説明

薬品送出装置のための医薬貯槽

薬品送出装置(50)との使用のための医薬貯槽(10)が提供される。医薬貯槽(10)は薬品(13)を含むよう構成され、薬品送出装置(50)の環境内に薬品(13)を計量分配するための計量分配孔(15)を含む。医薬貯槽(10)は変形可能なプラグ(14)を更に含み、プラグ(14)は薬品送出装置(50)の計量分配作用によって引き起こされる圧力によって取り外し可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薬品送出装置と共に使用する医薬貯槽に関し、医薬貯槽は、薬品を収容するよう構成され、そのような医薬貯槽を含む薬品送出装置に薬品を計量分配するための計量分配孔を含む。
【0002】
この発明は、更に、そのような医薬貯槽を含む薬品送出装置に関する。
【背景技術】
【0003】
そのような薬品送出装置は、消化管内での薬品の放出を制御することを可能にする。所定の送出しスケジュールに従って薬品の送出しを行い、且つ/或いは、外部信号又は環境条件によって薬品の送出しを開始し得る。薬品送出装置は、追加的な電子機器、薬品送出しを制御するためのセンサ及び通信装置を含み得る。多くの飲み込み可能な薬品送出装置において、薬品放出はアクチュエータシステムに基づく変位を使用して実施される。例えば、ピストンが計量分配孔を通じて所定の量の薬品を押し込み得る。
【0004】
計量分配孔は開放オリフィスであることが多い。しかしながら、開放オリフィスは、医薬貯槽と外部環境との間の材料の交換の可能性を導入し、その結果、例えば、意図した時間よりも前の薬品の送出し、及び、意図した時の送出量の減少をもたらす。含められる主たるプロセスは、拡散及び対流である。拡散は、カプセルの内部と外部との間の開放接続の故である。対流は、カプセル内に貯蔵される物質と外部流体との比重量の小さな差の故である。例えば、カプセル内の流体が腸管内の流体よりも重く、且つ、孔が下向きに向けられるとき、カプセル内の流体は流出し、腸管の流体によって置換される。出口孔の断面の大きさを減少させ、出口孔の長さを延長し、且つ、医薬貯槽内の材料の粘性を増大させることによって、両方のプロセスを遅延し得る。しかしながら、孔の寸法及び投与されるべき医薬の粘性は、アクチュエータが医薬を計量分配するのを可能にするよう選択されなければならない。
【0005】
薬品貯槽を外部環境から分離するために、バルブ(弁)が使用されることが多い。しかしながら、小さな空間内で動作し、良好な封止をもたらし、且つ、低い電力を使用するバルブは、実施するのが極めて困難である。よって、バルブを使用せずに拡散又は対流を回避することが有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
意図する放出の瞬間まで薬品を内部に維持するバルブを必要としない、冒頭段落に従った薬品送出装置のための医薬貯槽を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の特徴によれば、この目的は、薬品送出装置と共に使用するための医薬貯槽を提供することによって達成され、医薬貯槽は、薬品を含むために配置され、且つ、薬品送出装置の環境内に薬品を計量分配するための計量分配孔を含み、医薬貯槽は、変形可能なプラグを更に含み、プラグは、薬品送出装置の計量分配作用によって引き起こされる圧力によって取り外し可能である。
【0008】
薬品が送り出されない限り、プラグは計量分配孔を封止し、薬品が医薬貯槽から出るのは許容されない。薬品送出装置が第一の量の薬品を送り出すことを試みるとき、医薬貯槽内部の圧力は増大する。その結果として得られるプラグに対する圧力は、プラグを計量分配孔から押し出させ、それによって、環境への薬品の送出しを可能にする。変形可能なプラグの組成及び寸法は、プラグが第一医薬送出しによって引き起こされる圧力によって容易に取り外されるような組成及び寸法とされる。同時に、プラグ組成及び寸法は、プラグが他の原因(例えば、温度変化、重力、拡散)の故に取り外されないような組成及び寸法とされる。例えば、プラスチックプラグのような変形不能なプラグは、計量分配孔を封止するのに極めて適しているが、薬品送出装置の計量分配作用によって変形不能なプラグを取り外し得ない。容易な取外しのために、プラグは変形可能でなければならない。
【0009】
適切なプラグは、例えば、薬品又は消化液と混合しないオイルを含み得る。例えば、ミネラルオイル又はヒマシ油が本発明に従った医薬貯槽におけるプラグとしての使用に極めて適しているが、他の非剛性材料も使用し得る。プラグ材料が薬品又は薬品送出装置外部の媒体と混合しないとき、プラグは第一薬品が送り出されるべき前に崩壊しない。殆どの薬品送出装置では、油性材料が極めて適している。何故ならば、それらは水性胃腸環境又は水溶液中に供給されることの多い薬品と混合しないからである。
【0010】
本発明に従った医薬貯槽の好適実施態様では、計量分配孔を部分的に充填するためにノズルが設けられ、ノズルは変形可能なプラグを含む。ノズルを使用する主たる利点は、異なる薬品のために同じ薬品送出装置及び医療貯槽を使用し得ることである。例えば、粘性の相違の故に、異なる薬品は異なる寸法(長さ及び/又は直径)を備える計量分配孔を必要とし得る。最適な寸法を備える計量分配孔が全ての種類の薬品に利用可能であるよう、異なる薬品のために異なるノズルを設計し得る。それらのノズルにおける孔は、本発明に従ったプラグで充填される。次に、充填済みノズルは、医薬貯槽を封止するために使用される。第一の量の薬品が送り出されることが意図され、且つ、医薬貯槽内部の圧力が増大するとき、プラグはノズルから押し出される。その場合、結果として得られる計量分配孔は、所望の寸法を有する。
【0011】
本発明のこれらの及び他の特徴は、以下に記載する実施態様を参照して明瞭に解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に従った医薬貯槽を備える薬品送出装置を示す概略図である。
【図2】本発明に従った医薬貯槽を示す概略図である。
【図3】プラグが取り外された状態の図2の医薬貯槽を示す概略図である。
【図4】プラグを含むノズルを備える医薬貯槽を示す概略図である。
【図5】図4の医薬貯槽を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明に従った医薬貯槽を備える薬品送出装置50を概略的に示している。医薬供給装置50は、飲み込み可能なカプセルであり、患者の消化管に沿うどこかで放出されるべき薬品と、放出されるべき薬品の量及び前記放出の瞬間を制御するための作動機構とを含む。本発明に従った変形可能で取外し可能なプラグ(栓)は、飲み込み可能な薬品送出装置50との組み合わせにおいて特に有利であるが、埋め込み可能な薬品送出装置と共にも使用し得ることが付記されなければならない。放出されるべき薬品は、圧縮可能な医薬貯槽10内に貯蔵される。薬品を、例えば、水に溶解する乾燥粉末として、或いは、ゲル又は液体として貯蔵し得る。医薬貯槽10を圧縮し、その結果、医薬貯槽10内部の圧力の増大をもたらすために、アクチュエータ機構12が設けられる。圧縮可能な医薬貯槽10の代わりに、医薬貯槽内部の圧力を増大し得る物質又は素子を含む剛性貯槽を使用し得る。例えば、膨張剤で充填されたバルーンを剛性貯蔵内に配置し得る。
【0014】
医薬貯槽は、医薬貯槽10内部の圧力が増大するときに薬品が薬品貯槽50から押し出されるのを可能にする計量分配孔15を含む。アクチュエータ手段12は、例えば、ピストンを使用して機械的に作動し得る。代替的に、アクチュエータ手段12は、環境から水を吸引することによって、或いは、水を生成するための又は膨張剤の容積を膨張するための化学反応を使用して、圧力を増大し得る。例えば、内部クロック、pHセンサからのセンサ値、電気的又は化学的な検出器素子からのトリガ信号によって、薬品放出を始動し得る。薬品送出装置50が無線通信のための手段を含むならば、薬品送出しを外部的に始動し得る。薬品送出装置50の電子的機能の動作は、処理電子機器17によって制御され、且つ、電池16によって電力供給される。
【0015】
図2は、本発明に従った医薬貯槽10(の一部)を概略的に示している。医薬貯槽10は薬品13で充填され、薬品送出装置50のハウジング11によって部分的に取り囲まれている。ここで、薬品送出装置50のハウジング11は、医薬貯槽10の壁でもある。代替的に、医薬貯槽10は、ハウジング11内側の小さなバッグ(袋)であってもよい。医薬貯槽10は、薬品送出装置50のハウジング11内の計量分配孔15によって薬品送出装置50の外部環境から分離されている。図面において、計量分配孔15は、変形可能なプラグ14によって遮断されている。プラグ14は、薬品13が漏れ出すのを防止する。
【0016】
プラグ14は、薬品13又は薬品送出装置50の外部の消化液と混合しないオイル(油)を含み得る。例えば、ミネラルオイル又はヒマシ油がプラグ14としての使用に極めて適している。他の非剛性の変形可能な材料も使用し得る。薬品送出装置50のアクチュエータ手段12が医薬貯槽10内部の圧力を上昇させるならば、先ず、変形可能なプラグ14は、先ず、圧縮され、次に、計量分配孔15から押し出され、第一の量の薬品13が放出される。
【0017】
図3は、プラグが取り外された状態の図2の医薬貯槽を示している。アクチュエータ手段12が医薬貯槽10を含むとき、薬品13が計量分配孔15を通じて押し出される。
【0018】
図4は、プラグ14を含むノズル31を備える医薬貯槽10を示している。図5は、図4の医薬貯槽の断面を示している。ノズル31を使用する主たる利点は、異なる薬品13のために同じ薬品送出装置50及び医薬貯槽10を使用し得ることである。例えば、粘性の相違の故に、異なる薬品13は、異なる寸法(長さ及び/又は直径)を備える計量分配孔15を必要とし得る。最適な寸法を備える計量分配孔15が全ての種類の薬品のために利用可能であるよう、異なる薬品13のために異なるノズル31を設計し得る。例えば、厚いゲルは比較的広い計量分配孔15を必要とするのに対し、より液状の薬品は極めて狭い計量分配孔15を必要とする。ノズル31内の計量分配孔15は、上述したようなプラグ14で充填される。充填済みノズル31は、医薬貯槽10を封止する。第一の量の薬品13が送り出されることが意図され、医薬貯槽10内部の圧力が増大するとき、プラグ14はノズル31から押し出される。計量分配孔15の寸法は、ノズル31の設計によって定められる。
【0019】
上述の実施態様は本発明を限定するというよりもむしろ例示するものであること、並びに、当業者は付属の請求項の範囲から逸脱せずに多くの代替的な実施態様を設計し得ることが付記されなければならない。請求項において、括弧の間に配置される如何なる参照記号も請求項を限定するものとして解釈されてはならない。「含む」という動詞及びその活用形の使用は、請求項中に述べられる素子又はステップ以外の素子又はステップの存在を排除しない。ある素子に先行する不定冠詞は、そのような素子が複数存在することを排除しない。幾つかの別個の素子を含むハードウェアを用いて並びに適切にプログラムされたコンピュータを用いて本発明を実施し得る。幾つかの手段を列挙する装置の請求項において、これらの手段の幾つかを単一の同じ品目のハードウェアによって具現化し得る。特定の手段が相互に異なる従属項中に列挙れているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用し得ないことを示さない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬品送出装置と共に使用するための医薬貯槽であって、
当該医薬貯槽は、薬品を含むよう構成され、且つ、前記薬品送出装置の環境内に前記薬品を計量分配するための計量分配孔を含み、
当該医薬貯槽は、変形可能なプラグを更に含み、該プラグは、前記薬品送出装置の計量分配作用によって引き起こされる圧力によって取り外し可能である、
医薬貯槽。
【請求項2】
前記変形可能なプラグは、オイルを含み、該オイルは、前記薬品又は消化液と混合しない、請求項1に記載の医薬貯槽。
【請求項3】
前記オイルは、ミネラルオイルを含む、請求項2に記載の医薬貯槽。
【請求項4】
前記オイルは、ヒマシ油を含む、請求項2に記載の医薬貯槽。
【請求項5】
前記計量分配孔を部分的に充填するノズルを更に含み、該ノズルは、変形可能なプラグを含む、請求項1に記載の医薬貯槽。
【請求項6】
請求項1に記載の医薬貯槽を含む、薬品送出装置。
【請求項7】
前記計量分配作用を制御する電子機器を更に含む、請求項6に記載の薬品送出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2013−501568(P2013−501568A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524317(P2012−524317)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053580
【国際公開番号】WO2011/018743
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】