剤容器の拡大縦断面図である。
【図4】図4は、本発明の薬剤調製用具に使用されるプレフィルドシリンジの外筒およびキャップの拡大正面図である。
【図5】図5は、図4に示したプレフィルドシリンジのキャップの拡大縦断面図である。
【図6】図6は、図4に示したプレフィルドシリンジのキャップの下方から見た拡大斜視図である。
【図7】図7は、本発明の薬剤調製用具に使用されるアダプタの構成部品の拡大斜視図である。
【図8】図8は、本発明の薬剤調製用具に使用されるアダプタの穿刺具の拡大正面図である。
【図9】図9は、図8の縦断面図である。
【図10】図10は、図8に示した穿刺具の平面図である。
【図11】図11は、本発明の薬剤調製用具に使用されるアダプタのアダプタ内筒の拡大正面図である。
【図12】図12は、図11に示したアダプタ内筒の縦断面図である。
【図13】図13は、本発明の薬剤調製用具に使用されるアダプタのアダプタ外筒の拡大正面図である。
【図14】図14は、図13のA−A線断面図である。
【図15】図15は、本発明の他の実施例の薬剤調製用具に用いられるアダプタの拡大正面図である。
【図16】図16は、図15に示したアダプタの縦断面図である。
【図17】図17は、本発明のプレフィルドシリンジおよび薬剤容器を備えた薬剤調製用具の作用を説明するための説明図である。
【図18】図18は、本発明のプレフィルドシリンジおよび薬剤容器を備えた薬剤調用具の作用を説明するための説明図である。
【図19】図19は、本発明のプレフィルドシリンジおよび薬剤容器を備えた薬剤調製用具の作用を説明するための説明図である。
【図20】図20は、本発明のプレフィルドシリンジおよび薬剤容器を備えた薬剤調製用具の作用を説明するための説明図である。
【図21】図21は、本発明のプレフィルドシリンジおよび薬剤容器を備えた薬剤調製用具の作用を説明するための説明図である。
【図22】図22は、本発明のプレフィルドシリンジおよび薬剤容器を備えた薬剤調製用具の作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のプレフィルドシリンジおよび薬剤容器を備えた薬剤調製用具を図面に示す実施例に基づいて説明する。
本発明のプレフィルドシリンジおよび薬剤容器を備えた薬剤調製用具1は、開口した先端部13を有する外筒10と、外筒10の先端部13に装着され、中空針71により刺通可能なシール部材32により、先端部13の開口をシールするとともに、ISO規格に適合したノズル部への接続部を有する医療用具への接続が不能であるキャップ30と、外筒10内に収納された摺動可能なガスケット11と、ガスケット11の後端に取り付け可能なプランジャ5と、外筒10内に充填された医療用液体18とからなるプレフィルドシリンジ3と、開口部を有する容器本体41と容器本体41の開口部を封止するとともに中空針71により刺通可能な封止部材42と容器本体41内に収納された薬剤43とからなる薬剤容器4と、封止部材42にて封止された開口部に接続されたアダプタ2とを備える。
アダプタ2は、一端より他端まで貫通した筒状体であり、他端部に薬剤容器接続部61を有するアダプタ本体20と、アダプタ本体20内に収納され、かつアダプタ本体20内を一端側より他端方向に移動可能な穿刺具7とを備える。
【0013】
穿刺具7は、プレフィルドシリンジ3のキャップ30が装着可能なキャップ装着部74と穿刺具側係合部(具体的には、外面に設けられた突出部73a、73b)とを有する穿刺具本体70と、穿刺具本体70に固定され、一端がキャップ装着部74内に突出し、装着されるキャップ30のシール部材32を刺通可能である第1の針部71aと、薬剤容器の封止部材42を刺通可能である第2の針部71bとを有する中空針71とを備える。
アダプタ本体20は、穿刺具7の穿刺具側係合部73a,73bを一端側より他端側に誘導する誘導部を備えている。誘導部は、アダプタ本体20の周方向に延びる周方向誘導部(具体的には、周方向誘導路86a,86b)と、周方向誘導部86a,86bよりアダプタ本体20の軸方向に延び、かつ終端する軸方向誘導部(具体的には、軸方向誘導路85a,85b)と、周方向誘導部86a,86bに設けられ、穿刺具側係合部73a,73bと係合可能かつ穿刺具側係合部73a,73bが強制通過可能な穿刺具回転規制部(具体的には、穿刺具回転規制用突起88a,88b)と、軸方向誘導路85a,85bの終端より所定長一端側に設けられ、穿刺具側係合部73a,73bと係合可能かつ穿刺具側係合部73a,73bが強制通過可能であり通過後の穿刺具7の移動を規制する穿刺具移動規制部(具体的には、穿刺具移動規制用突起89a,89b)とを備えている。
【0014】
本発明の薬剤調製用具1は、図1に示すように、キャップ30にて封止されたプレフィルドシリンジ3と、薬剤容器4と、薬剤容器4に装着されたアダプタ2と、プランジャ5とを備える。そして、アダプタ2は、図1、図3に示すように、アダプタ本体20と、アダプタ本体20内を移動可能な穿刺具7とからなる。
プレフィルドシリンジ3は、外筒10と、外筒10の先端部13を封止するキャップ30と、外筒10内に収納されたガスケット11と、キャップ30とガスケット11により密封された外筒10内に収納(充填)された医療用液体18とからなる。
外筒10は、図1、図2および図4に示すように、本体部12と、先端部13と、フランジ14とを備える。本体部12は、ほぼ円筒状となっており、内部に液体収納空間を有している。
【0015】
先端部13は、本体部12の肩部より先端方向に突出している。先端部13は、外筒内の薬液等を排出するための先端開口部を備えるとともに、ISO規格に適合したノズル部への接続部を有する医療用具への接続が不能となっている。つまり、通常のシリンジの先端部が有するルアーテーパー状となっていない。特に、この実施例の外筒10では、先端部13は、本体部12との境界部に形成された拡径部15と、拡径部15に形成された凹部17(具体的には、向かい合う2つの凹部)と、先端部13の軸方向中央部付近に設けられたリブ16(具体的には、向かい合う2つのリブ)が設けられている。リブ16は、周方向に所定長延びるものとなっている。また、2つの凹部17と、2つのリブ16は、軸方向に重ならないように設けられている。特に、この外筒では、そして、各凹部17と各リブ16は、先端部13の中心軸に対して、ほぼ90度ずれたものとなっている。
また、先端部13の先端には、小径部18が形成されており、小径部18の先端が、開口している。
【0016】
フランジ14は、外筒10の後端全周より垂直方向に突出するように形成された楕円ドーナツ状の円盤部である。フランジ14は、図1、図2,図4に示すように向かい合う2つの把持部を備え、さらに、把持部の先端面側には、複数のリブが形成されている。
外筒10は、透明もしくは半透明材料により、必要に応じて、酸素透過性、水蒸気透過性の少ない材料により形成された筒状体である。
外筒10の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような樹脂が好ましい。
また、外筒10の先端部13は、後述するキャップ30によりシールされている。
【0017】
ガスケット11は、図2に示すようにほぼ同一外径にて延びる本体部と、この本体部に設けられた複数の環状リブを備え、これらリブが、外筒10の本体部12の内面に液密に接触する。
ガスケット11の形成材料としては、弾性を有するゴム(例えば、ブチルゴム、ラテックスゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴムなど)、熱可塑性エラストマー(例えば、SBSエラストマー、SEBSエラストマー、SEPSエラストマー等のスチレン系エラストマー、エチレン−αオレフィン共重合体エラストマー等のオレフィン系エラストマーなど)等を使用することが好ましい。
そして、ガスケット11には、その後端部より内部に延びる凹部が設けられ、この凹部が、プランジャ装着部11aとなっている。具体的には、プランジャ装着部11aは、雌ねじ状となっており、プランジャ5の先端部に形成されたガスケット装着部51の外面に形成された雄ねじ部と螺合可能となっている。両者が螺合することにより、プランジャ5は、ガスケット11に装着される。
プランジャー5は、図1に示すように、先端部に設けられたガスケット装着部51と、断面十字状の軸方向に延びる本体部50と、本体部の後端部に設けられた押圧部53と、本体部50の途中に設けられた補強用リブを備えている。この実施例のプランジャでは、プランジャ装着部の外面には、プランジャ装着部11aと螺合する雄ねじ部が形成されている。そして、プランジャ装着部11aとガスケット装着部51が螺合することにより、プランジャー5は、ガスケット11に接続される。
プレフィルドシリンジ3内に充填される医療用液体18としては、注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液などの薬剤溶解液、さらには、薬剤(例えば、ビタミン剤、ミネラル類)を含有するとともに、薬剤容器内の粉末製剤の溶解が可能な薬液でもあってもよい。
【0018】
キャップ30は、図2、図4ないし図6に示すように、本体部31と、本体部31内に収納されたシール部材32とを備える。
本体部31は、筒状体であり、先端に設けられた小径の開口部33と、基端に設けられたフランジ部35と、側部に設けられた窓部(具体的には、向かい合う2つの窓部36a,36b)と、窓部より先端側の外面に設けられたキャップ側螺合部34と、フランジ部35より一端側かつ窓部36a,36bより他端側に形成されたリブ38(複数の周方向リブ)と、基端部内面に設けられたリブ37を備えている。
この実施例のキャップ30では、窓部36a、36bは、外筒10の各リブ16を収納するためのものであり、周方向に所定長延びるものとなっている。外筒10のリブ16が、キャップ30の窓部36a、36bに進入し、係合することにより、外筒10からキャップが離脱することを防止する。よって、この実施例のプレフィルドシリンジ3では、キャップ30は、外筒10より離脱不能に装着されている。また、キャップ30が外筒10に装着された状態では、キャップ30の各リブ37は、外筒10の各凹部17に進入し、係合している。このため、キャップ30は、外筒10に対して回転不能となっている。よって、外筒10を回転させることにより、キャップ30は、追従し回転する。
【0019】
キャップの形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような樹脂が好ましい。
シール部材32は、本体部31の先端部内に収納され、開口部33を封止するとともに、図2に示すように、キャップ30が外筒10の先端部13に装着された状態では、外筒10の先端開口を液密に密封する。シール部材32としては、外筒10の先端部13の先端開口を液密に密封可能かつ後述する穿刺具7の第1の針部(外筒側穿刺部)が刺通可能な弾性部材であることが好ましい。
シール部材の形成材料としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等の合成ゴム、オレフィン系エラストマーやスチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー等を使用することが好ましい。
【0020】
次に、アダプタ2について、図1、図3、図7ないし図14、図18、図19を参照して説明する。
アダプタ2は、一端より他端まで貫通した筒状体であり、他端部に薬剤容器接続部61を有するアダプタ本体20と、アダプタ本体20内を一端側より他端方向に移動可能である穿刺具7とを備える。
そして、この実施例では、アダプタ本体20は、一端より他端まで貫通した筒状体であり、他端部に薬剤容器接続部61を有するアダプタ外筒6と、一端より他端まで貫通した筒状体であり、アダプタ外筒6内に収納されたアダプタ内筒8とからなり、穿刺具7は、アダプタ内筒8内を一端側より他端方向に移動するものとなっている。
アダプタ外筒6は、図3、図7、図13および図14に示すように、一端部および他端部が開口した筒状の本体部60とその基端部(下端)に設けられた薬剤容器接続部61とを有する。筒状本体部60は、全体がほぼ同一内径を有するものとなっている。筒状本体部60の基端部内面には、環状凹部64が設けられている。
薬剤容器接続部61は、図3に示すように封止部材42にてシールされた薬剤容器の開口部を含む一端側部分を収納する。また、アダプタ外筒6は、薬剤容器接続部61に装着された薬剤容器の離脱を抑制するための係合部を備えている。具体的には、図3および図14に示すように、アダプタ外筒6の薬剤容器接続部61の内面には、内方に突出し、薬剤容器の開口部44の下部(薬剤容器の首部の下部)と係合する複数の突起部63を備えており、この突起部66により係合部が構成されている。また、薬剤容器接続部61の基端部には、薬剤容器4への装着時の変形を補助するための複数の軸方向に延びるスリット62が設けられている。
【0021】
穿刺具7は、アダプタ本体20内、具体的には、アダプタ内筒8に収納され、アダプタ内筒8内を一端側より他端方向に移動可能(摺動可能)な部材である。
穿刺具7は、穿刺具本体70と、穿刺具本体70に固定された中空針71とを備える。
穿刺具本体70は、図7ないし図10に示すように、他端部に小径となった中空針固定部を有する短い筒状体であり、内部に、プレフィルドシリンジ3のキャップ30が装着可能なキャップ装着部74を備えている。具体的には、キャップ装着部74は、キャップ30の外面に設けられたキャップ側螺合部34と螺合する穿刺具側螺合部を備えている。この実施例では、キャップ側螺合部34が雄ねじを、穿刺具側螺合部が雌ねじを構成するものとなっている。さらに、穿刺具本体70は、一端側開口部付近に設けられた環状リブ75を備えている。この環状リブ75が、キャップ30のフランジ部より若干一端側に形成されたリブ38(複数の周方向リブ)と係合することにより、穿刺具7へのプレフィルドシリンジ3の装着後におけるシリンジ3(キャップ30)の離脱を規制する。また、穿刺具7は、穿刺具本体70に設けられた穿刺具側係合部を備えている。この実施例では、穿刺具側係合部は、穿刺具本体70の外面に設けられた突出部73a,73bにより構成されている。
【0022】
中空針71は、穿刺具本体70の中空針固定部72に固定されており、一端側は、固定部72よりキャップ装着部74内に突出し、その先端にキャップ30のシール部材32を刺通可能な第1の針部71a(シリンジ側穿刺部)を備えている。また、中空針71の他端側は、固定部72より外方(他端方向)に突出し、その先端に薬剤容器4の封止部材42を刺通可能な第2の針部71b(薬剤容器側穿刺部)を備えている。また、中空針71は、 アダプタ内筒8の中心軸にほぼ平行に延びるものとなっている。また、穿刺具7は、アダプタ本体20に装着される薬剤容器4に、中空針71の第2の針部17b(薬剤容器側穿刺部)が接触しない位置に、配置されている。具体的には、図3に示すように、穿刺具7は、穿刺具7の第2の針部71bが、装着される薬剤容器4の封止部材42に接触しないように、アダプタ2内に収納されている。また、穿刺具7は、図3に示すように、穿刺具7は、アダプタ本体20(アダプタ内筒8)の一端側開口より、若干他端側となる位置に、配置されている。
【0023】
そして、アダプタ本体20は、図3、図7、図11、図12、図18および図19に示すように、穿刺具7の穿刺具側係合部である突出部73a,73bを収納するとともに、突出部73a,73bを一端側より他端側に誘導する誘導路を備えている。特に、この実施例のアダプタ2では、誘導路は、穿刺具7を収納するアダプタ内筒8が備えるものとなっている。
具体的には、アダプタ本体20は、穿刺具7の突出部73a,73bを収納するとともに、突出部73a,73bを一端側より他端側に誘導する誘導路を備えている。誘導路は、アダプタ本体の一端より他端側に延びる穿刺具導入路84a,84bと、穿刺具導入路84a,84bよりアダプタ本体の周方向に延びる周方向誘導路86a,86bと、周方向誘導路86a,86bよりアダプタ本体の軸方向に延び、かつ終端する軸方向誘導路85a,85bと、穿刺具導入路84a,84bの壁面より内方に突出し、穿刺具7の突出部73a,73bが乗り越え可能な穿刺具離脱規制用突起87a,87bと、周方向誘導路86a,86bの壁面より内方に突出し、穿刺具7の突出部73a,73bが乗り越え可能な穿刺具回転規制用突起88a,88bと、軸方向誘導路85a,85bの終端より所定長一端側の壁面より内方に突出し、穿刺具7の突出部73a,73bが乗り越え可能である穿刺具移動規制用突起89a,89bとを備えている。
【0024】
つまり、この実施例では、穿刺具側係合部は、穿刺具本体70の外面に設けられた突出部73a,73bであり、アダプタ本体20の誘導部は、穿刺具7の突出部73a,73bを収納するとともに、突出部73a,73bを一端側より他端側に誘導する誘導路となっている。
なお、本発明において、穿刺具本体70の穿刺具側係合部と、アダプタ本体20の誘導部は、上記のようなものに限定されるものではなく、穿刺具本体70の穿刺具側係合部が溝状のものであり、アダプタ本体20の誘導部が、凸部となっているものであってもよい。
また、この実施例のものでは、アダプタ本体20の誘導路は、アダプタ本体20の一端より他端側に延びる穿刺具導入路84a,84bと、穿刺具導入路84a,84bよりアダプタ本体20の周方向に延びる周方向誘導部を形成する周方向誘導路86a,86bと、周方向誘導路86a,86bよりアダプタ本体20の軸方向に延び、かつ終端する軸方向誘導部を形成する軸方向誘導路85a,85bとを備えるものとなっている。
【0025】
さらに、この実施例のものでは、穿刺具回転規制部は、周方向誘導路86a,86bの壁面より内方に突出し、穿刺具7の突出部73a,73bが乗り越え可能な穿刺具回転規制用突起88a,88bであり、穿刺具移動規制部は、軸方向誘導路85a,85bの終端より所定長一端側の壁面より内方に突出し、穿刺具7の突出部73a,73bが乗り越え可能である穿刺具移動規制用突起89a,89bとなっている。
また、この実施例のものでは、穿刺具導入路84a,84bは、穿刺具導入路84a,84bの壁面より内方に突出し、穿刺具7の突出部73a,73bが乗り越え可能な穿刺具離脱規制用突起を備えている。そして、後述するように、この実施例のものでは、軸方向誘導路85a,85bは、周方向誘導路と連続する部分に設けられたアダプタ本体の軸方向かつ斜めに延びる傾斜誘導路を備えている。
【0026】
アダプタ内筒8は、図11および図12に示すように、筒状の本体部80と、本体部80の基端部(下端)に設けられたフランジ部81とを備える。筒状本体部80は、全体がほぼ同一内径を有するものとなっている。筒状本体部80の基端部外面には、アダプタ外筒6の本体部60の基端部内面に設けられた環状凹部64と係合する環状リブ83が設けられている。
そして、誘導路は、アダプタ内筒8の筒状本体部に形成されている。
誘導路は、アダプタ内筒8の一端より他端側に延びる穿刺具導入路84a,84bと、穿刺具導入路84a,84bよりアダプタ本体の周方向に延びる周方向誘導路86a,86bと、周方向誘導路86a,86bよりアダプタ本体の軸方向に延び、かつ終端する軸方向誘導路85a,85bを備えている。
さらに、この実施例のアダプタ2では、軸方向誘導路85a,85bは、周方向誘導路86a,86bと連続する部分に設けられたアダプタ本体の軸方向かつ斜めに延びる傾斜誘導路90a,90bを備えている。
さらに、アダプタ内筒8は、穿刺具導入路84a,84bの壁面より内方に突出し、穿刺具7の突出部73a,73bが乗り越え可能な穿刺具離脱規制用突起87a,87bと、周方向誘導路86a,86bの壁面より内方に突出し、穿刺具7の突出部73a,73bが乗り越え可能な穿刺具回転規制用突起88a,88bと、軸方向誘導路85a,85bの終端より所定長一端側の壁面より内方に突出し、穿刺具7の突出部73a,73bが乗り越え可能である穿刺具移動規制用突起89a,89bとを備えている。
また、上述したように、穿刺具7は、向かい合うように2つの突出部73a,73bを有しており、これに対応するように、アダプタ本体20(アダプタ内筒8)は、穿刺具7の2つの突出部73a,73bを誘導可能な2つの誘導路を備えている。
【0027】
各誘導路について、より詳細に説明する。
穿刺具導入路84a,84bは、図3、図7、図11、図12、図18および図19に示すように、アダプタ内筒8の一端より他端側に、アダプタ内筒8の中心軸に平行に所定長延びるものとなっており、また、その幅は、穿刺具7の突出部73a,73bを収納可能なものとなっている。このため、アダプタ本体20(アダプタ内筒8)に穿刺具7を第2の針部71b側より、さらに、突出部73a,73bが穿刺具導入路84a,84bに進入するように、挿入すると、穿刺具7は、突出部73a,73bが穿刺具導入路84a,84bの穿刺具離脱規制用突起87a,87bに当接するまで進入する。この穿刺具離脱規制用突起87a,87bが形成されている部分は、穿刺具導入路84a,84bの他の部分からみて狭小部となっている。さらに、穿刺具7を押すことにより、穿刺具7の突出部73a,73bが穿刺具導入路84a,84bの穿刺具離脱規制用突起87a,87bを乗り越え、穿刺具導入路84a,84bの底部に到達する。この状態が、図3に示す状態である。この状態において、穿刺具7の突出部73a,73bは、他端方向への移動が穿刺具導入路84a,84bの底部により規制され、一端方向への移動が穿刺具導入路84a,84bの穿刺具離脱規制用突起87a,87bにより規制され、周方向への移動(穿刺具7の回転)が、周方向誘導路86a,86bの穿刺具回転規制用突起88a,88bにより規制され、実質的に動かない状態となっている。
【0028】
そして、図11、図12、図18および図19に示すように、アダプタ内筒8は、穿刺具導入路84a,84bよりアダプタ本体の周方向に延びる周方向誘導路86a,86bを備えている。そして、穿刺具回転規制用突起88a,88bは、周方向誘導路86a,86bの始端部付近の底面より、上方に突出する小突起となっている。穿刺具7を若干回転させることにより、突出部73a,73bは、穿刺具回転規制用突起88a,88b上を摺接しながら、回動し、周方向誘導路86a,86bを進行し、完全に突出部73a,73bが、穿刺具回転規制用突起88a,88bを乗り越えることにより、突出部73a,73bの全体が周方向誘導路86a,86b内に収納される。アダプタ内筒8には、周方向誘導路86a,86bと連続する部分に設けられた傾斜誘導路90a,90bが設けられており、傾斜誘導路90a,90bは、図11および図12に示すように、アダプタ内筒8の他端方向(軸方向)かつアダプタ内筒の中心軸に対して所定角度斜めに延びるものとなっている。そして、傾斜誘導路90a,90bの他端は、軸方向誘導路85a,85bと連続している。軸方向誘導路85a,85bは、アダプタ内筒8の中心軸に平行に所定長延び、かつ、アダプタ内筒8の他端に到達することなく、終端している。特に、この実施例では、軸方向誘導路85a,85bは、アダプタ内筒8の軸方向中央付近にて終端している。
【0029】
そして、軸方向誘導路85a,85bは、その終端より若干一端側となる部分の内壁より突出する穿刺具移動規制用突起89a,89bを備えている。穿刺具7の突出部73a,73bは、穿刺具移動規制用突起89a,89bを乗り越え可能である。そして、穿刺具7の突出部73a,73bが穿刺具移動規制用突起89a,89bを乗り越え、突出部73a,73bが、軸方向誘導路85a,85bの終端と当接する状態では、他端方向への移動が軸方向誘導路85a,85bの底部(終端)により規制され、一端方向への移動が穿刺具移動規制用突起89a,89bにより規制され、周方向への移動(穿刺具7の回転)が、軸方向誘導路85a,85bの側部により規制され、実質的に動かない状態となる。軸方向誘導路85a,85bの穿刺具移動規制用突起89a,89bは、穿刺具7の突出部73a,73bが、穿刺具移動規制用突起89a,89bを乗り越えた後の穿刺具7の一端方向への移動を規制する。
【0030】
よって、この実施例では、穿刺具7は、穿刺具7の突出部73a,73bが、穿刺具離脱規制用突起87a,87bを乗り越え、穿刺具導入路84a,84bの下端に当接した状態にて、穿刺具7を回転させることにより、突出部73a,73bが周方向誘導路86a,86bを移動し、さらに、穿刺具7を軸方向下端側に押すことにより、第2の誘導路85a,85bを他端方向に移動するものとなっている。
また、穿刺具7は、穿刺具7の突出部突出部73a,73bが、第2の誘導路85a,85b(傾斜誘導路を含む)を他端方向に移動する時に、穿刺具7の第2の針部71bが、薬剤容器4の封止部材42を刺通する。
また、穿刺具導入路84aと84b、穿刺具離脱規制用突起87aと87b、周方向誘導路86aと86b、穿刺具回転規制用突起88aと88b、傾斜誘導路90aと90b、軸方向誘導路85aと85b、穿刺具移動規制用突起89aと89bは、それぞれアダプタ内筒8の中心軸に対してほぼ対称となるように形成されている。また、傾斜誘導路90a、90bを設けることが好ましいが、傾斜誘導路90a、90bを持たないものであってもよい。
【0031】
本発明の薬剤投与具に用いられる薬剤容器4は、開口部を有する容器本体41と、容器本体41の開口部を封止する封止部材42と、容器本体41内に収納された薬剤43とを備える。
容器本体41としては、開口部を有し、内部に薬剤43を収納可能なものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、硬質もしくは半硬質合成樹脂製容器、ガラス容器などが使用される。また、薬剤容器は、内部が減圧されたものであることが好ましい。開口部をシールする封止部材42としては、穿刺具7の中空針の第2の針部71bによる穿刺(刺通)が可能なものであればどのようなものでもよい。封止部材42としては、例えば、弾性を有するゴム(例えば、ブチルゴム、ラテックスゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴムなど)、合成樹脂(例えば、SBSエラストマー、SEBSエラストマー、SEPSエラストマー等のスチレン系エラストマー、エチレン−αオレフィン共重合体エラストマー等のオレフィン系エラストマーなど)等を使用することが好ましい。
薬剤としては、外筒10内に充填される医療用液体18(具体的には、溶解液)に溶解するものであれば、粉末状薬剤、凍結乾燥薬剤、固形状薬剤、液状薬剤などどのようなものであってもよい。薬剤としては、例えば、ビタミン剤(総合ビタミン剤)、各種アミノ酸、ヘパリンのような抗血栓剤、インシュリン、抗生物質、抗腫瘍剤、鎮痛剤、強心剤、静注麻酔剤、抗パーキンソン剤、潰瘍治療剤、副腎皮質ホルモン剤、不整脈用剤、ホルモン製剤、インターフェロン製剤、ヒト免疫グロブリン製剤、血液凝固因子製剤、ワクチン製剤などのタンパク製剤等が挙げられる。
【0032】
そして、上述した実施例において、アダプタ本体は、図15、図16に示すアダプタ本体20aのようなものであってもよい。このアダプタ本体20aでは、上述したアダプタ本体20のように、アダプタ外筒とアダプタ内筒を有するものではなく、1つの部材により構成されており、アダプタ本体20aの上部21が、上述したアダプタ内筒8の誘導路を有する上部部分と同じ形態となっており、下部22がアダプタ外筒6の薬剤容器接続部61を有する下部と同じ形態となっている。なお、アダプタ本体20aの上部21は、上述したアダプタ内筒が備える誘導路および突起を備えている。それら、構成については、上述したものと同じである。また、下部22における薬剤容器接続部の構成も、上述したアダプタ外筒が備えるものと同じである。
【0033】
次に、本発明の薬剤投与具の作用を図1、図3、図17ないし図20を用いて説明する。
本発明の薬剤投与具は、図1に示すように、アダプタ2が薬剤容器4に装着された状態となっており、プレフィルドシリンジ3、プランジャ5は、装着されていない状態となっている。なお、薬剤容器4は、アダプタ2に装着されず、使用時に装着するものであってもよい。
そして、初期状態では、図3に示し上述したように、穿刺具7は、アダプタ本体20(アダプタ内筒8)内に収納され、かつ、突出部73a,73bが、穿刺具導入路84a,84bの底部に位置し、一端方向への移動が穿刺具導入路84a,84bの穿刺具離脱規制用突起87a,87bにより規制され、周方向への移動(穿刺具7の回転)が、周方向誘導路86a,86bの穿刺具回転規制用突起88a,88bにより規制され、実質的に動かない状態となっている。
そして、プレフィルドシリンジ3をキャップ30側より、穿刺具7に挿入し、プレフィルドシリンジ3を回転させることにより、キャップ30の外面に設けられたキャップ側螺合部34と穿刺具7のキャップ装着部74に設けられている穿刺具側螺合部が螺合するとともに、穿刺具7の中空針71の第1の針部71aが、キャップ30のシール部材32を刺通した、図17に示す状態となる。この状態では、中空針71の内部とプレフィルドシリンジ3内とが連通した状態となっている。
【0034】
そして、プレフィルドシリンジ3を回転させると、図18に示すように、プレフィルドシリンジ3とともに穿刺具7が追従し、穿刺具7の突出部73a,73bが、穿刺具回転規制用突起88a,88bを乗り越え、周方向誘導路86a,86bを移動する。そして、このプレフィルドシリンジ3の回転操作において、穿刺具7の突出部73a,73bが、穿刺具回転規制用突起88a,88bを完全に乗り越えたとき、その抵抗が減少するため、一つの操作の終了を認識することができる。
そして、プレフィルドシリンジ3を軸方向下端側に押すことにより、穿刺具7は、追従し、軸方向誘導路の傾斜誘導路90a,90bを斜めに下降し、中空針71の第2の針部71bは、薬剤容器4の封止部材42に刺入する。さらに、プレフィルドシリンジ3を軸方向下端側に押すことにより、穿刺具7は、第2の誘導路85a,85bを下降(他端方向に移動)し、穿刺具7の第2の針部71bが、薬剤容器4の封止部材42を完全に刺通する。そして、穿刺具7の突出部73a,73bが、穿刺具移動規制用突起89a,89bに当接すると、抵抗が高くなり、さらに、プレフィルドシリンジを押し込むことにより、穿刺具7の突出部73a,73bが、穿刺具移動規制用突起89a,89bを乗り越えると、抵抗が減少するとともに、突出部73a,73bは、第2の誘導路85a,85bの終端に当接する図19および図20の状態となる。このプレフィルドシリンジの押圧操作において、抵抗の増加とその後の減少により、穿刺具による薬剤容器の接続操作の終了を容易に認識することができる。
【0035】
そして、図20の状態では、プレフィルドシリンジ3内と薬剤容器4内は、連通している。プレフィルドシリンジ3にプランジャ5を装着し、プランジャ5を押し込むことにより、プレフィルドシリンジ3内の医療用液体(薬剤溶解液)は、図21に示すように、薬剤容器4内に移行する。そして、医療用液体が注入された薬剤容器4を揺倒し、薬剤容器4内の薬剤を溶解し、薬剤調製を行う。そして、プランジャ5を引き、調製された薬剤19をシリンジ3内に吸引する。その後、調製薬剤19を吸引したプレフィルドシリンジ3aを回転させて、アダプタ2(穿刺具7)より離脱することにより、図22の状態となる。これにより、薬剤調製操作が終了する。
【符号の説明】
【0036】
1 薬剤調製用具
2 アダプタ
3 プレフィルドシリンジ
4 薬剤容器
5 プランジャ
6 アダプタ外筒
7 穿刺具
8 アダプタ内筒
73a,73b 穿刺具側係合部
84a,84b 穿刺具導入路
85a,85b 軸方向誘導路
86a、86b 周方向誘導路
90a、90b 傾斜誘導路
87a、87b 穿刺具離脱規制用突起
88a、88b 穿刺具回転規制用突起
89a、89b 穿刺具移動規制用突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口した先端部を有する外筒と、該外筒の前記先端部に装着され、中空針により刺通可能なシール部材により、前記先端部の開口をシールするとともに、ISO規格に適合したノズル部への接続部を有する医療用具への接続が不能であるキャップと、前記外筒内に収納された摺動可能なガスケットと、該ガスケットの後端に取り付け可能な押子と、前記外筒内に充填された医療用液体とからなるプレフィルドシリンジと、開口部を有する容器本体と該容器本体の前記開口部を封止するとともに中空針により刺通可能な封止部材と前記容器本体内に収納された薬剤とからなる薬剤容器と、前記封止部材にて封止された前記開口部に接続されたアダプタとを備えるプレフィルドシリンジおよび薬剤容器を備えた薬剤調製用具であって、
前記アダプタは、一端より他端まで貫通した筒状体であり、他端部に薬剤容器接続部を有するアダプタ本体と、前記アダプタ本体内に収納されかつ前記アダプタ本体内を前記一端側より前記他端方向に移動可能な穿刺具とを備え、
前記穿刺具は、前記プレフィルドシリンジの前記キャップが装着可能なキャップ装着部と穿刺具側係合部とを有する穿刺具本体と、該穿刺具本体に固定され、一端が前記キャップ装着部内に突出し、装着される前記キャップの前記シール部材を刺通可能である第1の針部と、他端が前記薬剤容器の前記封止部材を刺通可能である第2の針部とを有する中空針とを備え、
前記アダプタ本体は、前記穿刺具の前記穿刺具側係合部を一端側より他端側に誘導する誘導部を備えており、前記誘導部は、前記アダプタ本体の周方向に延びる周方向誘導部と、該周方向誘導部より前記アダプタ本体の軸方向に延び、かつ終端する軸方向誘導部と、前記周方向誘導部に設けられ、前記穿刺具側係合部と係合可能かつ前記穿刺具側係合部が強制通過可能な穿刺具回転規制部と、前記軸方向誘導路の前記終端より所定長一端側に設けられ、前記穿刺具側係合部と係合可能かつ前記穿刺具側係合部が強制通過可能であり通過後の前記穿刺具の移動を規制する穿刺具移動規制部とを備えることを特徴とする薬剤調製用具。
【請求項2】
前記軸方向誘導部は、前記周方向誘導部と連続する部分に設けられた前記アダプタ本体の軸方向かつ斜めに延びる傾斜誘導部を備えている請求項1に記載の薬剤調製用具。
【請求項3】
前記穿刺具側係合部は、前記穿刺具本体の外面に設けられた突出部であり、 前記アダプタ本体の前記誘導部は、前記穿刺具の前記突出部を収納するとともに、前記突出部を一端側より他端側に誘導する誘導路である請求項1または2に記載の薬剤調製用具。
【請求項4】
前記誘導路は、前記アダプタ本体の一端より他端側に延びる穿刺具導入路と、前記穿刺具導入路より前記アダプタ本体の周方向に延びる前記周方向誘導部を形成する周方向誘導路と、該周方向誘導路より前記アダプタ本体の軸方向に延び、かつ終端する前記軸方向誘導部を形成する軸方向誘導路とを備える請求項3に記載の薬剤調製用具。
【請求項5】
前記穿刺具側係合部は、前記穿刺具本体の外面に設けられた突出部であり、前記アダプタ本体の前記穿刺具導入路は、前記穿刺具の前記突出部を収納するとともに、前記突出部を前記周方向誘導部に導入するための穿刺具誘導路であり、かつ、前記穿刺具導入路は、前記穿刺具導入路の壁面より内方に突出し、前記穿刺具の前記突出部が乗り越え可能な穿刺具離脱規制用突起を備えている請求項4に記載の薬剤調製用具。
【請求項6】
前記穿刺具は、前記穿刺具の前記突出部が前記穿刺具導入路の終端部に位置するように前記アダプタ本体内に収納されており、前記穿刺具の他端方向への移動が前記穿刺具導入路の底部により規制され、一端方向への移動が前記穿刺具離脱規制用突起により規制され、周方向への移動が、前記周方向誘導路の前記穿刺具回転規制部により規制され、実質的に動かない状態となっている請求項5に記載の薬剤調製用具。
【請求項7】
前記アダプタ本体は、一端より他端まで貫通した筒状体であり、他端部に薬剤容器接続部を有するアダプタ外筒と、一端より他端まで貫通した筒状体であり、前記アダプタ外筒内に収納されたアダプタ内筒とからなり、前記誘導部は、前記アダプタ内筒が備えるものとなっている請求項1ないし6のいずれかに記載の薬剤調製用具。
【請求項8】
前記穿刺具は、前記穿刺具の前記穿刺具側係合部が、前記アダプタの前記軸方向誘導部を他端方向に移動する時に、前記穿刺具の前記第2の針部が、前記薬剤容器の前記封止部材を刺通するものである請求項1ないし7のいずれかに記載の薬剤調製用具。
【請求項9】
前記キャップは、前記外筒に離脱不能に取り付けられている請求項1ないし8のいずれかに記載の薬剤調製用具。
【請求項10】
前記外筒の前記先端部は、ISO規格に適合したノズル部への接続部を有する医療用具への接続が不能となっている請求項1ないし9のいずれかに記載の薬剤調製用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−205769(P2012−205769A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73733(P2011−73733)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】