説明

薬液用濃度計

【課題】酸、アルカリ水溶液等の薬液濃度を導電率から測定する際に、薬液濃度と導電率との関係がリニアな特性を有し、高精度な濃度測定が継続的に可能な薬液用濃度計を提供する。
【解決手段】測定用管路2内に、管路中心を通り管路軸に対して垂直方向に管路を横断する耐薬液用材料からなる一対の定電流供給用電極11a,11bおよび一対の電圧測定用電極12a,12bを配置し、4電極法によって導電率を測定する。そして、電圧測定用電極12a,12bの1本当たりの被測定薬液に接する部分の表面積S1に対する測定用
管路2の管路軸に対する垂直面の断面積S2の比S2/S1を0.8以上とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造時に使用される酸およびアルカリ等の洗浄液などの被測定薬液の流路となる測定用管路内に該被測定薬液と接触する電極を配置して、電極間における電流と電圧との関係から得られた導電率によって被測定薬液の濃度を測定する薬液用濃度計に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、シリコンウェハの表面に付着した不純物、酸化物などを取り除くためにウェハ表面が洗浄される。この洗浄工程に使用される洗浄用の薬液としては、強酸であるフッ酸などが用いられているが、シリコンウェハの表面に付着した不純物、酸化物などを取り除く除去能力は、薬液中のフッ酸濃度により大きく変化するため、薬液の濃度(イオン度)が一定となるように厳密に管理する必要がある。
【0003】
このような薬液の濃度を測定するための装置の一つとして、薬液が流れる管路内に一対の電極を配置して電極間における電流と電圧との関係から導電率を測定する導電率計がある(特許文献1〜3)。導電率計における測定形態としては、2電極法、3電極法、および4電極法が知られている。
【0004】
図10は、2電極法による導電率測定の原理を説明する図である。2電極法では、被測定液141に接触する2本の電極111a、111bを配置し、これらの電極間に定電圧交流電源101から交流の定電圧Vを印加したときに流れる電流Iを測ることにより導電率を測定する。
【0005】
図11は、3電極法による導電率測定の原理を説明する図である。3電極法では、被測定液141に接触する3本の電極121a〜121cを配置し、両端の2本の電極121a,121cと中央の1本の電極121bとの間に定電圧交流電源101から交流の定電圧Vを印加したときに流れる電流Iを測ることにより導電率を測定する。
【0006】
図12は、4電極法による導電率測定の原理を説明する図である。4電極法では、被測定液141に接触する4本の電極131a,131b,132a,132bを配置し、両端の2本の電極131a,131b間に定電流交流電源102から交流の定電流Iを流した状態で、中央の2本の電極132a,132b間の電圧を高入力インピーダンス交流電圧計103によって測ることにより導電率を測定する。
【0007】
上記のような導電率計を液の濃度測定に使用する場合、被測定液の濃度と導電率との関係がリニアであることが望ましいが、4電極法の場合、3電極法や2電極法と比べて電極の汚れや電極と被測定液との界面における分極の影響を受けにくく、高濃度でも特性がリニアであり広い濃度範囲で高精度の濃度測定ができる。
【0008】
被測定液の濃度と導電率との関係がリニアな特性になるためには、濃度計のセル定数Kが測定対象の導電率の範囲内において一定であることが必要になる。ここでセル定数K(cm-1)は、被測定液の導電率をσ(mS・cm-1)、センサ電極間の抵抗をRとすると、次式:
σ=K/R
で表される。すなわち、測定対象の導電率の範囲内においてセル定数Kが一定値であれば、被測定液の導電率σとセンサ電極間の抵抗Rの逆数との関係は比例関係となり、リニアな特性が得られる。
【0009】
なお、特許文献1には、電極形状を環状として、被測定液が流れる測定用管路に各電極を同軸上に配置した4電極法による導電率計が記載されている。
特許文献2には、グラッシーカーボン(アモルファスカーボンと同種材料)からなる電極を用いた半導体洗浄液用の薬液用濃度計が記載されており、その実施形態1(図1)には2電極法による構成が、実施形態2(図5)には3電極法による構成が記載されている。
【0010】
特許文献3には、ガラス状炭素(アモルファスカーボンと同種材料)からなる電極を用いた薬液用濃度計が記載されており、その第1図には、被測定液が流れる測定用管路の管路面近傍に面状の一対の電極を配置した2電極法による導電率計が記載されている。
【特許文献1】特開昭53−119085号公報
【特許文献2】特開2004−20231号公報
【特許文献3】実用新案登録第2528025号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述したようなフッ酸などの半導体洗浄液の濃度管理には、高い精度が要求されている。このような要求を満足するためには、液の濃度と導電率との関係がリニアな特性であることが求められ、そのためには、前述したように、導電率の変化に対してセル定数Kが一定であることが必要である。より具体的には、導電率0〜60mS・cm-1の範囲における導電率に対するセル定数Kの変化率が0.2%以内であることが望ましい。
【0012】
一方、このような用途では、電極の材料として、酸、アルカリ等の薬液に対して耐薬品性を有する材料を選択する必要があるが、このような電極材料を用いて上記の条件を満たすことが必要になる。
【0013】
本発明は、酸、アルカリ等の薬液濃度を導電率から測定する際に、薬液濃度と導電率との関係がリニアな特性を有し、高精度な濃度測定が継続的に可能な薬液用濃度計を提供することを目的としている。
【0014】
特に、導電率0〜60mS・cm-1の範囲における導電率に対するセル定数Kの変化率が0.2%以内であるような高精度の濃度測定が可能な薬液用濃度計を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の薬液用濃度計は、測定用管路内に該被測定薬液と接触する複数の電極を配置して、電極間における電流と電圧との関係から得られた導電率により被測定薬液の濃度を測定する薬液用濃度計であって、
前記測定用管路内に、管路中心を通り管路軸に対して垂直方向に管路を横断する耐薬液用材料からなる4電極法用の一対の定電流供給用電極および一対の電圧測定用電極が管路方向へ所定間隔で配置され、
前記電圧測定用電極の1本当たりの被測定薬液に接する部分の表面積S1に対する前記
測定用管路の管路軸に対する垂直面の断面積S2の比S2/S1が、0.8以上であること
を特徴としている。
【0016】
上記の発明において、測定対象の導電率は、0〜60mS・cm-1の範囲内であることが好ましい。
上記の発明において、前記定電流供給用電極および電圧測定用電極は、炭素を主成分とした材料で形成されたものであることが好ましく、特に、アモルファスカーボンで形成されたものであることが好ましい。アモルファスカーボンを電極材料とする場合、その表面
が、ゴミや気泡の付着しない程度に表面を平滑に処理されたものが好ましい(特許文献3参照)。
【0017】
上記の発明において、測定対象の前記被測定薬液として、半導体製造時における洗浄工程などにおいて使用される酸、アルカリ、またはその他の電解質の水溶液が好適に使用できる。
【0018】
本発明によれば、測定用管路内に上記のように4電極法用の4本の電極を配置すると共に、電圧測定用電極の表面積S1に対する測定用管路の断面積S2の比S2/S1を特定の値以上としたので、導電率0〜60mS・cm-1の範囲における導電率に対するセル定数Kの変化率が0.2%以内であるような高精度の濃度測定が継続的に可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の薬液用濃度計は、薬液濃度と導電率との関係がリニアな特性を有し、高精度な濃度測定が継続的に可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明について説明する。図1は、本発明の薬液用濃度計の測定用管路と、その内部に配置された電極を示した管路軸に沿った断面図、図2は、管路軸に対して垂直方向の断面図である。
【0021】
図示したように、本発明の薬液用濃度計は、被測定薬液の流路となる測定用管路2を構成する測定管1を備えている。測定用管路2は、管路軸Cと垂直な断面が円形である円筒状の流路であり、その一方側から他方側へ被測定薬液が流れるようになっている。
【0022】
測定用管路2内には、4本の棒状電極が管路方向へ順に配置されており、そのうち、管路方向両端側に配置された一対の棒状電極は、交流の定電流を供給するための定電流供給用電極11a,11bを構成している。そして、定電流供給用電極11a,11bの間に配置された一対の棒状電極は、定電流供給用電極11a,11bに定電流が供給された状態で電圧を測定するための一対の電圧測定用電極12a,12bを構成している。
【0023】
これらの定電流供給用電極11a,11bおよび電圧測定用電極12a,12bは、測定用管路2内に、管路中心を通り、管路軸Cに対して垂直方向に管路を横断するように配置されている。
【0024】
定電流供給用電極11a,11bおよび電圧測定用電極12a,12bは、好ましくは円柱形状である。定電流供給用電極11aおよび11bの径は互いに同一であることが好ましく、電圧測定用電極12aおよび12bの径は互いに同一であることが好ましい。しかし、定電流供給用電極11a,11bと、電圧測定用電極12a,12bとの径は、必ずしも互いに同一である必要はない。
【0025】
また、定電流供給用電極11a,11bおよび電圧測定用電極12a,12bは、管路軸Cに沿って見たときに4本の電極位置が全て重なるように、電極軸が互いに同一方向を向くように配置することが好ましい。
【0026】
定電流供給用電極11a,11bおよび電圧測定用電極12a,12bは、酸性またはアルカリ性の被測定薬液に対して耐性を有する材料で形成されている。このような耐薬液用材料としては、炭素を主成分とした材料、白金、ハステロイ(登録商標)などを挙げることができるが、炭素を主成分とした材料が好ましい。また、高度な耐食性を必要としない場合はステンレス等の金属を使用することができる。
【0027】
炭素を主成分とした材料としては、緻密なアモルファスカーボン(ガラス状カーボン)、炭化珪素などを挙げることができる。これらの中でも、アモルファスカーボンが特に好ましい。このアモルファスカーボンは、気孔のない緻密な構造を有しており、フッ酸等の薬液に接する場合においても長期的に安定である。
【0028】
定電流供給用電極11a,11bおよび電圧測定用電極12a,12bの製作は、成形加工された円柱状の材料から所定の厚みに切断し、切断された円板より所定の断面寸法を有する角状の電極を切り出す。次に、研磨により角状から所定寸法の円柱状の電極に加工する。しかしながら、定電流供給用電力11a,11bおよび電圧測定用電極12a,12bを構成する材料としてアモルファスカーボンを用いる場合、アモルファスカーボンは硬く、脆い性質があるため、細く長い円筒形状などに加工することが難しい。
【0029】
また、定電流供給用電極11a,11bおよび電圧測定用電極12a,12bの寸法は、加工精度、コスト、更に流体の流速に対応できる強度などを考慮に入れて決める必要がある。おおむね、直径が3mm以上であると上記条件を満たすことができるが、直径が3mm以下であっても、上記条件を満たすものであるならば、定電流供給用電極11a,11bおよび電圧測定用電極12a,12bとして利用することができる。
【0030】
本発明の薬液用濃度計において、被測定薬液としては、フッ酸、塩酸、硝酸、硫酸等の強酸および、アンモニア等のアルカリ性の水溶液などを挙げることができる。特に、上記炭素を主成分とした材料を電極に用いて、半導体製造工程におけるウェハ洗浄工程やエッチング液の供給工程においてフッ酸等の強酸水溶液の濃度を測定する態様が好ましい。
【0031】
本発明の薬液用濃度計は、被測定薬液を測定用管路2に流した状態で、測定用管路2内において被測定薬液と接する定電流供給用電極11a,11b間に不図示の定電流交流電源から交流の定電流を供給し、この状態で、中央の2本の電圧測定用電極12a,12b間の電圧を不図示の高入力インピーダンス交流電圧計によって測ることにより導電率が測定される。これはいわゆる4電極法に従ったものである。
【0032】
本発明では、電圧測定用電極12aおよび電圧測定用電極12bの表面積S1に対する
測定用管路2の管路軸Cに対する垂直面の断面積S2の比S2/S1が、0.8以上、好ま
しくは1.0以上である。比率S2/S1の上限は、本発明の効果を得る点からは特に制限はないが、例えば、精度確保の点から装置に適応した管路径が選定される必要があるなどその他の制約があるため、あまり大きくすることは好ましくない。
【0033】
ここで、電圧測定用電極12aおよび電圧測定用電極12bの表面積S1は、測定用管
路2の管路内に露出し、被測定薬液に接する電極側面の表面積のことである。例えば図1の場合、電圧測定用電極12aおよび電圧測定用電極12bの表面積S1は、電圧測定用
電極12aおよび電圧測定用電極12bの直径をd、測定用管路2の直径をDとすると、πd×Dであり、測定用管路2の断面積S2は、(π/4)×D2で表される。
【0034】
2/S1を0.8以上とすることで、導電率0〜60mS・cm-1の範囲における導電率に対するセル定数Kの変化率を、例えば0.2%以内と、大幅に小さくすることができる。これにより、薬液濃度と導電率との関係がリニアな特性を有し、高精度の濃度測定が継続的に可能となる。図5は、S2/S1を0.8以上とした場合の具体的な実施例を示している。同図のグラフに示されるように、導電率に対するセル定数Kの変化はきわめて小さく、高いリニアリティが得られている。これに対して、図6〜図9では、S2/S1が0.8より小さい比較例を示しているが、これらのいずれにおいてもセル定数Kの変化率は0.2%よりも大きくなっている。このように、電圧測定用電極の表面積S1と、測定用
管路の断面積S2との比を適切に設定することで、導電率に対するセル定数Kの変化率は
大幅に小さくなる。
【0035】
なお、電極12a,12bの表面積S1に関して、電極表面の凹凸の影響は考慮に入れ
ていない。これは、電極12a,12bの凹凸が少ない方がゴミや気泡が付着しにくくなるため、電極表面を平滑に処理しているからである。
【0036】
本発明の構成における薬液用濃度計においては、両側の1対の電極11a,11bによって発生する電界は、空間的に広がっているが、実際に電流が流れるのは、流体が流れる測定用管路2内に限られる。このため、測定用管路2内に流れる電流値は、電極11a(11b,12a,12b)の径や電極間の距離が同じであっても、電極11a(11b,12a,12b)と測定用管路2の内壁とから形成される流体の流路3の大きさが大きく影響する。即ち、電極の径と管路径との関係により決定される流体の流路3の大きさが変化することによって、流れる電流値が変化することになる。
【0037】
図6から図9に示したように、電極径に対して、管路径が小さい場合は流体のイオン濃度と導電率の関係が直線的にならないことが確認された。図示したように、導電率の変化に対してセル定数Kが一定となっていない。これは、S2/S1を0.8よりも小さく設定した場合、電極11a(11b,12a,12b)と測定用管路2の内壁とから形成される流体の流路の大きさが小さくなり、流体内を移動する電気(イオン)の量が少なくなることによって、被測定流体の濃度変化に対応した電流値の変化が生じていないことを示すものである。
【0038】
従って、最適値としては、本発明で示すS2/S1が0.8以上となるように電極径と管路径を選択することが好ましい。
2/S1を0.8以上とすることで、図2に示す測定用管路2の断面において、電極11a(11b,12a,12b)から生じる電気力線が、測定管1の影響を受けにくくなるために、電場の歪みを抑制することができ、測定用管路2内の電場が安定し、上記特性を得ることができる。
【0039】
図3は、本発明の薬液用濃度計の一実施形態を示した管路軸に沿った断面図、図4は、そのA方向矢視図である。図示した薬液用濃度計20は、半導体製造時におけるシリコンウェハ洗浄用のフッ酸水溶液の濃度を測定するものであり、洗浄液の供給ラインにおける配管に接続して使用される。
【0040】
薬液用濃度計20は、これを機器類に設置するための不図示の取り付け孔が形成されたベース板21と、濃度計本体22と、濃度計本体22に対してこれを覆うように固定された蓋部材23とを備えている。
【0041】
濃度計本体22は、被測定対象のフッ酸水溶液を流通させる円筒状の測定用管路2を有する測定管1を備えており、この測定管1の図3において上側の側壁には、測定用管1に、その管路軸方向に対して垂直な方向に定電流供給用電極11a,11bおよび電圧測定用電極12a,12bを装着するための電極装着用開口部24a〜24dが所定間隔離間して形成されている。
【0042】
測定管1における電極装着用開口部24a〜24dの反対側の壁面にはそれぞれ、4本の電極11a,11b,12a,12bの先端部分を固定するための凹部25a〜25dが形成されている。これらの凹部25a〜25dに電極11a,11b,12a,12bの先端部分を挿着することによって、測定管1の管路軸方向に対して垂直な方向に電極11a,11b,12a,12bを固定できるようになっている。
【0043】
電極装着用開口部24a〜24dには、端部がテーパ状に加工されたシール溝26が形成されており、このシール溝26内に、測定管1の接液部と電極11a,11b,12a,12bとを液密にシールするためのOリングからなるシール材27が収容され、シール溝26におけるシール材27の上部に、リング形状の固定部材28を取り付けることによってシール材27が固定されている。
【0044】
電極装着用開口部24a〜24dに電極11a,11b,12a,12bを装着し、シール溝26内にシール材27および固定部材28を装着した状態で、電極11a,11b,12a,12bの上端が電極取り付け具29によって挟持固定される。
【0045】
電極取り付け具29の上部には、電極取り付け具29に当接した状態で略矩形平板状の電極固定板30が配置されており、この電極固定板30には、リード線31とこれに接続されたリード線接続端子を電極固定板30の上部に引き出すための不図示の開口部が、電極11a,11b,12a,12bに対応した位置に計4個形成されている。
【0046】
蓋部材23を図示しない締結部材でベース板21に固定することによって、蓋部材23、濃度計本体22、ベース板21が一体的に連結、固定されると共に、蓋部材23によって電極固定板30が下方へ押圧されることにより、電極取り付け具29、電極11a,11b,12a,12b、シール材27および固定部材28が電極固定板30によって固定される。
【0047】
蓋部材23と濃度計本体22との間の内部空間は、樹脂を充填することによって封止されている。また、蓋部材23の側壁には、リード線31が挿着されるリード線クランプ32が装着されており、このリード線クランプ32によって蓋部材23がシールされるようになっている。
【0048】
濃度計本体22における測定管1の両端には、機器類の配管に接続するための接続配管33,34が溶接によって連結されている。なお、測定管1および接続配管33,34の材質としては、耐食性をもつPTFE樹脂、PFA樹脂などが使用される。
【0049】
以上のような構成を備えた薬液用濃度計20は、半導体製造工程において設置される洗浄液ラインの配管に接続され、洗浄液を測定用管路2に流した状態で、測定用管路2内において洗浄液と接する定電流供給用電極11a,11b間に、リード線31へ電気的に接続された不図示の定電流交流電源から交流の定電流が供給される。この状態で、中央の2本の電圧測定用電極12a,12b間の電圧を電圧計によって測ることにより導電率が測定され、得られた導電率から濃度が算出される。なお、薬液用濃度計20は、演算用の電子回路やデジタル表示部等を備えたものであるが、図示は省略している。
実施例
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
図3に示したような薬液用濃度計を用いて、導電率既知の標準溶液を流速5〜10l/minで測定用管路2に流し、表面を鏡面処理した緻密なアモルファスカーボン(ガラス状カーボン)からなる定電流供給用電極11a,11b間に1〜50kHzの交流定電流を供給した状態で、上記のアモルファスカーボンからなる電圧測定用電極12a,12bの間の電圧を測定した。測定には市販のLCRメータを使用し、測定電流は2mAであった。
【0050】
測定用管路2の直径Dは16mm、電圧測定用電極12a,12bの直径dはそれぞれ
4mmであり、電圧測定用電極12a,12bの表面積S1に対する測定用管路2の断面
積S2の比S2/S1は、1であった。
【0051】
導電率0〜60mS・cm-1の範囲において測定した導電率とセル定数との関係を図5に示す。導電率0〜60mS・cm-1の範囲における導電率に対するセル定数Kの変化率は、1.8×10-3%であった。なお、セル定数Kの変化率は、次式:
セル定数Kの変化率=セル定数の変化量(測定最大値−測定最小値)/導電率計測範囲
より算出した。
[比較例1]
2本の電極を実施例1と同様の形態で測定用管路2に配置し、2電極法によって実施例1と同様に導電率を測定した。測定用管路2の直径Dは10mm、各電極の直径dは4mmであり、電極の表面積S1に対する測定用管路2の断面積S2の比S2/S1は、0.63であった。
【0052】
導電率0〜60mS・cm-1の範囲において測定した導電率とセル定数との関係を図6に示す。導電率0〜60mS・cm-1の範囲における導電率に対するセル定数Kの変化率は、4.3%であった。
[比較例2]
3本の電極を実施例1と同様の形態で測定用管路2に配置し、3電極法によって実施例1と同様に導電率を測定した。測定用管路2の直径Dは10mm、各電極の直径dは4mmであり、電極の表面積S1に対する測定用管路2の断面積S2の比S2/S1は、0.63であった。
【0053】
導電率0〜60mS・cm-1の範囲において測定した導電率とセル定数との関係を図7に示す。導電率0〜60mS・cm-1の範囲における導電率に対するセル定数Kの変化率は、4.1%であった。
[比較例3]
測定用管路2の直径Dを9.5mmとした以外は実施例1と同様にして測定を行った。なお、電圧測定用電極12a,12bの表面積S1に対する測定用管路2の断面積S2の比S2/S1は、0.59であった。
【0054】
導電率0〜60mS・cm-1の範囲において測定した導電率とセル定数との関係を図8に示す。導電率0〜60mS・cm-1の範囲における導電率に対するセル定数Kの変化率は、0.43%であった。
[比較例4]
測定用管路2の直径Dを10mmとした以外は実施例1と同様にして測定を行った。なお、電圧測定用電極12a,12bの表面積S1に対する測定用管路2の断面積S2の比S2/S1は、0.63であった。
【0055】
導電率0〜60mS・cm-1の範囲において測定した導電率とセル定数との関係を図9に示す。導電率0〜60mS・cm-1の範囲における導電率に対するセル定数Kの変化率は、0.26%であった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の薬液用濃度計の測定用管路と、その内部に配置された電極を示した管路軸に沿った断面図である。
【図2】図1の薬液用濃度計における管路軸に対して垂直方向の断面図である。
【図3】本発明の薬液用濃度計の一実施形態を示した管路軸に沿った断面図である。
【図4】図3の薬液用濃度計におけるA方向矢視図である。
【図5】実施例1における導電率とセル定数との関係を示したグラフである。
【図6】比較例1における導電率とセル定数との関係を示したグラフである。
【図7】比較例2における導電率とセル定数との関係を示したグラフである。
【図8】比較例3における導電率とセル定数との関係を示したグラフである。
【図9】比較例4における導電率とセル定数との関係を示したグラフである。
【図10】2電極法による導電率測定の原理を説明する図である。
【図11】3電極法による導電率測定の原理を説明する図である。
【図12】4電極法による導電率測定の原理を説明する図である。
【符号の説明】
【0057】
1 測定管
2 測定用管路
3 流路
11a,11b 定電流供給用電極
12a,12b 電圧測定用電極
20 薬液用濃度計
21 ベース板
22 濃度計本体
23 蓋部材
24a〜24d 電極装着用開口部
25a〜25d 凹部
26 シール溝
27 シール材
28 固定部材
29 電極取り付け具
30 電極固定板
31 リード線
32 リード線クランプ
33、34 接続配管
d 電圧測定用電極の直径
D 測定用管路の直径
C 管路中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定用管路内に該被測定薬液と接触する複数の電極を配置して、電極間における電流と電圧との関係から得られた導電率により被測定薬液の濃度を測定する薬液用濃度計であって、
前記測定用管路内に、管路中心を通り管路軸に対して垂直方向に管路を横断する耐薬液用材料からなる4電極法用の一対の定電流供給用電極および一対の電圧測定用電極が管路方向へ所定間隔で配置され、
前記電圧測定用電極の1本当たりの被測定薬液に接する部分の表面積S1に対する前記
測定用管路の管路軸に対する垂直面の断面積S2の比S2/S1が、0.8以上であること
を特徴とする薬液用濃度計。
【請求項2】
測定対象の導電率が、0〜60mS・cm-1の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の薬液用濃度計。
【請求項3】
前記定電流供給用電極および電圧測定用電極は、炭素を主成分とした材料からなることを特徴とする請求項1または2に記載の薬液用濃度計。
【請求項4】
前記定電流供給用電極および電圧測定用電極は、アモルファスカーボンからなることを特徴とする請求項3に記載の薬液用濃度計。
【請求項5】
測定対象の前記被測定薬液は、酸、アルカリ、またはその他の電解質の水溶液であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薬液用濃度計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−327950(P2007−327950A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127028(P2007−127028)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】