説明

薬液注入具

【課題】薬液注入部材へのカテーテルの装着が極めて容易に行うことができる薬液注入具を提供する。
【解決手段】薬液注入具1は、カテーテル3と、薬液注入部材2とからなる。薬液注入部材2は、開口部と連通する薬液流入空間9と排出ポート8とを有する注入部材本体4と、開口部を封止するシール部5とを備える。注入部材本体は、薬液流入空間9と連通する流通部75を備え、排出ポート8は、カテーテル3の基端部の挿入を可能とするカテーテル基端部装着部87と、カテーテル基端部装着部87の内部に設けられたカテーテル抜け止め用の環状突出部83とを備える。環状突出部は、一端側に縮径する環状テーパー面83aと、カテーテル3の外径より小さい内径を有し、かつ鋭角に形成された環状突出端部83bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液を患者の体内に注入する薬液注入具に関するものであり、詳しくは、化学療法等の治療に際して用いる皮下埋め込み型の薬液注入具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌などの治療で、体内に薬液を注入する薬液注入療法が行われている。
【0003】
このような薬液注入療法に用いるため薬液注入具が提案されている。薬液注入具としては、例えば、特公平4−10832号公報(特許文献1)、さらには、本願出願人が提案する特開2004−350937号公報(特許文献2)および特許第3137360号公報(特許文献3)などがある。
これら薬液注入具は、本体と、この本体内に形成された内部空間と、この空間に連通する薬液注入口および薬液流出用の流路と、この薬液注入口に装着されたゴム製の栓体(セプタム)とを有する薬液注入ポートと、薬液注入用のルーメンが形成されたカテーテルとを有する。
そして、薬液注入具は、カテーテルを体内に挿入し、その先端を目的部位に位置させた後、カテーテルの基端側の余剰部分を切断し、その切断端部を薬液注入ポートに接続した後、薬液注入ポートを皮下組織に固定することにより生体内に留置される。このため、薬液注入ポートにあらかじめカテーテルを接続しておくことができず、術中にて両者の装着作業が必要である。また、この埋設術は、皮膚を切開して行うため、早期に完了することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4−10832号公報
【特許文献2】特開2004−350937号公報
【特許文献3】特許第3137360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1ないし3のものでは、カテーテルに接続される薬液注入部材の接続部は、細い筒状部となっている。そして、カテーテルの端部内に、その細い筒状部を挿入し、被嵌することにより両者を装着するものとなっている。カテーテルは、体内に挿入するものであり、その外径および内径ともに小さく、両者の装着作業は、容易なものではなかった。
そこで、本発明の目的は、体内に挿入可能なカテーテルと、このカテーテルを着脱可能に装着する薬液注入部材とからなる薬液注入具であって、薬液注入部材へのカテーテルの装着が極めて容易に行うことができる薬液注入具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 少なくとも先端部が体内に挿入可能なカテーテルと、該カテーテルを着脱可能に装着する薬液注入部材とからなる薬液注入具であって、
前記薬液注入部材は、開口部と、前記開口部と連通する薬液流入空間と、前記薬液流入空間と連通する排出ポートとを有する注入部材本体と、前記注入部材本体の前記開口部を封止するとともに薬液注入用針の刺通が可能なシール部とを備え、
前記注入部材本体は、前記薬液流入空間と連通する流通部を備え、前記排出ポートは、前記カテーテルの外径と同じ若しくは若干大きい内径を有し、一端側が前記流通部と連通し、他端側がカテーテル挿入口を形成し、前記カテーテルの基端部の挿入を可能とするカテーテル基端部装着部と、前記カテーテル基端部装着部の一端より所定長前記カテーテル挿入口側に位置するカテーテル抜け止め用の環状突出部とを備え、さらに、該環状突出部は、前記カテーテル基端部装着部の前記カテーテル挿入口側より前記流通部側に向かって縮径する環状テーパー面と、前記カテーテルの外径より小さい内径を有し、かつ鋭角に形成された環状突出端部とを有する薬液注入具。
【0007】
(2) 前記流通部は、排出ポート側開口の内径が前記カテーテルの内径とほぼ同じである上記(1)に記載の薬液注入具。
(3) 前記薬液注入部材は、前記流通部と前記カテーテル基端部装着部の前記環状突出部との間により形成されたカテーテル基端収納部を備えている上記(1)または(2)に記載の薬液注入具。
(4) 前記薬液注入具は、前記流通部と前記カテーテル基端部装着部の前記環状突出部との間により形成されたカテーテル基端収納部を備え、さらに、前記薬液注入具の前記カテーテル基端収納部を形成する部位は、該カテーテル基端収納部に収納されたカテーテルの基端部を外部より視認可能な透明性を有している上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の薬液注入具。
(5) 前記薬液注入具は、前記流通部と前記カテーテル基端部装着部の前記環状突出部との間により形成されたカテーテル基端収納部を備え、前記排出ポートは、前記カテーテル基端収納部に位置するカテーテル抜け止め用の第2の環状突出部を備え、前記第2の環状突出部は、前記流通部側より前記カテーテル基端部装着部側に向かって縮径する環状テーパー面と、前記カテーテルの外径より小さい内径を有し、かつ鋭角に形成された環状突出端部とを有するものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の薬液注入具。
(6) 前記薬液注入部材は、前記流通部と前記カテーテル基端部装着部との境界部が、前記カテーテルの先端が当接可能な当接部となっている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の薬液注入具。
(7) 前記注入部材本体は、前記開口部および底部開口部を有するリング状の本体部材と、前記底部開口部を封止する底板部材とを備え、前記排出ポートは、前記底板部材に設けられている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の薬液注入具。
(8) 前記排出ポートは、前記底板部材に設けられた筒状部と、該筒状部の開口部に固定されたポート形成部材とにより構成されており、前記環状突出部は、前記ポート形成部材の一端部に形成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の薬液注入具。
(9) 前記カテーテル挿入口は、開口端方向に向かって拡径している上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の薬液注入具。
【発明の効果】
【0008】
本発明の薬液注入具は、少なくとも先端部が体内に挿入可能なカテーテルと、カテーテルを着脱可能に装着する薬液注入部材とからなり、薬液注入部材は、開口部と、開口部と連通する薬液流入空間と、薬液流入空間と連通する排出ポートとを有する注入部材本体と、注入部材本体の開口部を封止するとともに薬液注入用針の刺通が可能なシール部とを備える。注入部材本体は、薬液流入空間と連通する流通部を備え、排出ポートは、カテーテルの外径と等しいもしくは若干大きい内径を有し、一端側が流通部と連通し、他端側にカテーテル挿入口を有し、カテーテルの基端部の挿入を可能とするカテーテル基端部装着部と、カテーテル基端部装着部の一端より所定長カテーテル挿入口側に位置するカテーテル抜け止め用の環状突出部とを備える。環状突出部は、カテーテル基端部装着部のカテーテル挿入口側より一端側に向かって縮径する環状テーパー面と、カテーテルの外径より小さい内径を有し、かつ鋭角に形成された環状突出端部とを有する。
この薬液注入部材では、カテーテルの先端を目的部位に位置させた後、余剰分が切断されたカテーテルの基端部をカテーテル挿入口より挿入することにより、カテーテルの基端部は、カテーテル基端部装着部内に容易に進入する。さらに押し込むことにより、カテーテルの基端は、環状突出部を通過し、薬剤注入部材に装着されるため、カテーテルの薬液注入部材への装着操作が極めて容易である。さらに、装着されたカテーテルを牽引した場合、カテーテルの外面と鋭角に形成された環状突出端部がくさび状に接触するため、離脱することがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の薬液注入具の外観図である。
【図2】図2は、カテーテルを薬液注入部材に装着した状態の本発明の薬液注入具の外観図である。
【図3】図3は、カテーテルが装着された状態の薬液注入部材の拡大正面図である。
【図4】図4は、図2に示した薬液注入部材の拡大平面図である。
【図5】図5は、図4のA−A線断面図である。
【図6】図6は、図5の薬液注入部材の排出ポート付近の拡大図である。
【図7】図7は、図5の薬液注入部材の排出ポート付近を説明する説明図である。
【図8】図8は、図2に示した薬液注入部材の排出ポート付近の拡大底面図である。
【図9】図9は、本発明の他の実施例の薬液注入具に用いられる薬液注入部材の排出ポート付近を説明する説明図である。
【図10】図10は、本発明の他の実施例の薬液注入具に用いられる薬液注入部材の排出ポート付近を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の医療用容器への薬液注入具を図示する実施例の薬液注入具を用いて説明する。
本発明の薬液注入具1は、少なくとも先端部が体内に挿入可能なカテーテル3と、カテーテル3を着脱可能に装着する薬液注入部材2とからなる。
薬液注入部材2は、開口部と、開口部と連通する薬液流入空間9と、薬液流入空間9と連通する排出ポート8とを有する注入部材本体4と、注入部材本体4の開口部を封止するとともに薬液注入用針の刺通が可能なシール部5とを備える。注入部材本体4は、薬液流入空間9と連通する流通部75を備え、排出ポート8は、カテーテル3の外径と等しいもしくは若干大きい内径を有し、一端側が流通部75と連通し、他端側にカテーテル挿入口86を有し、カテーテル3の基端部の挿入を可能とするカテーテル基端部装着部87と、カテーテル基端部装着部87の一端より所定長カテーテル挿入口側に位置するカテーテル抜け止め用の環状突出部83とを備える。環状突出部83は、カテーテル基端部装着部87のカテーテル挿入口86側より一端側に向かって縮径する環状テーパー面83aと、カテーテル3の外径より小さい内径を有し、かつ鋭角に形成された環状突出端部83bとを有する。
【0011】
図1は、カテーテルが薬液注入部材に装着されていない状態の本発明の薬液注入具を図示するものであり、図2は、カテーテルが薬液注入部材に装着された状態の本発明の薬液注入具を図示するものである。
この実施例の薬液注入具1は、図1および図2に示すように、少なくとも先端部が体内(具体的には、血管(静脈または動脈)、胆管、尿管などの脈管、硬膜外、くも膜下、腹腔)に挿入可能なカテーテル3と、カテーテル3を着脱可能に装着する薬液注入部材2とからなる。
この実施例の薬液注入具1に用いられているカテーテル3は、先端側開口部31と内部ルーメン32とを有するチューブ体であり、ほぼ全体に渡り同一外径および同一内径を有するものとなっている。カテーテルの外径M1(図7:基端部の外径)としては、0.3〜5mmが好ましく、特に、0.9〜2.8mmが好ましい。また、カテーテルの内径M2(図7:基端部の内径)としては、0.1〜2.6mmが好ましく、特に、0.6〜1.8mmが好ましい。
また、カテーテル3は、可撓性、好ましくはある程度の弾性を有するものが用いられる。特に、カテーテルとしては、カテーテル抜け止め用の環状突出部83の鋭角に形成された環状突出端部83bが外面に食い込み可能なものであることが好ましい。カテーテルの形成材料としては、例えば、オレフィン系エラストマー(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタンおよびウレタン系エラストマー、ポリアミドおよびアミド系エラストマー(例えば、ポリアミドエラストマー)、フッ素樹脂エラストマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム等の可撓性を有する高分子材料により形成される。
【0012】
この実施例の薬液注入具1に用いられている薬液注入部材2は、図3および図5に示すように、注入部材本体4と、注入部材本体4の開口部を封止するとともに薬液注入用針の刺通が可能なシール部5とを備える。注入部材本体4は、上部開口部および底部開口部を有するリング状の本体部材6と、底部開口部を封止する底板部材7とを備える。そして、底板部材7は、排出ポート8を構成する筒状部73を備えている。
リング状本体部材6は、図5に示すように、上部にシール部収納部を備えるとともに、開口部に形成された環状リブ62を備えている。リング状本体部材6の環状リブ62は、シール部5に設けられたフランジ部52と当接し、シール部5の本体部材6からの離脱を防止する。
【0013】
シール部5は、薬液注入用針の刺通が可能であり、薬液注入用針の抜去後に刺通部がシールされるものとなっている。シール部5は、弾性材料により形成されている。シール部5の形成材料としては、シリコーンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム等の各種ゴム類、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリブタジエン、軟質塩化ビニル等の各種樹脂、またはこれらのうち2以上を組み合わせたもの等が挙げられるが、そのなかでも特に、生体に対し不活性で、比較的物性変化の少ないシリコーンゴムが好ましい。そして、上述したように、シール部5は、その上面より若干下面側となる部位に設けられたフランジ部52を有し、このフランジ部52は、リング状本体部材6の環状リブ62と係合する。言い換えれば、シール部5は、上部が小径部51となっており、この小径部51が、リング状本体部材6の上部開口部内に進入したものとなっている。
そして、リング状本体部材6の底部には、本体部材6の底部開口部を封止する底板部材7が固定されている。底板部材7は、底板部71とその中央部に設けられ、上方に延びる円筒部72と、排出ポート8を構成する筒状部73を備えている。シール部5は、リング状本体部材6と底板部材7の円筒部72との間により挟持されている。また、シール部5の下面と底板部材7の内面との間により、薬液流入空間9が形成されている。この実施例では、薬液流入空間9は、所定の厚さを有する円盤状空間となっている。
【0014】
注入部材本体4は、薬液流入空間9と連通し、カテーテル3の内径とほぼ同じ大きさ、若しくは若干大きい内径を有する流通部75を備え、排出ポート8は、一端側が流通部75と連通するカテーテル基端部装着部87を備える。そして、カテーテル基端部装着部87の内部(内面)に、カテーテル抜け止め用の環状突出部83が設けられている。具体的には、底板部材7は、円筒部72の側壁に形成され、薬液流入空間9とカテーテル基端部装着部87(排出ポート8を構成する筒状部73)内と連通する流通部75を備る。そして、流通部75とカテーテル基端部装着部87の境界部(具体的には、後述する大径部76の流通部側端面76a)は、カテーテル3の基端が当接可能な当接部となっている。また、流通部75は、流通部75の排出ポート側開口が、カテーテル3の内径とほぼ同じ大きさ、若しくは若干大きいことが好ましい。流通部75の薬液流入空間側開口は、カテーテル3の外径より大きいものであってもよい。具体的には、流通部75は、流通部75の排出ポート側端面方向に縮径する流路であってもよい。本発明の薬液注入具1では、流通部75の排出口ポート側開口がカテーテル3の内径とほぼ同じ大きさであるため、薬液注入用針をシール部5に穿刺して、薬液流入空間9内に薬液を導入し、薬液を薬液流入空間9から流通部75を通してカテーテル3に注入するときに、狭窄部分がないので、薬液流入空間9内の圧力が上昇することを抑制できる。このため、薬液流入空間9内の圧力が上昇することにより、カテーテル3が外れることを防止することができる。
【0015】
この実施例の薬液注入部材2では、排出ポート8は、底板部材7に設けられた筒状部73と、筒状部73の開口部に固定されたポート形成部材10とにより構成されている。また、カテーテル基端部装着部87は、底板部材7の筒状部73の内部一部(一端側部分)とポート形成部材10の内部により構成されている。底板部材7の筒状部73は、上述した流通部75と連通し、かつ、カテーテル3の外径と等しいもしくは若干大きい外径を有する大径部76を備えている。さらに、大径部76より開口部側には、大径部76より大径となっている拡径部を備え、その内面には、雌ねじ部74が設けられている。
また、ポート形成部材10は、カテーテル挿入口86を有するフランジ部82と、このフランジ部82より一端側に延びる筒状部81を有している。そして、筒状部81の一端部側には、カテーテル抜け止め用の環状突出部83が設けられている。特に、この実施例のものでは、抜け止め用の環状突出部83は、筒状部81の一端部に設けられている。なお、抜け止め用の環状突出部83は、このように端部に設けることが好ましいが、端部よりより若干内側(カテーテル挿入口側)となる位置に設けてもよい。また、筒状部81は、底板部材7の筒状部73の内面に設けられた雌ねじ部74と螺合する雄ねじ部85を側面に備えている。なお、ポート形成部材10の筒状部81の一端部84は、雄ねじ部85を備えないものとなっている。これにより、筒状部81の一端部84と底板部材7の筒状部73との間には、空間部が形成されている。底板部材7にポート形成部材10を固定する際には、雌ねじ部74と雄ねじ部85を螺合するだけでなく、接着剤を併用してもよい。この場合、前述の空間部に接着剤が充填されるため、固定力を高めることができる。
【0016】
ポート形成部材10に設けられたカテーテル抜け止め用の環状突出部83は、カテーテル挿入口86側より一端側に向かって縮径する環状テーパー面83aと、カテーテル3の外径より小さい内径を有し、かつ鋭角に形成された環状突出端部83bとを有する。さらに、この実施例では、環状突出部83の一端側は、ポート形成部材10の中心軸に対してほぼ直交する起立面83cとなっている。また、ポート形成部材10に設けられたカテーテル挿入口86は、開口端方向に向かって拡径している。このため、カテーテルの基端の挿入を容易なものとなっている。
そして、注入部材本体4は、流通部75(具体的には、大径部76の流通部側端面76a)と環状突出部83との間により形成されたカテーテル基端収納部を備えている。カテーテル3の基端部は、カテーテル挿入口86よりカテーテル基端部装着部87内に進入し、大径部76の流通部側端面76aに当接するまで、挿入可能となっている。
カテーテル3は、カテーテル基端部装着部87に、カテーテル3の基端が環状突出部83を通過するように装着されており、カテーテル3を牽引した場合、カテーテル3の外面と鋭角に形成された環状突出端部83がくさび状に接触するため、容易に離脱することがない。また、装着されたカテーテル3は、ゆっくり若干捻りながら引くことにより、薬液注入部材2より離脱させることも可能である。
【0017】
そして、図7に示すように、カテーテル抜け止め用の環状突出部83の内径L1は、カテーテルの外径M1より、0.03〜1mm小さいことが好ましく、特に、0.1〜0.38mm小さいことが好ましい。また、カテーテル基端部装着部87の内径L4(ポート形成部材10の筒状部81の内径)は、カテーテルの外径M1と等しいもしくは若干大きいものであり、0.05〜0.2mm大きいことが好ましく、特に、0.05〜0.1mm大きいことが好ましい。また、カテーテル基端部装着部87の内径L4(ポート形成部材10の筒状部81の内径)は、カテーテル抜け止め用の環状突出部83の内径L1より、0.03〜1.2mm大きいことが好ましく、特に、0.1〜0.58mm大きいことが好ましい。また、流通部75の内径L2は、カテーテルの内径M2とほぼ等しく、もしくは若干大きくても良い。また、底板部材7の筒状部73の大径部76の内径L3は、カテーテルの外径M1と等しいもしくは若干大きいものであり、0.05〜0.5mm大きいことが好ましく、特に、0.05〜0.2mm大きいことが好ましい。また、カテーテル抜け止め用の環状突出部83と底板部材7の大径部76の流通部側端面76a間の距離N1は、0.5〜5mmであることが好ましく、特に、0.5〜3mmであることが好ましい。また、環状突出端部83bの角度θ1(環状突出部83bの排出ポートの軸方向断面における角度)は、60°〜85°であることが好ましく、特に、63°〜80°であることが好ましい。
【0018】
さらに、この実施例のものでは、図7に示すように、底板部材7の大径部76の端部と雌ねじ部74の端部間には、流通部75方向に向かって縮径するテーパ部79が設けられている。また、ポート形成部材10の一端部の外縁は面取りされた角部となっている。このため、ポート形成部材10の一端部が上記テーパ部79に当接しても損傷を与えないものとなっている。
また、この実施例の薬液注入具1では、図1ないし図4に示すように、注入部材本体4(具体的には、底板部材7)には、筒状部73を挟むように延びる2つの平板状延出部を有し、それぞれの延出部には、皮下組織への固定時に使用する貫通孔77,78が形成されている。薬液注入部材2は固定は、例えば、各貫通孔77,78に糸を通し、その糸を筋等の皮下組織に結ぶことにより行われる。
【0019】
さらに、この実施例の薬液注入具1では、図8に示すように、注入部材本体4の流通部75とカテーテル基端部装着部87の環状突出部83間となるカテーテル基端収納部を形成する部位は、カテーテル基端部収納部に収納されたカテーテルの基端33を外部より視認可能な透明性を有している。このため、カテーテル3のカテーテル基端部装着部87への装着を視認により容易に確認できる。
ポート形成部材10として、X線不透過性材料又は非磁性体金属からなる非透明性材料により形成されたものを用いた場合において、ポート形成部材10の一端より流出するカテーテルの基端を確認できるため、特に有効である。ポート形成部材10の形成材料としては、チタン、チタン合金、ステンレス鋼などが使用でき、特に、チタン、チタン合金が好ましい。
注入部材本体4、具体的には、リング状本体部材6および底板部材7の形成材料としては、ある程度の透明性を有する材料が好ましく、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、エポキシ樹脂、ポリアセタールなどが用いられる。
【0020】
また、上述した実施例では、ポート形成部材10と底板部材7の筒状部73は、ねじ部を有し、螺合により固定されるものとなっているが、このようなものに限定されるものではなく、例えば、図9に示すように、底板部材7の筒状部73は、雌ねじ部を持たない拡径部74aを備え、ポート形成部材10aは、底板部材7の筒状部73の拡径部74aの内径とほぼ同じ外径有する膨出部85aを備え、ポート形成部材10aが筒状部73に打ち込まれることにより固定されたものであってもよい。
【0021】
また、図10に示す実施例の薬液注入具のように、排出ポート8aは、カテーテル抜け止め用の第2の環状突出部91を有するものであってもよい。この実施例の薬液注入具では、排出ポート8aは、流通部75とカテーテル基端部装着部87の環状突出部83との間により形成されたカテーテル基端収納部を備える。排出ポート8aは、カテーテル基端収納部に位置するカテーテル抜け止め用の第2の環状突出部91を備える。第2の環状突出部91は、流通部75側よりカテーテル基端部装着部87側に向かって縮径する環状テーパー面92と、カテーテルの外径より小さい内径を有し、かつ鋭角に形成された環状突出端部93とを有する。第2の環状突出部91は、流通部75の排出ポート8a側開口端より、所定距離カテーテル基端収納部側に位置し、かつ、環状突出部(第1の環状突出部)83より、所定距離流通部75の排出ポート8a側開口端となる位置に設けられている。
特に、この実施例の薬液注入具では、カテーテル基端収納部内、言い換えれば、底板部材7の流通部75とカテーテル基端部装着部87の環状突出部83との間、具体的には、底板部材7の流通部75とポート形成部材10の端部間に配置されたリング状部材90を備えている。そして、リング状部材90の中央部より若干流通部側となる位置に第2の環状突出部91が設けられている。このため、第2の環状突出部91と環状突出部(第1の環状突出部)83の間には、環状凹部が形成されている。
そして、第2の環状突出部91の内径は、カテーテルの外径M1より、0.03〜1mm小さいことが好ましく、特に、0.1〜0.38mm小さいことが好ましい。また、第2の環状突出部91の内径は、上述したカテーテル抜け止め用の環状突出部83の内径とほぼ同じであることが好ましい。また、第2の環状突出部91と底板部材7の大径部の流通部側端面76a間の距離は、0.5〜5mmであることが好ましく、特に、0.5〜3mmであることが好ましい。また、また、第2の環状突出部91と環状突出部(第1の環状突出部)83の頂点間の距離は、0.8〜2mmであることが好ましく、特に、1〜1.5mmであることが好ましい。また、第2の環状突出端部の角度(環状突出部91の排出ポートの軸方向断面における角度)は、60°〜85°であることが好ましく、特に、63°〜80°であることが好ましい。
リング状部材90としては、非透明性材料(透明性を有する合成樹脂)により形成することが好ましい。具体的には、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、エポキシ樹脂、ポリアセタールなどが好適である。なお、リング状部材90としては、透明性を持たないものをもちいてもよく、例えば、チタン、チタン合金、ステンレス鋼などが使用でき、特に、チタン、チタン合金が好ましい。
【符号の説明】
【0022】
1 薬液注入具
2 薬液注入部材
3 カテーテル
4 注入部材本体
5 シール部
6 リング状本体部材
7 底板部材
8 排出ポート
9 薬液流入空間
10 ポート形成部材
75 流通部
83 環状突出部
83a 環状テーパー面
83b 環状突出端部
86 カテーテル挿入口
87 カテーテル基端部装着部
90 リング状部材
91 第2の環状突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも先端部が体内に挿入可能なカテーテルと、該カテーテルを着脱可能に装着する薬液注入部材とからなる薬液注入具であって、
前記薬液注入部材は、開口部と、前記開口部と連通する薬液流入空間と、前記薬液流入空間と連通する排出ポートとを有する注入部材本体と、前記注入部材本体の前記開口部を封止するとともに薬液注入用針の刺通が可能なシール部とを備え、
前記注入部材本体は、前記薬液流入空間と連通する流通部を備え、前記排出ポートは、前記カテーテルの外径と同じ若しくは若干大きい内径を有し、一端側が前記流通部と連通し、他端側がカテーテル挿入口を形成し、前記カテーテルの基端部の挿入を可能とするカテーテル基端部装着部と、前記カテーテル基端部装着部の一端より所定長前記カテーテル挿入口側に位置するカテーテル抜け止め用の環状突出部とを備え、さらに、該環状突出部は、前記カテーテル基端部装着部の前記カテーテル挿入口側より前記流通部側に向かって縮径する環状テーパー面と、前記カテーテルの外径より小さい内径を有し、かつ鋭角に形成された環状突出端部とを有することを特徴とする薬液注入具。
【請求項2】
前記流通部は、排出ポート側開口の内径が前記カテーテルの内径とほぼ同じである請求項1に記載の薬液注入具。
【請求項3】
前記薬液注入部材は、前記流通部と前記カテーテル基端部装着部の前記環状突出部との間により形成されたカテーテル基端収納部を備えている請求項1または2に記載の薬液注入具。
【請求項4】
前記薬液注入具は、前記流通部と前記カテーテル基端部装着部の前記環状突出部との間により形成されたカテーテル基端収納部を備え、さらに、前記薬液注入具の前記カテーテル基端収納部を形成する部位は、該カテーテル基端収納部に収納されたカテーテルの基端部を外部より視認可能な透明性を有している請求項1ないし3のいずれかに記載の薬液注入具。
【請求項5】
前記薬液注入具は、前記流通部と前記カテーテル基端部装着部の前記環状突出部との間により形成されたカテーテル基端収納部を備え、前記排出ポートは、前記カテーテル基端収納部に位置するカテーテル抜け止め用の第2の環状突出部を備え、前記第2の環状突出部は、前記流通部側より前記カテーテル基端部装着部側に向かって縮径する環状テーパー面と、前記カテーテルの外径より小さい内径を有し、かつ鋭角に形成された環状突出端部とを有するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の薬液注入具。
【請求項6】
前記薬液注入部材は、前記流通部と前記カテーテル基端部装着部との境界部が、前記カテーテルの先端が当接可能な当接部となっている請求項1ないし5のいずれかに記載の薬液注入具。
【請求項7】
前記注入部材本体は、前記開口部および底部開口部を有するリング状の本体部材と、前記底部開口部を封止する底板部材とを備え、前記排出ポートは、前記底板部材に設けられている請求項1ないし6のいずれかに記載の薬液注入具。
【請求項8】
前記排出ポートは、前記底板部材に設けられた筒状部と、該筒状部の開口部に固定されたポート形成部材とにより構成されており、前記環状突出部は、前記ポート形成部材の一端部に形成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の薬液注入具。
【請求項9】
前記カテーテル挿入口は、開口端方向に向かって拡径している請求項1ないし8のいずれかに記載の薬液注入具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−120737(P2011−120737A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280812(P2009−280812)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【出願人】(591140938)テルモ・クリニカルサプライ株式会社 (15)
【Fターム(参考)】