説明

薬液容器用栓体

【課題】耐薬品性及び密封性に優れる薬液容器用栓体を提供すること。
【解決手段】本発明は、薬液が収容された薬液容器3を封止するための薬液容器用栓体10であって、平板状の基部1と、該基部の中央に設けられた円筒状の嵌合部2と、からなり、嵌合部2が薬液容器3の口部3aに嵌合可能となっており、基部1及び嵌合部2が熱可塑性エラストマーからなっている薬液容器用栓体10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液容器用栓体に関し、更に詳しくは、耐薬品性及び密封性に優れる薬液容器用栓体に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液を容れる薬液容器として、バイアル瓶等がある。かかるバイアル瓶においては、口部にゴム栓をすることにより、薬液が密封される。
【0003】
ところで、薬液には揮発性が高いものや酸素により酸化しやすいもの等がある。このため、薬液容器とゴム栓との密封性は極めて重要となっている。
【0004】
このような、薬液容器の密封性については、様々な検討がなされており、例えば、薬液容器の開口部の上縁面に係止するフランジ付きの天面及び該天面下面に突出し該開口部内に嵌挿される基部を有する封止栓体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、略円筒状の栓脚の下端から天板側に向かう切り欠き及び該栓脚外周面に突起を有する栓体、及び有底逆円筒状の合成樹脂製キャップからなる医薬品容器・医療用器具のキャップ付き栓体(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−179688号公報
【特許文献2】特開平11−164873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の栓体は、いずれもイソプレンゴム系であるので、成形時に硬化剤等の添加剤を要する。このため、栓体自体に薬液が付着すると、薬液内に添加剤が溶出する場合があり、また、経時的に硬化して罅割れ等が生じ、その結果、密封性が不十分となる傾向にある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、耐薬品性及び密封性に優れる薬液容器用栓体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、薬液容器用栓体を、薬液容器の口部に嵌合させると共に蓋をするタイプとし、且つ薬液容器用栓体を熱可塑性エラストマーからなるものとすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(1)薬液が収容された薬液容器を封止するための薬液容器用栓体であって、平板状の基部と、該基部の中央に設けられた円筒状の嵌合部と、からなり、嵌合部が薬液容器の口部に嵌合可能となっており、基部及び嵌合部が熱可塑性エラストマーからなっている薬液容器用栓体に存する。
【0010】
本発明は、(2)基部及び嵌合部が一体となるように射出成形で製造されたものである上記(1)記載の薬液容器用栓体に存する。
【0011】
本発明は、(3)嵌合部との接続部分よりも内側に位置する基部の厚みが、嵌合部との接続部分よりも外側に位置する基部の厚みよりも小さくなっている上記(1)又は(2)に記載の薬液容器用栓体に存する。
【0012】
本発明は、(4)23℃における圧縮永久歪率が30%以下であり、70℃における圧縮永久歪率が50%以下である上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の薬液容器用栓体に存する。
【0013】
本発明は、(5)デュロ硬度Aが35〜80である上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の薬液容器用栓体に存する。
【0014】
本発明は、(6)熱可塑性エラストマーがスチレン系エラストマーであり、密度が0.81〜0.90g/cm、融点が135〜200℃である上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の薬液容器用栓体に存する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の薬液容器用栓体においては、基部と嵌合部とからなるので、嵌合部が薬液容器の口部に嵌合されると同時に、基部が口部を上方から覆うことにより、薬液容器を確実に封止することができる。
また、基部及び嵌合部をイソプレンゴム系ではなく、添加剤が不要な熱可塑性エラストマーからなるものとすることにより、耐薬品性が向上し、経時的に硬化することを防止できる。なお、熱可塑性エラストマーは、融点が135〜200℃であるスチレン系エラストマーが好適である。
したがって、上記薬液容器用栓体によれば、耐薬品性及び密封性に優れる。
【0016】
ここで、基部及び嵌合部は、一体となるように射出成形で製造されたものであることが好ましい。この場合、簡単に大量生産が可能となるので、低コスト化が図れる。
【0017】
本発明の薬液容器用栓体においては、嵌合部との接続部分よりも内側に位置する基部の厚みが、嵌合部との接続部分よりも外側に位置する基部の厚みよりも小さくなっている場合、嵌合部との接続部分よりも内側に位置する基部に、注射針等を刺して貫通させ、その注射針を介して薬液を取り出すことが容易となる。すなわち、薬液容器を密封させたまま、薬液容器内の薬液を取り出すことができる。
【0018】
本発明の薬液容器用栓体においては、23℃における圧縮永久歪率が30%以下であり、70℃における圧縮永久歪率が50%以下である場合、オートクレープ等による加熱滅菌の前後において十分な復元力を発揮するので、薬液容器を確実に密封することができる。
また、注射針を抜き取った後、注射針を刺した部分からの薬液容器内の薬液の漏れ出しを防止することができる。
【0019】
本発明の薬液容器用栓体においては、デュロ硬度Aが35〜80であり、密度が0.81〜0.90g/cmである場合、注射針等の突き刺しによって栓体が削り取られる所謂コアリングの発生を防止することができる。
また、注射針を抜き取った後、注射針を刺した部分からの薬液容器内の薬液の漏れ出しを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1の(a)は、本実施形態に係る薬液容器用栓体の一実施形態を示す側面図であり、(b)は、その下面図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る薬液容器用栓体を薬液容器に嵌合させた状態を示す断面図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る薬液容器用栓体を薬液容器に嵌合させ、外側からキャップを取り付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0022】
図1の(a)は、本実施形態に係る薬液容器用栓体の一実施形態を示す側面図であり、(b)は、その下面図である。
図1の(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係る薬液容器用栓体10は、平板状の基部1と、該基部1の中央に設けられた円筒状の嵌合部2と、からなる。
【0023】
基部1及び嵌合部2は、一体となっており、熱可塑性エラストマーからなっている。すなわち、薬液容器用栓体10は、熱可塑性エラストマーを用いて製造される。
薬液容器用栓体10は、基部1及び嵌合部2をイソプレンゴム系ではなく、熱可塑性エラストマーからなるものとすることにより、耐薬品性が向上し、また、薬液の付着により経時的に硬化することを防止できる。
【0024】
かかる熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフイン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリ塩化ビニール系エラストマー等が挙げられる。これらは単独で用いても、複数を混合して用いてもよい。
これらの中でも、耐薬品性及び密封性の観点から、スチレン系エラストマーであることが好ましく、水添SBSブロックコポリマーであることが更に好ましい。
【0025】
また、スチレン系エラストマーの中でも、融点が135〜200℃のものが好ましい。融点が135℃未満であると、融点が上記範囲内にある場合と比較して、耐熱性が劣るので、オートクレープ等による滅菌処理が困難となる場合がある。また、融点が200℃を超えると、融点が上記範囲内にある場合と比較して、成形性が著しく低下し所望の栓体形状に成形することが困難となる欠点がある。
【0026】
薬液容器用栓体10は、JIS K7210の規格に準拠した230℃、49Nにおけるメルトフローレート(MFR)が0.1〜12g/10minであることが好ましい。MFRが0.1g/10min未満であると、MFRが上記範囲内にある場合と比較して、流動性が悪く成形性が低下する傾向がある。また、MFRが12g/10minを超えると、MFRが上記範囲内にある場合と比較して、オートクレープ等による滅菌処理時に変形又は融着してしまう恐れがある。
【0027】
薬液容器用栓体10は、JIS K7112の規格に準拠した水中置換法における密度が0.81〜0.90g/cmであることが好ましい。密度が0.81g/cm未満であると、密度が上記範囲内にある場合と比較して、薬液容器用栓体10が軟質となり過ぎ、液漏れの原因となると共に耐熱性も低下する傾向がある。また、密度が0.90g/cmを超えると、密度が上記範囲内にある場合と比較して、薬液容器用栓体10自体が硬くなり注射針を刺し難くなると共に使用に伴う耐久性が低下する欠点がある。
【0028】
薬液容器用栓体10は、JIS K6253の規格に準拠したデュロ硬度Aが35〜80であることが好ましい。デュロ硬度Aが35未満であると、デュロ硬度Aが上記範囲内にある場合と比較して、密封性が低下する傾向があり、デュロ硬度Aが80を超えると、デュロ硬度Aが上記範囲内にある場合と比較して、例えば、後述する内側基部に注射針を刺し難くなる欠点がある。
【0029】
薬液容器用栓体10は、耐久性の観点から、JIS K6251の規格に準拠したT/S=500mm/minにおける引張破壊強さが6〜25MPaであることが好ましく、引張破壊伸びが300〜1200%、更には820〜1200%であることがより更に好ましい。例えば、引張破壊強さ及び引張破壊伸びが上記範囲でない場合、繰り返し使用に耐えられず、薬液容器用栓体10に切れ目又は破れが生じる恐れがある。
【0030】
薬液容器用栓体10は、JIS K6262の規格に準拠した23℃における圧縮永久歪率が30%以下であることが好ましく、1〜30%であることがより好ましい。また、70℃における圧縮永久歪率が50%以下であることが好ましく、1〜50%であることがより好ましい。23℃における圧縮永久歪率が30%を超えると、又は、70℃における圧縮永久歪率が50%を超えると、圧縮永久歪率が上記範囲内にある場合と比較して、復元力が不十分となり、場合によっては薬液容器を完全に密封できないことがある。
【0031】
薬液容器用栓体10は、薬液が収容された薬液容器を封止するために用いられる。
かかる薬液容器としては、特に限定されないが、環状ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂からなるプラスチック容器、ガラス瓶等が挙げられる。
また、薬液容器用栓体10は、例えば、バイアル瓶の栓として好適に用いられる。
【0032】
図2は、本実施形態に係る薬液容器用栓体を薬液容器に嵌合させた状態を示す断面図である。
図2に示すように、薬液容器用栓体10は、嵌合部2を薬液容器3の口部3aに嵌合される。
ここで、薬液容器用栓体10においては、嵌合部2との接続部分よりも内側に位置する基部(以下便宜的に「内側基部」という。)1aの厚みH1が、嵌合部2との接続部分よりも外側に位置する基部(以下便宜的に「外側基部」という。)1bの厚みH2よりも小さくなっている。なお、内側基部1aの厚みH1は1.0〜5.0mmであることが好ましく、外側基部1bの厚みは1.5〜6.0mmであることが好ましい。
【0033】
このため、薬液容器用栓体10においては、外側基部1bが十分に厚いので、熱等により変形することを抑制できる。
また、内側基部1aの厚みが薄い薄肉なので、注射針等を刺して貫通させることができる。すなわち、注射針を取り付けたシリンジの注射針を内側基部1aに突き刺し、薬液容器3内の薬液をシリンジで吸い上げることにより、薬液容器3を密封させたまま、薬液容器3内の薬液を取り出すことができる。なお、内側基部1aの厚みは、注射針の突き刺しの容易性及び注射針を引き抜いた後の液漏れ防止の観点から適宜設定することができ、例えば、内側基部1aの厚みH1が1.0mm未満であると突き刺しは容易であるが注射針を引き抜いた後の液漏れが発生する恐れがある。また、内側基部1aの厚みH1が5.0mmを超えると液漏れの発生を防止することが容易となるが、注射針の突き刺しが困難となる。
【0034】
本実施形態に係る薬液容器用栓体においては、嵌合部2が薬液容器3の口部3aに嵌合されると同時に、基部1(外側基部1b)が口部3aを上方から覆うことにより、薬液容器3を確実に封止することができる。
したがって、上記薬液容器用栓体10は、耐薬品性及び密封性に優れるものとなっている。
【0035】
薬液容器用栓体10は、射出成形により、基部1及び嵌合部2が一体となって製造される。このため、簡単に大量生産が可能となるので、低コスト化が図れる。また、リサイクルも可能である。
【0036】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0037】
例えば、図2に示す薬液容器用栓体10を薬液容器3に嵌合させた後、薬液容器3及び薬液容器用栓体10の外側からキャップを取り付けてもよい。
図3は、本実施形態に係る薬液容器用栓体を薬液容器に嵌合させ、外側からキャップを取り付けた状態を示す断面図である。
図3に示すように、キャップ5は、薬液容器用栓体10の基部1と薬液容器3の口部3aを外側から覆うように取り付けられる。
キャップ5を取り付けることにより、薬液容器3の密封性がより向上する。なお、キャップ5においては、中央に穴5aが設けられていることが好ましい。これにより、上述した薬液容器3を密封したまま薬液を取り出す場合、内側基部1aに注射針を刺すことを妨げない。
【0038】
キャップ5の材質としては、特に限定されないが、アルミニウムや樹脂が挙げられる。なお、アルミニウムの場合、カシメ固定することが好適であり、樹脂の場合、螺合又は係合させて固定することが好適である。
【0039】
また、これらの他、本実施形態に係る薬液容器用栓体10には、滅菌加工等が施されていてもよい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
メルトフローレート(MFR)が15g/10min、デュロ硬度Aが34、引張破壊伸びが800%の水添SBSブロックコポリマーを射出成形し、図1に示す形状の薬液容器用栓体を得た。
【0042】
(実施例2)
メルトフローレート(MFR)が3g/10min、デュロ硬度Aが48、引張破壊伸びが900%の水添SBSブロックコポリマーを射出成形し、図1に示す形状の薬液容器用栓体を得た。
【0043】
(比較例1)
ブチルゴムを用い、図1に示す形状の薬液容器用栓体を得た。
【0044】
(比較例2)
イソプレンゴムを用い、図1に示す形状の薬液容器用栓体を得た。
【0045】
(評価方法)
1.物性
実施例1,2及び比較例1,2で薬液容器用栓体に対し、JIS K7210の規格に準拠して230℃、49Nの条件下におけるメルトフローレート(MFR)、JIS K7112の規格に準拠した水中置換法における密度、JIS K6253の規格に準拠したデュロ硬度A、JIS K6251の規格に準拠したT/S=500mm/minの条件下における引張破壊強さ、JIS K6251の規格に準拠したT/S=500mm/minの条件下における引張破壊伸び、JIS K6262の規格に準拠した23℃、22時間の条件下における圧縮永久歪率、及び、JIS K6262の規格に準拠した70℃、22時間の条件下における圧縮永久歪率を測定した。
得られた結果を表1に示す。なお、表1中、「−」は測定していないことを意味する。
【0046】
〔表1〕

【0047】
2.溶出性試験
実施例1,2及び比較例1,2で得られた薬液容器用栓体に対し、溶出性(耐薬品性)を評価した。まず、それぞれの薬液容器用栓体を水で洗った後に乾燥させ、薬液容器用栓体の質量の10倍量の水と共に硬質ガラス容器に入れた。そして、密封状態で高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で1時間加熱した後、室温になるまで放置し、得られた溶出液を、日本薬局方輸液用ゴム栓試験法に準拠して適性を確認した。
評価基準は、輸液用ゴム栓規格に適合するものを「○」とし、輸液用ゴム栓規格に一部適合するものを「△」とし、完全に輸液用ゴム栓規格を外れるものを「×」とした。得られた結果を表2に示す。
【0048】
3.微粒子性試験
実施例1,2及び比較例1,2で得られた薬液容器用栓体に対し、微粒子性(耐薬品性)を評価した。まず、それぞれの薬液容器用栓体を水で洗った後に乾燥させ、それを4等分にカットし、そのうちの3片を、315mlの純水とともに容器に入れた。そして、水に溶け出した微粒子の個数を測定した。
評価基準は、微粒子の個数が基準値以下ものを「○」とし、微粒子の個数が略基準値のものを「△」とし、微粒子の個数が基準値以上のものを「×」とした。得られた結果を表2に示す。
【0049】
4.成形性試験
実施例1,2及び比較例1,2で得られた薬液容器用栓体に対し、成形性を評価した。
評価基準は、射出成形が可能なものを「○」とし、射出成形できないものを「×」とした。得られた結果を表2に示す。
【0050】
5.滅菌適正
実施例1,2及び比較例1,2で得られた薬液容器用栓体に対し、滅菌適正を評価した。まず、それぞれの薬液容器用栓体を、オートクレープにより121℃で30分加熱した。そして、薬液容器用栓体の状態を黙視にて確認した。
評価基準は、薬液容器用栓体に変形又は融着のないものを「○」とし、薬液容器用栓体に変形又は融着がわずかに認められるものを「△」とし、薬液容器用栓体に変形又は融着があるものを「×」とした。得られた結果を表2に示す。
【0051】
〔表2〕

【0052】
これらの評価より、実施例1,2で得られた薬液容器用栓体は、溶出性及び微粒子性、すなわち、耐薬品性が優れることがわかった。また、射出成形(成形性)が可能であることから、大量生産が可能であることがわかった。一方、本発明によらない比較例1,2で得られた薬液容器用栓体は、射出成形できず、耐薬品性も不十分であった。なお、実施例1の薬液容器用栓体においては、複数の薬液容器用栓体を重ね合わせた状態でオートクレープにより滅菌した場合、わずかに変形又は融着が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る薬液容器用栓体は、バイアル瓶のように薬液を容れる瓶の栓として好適に用いられる。また、この薬液容器用栓体は、耐薬品性及び密封性に優れるので特に長期間の使用に好適である。
【符号の説明】
【0054】
1・・・基部
1a・・・内側基部
1b・・・外側基部
2・・・嵌合部
3・・・薬液容器
3a・・・口部
5・・・キャップ
10・・・薬液容器用栓体
H1,H2・・・厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が収容された薬液容器を封止するための薬液容器用栓体であって、
平板状の基部と、該基部の中央に設けられた円筒状の嵌合部と、からなり、
前記嵌合部が前記薬液容器の口部に嵌合可能となっており、
前記基部及び前記嵌合部が熱可塑性エラストマーからなっている薬液容器用栓体。
【請求項2】
前記基部及び前記嵌合部が一体となるように射出成形で製造されたものである請求項1記載の薬液容器用栓体。
【請求項3】
前記嵌合部との接続部分よりも内側に位置する前記基部の厚みが、前記嵌合部との接続部分よりも外側に位置する前記基部の厚みよりも小さくなっている請求項1又は2に記載の薬液容器用栓体。
【請求項4】
23℃における圧縮永久歪率が30%以下であり、70℃における圧縮永久歪率が50%以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬液容器用栓体。
【請求項5】
デュロ硬度Aが35〜80である請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬液容器用栓体。
【請求項6】
前記熱可塑性エラストマーがスチレン系エラストマーであり、密度が0.81〜0.90g/cm、融点が135〜200℃である請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬液容器用栓体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−65830(P2012−65830A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212839(P2010−212839)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【出願人】(000175397)三笠産業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】